※この作品はR-18です。

黒ティルと僕と   作:やす、

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キル姫コラボシリーズ第4だん!


ウマ娘が住む世界に迷い込んだグラーシーザがウマ娘と出会い高みへと昇るお話




※ウマ娘プリティーダービーに関して知識0で書いてます!世界観、設定等調べながら書いてありますが粗相があるかもしれません。


グラーシーザ「うまむすめ!」 ハルウララ「プリティーダービー♪」

 

 

朝、目を覚ましたグラーシーザは牛乳を飲むために服を着替えた後城のキッチンへ。

 

 

「むむっ、きらしていたのか」

 

 

冷蔵庫を開け中を覗くのだが牛乳は無く、それでも牛乳が飲みたいグラーシーザはティルヘルムにある牧場へ行く事に。その時城の前で準備運動をするエルキュールに声をかけられた。

 

 

「グラーシーザもランニングですか?」

 

「あたしは牧場にぎゅうにゅうを買いに行くところだ。それにあたしは走るのは嫌いだ、走ってもただ疲れるだけではないか」

 

「そうですか?こうやって早朝の空気の中を走るのは気持ちが良いですしその疲れも違った気持ち良さがありますよ」

 

「むだな労力だな。あたしはこうしてあるくほうが好きだ」

 

 

エルキュールに背を向けグラーシーザは牧場へと歩いてゆき販売所へ。

 

 

「おじさんぎゅうにゅうをくれ」

 

「はいよ。ほら、今朝搾りたての牛乳だよ」

 

「それはちょうじょう」

 

 

店員から渡してもらったコップに並々と注がれたコップを持ちグラーシーザは店内にある椅子に座ろうとした。

 

 

「ん」

 

 

だがそれでは味気ないと考えコップを片手に店外へと出てゆき美味しく牛乳が飲めそうな場所を探す事に。

 

 

そして見つけたのは大きな広場の前にあるベンチ。そこに座り広場を走る馬を眺めながらコップに口を付けた。

 

 

「うむ、うまい!」

 

 

暖かく心地良い日差しを浴び悠々と大地を駆ける馬を見ながら搾りたての牛乳を飲む。そんなささやかな贅沢を楽しんでゆく。

 

 

牛乳を飲み干しグラーシーザは馬場を囲う柵に持たれながら馬を眺めていた。そして走る馬達に名前が書かれた札がある事に気付く。

 

 

(トウカイテイオー、ライスシャワー、キタサンブラック。なるほど。一匹一匹にながちゃんとあるのか)

 

 

「グラーシーザは馬に興味があるのかい?」

 

「むっ。まぁそんなところだ」

 

「なら説明をしてあげるよ。あそこにいるおでこに白い模様があるのがキタサンブラック。前足に青いバンドを巻いているのがライスシャワー。左足以外が靴下を履いたように白いのがトウカイテイオーだよ。どれも名馬と呼ばれるに相応しい馬さ」

 

「うむ、なかなかおもしろいではないか。話をつづけることをゆるそう」

 

 

高圧的な態度のグラーシーザを気にすることもなく説明を続けてゆく。そんな二人の元に馬達が集まってくる。

 

 

「なでても大丈夫なのか」

 

「うん、ゆっくりと首の辺りを撫でてあげて」

 

 

荒い鼻息を感じながら手を伸ばすと柔らかくしっとりとした毛並みに触る。その感触に目を細めながら首元を撫でてゆく。

 

 

「馬も喜んでいるよ」

 

「ほんとか?ならもっとなでてやろう」

 

 

気が付けば馬場に居る馬達がグラーシーザ達の元に集まり撫でろと顔を出す。それを一匹ずつ撫でてゆくと離れた所にポツンと佇む一匹の馬を見つけた。

 

 

「あのうまはこないのか」

 

「あの馬はハルウララ。ちょっと人見知りで臆病な馬なんだよ」

 

「ふむ。ハルウララはどんなうまなのだ?」

 

「そうだね、生涯成績113戦0勝の馬かな」

 

「とんだだうまだな。なぜそんなうまがここに居るのだ」

 

「ハルウララはね、確かに勝てない馬だった。だけどそれが人気を呼びとある廃業寸前だった競馬場を救ったんだ。戦歴は確かに悪いけど彼女は間違いなく名馬だよ」

 

「なるほど。なら考えをあらためねばならんな」

 

 

そう言うと柵を飛び越え店員が止めるのも聞かずハルウララの元へと歩んで行くグラーシーザ。

 

 

接近するグラーシーザを見て耳をピンっと立てグラーシーザを見つめる。

 

 

「ほら。お前のわるぐちをいってすまなかったな」

 

 

グラーシーザが伸ばした手はハルウララの首を撫でる。そんなグラーシーザを鼻で押し始めた。

 

 

「むっ、やるのか」

 

「それは馬のスキンシップ、そうやって鼻で押すのは構ってほしいからだよ。それより人見知りのハルウララが一目で慣れるなんて珍しい」

 

「こらくすぐったいぞ。ぼうしはさわるんじゃない」

 

 

じゃれ合う二人を見ながら店員は微笑む。

 

 

楽しい時間はあっという間に過ぎるもので気が付けば閉園の時間となりグラーシーザは城へと帰る事に。

 

 

「むっ、霧か」

 

 

そんな帰り道、夜霧が現れグラーシーザの視界を塞ぐ。それでも慣れた道だとグラーシーザは歩みを止めず歩く。

 

 

やがて霧が晴れると目の前には崖が。そして安全の為に立てられた柵の向こうで一人の女の子が月明かりに照らされ立っているのが見えた。

 

 

「おまえ、何をしようとしている」

 

「来ないで!もう覚悟は決めたから」

 

 

歩み寄るグラーシーザに振り返らずその女の子は崖から身を投げた。

 

 

落下しながら女の子が見た景色は真ん丸く照らすお月様と巻き上げられる涙。そして帽子を押さえながら落下している女の人。

 

 

「あたしのてをつかめ!」

 

 

風圧で飛んでいった帽子も構わずグラーシーザは手を女の子に向かい伸ばす。

 

 

「しにたいのか!はやくしろ!」

 

「私はっ!わたしは、、、、、っ!!!」

 

 

涙を流しながら女の子はグラーシーザの手を取った。

 

 

「よぉっし!しっかりつかまっているんだぞ!」

 

 

女の子を抱きグラーシーザは地面へと着地した。その衝撃で足が地面に埋まるのだが何事もなかったようにグラーシーザは足を上げ歩む。その頭に先ほど飛ばされた帽子がひらりと落ちる。

 

 

「あ、あぁ、、。」

 

「おちつくまでまっていてやろう」

 

 

放心状態の女の子を抱きグラーシーザはニヤリと笑う。

 

 

しばらくして女の子はグラーシーザから降りて話を始めていた。ピンクの髪をカチューシャであげた可愛らしい女の子の名はハルウララ。ウマ娘でありトレセン学院の生徒のようで。

 

 

「ふむ。ならなぜウララはじさつしようとしたのだ」

 

「それは、、、」

 

 

ウマ娘はトレーナーと共に最速を目指すのだがハルウララはどのトレーナーに鍛えられても成果が出ず常に最下位をマークしていた。その順位の為どのトレーナーからも見放さた。

 

 

「トレーナーを持たずレースに出れないウマ娘は処分されちゃうの。だったら私は自分の意思で死を選ぼうって」

 

 

悲し気に話し俯いてしまう。グラーシーザが助けたがこの事情であればハルウララは再び死を選ぶだろう。

 

 

「よし、あたしがお前のトレーナーになってやろう」

 

「・・・・えっ?」

 

「きこえなかったのか?ならばもう一度いってやろう。あたしがお前のトレーナーになってやる」

 

「でも私遅いしトレーナーさんに迷惑かけちゃうし、、、」

 

「ふん、それはやってみなくてはわからないではないか。それにおまえをみすてるのはあたし自身の正義に反する」

 

 

深く被った帽子の隙間からハルウララを見下し手を伸ばす。その手をハルウララは躊躇いながら掴んだ。

 

 

「よぉーっし。ならばいまからとっくんだ!」

 

「あはははは、、、」

 

 

意気込むグラーシーザを何とか宥め二人はハルウララの住む学園の寮へと戻る事に。

 

 

「狭いけどどうぞ、、」

 

「ふむ」

 

 

ハルウララの住む部屋はパッと見ても三畳ほどの大きさで布団と机のみの部屋。

 

 

「ずいぶんとせまいへやだな」

 

「弱い生徒はこうなっちゃうの。強い生徒はもっと広くて豪華な部屋なんだよ」

 

「なるほどな、まぁいい。ウララはねろ」

 

「うん、、おやすみなさい」

 

 

