何となく目を覚まして部屋を見渡すとまだ日は登っておらずまだ暗いままだった。少し考えてからベランダへ煙草を吸いに行く事に。
両腕に残る疲労感を感じながらベランダに出てうっすらと見える太陽を見ながら煙草に火を付けた。
「ふぅぅーーーーーー」
煙草を咥え両腕を伸ばしストレッチ。リルティルが呼びに来るまで何をしようか?
何となく手すりから下を覗くと庭に木が生えているのが見えた。よし。決めた。
思い付いた僕は煙草を灰皿へ押し込み部屋に戻り剣を取りそのまま庭へと駆けて行った。
「確かこの辺りだったよね?」
庭に出て下から部屋の位置を確かめていたのだが分かるはずもなく諦めてその木に似た木の近くで剣の素振りをする事に。
一振り一振り力を込めて、無心で剣を振るい続けその最後に。
「せやっ!」
その木の幹へ一撃を打ち込んでいた。これをする意味は特に無いんだけどね。
それから身体を伸ばし部屋へと戻る事に。
「あー疲れた」
服を着替えてからリルティルが起しに来てくれるまで二度寝をする事に。おやすみ。
…………………
……………
…………
………
……
「ユウ、起きて下さい」
優しい声が僕を呼びその声でうっすらと目を開けると桃色の長髪が揺れているのが見えた。
「ん、、てぃる?」
「私はグリードじゃありませんよ。おはようございます」
「おはよーリルティル」
しっかりと目を開けてその主を見ると優しく微笑んでくれるリルティルがいた。
「今日はトレイセーマから先生をお呼びしてありますよ」
「ありがとね、コロシアムに行けば良いかな?」
「その前に朝食を食べましょう」
そんな訳でリルティルとリビングへ。並べられているトーストにマーガリンを塗りコーヒーと共に頂いていた。
「アルマス達は?」
「もう任務に出てます。今日は夕方にしか帰って来れないと思いますけど」
「りょーかい」
トーストをかじりコーヒーで飲み込み立ち上がりリルティルに着いてコロシアムへ。
「なんか、どうしたの?」
「昨日寝る前に準備しておいたのです。片付けは手伝って貰いますからね?」
何も無かったコロシアムに平均台やらネットやら様々な障害物が置かれていた。言ってもらえれば手伝ったのに。
「これを走れば良いんだよね?」
「そうですが。入って来てください」
リルティルがそう言うとコロシアムに来てくれた小柄な女の子。
「はぁぁぁぃ♪ユウくん久しぶり♪」
「久しぶりミョルニル」
尻尾をブンブンと振りながら寄って来てくれたミョルニルの頭を撫でていた。このミョルニルに会うのは以前ここに来た帰りかな?
「ユウにはミョルニルに追いかけられながらこの障害物競争をしてもらいます」
「ミョルニルちゃんに追いつかれたらペッタンコだよ♪」
そう言って槌を振り上げたミョルニル。もしあれに潰されてしまったら命は無いだろう。
「では位置に着いて下さい」
そう言われて引かれている線の上へ。僕の直ぐ後ろにミョルミルが着いた。
「よーい。初め!」
その合図と共に一気に駆け出した。その直ぐ後ろに槌を振り下ろし地響きを響かせるミョルニルの方を見ると笑顔で埋まってしまった槌を引っこ抜いていた。
「まてまて〜〜♪」
「ひぃぃぃぃ」
焦りながらもしっかりと冷静に障害物を見極め走って行く。平均台を走りネットをくぐり吊り下げられたパンにかじりつき。しばらく進むとテーブルが見えてきてその上に手紙が置いてあるのが見えた。その一枚を手に取り読んでみる事に。
[オベロン様の髭]
借り物競走なのだろうか?それにしてもお題が謎すぎる。
「そーれ♪」
「うおっ!?」
どうやら悩んでいる暇は無いようだ。コロシアムを出て城の中を探し回って行く。
オベロン様、オベロン様、、、もしかしてと思いいつものリビングへ行くと居た。あの椅子に腰掛けている。
「オベロン様髭ください!」
「うむ、持って行くといい」
そう言うと鼻の下の髭をペリリとめくり僕に渡してくれた。
「えっ!?それつけ髭なん!?」
「そーーれっぺったんこ♪」
「うぉぉぉ!?!」
素でツッコミをしていたらもう少しで潰されてしまう所だった。何とか槌を回避してリルティルの待つコロシアムへと駆けて行く。
「リルティル!これで良い?」
「はい、では2週目お願いします。ミョルニルはもっと激しく遊んであげて良いですよ」
「はーーい♪ミョルニルちゃん本気出しちゃうよ♪」
元気良く槌を振り回すミョルニルから逃げているのだが地面が槌でへこまされ1週目よりも走りづらくなっていた。もしあれに潰されてしまったらこの話はここで終わりだ。それだけは避けなくては。
へこんだ地面と障害物を駆け抜け再びお題が置いてあるテーブルの元へと走って来た。それを走りながら開封する事に。
[神令の仮面]
えぇ、、大丈夫なのだろうか?
