料理は得意ですよ?
今度何か作ってね
ソファーで心地よく眠っていると獣の様な鳴き声が聞こえ目を覚ましすぐさま依頼主であるおじさんを起こしていた。
「おじさん、起きて異族だよ!近くにいるはず」
「う、うーむ、、あれはガンドの遠吠えじゃ」
「えっ?」
「毎朝同じ時間にこうして起こしてくれるのだ。ほれ」
窓際へと歩いて行くおじさんの後を着いて行き窓から外を覗くと小高い丘の上で遠吠えをしているヴァナルガンドの姿が見えた。
その声は可愛らしいのだが野生を感じさせる力強い声。ふむ。
しばらくぼーっとしていると満足そうなヴァナルガンドが戻ってきた。
「ただいま〜♪」
「おはよヴァナル。毎朝遠吠えしてるんだね」
「そうなんですぅ〜街中だと大きな声を出せなくて、ここだと誰にも迷惑になりませんからね〜♪」
「ふむふむ。そういえばティルフィング見なかった?」
「ティルフィングさんならお馬さんの所に居ましたよ〜?」
「ちょっと行ってくるね」
「朝飯を用意しておくぞー」
そう教えてくれたので昨日馬車を停めた所へと歩いて行くと馬達と戯れるティルフィングの姿が。
「おはよ、朝からありがとね」
「おはようございます。ちゃんとケアしてあげないと可哀想ですからね」
むしゃむしゃと干草を食べるその背をブラッシングしていた。その姿を見ながら煙草に火を付け見守る事に。
丁寧にブラシをかけ優しく撫でると嬉しそうに顔を擦り付けている。微笑ましい光景である。
「ケアが終わったら家に戻ろっか。おじさんが朝ごはんを作ってくれてるからさ」
「はい♪」
しばらくして家に戻るとパンの焼ける匂いとコーヒーの匂いが部屋中に漂っていた。
「こんなのですまんが適当に食べとくれ」
「いただきます」
トーストをかじりコーヒーを飲のみながら任務の最終確認をしていた。
「この家の近くに古城がありそこに異族が集まり始めた。それの原因究明と異族の討伐で良いですね?」
「うむ、間違いない。少々危険だがそのティルフィングなら問題無いだろう」
そう言われてティルフィングを見るといつにも増して冷酷な眼差しをしていた。やる気は十分である。
「じゃあ行こっか」
「はい」
「ちょっと行ってきますね、また終わったら戻ってきます」
「うむ、武運を祈っておるぞ」
「お気をつけていってらっしゃ〜い♪」
外に出て地図を見ると少し離れた所に古城があるのが分かる。その方角を見ると確かにその様な建物が見える様な気がする。
「馬車はここに置いてゆきましょう。戦闘に巻き込まれるといけませんから」
「分かったよ、歩いて行く?」
「竜を呼びその背に乗って行きましょう」
指笛を吹くと上空より竜が舞い降りてきてくれた。その頭を一撫でしてその背に飛び乗った。
「マスターは私の背後に」
「はいよ」
おっこらせっと背に跨りティルフィングの肩を掴むと力強く羽ばたき砂煙を巻き起こしながら飛び立って行く。
「お願いします」
声と共にその方向を指差すと咆哮を上げながら飛行して行く。
「あれだね」
地上を飛び立ちしばらく飛ぶと古城らしき建物が見えてきた。その周りを飛行する人形の異族もいるんだけど。
「異族の飛行種ですね、しっかり掴まっていて下さい」
鞘から剣を抜くと片手で手綱を操りながら飛行種の元へと突っ込んでゆく。
それに気が付いた異族達が戦闘態勢をとるのだがティルフィングの方が一足先に先手を打つ。
この巨体で軽々と飛ぶ竜も凄いのだが猛スピードで飛行する竜から的確に異族を切り裂くティルフィングも凄い。
残念ながら僕はティルフィングの服をしっかりと掴み背に顔を押し付けることしかできないのだが。
「処理完了。次は城の内部に行きましょう」
「はい」
古城の前に降ろしてもらい城の中へと入って行く事に。今にも崩れてしまいそうだが大丈夫なのだろうか?
「置いていきますよ」
「あっ、待ってよ」
先陣を切り城門をくぐるティルフィングの背後に付いて城の中へと入って行く。
「へぇぇ」
城内は崩れた外壁から射し込む光で薄暗く歩くのには苦方しなかった。だが外壁の破片が道に転がり足元に気を付けていなければ転んでしまいそうだ。
「ギギギ」
そして城内には異族が巣食い外敵である僕達を排除しようと襲い掛かるのだがティルフィングにより肉塊へと変わってゆく。その返り血を浴びてもティルフィングは表情を変える事なく剣を振るう。
「怖い、ですか?」
「異族が?それともティルフィングがかな?」
「私がです」
「怖く無いよ。その手に持つ剣が僕に向けられたらビビり散らすけどね」
「なら良かったです」
その後も異族を蹴散らしながら城の探索を進めやがて残された最後の部屋へと続く扉の前へ。
「この奥から気配を感じます。きっとこの中に居るのが異族を呼び寄せる元凶なのでしょう」
「そんなに強い奴なのかな?」
「いいえ、開けますよ」
僕の心の準備ができる前にティルフィングが扉を開いた。ドアから覗いた部屋は暗く視界が全く効かず目による情報収集は無理そうだ。
「松明でも持ってこれば良かったね」
部屋へと入りなドアを開けた事により取り入れられた光でぼんやりと室内が見えてくる。それと部屋の中心に紅く光る大きな何かも。
「ヴォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!」
その目の持ち主が鼓膜が破れそうなほどの咆哮を上げるとその振動で外壁が崩れて部屋に日が射し込みその者が照らされた。牛の様な顔を持ち両手が二本ずつ生えた化け物の姿を。
「使徒ミノタウロスですね。少し下がっていて下さい」
「はい」
異形な異族にビビり入り口からその様子を見ている事に。手には巨大な剣を握っているにもかかわらず果敢に攻め立ててゆくティルフィング。その戦闘力の高さに見惚れていた。
乱暴に振り回される剣の軌道が分かっているかの様に回避しながら接近し一太刀浴びせ右腕を切り落とすと飛び上がり僕の方へと戻ってきた。
「私の本気見せてあげますね」
そう言い終わると同時に無数の武器を出現させ剣先を地面に当てると現れた闇に溶けてゆく。
「壊滅させてあげるわ」
暴れ狂うミノタウロスが一瞬動きを止めたと思うと地面からティルフィングが飛び上がりながら連撃を叩き込む。そして着地と同時にミノタウロスの身体がバラバラになり崩れていった。
「処理、完了。もう大丈夫ですよ」
そう言われてティルフィングの所へと駆けてゆく。
「お疲れ様。そんなに強い相手だったの?」
「いえ、たまにはスキルを使おうと思いまして」
「オーバーキルは可哀想だからやめてあげよ?」
コロコロと何かが転がってきて僕の足に当たりコロンと転がった。それを手に取ってみると金色の輪っかの様だ。
「ミノタウロスがしてたものですね」
「記念に貰っておくよ」
他にも何かないか探索をしようとした時に上から瓦礫が降ってきた。先程の戦いの衝撃で崩れるのだろう。
「こちらへ」
ティルフィングに手を引かれ部屋の奥にあった階段を駆け登ってゆくと城の屋上へと出る事ができた。そこに竜が舞い降りてきてくれた。
竜に飛び乗り羽ばたかせると城が崩れてゆく。積み重ねた歴史が終わる瞬間をその目に焼き付け任務完了を伝える為におじさんの家へと向かう。