布団に潜り込んだハルウララを見た後グラーシーザは机に座り置かれていた本を読み始めた。その本はウマ娘の育成指南書。グラーシーザはトレーナーになると言ったがウマ娘と会うのは初めての事でもちろん育成などした事もない。だが彼女は自身の正義の名の元にハルウララを助けた。それならば最後まで面倒を見る。それもまた正義。それにあの時グラーシーザに懐いたハルウララと同じ名前に妙な親近感を覚えていた。

 

 

「むむっパワー?根性?固有スキル?継承?うーむ、わからん」

 

 

難解な言葉が並ぶ指南書に何度も挫けそうになるが最後まで読み切り再び1ページ目から読み返してゆく。ここが異世界である事を疑問にも思わずに。

 

 

指南書を読みグラーシーザは分かった事がある。それはランクの事。C、B、A、Sの四つのランクにウマ娘は分けられておりハルウララはCのランク、それもC−である事。トレセン学院に入学したてのウマ娘はランクCからスタートするのだが成績の悪いハルウララはランク外のレッテルを貼られたのだろう。

 

 

グラーシーザはハルウララをSランクに連れてゆく決意をした。一番上のランクにいるのならこの様な生活をする事も無くなり死を選ぶ事も無くなるだろうと考え。

 

 

「さて、どこでねむろうか」

 

 

グラーシーザは寝る場所を探すのだがこの狭い部屋で眠る場所は見つからず仕方なく机にうつ伏せとなり眠りに着く。

 

 

 

次の日の朝、グラーシーザはハルウララと共に街を歩いていた。街の探索とトレーニングができそうな場所を探すのが目的だ。

 

 

しばらく街を歩きハルウララの説明を受けこのトレセン街は山と海に囲まれた街だという事は分かった。確かに北を見れば山があり南を見れば海が見える。それにこの街は栄えており観光地となっているのだろう。

 

 

「ウマ娘はこの街にしか居ないの。だからこの街はウマ娘を使って町おこしをして成功したんだよ」

 

「なるほどな。それでおんがあるウマ娘をないがしろにするのか」

 

「それは違うよ。確かにランクが低いウマ娘への扱いは酷いけど上位になれば優遇されるし、、、」

 

「それをあたしはおかしいと思う。すべてのウマ娘にびょうどうにせっするのがすじではないか」

 

 

ギロリと睨むグラーシーザの迫力に口を紡いでしまう。

 

 

「まっ、おまえをせめたところでなにもかわらん。あたしはおまえを強くする。けしてなきごとは許さないからな」

 

 

とんでもない人がトレーナーになってしまった。ハルウララは心の中で後悔をし始めていた。

 

 

その後街の本屋により地図と参考書を買いそれを見ながら二人は街を歩き山へと来ていた。

 

 

「よし、ここでトレーニングをするぞ」

 

 

グラーシーザが指差すのは千段神社。その名の通り千段の階段の上にある神社だ。

 

 

「この階段を登れば良いんですね?」

 

「あぁ、うさぎとびでな」

 

 

ウサギ跳びとは両手を腰の後ろに回し深く腰を下ろした状態で飛び跳ねる事を指す。グラーシーザはこの千段の階段をウサギ跳びで登れと言い放ったのだ。

 

 

「ええっ!?そんなの無理だよぉ、、」

 

「よわねを吐くひまがあるのならとべ!さもなくば、、!」

 

 

気が付けばグラーシーザの手にはキラーズにより召喚された槍が握られている。それはハルウララを脅すのにはてきめんの効果があった。

 

 

「はぁい、、、」

 

 

仕方なしにハルウララは階段を登り始めた。見上げても見上げても頂上が見えない階段を一段ずつ跳んでゆく。

 

 

そんな時背後から足音が聞こえ振り返ると同じくウサギ跳びをしながら階段を駆け上がるグラーシーザの姿が見えた。

 

 

「えぇぇ!?」

 

「おそい!なにをしている!」

 

 

驚くハルウララを抜き去りグラーシーザがウサギ跳びで階段を駆け上がってゆく。その姿はハルウララにやる気に火を付ける。

 

 

(よしっ!トレーナーさんも頑張っているんだから私も!・・・・)

 

 

意気揚々と見上げると未だ頂上が見えない階段に心が折れかけたが懸命に駆け上がってゆく。

 

 

「おそいぞウララ」

 

「はぁっ、はぁっ、、はぁぁ、、、」

 

 

息絶え絶えのハルウララ。だがグラーシーザは息一つ乱さず神社の境内に立つ。

 

 

「ほら。おちついたらのむといい」

 

「あ、ありがとう、、、」

 

 

スポドリを手渡しグラーシーザは境内から街を見下ろす。

 

 

「いいまちではないか」

 

「うわぁっ、初めてこんな高い所から街を見るよ」

 

 

手すりに持たれながら二人は街を見下ろす。空高く登る太陽の日差しを乱反射させる水平線にトレセン学院を中心に栄えた街並み。そして汗だらけの二人を微風が優しく吹き抜けてゆく。

 

 

「それでトレーナーさん。帰りはどうするの?」

 

「もちろんウサギとびだ!」

 

 

登りがあるのなら下りもある。二人はウサギ跳びで千段の階段を駆け降りてゆく。そんな次の日。

 

 

「うぅーん、、あしがいたいぞ、、、」

 

「体が、、、いう事をきかない、、、」

 

 

ひどい筋肉痛に悩まされその日は一日中部屋にこもる事となった。

 

 

 

グラーシーザが参考書を読んで分かった事がある。トレーニングと食事は切っても切れない関係にある事を。正しいトレーニングと食事をすれば身体の疲れは軽減され成果は筋肉となると。

 

 

 

次の日、朝食を食べ終え千段神社を走破し二人は食材を買いに街を歩いていた。参考書を読んだ事を思い出しながら買い物を済ませ二人は帰路へと着く。

 

 

もちろん物置の様なハルウララの部屋にはキッチンは無く共同キッチンにてグラーシーザが料理をする事に。

 

 

「トレーナーさんって料理できるの?」

 

「あたしにまかせておけ」

 

 

そうは言ってもグラーシーザに料理の知識は無くただ買ってきた物を切り分けフライパンで炒めるという暴挙に出た。何も知らずお腹を空かせたハルウララは料理の完成を楽しみに待っていた。

 

 

「ほらできたぞ。あたしとくせいのりょうりだ」

 

「あは、あははははっ、、、」

 

 

フライパンのまま出された料理は牛乳に浸ったバナナやパン。お肉にお魚の姿が。もちろんそんな物が美味しいはずもなく一口食べ箸を止めてしまった。

 

 

「あたしがつくったりょうりにもんくがあるというのか」

 

「文句は無いですけど、、、これはちょっと、、」

 

「わがままなやつだ」

 

 

そう言って料理を一口食べグラーシーザの手が止まる。

 

 

「きょうのところは外食にしようではないか」

 

 

その言葉にホッと息を吐くのであった。

 

 

 

そんな生活が何日も続きグラーシーザの料理の腕は上がりハルウララは自身の実力を試したくなってきていた。

 

 

「トレーナーさん、私レースに出たい!」

 

「うむ。ならばどうすればいいんだ?」

 

「えっと、レースに出たいという事をトレーナーさんが学園に伝えれば出れますよ?」

 

「よし。ならばさっそくうけつけをしようではないか」

 

 

このトレセン学院ではレースは毎日行われている。しかしそれはほとんどがCランクのレースでありクラスが上がる毎にレースの数は減ってゆく。上位になればなるほどレースは過酷を極めコンディションを最適に保つ為の計らいである。その為ハルウララのレースは今日の昼から行われる事に。

 

 

レースの内容だが三キロの距離を六名のウマ娘が走るのがオーソドックスの様で。一位なら昇格。二位から五位まではランク維持。六位は降格となっている。

 

 

「おまえのじつりょくを見せてこい」

 

「はいっ!」

 

 

学園にあるレース場でレースは行われる。そして走者であるウマ娘達はゲートにて開始の合図を待つ。

 

 

(見てみて、女神が居るよ)

 

(なら降格は大丈夫だねw)

 

(うぅぅぅぅっ、、、)

 

 

晩年最下位であったハルウララは学園内で女神と呼ばれていた。ハルウララと同じレースに出れば最下位は回避される。ランクを落とす事が無い事からと名付けられた悪名である。だがそれは過去の事であるという事に彼女達は後に気付かされる。

 

 

レース開始のファンファーレが鳴り響き彼女達は身構える。そしてゲートオープンと共に走り出した。

 

 

そこで彼女達はハルウララの背を追いかける事となる。走っても走っても遠ざかってゆくハルウララの背を。

 

 

レースはハルウララの独走で終わると思っていたのだがそれを許さない追跡者が後方より迫る。

 

 

「おさきー」

 

 

先行するハルウララの背後から抜き去りトップに踊り出たウマ娘はハルウララに手を振りながらゴールテープを切った。キングヘイローである。

 

 

 

「やっっったぁぁぁぁぁぁーーーーーーっ!!!」

 

 

だが歓喜の雄叫びがレース場に響き渡る。

 

