※この作品はR-18です。

黒ティルと僕と   作:やす、

160 / 201
R:ティル奪還作戦

ピピピピピピと鳴り響く目覚ましの音で目を覚ましていた。

 

 

「んん、、、わかった、わかったから…」

 

 

布団から顔を出さずに手だけを伸ばし何処かで鳴っている目覚ましを止める為にあちらこちらを探っていた。やっと目覚ましを見つけ出し止めようとしたのだが勢いあまり手で目覚ましを弾いてしまった様だ、ベッドの上の台から電子音を響かせながら落下して床に落ちると電池が外れたらしく音が止まった。

 

 

「んん、、ん。」

 

 

のそのそとベッドから起き上がり目覚ましを拾い上げ電池を差し込み元あった場所へ。うぅーんっと身体を大きく伸ばした後立ち上がり煙草を吸いに行く為にベランダへと出ていた。

 

 

少し肌寒い秋の空を見ながら煙草に火を付け今日の任務は何なのかを考えていた。僕がなんと言っても与えられた任務をこなすしかないのだけど。

 

 

ため息を吐きながら煙草を灰皿へと押し込み部屋へと戻り二度寝をしたい誘惑を断ち切りパジャマから仕事着へと着替えていた。

 

 

「忘れ物は、、、なんかあったら取りに戻ればいいか」

 

 

最後に部屋を見渡しながらそう呟いていた。もうすぐにでも家を出ないと教会の食堂が混んでしまう、さっさと行こう。

 

 

身支度を済ませ誰も居ない部屋に向かい「行ってきます」と呟いてドアを閉めた、それからのんびりと教会を目指して歩いてゆく、って言ってもすぐに着くんだけどね。

 

 

「おじさんおはよー、いつものね」

 

「あいよー」

 

 

すっかり顔馴染みの食堂の亭主にメニューを伝えまだ人の少ない席に座りボーッと外の景色を見ていた。外の景色は秋らしく清々しく晴れ渡り遠くに見える山も少しだけ茶色く見える気がする。

 

 

「お待たせ」

 

「ありがとね」

 

 

しばらく外を見ていると亭主が朝ご飯を持ってきてくれた。コーヒーとサンドイッチ、それにカフェオレとサンドイッチだ。

 

 

「僕は一人分しか頼んでないよ?」

 

「いつもこれぐらい食べたろ?」

 

「朝からこんなに食べれないよ」

 

「間違えたか?お代は良いから食べなよ」

 

「あざっす」

 

 

のんびりとコーヒーを飲みながらサンドイッチを食べて次は甘ったるいカフェオレを飲みながらサンドイッチを食べていた。基本的にコーヒーはブラックなのだが甘いのも飲めない事はないから良いんだけどさ。

 

 

「ごちそーさまでした」

 

 

いつもより苦しいお腹をさすりながら受付に今日の任務を聞きに行く事に。僕の担当の職員は…居た居た。

 

 

「おはよ、今日の任務はなに?」

 

「おはようございます♪えっと、ユウさんは…教会の周りのゴミ拾いです♪」

 

「はいよ」

 

 

担当の人からゴミ袋を貰いそのまま食堂へ。亭主にその事を報告していた。

 

 

「今日はゴミ拾いだってさ」

 

「俺にそれを言ってどうするんだ?」

 

「…それもそうだね、うっかりだよ」

 

「お互いうっかりだな、頑張って行ってこいよ」

 

「はーい」

 

 

そんな訳で僕は教会の周りのゴミを拾っていた。そんな事は良いのだがなんで僕は一人でゴミを拾っているのかすごく疑問だった。以前は誰かとペアを組んでいたような気がする。それに僕の出身であるコーラル村から教会があるサフランになぜ出てきたのか?僕の性格を考えてもこんな都会に来る理由が無いのに。

 

 

そんな事を考えながら作業をしているとあっという間に終わらせる事ができた。担当の方に確認をしてもらい完了のサインを貰うと早々と家へと帰って行った。

 

 

「ただいまーあー疲れた」

 

 

そのままベッドに寝転ぼうとしたのを堪えてシャワーを浴びる事に。洗濯機に服を投げ込みそのまま浴室へ。

 

