いつのもの様に窓から部屋を照らす太陽の光で目を覚ました。僕の腕枕で寝ているティルを起こさない様に腕を抜いてベランダに煙草を吸いに行く事に。
まだ眠気の覚めない頭でベランダの窓を開けようとした時だった。
いって
床と掃き出し窓のちょっとした段差に左足の小指をぶつけてしまった、なんとも言えない痛みが眠気を覚ましてくれた。
ため息をついて煙草を取り出そうとすると空箱だった、仕方なく部屋に戻りいつも煙草を置いている棚を見るともうストックが切れていた。
…どうしようか、煙草は吸いたいけど買いに行くのは非常にめんどくさい、でも煙草は吸いたい。
気持ちを切り替えるために朝ごはんを食べようと冷蔵庫を開けて中を覗いて見ると見事に何も入っていなかった。悩んでいても仕方ない、煙草と食料を買いに行くために家を出る事に。ティルはまだ寝ているみたいだから置いていこう、起こすのも可哀想だし。
パジャマからいつもの服装に着替えて家を出る、近所にある雑貨屋に向かう事に。少し肌寒いサフランの街をのんびりと歩いて行く。
しばらく歩くと雑貨屋が見えてきた、早く買って家へと帰ろう。そう思い少しだけ早歩きで雑貨屋に行くと「本日臨時休業」の札がかけられていた。
休業なら仕方ない、気持ちを切り替えて他の店を探す事に。
はぁ、、、
あれから4件ほど雑貨屋を回ったのだがどこも開いていなかった、何かの嫌がらせなのだろうか?
ため息をつきながらサフランを歩いているとずいぶんと遠くの方まで来てしまっていた。別に歩くのは苦じゃ無いから良いんだけどスリッパで来た事を後悔していた。
それからしばらく歩きやっと開いている雑貨屋を見つけた、そこで二人分の朝ご飯と煙草を購入する事に。
おじさん、これと50番カートンで
まいど、全部で7425ゼニーだよ
そう言われて財布を出そうとポケットを弄るも財布が無い。
あれ?ごめん、ちょっと待ってて
上着のポケット、ズボンのポケットを探すも財布は出てこなかった。
ごめん、財布忘れちゃったからキャンセルで
そう言うのは困るよお客さん
うん、ごめんね
おじさんに睨まれながら店を出る事に。なんとも言えない気持ちを抱えながら家へと向かい歩いてゆく。そんな時だった。
ユウさん、丁度いい所に!
誰かに声をかけられてその方を見ると教会の受付の人が居た。
おはよ、こんな所で何してるの?
そんな事より教会にある待姫ルームに問題のあるキル姫が居てその姫の機嫌を取って欲しいんですよね
チラッと横目で僕を見た。それに合わせて目を逸らそうとしたけど間に合わず目が合ってしまった。
分かったよ、それで誰の機嫌を取れば良いの?
えっと、メギドってキル姫を知っていますか?
んー、聞いた事無いかな?
とにかくお願いします!このままだと他の姫に被害がいきそうなので!
とんでもなくめんどくさそうな事に巻き込まれた気がするけど頼まれたのなら仕方ない、受付の人に背中を押されながら教会へ向かう事に。
待姫ルームはここです、お願いしますね
教会の中を進んでゆきある扉の前で立ち止まりそう言われた。待姫ルーム、ティルも僕と出会う前はここに居たんだっけ?
昔の事を思い出しながら扉をノックしてその部屋に入る事に。
お邪魔しまーす
ユウさん気をつけて下さい!
扉を開いた時にそう言われた。えっ?と受付の人を見ると部屋の方を指差していた。そのまま目線を部屋の方に移すと炎の魔弾が僕めがけて飛んできていた。
当然避けられるはずもなくその魔弾は僕に直撃した。
あっつっ!えっ!?なに!?なに!??
ユウさん!髪の毛が燃えてます!!
うわぁぁぁ!水!水っ!!
誰か水を持ってきて下さい!!!!
燃え盛る髪の毛を手で叩きながら廊下を走り回っていた。どうして僕はこんな目に遭っているのだろうか?
ユウさん水です!!
そんな僕に水がかけられた。何とか火を消す事ができたのだが髪の毛はチリチリとなり僕の服は水浸しになっていた。
ユウさん大丈夫ですか………ぷっw
あの、笑わないで下さい
ごめんなさい!い、今着替えを持ってきますからね!
