いつもの時間に目を覚まして寝転がったまま横を見ると僕に背を向け眠るティルの姿が。
いつの間に帰ってきたのだろう?そんな疑問を思いながら起こさないように頭の下に左手を通し右手を上から通し抱きしめていた。
寝ているためかいつもより高い体温を感じているとムラムラしてしまうのが男の性。まだ寝ている事を良い事に乳房をもみしだきながら下半身を擦り付けていたのだがいつのまにか眠っていたようで。
その後目を覚ましたアロンダイトの叫び声とポカポカと僕を叩く痛みで目を覚ますのだけど。
「不義ですっ!!絶対に圧倒的に不義ですっ!!」
「ごめんって!」
「なぜ私に抱きついていたのですか!おかしいとは思わなかったのですか!?」
「ティルと間違えちゃってさ。いつからアロンダイトはこの部屋に居るの?」
「それはその、一晩(看病する為に)共にしたのですよ。覚えてないのですか?」
「!?」
「何を驚いた顔をしているのですか?私がしたくてした事なので驚かないで下さい」
少しだけ戸惑いながら言われたのだが僕は気が気では無かった。こんな事がティルに知られたらっていうのもあるのだけも僕自身が間違いを犯してしまったという罪の意識が重くのしかかる。
「ごめん。死ぬね」
素早くベッドから飛び降り七元を鞘から抜き出し柄を壁に当て首を切る為に頭を仰け反らせた。
その後刃が切り裂く寸前にアロンダイトに止められて昨日の出来事を泣きそうな顔で説明されて納得するのであった。
「つまり僕はアロンダイトに何もしていないんだよね?」
「何度もそう言っています。それに手を出されたとしたら私は絶対に拒否いたします」
「そうだよね。じゃあお詫びに朝ごはん作るから食べていってよ」
「分かりました」
そんな感じで朝食を作りに行こうとパジャマから普段着に着替えようとしていた。
「あのっ、私が居るのですが」
「あっ、ごめんね」
上のパジャマを脱いだ時にアロンダイトにそう言われたので脱衣場に行き普段着へと着替えていた。
「私も着替えるので少しお待ち下さい」
普段着を持ち脱衣所に歩いてゆくアロンダイトを見送りその間にベランダに煙草を吸いに行く事に。
・・・・・
煙を吐き出しながら水色のパジャマ姿に普段と違い髪を下ろしている姿を思い返していた。そしてなんとなくアロンダイトの体温と胸の柔らかさを思い出して苦笑いを浮かべていた。
因みにティルとアロンダイトのプロフィールを見比べると二人にそこまでの違いは無いのだ。違うといえばアロンダイトの髪先が少し青みを帯びているぐらいかな?念のため調べたのだが髪先が青みを帯びているのは獣刻されているアロンダイトだけなのだ。多分獣刻されたユニコーンの影響だと思うのだけど。
そんな事を考えながら灰皿へ煙草を押し込み部屋へと戻ってゆく。
「やっと戻って来ましたね」
「うん、ついね」
いつもの鎧姿で髪をポニーテールにしているアロンダイトとキッチンへ行き早速朝ごはんを作る事に。
「アロンダイトは何が食べたい?」
「軽めのものをお願いします」
「ふむ」
そう言われたので食パンをトーストしてその間にベーコンと卵に塩コショウをかけて焼き上げトーストの上に。その後コーヒーを淹れてリビングへと。
「はいどうぞ」
「いただきます」
かじるたびにカリリと小気味良い音を立てる香ばしいトーストにベーコンと卵が合う合う。
「今日は何がご予定があるのですか?」
「んーケイオスリオンにでも行こうかな?って思ってるよ。アロンダイトは?」
「私は朝の鍛錬がありますのでトレイセーマへと戻ります」
「ん、分かったよ」
その後トーストを食べ終えお城の前でアロンダイトと別れケイオスリオンを目指し草原を歩いてゆく。
はい、そんな訳で僕は悪魔の国ケイオスリオンへとやってきました。ここに来た理由を聞かれると返事に困ってしまうのだけども。
「お邪魔しまーす」
「はいっ、どうぞ」
いつも通り関所で門番をしているアスカロンに許可を貰いついでに少しおしゃべりをする事に。
「この国に女の子が居ない所って無いかな?」
「女の子ですか?キル姫の事です?」
「うーん、そんな感じかな?」
「それならケイオスリオンの軍はどうですか?隊員は男性ばかりですし」
「じゃあちょっと入隊してくるね」
「えっ?!ちょっと!」
アスカロンが止めるのを聞かずにケイオスリオン軍が駐留している所へと歩いてゆく。数は30人ぐらいかな?
