登場人物:藤丸立香♀(ぐだ子)、モードレッド(セイバー)
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人類が革新的なテラフォーミング技術により、宇宙へとその一歩を踏み出してから数世紀。
地球連邦として統一を果たした人類は宇宙移民政策により、太陽系全域へ人類は移民をし、それは人類史にさらなる変遷をもたらした。
地球を故郷としない宇宙人類と呼ばれる人々の数は増え、地球中心主義とは反対に、各植民星の主権を認めた宇宙連邦が発足した。
こうして平和的に人類の再統一がなされて数十年。
かつての権益に執着する旧人類、すなわち地球生まれの市民と、宇宙人類の対立は根深く、宇宙連邦内には宇宙連邦を二分する、ふたつの政治・軍事グループに分かれていた。
旧人類中心の「ネオ・テラーズ」と、スペースコロニーや各植民星出身の新興勢力が中心となる「ニュー・ソラル」。
この二つの勢力による権力闘争は、互いに敵愾心をむき出しにし、いつしか一触即発の状況までになっていた。
土星。
太陽系第6番惑星で、ガスを主成分とする惑星だ。
その宙域を一隻の宇宙船が進んでいた。
宇宙船の名はジャンサント号。
全長125メートル、乗員定数は自動化によるおかげで55名という少ない人数で航行している。
高出力のパワーコアと推進システム、高性能索敵システムに、強化装甲、数々の武装兵器。
ジャンサント号はまさしく戦艦と呼ぶにふさわしいものだ。
しかし、ジャンサント号は戦艦であるが、その主たる任務は要人輸送であり、艦内にはシングルとツイン合わせて10室の豪華なVIPキャビンを備え、連邦宇宙艦隊の中で唯一の要人専用輸送艦であった。
そしてそのジャンサント号の艦長室では、艦長のドニ・ボーガン少佐が司令部からの新たな任務についての説明を通信で受けているところだった。
「ボーガン少佐。あらかじめ言っておくが、この任務は非常に重要なものになる」
「はい、閣下。承知しております」
ボーガンは少佐。相手は大将。
少佐でしかないボーガンに大将が直々に命令を伝えるということは、この任務の重要性が理解できるだろう。
「実はある人物が我々ネオ・テラーズの秘密を握り、それを公表しようとしている」
「ネオ・テラーズの……秘密を公表……?」
ボーガンはオウム返しに呟く。
ボーガンの脳裏に苦い記憶が甦り、古傷が疼く。
ボーガンはただの少佐ではない。
士官学校在籍時からネオ・テラーズに属する特殊工作員として破壊活動や暗殺といった任務を遂行する非合法のエージェントという裏の顔を持っている。
非合法エージェントの任務はハイリスク・ハイリターンだ。
失敗すれば誰からも救われることはなく、成功すれば大きな栄光を手にし、その功績が認められれば政府の高官になることができる。
しかし、ボーガンにとって、栄光には興味があっても政治的な野心は全くなかった。
そもそも、ニュー・ソラル、ネオ・テラーズの主義主張にも関心がない。
ただ単にネオ・テラーズの方が現実的で人間らしく、程よい腐敗具合に愛着を感じているから、ネオ・テラーズに組みしている。
顎をさすり思考に耽っているボーガン。
そこに大将による続きの言葉が伝えられる。
「いつも通り、任務遂行の手段については君に一任する。何としても計画を阻止してほしい。では、詳細を説明しよう」
それからしばらく、ボーガンは大将の説明に黙って耳を傾けるのであった。
数時間後、ジャンサント号の作戦室にはボーガンだけではなく、各セクションの責任者がいた。
「今回は、裏の任務だ」
その一言により、作戦卓を囲む男達が口笛を吹いて色めき立った。
彼らは勿論、ジャンサント号のクルー全員に裏の顔があり、ジャンサント号自体がネオ・テラーズの特務艦なのであった。