呆気に取られ立ち止まると空を切る音が聞こえ僕の真後ろに槌が振り下ろされていた。悩んでいる余裕なんて無さそうだ。コロシアムを飛び出し城を抜けてあの大穴まで走って行く。
「あったあった」
ティルヘルムとトレイセーマの境目ぐらいにある大穴へと辿り着いていた。名の通り大きな穴だ。
「ミョルニルさん少し良いですか?」
「はーい?どーしたの?」
「降りる時は攻撃するのやめてよ」
「うんいいよー♪じゃあ先に下で待ってるね♪」
そう言って下へと飛び降りて行ったミョルニル。慌てて下を覗き込むと遥か先で僕に向かって手を振ってくれているのが見えた。
残念ながら僕に飛び降りる勇気は無いのでその辺に生えているツタを伝い下へと降りて行く事に。
「お待たせミョルニル」
「うん♪じゃあ行くよーー♪」
鬼ごっこを再開してミョルニルに追いかけられていた。そんな時にあのマスコットみたいな奴を見かけた。
「コォーーーーーー」
「ひぃぃぃぃ」
ミョルニルとマスコットみたいな奴に追いかけられながら走って行くと一軒のお家が見えてきた。その玄関先に立っている女性の姿も。
「ラグナロクだよね?仮面ください」
「うん、持っていきなさい」
そう言って仮面に手をやり髪を振りながら外し僕に渡してくれた。その仕草と紅く凛とした眼差しに少しだけときめきを感じた。
「ありがとね、仮面無い方が可愛いよ」
そう言ってまた来た道を戻って行く。ミョルニルとさらに増えたマスコットを引き連れて。因みに僕がマスコットと呼んでいるものは[ドール]って名前らしい。
「まてまてー♪」
「コォーーーーーー」
「コォーーーーーー」
「ラグナロク、今のは一体…?」
「そうね、1人の男が運命に抗おうとしている。それだけよ」
「そうは見えませんでしたが、、」
荒れた道を駆けて僕は入り口。つまり降りて来たところまで戻って来ていた。だが、ツタを上るにはあのマスコット達をなんとかしなければならないだろう。
「動かないの?なら。ぺったんこだよ♪」
そう言って笑顔のミョルニルの背後で剣を構えたマスコットが。
「ミョルニル危ない!」
そう言ってミョルニルの服を引っ張るとその場に剣が振り下ろされていた。彼らは僕だけを狙うんじゃない。ミョルニルも攻撃対象のようだ。
「先に逃げて!僕が時間を稼ぐよ!」
剣を構え繰り出される剣技をなんとか弾き返しながらそう叫んでいた。
「コォーーーーーー」っと無機質な声を出しながら剣を振るうマスコット。その腕を見ながら剣筋を予想し回避、反撃をしていた。
「つっ、、流石に無理か、、、」
一体だけなら何とか戦えそうなのだが数が多すぎて防ぎきれない所に傷を負わされていた。
「ユウ君。ミョルニルちゃんにお任せあれー♪」
そう言うとギラリと目を輝かせ迫るマスコット達を1人残さずに槌で叩き潰していた。
「ふうー♪どぉー?どーだった?ミョルニルちゃんの活躍♪」
「ありがとねミョルニル。助かったよ」
はしゃぎ回るミョルニルの頭を撫でてあげていた。そのついでにミョルニルに休憩を提案しそれが受理され手頃な石に腰掛けて煙草に火をつけていた。
「やっぱり強いね、キル姫は」
「えっへん♪ミョルニルちゃんは無敵なのです♪でもユウ君も強いよ♪」
「そう、かな?」
「うん♪だってミョルニルちゃんの事守ろうとしてくれたでしょ?そんなの強くないとできないよ♪」
ミョルニルにそう言われて照れ笑いをしながら煙を吐き出していた。だけど結局守られてしまった事を思い出しため息を吐いた。
「帰ろっか♪」
「うん、そうだね」
「てっぺんまで競争だよー♪」