 

「ねぇねぇねぇねぇ!トレーナーさん!見ててくれた!?」

 

「あぁ、みていたぞ」

 

「私初めて最下位じゃなかったよ!しかも二位!あぁもう!うれしすぎるぅぅぅ♪」

 

 

ハルウララのあまりのはしゃぎっぷりに苦笑いを浮かべるのだがグラーシーザの目にも笑みが宿る。Cランクの実力は分からないが六名中二位なら十分だろうと判断して。

 

 

「あぁ〜ごくらく〜」

 

 

レースが終わりささやかなお祝いのご飯を食べた後二人は部屋に戻って来ていた。そこでハルウララはグラーシーザからマッサージを受けていた。ハルウララからの提案ではなくグラーシーザから言い出した事だ。次のレースに疲労を残さないようにと。足ツボマッサージから始まりふくらはぎ、太もも、腰、肩に至るまで丁寧にコリをほぐしてゆく。

 

 

(くぅ、、、、)

 

 

その心地よさにいつのまにか眠りへと落ちたハルウララに布団をかけグラーシーザは机へと座り本を読み漁る。入賞を納めたがグラーシーザは決して浮かれず次のトレーニングを探すのだ。

 

 

その時見つけたのはウマ娘の資料である。それに目を通すと成る程とグラーシーザは唸る。

 

 

ウマ娘とは実在した馬の名を冠する生き物。生き物というが見た目は人間とほぼ変わらず違いをあげるのであれば耳が頭の上に生えている事ぐらいか。それぞれ元となった馬の性格を引き継ぎ能力も引き継ぐとの事。

 

 

(ハルウララの名を冠するハルウララか)

 

 

113戦0勝の戦歴を思い出しさらに決意を固めてゆく。

 

 

(おまえがかんするハルウララのなは決して足枷ではないぞ。それをあたしがしょうめいしてやる!)

 

 

そんなグラーシーザが決意を固める中ハルウララは穏やかな顔で眠る。その姿を見てグラーシーザも机に顔を伏せるのだ。

 

 

ハルウララはレースで二位を取った。しかし二位ではランクは維持。グラーシーザ達の生活は何の変化も無い。次の日の朝、グラーシーザはハルウララに質問をしていた。

 

 

「おまえは一位になりたくはないのか」

 

「うーん?私は一生懸命走ってるよ?私走るの好きだし♪」

 

 

的外れな返答を返され困惑を浮かべる。トレーニングにレースに一生懸命に向き合い努力する姿は共に走る事により分かっているのだがいまいち勝利への執着心を感じられない。

 

 

「よし、次のレースで一位をとれ。そうあたしとやくそくしろ」

 

「えっ、、トレーナーさん目が怖いよ、、、」

 

「あたしはしんけんだからな。だからお前もしんけんにはしるのだ」

 

「うん、、。」

 

 

グラーシーザの眼差しに怯えながらハルウララは返事をし俯いてしまう。険悪な状況で迎えたレース。ゲートに並ぶ五名のウマ娘がレースの開始合図を今か今かと待つのだがハルウララの目線は下を向いたまま。開始のファンファーレを聞きやっと顔を上げた。

 

 

(出遅れた)

 

 

ゲートが開いた瞬間走り出すウマ娘達に遅れハルウララは最下位を走る。その光景は見慣れた光景。だがハルウララにはプレッシャーが重くのしかかりグラーシーザの眼差しが脳内にチラつく。

 

 

「あっ」

 

 

ハルウララは第一コーナーで転倒し急いで立ち上がるのだが既に他のウマ娘達は遥か先で次々とゴールへと駆け込んで行く。ハルウララはその後をとぼとぼと走ってゆく。

 

 

 

「おいお前。あのぶざまなすがたはなんだ」

 

「・・・・ごめんなさい」

 

「次あのようなしゅうたいをさらせばそれは悪とみなしあたしが断罪する」

 

「……はい」

 

 

グラーシーザの言葉は悪いがハルウララに一位を取らせてあげたい気持ちがあるからこその言葉。だがハルウララにとっては重く掛かるプレッシャー。ハルウララの顔が笑顔になる事は無かった。

 

 

その日の午後グラーシーザは部屋にハルウララを置いて一人レース場へと来ていた。何をするのか?

 

 

(……誰?)

 

 

困惑するウマ娘達の視線を受けながらグラーシーザはゲートでレースの開始合図を待っていた。グラーシーザはレースに出た事もないのにハルウララに指図するのは違うと考え学園を脅し無理を言いレースに出場させてもらっていたのだ。

 

 

ゲートの中から覗くグラウンドに他のウマ娘が放つプレッシャーを感じハルウララと同じ状況を体験する。

 

 

そしてファンファーレが響きゲートオープンと同時にウマ娘とグラーシーザは走り出した。

 

 

ウマ娘の走る速度は時速70キロにも達し走る事に特化した生き物。だがグラーシーザにはキル姫としてのポテンシャルがあり身体能力はウマ娘達と大差は無い。第一コーナーを集団で抜け次のストレートで大きく引き離しトップを独走する。そして第二コーナーを走り抜け一位でゴールテープを破った。

 

 

(なるほどな)

 

 

グラーシーザがレースに出て分かった事がある。走る事の気持ち良さと一位を取る爽快感。悔しそうにグラーシーザを見るウマ娘達の眼差しは優越感に浸らせる。走るのが好きと言っていたハルウララの気持ちが分かった。それとエルキュールの事も。

 

 

ならばグラーシーザは一位を取る爽快感をハルウララに教えてやろうと意気込み部屋へと戻ってゆく。

 

 

「おかえりなさい」

 

 

グラーシーザに声をかけたハルウララは窓から外を眺めたまま。

 

 

「ねぇトレーナーさん」

 

「なんだ」

 

「私走るのやめたい」

 

 

ウマ娘にとって走るのをやめたいという事は死にたいと同義。ハルウララの発言にグラーシーザは憤怒する。

 

 

「なぜだウララ!なぜそのような事をいうのだ!」

 

「だって私どれだけ頑張っても一位取れないしトレーナーさんは怖いし、、もう走るのが嫌いになったの!」

 

 

振り返ったハルウララは涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにしながら喚く。そんなハルウララをグラーシーザは見下ろす。

 

 

「わかった」

 

 

ただ一言呟きグラーシーザは部屋を出て行った。

 

 

一人街を彷徨うグラーシーザに行くあてはなくただ街を歩いていた。ハルウララの発言を思い出し何度もため息を吐きながら。

 

 

やがてグラーシーザは千段神社を登り境内から街を見下ろしていた。

 

 

「はぁ」

 

 

吐き出すため息は止まる事を知らず何度も溢れ出す。

 

 

 

 

その頃ハルウララは身支度を整え学園を出て行こうとしていた。行き先は以前身を投げた崖。

 

 

「ウララさん。何処に行くつもりですか?」

 

 

名を呼ばれ振り返るとそこにはキングヘイローの姿が。

 

 

「別にどこでもないよ」

 

「ふうーん?ならご飯に付き合いなさいよ」

 

「ごめんなさい、ちょっと忙しくて」

 

「へぇー?良いから行きましょうよ」

 

 

嫌がる素振りのハルウララを連れて一行は食堂へ。

 

 

「それで、何があったの?話しなさいよ」

 

「別に何でもないって」

 

「ならいつもの元気は何処にいってしまったのよ、好きな物を頼みなさい」

 

 

メニューを押し付けられ渋々開いてゆく。

 

 

「こないだのレース、楽しかったわ。まさかウララさんと一位二位を争うなんて思っても無かったし」

 

「・・・・」

 

「そう睨まないでください。肩慣らしで走るつもりだったのですが前を走るウララさんを見ていたらつい熱くなってしまい」

 

「そうだね」

 

「それで、一体何処に行くつもり」

 

 

気迫の籠る眼差しにハルウララは顔を背けた。

 

 

「その荷物だと家出?それとも」

 

「放っておいてよ」

 

「そうはいきませんわ。友達を見捨てられるほど私は薄情ではありません」

 

 

ハルウララは渋々話し始めた。トレーナーから受けるプレッシャーに走るのが嫌になったと。走るのが嫌だと伝えたら部屋を出て行った事。また捨てられてしまったと。

 

 

「ウララさんはもう走りたくないの?走るのが嫌いになってしまったの?」

 

「私は、、、」

 

「まだウララさんのトレーナーは諦めてないと思いますよ、死ぬのはいつでもできる。だけど走る事は今しかできないわ」

 

「そう、、だね。私行ってくる!」

 

 

メニューを乱暴に返しハルウララはグラーシーザを探しに店を飛び出した。

 

 

「世話の焼ける人」

 

 

ハルウララを見送りテーブルに目線を戻すと二人分の頼まれた料理が並ぶ。

 

 

(気持ちは分かりますけど、食べてから行きなさい)

 

 

 