 

シャワーを浴びて汗を流しそのついでに浴室の掃除をする事に。汚いより綺麗な方が気分良いもんね。洗剤を浴槽、壁、床に撒き散らしそれをスポンジで擦っていた。

 

 

こんなもんか。泡を洗い流し最後に排水溝を掃除しようと蓋を開けるとピンク色の髪が絡まっているのが見えた。

 

 

なんだこれ?髪の毛だよね?疑問を持ちながらその毛の塊を解すとかなり長い、腰ぐらいまでありそうな長さだ。

 

 

(・・・ー)

 

 

ん?今なんか僕を呼ぶような声が聞こえた気がする。そう思い辺りを見渡してもここは浴室、誰も居るはずがない。毛の塊を袋に入れてこびり付いている汚れを掃除してお風呂から出る事に。

 

 

なんとなく気が乗らなくなったので今日の掃除はお風呂場だけにしておこう。そう思いキッチンへ向かいお風呂上がりの水を飲もうと戸棚を開けていた。

 

 

ん、これは?

 

 

戸棚の一番取りやすいところに置かれていた黒のコップとそれの色違いのピンク色のコップ。僕は一人暮らしだからこんな色のコップを買う事は無いと思うのに。

 

 

(・・ター)

 

 

また何かが聞こえた気がする。あれかな?借りたアパートは実はいわく付きの物件だったとか?よく良く考えれば教会も近く近所にご飯屋さんや雑貨屋があるのに僕以外の住民が居ない。それが答えか……

 

 

しらね、僕は幽霊やお化けは信じていないんだ。それにもし出たとしても塩撒けばなんとかなるだろう。そんな事を考えながらやっとこさベッドに寝転がった。

 

 

ん?

 

 

僕がベッドに寝転がった衝撃で小さなぬいぐるみがベッドの棚から落ちてきた。それを拾い上げでしげしげと眺める事に。

 

 

[デュリン1/4スケール]

 

 

へぇ、このぬいぐるみはデュリンって言うんだ。こんなぬいぐるみ買ったっけな?

 

 

(・スター)

 

 

また幻聴が聞こえた。疲れているのかな?それとも憑かれている?後者なら塩を撒かなきゃ。

 

 

そう思いキッチンへ塩を取りに行こうと立ち上がった時だった。ベッドの上の壁に飾られているネックレスに気が付いた、それを手に取り眺めていた。

 

 

なになに?二人の大事な夏の思い出を閉じ込めたネックレス……。

 

 

(マスター)

 

 

んっ!今はっきりとマスターって聞こえた!優しくて何処か冷たいその声までは思い出せたんだけどその声の主が思い出せない。

 

 

「煙草でも吸うか」

 

 

モヤモヤしている気分を転換する為にベランダへ行き手すりにもたれながら煙草に火を付けていた。

 

 

「…あれ?なんで僕泣いてるんだろ」

 

 

悲しい事があったわけでも無いのに目から涙があふれていた。なんだろう、何かとても大切な事を忘れているような、大事な何かを失ってしまったような。

 

 

ため息を吐いて煙草を揉み消し何かに導かれるように僕は家を出て前住んでいた宿へと向かっていた。

 

 

あったあった、居酒屋がすぐ近くにあるこの宿だ。この宿に僕は誰かと住んでいたんだ。少し恥ずかしいけど話を聞く為に宿へと入って行った。

 

 

「すいません」

 

「はい?ご予約の方ですか?」

 

「いえ、僕って以前誰かとここを借りてましたよね?」

 

「お名前は?」

 

「ユウです」

 

「少々お待ち下さい」

 

 

女将さんと話し受付近くにあるソファーに腰掛けていた。僕は以前ここで誰かと飲みに行く約束をしてここで座って待っていたんだ。そこまでは思い出せるんだけどその先が全く思い出せない。

 

 

「お待たせしました、二名様で部屋を借りて頂いていました」

 

 

その言葉にドキリと胸が跳ねた。その次の言葉を聞けば誰と居たかが分かると確信したからだ。

 

 

「それで僕は誰と泊まっていましたか?」

 

「それが代表者の名前しかいただいて居ないので…」

 

