アルマスも無事に千年王国へ戻ってきてしばらくが経った。聞くと転送中に暁美ほむらって子とぶつかり三滝原市へと飛ばされ魔女と戦ったらしくその話を自慢げに語りながらグラスを傾ける日々が続いていた。
因みにその三滝原市は転送装置にオベロン様の魔力を注ぐといつでも行けるらしい。便利だね。
そんな訳で僕とティルは今食材の買い出しでティルヘルムの城下町を歩いていた。
「今日は何が食べたい?当番僕だからティルが食べたいの作るよ」
「んーそうですね、すき焼きが食べたいです♪」
そう言われたのでお肉屋と八百屋を回る事に。がやがやと活気のある街をふらふらと歩いてゆくと喧騒に紛れ赤ちゃんの泣き声が。
抱っこ紐で赤ちゃんを抱く母親が泣く我が子をあやしながら人混みから離れてゆく。その姿を二人で見送っていた。
「…………………」チラッ
「…………」
見送った後ティルから無言の圧力をかける目線を受けていた。以前は毎晩の様にしていた妊活も今では落ち着き気が向いた時にするぐらいになっていたのだが再熱の兆しである。
「私もああやって子をあやす様になりたいです」
ため息混じりの声に返す言葉が思い付かず困惑しながらもティルの頭を撫でていた。
実際の所未来には僕達の子供であるユリが存在しているので子を宿す事には間違いは無いのだがそれはいつになるかは分からない。子は授かり物と考えているから僕は焦ってはいないのだけど。
「さっ、あと少し食材を買って帰ろっか」
「そうですね」
何処となく不機嫌を感じるティルの手を取り足速に買い物を済ませ城へと帰るのであった。
夕ご飯を食べ終えみんなとの団欒が終わった後シャワーを浴びに部屋へと戻ったティル。僕はミネルヴァと食器の後片付けをしていた。
「ねぇミネルヴァ」
「はい、どうしましたか?」
「人とキル姫の間に子供ってどうやったらできるのかな?」
ずっと疑問に思っていた事を聞いてみる事に。博識であるミネルヴァなら何か知っていると思ったからもあるのだが。
「私も気になって少し調べた事があるのですがどの文献を読んでも人間とキル姫の間に子を授かったという事は書いてありませんでした」
「ふむ、」
「ですが私の知識は本を読む事により得たものです。その様な知識ならエキスパートが居ますよ」
食器を拭き終わりリビングへ戻ると紙に何かを書き僕に渡してくれた。
「これは?」
「紹介状です。偏屈者ですがわたしの紹介なら良い案をくれると思いますよ」
「ふむ。」
お礼を言いその紙を見ながら自室へと戻ってゆく。場所はケイリオスリオンで研究者の様だが、そう言われると一人思い当たる人が。
「・・・・・」
嫌な予感を振り切り紹介状をポケットにしまい部屋へと入ってゆく。
「ん、やっと戻って来たのですね、、、」
「遅くなっちゃったね、明日ちょっと出かけてくるよ」
寝かかっていたティルの横に寝転がり頭を撫でてあげるとやがて寝息を立て始めていた。それを見て僕も眠りにつく事に。
次の日の朝、朝食を食べた後僕はケイリオスリオンに足を運んでいた。紹介状に書かれた住所と電柱に記された住所と見比べながら探していると以前アルマスと来た研究所へと辿り着いていたのだが。
(…………)
どう見てもパラケルススの研究所である。嫌な予感しかしないのだがミネルヴァを信じてドアをノックする事に。
「誰だ」
「僕です、ユウです」
返事を貰ってから研究所へと入るといつもの服では無く白衣を着たパラケルススの姿が。
「なんだお前か。また中にアルマスが入っているのでは無いのか?」
「正真正銘の僕だよ。パラケルススに相談したい事があってさ」
部屋を見渡し見つけた椅子に腰掛け紹介状をパラケルススへと渡すとさらりと目を通し口角を上げながら僕を見た。
「成る程、人間とキル姫の間に子を作りたいのか。私としても興味深い話だ、、、」
ツカツカと机の間を顎に手を当てながら歩き回り僕の前へと。
「よろしい。協力しよう」
「うん、助かるよ」
「ただし、これは未知の領域。私にも成功させるという保証はできない」
悩ましい顔をしている割に目は爛々と輝いていた。怖いのだが?
