目を覚まして大きく伸びをした後ベッドを見るとラグナロクがまだベッドで眠っていた。それを見た後にベランダへ行き煙草に火をつけてゆく。
今日は何をしようか?そんな事を考えながらぼーっと煙草を蒸しズボン越しに自己主張するモノを見て苦笑いを浮かべていた。
モーニングスタンダップが収まるまでに煙草を二本ほど吸い最後にため息を吐きながら部屋へと戻ってゆく。
「おはよ。起きたんだね」
ベッドを見ると今起きたばかりのラグナロクの姿が。寝ぼけ眼で普段の凛っとした表情は無く寝癖でくしゃくしゃの髪を顔に貼り付けていた。
「ん、ここは?」
「僕の部屋だよ。昨日の事覚えてないの?」
「んーー」
顔にかかる長い銀髪を払い除け部屋を見渡しやっと思い出したようで。恥ずかしそうな顔をした後ふらふらと立ち上がり部屋から出て行った。
その後いつもの服に着替えて朝食を食べる為にリビングへと。
「おはよ。朝早いのね」
「おはよアルマス」
リビングにはアルマスが一人居るだけで他の人はまだ来ていないようで。いつもアルマスが座っている席に座り椅子の前足を浮かせて器用にバランスをとっているその隣に座った。
「ねぇ、朝ご飯作ってよ」
「うん、いいよ」
キッチンへと入って行き少し考えた後食パンをトースターに放り込みダイヤルを回しその間に冷蔵庫にジャムを取りにゆきその後お湯を沸かしてゆく。
チンっと音がトースターから聞こえ窓を開け焦げ目を見ると真っ白だった食パンが狐色となっていた。それをお皿に乗せアルマスへと声をかける。
「取りに来てよ」
かたんと椅子の音が聞こえた後パタパタと歩く音が。その主は食パンが置かれた皿を持ちリビングへと。その後をコーヒーを二つ持ち追いかけてゆく。
「「いただきます」」
焼きたてのパンにジャムを塗り一口。
「今日は何か用事はあるの?」
「んー特にないかな?」
「暇なら私とハルモニアに行きましょうよ。ウイスキーも買いに行きたいし」
「ん、良いよ」
「じゃあ決まりね。後で城の入り口で待ち合わせしましょ」
早々とパンを食べ終わったアルマスが手を合わせた後椅子を飛び降りリビングを出て行った。それを見送った後コーヒーをのんびりと楽しみ食器を片付けリビングを出てゆく。
良くある話で男女の友情は成立するのかと言う話がある。僕はアルマスとなら男女の友情が成立すると思っている。勝ち気な性格で男勝り、普段のダラシないところを見ているってのもあるのだけども。
そんな事を考えながら城の入り口でアルマスを待っていた。僕より先に出て行ったのにまだ来ないのだ。時間にルーズも付け加えておこう。
あまりに暇なので橋の手すりにもたれ景色を見ながら煙草に火をつけていた。
「お、おまたせ、、、」
そう聞こえてその方へと顔を向けるとアルマスの姿が。だがいつもの格好ではなく黄緑色のワンピース姿に大きな麦わら帽子を被ったアルマスの姿が。
「・・・・・?」
その姿に思考がフリーズし咥えていた煙草が落ちていた事にすら気が付かずアルマスを見ていた。
「ちょ、、っ。何か言いなさいよ」
恥ずかしさで涙目になっているアルマスの声すら聞こえないまま僕は未だにフリーズしていた。
「そ、そんなに似合ってないのかな」
「すごく似合ってて可愛いよ」
そしてようやく絞り出した言葉は僕の本心だった。その後何故か起こしたパニックを鎮めるためにもう一本煙草に火を付けるのだけど。
「それで、今日はどうしたの?」
「部屋に戻ったらティニが着て来なさいって。私は絶・反対したんだけど」
普段と違う服装が恥ずかしいのか深く麦わら帽子を被り目を見せようとしなかった。そんな姿も可愛い。
「とにかく!絶・ハルモニアに行くんだから!」
そう言って駆け出してゆくアルマスの後を追いかけて僕達は天使の国、ハルモニアへと入国していた。
「まずはどこから行く?」
「んーウイスキーは最後に買いに行くとして適当にふらふらしよっか」
「じゃあ案内よろしくね」
そう言って僕の隣にぴったりとくっ付いていた。
「えーっと?」
「私が普段と違う格好してるんだからユウも普段と違う事してよ。ほら絶・可愛い女の子が横に居るのよ」
得意げに、少しだけ恥ずかしそうに言う仕草に心を持ってかれかけたけどなんとか心を取り戻しデートコースを考える事に。
(えっ?デート?)