ハルウララは街を走った、グラーシーザを探すために。だが何処を探しても姿は見つからず疲労が溜まり時間だけが過ぎてゆく。

 

 

(そうだ、あそこだ)

 

 

ハルウララは思い付いた場所に向かい走ってゆく。

 

 

千段の階段を登り境内の奥の展望台にグラーシーザの姿はあった。

 

 

「トレーナーさんっ!」

 

「なんだ」

 

「ごめんなさい、、私走りたい!トレーナーさんと一緒に!」

 

 

声を荒げるがグラーシーザの返事は無い。沈黙がハルウララの胸を刺す。

 

 

「あたしはきびしいぞ。もうなきごとは許さないからな」

 

「トレーナーさんっ!」

 

 

胸に飛び込んだハルウララの頭を撫でてゆく。

 

 

「私トレーナーさんのプレッシャーが怖かった。一位じゃ無かったら殺されるんじゃないかって」

 

「ころしなどしない、ただおきゅうをそえるだけだ。それとウララ、あたしの方こそわるかった。おまえのきもちもかんがえずあたしのかんがえをおしつけてしまった」

 

「うんん、私トレーナーさんの全部を受け止める!だから!」

 

「そのかんがえは悪だ。あたしはトレーナーなんてした事もないしあたしのトレーニングは独学でしかない」

 

「でもトレーナーさんは私と一緒に走ってくれた。私それがすっごく嬉しかったの!」

 

「そう言うのであればいくらでもお前の横をはしってやるぞ。てはじめにいえまできょうそうといこうではないか」

 

「うん!」

 

 

二人は千段の階段を駆け下り家へと帰ってゆく。

 

 

 

次の日二人はレース場へと来ていた。

 

 

「トレーナーさん!私の勇姿を見ていてください!」

 

「あぁ、ぞんぶんにみていてやろう!」

 

 

鼻息荒くハルウララはゲートでレース開始のファンファーレを待つ。グラーシーザに必ず一位を取ると自ら約束し挑むレース。気合の入り方が違う。

 

 

そしてファンファーレが鳴り響きゲートが開きかくウマ娘一斉にグラウンドへ駆け出した。

 

 

「ぬぉぉぁぉぉぉ〜〜っ!!」

 

 

そこには全力の疾走でコースを駆け抜けるハルウララの姿が。その走りは他のウマ娘の追従を許さずトップを独占しコーナーを曲がりストレートを走り第二コーナーを曲がり切りゴールテープを切るまで一切の油断も無く駆け抜けた。

 

 

 

「トレーナーさんっ!私やりました!」

 

「うむっ!ちょうじょうだ!」

 

「ゴールテープを切るのってこんなにも気持ち良いんだね♪」

 

 

汗を拭いながらグラーシーザに話す顔は満開の笑顔だった。

 

 

 

午前のレースで優勝した事によりハルウララはランクがBとなり物置の様な部屋から脱出する事ができた。それにより午後からは部屋の引越しとなる。そうはいっても元々物が少なかった為すぐに終わり余った時間二人は街をふらふらと歩く事に。

 

 

「あら、ウララさん。隣に居るのがトレーナーですね?」

 

 

名を呼ばれ振り向くとキングヘイローの姿が。

 

 

「あっ!キングちゃん♪こないだはありがとね、おかげでトレーナーさんと仲直りできたよ♪」

 

「ウララ、こやつは」

 

「私の友達のキングヘイローちゃんだよ♪」

 

「おぉ!?この人がウララのトレーナーだったのですね!」

 

「知ってるの?」

 

「知ってるも何もいきなりレースに出てぶっちぎりの一位だったんですよ。学園でかなり噂になってます」

 

「何してるのトレーナーさん?」

 

「あぁいや、ウララとおなじきもちをあじわうためにレースにでたのだ。べつにふかいいみはない」

 

「良くトレーナーがウマ娘に勝てましたね。本当に何者なんですか?」

 

「あたしはキル姫だ。ひとではない」

 

 

グラーシーザの言葉に困惑を浮かべる二人に説明をおこなってゆくのだが納得出来るはずもなく難しい表情。だがウマ娘と互角の運動能力を持つという事で二人は納得していた。

 

 

「そういうおまえたちも人ではないのか?そのあたまの耳はかざりなのだろう」

 

「へっ?この耳?」

 

「カチューシャかなにかでは無いのか?」

 

「うん、ほら見てて」

 

 

ハルウララの頭の耳を見ているとピンッと立ったりへなりと萎れたり自由自在に動かしていた。

 

 

「なるほど」

 

「なら三人でご飯でも行きませんか?こないだウララさんに逃げられたので」

 

 

そんな訳で二人はキングヘイローに連れられて食堂へと来ていた。そこでグラーシーザは楽しそうに話す二人の会話に耳を傾けてゆく。

 

 

「それで私のトレーナーが[キング!がんばれ]って。あんな応援されたらキングとしての凄さを見せるしかないじゃない」

 

「キングちゃんのトレーナーさんって凄いんだね♪」

 

「まあね、それよりウララさん、次レースに出場するのはいつですか」

 

「うーんと、トレーナーさん。いつにします?」

 

「うーむっ。つぎのレースは、、、」

 

 

手帳を取り出し日程を確認してゆく。次のBランクのレースは最短で四日後。

 

 

「これにしゅつじょうしようではないか」

 

「私と同じレースの日ね。なら私に勝てるかしら」

 

「もちろん!勝っても負けても恨みっこなしだよ!」

 

 

硬く握手をした後すぐに笑顔となりご飯を食べてゆく。そんな光景をグラーシーザは微笑ましく見ていたのだがあの時ハルウララを抜き去った光景を思い出し新たなるトレーニング方法を考え始めた。

 

 

「じゃあごきげんよう」

 

 

エレガントに手を振るキングヘイローに挨拶をして二人は部屋へと帰ってゆく。

 

 

「ウララの部屋はこっちだろ」

 

「あっ、、つい癖で、、」

 

 

迷子になりながらも新しい部屋へと。

 

 

「ベッドって良いね♪うーん、この寝心地の良さ♪」

 

 

簡易だが部屋に設けられたベッドに寝転がりご機嫌なハルウララを見ながらグラーシーザは椅子へと座る。

 

 

「ふんっ、きょうは早くねるといい。あしたからおにのようなトレーニングだからな」

 

「うわっ!おやすみなさい!」

 

 

慌てながら布団に潜り込みしばらくすると寝息が。それを聞いてグラーシーザは地図を片手に一人夜の街へと。

 

 

「うむ。ここなら良いだろう」

 

 

新たなるトレーニング場所を見つけ満足そうに部屋へと帰ってゆく。

 

 

次の日、二人は千段の階段を走破しグラーシーザに言われるがままに砂浜へと来ていた。

 

 

「ここで何をするのー?」

 

「トレーニングだ。これをつけてな」

 

 

グラーシーザが用意したのはロープが結ばれたタイヤ。それをハルウララの腰に巻き付けて同じくグラーシーザの腰にも巻き付けてゆく。

 

 

「あそこまではしるぞ。もちろんとちゅうで足をとめることはゆるさん」

 

 

グラーシーザが指差すのは砂浜が終わり岩場へと変わる場所。そこまでの距離はおおよそ二キロ。

 

 

「はいっ!」

 

「うむ!じゃあいくぞ!」

 

 

そう言って走り出した二人。だが柔らかい砂に足を取られスピードを緩めればタイヤが砂に引っかかり大きなブレーキとなる。一度砂が入れば重しとなり一気に負担がかかる。

 

 

「ぬぅぅぅぅぅっ!!!」

 

「うりやぁぁぁぁっ!!!」

 

 

 

 

二人は歯を食いしばりながらゴールを目指す。

 

 

「はぁはぁはぁ、、、」

 

「さすがに、、こたえたぞ、、だがまだゴールはしていない!ここはおりかえし地点だ!」

 

 

身体中に汗を光らせ息を荒くするのだが再び歯を食いしばりゴールを目指し走る。

 

 

「」

「」

 

 

鉛の様に重くなった体を癒すために防波堤に座り息を整えてゆく。

 

 

それから二人は街へ買い出しに行く事に。体をしっかりと動かした後はしっかりとした食事を取るために。グラーシーザは知識は無かったがハルウララのために本を読み漁り栄養学、運動学の知識を付けていた。全てはハルウララの勝利の為に。

 

 

(たんすいかぶつ、ししつにタンパクしつ、あとはとうぶんか)

 

 

外食をしない限り料理は全てグラーシーザがしていた。以前は共同のキッチンであった為たまに他の人に食材が使われたりしたが今の部屋は室内に簡易であるがキッチンがあり冷蔵庫もある。誰かに勝手に食材を使われる事もないだろう。

 

 

そんな事を考えているとハルウララの名を呼ぶ人が。

 

 

「ウララちゃん頑張ってね!」

 

「よっ!負け組の星!」

 

「あはっ♪ありがとうございます♪」

 

