※この作品はR-18です。

チカラの器   作:ヤン・デ・レェ

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ソロモンは死ぬと言ったな、あれは嘘だ。

我らが父が出てきたな、作者の説明不足だ。

次回は降り立つとかなんとか言ったな、あれは次の次だ。

すんまそん。


運命の理を断つ

我らが父の封印。

 

ソロモンの消滅。

 

世界の終焉、アルマトランの消失も後僅かと思われたその時。

 

 

 

この時、全ての者達が誤解していた。

 

 

アルサーメン、イルイラー、ソロモン、アルマトラン、我らが父、裏切りのマギ、そしてチカラの器。

 

全ての運命が大きく囓りとられたことに誰も気付けていない。

 

そもそもである。

 

アルサーメンの創始者たる裏切りのマギ、アルバ。

 

彼女は生後間も無くイルイラー、堕天せし者達が我らが父と仰ぐ存在の声に従って生きていた。

 

イルイラー、それは世界の製作者であり運命そのものである。

 

がしかし、あくまでそれはこの世界に限った話である。

 

より大きな、宇宙という極めて広大な世界において、イルイラーという存在は生まれてからがチカラの器よりもずっと若い、より高度に発達した人類の意志の集合体であった。

 

人類の高度な発達は、世界と運命の渦に更なる変容の種を撒いた。

 

思想、特に二極化である。

 

その中でも正負の感情という面が世界を覆い尽くしていた。

 

動物的な本能に基づく好き嫌い、複雑な感情という唸りは人類にとって極めて素晴らしく、反面極めて痛々しい物であった。

 

この唸りが、本来で有れば何の影響も与えない意志の集合体として宇宙の運命を阻む具現を抑制する存在として遣わされた世界の意志の本質を変えた。

 

話をアルバに戻そう。

 

アルバは生後間も無くからイルイラーとの精神的な接続を果たした。

 

これはあくまで肉体へは不干渉であり、表面的な人格や行動に変貌を露わにすることはなかった。

 

結果として、着々と準備を整えたのちにアルマトランの悲劇をソロモン王に叩きつけたのだ。

 

だが、なぜ彼女はというよりイルイラーは破壊へ走ったのか。

 

ここには複雑で不条理に編まれた経緯が存在している。

 

人間の強力な思念、意志の力を、実体ある力として具現させない様に、宇宙の運命を阻むことのない様に、そのエネルギーを吸収するのみの存在が世界の意思のもとの姿である。

 

世界の意思は人類の新たな思念、これまでにないほどに強力な正負という感情の圧に屈し、変容を迫られた。

 

結果世界の意思は、世界の意志となった。

 

意志である。

 

そしてこの意志の動力たるや、尽きることのない正と負の絶対の情動である。

 

激しく揺れ動く歪んだ人類の情にイルイラーは振り回された。

 

本来で有れば持たないはずの意志を世界が持ったことも残酷な結果を生んでいくことになる。

 

 

 

長い年月を経て、人類の情に振り回されていたイルイラーはその流れを操作することを覚えた。

 

これが所謂、運命である。

 

激しい怒りや憎悪、愛情や想いやり。

 

増え続けるそれに揉まれ続けた世界は、二極的な特性を孕むに至った。

 

創造に伴う破壊という世のことわりが完成したのである。

 

だが、この時はまだ世界全体への破壊を齎すほどの強き情動に煽られることはなかった。

 

人々の何気ない営みばかりが緩やかな感情の暖かみを。

 

頻発する小規模な諍いや紛争が、酷烈な憎悪、憤怒を。

 

点々と届ける程度であった。

 

いつかは終わる、途絶えることなき人類の営みは正常な道を史に刻んでいった。

 

 

 

 

ソロモンの誕生は暁光と言えた。

 

人類は長い年月をかけて、食われる側としての憎しみを沸沸と煮やしていた。

 

ソロモンの王性はそれを見事に震わせたのだ。

 

怒りと憎悪の猛威が解き放たれた。

 

