謎の男の出自をちょっと描こうと思います。
原始の理想
かつてない昔。
未だ、アルマトランの概念すら無い原初の世界。
人類の胎動が宇宙の虚空に響いたばかりの頃。
かの、大願はうまれた。
原始の理想。
強さ、チカラ。
未だ何の知性も持ち合わせていない人類が、自身に降りかかる脅威から本能的に身を守る為に、迫られて得たソレである。
動物的本能の胎動は、はて知性への鍵であったか。
はたまた生存確率を上げる為の蜘蛛の糸であったのか。
見当もつかない遥以前に人々が手を伸ばしたモノは漠然とした、しかし強力に生へとしがみつかんとする強情さを持ち合わせていたが故に、何時かの誰かの運命を大きく左右する、そんな種火を育むこととなった。
幾年月が流れた。
途方もない時間の侵食作用は残酷にも、しかして鷹揚と人類の歩みを見守った。
原始の理想も忘れられた頃に、人類の繁栄は瞬く間に世界を占めた。
間も無く、ソロモンの誕生が祝われるであろう。
真っ白な天地の狭間。
荘厳を醸し出し、不動の逞しさを感じさせる宮殿があった。
ここはかの世界、大峡谷の出来るであろう未だ未熟な世界とも、原始の理想を忘れた世界からも分離された空間。
人類が念願の集大成、純玉の力と強さを奉る宮殿。
力の離宮である。
人類が望んだ念願、生命活動の持続のために永らく人々の追求し続けた漠然としたチカラは、発展進化の末に差を作り、差を埋めるために血腥く用いられる様になった。
果てしない殺戮に人々が身を捩る中、淡々とその様を見守る者の姿があった。
いや。正しくは器。古代より続く人々の純粋な力への追求の具現だ。
器は感慨を覚えていた。
ある時力を求める莫大な願いと意志が器を形成した。
人々のそれは膨れ上がり続け、今も膨張を続けている。
自身の身を巻く力場は威を増しに増すばかりだ。
いつしか宇宙は自身と世界を分離し、器にこの世界を与えた。
器は暫くの間眠りについた。
久々に見た世界は悲惨な色が混ざり合って、見るのも苦しみを伴う様だった。
ふと自身への願いの集中が薄まるのを感じた。
人々は第三の力に祈りを捧げていた。
信仰然り、知性然り。
器への願いは止まないが、世界は確かに変容している様だった。
特にソロモンという存在が大きな力を世界に伝えている。
自我の確立されていない器は、ソロモンとその仲間達のことを眺めることに決めた。
間も無くソロモンは王になった。
魔力、ルフという力を用いて、72人の仲間達と3人のマギという大魔導師達と力を合わせて理想郷を作らんとしている。
が、如何やら傲慢が過ぎたらしい。
万人の納得など得られぬことを、人間の持つ個々の独立を無視した結果だった。
全てを一つにはできない。
器はそう学んだ。
微睡むほどに、虚構を宿した争いは続いた。
ソロモンの国はその理想に敗れた様だった。
孤独と静寂しか知らない器は、ため息の様に周囲の力場を掻き混ぜたりして、退屈を慰めた。
此処ですることといえば集まり続ける力を弄ぶくらいだ。
萬の力を眷属として、物言わぬ彼らに囲まれて代わり映えのない虚を泳ぐ日々であった。
全てから遠くから離された、孤独な宮殿にさいしょでさいごの訪問者あり。
シンドバッドはかっこいいんですけどね。
なんというかな…女性を弄んじゃう系男子はねぇ…。
次に続く!