※この作品はR-18です。

黒ティルと僕と   作:やす、

166 / 201
R:ティル奪還作戦 その7

「いたたたたっ、、ここは…?」

 

 

目を覚まして身体を起こすと柔らかな感触。辺りを見るとどうやらお布団に寝かされている様だ。確か僕はデカマスに殴り飛ばされて気を失ったはずだ。その飛ばされた衝撃で廃屋に転がり込みひかれていた布団に入り込んだのか?

 

 

そんな都合の良い事を考えているとドアが開き誰かが入って来た。その人の方を見るとフードを被った銀髪の少女だった。少しだけ冷ややかな目線を僕に向けていた。

 

 

「えっと、ネスだっけ?助けてくれたの?」

 

「はい、たまたま通りすがったら倒れていましたので」

 

「ありがと、おかげで助かったよ。ここは何処なのかな?」

 

「ここは私たちのお家です。それより挨拶をお願いします」

 

「そうだね、こんにちわネス。僕はユウだよ」

 

「私にじゃありません!」

 

 

そんなやりとりをしているとまたドアが開き入って来た女の人。

 

 

「目を覚ましたんだね、痛みは無い?」

 

「うん、もう大丈夫だよ」

 

「そう、ならここから立ち去って」

 

 

長い銀髪をかき上げながらそう言われた。だけど。

 

 

「まぁまぁ、はい、仮面返すよ」

 

 

カバンをあさり仮面を取り出しラグナロクに渡すと少しだけ驚いた顔をされた。

 

 

「この仮面を返す為にここに来たの?」

 

「うん、借りた物は返さないとね。それと一つお願いがあるんだけど」

 

「何?聞くだけ聞いてあげる」

 

「僕に剣を教えて欲しいんだ」

 

 

真剣な顔でラグナロクの瞳を見つめそう言うと少しだけ口元を緩ませすぐに凛とした表情に戻った。

 

 

「理由を聞かせて。あなたは過去に私達がどの様な事をしようとしていたのかを知ってるはずよ」

 

「うん。ラグナロクが言う通り何をしようとしてたか知ってるし君達の強さも知っているよ。だからお願いしているんだよ」

 

 

そう言った後に理由を説明しようとしたら他の神令達も部屋に集まって来ていた。僕がみんなに理由を話し終えた後に沈黙。みんながラグナロクの判断を待っていた。

 

 

「分かったわ、ただの人間がどこまでやれるのか。その可能性を私達に見せてみて」

 

 

そう言った後クルリと背を向け外へと歩いて行った。その後を着いて行く事に。

 

 

家を出て少し離れた所でラグナロクが立ち止まり剣を抜いていた。

 

 

「さぁ、本気でかかって来なさい」

 

「うん、よろしくお願いします」

 

 

そう言った後にギュッとネックレスを握りその手を離し剣を構えた。その瞬間から嵐の様に吹き荒れるラグナロクのオーラに怖気付きそうになったけどそれを誤魔化す様にグッと柄を握りしめた。

 

 

「!!」

 

 

瞬きをした瞬間に目の前にラグナロクの姿が、そして振り下ろされる剣。それをしっかりと受け止めその勢いで後退。

 

 

「せやっ!」

 

 

すぐさま踏み込み一閃。それを受け流され反撃の一閃を身を屈め回避。そのまま立ち上がりながら斜めに斬り上げ一回転しながら追い討ちの一閃。それを受け止められ火花を散らしながら鍔迫り合った。

 

 

「それが本気なの?」

 

「残念だけどね」

 

 

鍔迫り合う剣を傾けラグナロクの剣と重ね合わせその隙にお腹に向かい前蹴りを放った。

 

 

その足を難なく掴まれそのまま足を上げられると僕は体勢を崩しその場にひっくり返ってしまった。

 

 

その顔の横にストンと剣が立てられた。

 

 

「少しは動けるみたいね、次はダモクレスに稽古をつけてもらいなさい」

 

 

剣を納めまだ倒れたままの僕に手を差し伸べてくれた。その手を掴み起き上がっていた。

 

 

「やっぱり強いね。良い勉強になるよ」

 

 

そう言いながら剣を鞘に納めようとしたらパッキリとミスリルソードが真ん中から折れてしまった。

 

 

「あっ」

 

「もう替えの剣は無いの?」

 

「僕が持っているのはこの剣だけなんだよ」

 

 

剣が折れてしまいどうしようか悩んでいるとラグナロクが一本の剣を渡してくれた。

 

 