「すいませーん。入隊したいんだけど」
そう聞くのだが敵意むき出しの視線を浴びせられていた。
「見かけない顔だ。お前はこの国の民か?」
「僕はティルヘルムから来たんだよ」
その言葉の後に明らかな殺意を放ちながら立ち上がり僕へと武器を向けていた。
「殺せ!妖精国のイミテーションだ!」
「やべっ」
多勢に無勢。痛い思いはしたく無いので脱兎の如く逃げ去る事に。
「もうっ、だから止めたのにっ」
「ごめんね。行けると思ったんだけどさ」
多勢の兵士に追いかけられている所をアスカロンに匿って貰い今僕は関所にある休憩室にいた。
「そもそもどうして軍に入りたいのです?剣の練習なら私がお相手しますよっ」
「剣の練習っていうよりも」
とりあえず事情を説明したのだがなんとも言えない顔をされてしまっていた。しょうがないよね?
「うーん、それでしたらケイリオスリオン軍の戦闘指導者に会ってみますか?」
「雑賀の事?」
「雑賀さんは軍の司令部の方ですねっ、どうしますか?」
「じゃあお願いします」
僕がそう言うとその人を呼びに何処かへと歩いて行った。その間僕がケイリオスリオンの門番を引き受けるのだけど。
(・・・・)
退屈である。門の前に立ち外から来る人を監視しているのだけど見晴らしの良い場所の為誰も来ないことが見て分かる。もう1時間は経ったと思い門の時計を見るとまだ五分も経っておらずため息が出てしまう。
「ユウさん、お待たせしましたっ♪」
「お前がユウか」
アスカロンの声ともう一人の声がする背後を振り返ると何処かで見た事がある様なキル姫の姿が。
「えっと、リットゥだよね?」
「そうだ。私はリットウ・D.plug・ナベリウスだ。お前が地獄の訓練を受けたいようだな」
もうすでに嫌な予感しかしないのだがせっかくアスカロンが呼んで来てくれたので素直に返事をしてその地獄の訓練を体験する事に。
ついて来いと言われてリットゥの背後をついて行くと先程の軍隊へと向かい歩いて行った。そこへリットゥが行き大声を張上げ背後にいた僕にも視線が向く。
「さっきの奴だ!殺せ!八つ裂きにしろ!」など物騒な言葉を叫んでいたのだがリットゥが「静かに」と言うと言葉を発する人はいなくなった。
「この男は地獄の訓練を体験したいそうだ。そこでだ。不満はあると思うが訓練に参加させてもらいたい」
その言葉の後すぐに隊員達が敬礼をリットゥへと向けていた。その姿に満足そうに頷くと訓練を行う場所へと移動が行われていた。
「諸君、この地獄の訓練で命を落とす事があると思う。だが安心したまえ。すぐにグリダヴォルがゾンビとして蘇らせ不死の兵士となる事ができるぞ」
おぉぉぉぉぉぉーーー!!!!!と雄叫びをあげているのだが全く意味が理解できずにいた。そんなこんなで目的地へと歩いてゆくと先ほどより気温が上がった気がする。
「着いたぞ。これより地獄の訓練を開始する!第一の訓練は溶岩走りだ」
僕は隊の後ろを歩いていたので前は良く見えないのだが他の隊員が説明してくれていた。
「説明しよう!溶岩走りとは幅二メートル、全長百メートルの溶岩の上をゴールまで走り切る訓練なのだ!」
その内容にドン引きしていると前方の隊員達が次々と溶岩の上をかけてゆきやっと前の景色が見え始めてきた。
(えぇ、、、)
真っ赤に焼けゴボゴボと燃え盛る溶岩で作られた道が見える。その道中には焼け焦げ煙をあげる遺体の様な人の姿がちらほらと見える。
その光景を言葉を失いながら見ていると僕の前の人が走り出した。
雄叫びをあげながら溶岩の上を走りその途中で何かにつまずいたのか転倒し断末魔をあげながら焼かれていた。
「次はお前の番だ。心して走ると良い」
リットゥにそう言われて泣きそうになりながらスタートラインへと立つ事に。
(・・・・・)