「第一前提としてキル姫は生殖を必要としない。それは何故だか分かるか?」
「???」
いきなり話の核心に触れられても返答に困る。
「まず生物が子孫を残すという事は次の世代に遺伝子を残すという事なのだよ、だがキル姫は生物とは違い死から程遠い生き物なのだ。故に生殖機能を失ったと言っても過言では無い」
「ふむふむ」
「死ぬ事が無ければ子孫を残す必要がないという事だ」
「何そのカーズ」
その理論が正しいのならティルは子を産む事はないという事だ。僕自身の遺伝子が残る事よりもティルがこの先ずっとこの事を悩むと考えると辛い気持ちになる。それでも娘が居るという事は何かしらの方法で妊娠したのだろう。
「なんとかならないの?」
「うむむ、」
難しい顔をしながら悩んでいるパラケルスス。ヤバいキル姫だと思っていたのだが結構良いやつなのかもしれない。
「スーパームーン」
「?」
「スーパームーンとは地球と月と太陽が一直線に並び月が最も地球に接近した状態の事だ。それがどういう事か分かるか?」
「んー潮が良く動くから魚が釣れる?」
「なぜ潮が動くか、それは月が地球に与える引力の力だ。満潮干潮と言えばピンとくるだろ」
「うん、釣りをする人なら大体の人が知っていると思うよ」
「海だけでは無く人間の出産も月の引力の影響を受けると言われている」
「それで?どういう事なの?」
「生殖機能を失ったキル姫も最大限に高まった月の引力の影響を受ければ生殖機能を取り戻すかも知れん。これは仮説の段階だが」
納得できた様な、できない様な?疑問は残るが鼻息荒く力説するパラケルススを見ていると正しい様に思えてしまう。
「それよりだ」
「はい?」
「お前はお前自身に問題があるのは考えないのか?」
「つまり?」
「お前の男性器と精液を調べてやる。脱げ」
「ふぁっ!?」
「安心しろ、これは医療だ。恥ずかしがる事では無いぞ」
椅子に座ったままビビり倒す僕を尻目に手にビニール手袋をはめながら迫る。逃げようとしたのだがとっ捕まり机の上寝かされていた。
「マジで?」
「マジだ」
慣れた手付きでベルトを外しフォックを外しズボンのファスナーを下ろすとズボンを脱がしパンツまで下げられていた。以前ケイオスリオンの闘技場で素っ裸になった僕だがそれとは訳が違う。かなりの羞恥を感じ手で股間を隠していた。
「その手を退けろ」
「恥ずかしいんだけど」
「良いから早くしろ」
ギロリと睨まれ諦めて隠していた手を退けていた。
「おい、いつまで萎えさせているのだ。早く立たせろ」
「あの、せめて雰囲気を下さい」
「却下だ。膣口から子宮までは7〜10センチと言われている、それに届かない様な粗末な物であれば論外だ」
無表情に、何処か愉快に萎えた肉棒を弄ばれ、それでも勃ってしまうのが悲しい男性の性。勃たせた物に差金を当て長さを測られていた。
「うむ、長さは17センチで問題は無し。次は精子だ。おい、射精しろ」
「いや、無理っす」
「ふざけるな、私が協力してやる気持ちがあるうちに射精しろ」
「そんな事言われましても、、、」
「ちっ」
戸惑う僕に痺れを切らした様で舌打ちをしながらゴム手袋をはめた手でモノを扱かれていた。
(……………)
勃つ事は勃っているのだがまるで興奮しないシチュエーションに射精する兆しすら見せずだんだんと気不味くなってきた。
「仕方ない、少し汚いが我慢しろ」
そう言うと唾液を肉棒へ垂らし再び扱きだした。唾液で動きが滑らかとなり絶妙な力加減も加わり呆気なくシャーレに向かい吐精をさせられていた。