「ならこの剣をあげるね。今の私には必要ない物だから」

 

 

お礼を言って鞘に収められている剣をゆっくりと引き抜くと白く美しい刀身が見えてきた。抜刀しその剣を握った瞬間から何かに護られるような、そんな気配を感じていた。

 

 

「ありがとね。大事に使うよ」

 

「お礼は良いわ。ダモクレス」

 

「うん、直ぐに愛してあげるからね」

 

 

頭に被ったレースを直し僕の前へと来てくれた。その表情は淫らでラグナロクにも劣らない程のオーラを纏っていた。

 

 

「お願いします」

 

「うん、お願いね」

 

 

その言葉が聞こえると同時に眼下に迫るダモクレス。確実に急所に狙いを定めた乱舞を繰り出していた。

 

 

その一振り一振りの軌道を見極め的確に弾き躱し隙を探ってゆく。

 

 

「どうしたの?反撃してこないならすぐに楽にしてあげるね」

 

 

その言葉の後に少しだけ大振りな一閃が繰り出された。その軌道を予測し踏み込み上段へと斬り上げた。

 

 

「うわっ!」

 

 

剣を跳ね上げられクレスが驚きの声をあげた。それを聞きながら小さくその場で回り腕を伸ばしリーチと勢いを得た一閃を繰り出した。

 

 

一瞬笑みを浮かべたクレスが見え僕の一振りは空を切り次の瞬間には僕の首元に背後から剣先が伸びていた。

 

 

「……どういうこと?」

 

「動きを読んだんだよ君と同じようにね。君が斬り上げ回った時にジャンプして背後を取った。このまま愛してあげようか?」

 

 

ゆっくりと首に剣を寄せて行くクレスにノーサンキューと伝えると「ふぅーん?」と聞こえ剣が引いていった。

 

 

少し考えるために煙草に火を付けて煙を吐き出していた。やっぱり読みが外れた後に隙がある、それに攻撃が当たるまで相手から目を逸らさないこと。かな?

 

 

煙草を地面に押し付けその場で軽くジャンプをする。すると槍を持った少女が前へと出てきてくれた。

 

 

「次はアタシだぞ。ユウの正義をアタシに見せてみろ」

 

 

そう言いながら槍を構えたグラーシーザ。自分の身長よりも長い槍を片手で握り鋭い眼差しを僕へ向けていた。槍使いと戦うのは初めてなので少し距離を取りながら見極める事に。

 

 

左手で被っている帽子を被り直すとダンっと踏み込み槍を突き出した。それを回避すると再び踏み込み的確な突きが迫る。槍のリーチと剣のリーチが違いすぎる為防戦の一方だった。

 

 

「どうした、おまえの正義はそんなものか」

 

 

余裕を浮かべた笑みで僕を挑発していた。それならばその挑発に乗るとしようか。

 

 

「良いよ、僕の正義を見せてあげる」

 

 

剣を納め後方へ大きく下がりそれからグラーシーザ目掛けて駆け出してゆく。そんな僕を狙った一突きが繰り出された。その矛先を躱し左手を伸ばしグラーシーザのネクタイを掴みそのまま引き寄せた。

 

 

「食らえ!」

 

 

首を引き勢いをつけグラーシーザの頭目掛けて頭突きを繰り出すと同じく頭突きを繰り出された。

 

 

ゴチンっと音が響き痛みと浮かぶ星を堪えながら後方へ飛び退いた。そんな僕に槍の一突きが迫る。

 

 

その槍の先端に向かい剣を振り下ろし突きの軌道をそらすと狙い通りに矛先が地面に突き刺さった。その柄を踏み台にグラーシーザの背後を取るべく大きくジャンプ。着地しグラーシーザの首に剣を当てようとした。

 

 

「ぐへっ」

 

 

剣を当てようとした時には僕のお腹に槍の尻手が付き当てられていた。槍の強みは矛先だけじゃ無い事を学べた瞬間である。

 

 

「良い動きだったぞ、まっ、そのていどでは断罪はできんがな」

 

「回復してあげますね」

 

「いててっ、ありがとねグラーシーザ、ネス」

 

 

お腹をさすっているとネスが回復魔法をかけてくれた。便利だねネス。

 

 

次の練習と行きたいところだけどみんなお腹が空いたようで休憩を取る事に。

 

 

「練習のお礼にご飯作るよ。キッチンはどこにあるのかな?」

 

「ならクレス様も手伝ってあげるよ、今日はクレス様が当番だしね」

 

 

