※この作品はR-18です。

チカラの器   作:ヤン・デ・レェ

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お久しぶりに投稿。


古 モラデューク城塞争奪戦

古 モラデューク城塞争奪戦

 

 

 

 

 

 

確実なことは一つである。

少数による大軍の撃退において最も重要といえることは、味方の規模、動向および作戦計画の一切を知られずに最高の痛打を敵に与え続けることである。

この際には常に損失を最小にすることも含まれる。

答えの一つが奇策を用いることである。

しかし、奇策というものには様々な条件が必要であり、何より相手指揮官が奇策への対策をしているという前提で作戦を考える必要がある。

しかし、情報が少なからずあるもの同士の場合、奇策への対策は微々たるものといえども取ることもできよう。

互いの勢力を認識し合い、さらに幾度か交戦経験が蓄積されている場合、互いに奇策を成功させることは簡単とは言えまい。

 

 

だが彼我の状況以前に、そもそもその存在を知られていない勢力が突然に奇襲してくること、この場合に事前の十分な対策を取ることは不可能である。

透明人間はこと奇襲、奇策において最も手本とするところである。

痕跡を残さず、経験だけを残す。

彼ら何者に対する干渉をも許されているが、何者による干渉も許さない。

 

 

 

モラデューク城塞についてお話ししよう。

まずは話の中心である暗黒大陸の俯瞰図を徐々に縮小していこう。

カタルゴと呼ばれる大陸の北端、のちにエリオハプトなどの諸王朝が軒を連ねる地域である。

ここは大峡谷によって西端の細い岸壁をたどる以外に大陸南部への正規の道は無い。

強いていうならば、峡谷の底に一度降り立ち、そこから対岸へと向かい、さらに底から這い上がる必要がある過酷な直線経路くらいだろう。

さて、バルカ達の現在地は現カタルゴと現エリオハプトの領域の境目に直線を引いた場合、大峡谷からみて中程の位置である。

そこからやや西に向かうところにあるのがモラデューク城塞、北西に向かうと大北境といった具合である。

現在の所在地は暗黒大陸の北の切れ端であるこの大陸を縦に三つに分けたときの二つ目、中心に位置する。

では彼らの向かおうとしているモラデューク城塞についてお話ししよう。

かの要塞は古代暗黒大陸において北端の大陸において東部一帯の数十の都市の連合国家、アルテーナ自由都市連合がバルカがこの地に降り立つ30年近く前に作られたものである。

 

30年という年月に大きな意味はない、強いて言えばアルテーナ自由都市連合の歴史上唯一の独裁官である"スロキア・フリドリス・メロドコス"という人物がその権勢を誇っていた時代である。

 

彼はまだ存命であり、第一次カタルゴ戦争においても表舞台にこそ出ていないが南部一帯の自治領主として参加している。

 

南部一帯は元々彼の所領として連合からも認められていたものであった。

 

度々領地の没収が槍玉に挙げられるのだが、そのたびに強固な団結と自治統制を発揮するため、結局彼は官位を剥奪され平民の位になったのちも強い影響力をもつこととなった。

 

そんな男の権勢が最盛期にあった30余年前、当時隣国のスパルタリアを率いていた王がレオディアス2世であった。

 

レオディアス2世はスパルタリアのオルラッケス以前の戦史上最強と名高い武断的な軍人王である。

 

彼の治世はオルラッケスに簒奪されるまで続き、その期間もまた歴代スパルタリア国王史上最長の約40年である。

 

30余年前の当時、スパルタリアとアルテーナ間では小競り合いが頻発、スパルタリアの屈強な軍団との全面戦争はアルテーナ側の国防面、財政面において極めて重篤な障害となることが予見されていた。

 

この時、執政官全員を出し抜き実力だけで独裁官にまで登り詰めた男、それがアルテーナ常備軍において将軍に任じられていたスロキア・メロドコスである。

 

彼は自らの全財産を含む莫大な予算を注ぎ込んでスパルタリア王国との間に巨大な城塞を築いた。

 

これがモラデューク城塞の誕生であった。

 

建設に際して様々な反対意見が出たが、スロキア独裁官は断固として譲らず、当時の常備軍全軍約1万を以て建設現場を護衛させた。

 

スパルタリア王国による度重なる妨害もものともせず、遂に完成した城塞は前代未聞の規模となった。

 

アルテーナ中の都市から人夫を雇い、時には護衛のための部隊をも投入して、五万人近くの人々が建設に携わった。

 

これで役立たずなど言語道断である。

 

だが、国民を含む大多数の意見は山中に聳え立つ要塞にそれほど大きな力があるようにはどうしても思えなかった。

 

元老院を含むスロキアを除く殆どの国家運営責任者達は、自らの身に国民の不信と不満が向けられることを恐れたが、結果はそうはならなかった。

 

この城塞が完成後間も無く、スパルタリア国王自らに率いられた2万5千人にも登る軍勢がアルテーナを襲った。

 

"モラデューク城塞争奪戦"と言われるこの戦いは、完成直後の大要塞を十分に活用する準備時間を与えずに奪い、この地を大アルテーナへの出城拠点として利用することを目的としたスパルタリアと、モラデューク城塞の価値を証明し、かつ国土の防衛及びスパルタリア正規軍に出血を強いることで平和を限定的なりとも得ることを目的としたアルテーナ軍によって稀に見る死闘が演じられた。

 

戦闘期間はモラデューク包囲戦が4ヶ月。

初めの2ヶ月は睨み合いと小競り合いで終わり、次の月から周辺の資材やスパルタリア本国からの支援物資で増強した攻城戦を展開。

アルテーナ陣営はひたすらに相手に出血させることを目的として場内の糞尿や、完成間も無くで片付けが完了しておらずに残されていた建築資材の余りを有効活用して節制しつつも頑強に抵抗した。

4ヶ月目直前にスパルタリア側の弓矢が不足し始める。

同時期に城壁、つまり前線にアルテーナ側の総大将スロキアが度々姿を表し始める。

4ヶ月目に入り、スパルタリア側の食料が不足し始め、アルテーナ深部への進出も危うい状態に陥る恐れから急遽全方位攻勢に戦闘は移行した。

約3ヶ月間で梯子や粗雑な楯などの増産に努めたスパルタリア軍は城壁上での白兵戦を展開するために出血を厭わなかった。

結果、1ヶ月間の全力攻勢ののちにスパルタリア軍は撤退、アルテーナは勝利した。

 

さらに数年後、幼いオルラッケスがスパルタリアの人質として学問に没頭している頃のこと、再びレオディアス2世に率いられた三万の大軍が襲来する。

 

この戦いは最新の攻城兵器であった巨大な滑車による投石機、門を破るための車など新兵器も投入され、2ヶ月間にわたりスパルタリア側の全力攻勢が城塞を襲ったが、スロキアに率いられたアルテーナ軍が守るモラデューク城塞は陥落せず、モラデューク城塞は大陸一の大城塞としての地位を確立した。

 

この二つの功績からスロキアは偉大なる将軍、将軍の中の将軍、独裁官も前代未聞にもかかわらず大独裁官と呼ばれるなど熱狂的な支持を受けた。

 

連合から報酬としてポリ・フリドリスというアルテーナ中部の中心都市を所領に加えられ、彼の名前にもフリドリスが追加された。




もう一話分書いてるんですけど、破界僧の方も書いてるのである程度話が進んでるコッチはペースが暫くは戻らないことをお伝えしておきます。
調子が良ければ書きます。
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