朝いつもの時間に目を覚まし隣で眠るティルを見るとまだ夢の中のようで。
身体を伸ばしティルが起きる前に朝の煙草を吸いにベランダへと出てゆき景色を眺めながら煙を吐き出していた。そんな時。
「おはようございます、、。」
「おはよ」
乱れたままの服装と髪の毛でベランダへと出てきたティル。
「シャワー浴びて来なよ」
「ふぁぃ、、」
あくび混じりに返事をしながらお風呂場へと消えていった。それを見届けてから煙草を灰皿へと押し込み朝食を作ろうと冷蔵庫を開けたのだが何もなく諦める事に。
しばらく椅子に座りぼーっとしているとティルが戻ってきた。それと交代で僕もシャワーを浴びれば準備完了だ。
「行こっか」
「はい♪」
帽子を深く被りサングラスをかけ僕達は教会へと行き千年王国へと転送されてゆく。
「何も変わってないね」
「そうですね?」
いつもと同じ外見のお城を見ながら城へと続く橋を渡っていると城門にギルの姿が見えた。
「やっと来たね、こっちだぜ」
ギルに手招かれ普段の入口とは違う方へと案内されていた。
「兄さんの着付けは俺がやるからグリードさんは姫様にしてもらってくれよな」
「グリードこっちです♪」
そんな訳で分かれて着付けを行う事に。普段の服から着慣れない真っ白なタキシードへと着替えていた。
「うへ、こうゆう服は慣れないよ」
「気持ちは分かるけど似合ってるぜ」
「そうかな?」
姿見鏡で自分の姿を見ているとネクタイを渡されていた。
「締めれる?」
「お願いします」
ギルにネクタイを締めてもらい余計に息苦しさが増してしまった。最後に胸ポケットへハンカチを詰め込み僕の着付けは終わった。
「よし、こっちだぜ」
再びギルに案内され廊下を歩きいつものリビングの前の扉の前に連れて来られていた。
「合図があったらオベロン様の所まで行ってくれよな」
「うん、分かったよ」
しばらく扉の前で待っていると反対からドアがノックされ普段と変わらない感じにその扉を開けた。
【皆様、新郎の登場です!この城に響き渡る程の拍手をお願いします!】
「あっ、、、」
間抜けな顔でドアを開けてしまった僕をみんなが拍手で出迎えてくれた。その瞬間に恥ずかしさと嬉しさが同時に押し寄せたような気持ちを噛み締めながら真っ直ぐに引かれている絨毯の上を歩いてゆきその先で待つオベロン様の元へ。
オベロン様を見ると深く頷いてくれていた。
【続きまして麗しき新婦の登場です。皆様!この大陸を揺るがす程の拍手の喝采をお願いします!】
司会の声の後にその扉がゆっくりと開かれリルティルに手を引かれた新婦が入ってきた。
その光景に僕の意識を全て持って行かれた。
割れる様な拍手の音も新婦の手を引くリルティルの姿も全てが無いように、僕はベールを被り俯きながら歩くその姿に呼吸すら忘れひたすらに魅入っていた。
その新婦はゆっくりと確実に僕に向かい歩いて来てくれている。そして長い様で一瞬だった様な時を経て僕の正面へとやってきた。
そのベールをあげようと手を伸ばそうとした時に司会の声が響いた。
【これより誓いの指輪の交換を行います。リングガールの登場です!】
「はぁぁぁぁい♪誓いの指輪を運ぶのはこのミョルニルちゃんだよ〜〜♪」
ヴァージンロードの上を楽しそうに走るミョルニルから指輪を受け取り新婦の左手をとりその薬指へと光り輝く指輪をゆっくりとはめてゆく。
「次は私の番ですね」
新婦が僕の左手をとり薬指へと光り輝く指輪をゆっくりと付けてくれた。
お互いの薬指に指輪がキラリと輝く。
【さぁ新郎によるベールアップです!瞬きをする時間さえ惜しいこの瞬間。刮目して下さい!】
ゆっくりと俯く新婦にかけられているベールを巡りあげるとティルが微笑みながら僕を見てくれた。
この時のティルの顔を忘れる事はできないだろう。ほんのりと顔を赤らめ嬉しそうに恥ずかしそうに僕を見る顔を。
少しの沈黙の後オベロン様の声が会場へと響いた。
