※この作品はR-18です。

黒ティルと僕と   作:やす、

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キル姫コラボ第5だんは神令されたダモクレスがゆくモンスターハンターの世界!


愛を探すダモクレスはモンスターハンターの世界で何を見るのか。


モンハンクロスの設定を意識して書いてあります、暇つぶし程度にどうぞ。


ダモクレス「モンスターハンター」

 

 

朝、目を覚まし体に纏わりつく銀の長髪を手櫛で解き大きく体を伸ばす。それからゆっくりとベッドから降りて服を着替え朝食を食べる為にリビングへと歩んでゆく。そんな時目を擦りながら歩くフライシュッツと会った。

 

 

「おはよフライシュッツ。なんだか眠そうだね」

 

「おはよーダモクレスちゃん、、ずっとゲームしてたから寝れてないんだよ、、、」

 

「それはフライシュッツが悪いよ」

 

「うーん、、でも上手くなりたいんだー」

 

 

大きく開けた口を手で押さえながら欠伸。そんなフライシュッツを微笑ましく見ていた。

 

 

朝食を食べ終えた後フライシュッツは再び自室へと戻ってゆく。ダモクレスは愛を感じるものを探す為に一人トレイセーマへと向かう事に。

 

 

 

「ふふふーん♪ふふふーん♪」

 

 

暖かい日差しを浴び柔らかな若草を踏みながら歩くご機嫌な道中。目線の先にはトレイセーマの城壁が見える。

 

 

そんな時気が付けばダモクレスは鬱蒼とした森の中を歩いていた。

 

 

「あれ、ここはどこだ?まっ、いっか」

 

 

先程まで歩いていた平原から一瞬にして一転した光景に戸惑うのだが大して気にする事もなく歩んでゆく。

 

 

そんなダモクレスを木々の間から狙う獣が。

 

 

「!!」

 

 

気配を感じ振り返ると木を薙ぎ倒しながらダモクレスへと猛進する何かの姿が。恐竜を思わせる赤い皮膚に青く連なる棘が背を覆う。そして長い尻尾の先には剣の様に硬化した皮膚。ダモクレスの眼前で鋭い牙が並ぶ大口を開け大地が震える程の咆哮を上げる。

 

 

「・・・・」

 

 

突如現れた怪物をダモクレスは唖然と見上げる。だがすぐに笑みを浮かべると同じく大きく口を開けて咆哮をあげた。

 

 

「がぉぉぉぉぉぉぉぉぉ〜〜〜!」

 

 

怪物の目を見ながら咆哮を上げると一瞬きょとんと。それでもダモクレスを捕食する為に攻撃を開始する。

 

 

巨大な体格にも関わらず俊敏に動き長い尻尾を振り回す。尻尾が当たった木がすぱんと斬れてゆくのだがダモクレスはひらひらと舞う様に攻撃を回避し笑顔を浮かべる。

 

 

「あはははははっ♪鬼さんこっちだーよー♪」

 

 

怪物にダモクレスの話す言葉の意味は分からない。だが挑発されているという事は分かる。ムカつく獲物を捉える為に怪物は尻尾を地面に擦り始めた。

 

 

「ねぇねぇ、何してるのー?」

 

 

攻撃をやめ尻尾を擦り始めた怪物に興味を持ち話しかけてゆく。その時辺りの気温が上昇している事に気が付いた。

 

 

その原因は怪物の尻尾だった。地面に何度も擦り付ける事により摩擦を起こし尻尾は熱を帯び紅く染まる。ダモクレスがそれに気が付いたのと尻尾により打ち払われるのは同時だった。

 

 

「いたたたた、、」

 

 

尻尾を振り一回転、それを回避したダモクレスに追撃の尻尾が振られ打ち払われたのだ。人間より遥かに頑丈なキル姫だが巨大な怪物の攻撃を受け吹き飛び岩に叩きつけられ一瞬呼吸が止まり意識が飛びそうになる。

 

 

顔を上げるとダモクレスを捕食する為に開けた大口が。それを見て不敵に笑うとキラーズを意識し蒐集剣・コマンド・ヘルをその手に召喚しゆらりと立ち上がった。

 

 

「ふぅ〜ん?じゃあ次はクレス様の番だね」

 

 

おちゃらけた雰囲気が消え身が縮こまってしまう程の重圧を放つ。一度それに怖気付いたが獲物を逃さんと食らいつこうとする。

 

 

「そこまでだディノバルド!」

 

 

誰かの声が聞こえるのと同時にひらりと一人の鎧を纏う男が飛びディノバルドと呼ばれた怪物の頭部へと斬撃を浴びせる。不意を打たれた怪物は堪らず悲鳴をあげ踵を返し森へと逃げて行く。

 

 

「大丈夫かお嬢さん。酷い怪我だな、、」

 

「もぉーせっかくクレス様が攻撃しようとしたのに」

 

「それだけ喋れるのなら大丈夫だな。っと、村まで運んであげるよ」

 

「大丈夫だよ、っとと、、」

 

 

ダモクレスのお腹には先ほどの攻撃で付けられた傷痕が横一線に走る。それでも立ち上がったのだが男へとよろけてしまう。

 

 

「助けてくれてありがとう。君の名前は?」

 

「俺の名は、そうだな。ハンターとでも呼んでくれ。お嬢さんの名前は?」

 

「ダモクレス・神令・ヘル。クレスって呼んでよ」

 

 

ハンターにおんぶされながら二人は森を歩む。しばらくすると小さな村が見えてきた。

 

 

「ようやく見えてきたな。あれがベムラ村だよ」

 

「へぇぇ」

 

 

視線の先には山の中腹に数える程の家が並ぶ村。村というよりも集落と言った方が良いのだろうか?村の中心には小高い見張り台が立ちその近くには焼き場が設けられ炎が上がっているのが見える。

 

 

「ハンターおかえりー」

 

「無事で何よりだよ」

 

 

村に到着したハンターを見るなり老若男女問わずハンターへと話しかけてゆく。そんな村人一人一人に笑顔で話しながら本題へと入って行く。

 

 

「さっき森丘で助けたのだがどこの子を知らないか?」

 

 

ハンターの言葉に視線が背に居るダモクレスへと集まる。だが誰もが顔を見合わせ知らないと答えた。

 

 

「クレス様はティルヘルムから来たんだよ。トレイセーマってとこに向かってたんだけど」

 

 

ティルヘルム、トレイセーマ。その言葉に誰もが困惑を浮かべヒソヒソと聞き合うのだが誰もそれが何処にあるのか知らず。

 

 

「お前本気で言ってるのか?」

 

「むぅ、クレス様は嘘なんて付いてないよ、ほんとだよ?」

 

「まぁつまりお前はこの世界に迷い込んだって事か。よく分からんがそういう事ならそうなんだろうな」

 

「どうやったらクレス様は元の世界に帰れるのかな?」

 

「急ぎか?」

 

「いいや?」

 

「ならこの世界を楽しんでいけ。それにさっきの身のこなし、ディノバルドの一撃を受けても大した怪我をしていないところを見るとお前只者じゃないな?」

 

「うん、クレス様はキル姫っていうんだ」

 

 

くるりと体を回すとレースがひらりと舞う。その時ハンターはさっきまでお腹に付いていた傷が既に無くなっている事に気が付いた。

 

 

「そうか。ならお前もモンスターハンターにならないか?」

 

「モンスターハンター?」

 

「あぁ、さっきお前を食おうとしたモンスターから人や村を守る仕事さ。お前には良いハンターになれる見込みがある」

 

 

急な提案にうーんっとダモクレスは考える。どうせ元の世界に帰れそうもないしここに居ても退屈。それならばと返事を。

 

 