「ふむ、見た限り量は問題無さそうだ。詳しく調べるから煙草でも吸って待っていろ」
「、、、、。はいっ」
射精後の脱力感に苛まれながらパンツとズボンを履きフラフラと外へ。眩しい日差しを浴びながら煙草に火を付けていた。
(はぁ、、、)
ティルとした時よりも何倍もの脱力感に満ちていた。この気持ちを何と例えれば良いのか?その表現力がないのがここに悔やまれる。
ため息と共に煙を吐き出しているとドアが開きパラケルススが顔を出した。
「まだ喫煙をしているのか。結果が出た、早く戻れ」
まだ三口も吸っていない煙草を灰皿へと押し込み再び研究所内へ。
「結果はここにまとめてあるがまずは自分の目で見てみろ」
そう言いながら指差す方を見ると顕微鏡が。それを覗いてみる事に。
(うわぁ、、、)
覗いた先にはうじゃうじゃと泳ぐおたまじゃくしの様な生物の姿が。こういう物を見る事には抵抗はないのだが自分から出た物だとなんとも言えない気持ちになる。
「結論から言うとお前の生殖機能に問題は無い」
「はい、あざした。それとそのスーパームーンはいつくるの?」
「一週間後だ。それを逃せば次はいつになるかは分からん」
「ふむ」
壁にかけられているカレンダーに目を向けると来週の日曜日がスーパームーンの様だ。
「私からは以上だ。それとこれをお前にやろう」
「これは?」
そう言って渡された錠剤をしげしげと見ていた。
「スッポン、マムシの粉末に亜鉛とマカを混ぜた物だ。これを今日から一週間飲み続けろ、それと適度な運動もするのだぞ。それと一週間後に備えそれまで絶対に射精をするな」
「それはどうしてなの?」
「精子のコンディションを最適にする為だ」
「分かったよ、ありがとね」
込みお礼を言ってティルヘルムへと帰る事に。その頃。
「ミネルヴァ、相談があるのですが」
「はい、どうしましたか?」
悩んでいる事を話すと紙に何かを書き私に渡してくれた。
「あの、これは?」
「紹介状です、彼女ならその悩みを解決してくれると思いますよ」
読んでみるとケイオスリオンに住む研究者の様だ。思い当たる人が一人浮かんだがこの勘は当たっているだろう。
「分かりました。ありがとうございます」
「いえ、グリードさんの役に立てれば嬉しいです」
その言葉を聞きお礼を言った後外へと駆け出し指笛を吹くと咆哮と共に翼をはためかせる音が聞こえ走る私の横へと並んだ。
「お願いします」
さっと飛び乗り手綱を引きケイオスリオンを目指し飛行してゆく。
コンコンっとドアをノックし返事を貰ってから研究所へと入ってゆく。
「こんにちわパラケルスス」
「次はお前か、大体要件は検討がつくが」
ギロリと私を睨むが紹介状を渡すと椅子へと座り話を聞いてくれる様で。
「分かった、お前が納得いくまで調べてやろう。その前にだ」
「?」
「お前に取り込まれている強欲の大罪に付いてまず調べさせて貰おうか」
そういえば過去にそんな約束をした気がする。ここは機嫌を損ねない為にも素直に従う事に。
「分かりました。それで、どの様な事をするのでしょうか?」
「まずは血液検査からだ。安心しろ、使い回しなどでは無いからな」
私の右手に付けられているアームカバーを慣れた手つきで外し濡れた布で肩を拭くと鋭い痛みが。目線を向けると注射器が腕に差し込まれていた。心臓の鼓動に合わせ容器に入ってゆく血液を見ると何とも言えない気持ちとなる。
「これぐらいで良いだろう。患部を押さえていろ」
容器に入った血液を何かの装置に注ぎモニターを睨んでいた。一体何を調べているのだろうか?