無自覚にデートだと認識している事に気が付き次に恥ずかしくなるのは僕の番だった。それでもどこか良い所は無いのかと思考を巡らせてゆく。
「それでさ」ウンタラカンタラ
結局喋りながらハルモニアを歩く事に。たわいもない会話に相槌を入れ合いながらどこから良い所を探していた。
「そうだ。ハルモニアの神殿に行こうよ」
「何よそれ」
「その名の通り神殿なんだけど足湯があったりしてのんびりできるんだよ」
まぁそんな感じでハルモニアを歩き僕達は神殿へと来ていた。神殿の中を見てもつまらなさそうなので神殿の裏にある足湯へと。
「へぇ、足湯って初めてだけどなんだか良い感じね」
「でしょ?」
ワンピースが濡れないようにまくり上げながら足湯に浸かるアルマスと景色を眺めていた。特に会話は無いのだけど心地の良い感じ。
「そうだ。せっかくハルモニアに来たんだからティファレトにも会いに行きましょうよ」
「そうだね。みんな元気かな?」
その後のんびりと足湯を楽しんでからティファレト達がいる大聖堂を目指す事に。
「あっ」
足湯から出て立ち上がったアルマスが声を上げその方を見るとワンピースの裾が濡れていた。普段着なれない服装なのでしゃーない。
「でね、ほむらがね」ウンタラカンタラ
「うんうん」
以前行った三滝原市の話を聞きながら道を歩いてゆく。今でもその町の子達とは交流があるようで任務がない時や暇な時にそっちに遊びに行っているらしい。こっちには来ないのかって?さぁ?
しばらく歩くと小高い丘を見つけその上にベンチがありそこで休憩する事に。
「こうやって他の国を回るのも良いものね。新鮮だわ」
「そうだね」
少し高い丘なのでそれなりの景色が見る事ができた。大聖堂を眺めたりさっきいた神殿を見たり。向こうに見えるのがコロッセウムかな?
「ねぇ、あの花は何?」
アルマスが指差す方を見ると太陽に向かい花を開くヒマワリの姿が。気になるようでヒマワリ畑へと歩いてゆく。
「へぇ、綺麗な花ね。ヒマワリって言うのね」
アルマスの背より高いヒマワリを見上げ笑顔を浮かべている。
「その姿写真に撮って良い?」
「構わないわ」
との事なのでアルマスにポーズをとってもらう事に。
ヒマワリ畑と眩しい太陽を背景に風で飛びそうな麦わら帽子を押さえカメラに向かい笑顔を向けてくれるアルマス。その姿はヒマワリが似合う夏の美少女。
「なんだかこうして写真を撮られるのって恥ずかしいわね」
「気持ちは分かるけど凄く似合ってるよ」
「もぅ、、。」
褒められてまんざらでもないアルマスと共に僕達は大聖堂へと。
「いらっしゃい二人共。ハルモニアにようこそ」
大聖堂へと行くとちょうど良くティファレトを見つけて向こうも気が付いたようで笑顔で挨拶をしてくれていた。
「とても可愛らしい姿ですねアルマス♪」
「もぅ、今日だけよ。それより元気だった?」
たわいもない会話をしていると何かを思い付いたようにティファレトが手を叩いた。
「今ハルモニアでウェディングをしようとしているのですがお時間があるようでしたら少し手伝って貰ってもよろしいですか?」
「はぇ?」
さっくりとティファレトの話を纏めるとハルモニアの大聖堂を町おこしの一環として結婚式場にしようとしているようで。