「うん、クレス様モンスターハンターになる♪」

 

「よし、そうと決まれば早速登録だ」

 

 

和かなダモクレスの肩を抱き二人は集会所へと向かう。その様子を困惑しながら住民達が見ていた。

 

 

モンスターハンターに登録する。そう聞いて堅苦しい審査などがあると思っていたのだが書類に名前を書きそれを提出するのみであった。

 

 

「書いたよー、それで他にも何かあるの?」

 

「以上だにゃ。あとはハンターさんから詳しい事を聞くにゃ」

 

「習うより慣れろだな。明日から頼むぞひよっこ」

 

「クレス様はひよっこじゃないよ、クレスって呼んでって言ったじゃんか」

 

「そのつもりだったが今日からお前が一人前のハンターになるまでお前はひよっこだ」

 

「むむむむむっ〜」

 

 

不満顔のダモクレスを連れて一軒の小さな家に。家の中に入るとベッドが二つにソファーと小さなキッチンだけの室内。

 

 

「小さな家だね。それになーんにもない」

 

「ハンターとはそうゆうものだ。いつ死ぬか分からんからな」

 

「ふぅーん?それでいつまで鎧を着けてるの?」

 

「あぁそうだったな」

 

 

鎧を解き玄関前にあるホルダーへとかけてゆく。フルフェイスのメットが取られるのを今か今かとダモクレスは待ち望む。

 

 

身の丈以上の大剣を振り回しダモクレスをおんぶし長距離を歩ける主は思っていたほど筋肉は付いておらずスラリとした体型。それでも体に張り付くインナーは筋肉を浮かび上がらせる。

 

 

「おぉ〜」

 

 

ダモクレスが歓喜の声を上げた。インナーと下着姿になったハンターの身体には無数の傷痕が残り潜り抜けてきた修羅場の数を物語る。そして何よりイケメンだという事。

 

 

「なんだよ、そんなに人の顔ジロジロ見るな」

 

「思ってたよりイケメンだなーって」

 

「それはお褒めの言葉として受け取っておくよ」

 

「ねぇお風呂は?」

 

「村に共同の温泉がある。行くか」

 

 

インナー姿のまま家を出てゆくハンターの後を追う。先ほど受付をした集会所の少し南側の斜面に湯気が立ち上る場所を見つけそこまで歩いてゆく。

 

 

「この村には他に何も無いがこの温泉は最高なんだぜ」

 

 

脱衣場でインナーを脱ぎタオル一つで温泉へと歩んでゆくハンターを見送りダモクレスも胸にある留め具を外しマントとレースを外し下着を脱ぐと何も持たずに温泉へと。

 

 

「おぉ〜良い眺めだね♪」

 

 

小高い場所に作られた露天風呂は村を見下ろし地平線の果てまで見渡す事ができる。景色を見ながらお湯を桶ですくい頭から浴びると湯船へと体を沈めてゆく。

 

 

「一狩り行った後の温泉は身に沁みるぜ。ひよっこもこの気持ちが分かる時がくるさ」

 

「クレス様はひよっこじゃ無いってば」

 

 

顔を膨らませて講義するがハンターはダモクレスの頭をわしゃわしゃと撫で豪快に笑う。完全に子供扱いされているがそれがどこか心地よく悪い気はしない。

 

 

「ねぇねぇ、明日はどうするの?」

 

「明日はドスファンゴの狩猟とハチミツの採取だ、明日は朝早いぞ」

 

「クレス様起きれるかなぁ」

 

「夜更かししなけりゃ起きれるさ」

 

 

そう言って肩まで湯に浸かる。それを見ながらダモクレスも肩まで湯に浸かる。

 

 

しばらくして体の芯から温まった二人は帰路へ。

 

 

「ハンターのルールについては明日クエストをこなしながら説明をする。以上で就寝」

 

「えぇ!?もう寝ちゃうの?」

 

「ハンターは日の出と共に目を覚まし日没と共に寝るのさ」

 

 

パジャマに着替えベッドへと潜り込むハンター。時計を見るとまだ午後七時を短針が指す。そんな時間から寝れるはずもなくしばらくベッドでゴロゴロしたのだが眠気が来ないダモクレスは一人村を散歩する事に。

 

 

「うわ、、ほんとにみんな寝ちゃってるよ」

 

 

村をぐるりと歩き回ったのだが外に人の気は無く。誰かと話す事を諦めてダモクレスは家へと戻りベッドへと潜り込む。

 

 

 

 

………………………………………………………………

 

 

 

 

「起きろひよっこ」

 

「むぅぅ、、クレス様はひよっこじゃないよぉ、、」

 

「ひよっこだから俺に起こされているんだろ。一狩り行くぞ」

 

 

しばらく布団の中でうずくまるのだが今日の予定を思い出し布団を跳ね上げベッドから飛び起きる。

 

 

「おはよーハンター、すぐ着替えるからね」

 

 

そう言ってパジャマを脱ぎ捨て普段の戦闘服へと身を包み蒐集剣・コマンド・ヘルをその手に握りしめる。

 

 

「見事な大剣だな。少し貸してもらっても良いか」

 

「うん良いよー」

 

 

ダモクレスから剣を借り握りしめ柄から刀身を眺めダモクレスへと返してゆく。

 

 

「いい剣だが血の匂いがこびり付いているな。ひよっこ、お前これで人を斬ったな」

 

「斬ったんじゃないよ、クレス様はみんなを愛してあげたんだ。ハンターもクレス様が愛してあげよっか」

 

 

ハンターが見たダモクレスの瞳は淫靡な雰囲気と底知れぬ狂気を感じさせこの娘は見た目は可愛らしいがただの娘では無いと悟らせる。

 

 

「俺はまだ死ぬ訳にはいかないから遠慮させてもらおう。行くぞ」

 

 

玄関を開けると太陽の日差しが部屋に入り込み目を眩ませる。眩しすぎる世界へと向かい部屋から出てゆく。

 

 

「ここが今日の狩猟場の森丘だ」

 

 

集会所でクエストの手続きをし二人がしばらく歩いた先に広がった景色は一面に草が生えのどかな雰囲気。草から吐き出された水分が空気に混ざり合いしっとりとした湿気とどこか懐かしい匂い。

 

 

一歩踏み出せば草の葉に付いた朝露が脚を濡らしひんやりと、もう一歩歩けば肌に付いた朝露が水滴となり流れ落ちてゆく。

 

 

「なんか良い、すごく良いよ♪」

 

「心踊るだろ?今からこの大自然と戦うんだぜ」

 

 

草の葉に目をやれば葉の間を飛び回る虫達に草にしがみつくカエルの姿。それを狙い蛇が地を這う。さらに目を向ければ草を食べる鹿の姿も。

 

 

「あの鹿を愛しちゃえば良いんだね?」

 

「あれはケルビだ、鹿では無い。ひよっこにハンターのルールを教えよう」

 

「うんうん、なになに?」

 

「第一のルール、無益な殺生をするな、だ」

 

「どうして?ここにいるモンスターは村を襲うんでしょ?みんな愛しちゃえば良いじゃんか」

 

「それをしてどうなる」

 

「えっと、平和になるよ♪」

 

「それは平和とは言わん。そんな事をしてみろ、生態系が崩れ俺達人間もいずれ死ぬ」

 

「なるほど、、」

 

「だから村に危害を加えるモンスターを狩るだけで良いのさ。今日のドスファンゴも村に降り畑を荒らす厄介者だからな」

 

 

草原を歩くハンターの後ろを付いて歩いてゆく。

 

 

しばらく進むと草原を抜け鬱蒼と生い茂る森の中へと入ってゆく。木と木の間に作られた土の道を歩き辺りを見渡してゆく。

 

 

