教会を飛び出した時から迫り来る異族達を蹴散らす二人を見ながら僕は研究所に向かい進んでいた。
「もっと強いと思ってたのになんだか拍子抜けね」
剣に付着した血液を振り払いながらアルマスが呟いていた。
「ですが油断してはいけませんよ」
同じく剣を振りながらリルティルがそう答えていた。
「それにしてもおかしいですね。キル姫の動きを封じた後にこうして異族が現れるなんて」
「確かにそうだね。まるで誰かが指示をしたかのように」
所々に散らばる異族の肉片を見ながら考えるのだが特に何も浮かばずに研究所へとたどり着いていた。
「ありがとね二人共。助かったよ」
「もしユウに何かあったら直ぐに行くわ」
「うん、お願いね」
「アルマス。教会に向かい異族が進軍しています」
「分かったわ。絶・頑張ってきてよね!」
教会へ向かい走る彼女達を見送ってから地下へと続くハシゴを伝い下へと降りて行く。
(…………)
以前来た時と同じように誰かが使っているように灯りが付いている通路を進んで行くとあの時ティルと会った広場へと辿り着いた。そして誰か居る。
「えっと、こんな所に何か用があるのですか?無いのなら帰って貰えませんか?」
鮮やかな茶髪のショートカットにタイトな黒のワンピース。それにロングブーツを履いたキル姫が僕に話しかけてくれていた。ハナ奏官のバルムンクか。
「用が無ければこんな所に来ないよ。通して貰えるかな?」
「なら戦わないといけませんね」
そう言って剣を引き抜き迷いのない目で僕を見定めた。それに応えるように剣を引き抜き構えた。
「僕が勝ったらここを通してもらうよ」
「それはありえません。ドラゴンキラー行きます」
真っ向から向かってくるバルムンクと剣を叩き合わせ睨み合う。少し控えめで目立ちたがらない性格とは真逆の力強く真っ直ぐな剣技に少し驚いていた。
「目立ちたくないって言う割にはかなり派手だね」
「それとこれとは話が別ですから。それに負ける訳には行きませんっ!」
強引に剣を振るい僕を弾くと一歩踏み出し大振りな一閃。
それを後退し避け剣筋を追いかける一閃で押し込むとその勢いで剣を落としてくれた。
「僕の勝ちだよ。ここは通らせてもらうね」
「まだです!やられたらやり返します!」
落とした剣を素早く拾い上げその瞬間に地面を踏み締め勢いの付けた一振り。それをしっかりと受け止めていた。
「どうしたら通してくれるさ」
「私が勝てないって悟るまでです!」
ギリギリと押し合いながら睨み合う。力は五分五分。それならば剣技で打ち勝つ。
押し合う剣をグッと前に押しそれを押し返す為に力を込めた瞬間に後退。「うわっ」と悲鳴と共にバランスを崩した剣を斬り上げ弾き飛ばし首へと剣を向けていた。
「通してもらうね」
そう言って剣を納めるとその場にへたり込んでいた。それを見て背を向け扉を開こうとしていた。
「どうして殺さないのですか!?私が背後を狙うって考えないのですか!?」
「ん、そんな事したらハナ奏官に怒られちゃうよ。それに僕はただここを通りたいだけだからさ」
「ハナ奏官、、、」
何かを思い出そうとしているバルムンクを見ながら煙草に火を付けその扉を開き奥へと進んでゆく。
ここは通路なのだろう。ならこの先に部屋があるのか?