そう言って受付の人は何処かに走って行った。廊下には全身ずぶ濡れになり髪の毛をチリチリにした僕だけが立っていた。
帰りたい、僕の素直な気持ちだった。
お待たせしました!
ありがと
受付の人に着替えとタオルを貰い身体を拭きそれに着替える事に。
今の何なの?
多分メギドが放った魔弾だと思います
何で僕に向かって魔弾を放ったのさ
それは私に聞かないで下さいよ
それもそうだね、あと剣を貸してよ、なんでも良いからさ
はい!分かりました!
しばらく待っていると受付の人が剣を持って走ってきてくれた。
はい、これを使って下さい!
えっと、この剣は?
水晶刀カルマです!少し埃被っちゃってますけど
うん、ありがとね
剣を構えながら再び待姫ルームの扉を開く。開いた瞬間に魔弾が放たれそれを壁に身を寄せて何とかやり過ごした。
何とか入り口から顔を出して対話を試みる事に。
すいませーん、お話がしたいんだけど
爆ぜろ
えぇ、、、
それなりに色んなキル姫と接しきたけど一言目に爆ぜろと言われたのは初めてだった。僕の後ろで待機している受付の人に相談しよう。
僕より適任な人がいるんじゃ無い?
そんな事ありません!ユウさんが最適解です!
遠回しにギブアップを受付の人に伝えるもそれすら許されなさそうだ。それより受付の人の名前を聞く事にしよう。
名前なんて言うの?
私です?私はマリアって呼んでください!
おけ、この任務って報酬出るんだよね?
いえ、私個人のお願いなので報酬は出ませんよ?
えぇ、、、
もうこんなに苦労をしているのに報酬すら無いようだ。一気にやる気が失われてしまった。
あっ僕用事を思い出した、そんな訳でまたn
逃しませんよ?
逃げようとしたらしっかりと肩を掴まれてしまった、そして力強い握力で僕の肩を握った。
お願いしますね…?
はい、、、
圧力に負けて返事をしてしまった。なぜサフランの女の人は強いのか、ハナ奏官もなんか強かったし。
諦めて入り口から入ってゆく事に。
すいませーん、お話を伺いに参りましたー
私は穢れた者と会話する気にはなれない
そこを何とか
断る
おけ
そんな訳で撤退する事に。できる限りの努力はしたが交渉は決裂、なら仕方ないだろう。
ダメでした
もっとグイグイ行って下さいよ!ユウさんならできます!
もうしんどいんだけど
ダメです!
はい、、、
なぜ僕はこんな目に遭っているのか、日頃の行いが悪いのか?バチが当たっているのか?
ため息をついて再びメギドの元へ。
何の用?
機嫌を治して欲しいんです
断る、私は許せないのだ、この私が弱い奏官に従わなければならない事が、それに共鳴しなくても私は強い
うん、それは分かったからとりあえず大人しくしてて欲しい
断る
ゴミを見るような目で僕を見下した後に銃を僕に向けた。
じゃあどうしたら良いのかな?
そうね、私より強い奏官が居たら改心するかもね
分かった、なら僕が相手になるよ
アハハハハハッ!下衆の分際で私を相手をするだと?
うん、ここじゃ何だから場所を変えようよ
良いだろう、好きな場所を選べ
じゃあ教会の前の広場で
そんな訳でメギドとマリアと教会の前の広場へ向かう事に。
そうだ、このままこっそりと家に帰ろう。そうしよう。
僕の前を歩く二人より歩くペースを落とし距離を取ってゆく。このまま姿を消そう、そう思っていた。
ユウさん、逃しませんよ
私に恐れをなして逃げるつもりか?このゴミが
はい、ごめんなさい
振り返った二人に見つかりそのまま僕を囲うように広場へ連行されてしまった。この二人本当は仲いいよね?
そんな訳で教会の近くにある広場にたどり着く事ができた。マリアが引いてくれた線の上に立ち試合開始の合図を待っていた。
一応ルールなんですけど相手は殺さないようにお願いします、それでは準備はいいですか?
私はいつでも構わない
僕もだよ
じゃあ行きますね、試合、開始!
その合図の後にマリアが安全な所へと走って行った。って言うか人とキル姫が戦うのならマリアは止めるべきでは無いのか?僕、人だよ?ただの奏官だよ?なぜこんな事になっているのか疑問が尽きない。
爆ぜろ!!