甘酸っぱい匂いを感じ観察してゆけば樹液を溢れさせる木を見つけそこに虫達が集まり宴を開く。溢れ出す樹液を奪い合い身をぶつけ合いながら蜜を味わっている。さらに目を凝らすと囀り飛ぶ鳥の姿、バリバリと樹皮で爪を研ぐ獣が。

 

 

森の中は音で溢れ生命に満ちている。今ここに居る自分も自然の一部なんだと思えてしまう。

 

 

そんな時木々の間で生き絶えた獣を見つけた。酷い腐臭を放ち鼻をつまみながら観察すれば虫が腐肉を貪り毛皮が蠢くのが見える。

 

 

「あれを見てどう思う」

 

「汚い、かな」

 

「素直な感想だな。だがあれも自然の一部だ。あれはケルビの死体だがケルビは草を食う、ケルビが死ねば獣が肉を食い残った肉は虫が食う。そして最後は大地の栄養となり草木を芽生えさせる。こうやって自然は廻ってゆくのさ」

 

「・・・・・」

 

 

考えれば考える程心がむずむずする。自然が廻り回る。育み育み合う。

 

 

「先にハチミツを採取するとしよう。ひよっこはハチミツが何でできているか知っているか?」

 

「えっと、ハチの液?」

 

「遠からず近からずだ。あそこに花畑がある、行くぞ」

 

 

少し離れた場所に木漏れ日に向かい葉を伸ばす花達が。天然の花壇を二人で見ていると花に一匹の虫が止まり忙しそうに花の上を動く。

 

 

「あのハチが花の蜜を集めたものがハチミツだ」

 

「あの花からハチミツが取れるの?」

 

「あの花だけでは僅かにしか取る事はできない。だがハチ達は少しずつ少しずつ花から蜜を集め巣に持ち帰るんだ。あのハチを追うぞ」

 

 

羽を羽ばたかせ空を飛ぶハチの行方を追ってゆくと木の隙間へと消えてゆく。隙間に耳をすませば何千と重なる羽音が聞こえてくる。

 

 

「見てろよ」

 

 

ハンターが採取を行うと小瓶一杯に蜜が注がれる。木漏れ日に空かして見ると黄金に輝くハチミツが。

 

 

「ほら、食ってみるか?」

 

「うん」

 

 

小瓶に満たされたハチミツを指に付け口に運ぶと甘くまろやかな蜜の味。普段料理に使うハチミツの味だ。

 

 

「ハチミツってこんな風にできてるんだ。でもそれじゃあ花は蜜を取られるだけじゃんか」

 

「そう思うだろ?」

 

 

ハンターが一匹のハチを捕まえダモクレスに見せる。バタバタと羽と脚を動かし抵抗するミツバチを観察してゆく。

 

 

「うーん?この脚に付いてるのは?」

 

「これは花粉だ。花は蜜を与える代わりに花粉をミツバチに運んでもらっている。そうするとハチの脚に付いた花粉が他の花に付く。そうすれば花は実を付け種となる」

 

「お互いが利用し合ってるんだ」

 

「お互いが良いようにな。ひよっこもハチミツを採取してみろ」

 

「うん、やってみるね♪」

 

 

ハンターの見様見真似で巣の下に瓶を置き採取を行うと瓶一杯にハチミツが。蓋を閉める前に指ですくい口へと運んでゆく。

 

 

「う〜〜ん♪おいしぃ♪」

 

「あんまり食うと怒られるぞ。次はドスファンゴを探しに行こうか」

 

 

ハンターの腰にぶら下がるポーチへと瓶をしまい二人は森の中へと入ってゆく。

 

 

 

「こんな広い森の中でどうやってそのドスファンゴを探すの?」

 

「モンスターというものは必ず痕跡を残す。それを探し奴を見つけ出すのさ」

 

 

ハンターが辺りを見渡すと木に付けられた傷跡が。その近くには落ち葉を掘り返した跡も。

 

 

「まだ落ち葉が乾いていない。この辺りにいるはずだ」

 

「どうして分かるの?」

 

「ファンゴは鼻で落ち葉を掘り返し虫を食うのさ。この跡はファンゴが飯を食った跡、それに木に付けられた跡はドスファンゴが牙を研いだ跡だ」

 

「なるほど、流石だね」

 

「ひよっこも直ぐに分かるようになるさ」

 

 

跡を追い森を歩いてゆくと開けた場所に。そこにはイノシシの様なモンスターの姿が。フゴフゴと鳴きながら地を掘り餌を探したり日光浴を楽しんだり仲間の毛繕いをしたり。その様子を木々に身を潜めながら見ていた。

 

 

「あれがファンゴだ。そして一番体がデカく牙が生えているのがドスファンゴだ。ひよっこ」

 

「なーに?」

 

「お前の剣術を俺に見せてみろ。心配するな危なくなったら助けに入る」

 

「あいつらみんな愛しちゃって良いんだね?」

 

「あぁ」

 

「よぉーし!クレス様の愛の力見ててよね♪」

 

 

蒐集剣を舐める様に見上げダモクレスはドスファンゴ達の元へと歩んでゆく。

 

 

ダモクレスの接近に気が付いたファンゴが警戒の声を上げると一斉にダモクレスへと視線を向け戦闘態勢へ。それを見てダモクレスは不敵に笑う。

 

 

一匹のファンゴがダモクレスへと突進を仕掛けるのだがダモクレスは身を躱し剣を下方へ向ける。向けられた剣は突進するファンゴを容易く横二つに分けた。

 

 

「次は誰から愛して欲しいかな」

 

 

剣呑な眼差しがダモクレスへ注がれる。次の瞬間には一匹のファンゴの首が落ち横に薙ぐ剣先がもう一匹のファンゴへと刺さる。

 

 

仲間を殺され怒り狂うドスファンゴが猪突猛進を仕掛けてゆく。ファンゴとは違い口元から弧を描く様に生える大角を向けダモクレスへと向かう。

 

 

「いいよ、力比べしよっか」

 

 

土煙を上げながら迫るドスファンゴに剣を納め両手を突き出し大角の掴みドスファンゴと力を比べてゆく。ダモクレスより遥かに大きいドスファンゴに後ろへ押されたが直ぐにダモクレスが力で押し返してゆく。

 

 

「フゴ!フゴ!」

 

 

ドスファンゴにとって初めての経験だった。腕利のハンターとはいえ力でドスファンゴに勝てる者はおらず数々のハンターを牙で仕留めてきた。それなのに目の前のハンターは力でドスファンゴを押し返している。力を込め大地を蹴るのだが脚は空回りし土を蹴り上げるだけ。

 

 

「うりやぁぁ!!」

 

 

牙を持ち左へドスファンゴを投げ飛ばす。大きな体が地面に横たわった瞬間に首元を蒐集剣が貫く。

 

 

「よっし、ねぇねぇ見ててくれたハンター?」

 

「あぁ、見事だひよっこ」

 

「むぅ〜!クレス様をまだひよっこ扱いするの〜!」

 

「ドスファンゴはそこまで強いモンスターでは無いからな。よし、ドスファンゴから剥ぎ取るぞ」

 

「剥ぎ取り?」

 

「毛皮に肉、骨を頂くのさ。勝利の証ってやつだ」

 

「全部持って帰れば良いじゃんか」

 

「第二のルール、剥ぎ取るのは3回までだ。残った肉を獣が食い虫が食い大地に還る。自然に還す分を残すんだ」

 

「ふぅーん?」

 

 

ダモクレスが見ているとハンターが一礼をし腰に付けていたナイフを取り出しドスファンゴへ刃を立て切り分けてゆく。分厚い毛皮を切り内蔵を外し剥ぎ取ってゆく。その光景をただ見ていた。