スタートラインに立っただけで髪の毛をチリチリと灼熱が焦がす。ここにいるだけでも恐ろしい温度を感じるのにこの上を走ったらどうなってしまうのだろうか。
「おい。走れ」
リットゥに消しかけられ諦めて溶岩の上を走る決意を固めた。全身へキラーズを巡らせて初速から全速力で溶岩の上を駆けてゆく。
踏み出した足を溶岩が溶かす前に次の足を出しなんとかゴールへと辿り着く事ができていた。
「よし、次の訓練だ」
休む間を与えられずに次の訓練の場所へ。僕達の前にあるのは川だった。
「第二の訓練は温中水泳だ」
「説明しよう!温中水泳とは溶岩に熱されたこの高温の川を泳ぎ対岸を目指す訓練なのだ!」
確かに火山地帯にある川の水温が冷たいはずもないし良く見れば湯気が出ていた。聞くと水温は70°を超えているとの事。
「心頭滅却すれば火もまた涼し。訓練開始っ!!」
心の準備をする間も無いまま川へと突き落とされてゆく。
「アッツ!!!ちょ!死んじゃう!」
「つべこべ言う暇があるのなら手足を動かし泳げ!」
とりあえずキラーズを体の周りに巡らせキラーズの層を作る事により熱を緩和させ対岸へと泳ぎ着いていた。ちなみに殆どの人がここで脱落し対岸まで泳ぎつけた人は僕を含めて5人となっている。
「他の人たちは?」
「今頃ゾンビだ」
「えぇ、、、」
「そこ!無駄口を叩くな!次の訓練だ!」
リットゥが指差す方には山と山の間にかけられた橋が見えていた。橋とは言ってもかなり細そうなのだが?
「平均台渡だ」
「説明しよう!平均台渡とは火山と火山の間にかけられた幅20センチ、全長100メートルの橋を渡る事により体幹とバランス感覚を鍛える訓練なのだ!」
歩きながら説明をされてその橋の前へと来ていた。橋のふもとから下を覗くと谷底に溶岩が溜まっているのが見える。
「訓練開始っ!」
そう言われてまず一人目の兵士が橋を渡り始めていた。足を震わせ両手を広げてバランスをとりながらゆっくりと進んでゆく。
その光景を見ていると何処かから咆哮が聞こえ何かが飛んできていた。
「ひぃぃぃ!!」
その何かは橋を渡る兵士へと襲い掛かかっていた。しばらく交戦をしていたが鎧を砕く程の攻撃を受け下へと落下していった。
「今のは?」
「この辺りに生息するフライデヴィルという魔物だ。鎧を容易く打ち砕く程のパワーと俊敏性を備えているぞ」
その後残った兵士が橋を渡るのだがバランスを崩し落下したりフライデヴィルに襲われたりと全滅していた。
「よし、お前の番だ」
「はい」
そんな訳で僕も橋を渡る事となった。フライデヴィルの襲撃に備えて剣を握りしめながら橋を渡ってゆく。
なるべく下を見ないように歩き半分程渡った時足元がぐらりと揺れしゃがみ込んでいた。
前を見ると橋が湾曲しているのが分かる。真ん中に支点がないから体重でたわんでいるのか。
ゆっくりと立ち上がり再び進みだすと不意に身体を持ってゆく程の強風がふき慌ててしゃがみ込む。ここは山の頂上、山を抜ける風がビル風の様に強さを増しているのだろう。
強風をやり過ごした後再び歩き出してゆく。そんな僕の耳にあの魔物の叫び声が聞こえた。
「くるなら相手になるよ」
七元を構え両足でしっかりとバランスを取り咆哮をあげるフライデヴィルを睨む。目を血走らせ涎を垂らしながら笑った後攻撃を仕掛けてきた。
小さめの体の通り動きが素早くグルグルと僕の周りを飛び回り死角から飛び掛かる。それを剣を向け牽制しながらジリジリと歩みを進めてゆく。
相手は僕の剣の射程距離を把握しているようで剣が届かないギリギリを飛ぶ。良く相手を見ると体に細かい傷跡が無数に付いておりそれだけ修羅場を潜り抜けてきた猛者なのが分かる。