「今回のターゲットはニュー・ソラル派、特務機関フィニス・カルデアのリツカ・フジマル中佐だ。その副官、アルトリア・ペンドラゴン少佐殿もオマケだ。共に女性兵士たちのカリスマらしいがな」
「あのガキか!そいつはいいっ!!」
ボーガンの部下たちが口々に喚き散らし、狂騒的にはしゃいだ。
特務機関フィニス・カルデアはニュー・ソラル派の特務機関であり、宇宙連邦の腐敗を防ぐために設立された調査機関である。
カルデアでは調査官をマスターと言い、その副官をサーヴァントと呼ぶ。
これは大昔に実際に存在したカルデアから引用されており、副官をサーヴァントと呼ぶがその扱いは正当なものだった。
本来は派閥などには属すことが許されない調査機関であり、表向きは中道派だが、少しばかりニュー・ソラル派によっている。
リツカ・フジマルは連邦内で知らぬ者はいないほどの有名人だ。
指示は常に的を得ており、今まで告発が間違ったことはなく、常に不正を正してきた女性士官であり、ニュー・ソラル派の一部とネオ・テラーズ派にとっては因縁の敵ともいえる。
カルデア内ではただ一人の一級捜査官であり、18歳という若さでありながら、宇宙連邦内でも捜査のために大きな権限を持っている。
副官のアルトリア・ペンドラゴンはリツカの忠実な部下であり、リツカに全幅の信頼を寄せている。
戦闘に関してはリツカの指示のもと輝かしい武勲を誇り、戦闘能力がないリツカの護衛も兼ねている。
この二人はいわばネオ・テラーズにとっては目の上のたんこぶ以外の何物でもなく、ボーガンの部下たちが盛り上がるのも無理からぬことだった。
「リツカ・フジマルがネオ・テラーズ派のある大物が秘密裏に進めていた非合法活動を突き止めた、という情報が入った。しかも彼女は自分が入手したその事実を一週間後から地球で開かれる連邦議会の場で告発するつもりらしいのだ」
スッと喧騒が静まり、直ぐに作戦室にどよめきが疾る
「そうやって我々ネオ・テラーズ派を窮地に陥れようって魂胆ですね!?」
「そういうことになるな。フジマル中佐がその爆弾を堕とせば、当然我々はニュー・ソラル派のさらなる台頭を許すことになってしまう」
「チッ!あのガキめっ!」
部下たちの間からは怨嗟の呻き声が漏れ、怒りの熱気が場を支配し始め、そこにボーガンはクールな声で告げる。
「そこで俺たちの出番だ。明日、この艦には正規の用心輸送任務のため、静止軌道ステーションに寄港する。その要人こそが、リツカ・フジマル中佐とアルトリア・ペンドラゴン少佐だったというわけだ。輸送の目的地は地球。サテライトオービット軍港。ステーション出港から地球到達まではおよそ7日。その間、この艦設備を使い、おふたりを目いっぱい"歓迎"予定だ」
"歓迎"という言葉を聞き、部下たちが不気味な笑みを浮かべた。
ボーガンも低く笑って応える。
「ククク……。諸君らの期待通り、洗脳調教を行う」
「艦長万歳!ニュー・ソラルの牝ガキめぇっ!ついでに牝豚もなぁっ!」
「ククッ。コイツは楽しみなことになってきましたね」
「堪らないっ!早く来い、ガキどもっ!」
作戦室は異様な興奮で満ち溢れていた。
淫靡で邪悪な好奇心と自信に満ちた高ぶりが、どの男の顔にも滲み出していた。
なぜなら、ターゲットへの洗脳任務は、ジャンサント号がもっとも得意とする任務だったからだ。
洗脳技術はネオ・テラーズが発明したといっても過言ではなく、そのノウハウは密かに蓄えられている。
とりわけ、ターゲットが女性の場合は初歩の初歩とでもいうべき定番の技術があった。
性的調教である。
女性の性欲を媒介にして脳神経をコントロールし、まったく別の人格へと作り変える。
現在、ボーガンはその分野の第一人者として密かに一目置かれる存在となっていた。