2人でキッチンへ。聞くと普段はミネルヴァかクレスがご飯を作っているようで今日はクレスが当番のようだ。

 

 

「何を作れば良いかな?」

 

「昼夜兼用でカレーを作ろうよ」

 

「りょーかい」

 

 

そんな訳でカレーを作りその間にお米を炊く事に。僕を合わせて9人居るのでその量がすごい。ルーの箱を三箱使い人参や玉ねぎお肉もキロ単位、お米も二回に分けてといで大きな炊飯器へと入れていた。

 

 

「いつもこんな感じなの?」

 

「うん、買い物に行くのも一苦労だよ」

 

 

何処かに引っ越したいとかもっと広いキッチンが良いとクレスのグチを聞きながらカレーを作り終わり盛り付けをしてみんなが待っているテーブルへと運んでいた。

 

 

そんな訳でみんなでカレーを美味しく食べてから午後の練習が再開された。ご飯シーン?今回はパスでお願いします。

 

 

「よろしくお願いします!」

 

「こちらこそよろしくねーおねーさんに勝てたらハグしてあげる♪」

 

「じゃあ僕に勝てたらハグしてあげるね」

 

 

その言葉の後沈黙。少しだけ軽蔑の眼差しで僕を見ながら背後に浮かぶ宝石から光線が放たれた。

 

 

「あぶねっ!」

 

 

慌てて駆け出し光線を避けながら大きな岩の後ろに身を隠し様子を伺っていた。

 

 

見るとあの宝石はフライシュッツの頭上に浮かび僕の方に向いている。その数は4つ、それぞれが光線を放つ。被弾覚悟で斬り込むか、、、そうだ!

 

 

思い付き転がっている手頃な大きさの石ころを投げるとそれに向かい光線が放たれた。感度は良好。それなら。

 

 

「フライシュッツ!」

 

「なーにー?」

 

 

大声でその名を叫び石ころを右側へと投げるとその方へ光線が放たれた。その瞬間に剣を構えフライシュッツ目掛けて駆け出してゆく。

 

 

石ころに気を取られた宝石が僕に気付く前にフライシュッツに辿り着き剣を振おうとした。

 

 

「じゃあハグしてあげるねー」

 

 

何処からか取り出した銃を僕の頭に向けながらそう言われていた。無念である。

 

 

その後フライシュッツにハグされティルの倍ぐらいありそうなモノに包まれていた。負けたけど悔しくなくむしろ幸せを感じる事ができた。じゃなくて。

 

 

「次は私です!ユウさんの信念を私に見せて下さい!」

 

 

大斧を僕に向けながらそう言うのはエルキュール。それに剣を構え対峙していた。あれだけ大きな斧を持っていれば動きが遅くなるはずだ。そんな事を考えていた。

 

 

「行きます!せいやぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「おぉお!?」

 

 

叫びながら大斧を振り上げ僕に向かい振り下ろした。僕の予想は大幅に外れあんな物を持っているのに軽快に動きそれを軽々と振り回していた。それをなんとか下がり回避し動きを観察する事に。

 

 

勢いよく振り下ろした為か斧が半分ほど地面にめり込んでいた、それを引き抜きすぐさま構え次の攻撃へと移る。その隙を狙えばなんとかなりそうだ。だけどあの一撃が擦りでもしたら大ダメージは免れないだろう。

 

 

そう思い付いた瞬間に身震いを起こした。そんな僕に斧を両手で握りしめたエルキュールが迫る。

 

 

ダンっと足を踏み込み体制を整えて左右上下斜めへと自由自在に斧を振り回しながら僕との距離を詰めてゆく。そうだ!

 

 

右から左へと斧を振るった瞬間にその間合いへと飛び込むとそれを狙い左から斧のスイングが迫る。

 

 

それを躱し後方へ下がりながら僕の目の前を通り過ぎた斧を剣で右へと押しやった。

 

 

「あっ」

 

 

予想外の力にバランスを崩した瞬間を逃さない。一気に踏み込み回りながらの一閃を放とうとした。

 

 

「しゃがんで下さいっ!!」

 

 

そうエルキュールが叫び思わずしゃがみ込むと僕の頭ギリギリを斧が通過してゆき地面を擦りその勢いを止めていた。もししゃがまずにいたら今頃逝っていただろう。

 

 

「ごめんなさい、あの勢いを止められなくて、、、」

 

「うん、ありがとね。もう少しで死ぬところだったよ」

 

「私の意表を突いた見事な戦略でしたよ」

 

 

拳を突き出されそれに拳を合わせていた。こういうのって良いね。

 

 

「次は私です。よろしくお願いします」

 

「お願いね」

 

 

1人だけ仮面を被っている黒髪の人が弓を構えながら前へと出た。弓使い、銃を使うキル姫と同じような認識だけどどうなのだろうか?