「何を調べているのですか?」
「キラーズに与える影響だよ、霊装支配とどちらがキラーズに影響を与えるのか」
霊装支配はキル姫の魂に影響を及ぼし変化を与えるが大罪は身体自体に影響を与える様だ。しばらく待っていると機械から検査完了の音が聞こえ結果が印刷された紙が。
「おぉ、霊装支配よりもキラーズに強く結び付いている!成る程、、これは興味深い」
「…………」
興奮気味にデータを読んでいる姿を冷ややかな目で見ていた。
「ふむ、お前はただのキル姫では無いな?」
「はい?」
「私のデータと見比べたのだが明らかに違う点がいくつかある。少し待っていろ」
本棚から本を取り出しパラパラとページを開き何かを探している。その姿に少し不安を感じてしまう。
「ふむ。お前は、いや、ティルフィングというキル姫は女神イレーネと人間であるエルライトとの間にできた子か。それになんらかの方法でキラーズが与えられキル姫となった。思い当たる点はあるか?」
「いえ、何も」
「これを見たまえ」
そう言われ見せられた紙を読んでみるのだがグラフや数字が記入されており一見で解読するのは難しい。
「この値を見比べてみると一目瞭然、お前は人間に最も近いキル姫の様だ。これなら妊娠は可能なのかもしれん」
私自身の事はよく分からないがその様に検査の結果が出たのならそうなのだろう。
「一週間後にスーパームーンが来る。その時に性行為を行えば妊娠は可能性であろう」
「分かりました。ありがとうございます」
「うむ、さっきユウが来ていてあいつも検査をしたのだが問題は無かった。それと一週間の間あいつを常に発情させておけ」
「それはどの様な意味があってですか」
「そうする事により男性ホルモンが活発となりより多くの精子を作るだろう。ただし、絶対に射精させてはならんぞ」
「………分かりました。失礼します」
「まて。これを持っていけ」
そう言われ振り返ると二粒の錠剤を手渡された。
「これは?」
「俗に言う精力剤だこれは人間に効く様に作られているから一週間後に飲ませると良い」
「あの、彼はキラーズを宿しているのですが」
「なに、ふむ、なら少し待て」
そう言って装置を操作するとしばらくして新しい錠剤を持ってきてくれた。
「妊娠したのなら真っ先に私の所に来るのだぞ」
「必ず。ありがとうございました」
頭を下げ研究所を出て大きく伸びを一つ。彼もこうして妊活に協力してくれていると思うと嬉しい気持ちとなる。
指笛を吹き足取り軽く竜に飛び乗ると夕焼けが沈むティルヘルム目指し空高く舞い上がってゆく。
私が城に辿り着きリビングへと入るとまだ彼の姿は無くその代わりに夕食を食べる為に皆が集まっていた。
「ありがとうございましたミネルヴァ。良い案をもらう事ができました」
「それは良かったです」
「それと皆に一つお願いがあるのですが」
「?」
頭にハテナを浮かべる皆に事情を説明しお願いを伝えると快く承諾してくれた。
「ありがとうございます。この御恩は必ず」
深々と頭を下げると彼が帰ってきた。
「ただいま。ご飯作るの手伝うよ」
城へと戻りリビングのドアを開け挨拶をすると全員が僕を見て薄ら笑いを浮かべた気がする。まぁ良いんだけどさ。
「ご飯はもうできてるよ。じゃあ運ぶのを手伝って貰おっかな」
クレスに言われみんなで配膳を手伝い楽しい夕ご飯となった。
今日の夜が開ければ地獄とも天国ともとれる一週間が始まる。これは中編に持ち越されるのだが。
〜おまけ〜
ふとパラケルススに貰った最初の錠剤の効果が気になりキラーズを宿していない男性、つまりギルに飲ませてみる事に。
ウコンバサラと隣同士で楽しげに夕食を食べる。その反対側で錠剤を指に挟みタイミングを狙う。
「それでさー」
何かを話そうと口を開けた瞬間に指に挟んでいた錠剤を弾き飛ばす。
「んぐ」
「どうしたの?」
「いや、なんか口に入った気がしたんだけど」
「気のせいではありませんか?それかセロリの噛み玉りか」
「かな?それでさ」
対して気にも止めず話を始め。しばらくし自室に戻る様で立ち上がった。
「ギル君、流石にみんなの前でそんなんにしているのは、その、恥ずかしいよ、、、」
「えっ?ってえぇぇぇ!?」
恥ずかしそうに下を指差しそれにつられギルの股間を見るとズボンが膨らんでいた。
「むぅ、分かった。私が勃たなくなるまで抜いてあげるよ」
ウコンバサラに手を引かれリビングを出てゆく二人を見送っていた。
「ギルの奴どうしたんだろ?」
「それだけ元気なんですよ♪」
不思議そうな顔をする彼に気が付かれない様に背を向けニヤけた顔を隠し笑いが収まるのを待っていた。