「諸君。念のため言っておくが、正規の任務のことも忘れるなよ?」
「勿論ですっ!けど……、クヒヒヒッ、あの牝豚とヤれるってわけだ!!」
「牝ガキにたっぷり仕込んでやるぜぇッ!!」
会議が終わり、部下たちがそれぞれの部署へと戻っていくと、作戦室にひとり残ったボーガンは司令部から送られてきた資料を広げて、椅子の背に深々と沈み込んだ。
「さて、どう作り変えてやろうか……、リツカ・フジマル……、アルトリア・ペンドラゴン……。フフフフ」
悪辣な笑みを浮かべながら、ふたりに関する資料に目を通す。
リツカ・フジマル。
その経歴は異質なものだ。
14歳のころに特務機関フィニス・カルデアの捜査官に抜擢、それから数々の不正を暴き、異例の速さで昇進し、18歳という異例の年齢で少佐まで昇進した。
優しく、思いやりがあり、それは犯罪者にも適用される。
軍人とは言えない気質の持ち主だが、芯はしっかりとしており、仲間を常に信じて決して心が折れることはない。
戦闘能力は低いが、それはアルトリアと比べてのことで、銃火器の扱いは一流だ。
アルトリア・ペンドラゴン。
リツカが捜査官として活動し始めた頃から付き従う副官にして、年齢不詳の美女。
二人の信頼関係は強固なもので、何物にも侵すことはできない。
使用する武器は銃でもなく、兵器でもない槍。
しかしその槍は大昔から地球に存在する異質の槍で、どのように使われていたか、何故アルトリアが持っているかは不明。
犯罪者には容赦がなく、捕縛対象以外は例外なく殺害している。
護衛の面も優秀で、今まで一度もリツカは傷をつけられたことはない。
アルトリアにとってリツカは絶対の主だが、リツカの為を思って、戦闘訓練ではリツカに苛烈な、実践さながらの訓練を与えている。
先ほどリツカは傷つけられたことはないとはいったが、訓練でついた傷は数知れず。
「ふむ。ふたりとも男性経験はなしか。付き合ったこともない。まぁ、リツカに関してはまだまだガキだから、いや、アルトリア・ペンドラゴンのせいか?」
リツカの爽やかな笑顔と優しさに惹かれない男性はいない。
いや。
例え女性ですらも虜にする。
その肢体もバランスよく、身体も程よく肉が付き、まさにまだまだ瑞々しい18歳の肉体を持っている。
なぜそんな彼女に男が寄ってこないかというと副官の存在が大きいだろう。
歩くたびに揺れるほどの豊満な乳房。
腕は細いがしっかりと筋肉がついていて、太股はむっちりとしているが、太っているという印象を与えない、大人の色香をムンムンと感じさせる肉体を持っている。
顔も整いすぎているというほど整っており、陰では女神とも称されている美貌だ。
しかし、アルトリアの眼は鋭い。
時折見せる人を人と見ていない瞳はどんな屈強な男であろうとも凍り付かせてしまう。
ただ美しいだけでなく、腕っぷしも強く、そんな存在が常に近くにいれば、誰もリツカに近寄りはしないだろう。
「カルデア最高のコンビであり、その関係はまるで親子を思わせる……か。クククククッ。ペンドラゴン少佐、相変わらず主であるリツカには過保護だな」
記憶の中にあるペンドラゴンの面影を思い出し、ボーガンは揶揄するように笑った。
「地球に到着するころには、それがどうなっていることやら」
ボーガンはこの二人に深い因縁があった。
今から4年前、ジャンサント号の艦長の副官であったボーガンに、地球での特殊任務が命じられる。
それはニュー・ソラル派の要人誘拐任務。
ターゲットの身柄を確保した後、ジャンサント号で洗脳するのが目的だった。
人員を用意し、作戦を立案、そして実行する。
人員は全て以前から共に裏の任務をこなしてきた戦友たちであった。
ボーガンにてって作戦は多少手こずるかもしれないが、彼らと一緒なら確実に任務を成功できると信じていた。