 

 

「これも愛、だね」

 

 

大地の恵みに感謝をし独自のルールを設けけして取り過ぎず無益に殺さず。自給自足の様なハンターの生活にダモクレスは愛を感じていた。

 

 

「飯にするぞ。落ち葉を拾ってこい」

 

「うん♪」

 

 

落ち葉を集め枝を集め火を灯し、その上で骨に付いたままドスファンゴの肉を焼く。

 

 

「回しながら焼くんだ。火の通りが甘ければ生焼けに、焼き過ぎると焦げ肉になるぞ」

 

「任せてよ♪」

 

 

焚き火の炎に合わせ丁寧に焼き上げてゆくと肉から油が滴り焦げ目を作り香ばしい匂いを漂わせる。焼き上がった肉を大きな葉の上に置けば完成だ。

 

 

「良い焼き加減だひよっこ」

 

「これでもクレス様は料理は得意だからね♪」

 

「ここで第三のルールだ。狩りを行った相手に最大限の敬意を払い供養をする事。食べる時は頂きます、食べ終えればご馳走さま、剥ぎ取りをする時、終わった後は必ず一礼をする」

 

「うん!分かったよ。いただきまーす♪」

 

 

大自然に囲まれながら焼きたてのお肉にかぶりつく。一口噛めば肉汁が溢れ出し地面へと垂れ濃厚な旨みが口いっぱいに広がってゆく。調味料も何も付けていないのに今まで食べてきたお肉よりも美味しいと思えてしまう。

 

 

「これを食ったら帰るぞ」

 

「もう帰っちゃうの?」

 

「任務完了だからな。それにあれを見ろ」

 

 

ハンターの指差す先にはドスファンゴの死体が。さらに目を向けてゆくと木々の間からハンター達が居なくなるのを待つ獣の姿が。

 

 

「ジャギィが俺達が退くのを待っている」

 

 

焚き火を消し土をかけ完全に火が消えたのを見届けてから二人は森を出口に向かい歩んでゆく。そんな時獣同士が争う様な鳴き声が。

 

 

身を伏せ気配を消しながら辺りを見ると木々の間から二匹の翼竜の姿が見えた。

 

 

「リオレウスとリオレイアか。少し様子を見ようか」

 

「うんいいよー」

 

 

赤い皮膚をした翼竜がリオレウス。ややみどり色の翼竜がリオレイア。少し開けた場所でリオレウスがリオレイアに向かい大翼を広げ咆哮を上げる。だがリオレイアは興味が無さそうに。

 

 

「あれは何をしているの?」

 

「リオレウスがリオレイアに求愛行動をしているんだ。あぁやって翼を広げ体を大きく見せ強い雄である事をアピールしているんだ」

 

「強い雄?」

 

「人間に置き換えると学歴やら年収やらをアピールしているだな。少し見物しようか」

 

 

木々の間から二匹を見てゆく。

 

 

何処かへ行こうとするリオレイアに立ち塞がり何度も大翼を広げる。それでも興味が無いリオレイアに苛つき大翼でリオレイアを叩いた。

 

 

その瞬間逆鱗に触れ首元を大口で噛みつかれていた。

 

 

情けない声を上げながら許しを乞うと口を離され一息付く顔に向かい尻尾を打ちつけリオレイアは羽ばたき去って行った。

 

 

「どうやら求愛は失敗の様だな。良いものも見れたし帰るか」

 

「ハンター見て見て」

 

 

歩き出したハンターがダモクレスに呼び止められ振り返るとレースをずらし乳房を露わにする姿が。それを見て悩ましい顔をした後何事もなかった様に歩き出す。

 

 

「あっ!待ってよハンター」

 

 

先を歩くハンターの後ろを追いかけてゆく。

 

 

しばらく歩き二人はベムラ村へと帰ってきた。ハンターがクエスト完了の報告を行なっている間ダモクレスは退屈そうに村を眺めている。そんな時一つの事を思い付き行動に移る。

 

 

村にある畑に行き持ち主の許可を得て野菜を収穫し村の中心にある焚き火の側へ。調理用にある鉄板で料理を始めたのだ。野菜とドスファンゴのお肉を蒐集剣で切り分け収穫したハーブで炒め野菜炒めを作ってゆく。

 

 

「美味そうな匂いだなひよっこ」

 

「ふふーん♪クレス様特製の野菜炒めだよ♪もちろん食べてくれるよね?」

 

「もちろんだ。酒は飲めるかひよっこ」

 

 

返事をするとハンターは何処かへ。ダモクレスは野菜炒めをお皿へと盛り付け木で作られたテーブルの上に。

 

 

「ほら」

 

「ありがとね♪」

 

 

ハンターが持ってきたのは小さなタルで作られたコップ。見ると泡がコップを伝い流れ落ちる。テーブルを挟み二人が席に付くと豪快にコップをぶつけ合い口へと運ぶ。一日中歩き回り疲れた体にビールが染み渡ってゆく。

 

 

「うん、美味いな」

 

「でしょでしょ?クレス様が愛を込めて作ったんだ♪」

 

 

大皿に盛り付けられた野菜炒めを食べながらビールで流し込む。二人だけの宴を見て住民達が集まり宴は広がってゆく。

 

 

「美味しいねクレスちゃん」

 

「でしょでしょ?もっと作ってあげるね♪」

 

 

料理の味を褒められ上機嫌なダモクレスがひらりと椅子から降りると残った野菜とお肉で野菜炒めを作ってゆく。火にかけられた食材を炒めてゆくと食欲をそそる匂いが煙に紛れ村中に広がってゆく。

 

 

「はいどーぞ♪」

 

 

差し出した大皿に盛られた野菜炒めをうまい美味いと言いながら食べる村人達をニコニコしながら見ている。それを見てハンターは笑った。

 

 

 

次の日二人は渓流へと来ていた。クエストの内容は大量発生したショウグンギザミの討伐だが。

 

 

「ショウグンギザミはまぁ、簡単に言うとデカいヤドカリだ。だが強靭な両手のカマには気を付けろよ」

 

「ショウグンギザミは食べられるのかな?」

 

「さぁな。試してみるといい」

 

 

二人は渓流を歩む。目線の先に広がるのは透明度の高い清流が流れる小川。水底を見れば水流に逆らい泳ぐ小魚の姿が。また、上流に目を向ければ水を飲むケルビの姿も。

 

 

ハンターが先行して小川を渡ってゆく。その後に続きダモクレスが足を小川に入れるとひんやりと冷たい水が火照る足を通り抜けてゆく。

 

 

「あははははっ気持ち良いー♪」

 

「水底の石は転がりやすい、それに苔が生えているから足元には気を付けろよ」

 

「大丈夫だって、わぁ!?」

 

 

言われた側から踏み出した右足がぬるりと滑りバランスを崩し小川へ突っ伏す。

 

 

「言わんかっちゃない。ほらよ」

 

「うん、ありがとね」

 

 

伸ばした手を掴み起き上がり小川を抜ける。全身を冷水に浸かり冷えた体は燦々と照りつける太陽ですぐに暖まってゆく。

 

 

「あはは♪びしょびしょになっちゃった♪」

 

 

背を覆うマントは濡れてダモクレスの背に張り付き正面を覆うレースはぴたりと張り付き柔肌を浮かび上がらせる。正常な男性であるのならごくりと生唾を飲む様な光景を見てもハンターはダモクレスに背を向け歩む。

 

 

「ショウグンギザミはこの奥の沢に居る。そこはもっと滑るから気をつけるんだぞ」

 

「はぁーい」

 

 

一行は小川地帯を抜け密林へと入ってゆく。密林に足を踏み入れた瞬間から爽やかな気候が一転し湿度と温度が高くまるで夏場のビニールハウスに入ったかのよう。

 