「新郎に問おう。人間がキル姫と結ばれる事は決して安楽な事ではないだろう。だが、幾多の困難が訪れようと新婦を生涯愛するとここに誓えるか」
「はい、誓います」
「ならば新婦にも問おう。共に過ごす刻は安寧ばかりではないだろう。だが、幾多の試練があろうと新郎を生涯愛するとここに誓えるか」
「はい、誓います」
「共に生涯愛し合う。誓いの口付けを」
しっかりとティルを見据えると同じ様にティルが僕を見てくれた。そして顔を、唇を近づけてゆく。
・・・・・・
ほんの数秒だった。今まで何度もティルとキスはしてきた。だけどこのキスは僕の忘れられない記憶の一つとなってくれた。
「二人はここに愛を誓った。私達はそれを見届けた。新たな門出を迎えた二人に盛大な拍手を!」
ゆっくりと唇を離すとティルの目から一筋の涙が。それを見ている僕の目にも何かが伝うのを感じていた。
【これより新郎新婦の退場です。皆様フラワーシャワーで祝福をお願いいたします】
鳴り止まぬ拍手の間をティルの手を引きながら通り抜けてゆく。花びらまみれになりながら。
リルティルとギルが開けてくれていたその扉から出た後も鳴り止まぬ拍手が聞こえていた。
「グリード、とても綺麗ですよ♪」
「ありがとうございます♪」
「次はパーティドレスを用意してありますからね♪」
再びリルティルに手を引かれ更衣室へと入っていくのを見届けていた。
「僕は着替えるの?」
「兄さんはこのままで良いぜ?それよりあんな綺麗な人嫁にできて羨ましいよ」
「そのうちギルにもできると思うよ?煙草吸ってきて良い?」
「構わないけど早く戻って来てくれよな」
「ん、分かってるよ」
少し昂っていた気持ちを落ち着ける為に城の外へ行き煙草を吸う事に。
キンッとライターの蓋を開け火を灯し咥えていた煙草に火を付け煙を吐き出していた。
(………………)
やっと帰ってきてくれたティルに最高の形で愛を誓う事ができた。今余命宣告されたとしても笑って聞けるぐらい僕は幸せだった。
いつになく煙草が美味い。
晴れ渡る蒼天を見ながらついつい二本目の煙草に火を付けていた。
【…………………………】
ん、なんか聞こえるぞ?耳を澄ませて聞く事に。
【新郎さん、早く会場へとお越しください】
「………やべっ!!」
煙草を灰皿へと押し付け会場へと向かい走ってゆくきその扉を開けようとしたのだが焦っていた為勢い良く扉が開き皆の注目を集めてしまった。
「…………新郎は遅れて登場する」
…………………………………………
咄嗟に思い付いた言葉を口にするも見事に滑り気不味い空気の中ティルの元へと歩いてゆく。
「どこに行っていたのですか?」
「幸せを噛み締めに行ってました」
「へぇ、幸せを噛み締めに行くと煙草の匂いがするんですね」
「はい、ごめんなさい」
ティルに不穏な目を向けられこの空気を変えてもらう為に司会、進行役のゲバルト伯爵に視線を送るのだが仮面越しでもニヤニヤしているのが分かる。
【新郎も来たところで乾杯をいたしましょう。皆様、お手元のグラスを掲げて下さい】
その言葉を合図にみんながグラスを掲げてゆく。
【愛を誓い合った二人へ、盛大に、オッティモ!!】
「「オッティモ〜〜!!」」
グラスに満たされたお酒を一口。うん、美味しい。
【これより新郎から新婦への愛の言葉をお願いします。ステージの上へどうぞ】
「えっ、聞いてないよ」
「楽しみにしていますからね♪」
ティルに背中を押されステージの上へと上がり置かれているマイクを握りしめ言葉を考えていた。
【あ、あ、聞こえますか?】
【初めてティルと会った時はツンツンしてる人だな、としか思いませんでした。だけど二人で色んな事をして、何度も助けられ、長く時を過ごすうちに心からティルに惹かれていきました。ですが奏官とキル姫、その関係に何度も悩んだ事もありました。だけどそんな事些細な事だと気が付きこうしてティルの横に立つ決意が出来ました。言葉では伝えきれない程僕はティルの事が大好きです。ずっと、これからも」