しかし、実行された作戦は、事前にニュー・ソラルへと情報が漏れていた。
誘拐部隊は全てアルトリアによって殺害された。
そして辛うじて生き残り、這う這うの体で逃げていたボーガンも……。
「止まれ」
激しい喧騒のなか、そんな落ち着いた声が聞こえた。
ボーガンはその声に底知れぬ恐怖に襲われ、必死に逃げ出した。
声は立て続けに聞こえる。
ボーガンは声に追い立てられ、いつしか緑が生い茂る、森に誘い込まれていた。
「止まれと言っている」
その声は今までとは違い一言だけではなく、さらにすぐ傍で。
次の瞬間、ボーガンは鋭い蹴りを受け、吹っ飛んだ。
「ぐおぇぇぇッ!?」
もともと一般人に成りすますつもりであったボーガンは受け身を取るつもりがなかったが、もし取るつもりであっても取れなかっただろう。
それほどの威力があった。
ボーガンはうつ伏せで地面に落ち、苦悶の声をあげながら、痛みで顔を顰めつつ、自身に蹴りを放った人物を見上げる。
相手は黒を基調とした連邦軍の制服に身を包む女性士官だった。
白い髪に色白の肌、金の瞳がどこか人間ではない、異様な恐怖心をボーガンに与える。
右手には刺々しく、おぞましい赤黒の槍を持つ美女で、ボーガンを見るその瞳は冷たい。
(こ、こいつはッ!!)
ボーガンは目の前の女に見覚えがあった。
資料でしか見たことはないが、その恐ろしさは嫌というほど知っている人物。
アルトリア・ペンドラゴン。
敵対者には一切の容赦がなく、その戦う様はまるで嵐のようだと比喩され、築いてきた屍の山は数知れず。
そんな存在が目の前にいる。
ボーガンは死を覚悟した。
「お前も仲間か」
アルトリアが槍をボーガンの鼻先に突きつける。
槍の先端には血が滴り、それが部下の血だということはすぐに見抜けた。
「いや、俺は……」
と、ボーガンは一応の抵抗をしようとするが、
「まぁ、そんなことはどうでもいいのだがな。貴様には死んでもらう」
その抵抗は全く意味がなかった。
アルトリアにとってボーガンも殺す対象だったからだ。
アルトリアがボーガンの背中に槍を突きたてる瞬間。
「待ってっ!」
アルトリアを制止する若い女の声がした。
美しい濃いオレンジ色の髪を跳ねさせながら走ってくる女性士官。
アルトリアとは対照的に白を基調とした制服を着ており、黒いベルトのようなもので胸上と胸下を固定してあり、腰をにはベルトを巻いている。
それもボーガンには見覚えのあるものだった。
リツカ・フジマル。
不正を正す、正義の人としてニュー・ソラル、ネオ・テラーズ両方で有名な人物だった。
「どうしました? マスター」
「殺しちゃだめだよ、アルトリア。貴重な情報元になるかもしれないのに」
リツカはボーガンを見る。
その目線は厳しいものながら、アルトリアとは違い慈悲に満ちている。
「そのような価値がこの男に?」
ボーガンは身体を震わせ、ただ巻き込まれただけだと言っている。
「そこら辺は地元警察に任せるけど……。アルトリアは人を殺しすぎ」
「それが私の役目です。マスターを守るためにはどんな禍根も残すべきではない」
「でもほら、この人は無関係だといってるよ」
「ただの出まかせです」
「ただの小物犯罪者かも」
「それでも殺すべきです」
「はぁ。じゃ、命令。この人は殺さないで」
「……了解しました、マスター。私は先に帰ります」
「うん、ありがとう」
去り際にアルトリアはボーガンの胸に一発の蹴りを放つ。
「うぐああぁぁぁッ!!」
ボキリと肋骨が折れる音がした。
「ちょっと、アルトリア」
「マスターの温情に感謝するんだな、小物風情の犯罪者よ」
そう言ってアルトリアが森の奥へと去ると、その場にはボーガンとリツカだけが残った。
「ごめんなさい。大丈夫?」
(大丈夫なわけがあるかッ!このガキがッ!)