甚大な憎悪が世界を巻き込んでいく。

 

人々の意志を自身の理、意志の根源として存在していたイルイラーは遂にその身の均衡が破られるのを感じた。

 

破壊へと向かうのは必然であった。

 

 

 

世界はソロモンという王によって一元化された。

 

理想郷を叫ぶ人々に祝福されて。

 

だが、この時傍に控えていたアルバの内に潜むイルイラーは既に戻れない状態にあった。

 

アルマトランは誤りなく実現し、イルイラーの姿の顕現が果たされた。

 

それまで正負の均衡によって保たれていたその身を悪辣な泥に浸して。

 

 

 

 

 

イルイラー、世界の意志もまた運命に翻弄されたに過ぎない。

 

宇宙の対流はまもなくその世界そのものへと向かい、滅ぶことを求めたのだ。

 

ソロモン、アルバ、アルサーメン、ジン…皆が皆も同じである。

 

運命を恨み堕天を遂げて、たどり着いた力は既に運命に飲まれていた。

 

海の中にいて水を拒絶などできようか。

 

大流は誰の想いも認めない、傲慢に世界を洗い流したのである。

 

宇宙はこともなし。

 

悠々と星間の煌めきを揺らした。

 

 

 

 

 

 

 

その時、不思議なことが起こった。

 

ソロモンが何かを突き破ったのである。

 

運命にそんな事は決められていない。

 

チカラの器が顔を世界に覗かせた。

 

 

 

 

 

 

完全なイレギュラーであった。

 

 

 

ソロモンのルフが関わらない部分のみを吸収した器。

 

ルフ以外を吸収されたソロモンは実体を留めず、しかしルフによってその存在を完全に消すことはなかったのである。

 

意識のみとなったソロモンは元の世界への旅路を急いだ。

 

 

 

そして、イルイラーはソロモンの消滅に歓喜しているかに見えたが、これは単なる勘違いである。

 

イルイラーの感じた莫大なチカラの消失は、確かにソロモンの実体の消失も含まれていた。

 

しかし、あまりにも膨大なその総量のうちの一部に過ぎず、本当に完全な消失を遂げることとなったのはイルイラーという意志であった。

 

原因はその身を暗黒に窶した意志と、その対極にあったソロモンにある。

 

ソロモンは人であり、その中でも超人であるが故に深淵の二面性を持ち合わせていた。

 

ソロモンの清濁は封印の際にイルイラーの意志に通じ、結果として肉体と自身のルフ以外を奪われたソロモンの、奪われたものの中にイルイラーの意志が含まれていたということである。

 

イルイラーは人間の感情を種とし、生まれ、育まれた。

 

人によるという点では器と同じであるが、圧倒的な差が存在し、器に迎え入れられたイルイラーの意志は、意志を形作る成分、その本来の姿である人間的な感情として回帰した。

 

ソロモンの肉体を受肉、自身に合わせて変容させた器。

 

世界の意思を変形させた、イルイラーの意志は、その本体から切り離され、分解され、器に迎え入れられ、その感情を司る部分へと帰属した。

 

この時、意志を奪われた事によりイルイラーは消滅。

 

世界の意思としてその身を補完した。

 

ある意味で言えば本来の姿に戻るとも言える。

 

世界そのものたる自身が封印されるはずがないにも関わらず、この時運命を呪ったイルイラーはその憎しみに覆われた意志を喪失した。

 

アルバは精神的な接続が断たれ、本来の精神性を取り戻した。

 

アルバは生まれ変わったも同然の状態であった。

 

 

 

周囲のアルサーメンの同胞も同じ様に呆然としている中で声が響いた。

 

イルイラーの残した言葉は新たな信仰対象の提示とも言えた。

 

運命に飲まれ運命を恨み、世界に創造と破壊のサイクルを齎した意志は、その最後の仕事として図らずも運命への反逆の一助となる組織を器に託すこととなった。

 

 

 

 

 

 