 

ハルウララがCランクを脱した事は街でも知られておりハルウララを応援してくれるファンが現れたのだ。まだ数は少ないが声援を送られハルウララはご機嫌。最後のは悪口にしか聞こえないのだが。

 

 

「ウララちゃん達ならちょっとだけサービスしてあげるよ」

 

「うむ。かんしゃしてやろう」

 

 

ハルウララが褒められればグラーシーザも悪い気はせずニコニコと買い物をして部屋へと戻ってゆく。

 

 

「トレーナーさん、私も手伝うよ?」

 

「ならん。お前はからだをやすめていろ」

 

 

ハルウララが走るのならそれをサポートするのがトレーナーであるグラーシーザの勤め。そう考えるグラーシーザはハルウララに一切手伝いをさせなかった。それをハルウララは申し訳なくなる。

 

 

「でもトレーナーさんも疲れてるし、ほら、疲れも分け合ってるんだから全部分け合お」

 

「うむっ、、ならば米をといでもらおうか」

 

「うん!任せて!」

 

 

その後洗剤でお米をとごうとしたハルウララを叱りつけるのだが。

 

 

そして時は流れBランクとなり始めてのレースが。

 

 

「おーっほほほほっ!来ましたわねハルウララ!」

 

「勝負だよ!キングヘイローちゃん!」

 

 

一番ゲート、三番ゲートで火花を飛ばし合う。相手は友達でありライバルのキングヘイロー。

 

 

ファンファーレが鳴り響き一同目線は前を向き用意を整える。そしてゲートオープンと共に疾走。

 

 

前半のストレートをハルウララは集団を抜け一位を走る。その背後にキングヘイローがぴたりと張り付く。そして迎えた第一コーナー。ストレートで上げたスピードを殺さずコーナーへ入りインを攻めてゆく。そこまではハルウララがトップを走る。

 

 

だがインを抜けた勢いでハルウララは膨らみラインとの間を開けてしまう。その隙間を抜けキングヘイローがトップへ踊り出す。

 

 

(ふっ)

 

(ぐぬぬっ!)

 

 

そして迎えた第二ストレート。抜かされまいとハルウララの前に立ち塞がり疾走するキングヘイロー。ハルウララは背後を追従し抜き返すチャンスを伺う。

 

 

ストレートを走り切り迎えた第二コーナー。インから離れずに走りハルウララの行手を阻む。そしてコーナーを抜けた瞬間ハルウララは勝負に出た。

 

 

コーナーを走る勢いで膨らみ勢いを殺さず立ち上がりスピードを上げキングヘイローと並走、そして頭ひとつリードしそのままゴールテープを引きちぎった。

 

 

「あははーーっ勝っちゃった」

 

「はぁ、はぁ、、流石ねウララさん、完敗よ」

 

 

ハルウララの肩を叩いた後キングヘイローは姿を消した。

 

 

「あれ?キングちゃんは?」

 

「いまはさがすんじゃない。それよりみごとであったぞ」

 

「これで私、、Aランクに!はあぁぁ、、夢みたい、、」

 

「よろこぶのはまだ早いぞ!まだうえがあるのだからな」

 

「はいっ!」

 

 

そうは言ってもグラーシーザの頬は緩む。危ない場面もあったが価値のある勝利を収める事ができたのだから。

 

 

喜び駆け回るハルウララを暖かい目で見守ってゆく。

 

 

 

そんな午前中が終わり二人は部屋を引っ越していた。BランクからAランクに上がった事により部屋は以前よりも豪華になりふかふかなベッドを見たハルウララはさっそく飛び込んでいた。

 

 

「あはははっ♪凄いよ♪すごく跳ねる♪」

 

 

柔らかなベッドを堪能し気が付けば眠りへと落ちていたハルウララを見た後グラーシーザは一人レース場へと来ていた。それは。

 

 

「さっきのBランクのレースのリプレイが見たい?構わないよ」

 

「うむ、わるいな」

 

 

レース場にある控え室にて先ほどの試合を見直してゆく。あの時ハルウララが何故膨らんだのかその謎と改善策を探すために。

 

 

「うーむ、、、」

 

 

何度場面を繰り返し見てみるのだが膨らんだ理由が分からず、しかしキングヘイローは膨らまずにインを駆けている。何故だ?

 

 

「これはスピードと技術の違いだよ」

 

「むっ。どういうことだ」

 

「ハルウララはスピードを殺さずコーナーに入った。だから遠心力が働き外へ外へと膨らんでしまったのだよ。対するキングヘイローはスピードを落としインを維持している、だから膨らまず立ち上がりも良かったんだよ」

 

「なるほどな。いいべんきょうになった」

 

「だけど上位のウマ娘となればスピードを殺さずインを攻めてくる。今のハルウララではAランクを維持が精一杯かもしれない」

 

「ふんっ、ならばあたしとウララはおまえのけんかいをくつがえしてやる。その目でみているのだな。それとコースをすこしかりるぞ」

 

 

お礼を言ってグラーシーザは誰も使ってないコースを走る事に。膨らむ理屈は分かった。ならば膨らまず走る方法を探すだけだ。

 

 

スタート地点から全速力で駆け出し第一コーナーを曲がる。その時からインを離れ膨らむ。そしてニコーナーに差し掛かる頃には人が入れる程の隙間が空く。それならばと次のストレートでスピードを蓄え第二コーナーへ。少しだけスピードを殺し走ればインを維持する事ができた。

 

 

「うーむ」

 

 

確かにスピードを落とせばイン(最短距離)を綺麗に曲がれる。だがそうすればアウト側から抜かれてしまうだろう。

 

 

考えながらグラーシーザは第一コーナーへ入るがやはり膨らみインから離れてしまう。ならばと体重をかけながら曲がるのはどうだろう?その答えを合わせるため第二コーナーでスピードを殺さずインを走りながらインへと体重をかけてゆく。

 

 

「おぉ」

 

 

グラーシーザはスピードを殺さずインから離れずコーナーを曲がってゆくのだが足がもつれ転んでしまう。

 

 

「いたた、うーむ」

 

 

うまく走れれば良いが転んでしまっては意味が無い。今後の課題が見つかり満足気にグラーシーザは部屋へと帰ってゆく。

 

 

(一体あいつはなんだ?)

 

 

困惑したウマ娘達の目線を気にする事なく。

 

 

「よーっしウララ、こんやはよるごはんをたべにいこうではないか」

 

「やった♪私ニンジンご飯食べたい♪」

 

「うむ。ぱぁっといくぞ!」

 

 

笑顔のハルウララの手を引き二人は夜の街へと消えてゆく。

 

 

 

 

 

Aランクのレースを1週間後に控えグラーシーザはコーナーの事をハルウララに話しそれに念を置いた練習をする事を伝えていた。

 

 

「あの時キングちゃんに抜かれちゃいましたからね、、了解です!でもどうやってそれのトレーニングをするの?」

 

「そこなのだ。あたしもいまいちいいトレーニングほうほうが見つからなくてな」

 

「体重をかけバランスを取りながら走る。うぅん、、思い付かない、、」

 

「これをかいぜんできなければはいぼくしてしまうかもしれない。はいぼくに繋がるのであればかいぜんしなければならないからな」

 

「そうだ、あえて膨らむのはどうかな?」

 

「どういうことだ?」

 

「( にそって走るんじゃなくてく( のように走るんだよ♪」

 

「???」

 

 

言葉での説明が伝わらず身振り手振りで説明してゆきようやくグラーシーザは納得した。コーナーにそって走るのではなくあえて膨らみへの字に走るというのだ。

 

 

「なるほど。たしかにコーナーにそわないぶんスピードを落とさずにはしれるのかもしれん。だがインよりも長いきょりを走ることとなりふりになるぞ」

 

「そこは私の元気と気合いでカバー♪」

 

「ならばいちどためしてみようではないか」

 

 

思い立ったらすぐ行動。二人はレース場に練習をしに来ていた。

 

 

「むっ、なにやらさわがしいな」

 

「これは、、もしかしてSクラスのレース!?」

 

 

駆け出してゆくハルウララの後を追ってゆきレース場に入ると普段は誰も居ない観客席が観客で埋め尽くされ割れんばかりの声援を送る。声援はゲートへと向かうウマ娘へと送られている。

 

 

[さぁ始まりました第113回トレセン学院Sクラスレース。まずは選手の紹介です!一番、無敗のテイオーことトウカイテイオー!二番、青薔薇の刺客、ライスシャワー!三番一度走れば止まらない、重量級キタサンブラック!四番、静かなる情熱、ダイワスカーレット!五番、食べるご飯は全てこのために!オグリキャップ!六番、暴走!爆走!ツインターボ!走者火花を散らしながら今ゲートイン!勝利の栄光を掴むのは誰だ!!]