内心は怒り心頭なボーガンだが、それは一切表に出さず、「大丈夫……です」と苦悶の声を上げながら答える。
「一体どんな犯罪を犯しているかは知らないけど、地元警察に引き渡すね」
リツカの瞳には情け、同情、憐憫の感情が含まれていた。
(この俺がこんなガキに同情されて、憐みを向けられとは)
自分の打ち立てた作戦がまさかこんな少女に打ち破られるとは、ボーガンは一切思っていなかった。
ボーガンの胸中には自身に対する怒りとリツカに対する怒りで一杯だ。
「そ、それだけは」
しかし、そんな怒りは今はどうでもいいことだった。
この状況を打破することが重要だ。
警察に引き渡されては調査などで半年間は拘束されてしまう。
それだけは避けたかった。
「何か調べられて困ることがあるの?」
ボーガンの様々な情報は軍による偽装工作がされてある。
絶対に身元がばれることはない。
「犯罪の経歴を付けられたくは……」
「でも犯した罪は償わないと、ね」
リツカにとって今のボーガンは何かしらの理由があり犯罪を犯した、可哀想な人だ。
それはボーガンの感情を逆なでする。
周りに人はいない。
アルトリアも去った。
今しかない。
軍に入ってまだ日が浅いリツカが、例え肋骨が折れていても、死線を何度も潜り抜けた自分に勝てるはずがない。
折れた肋骨の痛みを無視して、ボーガンはリツカに襲いかかった。
が、次の瞬間。
フォンという風を切る音と共に槍がボーガンの肩目掛けて飛んできた。
その槍はボーガンの肩を抉り、地面に突き刺さる。
「やはりか」
森の奥からアルトリアが現れた。
「アルトリア……」
「いつも言っているでしょう、マスター。犯罪者には鉄槌を……と。油断するとすぐに足元を救われますよ」
アルトリアは気配を消して、ボーガンが何かするかもしれないと思い、森の奥で二人の様子を見ていたのだ。
槍を拾い、アルトリアはボーガンの背中に槍を突き立てようとする。
「待って、アルトリア」
「マスター、それは無理です。この男はここで殺すべきだ。この男、必ず復讐に来ます。今は負け犬の目をしているが、私には分かる。その瞳の奥には獰猛な獣を飼っていることをな」
「それでも、私は更生の機会を与えたい。人間を信じたい」
リツカのその強く輝く瞳を見て、アルトリアはため息をつく。
「私も甘くなったものです。……いいでしょう、マスター。言うとおりにします」
「ありがとうッ!アルトリア!」
リツカは年相応に喜び、アルトリアの左腕に抱き着く。
アルトリアは満更でもなさそうに、頬を緩める。
しかし、それも一瞬で、すぐに表情を鋭いものにし、肩から血を流し、なんとか意識を保っているボーガンに言う。
「これで最後だぞ、小物。次はない。マスターに復讐しようとしたら、この槍がお前の心臓を貫く。覚えておけ」
酷く冷たい声でアルトリアはボーガンに告げた。
そして地元警察がボーガンを引き取りに来るまで、その場にとどまった。
そうしてボーガンは地元警察に引き取られて、半年間、屈辱の刑務所暮らしを送るハメとなってしまった。
アルトリアに折られた肋骨と槍で付けられたく傷は寒い日になるとキリキリ疼き、ジュクジュクと痛み出し、あんな甘っちょろい小娘にしてやられた屈辱が激しい怒りを呼び、心をかき乱した。
順風満帆で出世してきたボーガンの初めての挫折でいまだに一日としてあの日を忘れたことはなかった。
出所したボーガンは今までとは比べ物にならない、過酷で危険な任務に志願し、見事にやり遂げてきた。
そうしてついにボーガンはジャンサント号の艦長に任命された。
クルーは一新され、ボーガンの部下たちが着任し、名実ともにジャンサント号はボーガンのものとなった。
「リツカ、アルトリア。お前たちのために素晴らしく特別なプランをずっと考えてきてやったんだ。お前たちは悦んでくれるだろうか……? ククク」
ジャンサント号は二人の待つ宇宙ステーションへと進路を向けた。
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