世界の変容を眺めるだけだった、チカラの器を奪わんとしたソロモンは肉体を消失した。

 

器を覆っていた強固な膜。

 

宇宙の決めた運命を、人類によって最初に生み出されて以来、強力になり続けるチカラの器から永久に保護するための膜。

 

幕は破られた。

 

膜は即ち運命。

 

運命を断ち切られたことにより、運命に飲まれながらも運命であることを強いられたイルイラーの意志はその存在を失った。

 

運命の通りにその身を肥やすだけだった器が、遂に解放されてしまったのである。

 

宇宙が自ら生み出したイルイラーの意志、それが図らずも運命に抗う人類の尖兵を器に預け、ソロモンはその存在を保ったまま、器は受肉し自由を得た。

 

宇宙が誤って作り出した不完全な生き物、人類の意志が結果的に産んだ存在。

 

肥え続け宇宙の権すら及ばない、究極の想いの具現がチカラの器である。

 

まだ弱々しい古代にその身を拘束された。

 

成長を遂げたそれが解き放たれたのだ。

 

 

 

 

世界への到達は間も無く。

 

一度破壊された運命はその記録を焚く羽目となった。

 

 

 

 

 

アルサーメン。アルバ。

 

 

アルバは生まれて以来の全てに従ってきた存在を喪失し、失意に吊られていた。

 

突如として、冷えたその身を熱が包んだ。

 

俯かせていた顔を空へと向ける。

 

周りの同胞は未だしんとして瞬くこともない。

 

自身のみに与えられる感覚。

 

自身にのみ向けられる未知の熱量、それに場違いにも縋ることを耐えることはできなかった。

 

大魔導して、意志を体現するための我らが父の器として、これまで生きてきた。

 

強烈なチカラを目にすることは数多あった。

 

ソロモン、アルマトラン、ジン、運命…

 

しかしその全てと全くもって異質なそれは、自分を照らしてくれている気がした。

 

その身を包んだ温もりは天遙向こうに燦々と照り、何処かへと一心に向かっていった。

 

 

 

 

私の向かう先は決まった。

 

我らが父の最後の言葉、素直にそれに従うのもいいだろう。

 

だが、今の光を受けてやっと理解した。

 

私は今まで自分で歩んだことなど一度もない。

 

運命を恨んでいながら、その流れに身を任せることに何の疑いもなかった。

 

決めた。

 

私は、私に自分を見つけさせてくれた貴方のもとへ向かおう。

 

最早世界にイルイラーの、我らが父の面影は感じられない。

 

先程の絶大なチカラの放出の際に我らの父は潰えたのだろう。

 

ソロモンは消えたのだろうか…まぁいい。

 

 

 

私は静かにかの運命の先を見つめた。

 

もう直ぐに此処は崩れ落ちる、運命に従って。

 

だけど、おそらくこれが最後なのでしょうね。

 

 

 

 

いつかお会いするのを楽しみにしています。

 

それまでは力を蓄えることにしましょう。

 

貴方のお力になれる様に。

 

その時は、誰のものでもなく私自身が自分で選んでお供しますよ。

 

我らが光。

 

 

 

 

間も無くソロモンの生まれた世界とアルマトランはその実体を完全に崩壊させた。

 

世界の崩壊により、補完を完了させた世界の意思はその役目を終えて宇宙の暗闇へと回帰し、運命に翻弄されたイルイラーと世界は完全な消失を遂げた。

 

宇宙の運命が器の進路に伴い、人類と世界への接触を阻まんと猛烈に書き換えられていくが、全く意味を成さない。

 

 

 

 

 

 

幾年月ののちに男は、太陽が燦燦と輝く巨大な大地の割れ目に裂かれたたいりくに降り立った。




長ーくなった。
なんだか小難しいこと書いてるけど、簡単に言うと、運命ぶっ壊れたぜ!

やだ!素敵!結婚しよ!byアルバ

フラグが立った、やったぜ。


ぐらいなので。
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