 

 

地を響かせる声援を受けながらウマ娘達がゲートへと入ってゆき合図を待つ。

 

 

そしてファンファーレが響き走者一斉に走り出した。

 

 

 

その走り、別格。フォーム、スピード、技術、全てにおいて今までのウマ娘を超えている。瞬く間に3000メートルを走破し勝利の雄叫びを上げるのはトウカイテイオー。

 

 

『テイオー!テイオー!テイオー!テイオー!!』

 

 

 

会場から湧き上がるテイオーコールに手を振りながらウイニングランで答える姿はまさに帝王の風格。

 

 

練習の為に来た二人はあまりの光景に鳩が豆鉄砲を喰らったかのように唖然と立ちすくんだ。ハルウララに至っては膝が震え今にも座り込んでしまいそう。

 

 

「なぁウララ、お前はあのぶたいにたちたいか、あのぶたいではしりたいか」

 

「私は………走りたい!あんなにみんなに見てもらいながら走ったら絶対楽しいよね♪」

 

「ふふふ。ならともにあのぶたいへと立とうではないか!そして奴(トウカイテイオー)をくだせ!」

 

「はいっ!ウララ頑張るよ♪」

 

 

決意を新たに二人はそっとその場を離れてゆく。

 

 

「それでなにのれんしゅうをしようとしていたのだ?」

 

「えっと、なんだったっけ?」

 

 

Sクラスへ殴り込む勢いだが彼女達にはまだAランクという壁が立ち塞がる。そして次のAランクのレースでは今回のレースで降格したウマ娘が混ざる。降格したウマ娘にとって意地でもSランクに返り咲きたいという執念がレース場に漂う。

 

 

「よし、お前のはしりを見せてやれ!」

 

「任せてトレーナーさん!」

 

 

しかしそんな執念などハルウララにとってはどこ吹く風。やる気に満ちた瞳でゲートからグラウンドを睨む。

 

 

そしてファンファーレが響き走者一斉に身構えゲートオープンと共に一気に駆け出した。

 

 

第一ストレートを快調に走り迎えた一コーナー、スピードを落とさず飛び込みニコーナーへと足を進め一気に加速し前方を走るツインターボを追い抜く為歯を食いしばり走る。

 

 

出バした瞬間から圧倒的な加速を魅せるツインターボにハルウララは追跡を余儀なくされていたのだ。それでもツインターボの背に食らいつき追い抜く隙をうかがい目を光らせる。

 

 

全速力で駆け抜けた第二ストレートを抜け二人は三コーナーを周りハルウララは以前グラーシーザに話したへの字作戦を実行する。

 

 

インを丁寧に直走るツインターボをアウトから追い抜くという無謀な作戦。それでも勝つ為にハルウララは左へと膨らみ追い抜きをかける。

 

 

「あっ!」

 

 

四コーナーに差し掛かった時突如ツインターボの速度が落ちその横をハルウララが走り抜ける。

 

 

追い抜いたツインターボを振り返る方なくハルウララはゴールテープを切りそこでやっとハルウララは後ろを振り返った。

 

 

(あはは、、、)

 

 

そこにはヘロヘロになりながらもゴールへと向かうツインターボの姿が。初っ端から全力で疾走した為スタミナ切れをおこしていたのだ。

 

 

「みごとな走りだったぞ」

 

「いえ、トレーナーさん。私は、、、」

 

「しょうぶとは結果がすべてだ。今はかったじぶんをほこれ。それこそが正義」

 

 

勝利に急ぎペース配分を誤ったツインターボだから勝てた勝利。Sランクへと上がる事ができたのだがハルウララの心には不安が残る。この勝利は実力では無く運だったと。その事をグラーシーザに伝える事に。

 

 

「そういうのであれば運すらじつりょくにしてしまえばいい。それ程までのじつりょくをつけるのだ」

 

 

次のSランクのレースまで残り2週間。二人の練習は過酷を極めていた。以前と続き階段登り、砂浜走り。それにもう一つグラーシーザが思い付いたトレーニングを行う事に。それは。

 

 

 

「泳ぐぞウララ!」

 

「はいっ!」

 

 

水泳である。水泳は全身運動であり全身の筋肉と肺活量の向上、体力作りを同時に行う事ができる。それにグラーシーザ達が泳いでいるのはプールでは無く海。波や海流にあえて逆らって泳ぐ事により全身に水の抵抗を受けながら二人は泳いでゆく。

 

 

「トレーナーさん!足がつった!」

 

「うぉっ!?あたしにつかまれ!」

 

 

途中トラブルを起こしながらも二人は沖合にある小島を目指して泳いでゆく。

 

 

新たなるトレーニングを始め2週間が経ちついにSランクでのレース当日となった。

 

 

「ついにこの日がきたか、、おい、このレースにかつことができたらほうびをやろう」

 

「じゃあトレーナーさんがいつも被ってる帽子が欲しい!」

 

「むっ、、このぼうしは、、かまわん。かつことができたならお前にこのぼうしをゆずろう」

 

「うん♪行ってくる!」

 

 

控え室を抜けハルウララは歓声轟くレース場へ。少し固い表情をしながらゲートへと入ってゆく。

 

 

アナウンスによる選手紹介の後ファンファーレが響き六名のウマ娘が一斉に走り出した。

 

 

(これが、、、Sランク、、、!)

 

 

結果は惨敗であった。前半、中盤、後半に至るまで誰一人として追い抜く事もできず引き離され続け最後方ぽつんとひとりハルウララ。

 

 

その光景に心を折られたのはグラーシーザだった。独学とはいえハルウララをCランクからSランクまで引き上げ育成に絶対の自信を持っていた。だがSランクを維持し続けるウマ娘達にはそれが通用しなかった。ハルウララが六位でゴールするのを見届けその場に崩れ落ちた。

 

 

(これがSランクのじつりょくか、、、)

 

 

帽子の隙間からウイニングランを決めるトウカイテイオーをジロリと睨むとつばを下げ視界を塞いだ。

 

 

そんな時テイオーコールに混ざりハルウララの名を呼ぶ声が。その声は次第に大きくなりハルウララコールが会場を巻き込んでゆく。

 

 

無敗のトウカイテイオーと対極する無勝のハルウララがSランクのレースに出るなんて、結果は最下位であったが健闘を讃えるコールが沸き起こる。

 

 

 

それが面白くないトウカイテイオーだが勝者の余裕を浮かべながらその場を去ってゆく。

 

 

(……………)

 

 

足音に気が付き目を向けるとそこにはハルウララの姿が。目を向けているとグラーシーザの元まで歩み泣き崩れた。

 

 

「いこう」

 

 

立ち上がりハルウララの肩を抱き二人はレース場から姿を消した。

 

 

レース場外にあるベンチに座り未だ泣き続けるハルウララにかける言葉が見つからずただ泣き続けるハルウララを見ていた。しばらくしてしゃくりあげながらグラーシーザの顔を見上げた。

 

 

「とれーなさん、、、私、すごく悔しい。たくさんトレーニングしてあんなに頑張ったのにビリなんて、、でもね」

 

「・・・なんだ」

 

「すっごく楽しかった!たくさん応援してくれる人がいて私より早いウマ娘達と走れてすごく楽しかった!ねぇトレーナーさん、もう一回Sランクを目指そ!私負けてもめげないから!」

 

 

目に涙を浮かべ笑顔で話すハルウララにグラーシーザは耐え切れなくなった。

 

 

「ジュースを買ってきてやろう。ここでまっていろ」

 

 

立ち上がり背を向けグラーシーザは自販機を目指して歩く。決してハルウララには涙を見せないのだ。

 

 

 

 

 

 

Sランクの高級ホテルのような部屋から追い出されAランクの部屋へと戻る。あの部屋は束の間の夢だったかのよう。

 

 

部屋にでベッドに寝転がるハルウララに念入りなマッサージを行いながら次なるトレーニング方を考えてゆく。

 

 

(そうだ。あたしにはあいつがいる)

 

 

一つの方法を思い付きグラーシーザは不敵に笑う。それに気が付かずハルウララはマッサージの心地よさによだれを垂らしているのだが。

 

 

気が付けば眠りに落ちてしまったハルウララから離れグラーシーザは街の地図を開きルートを考えてゆく。

 

 

「それがさいてきかいか」

 

 

それは学園から街を一周するルート、一周の距離はおおよそ10キロほどでレース場の三倍の距離がある。その道中には長いストレートがあり山間部にはアップダウンもある。練習にはもってこいだろう。

 

 

うぅーんっと体を伸ばしグラーシーザも眠る事に。ベッドの真ん中を占領するハルウララを少し退けベッドに寝転がり心地良さそうに眠るハルウララに微笑んだ後眠りへと落ちてゆく。

 

 

次の日二人は学園の前に立っていた。

 

 

「今日はどんなトレーニングをするの?」

 

「ふふふ。きょうはこいつを使う」

 

 

グラーシーザがキラーズを意識すると光と共に姿を見せたのはグラーシーザが扱う神馬。

 

 