 

 

そんな疑問を抱いているとシュンっと耳元を何かが掠めていった。魔弾より早くそして矢の方が見づらい。どうしたものか。

 

 

先程と同じように岩陰に隠れながら様子を伺っていた。チラチラと見ていると弓に矢をセットする隙を狙うしかなさそうだ。

 

 

岩陰から剣先を出すとそこに矢が放たれ鋭い衝撃が手を伝う。すぐに顔を覗かせるともう新しい矢をセットしていた。そこまでの動作に2秒もかかっていないだろう。それに先程より距離を取られている、時間をかければかける程不利になってゆく。それならば。

 

 

すぐに走り出せる体制で剣先を出し一発打たせてからその場から走り出した。

 

 

「その勇気は認めましょう」

 

 

スイハの声と共に矢が僕に迫る。それを斬り払いジグザグに走り狙いを狂わせながら接近してゆく。

 

 

「くっ」

 

 

スイハの手元が狂った瞬間に剣先で地面を掬い上げ土を顔めがけ飛ばし視界を奪い王手を指すために斬り込んでゆく。

 

 

「………っ」

 

 

僕の剣が届かない所で弓を引き絞るスイハが見えた。その顔には仮面が付けられておらず凛とした目線を僕に向けられていた。その姿に諦めて剣を落とし両手をあげる。

 

 

「ごめんね、顔汚しちゃった」

 

「仮面をしていたので構いません。もし仮面をしていなければ負けていたかもしれませんね」

 

「ふむ」

 

 

気が付けばもう夕ご飯の時間のようで最後にミネルヴァと練習をする事に。

 

 

「お願いね」

 

「はい、ユウさんの知を見せて下さい」

 

 

その後剣を構えたのだがミネルヴァは槍を構えず立てたままだった。

 

 

「どうしたの?」

 

「ユウさんは相手が攻撃しそれを見切ってから動いていました。なので攻めてきて下さい」

 

 

槍を立てたまま僕に目線を送っているだけなのにどこにも油断も隙も感じさせないでいた。真正面から斬り込むか、それとも、、、。

 

 

考え悩む僕にただ目線を送るだけのミネルヴァ。相手は槍、グラーシーザと同じく矛先だけではなく尻手にも気を付けなければ。

 

 

ジリジリと近寄りながら策を考えていた。そしてふと気が付いた、ミネルヴァはみんなとの戦いのおさらいをしてくれているのではないかと。

 

 

それならばと一気にミネルヴァへと駆け寄り一閃を繰り出そうとした。

 

 

剣を振おうとしながら後方へ飛び退き右へと横っ飛び。案の定僕が居たところに向かい槍が突き出されていた。

 

 

その槍を剣で押さえ下に下げだ瞬間にその槍に飛び乗る。これで槍は振れなくなるはずだ。

 

 

「はぁぁぁぁっ!!」

 

 

ミネルヴァの気合いと共に矛先に乗っていた僕が宙に浮いた。一見華奢に見えるその体のどこにこんな力を秘めているのか?

 

 

そんな疑問は宙に投げ出された瞬間に消えた。今はこの空中でどう動くかを考えなくては。

 

 

チラリと下を見ると槍を構えたミネルヴァの姿が見え飛んでいる僕に矛先を向けていた。

 

 

「でやっ!」

 

 

僕に突き出された槍に剣先を合わせ軌道を逸らしながら着地をし一気に後方へ飛び退いた。

 

 

「良く今のを躱す事ができましたね」

 

「自分でも驚いてるよっ!」

 

 

駆け出し槍を斬り払い一歩踏み出しながらの一閃を繰り出しそれを後方へ下がり回避された。

 

 

「食らえっ!」

 

 

さらに一歩踏み出し一閃と見せかけ中段へと回し蹴り。それはミネルヴァの腹部を捉えた。

 

 

お腹を押さえ槍を手放したミネルヴァに斬り込もうと踏み出した瞬間に僕の腹部へと槍が刺さった。

 

 

!?!?!?