「そう、ですか…」

 

 

お礼を言って宿を出ていた、疑問は解決しなかったけど誰かと居たという事が分かっただけでも良しとしよう、宿を出てから喫煙所を探す為フラフラと道を歩いていた、そんな時に誰かに声をかけられた。

 

 

「おっ、ユウじゃねーか」

 

「ん、なんだショウか」

 

「久々に会ったのになんだはないだろ、それより飲みに行こうぜ」

 

「ショウの奢りね」

 

「しゃーねーな」

 

 

同じ教会に所属している先輩のショウに誘われ宿の前の居酒屋にはいることに。何度も来た事がある店内を見渡しながらカウンター席へと腰掛けていた。

 

 

「そういえばショウって旅に行ってなかった?」

 

「そうなんだが一人で旅しててもつまらなくて帰って来たんだよ」

 

「誰かと一緒に旅してなかったっけ?えっと、小さな女の子と」

 

「あ?俺は昔から一人だぞ、それと俺を誘拐犯扱いするのやめろ」

 

「ふむ」

 

 

とりあえず生で乾杯してその事をずっと考えていた。ショウだけじゃない、僕も誰かと居たはずなんだ。

 

 

「お前そんなにボーッとしてどうしたんだよ?何か悩み事か?」

 

「悩んでるっていうか何かが思い出せないっていうか」

 

 

そんな話をしていると店員さんが頼んだ料理を運んできてくれた。のは良いのだがどう考えても二人で食べ切れる量ではなかった。

 

 

「頼みすぎじゃない?」

 

「お前たくさん食べたろ?」

 

「こんなには無理だよ」

 

 

目の前にあるのは二人分のカウンター席に置ききれない程の焼き鳥やらポテトなどのおつまみから釜飯にラーメンだ。このまま残すのは勿体無いという事で他のお客に分けたりとなんとか捌くことができた。

 

 

「そういえば教会の食堂の亭主にも二人分の朝ごはんを貰ったよ」

 

「みんなうっかりな日だな」

 

「それよりショウは誰かに呼ばれたりしない?」

 

「呼ばれるってお前何かに取り憑かれてるんじゃね?」

 

「違うよ、誰かにマスターって呼ばれたんだ」

 

「マスター?何だそのマスターって」

 

「それが分かれば聞いてないよ」

 

「俺はそんな事ないな、悩みなんて飲んで忘れようぜ」

 

「ふむ」

 

 

その後適当に喋り解散となった。食べ過ぎて苦しいお腹で帰路に着くことに。

 

 

「…本当に何かが変だ、何が変なのか分からないけど何かが変なんだ」

 

 

ぶつぶつと独り言を言いながら歩いていた。側から見たらヤバい奴だろうが気になどしていられない。そんな時誰かとぶつかってしまった。

 

 

「ちょっと!どこ見て歩いてんのよ」

 

「ごめんなさい、ってなんだよハナ奏官か」

 

「なんだって何よ、ユウ奏官」

 

「ごめん、ボーッとしてたよ」

 

「しっかりしなさいよ」

 

 

転んでしまったハナ奏官を起こしてあげると乱れた髪を手ぐしで直していた。そんな事は良いんだ。

 

 

「ハナ奏官って誰かと一緒だったよね?」

 

「何言ってんの?私は一人よ」

 

「じゃあマスターって呼ばれた事ある?」

 

「何よマスターって、バーの亭主?」

 

「じゃなくて、そもそもなんで僕達って奏官って呼んでるんだ?」

 

「そう言われてみればそうね、奏官って何よ?」

 

「知らんがな」

 

「まっ、良いわ、私用事があるから行くね」

 

「うん、ごめんね」

 

 

考える事が一つ増えてしまった。奏官ってなんだ?マスターってなんだ?その疑問を持つのは僕だけなのだろうか?

 

 

また人とぶつかるのは嫌なのでその疑問は家で考えるとしよう。そう思い何も考えずに家へとむかってゆく。

 

 

「ただいまー」

 

 

とりあえずベランダで一服してからベッドに潜り込み先程の事を考えていた。まぁ気付いたら寝ていたのだけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

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