さて、どうしたものか。こちらは安定が無い橋の上で相手は縦横無尽に空を飛び回る事ができる。せめて向こう岸に辿り着く事ができれば上手く立ち回れそうなのだけども。
ギナギナと睨み合っているとフライデヴィルが動いた。それに合わせて反撃をしようと身構えるのだが様子がおかしい。翼をはためかせ僕から離れてゆく。
ヤバいと思った瞬間に対岸を目指して走り出したと同時にフライデヴィルが橋へと体当たりを繰り出していた。
ミシッと嫌な音が聞こえた時には既に僕の体は重力に逆らう事なく落下していた。それでも諦める事なく悲鳴の代わりに指笛を吹き鳴らしながら落下してゆく。
そして僕に聞こえたのはゲタゲタと笑うフライデヴィルの声と山間部に響き渡る翼竜の咆哮。
後一秒で溶岩に焼かれるという時に見えたポチの手綱を掴み溶岩スレスレを滑空しフライデヴィル目指して上昇してゆく。
「ありがとねポチ。さぁ、第二ラウンドと行こうか」
煙草を咥え火を付けて煙を吐き出しながらフライデヴィルに向かい剣を向けると翼を返し何処かへと飛び去っていった。
「あらま。まっ、いっか」
逃げるのなら追わない。何故ならめんどくさいから。そのままリットゥの元へと戻ってゆく。
「もう試練は終わりかな?」
「うむ。良くこの地獄の訓練を乗り越えたな。褒めてやろう」
その後ケイリオスリオン軍に入らないかと勧誘を受けそれを丁重に断ってお城へと帰りシャワーを浴びでみんなと夕ご飯を食べた後ウイスキーが入っている樽の元へ。
寝酒を飲もうと蛇口を捻ったのだが一滴も出てこずに困惑していた。
「もう無くなっちゃったの?」
「一年も置いてあれば無くなりますよ」
480リッターのウイスキー消滅である。仕方なくビールを四缶ほど持って自室へと戻ってゆきチビチビと飲みながら眠りに就こうとしていた。
「・・・・・」
ビールを三缶飲み四缶目に手を伸ばそうか悩んでいる時にドアがノックされ返事をするとパジャマ姿のラグナロクの姿が。
「どうしたの?」
「少しだけお酒を飲みたい気分だから」
そう言って僕と対面する形で椅子に腰掛け机の上にチューハイの缶を一つ置いた。それを見てみるとアルコール度数2%と書いてあった。
「はい」
「ん、乾杯」
缶を握りプルタプを起こし僕へと差し出してくれた。それに缶を合わせて一口。
「お酒は強くなった?」
「全くダメね。でもたまにこうして飲みたくなるの」
まだ二口も飲んでいないのに頬を赤めて暑そうにパジャマの襟を掴みパタパタと煽る。その姿が堪らなくそそるのだが?
「お酒だけで飲むと早く酔うよ。何か食べようよ」
そう言って引き出しからティルが隠しているお菓子を取り出し机の上へと。
「ありがと。最近退屈ね、何か新しい風を吹かせたいわ」
「退屈ぐらいがちょうど良いよ。忙しいと疲れちゃうからね」
「そうね。でも刺激が欲しいわ」
お菓子を頬張りチューハイを一口。たまに顔にかかる髪を手でかき上げるが再び顔に垂れていた。
「ねぇ」
「どうしたの?」
「私の目を見て」
そう言われたのでラグナロクの顔を見てみる事に。いつものキリッとした瞳では無く少し眠そうで潤んだ瞳に紅潮した頬がすごく可愛い。
「眠そうだね」
「まだ大丈夫よ」
そう言って缶を口に運び高く傾けかんっとテーブルに置いていた。完飲である。
「ねぇ」
「どうしたの?」
「横にいくね」
すっと席を立ち僕の横に座ってくれた。そして僕の肩に頭を乗せた。その瞬間から酔いではない感覚で頭がクラクラと揺れる。
肩にかかる重みと体温とシャンプーの匂いが容赦なく理性を攻撃してゆく。それにほろ酔いという事もあり僕の理性は容易く崩壊した。
右手で頭を撫でてから顎に手をやり顔を上に上げた時ラグナロクの寝息が聞こえた。
(あはは、はぁーあっ)
そのままベッドへと優しく寝かしてあげた後残りのビールを飲み干してソファーに横になっていた。