明日から新しいことが待っているはず
「これにてラグナロク教会のマスター試験を終わります、皆様お疲れ様でした」
僕はキル姫のマスターとなるためにラグナ大陸にあるラグナロク教会で試験を受けていた,最初は3日ぐらいで終わると聞いていたのに補習やら再試などで一ヶ月程カンズメにされてしまっていた。けしてできが悪いとかじゃないよ?
「それでは合格者のバイブスに共鳴するキル姫を一人渡しますので一列に並んでください」
受付の人の合図でゾロゾロと並び出す人達、人混みは嫌いだ、しばらく待っていよう。
ワガナハホウテンガゲキ!
ワタシトアナタガデアッタノハカクテイジコウノホウコクニスギナイ!
コレニテマスタートノケイヤクガムスバレマシタ!
もうキル姫を渡された奏官達を眺めていた。いろんなキル姫がいるんだな、そろそろ並ぼうか,人も減り始めたし。
クズデノロマナマスタークン
ワタクシノナヲヨブケンリハアナタニハアリマセン
口悪いなぁ、できれば優しいキル姫でありますように、そう祈っていると僕の番となった。
「貴方のバイブスに共鳴したキル姫はこの子よ、大事にしてあげてね」
「私はティルフィング、なんなりとお申し付け下さい」
そう言いながら現れたティルフィングは黒を基調とした鎧を纏い黒色のスカートに白いタイツ、そして桃色の髪を靡かせていた。
あれ?僕の知っているティルフィングと違う、僕が知っているのは白い鎧とピンクのスカートを着ていた気がする、、、まぁいいか。
「よろしくティルフィング、今日は教会の近くの宿で休んで明日から頑張ろうか」
「はい、マスター」
初対面だからなのか表情は少なく、常に凛々しい顔をしていた。
「では、お世話になりました。いこっか」
「はい」
ティルフィングを連れて教会を出ればここからマスターとしての人生が始まる,特にこれといった目的もないんだけどね。
「とりあえず宿を探そっか」
「はい」
教会がある町で宿を取ろうと二人で探すのだが考える事は皆一緒の様でどこの宿も空いていなかった。その結果。
「ごめんねティルフィング、何処も空いてなかったよ」
「私は構わないです」
教会から少し離れた所で焚き火を二人で囲んでいた。初っ端から野宿だ,僕の印象は最悪だろう。
「ティルフィングはその、野宿とか大丈夫?」
「慣れてますので」
「へぇー昔は野宿とかしてたんだ?」
「そうですね」
「僕はこういうの結構好きでさ、よく一人でソロキャンだー!ってやってたよ」
「そうですか」
……………会話が続かない,これが塩対応って奴なんだろうか、心が折れそうだ。
「明日の朝に教会にいって仕事をもらいに行こう、それから宿を借りてさ」
「はい」
パチリと音を立てて焚き火が爆ぜた、気付けば薪が消えかかっている。
「すこし薪を拾ってくるよ、待ってて」
ティルフィングを残し森に入りガサガサと森を漁る。良さそうな薪があるじゃない,どうせなら少し多めに拾っておこう。
ガサッ
月明かりを頼りに森の奥へと入ってゆくと草むらが揺れた。
「ん?ティルフィング待っててって言ったじゃん」
ガサガサッ
「おーい、ティルフィング?」
草むらをかき分けるとそこには異形の者がいた。僕と目が合うと叫び声を上げた。
「キシャーーーー」
白い身体に長いマントの様な物を被り、ゆらゆらと揺れながらこっちに近づいてくる,表情は金色のマスクで良くわからないが平和な物では無いだろう。
これは異族!?そんな異族は居なくなったはず,だったらコイツはなんだ?
「キシャーーーー」
「うおっ!?」
考えている暇も無く振り下ろされた斧をギリギリで躱す,斧が当たった場所がえぐれている。あんなのが当たったらひとたまりもない。それに異族は人間が勝てる相手ではない、ティルフィングを呼ばなきゃ。
「ティルフィングっ!!!」
…………返事はない,待っててと言ったのは自分だ。とにかく逃げよう。
キシャーーーー!!
キシャーーーー!!
やべ、いつの間にか囲まれている。ティルフィングと一緒にこれば良かったと思うのだが後悔先に立たずとはまさにこの事。
キシャーーーー!!
キシャーーーー!!
後退りをしてゆくのだがもうダメそうだ。殺されて鍋にでもされてしまうのだろうか?せっかくあんな可愛いキル姫のマスターになれたのに。神様、ラグナロク様!せめて童貞は卒業させて欲しかった!
キシャーーーー!!
異族が斧を振り上げた、せめて即死であります様に!そう祈り諦めて目を瞑った。
ザンッ
キッ??
何かが落ちる音がして恐る恐る目を開けると異族の手が切り離されて地面に落ちていた。
「はぁっ!」
ふわりと舞う桃色の髪の毛が見えた,次に瞬きをした時に異族の首が落ち血飛沫が上がる。
キャ!キャ!
それをみた異族は森へと逃げていった。
「処理、完了、マスター大丈夫ですか?」
返り血を浴びたティルフィングが振り向きながら心配をしてくれた。
あ、アリガトウ
異族に襲われた恐怖よりも月明かりに照らされるティルフィングに見惚れてどもってしまった。
「礼なら不要です,私はそのための存在ですから」
まだ森の方がザワザワしている,こちらの様子を伺っているのだろう。
「早く行きましょう,まだ異族がこちらの様子を伺っています」
「異族は居なくなったはずでしょ?」
「確かに数は減りましたがまだ残党が居ます」
ゴキブリだって駆除はできても全滅はさせれないしね。
「これからは一人での行動は避けてください」
「はい、善処します」
落としてしまった薪を拾い集めティルフィングと共に焚き火の場所まで戻って来ていた。
消えかけている焚き火に薪を放り込むと再び燃え上がり辺りを照らす。その時照らされたティルフィングの寂しげな顔が気になり質問をする事に。
「なんかあったの?」
「どうしてその様な事を聞くのですか?」
「なんとなく君の顔が寂しげだったから」
「気のせいではありませんか?明日は初任務です、見張りはしておくので早く休んでください」
そう言われたので諦めてその辺に寝転がる事に。夜空に浮かぶ星達を眺めながら煙草に火を付けそれを吸い終わると目を瞑り明日から始まる新しい生活の事を考えながら眠りへと落ちていった。