 

ただ歩いているだけで全身に汗をかきじっとりと濡れる。それでも二人は密林を歩んでゆく。

 

 

前を歩くハンターの後ろ姿を見ながら辺りを観察してゆくとこの密林も生命に溢れている。木に掴まりセミが鳴き声をあげ木々に遮られる木漏れ日の下で日光浴をするトカゲ、日光が届かない日陰には奇妙な色のキノコが生える。普段は気にもしなかったがもしかしたらティルヘルムも同じ様に生命に溢れているのかもしれない。

 

 

「もう少しするとショウグンギザミのエリアだ。覚悟は良いな?」

 

「うん!クレス様いつでも行けるよ!」

 

「奴らは硬い外皮を持つ。ドスファンゴの様に容易く討伐できると思うなよ」

 

 

ハンターの言葉に気を引き締めなおし蒐集剣を硬く握る。そして密林の先から水が流れる音が生命の音に紛れ聞こえ初めていた。

 

 

木々の隙間からその場を覗く。右を見れば流れ落ちる滝があり白い飛沫となり水音を奏でる。その流水は岩に当たりながら川を形成する。そして水の流れを辿ってゆくと左に水色いヤドカリの姿が。一言でヤドカリと言ったがとにかくデカい。小さな小屋程の大きさがあるヤドカリだ。それが何十と群れを成し沢に居座っている。

 

 

そこに一匹のジャギィが水を飲みに現れた。ショウグンギザミに気が付かずトコトコと石の上を飛び跳ね沢へ行くと頭を下げ水を飲み始めた。その姿にショウグンギザミの目の色が変わった。仲間同士でリラックスした様子から一転、獲物を狩る動作へ。

 

 

ショウグンギザミには六本の脚がある。一番顔に近い脚には大きく発達した大鎌の様な手が。残りの四本は巨大を支える脚。その脚を使いジャギィに向かい驚く程のスピードで近寄り水を飲むジャギィに向かい大鎌を振り下ろした。

 

 

悲鳴を上げる間も無く首を折られたジャギィは沢に沈む。ジャギィの死体を大鎌で引き寄せ頭から口元へと運んでゆく。

 

 

「行くぞ」

 

「うん!」

 

 

ショウグンギザミの強さを見た後二人は沢へと飛び込んでゆく。先程のジャギィの出現により興奮したショウグンギザミは二人の接近に反応し雄叫びを上げる。

 

 

(おぉ〜!!)

 

 

二手に分かれショウグンギザミと対峙するのだがダモクレスの目線は戦うハンターを見ていた。素早く繰り出される大鎌攻撃を躱し飛び上がるとショウグンギザミの頭部に大剣を振り下ろしていた。その一撃は硬い外皮を打ち砕き一撃で生命を断つ。

 

 

「それならクレス様も、、、!」

 

 

同じ様にダモクレスも動いた。繰り出される攻撃を躱し大地を蹴りショウグンギザミの頭部目掛けて飛び上がり幹竹割りにしようと大剣を振るい落とす。

 

 

「っあ!?」

 

 

全体重をかけ振い落とした蒐集剣は硬い外皮に阻まれ少し外皮に傷を付ける事ができただけ。驚きながら地面へと着地したダモクレスを大鎌で薙ぎ払う。

 

 

その瞬間大地に身を伏せ一撃をやり過ごす。大鎌が宙を斬る風圧と風切り音が通りすがった後ダモクレスは後方へと飛び退いてゆく。

 

 

(クレス様の剣じゃ無理か、、)

 

 

ハンターが持つ大剣と刀身はほぼ同じだが剣の大きさが違いすぎる。ハンターの持つ大剣は取り回しこそ悪いが一撃の破壊力はダモクレスの持つ蒐集剣を遥かに凌駕しその証拠にショウグンギザミの硬い外皮を容易く粉砕し一撃でショウグンギザミを仕留めている。

 

 

そしてダモクレスは考える。あの硬い外皮を貫きショウグンギザミを愛する方法を。

 

 

思考を巡らせながらショウグンギザミの攻撃を回避してゆく。ひらりと大鎌による攻撃を躱し振り下ろされた大鎌が岩を砕き破片が辺りに散らばってゆく。

 

 

「ふぅ〜ん?見えちゃったよ」

 

 

ダモクレスが思い付いた方法とはショウグンギザミの柔らかい部分を狙う事。どれだけ硬い外皮を持っていたとしても稼働部は柔らかくなければ動かす事はできない。例えるのならカニの脚。硬い外皮だが関節は柔らかな膜で覆われている。それをダモクレスは狙う事に。

 

 

上段に蒐集剣を構え大鎌が振り下ろされるのを待ち望む。

 

 

「ジョァァァァ!!」

 

 

雄叫びを上げながらショウグンギザミが大鎌を振り下ろす。その瞬間ダモクレスは軌道を読み関節へと刃を向ける。

 

 

振り下ろした腕の関節は刃の上を滑り切り離された片腕が後方へと飛んでゆく。悲鳴を上げるショウグンギザミを見てダモクレスはニヤリと笑う。

 

 

「痛いよね、苦しいよね。でも安心して、すぐにクレス様が助けてあげるからね」

 

 

暴れ狂うショウグンギザミに向かい剣を向け走り出す。柄をしっかりと両手で握り締め加速してゆき振り回す脚の間をすり抜け外皮に向かい勢いを付けた突きを繰り出す。

 

 

「ギィィィィィィィィ!!!」

 

 

断末魔の悲鳴を上げショウグンギザミが身を大地に横たわらせる。いくら硬い外皮とはいえ切先に力を集中させた突きには耐えきれず深々と突き刺さった切先に神経を切断されていた。

 

 

「よーっし!じゃあ、次は君だね」

 

 

ズルリと剣を引き抜き次の相手に向かい愛を込めた眼差しと具現化したヘルのオーラが向けられる。知能は高くないショウグンギザミだがただならぬ雰囲気を感じ取り本能が逃げろと警告を出す。

 

 

もっとも、時既に遅しなのだが。

 

 

 

………………………………………………………………

 

 

 

「良くやったひよっこ」

 

「ふふーん♪クレス様にかかれば楽勝だよ♪」

 

「さて、剥ぎ取りの前にお前の剣を貸してみろ」

 

「なにするのー?」

 

「あれだけ使えば刃が鈍るからな、研ぎ直すんだ」

 

 

ダモクレスが渡した蒐集剣の刃を砥石で研いでゆく。沢の水に浸けながら何度も研いでゆくと今まで以上に刃が輝く。

 

 

「お前一度も研いだ事無かっただろ?手入れを怠るとせっかくの名刀が台無しだぜ」

 

 

渡された蒐集剣を見上げると木漏れ日に爛々と輝く刃紋が。指先で切れ味を確かめてみると身震いを起こしてしまう程の鋭さを感じた。

 

 

「ありがとねハンター」

 

「お礼を言ってくれるのは嬉しいが次から自分でやるんだぞ。そうだ、これをやろう」

 

 

そう言って砥石を貰い大事そうにポケットへしまい込む。そしてショウグンギザミから素材と食料を剥ぎ取ってゆく。

 

 

「よし、帰るか」

 

「うん♪」

 

 

最後にショウグンギザミ達に一礼をし二人は密林を歩き村へと帰ろうと。その時か細い鳴き声が聞こえ二人して立ち止まり耳を澄ませた。

 

 

「なんの声?」

 

「モンスターである事は間違い無いのだが、、」

 

 

二人して周囲を見渡すのだが声の主は見つからず。それでも観察を続けてゆくと地に血の跡を見つけそれを辿って行くと倒木の間に身を潜める一匹のモンスターを見つける事ができた。