「うわぁぁぁっ♪ねぇねぇ、何これ?カッコいい!」

 

「あぁ、こいつはあたしのあいぼうだ。なはないがな」

 

「へぇーーーっすごく速そう!なんて生き物なの?」

 

「こいつは●だ!あれ?」

 

「どうしたの?」

 

「●なのだが●といえんぞ」

 

 

この世界に馬はおらず、馬という言葉が存在しない為馬と言えず。それはさておきなぜグラーシーザが神馬をトレーニングに選んだかだ。

 

 

馬の走る速度は人を乗せた競争馬で60キロ程。野生の馬であれば88キロにも達する生き物だ。グラーシーザが扱う馬はキラーズの影響を受け強化されており時速100キロで走る事が可能となっている。この速度はウマ娘が走る速度より遥かに早い。そして神馬の頭にはトゲが生えている。

 

 

「このルートを走るぞ。いっておくがこいつに追いつかれたらこのトゲがささるとおもえ」

 

 

神馬の頭にあるトゲを撫でた後地図を広げルートを確認する。その後二人と一匹は走り出した。

 

 

「ぬおぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」

 

「わぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 

「?」

 

 

商店街を駆け抜けてゆくと叫びながら必死な形相の二人に人々が困惑を浮かべ走ってゆく二人を見送る。その後見た事もない生き物が後を駆ける姿を見て再び困惑を浮かべる。あいつらは何をしているのかと。

 

 

後ろを走る神馬に追いつかれまいと二人は駆ける。全ての生き物において追いかけられ逃げる時本能的に死を意識し二人は死から逃れる為火事場の馬鹿力を発揮し追う馬から逃げるのだ。

 

 

このトレーニングの目的は最高速度の上昇と全力疾走のキープが狙いだ。現在のハルウララの速度より速いウマ娘達を抜くには速度を上げる必要があり最高速のキープが必要と考えた結果だ。

 

 

「ぬおっ!?」

 

「トレーナーさーん!!」

 

「ウララははしれ!ふりかえるな!」

 

 

追いつかれたグラーシーザが神馬に掬い上げられ宙を舞うがグラーシーザは叫ぶ。そして残されたハルウララは覚悟を決め駆け抜けてゆく。

 

 

さらに今までのトレーニングも過酷なものになっていた。

 

 

「いけ!ウララ!」

 

「はいっ!」

 

 

千段の階段をウサギ跳びで登っていたのを今回から相手をおぶさりウサギ跳びへ。

 

 

お互い変わらない体型だがおぶる事により負担は一気に増える。それでも階段を駆け上がり駆け下り交代し駆け上がり駆け下り。それが終われば海岸へ行き砂浜をタイヤを付けて駆けてゆく。タイヤも一つだったのを三つに変えコースも二往復へ変更。そして水泳も五キロ先の小島へ往復しさらにもう一往復。

 

 

過酷なトレーニングをこなしSランクを賭けたAランクのレースへと挑む。

 

 

 

走者はハルウララ、ツインターボを含めた六名。以前は追いつく事が出来なかった先攻逃げ切りを得意とするツインターボの疾走に追いつき追い抜く事ができるのか。

 

 

グラーシーザが緊張しながら見守る中ハルウララは笑顔でゲートに立つ。

 

 

そしてファンファーレが鳴り響き走者構え合図と共に走り出した。

 

 

結果はグラーシーザの予想を大幅に上回る結果となった。レース開始と共に圧倒的な加速を魅せるツインターボに並走し抜き去ったのだ。思わずグラーシーザが立ち上がり刮目する。

 

 

そして課題であったコーナーもスピードを維持したまま駆け抜けインから膨らむ事なくハルウララは3000メートルを一位を独占したまま走り抜けた。

 

 

予想以上の結末にグラーシーザはニヤけるのだがすぐに真顔に戻り戻ってきたハルウララを褒める。

 

 

「よくやった。それでこそあたしがきたえたかいがあったというものだ」

 

「うん!トレーナーさんありがと♪」

 

「うわっ、だきつくでない!」

 

 

そう言いつつもハルウララを抱きしめているのだが。

 

 

そして3週間後に控えたSランクのレースに向けて二人は猛特訓を行なっていた。雨の日も風の日も神馬に追われ階段を駆け上がりタイヤを引きずり海を泳ぐ。流石にレース前日は練習を控えのんびりとした日を過ごす事に。

 

 

「よし、今日はあそびにいくとしようではないか」

 

「えぇ、トレーニングしようよ」

 

「ふんっ、身を休めるのもトレーニングのいっかんだ。むだぐちをたたくひまがあるならぐーたらしろ」

 

「それ言ってる事おかしいよ?」

 

 

そんな訳で二人は商店街へと遊びに来ていた。今夜の食事の買い出しを兼ねて。

 

 

「ウララちゃん!いよいよ明日だね!」

 

「応援してるよ!」

 

「頑張れよ!」

 

 

二人が歩くと商店街の人達が声をかけてくれる。一人が声をかけるとまた一人また一人とハルウララに声援を送る人が増えてゆく。

 

 

「あはは♪ウララ頑張りまっす!」

 

「うむ。おまえたちのおうえんはけっしてむだにせんぞ」

 

 

一人一人に丁寧に対応しながら二人は買い物を終え部屋へと帰ろうとしていた。そんな時。

 

 

「ウララさん」

 

 

名を呼ばれ振り返るとキングヘイローの姿が。

 

 

「明日のレース、絶対に勝ちなさい。ウララさんに負けた私が言うのもなんですけど」

 

「キングちゃん、、、」

 

「言っておきますけどこれはライバルでは無く友としての言葉よ。ライバルとしては今すぐにでもウララさんを抜きたくてウズウズしているわ」

 

「ふんっ挑戦ならいつでもうけつけてやる。まっ、かえりうちだがな」

 

「宣言するわ、私は必ずウララさんを抜きキングの名に相応しい勝利を手にする。だから勝って!高みで私が来るのを待ってなさい!」

 

「うん!私待ってる、、だからキングちゃんも!」

 

「首を洗って待ってなさい」

 

 

固く握手を交わした後おーほっほほほっと笑いながらキングヘイローはその場を去ってゆく。

 

 

「いいともをもったな」

 

「うん、、トレーナーさん!私は絶対に勝ってくる!」

 

「あぁ!そのいきだ!」

 

 

姿が見えなくなるまでキングヘイローを見送り二人は部屋に帰ってきた。

 

 

「ねぇトレーナーさん。一緒にお風呂にはいろ♪」

 

「むっ、お前の頼みであるならしかたない。一緒にはいってやろう」

 

 

グラーシーザの言葉に早速お湯を張りに浴室へと向かう。しばらくして。

 

 

 

「はぁ〜極楽極楽〜」

 

「うむ」

 

 

二人は湯船に浸かりのんびりとした時間を過ごす。二人が足を伸ばしてもまだ余裕があるこの湯船。

 

 

「ってトレーナーさんお風呂でも帽子かぶってるんだね」

 

「あたしのお気に入りだからな。ねるときいがいははだみはなさずだ」

 

「ちょっとかぶらせて」

 

「ダメだ。このぼうしをお前がかぶるのはあしたのレースで勝ったときだ。そのことをわすれるな」

 

「はぁーい」

 

 

湯船から出て頭を洗うグラーシーザの横には帽子が。目を瞑っている隙を付きハルウララは帽子をかぶってみる事に。

 

 

少し大きな帽子は耳をすっぽりと覆いちょうど良い大きさ。似合っているかは分からないがかぶっていると安心するのを感じていた。少し堪能してからそっと元の場所へ戻してゆく。

 

 

「よーっし、あたしがお前のせをながしてやろう」

 

「お願いします♪」

 

 

グラーシーザに背を向けて座るハルウララの頭にお湯をかけ頭を丁寧に洗ってゆく。

 

 

「かゆいとこはないか」

 

「うん、気持ち良いよ♪」

 

 

耳に泡が入らないように髪を洗いお湯で流してゆく。

 

 

「おまえ、、しっぽがはえていたのか」

 

「えっ、今気が付いたの!?」

 

 

背中を洗っている時驚く声を聞き驚く声を返す。

 

 

「いや、まえから知っていたがいちどもこのことにふれてなかったからな」

 

「あはは、、次は私がトレーナーさんを洗ってあげるね♪」

 

「むっ、あたしは良い」

 

「ほらほら♪そんな事言わないで♪」

 

 

石鹸を付けた手がグラーシーザの体を泡立ててゆく。少しくすぐったそうにしながらもその顔は笑顔だった。

 

 

そして丁寧に髪を乾かし二人はベッドへ。

 

 

「緊張して寝れないよぉ」

 

「そんなときはひつじをかぞえるといい」

 

「うーん、、あっ!トレーナーさんにくっついて寝たら眠れるかも」

 

「しかたないな。ほら」

 

「えへへ♪」

 

 