そう言いながらメギドが放つ魔弾を回避しながら観察をしていた。長い金髪にドレスのような服。一見お淑やかに見えるが僕に汚い物を見るような視線を送っていた。
早く終わらせて帰ろう。迫る魔弾を回避しながらメギド目指して前進してゆく。
近づくにつれて攻撃が激しくなってきた。だけどまだ避けられない程では無かった。のらりくらりと回避しながら突き進んでゆく。
ゴミクズは燃やし尽くしてやる!
その言葉の後に攻撃が激しさを増した。なぜ僕はここまで言われなきゃいけないのか、僕が何をしたっていうのか、だんだんとイライラしてきた。
迫る魔弾を斬り払いながら王手を刺すためにメギド目指して駆け抜けてゆく。
一時の感情も制御できないなんてやはり下賤な者ね
メギドが後方へ下りながら魔弾を放ってゆく。動きながらなのかその照準は定まっていなかった。
そんな物当たらないよ
その考えが下賤と言っている
っつ!?
気づいた時にはもう遅かった、僕を囲むように魔弾の炎が火柱を上げていた。挑発したのはこの作戦を見破られないためか。
さようなら
そう聞こえ前を見ると銃口を僕に向けたメギドがいた。こんな所で死ぬ訳にはいかない。燃え盛る炎の中剣を鞘に戻し腰を落とした。
燃え散れ
銃口から炎の魔弾が放たれた、それを合図に一気に駆け出した。
黒式、、、
炎の魔弾を斬り裂きそのままメギドに向かって加速してゆく。
この穢れた者がっ!!
ジグザグに走り照準を狂わせながらついに僕はメギドにたどり着いた。
死ね
一紅閃っ!!!
僕の頭に突きつけられた銃をしゃがんで躱しそのまま剣をお腹に突きつけた。
………………しょ、勝者ユウさん!!!!
マリアの声が広場に響いた。その声を聞き剣を鞘に戻し地面に倒れ込んだ。
あーー疲れた
そんな!もう一度よ!たかが人間に私が負けるはずなんて無い!
ダメです、誰がどう見てもユウさんの勝ちです
そんなはずなど無い!!
そう叫び寝転がる僕に銃口を向けた。
えっと、、、?
この災厄は私が焼き尽くす
震える手で引き金を引こうとした時だった。僕の視界の端に鮮やかな桃色の長髪が見えた。
銃を下げて下さい
次の瞬間には黒いマントをなびかせ赤黒い剣をメギドに突きつけるティルが居た。
これ以上マスターを傷つけるのなら私が相手をします
凛としてどこか冷たい口調でそう告げるとメギドが歯軋りをして銃を下げた。
ありがとティル、助かったよ
待っていても帰って来ないから心配してたんですよ、それで一体何をしてたのですか?
それは私が説明します
そう言ってマリアがティルに説明をしていた、それを空を見ながら聞いていた。
そう言う事ですね、言いたい事は分かりますけどこれはキラーズの影響なので仕方のない事ですよ?
そうなんですよね、、、だけど私はメギドに良い奏官に着いて欲しいんですよ
何度も言うが私に奏官は不要、私一人でも充分に強い
でもユウさんに負けたじゃないですか
それは、、、
それよりご飯食べに行こうよ、お腹すいた
立ち上がり身体を伸ばしながらそう言うとみんなもお腹が空いていたようだ。近くにあるご飯屋さんに行く事に。みんな好きな物を頼み談笑していた。
メギドは奏官は不要なのですよね?
そうね、マスターが居なくても私は敵と戦えるしマスターが居ないと成立しない事なんて無いわ
そうかも知れませんけど、、、キル姫である以上共鳴してた方が強くなれますよ!
それは人間の発想であって私には不要だ
そこまでメギドが言うのであれば私と戦いませんか?私はマスターと共鳴しているのでその差が分かると思います
そうね、なら私がティルフィングに勝てばこれ以上私に奏官の話をするのはやめてもらおうか
分かりました、ティルフィングさんお願いします
はい、私に任せて下さい
そんな会話を聞きながら僕は焼けてしまった髪を撫でていた。何度触ってもチリチリになってしまっている僕の髪の毛、つらい。
頼んだ物を食べているのだが髪の毛が気になりすぎて味をあまり感じなかった。つらい。
ご馳走様でした
ご馳走様
ユウさんお支払いお願いします
何で僕?
こういう時は男の人が払うもんですよね?