 

 

龍を思わせる顔付きに美しく輝く白桃の体を持つ幻想的なモンスター。

 

 

「こいつは、、、タマミツネか。血の跡はこいつからだな」

 

「可愛い♪ほらミツネおいでー♪」

 

 

ダモクレスがしゃがみ手を伸ばす。だがタマミツネと呼ばれたモンスターは苦しげな鳴き声をあげる。

 

 

「これだけ血を流してたら苦しいよね、、ハンター、楽にしてあげようよ」

 

「そうしてやりたいが任務の狩猟対象以外のモンスターを狩るのは御法度なんだ。やむを得ず戦闘になったのなら仕方ないが。これも自然の定めだ、死を待ってもらうしか無い」

 

「むぅ」

 

 

野生の世界で身動きが取れなくなる程の怪我を負ってしまえばどれほどの強者であっても死を待つしかない。残酷であるがこの世界のルールだ。それでもダモクレスは諦められず何かをしてやりたかった。

 

 

「そうだ、ちょっと待っててね」

 

 

その場を立ち去りすぐに何かを引きずりながら戻ってきた。

 

 

「おっと、あはは♪転んじゃった」

 

 

ダモクレスが引きずって来たのは先程ショウグンギザミにやられたジャギィ。それをわざとらしくタマミツネの前に放り投げたのだ。

 

 

目の前に転がって来たジャギィを見て深々と頭を下げた後ジャギィを食べてゆく。その光景を見た後二人は村へと帰って行く。

 

 

「ひよっこ、お前のした行為はハンターとしては褒められた行為ではないぞ。もしあのタマミツネの討伐を依頼されればあいつと戦わなければならない。その時情が湧いてしまえば俺達がやられてしまう」

 

「はぁい、、ごめんね」

 

 

しゅんと返事をしダモクレスは俯いてしまう。ダモクレスとしてはただ助けたかっただけなのだが相手がモンスターである以上討伐しなければならない可能性がある事を失念していたからだ。

 

 

「だがお前の優しさは俺は嫌いではない。自然の定めに人が手を貸すのは良くは無いが生きるチャンスを与える事は良い事だ。後はあいつの体力次第ってとこだな」

 

 

ダモクレスの頭をわしゃわしゃと撫でハンターは豪快に笑う。村へと向かう背を見た後ダモクレスは微笑み後を着いて行く。

 

 

 

村に帰りご飯の前にまずは風呂に入る事に。脱衣場で二人仲良く服を脱ぎ二人は温泉へと浸かる。

 

 

「あぁ〜良いお湯だね♪」

 

「疲れが湯に溶けてゆくだろ、クエストの後のこの温泉は最高だろ?」

 

「うん♪」

 

 

広々とした温泉に足を伸ばしリラックス。しばらく温泉を楽しんだ後二人は焚き火の前へ。

 

 

「うーん、、、」

 

 

調理台の上に置いたショウグンギザミの脚を見ながらダモクレスは唸る。これをどう料理しようかと。断面を見ると硬い外皮の中にたっぷりと肉が詰まる。考えた末にそのまま鉄板の上に並べ焼き残りは水を入れた鍋に入れ煮込む事に。

 

 

「ハンターちょっと見ててね」

 

 

そう言ってダモクレスは畑へ。野菜を少し分けてもらい切り分け鍋へと入れてゆく。

 

 

しばらくして焼けた脚の匂いと鍋の匂いが村中へと漂ってゆく。

 

 

「ほらよ」

 

「ありがとねハンター♪」

 

 

ハンターが持って来てくれたビールと共に焼きショウグンギザミを一口。

 

 

「うーーん♪美味しぃー♪」

 

 

香ばしく焼き上げた脚を剥き一口食べるとほんのりと甘くジューシーな美味しさ。次にレモンを一絞りし食べると甘さが引き締まり酸っぱさと相待ってビールが進む。

 

 

鍋の方も出汁が出て良い感じ。小皿に野菜をとり上にギザミの肉をほぐし一緒に口へと運んでゆくとこれまたビールが進む。

 

 

〆に食べ終えた鍋にご飯を入れ雑炊として頂く。出汁をたっぷりと吸ったご飯に取り残した野菜や肉片が混ざり優しい味わい。

 

 

「「ご馳走様でした」」

 

 

最後に片付けをして以下就寝。

 

 

 

次の日の朝、二人は村を出て北へと向かい歩んでいた。今日のクエストはフルフルの討伐である。

 

 

「そのフルフルってのはどこに居るの?」

 

「ここからもう少し北に行った雪山の洞窟に奴は居る。居場所が分かっているからと言って油断するなよ」

 

「はぁーい」

 

 

しばらく歩んでゆくと自然にも変化が。第一の変化として気温の低下、それに伴い生えていた緑もだんだんと数を減らしてゆき雪山に着く頃には地面が剥き出しとなっていた。例えるなら歩きながら四季の移り変わりを体験している様。

 

 

「うぅ〜っ、、こんなに寒いなんて聞いてないよぉ、、」

 

「これを飲めひよっこ」

 

 

ハンターから渡されたのは赤い瓶に入った飲み物。蓋を捻り液体を飲むと体の芯から温まってくる。

 

 

「雪山のクエストの必需品だ。これで寒く無いだろ?」

 

「うん♪ハンター♪早く行こー」

 

 

うっすらとと雪化粧をし始めた山道をダモクレスが先行して登ってゆく。

 

 

しばらく歩き二人は今回のクエスト地である雪山へと到着していた。そこに広がるのは一面に広がる白銀の世界。そして空を厚く覆う雪雲からは粉雪が舞い落ちわずかに届く日差しを浴びキラキラと輝いている。

 

 

「きれーな景色だね♪でもこんな寒い所にモンスターなんて居るの?」

 

「モンスターだけじゃ無く植物もあるぞ。これを見てみろ」

 

 

ハンターが雪を踏み締めながら歩いてゆくとしゃがみ込み手で雪を退けてゆくと植物の姿が。

 

 

「竜草という植物だ。こいつは生命力が高くどんな環境でもこうやって育つ事ができるんだ」

 

「へぇ〜すごいね」

 

 

同じくしゃがみ込み竜草へ手を伸ばす。寒さに凍り付いてしまいながらも逞しく生きる生命を感じダモクレスは関心してゆく。

 

 

「それにモンスターも居るぞ」

 

 

ハンターが指差す方には雪の上を歩くマンモスの様な生き物の群れ、名を聞くとポポという様で。

 

 

「奴らは草食で比較的おとなしいモンスターだがいざとなれば、、。おい、聞いているのか」

 

「あはははははっ♪かわいいーっ♪」

 

 

ポポの前にしゃがみ込み伸ばした手はポポの頭を撫でる。茶色く寒さに耐える為に長毛で柔らかな毛並みに触れてゆくとポポの方から撫でろと顔を押し付けてきた。その中に混ざり一匹ポポとは違う生き物が。

 

 

「ハンターあれは?」

 

「ガムートの幼獣だ。育てば山神と呼ばれる程大きくなるモンスターだ。ポポの群れといる所を見ると親とはぐれたか」

 

「ほらガムートもおいでー♪」

 

 

少し怯えながらもダモクレスの手に頭を向けるとわしゃわしゃと撫でてゆく。

 

 

「ったく、、」

 

 

何か言いたげなハンターだが微笑ましい光景に何も言わずダモクレスの気が済むまで見守ってゆく。

 

 

「みんなばいばーい♪」

 

 

ダモクレスの声に返事をした後鼻で雪を掻き分け竜草を食してゆく。

 

 

「モンスターって可愛いんだね♪」

 