グラーシーザの差し出した左腕を枕に身を寄せてゆく。そんなハルウララを抱きしめ二人は眠る。

 

 

次の日二人は同時に目を覚まし顔を見合わせる。

 

 

「おはよ〜ぉ〜」

 

「おはよう。いまちょうしょくをつくってやるぞ」

 

「もーすこしだけ、、」

 

 

ベッドから抜け出そうとするグラーシーザにしがみつき布団へと潜ろうとする。その頭を撫でグラーシーザはベッドを降りキッチンへ。

 

 

「ほらできたぞ」

 

「はぁーい」

 

 

もぞもぞとベッドから降りテーブルへ座り朝食を食べてゆく。レース開始まで後二時間。朝食を食べ終え食器を片付け落ち着かない二人は散歩に行く事に。目的地はあの時二人が出会った崖。

 

 

「ここで私たちが出会ったんだよね」

 

「あぁ、あれからもうにかげつか」

 

 

手すりに持たれ景色を眺めてゆく。あの時出会わなければきっとここには花束が添えられていただろう。

 

 

「ありがとうトレーナーさん」

 

「ふん、れいを言うのがはやすぎだ」

 

「そう、だね」

 

 

しばらく風に吹かれた後二人は会場へ向かう。

 

 

 

「うわぁー凄い人だね」

 

 

レース会場には人々が長蛇の列を成し整理券を貰っている姿が。それを横目に控え室へと。

 

 

「きんちょうしているのか」

 

「少し、、、」

 

 

椅子に座り体を振るわせるハルウララの頭を撫でてゆく。そんな時アナウンスによりハルウララの名が呼ばれた。

 

 

「いってこい!そしてはしれ!」

 

 

ばしんっと背を叩かれハルウララは立ち上がった。

 

 

「はいっ!!」

 

 

 

『さぁ遂に始まりましたトレセン学院Sランクレース第115回!まずは選手のしょーかいですっ!』

 

 

『一番、不敗のテイオーことトウカイテイオー!」

 

『二番、青薔薇の刺客ライスシャワー!』

 

『三番、一度走れば止まらない!重量級キタサンブラック!』

 

『四番、食べるご飯は全てこの為に!オグリキャップ!』

 

『五番、静かなる情熱、ダイワスカーレット!』

 

『六番、113転び114起き、ハルウララ!』

 

『今選手達がゲートへと入ってゆきます!さぁ!この勝負でトウカイテイオーの不敗神話を破る者は現れるのか!そして115勝の快挙を成し遂げるのか!運命の第115回レース、間も無くスタートです!』

 

 

アナウンスを聞きながら、歓声を聞きながらハルウララは大きく呼吸をし真っ直ぐを見つめる。その視線の先に勝利を見据えて。

 

 

やがてファンファーレが流れゲートが開く。

 

 

『さぁ走者一斉にスタートを切りました!先攻するのはトウカイテイオー、その後をオグリキャップ、ライスシャワーが追う!ダイワスカーレット、キタサンブラック、ハルウララの順に先頭を追う!』

 

『迎える1コーナー、ここでハルウララ、キタサンブラックを抜きダイワスカーレットを追う!前方オグリキャップを抜きライスシャワーがトウカイテイオーの後に着く!』

 

『そして迎えた2コーナー!ハルウララ!力強い走りでダイワスカーレットを抜き先頭集団に喰らいついた!』

 

『迎えた第2ストレート、走者一気に加速し駆け抜けてゆく!』

 

『3コーナ、ここでオグリキャップに追いついたハルウララ!インを走るオグリキャップをアウトから抜き去りライスシャワーを追う!』

 

『4コーナー!トウカイテイオー、ライスシャワー並走しハルウララの行手を阻む!』

 

 

(私は、、、、負けないっ!!!)

 

 

『ハルウララ!走る、走る、走る!前方二人を追い抜かんと直走る!そして、、、並んだ!走者三名今ここに並びました!』

 

 

「頑張れハルウララ!!」

 

「負けるなーー!!」

 

「ウララさんっ!!」

 

「ウララ!負けたらだんざいだっ!!」

 

 

『さぁレースも大詰め!迎えた第3ストレート!ゴールまで残り500メートル!』

 

『残り400!』

 

『300!ここでハルウララ!走者二名を抜き前に出たっ!!』

 

『200!ハルウララ走る!あっと!ここでテイオー!ハルウララと並んだ〜っ!』

 

『残り100!』

 

 

「私は絶対に勝つ!勝負だ!テイオー!」

 

「負けるものか!勝負だ!ハルウララ!」

 

 

一瞬視線をぶつけ合いすぐさま目の前に迫るゴールを睨み疾走。そして。

 

 

 

『走者二名並んだまま今ゴール!勝敗は写真判定へ持ち越されます!』

 

 

 

静まり返るスタジアムに静寂が訪れ誰もが試合の結末を待ち望む。

 

 

 

 

『はい!出ました!勝負の行方はっ!?』

 

 

設置された大型スクリーンに二人の姿が映し出された。そこにはわずかな差でゴールテープを切るハルウララの姿が。

 

 

『第二115回トレセン学院Sランクレース!制したのはハルウララですっ!!!みなさま盛大な拍手をおねがいします!!』

 

 

歓声が湧き上がり割れんばかりのハルウララコールが響く。そんな中ハルウララは唖然とした顔で立ちすくんでいた。

 

 

「ナイスガッツ!次は、、負けないよ!」

 

 

そんなハルウララの肩を叩いたのはトウカイテイオー。笑顔で差し出された拳に拳をぶつけてゆく。

 

 

「やったぞ!ウララ!さぁ!ウイニングランだ!」

 

「・・・・はいっ!!」

 

 

沸き立つ歓声に、コールに応え手を振りながらゆっくりとコースを走ってゆく二人にハルウララコールが湧き上がる。

 

 

「やくそくだ。あたしのぼうしをお前にやろう」

 

「あはっ♪」

 

 

グラーシーザが帽子を取ると深々とハルウララの頭に被せてゆく。そしてつばを少し上げニィっと笑った。

 

 

「トレーナーさん!私この帽子宝物にする!」

 

「無くしたり汚したりしたらしょうちせんからな。大事にするんだぞ」

 

「うん!私の、、、宝物!」

 

 

『ウラーラ!ウラーラ!ウラーラ!ウラーラ!』

 

 

 

 

 

……………………………

………………………

…………………

………………

……………

…………

………

……

…

 

 

 

二人は再び崖へ来ていた。手すりに持たれながら夕焼けを眺めている。

 

 

「ありがとうトレーナーさん」

 

「あたしはおれいを言われるようなことをしたおぼえはない。ただじぶんのせいぎをつらぬいただけだ」

 

「それでも、、ありがとう。私を助けてくれて、私のトレーナーになってくれて」

 

「まっ、そう言われてわるいきはせぬがな」

 

 

照れながら鼻を掻く。そんな時グラーシーザの体が光に包まれてゆく。

 

 

「トレーナーさん!?」

 

「どうやらおわかれのようだ。心配したなかまがあたしをもとのせかいにもどそうとしている」

 

「そんな、、お別れなんて嫌だよ、、」

 

「なくなウララ、ぼうしをゆずってやったではないか。それにお前にはともも居る」

 

「約束だ。あたしはまたここにもどってくる。それまでにランクおちしていたらゆるさないからな」

 

「トレーナーさん、、うん!ウララ頑張るよ!」

 

「約束したからな!またな!ウララよ!」

 

「うん!またねトレーナーさん!」

 

 

気が付けばグラーシーザの姿は無く。それでもハルウララの頭にはグラーシーザの帽子が。

 

 

沈みゆく太陽の日差しを遮るべくハルウララは帽子を深く被った。

 

 

 

 

 

 

「いたた、ここは?」

 

 

グラーシーザが目を開けると馬の顔が飛び込んできた。その馬の名はハルウララ。

 

 

「おまえか、、よし、また撫でに来てやろうではないか」

 

 

ハルウララの頭を撫でグラーシーザは城に向かい歩いてゆく。

 

 

 

次の日、城にかかる橋のふもとで準備運動をするエルキュールの元に一人のキル姫が歩み寄る。

 

 

「エルキュール」

 

「どうしましたグラーシーザ?」

 

「あたしもいっしょに走ってもよいか」

 

「はいっ、走りましょう!」

 

 

二人で準備運動をこなし二人は走り出した。

 

 

「なぁエルキュール。走るのはとてもきもちがいいものだな!」

 

 

 

グラーシーザ「うまむすめ!」ハルウララ「プリティーダービー」完

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ここまで目を通してもらいありがとうございました!


実際の競馬やウマ娘公式サイト、YouTubeを見ながら書き上げました。


実際のところ競馬に興味はなくそれでも名を知っているウマ娘がこのハルウララでした。競馬として一度も勝利を飾った事のないハルウララを勝たせてあげたい。そんな信念を思い付き筆を取る事となりました。その思いが伝わって貰えれば光栄です。
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