「粗方準備はできているのですがモデルの方が居なくて」
「ちょ、ちょっと待ってよ!なんで私達なの!?他にも居るでしょ!」
「アルマス達にやってもらう事に意味があるのです。他国の人がここで結婚式を挙げたと聞けば他の人も敷居は下がりますから♪」
「まぁ、言ってる事は分かるけどもさ。僕結婚してるよ?」
「存じてますよ?しかし結婚していたら結婚式を挙げてはならないという決まりはありません」
全く意図が不明なのだけども。この話を聞いたティルに虐殺されそうなので丁重にお断りして帰ろうと思っていた。
「えっと、、「分かったわ。私とユウに任せなさいよ」
(えぇ、、、)
謎のやる気を出しているアルマスに賛同するティファレトに押されて気が付けば更衣室へと押し込まれていた。
「ヘェーイユウ。着付けは私に任せなよ」
更衣室に入るなり親指を立てたフライクーゲルさん。よく分からないまま服を脱ぎスーツへと着替えてゆく。
「スーツならクーゲルの方が似合うんじゃない?」
「そうかもね。でも君の方が似合っているよ」
ネクタイを閉め終わった再び親指を立ててくれた。ふむ。
そんなこんなで僕はヴァージンロードを歩き祭司であるティファレトの元へと来ていた。
「凄くお似合いですよ♪」
「ありがとね。人生で2回もヴァージンロードを歩くとは思わなかったよ」
そう言いながら部屋を見渡すと神々しい雰囲気が確かに結婚式に向いている気がする。話を聞くと他の2カ国も催しをやっているようでトレイセーマはアウトドアを、ケイリオスリオンはカジノをやろうとしているようで。
「もうすぐアルマスが来ますよ」
「ん、」
ティファレトに言われて気を引き締めて前を向くと10メートル先にある扉がゆっくりと開いた。
「・・・・」
純白のウェディングドレスに身を包んだアルマスがフォルカスに手を引かれながらヴァージンロードを歩いてきた。その顔はここからでも分かるほど真っ赤に染まっている。
目を泳がせながら、辺りをキョロキョロしながら、それでもどこか嬉しげに僕の元へと歩いてきてくれた。
「神よ、ここに新たな夫婦が誕生いたしました。どうか末長くこの夫婦の幸せを見守り下さい」
その言葉の後にアルマスにかけられたヴェールをあげると涙でうるうるとした瞳で僕を見上げてくれた。
その瞬間にもし僕と共鳴したキル姫がティルじゃなくてアルマスだったら。なんて事を考えていた。
「それでは誓いの口付けを」
ティファレトの言葉に二人して驚きながらティファレトへと視線を向けると微笑んでいた。
「・・・・」
「・・・・」
数秒固まった後目を瞑り唇を瞑るアルマス。それに僕は、、、、。
「二人共ありがとうございました♪」
ティファレト達にお礼を言われた後僕達は大聖堂の近くにある喫茶店へと来ていた。お互い好きな飲み物を頼み再びのんびりとした時間を楽しんでいた。
むすっ。
頼んだオレンジジュースを飲みながら頬杖をつきどこか不機嫌そうなアルマス。どうしたのだろうか?
「どうしたのアルマス?」
「別に。なんでもないわよ」
そうは言っても明らかに不機嫌。僕は何かしてしまったのだろうか?