マイクを置くとみんなからの拍手をもらう事ができた。
【次は新婦より新郎へ愛の言葉をお願いします】
「はい」
【私が初めてマスターと出会った時は頼りない人。だとしか思っていませんでした。ですが共に過ごしているうちに私の考えは間違っていた事に気づきいつの間にか私の心は奪われていました。人間とキル姫、種族の差はありますけどこれから精一杯マスターの事を愛していきたいと思います】
マイクを置き頭を下げると鳴り止まぬ拍手が送られていた。
【これより四カ国の食材を使ったビュッフェを【あっ、ちょっと良い?】
ゲパルトの声を遮り手をあげていた。
【はい、どうぞ】
【みんなに僕の感謝の気持ちを伝えるね】
【今こうしてティルに会えたのはここにいるみんなのおかげです。僕の一人だけだったら僕はここに居ませんでした。本当にみんなにはなんてお礼を言えばいいか分からないけど言わせて下さい。本当にありがとうございました。これからも未熟な僕をどうかよろしくお願いします】
そう言って頭を下げると拍手をもらう事ができた。
【おっほん。これより四カ国の食材を使ったビュッフェを開始します】
その言葉を合図にパーティが始まった。
「とりあえずみんなに挨拶に行こっか」
「そうですね♪」
そんな訳でみんなが居る席をひとつづつ尋ねてゆく事に。まずはリルティル達が居る席へ。
「オベロン様、リルティル、アルマス、ティニ、ギル。本当にありがとうございました」
「構いませんよ。ねっ♪」
「そうよ、私達はしたい事をしただけなんだから」
「そう言うなら俺に今度女の子紹介してくれよな」
「ギル、それは今言う事ではありません」
そう言いながらジト目でギルを見るティニが可愛かった。
「オベロン様は結婚式やった事あるんですか?言葉が上手でした♪」
「うむ、儂も昔は………」
話始めたオベロン様を見てみんなが次に行けとジェスチャーをしてくれたので次の席へ。
「父さん、母さん来てくれたんだね」
その近くにある僕の両親の席へと向かっていた。
「ユウ、、、立派になりましたね」
「たまには二人で家に帰って来いよ」
「おけ、そういえば弟は?」
「仕事が忙しくて来れなかったのですよ」
「ふむ。落ち着いたら家に帰るよ」
「その時お話聞かせてね」
「はいよ」
「ありがとうございました」
そう言って二人で頭を下げてその隣のショウとハナ奏官、バルムンクとシユウの居る席へ。
「二人共おめでとう!」
「お前本当にティルフィングと結婚しちまうとはな!」
「有言実行だよ」
「あの、ユウさん、、こないだはごめんなさい」
「良いよ良いよ、気にすんな」
申し訳なさそうなバルムンクにそう言うと微笑んでくれた。
「シユウ、お前も何か言ってやれよ」
「うが?シユウは腹ペコだ、、、」
「シユウは相変わらずですね♪」
そんな感じで次の席へ。おじさんとヴァナルガンド、アクスレピオスにアバリス、オティヌスが居る席へ。
「遠方よりありがとうございます」
「何、後でみんなで千年王国を観光してゆくぞ」
笑うおじさんにみんなが笑い合っていた。
「みんなお元気そうで良かったです♪」
「あの、私もドレスを着れば存在感でますかね…?」
そう尋ねるアバリスに返答に困ってしまっていた。
次は神令されたエンシェント達の元へ。特にお礼を言いたかったネスに声をかけていた。
「みんなありがとね。ネスは今度ご飯行こうよ」
「結婚式でナンパですか?怒られてしまいなさい!」
ネスにそう言われて横から物凄く邪悪な気配を感じ冷や汗がたれてゆく。
「う、う、うん。そ。そうだね、、、」
「後で覚えていて下さいね?」
「・・・はい」
ティルにそう言われて項垂れる僕をみんなが笑っていた。
次は神令されていない方のエンシェント達の元へ。
「二人共おめでとう。あなた達の形は大陸中の奏官、キル姫の希望となるわ」
「そうなの?」
「キル姫と生涯を共にしようとする奏官も多いからね。いたたたたたたっ!!!」