 

 

ミネルヴァが手で押さえてくれていたおかげで深く刺さらずに済んだのだがすごく疑問が残る。

 

 

「いたたたた、ありがとねミネルヴァ。でも槍は離してたよね?」

 

「このようにテコの原理を利用しました。見てて下さい」

 

 

ミネルヴァが先程の再現をしてくれた。槍を矛先が下がるように岩の上に置き尻手を踏むと矛先が上を向いていた。

 

 

「剣を振るうと見せかけて蹴りを打ち込んだ。そのフェイントをフェイントで返してみました。それに戦わなくても私の事を良く見てましたね?」

 

「うん、右目が髪に隠れているから右側から攻めたりしたんだけどダメだったよ」

 

「今はそれで良いのです。我武者羅ではなく考えて戦える事ができているのでユウさんは強くなれると思いますよ」

 

 

そう笑顔で言ってくれた。因みに右目は髪に隠れているけどその隙間から見えているとの事。残念。

 

 

「それと一つお願いがあるんだけど」

 

「はい、なんでしょうか?」

 

「失礼します」

 

 

そう言ってミネルヴァの右手、右腕を揉むとふにふにと柔らかくとても槍ごと僕を持ち上げる力があるとは思えない。

 

 

「あの、少し恥ずかしいのですが」

 

「あっ、ごめんね、気になってさ」

 

「キル姫と人間では根本的に違うのですよ」

 

「ふむ」

 

 

気が付けばかなり時間が経っておりラグナロクが言うには午後の7時らしく夜道は危ないので泊まっていけと言ってくれた。

 

 

そんな訳で再びクレスとキッチンに立ちお昼のカレーにひと手間を加えてカレーうどんを作りみんなで仲良く頂いていた。

 

 

食べ終わり片付けをしようとしたらしておくからお風呂に入ってこいと言われありがたくお風呂に入る事に。

 

 

身体をしっかりと洗い湯船に浸かりながら今日の事を考えていた。色んな武器を持つキル姫に稽古を付けてもらい前よりも強くなれた気がする。

 

 

「いててててっ、はぁ」

 

 

戦う度にネスに回復魔法をかけてもらっていたのだがそれでも治癒しきれない痛みに襲われていた。だけど前を向こう。僕は立ち止まる訳にはいかないんだ。

 

 

しっかりと湯船に浸かり身体を拭き用意してくれたパジャマを着てリビングへ行くとラグナロクが部屋へと案内してくれた。

 

 

「何もない部屋だけどゆっくりしててね」

 

「何から何までありがとね」

 

 

パタンと扉が閉められた後ベッドに寝転び今日貰った剣を見つめ眺めていた。美しく見える刀身は良く見ると細かい傷が無数に付いておりどれだけ使われていたのかが良くわかる。きっと何度も修羅場をくぐり抜けてきたのだろう。

 

 

「本当に貰って良かったのかな?」

 

 

1人呟き剣を納め眠ろうと布団を被った時に誰かが部屋に入って来た。

 

 

「まだ起きてたの?早く寝ないと疲れがとれないよ」

 

 

目線を向けるとクマさんの絵がプリントされているパジャマを着たラグナロクの姿が。良く見ると髪は水気を帯びており僕の目線を気にする事なく化粧台へと座りドライヤーで髪を乾かし始めた。

 

 

その風に乗りシャンプーの良い匂いが僕の鼻をくすぐる。同じシャンプーなはずなのに何故こうも違うのだろうか?

 

 

しばらくその姿を見ていると手ぐして髪を直しながらベッドのふちに腰掛け僕に声をかけた。

 

 

「ユウはどうして1人のキル姫の為に命をかけるの?」

 

「僕の大事な人だからだよ。理由はそれだけ」

 

「おかしな人ね、人間がキル姫に立ち向かうなんて愚かよ」

 

「そうだね、だけど僕はこの手でティルを奪還したいんだよ」

 

 

じっと僕を真紅の瞳で見つめていた。その瞳から目を逸らさずしっかりと見つめ返すとラグナロクが笑った。

 

 

「あなたみたいな奏官だけなら未来は変わっていた。なんてね」

 

 

そう言うとベッドの壁際へと寝転び深々と布団を被った。

 

 

「ここラグナロクの部屋だったの?なら退くよ」

 

「良いよ、そこに居て」

 

 

そう言われて困惑しながらも布団を被り眠ろうとしていた。だけど何となく緊張してしまい眠れずにいた。

 

 

「どうしてラグナロク達はこんな所に住んでいるの?」

 

 

そう聞くと返事の代わりに安らかな寝息が聞こえてきた。それがおかしくて可愛くて、気付けば僕も眠りに落ちていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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