「僕何か気に触る事しちゃったかな?もししてたら謝るよ」
「そうね、端的に言うと何もしてないから怒ってるのよ」
そう言ってオレンジジュースを一口。
「どうしてあの場でおでこにキスなのよ」
「えっ?あぁー落とし所と言うかなんで言うか、、。」
あの時アルマスの少し癖のある髪を上げおでこにキスをしたのだ。既婚者だし流石に口にするのはって気持ちと断る訳にはいかないという使命感でコンマ何秒で導き出した答えだったのだけど。
「それにシラフだし」
「飲んだらしてくれるのね?!さぁ!ウイスキーを取りに絶・行くんだから!」
(えぇ、、、)
一気にジュースを飲み干し席を立ち店を出てゆく。その後を飲みかけのコーヒーを飲み干した後レジにゼニーを置いて追いかけてゆくのだ。
「まいどありー」
目的地が分からず迷子になっていたアルマスを見つけ出し共にハルモニア酒造でウイスキーを購入する事ができた。今回はたっぷり700リッターの樽を買いお土産で1瓶持ち帰る事に。
「帰って飲みましょう」
「う、うん」
その後リビングで夕食を食べて部屋に戻りシャワーを浴び後僕はソファーに腰掛けていた。
(・・・・・)
もうすぐアルマスが来る。僕にとって良き友でありライバルであり仲間のアルマスが。
別に緊張する相手じゃないのに落ち着かない。何となく平常心を保てずに部屋を眺めたり煙草を吸ったり、それでも心に平穏はやって来なかった。
コンコンっと2回ドアをノックする音の後にゆっくりと開く扉を見ると淡い水色のワンピースのアルマスの姿が。
どこか緊張した顔で酒瓶片手に僕の前へと座り二つのグラスにウイスキーを注いでいた。
「はい」
「ありがとね」
グラスを二つ合わせた後カラカラとグラスを揺らし一口。
(・・・・・・・)
お互い喋ることもなくグラスを傾けてゆく。それでも目の前に座るアルマスを意識してしまいチラチラと目線を向ける。
「ねぇユウ」
「どうしたの?」
「さっきから何見てるのよ」
「バレてた?なんか可愛くてさ」
普段と違う空間の空気に酔いで頬を赤らめたアルマス。いつもより可愛くていつもと違う色気を感じていた。
「あのさ、なんだろ、ええっと、、、」
顔を上げたと思ったら俯きモジモジと。そんなアルマスの次の言葉を待つ事に。
「私、ユウの事が好きかも。いや、絶・好きだわ!」
潤んだ瞳で僕を見上げてそう言ってくれた。
「最初は大っ嫌いだった。でもあんなに努力して勝てるか分からない相手に一人で挑んで。あんなにズタボロにされて。きっとその時から私はユウの事が好きになってた」
「分かってる。でも伝えたくて、気持ちを伝えずに引くのは私の性に合わないし。ごめん、迷惑だったわね」
しっかりと僕を見据えて言い切った後目を背けグラスへと手を伸ばしていた。それに対して僕はグラスを握りしめたまま思考が止まっていた。
なんて言えば良い?どうしたら良い?酔いが回る頭で考えるのだが思考はまとまらず良い答えは導き出せないでいた。
「もしね、もしだよ。僕と共鳴したのがティルじゃなくてアルマスだったら僕はアルマスの事が好きになっていたよ」
「でもそうだったとしたら僕はただの奏官のままだと思うしアルマスが僕の事を好きになる事は無かったと思う」
グラスを傾けウイスキーを一口。
「そうかもね。だっていつもグリードの後ろにいて何もしてなかったわね。そんなユウなら私は好きにならなかった」
グラスのウイスキーを飲み干しトクトクと注いでゆく。
「飲みすぎたよ。眠たい」
大きくあくびをしてとろんとした眼差しでアルマスを見る。アルマスも眠たそうな顔をしていた。
「ねぇ。一回、一回だけで良いからキスしてよ。そしたらユウの事諦めるから」
ふらりと立ち上がると僕の隣へと座り一つ呼吸をした後に僕を見上げてくれた。
酔いと恥ずかしさで顔を真っ赤にして潤んだ瞳で僕を見上げてくれている。
そんなアルマスの姿を見て我慢できる奴なんで居ないだろう。僕も今まで我慢してきたのだけどもう無理だった。
ゆっくりとアルマスの両肩に手を置くと身を震わせた後目を閉じ唇を紡いだ。その唇へ唇を近づけて行く。
お互いの呼吸が顔にかかり酒臭い息を感じる。アルマスの唇まで後数ミリ。
そんな時ティルとの繋がりが消えそうになるのを感じ顔を上げた。
「ごめんアルマス!」
乱暴にアルマスの頭を撫ぜた後鞄と剣を持ち部屋を飛び出してゆく。
「・・・・絶ばかぁ!!!」
アルマスの叫び声を聞きながらサフランへと。