「種類によるな。今回討伐するフルフルは可愛いとはかけ離れているぞ」

 

「うぇ、一体どんなモンスターなのかな」

 

 

二人は膝まである雪を掻き分けながら山中にあるフルフルの棲家、洞窟を探して歩んでゆく。途中振り返れば二人が歩いた跡がはっきりと雪道に残る。

 

 

「後で雪だるま作ろうよ」

 

「フルフルを討伐してまだそれをする元気が残っていたらな」

 

 

何度も地図で現在地を確かめながら二人は山中にぽっかりと空いた洞窟の前に辿り着いた。

 

 

「フルフルは気配を完全に消す事ができるモンスターだ。一瞬でも気を抜くなよ」

 

「うん、任せてよ♪」

 

 

二人は日が届かず薄暗い洞窟へと入ってゆく。洞窟内は日は当たらないが風がしのげ思っていたよりも気温は高い。それでも氷点下を指しているのだが。

 

 

地面は凍り付き足音を響かせ吐く息は白い。ハンターを先頭に洞窟内を探索してゆく。

 

 

「んー?」

 

「どうしたひよっこ」

 

「何かがクレス様の頭に垂れてきた様な、、」

 

 

そう言われハンターが振り返りダモクレスを見ようとした時天井からダモクレスを狙う奇怪竜の姿が。

 

 

「ひよっこ逃げろ!!」

 

「え〜?」

 

 

突然声を荒げたハンターに間伸びした返事をすると視界が塞がれ体が宙に浮いた。

 

 

「ん!んんんんん〜〜〜!!!」

 

「ひよっこぉ!!!」

 

 

ダモクレスの半身を咥えた主は魚を飲む鵜の様に頭を動かしダモクレスを飲み込んだ。そしてまだ食べ足りないのか地上へと降り立ち咆哮を上げる。

 

 

「おのれフルフルっ!!」

 

 

怒り狂うハンターの目線の先には洞窟に住み続け目は退化し体は白くぬるぬると光る、討伐対象の奇怪竜フルフルの姿。

 

 

人間は五分呼吸ができなければ死にいたる。ハンターに課せられた任務は五分以内にフルフルを倒し腹を捌き食われたダモクレスを救い出す。それができなければダモクレスはフルフルの栄養となってしまう。

 

 

だが百戦錬磨のハンターは慌てず冷静にフルフルを観察し一隅の好機を伺う。フルフルを一撃で仕留めるべく大剣を持つ両腕に力を込めながら。

 

 

フルフルがハンターに向かい駆け出そうとした瞬間ハンターは下方に下げた大剣で迎え撃とうとする。その時フルフルの動きが止まり大口を開け嘔吐する様な仕草をし始めたのだ。

 

 

その様子を疑問に思い見ているとフルフルの背から刀身が顔を出し背を切り広げダモクレスが姿を見せた。

 

 

「うぇ〜〜!!変な液でべたべたになっちゃったよぉ、、、」

 

 

フルフルに食われた事よりも胃液に塗れた事を気にするダモクレスを呆れながら見ていると胃を裂かれ背を裂かれたフルフルが力尽き身を大地に横たわらせていた。

 

 

「心配した俺がバカみたいだ」

 

「ハンター?なんか言った?」

 

「なんでも無い。フルフルから剥ぎ取って帰るぞ」

 

 

二人してフルフルに一礼をした後フルフルから素材を剥ぎ取り帰路へとつく。

 

 

「早く帰ってお風呂にはいりたぃー」

 

「寒い雪山に居たから今日の温泉は格別だぞ」

 

「それはそうとハンター」

 

「なんだ?」

 

「いつもより距離が遠くない?」

 

「仕方のない事だ。フルフルに食われた自分を恨め」

 

 

えんがちょをした後走ってゆくハンターをダモクレスが追いかけてゆく。

 

 

 

「「!!」」

 

 

雪山の入り口付近まで走ってきた時二人は轟く様な咆哮を聞き足を止めた。そして前からポポ達が逃げ惑いながら走ってくる。

 

 

「様子がおかしい、気を付けろ」

 

「うん!」

 

 

抜刀し構えながら進んでゆくとポポを地を這うかのように追いかけるモンスターの姿が。

 

 

「あれはティガレックスだ。凶暴な肉食性のモンスター」

 

 

二人の視線の先には虎柄の青い縞模様の恐竜の様なモンスターが。右脚左脚に翼の様なものが見えるが飛行せず素早く四つ脚で走り回りポポを追っている。

 

 

「ハンター!このままじゃポポが食べられちゃうよ!」

 

「そうだな、だがそれが自然の摂理だ。俺達ハンターはそれを見ている事しかできない」

 

「でもっ!!」

 

「前にも言ったはずだ。俺達は討伐対象以外のモンスターには理由がない限り手を出す事はできない」

 

 

ポポの元へ駆けようとするダモクレスの手を掴みハンターが語る。だけどダモクレスは納得ができるはずもなく駄々をこねる。

 

 

「そんなのやだよ!クレス様が助けてあげる!」

 

「ひよっこ!お前はポポ達が襲われるたびに助けるつもりか?今は俺達の前で狩りが行われているがこんな事この世界の至る所で起きている。お前の優しさは分かるがこれが定めなんだ」

 

「うぅ、、、」

 

 

二人の視線の先ではこの世界の真理が行われている。弱肉強食、この世界の真理。

 

 

そんな時逃げ惑うポポ達の一匹が二人を見つけ二人の元へと駆け出した。まだハンター達に気が付いていないティガレックスは群れを飛び出し一匹となったポポへと向かう。

 

 

ポポは二人の背後へと隠れここでようやくティガレックスはハンターの存在に気が付いた。だが怯む事なく狙いをハンター達へと変え攻撃を仕掛けてゆく。

 

 

「ひよっこ。俺達は今どうなっている」

 

「えっと、ティガレックスに攻撃されようとしてる!」

 

「なら俺達が戦う理由ができたな」

 

「・・・・うんっ!!」

 

 

右脚によるパンチを左右に分かれ躱し左右から攻撃を仕掛けてゆく。

 

 

「ティガレックスは別名轟竜!耳を潰されるなよ!」

 

 

振り上げた大剣を荒々しく振り下しティガレックスの左脚を狙う。大剣が振り下ろされる瞬間に身を翻しハンターへと攻撃を仕掛けてゆく。

 

 

「こっちだよーっ!!」

 

 

背を向けた瞬間にダモクレスが動く。具現化されつつあるヘルと共に雪道を疾走しティガレックスの背に一閃を繰り出す。

 

 

背をぱっくりと切り裂かれ痛みでのたうち回る。そこにハンターの一閃が頭部へと繰り出される。

 

 

「グギィぃぃ!!!」

 

 

頭部へと繰り出された一閃は確かに捉えたのだが硬い頭蓋骨に守られ皮膚を裂いた程度。しかしティガレックスにとっては屈辱的なダメージ。

 

 

「グルルル、、、」

 

 

壁を背に二人と対峙し唸る。そしてハンターの声が響くのとティガレックスが咆哮を上げるのは同時だった。

 

 

ティガレックス、別名轟竜。その名は特殊な内蔵器官である大鳴き袋から凄まじい音量の咆哮を放つ事からきている。その咆哮は小型のモンスターなら絶命させてしまうほど。

 

 

大きく息を吸い込みそして雪が吹き飛んでゆく程の咆哮を放った。

 

 

 

辺り一面の雪が吹き飛び大地が剥き出しとなる。その中心に居座るティガレックスは勝利を確信し死骸となったハンター二名とポポを食おうと脚を動かした。

 

 

「びっくりしたーあんな大きな声を出せるなんて凄いね」

 

 

ティガレックスの真横にはダモクレスが立つ。

 