元気良くツタを登るミョルニルに負けないようにその後を追いかけて行く。だが当然のように追い付けるはずもなく置いてきぼりを食らったのだが。
「ミョルニルちゃんの勝ちだよー♪」
「あーー疲れた、、、流石だよミョルニル」
「ミョルニルちゃんいっぱい遊んだからお腹空いちゃったよぉ」
「じゃあ街に寄っておやつ買って帰ろっか」
「うんー♪」
城に帰る前にティルヘルムの街により適当なお店でおやつを買って帰る事に。みんなの分も買って帰ろっかな。
「ミョルニルはなにが食べたいかな?」
「んーっとね、最中♪」
「りょーかい」
最中を売っているお店を探し大量の最中を買い込み城に帰る事に。どうでもいい話だが最中でありモナカでは無いのだ。何が言いたいかって言うと和菓子でありアイスでは無いって事だ。そんなこんなで買い物を終えて2人並んで仲良くリルティルの待つコロシアムへ。
「おかえりなさい。それは?」
「最中だよ、一杯買って来たからみんなで食べよ」
「ありがとうございます。お茶を淹れますのでリビングへ来て下さい」
「まだ食べちゃダメなのー?」
「もー少し待っててね」
リルティルに連れられてリビングへ。席に座りリルティルがお茶を淹れてくれるのを大人しく待っていた。
「お待たせしました。合うように少しだけ渋く淹れてありますからね」
「ありがとね。食べよっか」
「うん♪いただきまーす♪」
最中の甘みとお茶の渋みが合う合う。少し幸せなおやつタイムを終えて三人でコロシアムを片付けミョルニルを見送る為城の入り口へ。
「ありがとねミョルニル」
「うん♪楽しかったよ♪またねー♪」
ミョルニルを見送るとその入れ替わりで帰ってきた男の人。その深緋色の頭に少しだけ見覚えのある。
「お疲れ様ですギル。どうでしたか?」
「ただいま姫さま。何とか上手く行ったぜ!」
「お疲れ様。えっと、誰だっけ?」
「ギルだよギル。久しぶり兄さん」
「あーー!久しぶりだね。今は何してるの?」
「俺はティルヘルムの外交官やってるぜ!忙しいけど毎日楽しいぜ!」
「ミョルニルを呼んでくれたのもギルなんですよ」
「ほんと?ありがとね」
「いやぁ、、俺の手腕にかかれば朝飯前よ」
「少し遅いですけどお昼ご飯を作りますね。ユウはどうします?」
「僕は、、、素振りしてるね」
「分かりました。では夕ご飯の時間になりましたら呼びにいきますね」
「うん、ありがとね」
そんな訳で今朝練習していた所へとやってきた。今回もまた木を的に見立てて素振りをしていた。
(…………)
今日戦ったあのマスコットの事を思い出しながらの素振り。あの機械的で感情無く剣を振るうあの動きを真似して振ってみよう。
「コォーーーーーー」
あのマスコットの声真似をしながら剣を振るってみたのだがそんな自分が可笑しくて笑えるだけだった。もしこんな姿を誰かに見られたら恥ずかしいだけだからやめておこう。
「あの、何の真似をしていたのですか?」
不意に優しい声が聞こえ苦笑いをしながらその声が聞こえた方へゆっくりと振り返った。
「………………いつから見てたの?」
「ユウがコォーーーーっと言い始めた時からです」
「そうだね、とりあえずこの話はやめよ?」
「ふふ、そうですね。夕ご飯の支度が整いましたよ」
「うん、ありがとね。それとさっきの事はみんなに内緒でお願いします」
「分かりました。行きましょうか」
リルティルに連れられてリビングで夕ご飯を頂き早々とお風呂に入り寝る事に。
「おやすみなさい。今日もありがとうございました」
「おやすみなさい。ゆっくり休んで下さいね」
「おやすみ兄さん」
挨拶をしてから部屋に行きベッドに潜り込み目を閉じるといつの間にか眠りに落ちていた。