話の途中でコマンドのラグナロクに耳を引っ張られ悲鳴を上げていた。
「それで、あなた達は大陸の異変に気が付かなかったの?その理由を教えて」
ギロリと睨まれアタフタとするラグラロクが可愛かった。
次はブラックキラーズの元へ。
「今日は来てくれてありがとうね」
そう言いながら見渡すと冷たい目線が僕へと送られてきていた。
「えぇっと?」
「乙女の敵は早く何処かに行ってください」
「僕だけじゃなくてエンヴィーにもハレンチな事を言ったみたいだね、軽蔑するよ」
「だから誤解だって!誰かなんか言ってよ!」
「変態は口を慎んで下さい」
ラストにそう言われ項垂れる僕を見てみんなが笑っていた。
「この話も後でゆっくりと聞かせてもらいますからね?」
「…………はいっ」
次はハルモニアの席へ。僕を見るとティファレトが立ち上がって僕を見てくれた。
「お二人共ご結婚おめでとうございます♪ハルモニアを代表して私が挨拶をさせてもらいますね♪」
「ありがとうございます♪」
「本当にありがとね」
「二人の幸せがいつまでも続く様神に祈りを捧げます」
お祈りをしてもらい次はトレイセーマの席へ。
「来てくれてありがとね」
「………私は知りたい、その強さの秘密を」
立ち上がったカシウスが僕の瞳を見ていた。
「あの、少し距離が近すぎやしませんか?」
二人の間にティルが割り込みカシウスを押していた。それを見て乾いた笑い声が。
「いつでもトレイセーマに遊びに来てくださいね、それと拙者ともお手合わせをお願いしま、、致す」
「うん、そのうちに遊びに行くね」
かみかみなムラマサに萌えながら次はケイオスリオンの席へ。
「みんな来てくれてありがとね」
「ユウさんおめでとうございまっす♪グリードさんもドレスが似合ってて素敵ですよ♪」
「ありがとうございます♪アスカロンもそのドレス似合ってますよ♪」
楽しそうな二人を見てから席を見ると不貞腐れたフェイルノートが。
「どうしたの?」
「このパーティには余興が必要ね。総武会のビデオでも流そうかしら」
邪悪な笑みを浮かべるフェイルノートにそれだけはやめてくれと頭を下げると満足そうな顔をしていた。
「まっ、今は二人の幸せを祝福してあげるわ」
「うん、ありがとね」
そして最後にディスラプターズの元へ。
「二人共おめでとうっ♪すっごく似合ってるよ♪」
満天の笑顔でそう言ってくれるカリスにお礼を言っていた。
「みんなありがとね。本当に助かったよ」
「まぁヘレナが居ればあれぐらいの異族朝飯前だぞくふっ」
「そうね、ヘレナ頑張ってたからね」
「頑張ったからご褒美でも貰えると嬉しいぞ」
意地悪な顔で僕を見ながら言われれ返事に困ってしまっていた。
「レーヴァもありがとうございました」
「別に、久しぶりに天上世界に行けて楽しかったし」
グラスを片手に顔を真っ赤にしながらそう言っていた。
その席を後にしてみんなへの挨拶を済ませ僕達の席へと戻ってきていた。
「こうやって畏まってみんなに挨拶に行くとつかれるね」
「普段とそんなに変わりませんよ?」
「そうかな?」
そんな事を話しているとみんながお酒を持って僕達の席へと来てくれていた。
「はい、飲んで」
「どうぞ飲んで下さいね」
「注いであげますね♪」
グラスに注がれたお酒を飲み干すとすぐにお酒を注いでもらいそれを飲み干すと、、、。
「おやすみ」
一瞬でアルコールの許容を超えた僕はテーブルに屈服し直ぐに眠りに落ちていた。
「あれだけで寝るなんて随分と貧弱ね」
「なら私と飲み比べますか?」
「良いわね、絶・負けないんだから!」
「私も参加して良いですか?」
突如始まった飲み比べにみんなが参加してゆきその場は地獄絵図へと変わって行く。
「飲め飲めー♪」
会場の熱に浮かされ酒を飲み至るところから楽しげな声と笑い声。嘔吐する音が。
いつまでも続くと思われたその宴も一人、また一人と眠りに落ちてゆく。