そう思いながら少し狭く薄暗い通路を進もうとすると前方から何かが飛んできて扉に刺さっていた。
これは、矢か。そう気付いた後にさらに追加の矢が僕へ向かい飛んできていた。
弓使い、弓使い。僕の記憶にある弓使いはアバリスとオティヌスだ。トリッキーな動きをするオティヌスに影の薄いアバリス。さて、どうするか。
真っ直ぐな通路の壁に張り付きながら考えていた。そんな時僕の咥えていた煙草が矢に打ち抜かれた。
「あぶねっ」
薄暗い所だから火種が目立ったのか。気をつけなければ。それにしても良く見つけられるものだ。かなり目が良いのだろう。
ん、これなら。
そう思いながらリュックを漁りその中からある物を手にしてニヤリと笑った。
「すいませーん、何名様でいらっしゃいますか?」
そう問うと返事の代わりに二本の矢が扉に刺さった。やはり二人いるのか。
少し考え先程思い付いた策を試すためにリュックを地面へと降ろした。そして。
「お邪魔しまーーっす!!」
そう叫びながら廊下を走り出した。これだけ足音を立てて走れば僕を狙う為に視線を向けているだろう。
そして先程リュックから取り出した懐中電灯を目の高さ辺りで光を灯した。
「うわっ!」
「きゃっ」
その光で目を眩ました隙に駆け寄り二人の持っていた弓を取り上げた。
「僕の勝ちだよ。通らせてもらうね?」
「はーあぁ、負けちゃったかー」
「あの、どうして私が分かるのですか?」
「そりゃーね?二人とも大事な友達だからだよ。はい」
二人に弓を返してリュックを拾いに行く事に。
「あのさ、私達がまた射ってくるって考えないの?」
「そん時はそん時だよ」
剣を納めたままリュックを拾い背負い二人の元へ。
「また手品見せてよ。楽しみにしてるからさ」
「どうしてその事を、、」
「あーっ、思い出せそうで思い出せない、。」
頭を悩ませる二人を見ながらその扉を開き奥へと進んでゆくとどうやらまだ通路なようで慎重に進んでゆくと開けた場所に出た。
「ん?」
その場所に何かが居た気がして立ち止まり目を凝らすのだが何も見えなかった。気のせいだったのかな?
そう思い扉を探そうと歩き出した瞬間に何かが跳ね回るような音が聞こえた。
「うがぁぁぁっ!!ここから先は通さないぞ!!!」
何処かから雄叫びが聞こえた次の瞬間には壁を蹴り僕へと斧を振るうシユウの姿が見えた。
「あぶねっ!!」
すぐさまその場から離れると僕が居た場所に斧が振り下ろされ床を砕いていた。それを見ながら剣を構えた。
「君はショウの所にいたシユウだね。通してもらえるかな?」
「ダメだ、シユウはここは誰も通すなと言われている!だからぜったいに通さないぞ!」
「おやつあげるからお願い」
「…………ダメだ!ここは通さないぞ!!」
少しの沈黙の後にシユウが迫る。小さな身体と運動能力を活かし室内を縦横無尽に飛び跳ね斧を振り回しながら僕へと向かってくる。
一見ただ振り回しているだけに見えるが僕が隙を狙い剣を振るえばそれに反応し身を翻していた。高い戦闘能力に野生の本能を宿したシユウここにありだ。
それに身長が低く攻撃しづらい。さて、どうしたものか。
「ん」
一つの策を思い付きシユウを見ながら移動しリュックの中を漁りとっておきの物を取り出した。
「じゃーん、リルティル特製のマーラーカオだよ」
「あっ!それはシユウの大好物だ!よこせ!」
予想通り目を輝かせて僕の持つマーラーカオを見てくれていた。昨日リルティルに作っておいてもらって良かった。
「ここを通してくれたらあげるよ。通してくれないのなら僕が食べるよ」
「うがぁぁ、、、お腹すいたぞ、、」
「どうする?」
「分かった。ここを通すからそのマーラーカオをシユウによこせ」
「ん。はい、どうぞ」
斧を置いたシユウにマーラーカオを渡すとそれを美味しそうに食べていた。
「このマーラーカオ、、うまいっ!」
「そーなの?僕も食べてみよっかな」
「ダメだ、それもシユウによこせ!」
「あっ」
マーラーカオを口に運ぼうとしたところを横取りされ口へと運んでいた。
「もう食い物はないのか?」
「もうないよ、後はショウに食べさせてもらってよ」
「ショウ?なんだか聞いたことのある名前だ?」
「ゆっくり思い出しなよ。僕行くね」
何かを思い出そうとしているシユウの頭を撫で立ち上がり次の扉の前へと立った。
この先にはブラックキラーズが居るはずだ。覚悟を決めて、いざ。