放〜たれる〜。
ミスチルの名曲ですね。
ソロモン王。
昔日と言うまでもない過去に何度も眺めたものの姿があった。
この世界に入ろうというらしい。
ソロモン王は自身の理想に敗れ、一種の魂体ともいえる状態にあった。
かの大戦にはどうにか勝てたものの、自身の傲慢を顧みる暇などない程に世界の崩壊は取り返しがつかない状態であった。
ソロモンは自身の知恵のもつ全知により、以前から原初の理想の在処を捉えてはいた。
最早崩壊の進む世界の運命を矯正するにはこの未知に頼る他ない状態に追い込まれている今、此の魅力的な存在をままにしておく訳がなかった。
幾らか減退したとは言え、未だ漲り奮うソロモンの格は確かに古今東西の強者を超越した存在と言えた。
目的は一つ、器の奪取と其の行使による正義の回復。
次元の狭間を縫い泳ぎ辿り着いた、薄い膜に覆われた灰色の宮殿。
ソロモンは顔を不相応にも驚きにニヤケさせた。
自身を運命の裁定者として信じて疑わない者の顔、理想郷を作るが為に敵味方の血を流すことを惜しまなかった冷酷さが垣間見える。
侵入を試みんとした直後、宮殿の深部から煌々と影を生まぬ程の極光を纏う器が現れた。
膜を挟んで相対した両者は正反対の様子だった。
悲願を前に猛るソロモン、対してその身を緩く冷たいチカラで覆う器。
器はあくまでも冷徹にソロモンを観察していた。
ソロモンが自身の大儀のためにと、何かを宣っているのも気にせずに何処か落胆を感じている様子だったが、意思を伝える前にソロモンの超律魔法の嵐が襲った。
怒涛の猛撃が膜に波紋を作り出す。
淡々とその様を前にして動じない器。
一向にヒビも入らない膜を前にしても、ソロモンのルフに愛されし王たる格は怯むことなく極大の威力の魔法を叩き続ける。
世界のベクトルを支配して、全方位から繰り出され続ける破壊の鼓動は苛烈さを増す一方だ。
自身の攻撃を叩きつけたかと思えば、その反動をさらに利用し、増幅し叩きつける。
その繰り返しをひたすらの様に続けるソロモン。
才人のみならず万人を惹きつけてやまない大王の純真な瞳には、狂態の相が見え隠れしている。
偉大なる王、真の王、完璧ともいえたその超人的様相は、薄汚い俗面を俯かせていたに過ぎない。
いた人間としての不完全を認めようとしない、運命を手にしようと踠き、挙句人々の運命を縛らんとする深層の闇。
器はこの男のチカラを通してそれを理解した、と同時に自身のチカラが何たるべきかの指針を得る。
争い荒ぶ現世界において、拡大する世界と国家、歪な人間と平和。
それらを受け止める程の、何人も抗えぬ、其れこそ昨日の敵と団結せざるを得ぬ程の極大の威を示す必要があるのだと。
それこそが原始の理想の権現たる自身に出来る何かなのでは無いか、と。
時は突然に来る。
ピキリ。パキリ。
永年の間、器の世界を覆っていた膜にも綻びが訪れた。
静々とヒビが入っていく。
パランッと光粒が舞った。
鷹揚に器を睥睨するソロモンは、いっそ穏やかに器の周囲のベクトルを詰った。
辺りの静謐がソロモンを笑った。
ソロモンは確かに力を行使した。
いや、つもりであった。
ソロモンの誤算、それは器にはルフが一切の干渉を許されていないことを知らなかったことである。
次回、ソロモン死す。
デュエルスタンバイ!