どういう時だよ
こういう時です、ご馳走様でした〜
そう言って店の外へと行ってしまった3人、仕方なく伝票を持ってレジの前に。
お会計5421ゼニーとなります
はーい
そう言われてポケットを探るも財布は出てこなかった。しまった、家に忘れてきていたんだ。
ちょ、ちょっと待ってて下さい
チッ
店員に舌打ちをされながら外に出て行った3人の元へ、ってか舌打ちする店員ってどうなのよ?
ごめん、僕財布家に忘れてきていたんだよ
使えないわね
ユウさんカッコ悪いです
私が支払っておきますね
うん、ティルお願い
なぜ僕はこんな事に巻き込まれているのにそんなに言われなければならないのか、今日は帰ったら早く寝よう、そう心に決めた。
お待たせしました、行きましょう
ご馳走様、手加減はしないわ
ご馳走様でーす
ありがとねティル
あとマスターにこれを
ありがと、助かるよ
店のレジの横に売っていた煙草をティルが買ってくれた。早速開封して煙草を咥え火をつけようとしていた。
あれ?火がつかない?
残念ながらライターのオイルが切れていたようだ、ホイールを回しても虚しく火花が出るだけだった。そうだ。
メギド、煙草に火をつけてよ
はぁ?下衆の分際で私に火を着けさせるつもり?
いえ、なんでもないです、、、
煙草があるのに吸えない、非常にモヤモヤした気持ちのままさっきの広場まで歩いてきた。
じゃあ二人共準備はよろしいですか?
はい
いつでも行けるわ
じゃあ行きますね、試合、開始!!!
マリアの声の後に両者が動いた。素早く動くティルの動きを制限するようにメギドが魔弾を放っていた。そうだ、こっちに向かってくる魔弾で煙草に火を着けよう。
そう思い煙草を咥え魔弾が飛んでくるのを待っていた。
たぁっ!!
そう聞こえて戦う二人を見るとティルが魔弾を剣で弾いていたようだ。その弾かれた魔弾が僕の方へと飛んできていた。しっかりと魔弾の弾道を見極めて煙草に火を着ける事ができた。久しぶりの煙草が身体に染み渡るのを堪能していた。
ん?何か焦げ臭い、煙草の匂いじゃない何かが燃えるような匂いが何処かから漂ってきていた。
ユウさん髪の毛!!
えっ?
マリアにそう言われて頭を触るとまた僕の髪の毛が燃えていた。
うわぁぁぁぁぁ!!!水!水!!
水なんてありませんよ!
仕方なく服を脱ぎそれで頭を押さえる事で何とか消化する事ができた。幸い火傷はしなかったけど燃えてしまった髪の毛がポロポロと落ちてきた。
つらい、、、
ぷっw
笑うマリアに言葉を返す元気もない程項垂れてしまっていた。
勝者ティルフィングさん!!
僕が項垂れている間に勝負が付いたようだ。メギドの首にティルの剣が突きつけられていた。
これでメギドも奏官の必要な事が分かったと思います
………そうね、検討するわ
良いマスターができると良いですね
ティルとメギドが握手をしていた、僕の時はそんな事無かったのに。
じゃあ帰りましょうか
そうだね
二人共ありがとうございました!
次こそは私が勝つわ
楽しみにしていますね
またねー
二人に見送られながら帰路に着く事に。
あー疲れた
今日は早く寝て下さいね
うん、そーするよ、先にシャワー浴びるね
はい♪
服を脱ぐ前にシャワーを出しておく、そしてゆっくりと服を脱ぎ頭からシャワーを浴びた。
冷たっ!!
ごめんなさい、工事でガスが止まっているって言い忘れていました
早く言ってよ、、、
季節はもう春だけどまだ冷水のシャワーには早かった。一気に体温を奪われ震えながら身体を洗い流しパジャマに着替える事に。
あー、、、寒っ
明日の準備は私がしておくのでユウは早く寝て下さいね?
うん、ごめんね、その前に煙草吸ってきます
はい
まだ体温が戻らず震えながらベランダへ、煙草を咥えた時にオイルが切れている事を思い出した。仕方なくオイルを取りに行きライターに注ごうとしていた。
あれ?これも空なの?
缶を押しても僅かにオイルが出てきただけだった、少しの望みを持ってホイールを回すも火がつく事は無かった。
今日は散々な一日だった。もう良いや、明日にしよう。
火をつけ損ねた煙草を箱に戻しそのままベッドへ。
おやすみティル
おやすみなさい