 

「名は体を表すとはこの事だな」

 

 

ティガレックスの右にはハンターが立つ。何故二人が無事だったのか、どうして二人は自身の横に立っているのか。ティガレックスは困惑した。

 

 

「じゃあ、次はクレス様の愛を見せてあげるね」

 

 

音もなく振り下ろされた蒐集剣はティガレックスの首へと叩き込まれる。が、皮膚は裂いたものの丈夫な骨にこれ以上切り込む事を遮られていた。蒐集剣が引かれた後ハンターの持つ大剣が骨を切断しティガレックスの首を大地に落とす。

 

 

何故二人には咆哮が通じなかったのか。ハンターは耳栓を所持していた為だがダモクレスは何も装備していない。

 

 

「うーん、、ひどいよハンタークレス様の耳聞こえなくなっちゃったよ」

 

「あいつに鼓膜を破られるか俺に破られるかの差だ、我慢しろ」

 

 

ティガレックスが息を吸い込んだ時ハンターはダモクレスの両耳を叩き鼓膜を破ったのだ。その為咆哮によるダメージを受ける事なくこの場に立つ事ができたのだ。かなり荒っぽいが異常な程の回復力を持つキル姫にだからこそできた荒技である。

 

 

「うーーん、クレス様の鼓膜ふっかーつ♪」

 

 

頭を二度三度振った後笑顔を浮かべるダモクレスを見てハンターは親指を立てる。それに笑顔で親指を立て返す。そんな二人の元にポポ達が集まって来ていた。

 

 

「怖かったね、、もう大丈夫だよ♪」

 

 

ポポとガムートの幼獣の頭を撫でてゆく。そんな時地響きが雪山を揺るがす。

 

 

「な、なに!?地震!?」

 

「いや、この足音は、、、!」

 

 

雪山を吹き荒れ始めた大雪に浮かぶシルエットは山そのもの。それが二人の元へと歩んで来た。その主は山神と呼ばれる程の巨体を持つガムート。地を響かせながら二人の前にその姿を現した。

 

 

 

ガムートの幼獣ですらダモクレスと変わらない程の大きさなのだが成獣であるガムートは山神の名の如く巨大なマンモス。先ほど山中に響いたティガレックスの咆哮を聞き子を守る為山から姿を見せたのだ。して、ガムートは戦闘態勢でこの場に姿を現した。

 

 

この場にティガレックスの姿は無い。しかし外敵であるハンターの姿が。ならばハンターを粉砕すべくつぶらな瞳に燃え上がる怒りを灯し攻撃を始めようとする。

 

 

「ひよっこ、覚悟は良いか」

 

「大きい、、だけどクレス様もまけないよ、、、!」

 

 

一触即発の空気の中二人の間にポポとガムートの幼獣が割って入る。そしてガムートに向かい手と鼻を動かし何かを伝えようとしている。その言葉が通じたのかガムートは戦闘態勢を解きその場に座り込んだ。

 

 

「ふぅ、、ひよっこ。お前の優しさが通じたみたいだな」

 

「これも愛の力だね♪」

 

 

笑顔を浮かべるダモクレスとハンターに向かい鼻を伸ばし掴むとガムートは背に乗せ立ち上がった。

 

 

「うわーーーぃ♪ハンター♪凄く高いよ♪」

 

「これは貴重な体験だ、子を守った礼のつもりなのだろう」

 

 

二人を乗せたガムートは雪山の入り口へと歩みを進めてゆく。その後ろをポポ達が続く。

 

 

「ありがとうね♪」

 

 

やがて雪山の入り口に辿り着くと二人を降ろし山神達は雪山へと帰って行った。

 

 

「ハンター早くお風呂に行こ!クレス様食べられた事すっかり忘れてたよ」

 

「俺は集会所に報告をしてから行く、先に行ってろ」

 

「はぁーい」

 

 

村へと帰り集会所へと行くハンターと分かれた後ダモクレスは一人温泉へ。頭の先からつま先まで浸かった胃液を取るために何度も掛け湯をしてゆく。

 

 

「うへぇ、、ぬるぬる〜」

 

 

乾燥していた胃液が水分を吸ってぬるぬると、それを石鹸で丁寧に洗い流してゆく。

 

 

「これでよしっと」

 

 

全身の泡を落とした後ダモクレスは湯船に身を沈め大きく身体を伸ばし今日の事を思い出してゆく。ポポとガムートと戯れた事、フルフルに食われた事、ティガレックスと戦った事、ガムートの背に乗った事。どれもこれも千年王国では体験する事ができない事。帰ったらみんなに話してあげよう。そう思いながら湯船を楽しんでゆく。

 

 

そんな時ハンターが浴室へとやって来た。

 

 

「おかえりーハンター♪何か言われた?」

 

「あぁ、フルフルとティガレックスを相手にしたから明日は休む事となった。疲労を癒す為のんびりしてろって事だ」

 

「えぇ、、クレス様クエストに行きたい!」

 

「休むのもハンターの勤めだぞひよっこ」

 

 

頭から湯を被りハンターは湯船へ。

 

 

「一時はどうなるかと思ったがお前が無事で良かった。ごめんなひよっこ」

 

「えっ、なんでハンターが謝るの?悪いのは食べられちゃったクレス様だよ?」

 

「フルフルの居場所に気が付かなかった俺のミスだ。我ながら情けない」

 

「そんな事ないよ!ハンターは悪くない!」

 

 

ダモクレスに目を向ける事なくハンターは湯船に沈んでゆく。そんなハンターが心配でダモクレスが近寄ってゆく。

 

 

「なーんてな。本当にお前は丈夫だな」

 

 

腕が伸びダモクレスの頭をわしゃわしゃと撫でると豪快にハンターは笑う。

 

 

「むぅぅぅぅ〜〜!!クレス様怒ったよ!」

 

 

不貞腐れた顔をハンターに向けるのだが未だハンターは笑ったまま。

 

 

「もうハンターには料理作ってあげない!」

 

「それは困る。悪かったひよっこ」

 

「クレス様はひよっこじゃない!」

 

 

 

しばらくして二人は焚き火の前へ。今日手に入れたフルフルのお肉をどう調理するかダモクレスが頭を悩ませていた。ゼラチン質の皮を持ち身は柔らかく炒めてしまえば溶けてしまいそうなフルフルのお肉。

 

 

考えた末にダモクレスはフルフルのお肉で角煮を作る事に。下茹でをして余計な脂を流し残った身を醤油、酒、生姜で煮込んでゆく。その間にティガレックスのお肉を切り分けてゆく。硬い皮膚は捨て柔らかな身を塩胡椒で炒めてゆく。

 

 

「ハンター味見して」

 

焼き上がった一口サイズのティガレックスのお肉を箸で掴みハンターの口へ運ぶ。

 

 

「美味い美味い。これはビールが進むな」

 

「ハンターはそれで今日のご飯終わりだからね」

 

「まだ根に持ってたのか。悪かったって」

 

「むぅ、じゃあクレス様の事クレスって呼んでくれる?」

 

「それは無理だ。お前はまだひよっこだからな」

 

「むぅぅぅ〜〜〜〜!!!!」

 

 

頬を膨らまし抗議するダモクレスにハンターは肩をすくめる。二人の仲の良い姿に集まった村人から笑いが起きる。

 

 

 

しばらくしてダモクレスの機嫌をとったハンターは夕飯にありつけたのだが。

 

 

ティガレックスのお肉を一口食べたダモクレスはある事に気がつく。この肉は鶏肉に近い味をしている事に。それならばと一口サイズに切ったお肉とネギを串に刺し鉄板の上へ。

 

 

「ハンターも手伝ってよ」

 

「俺は狩るのと食べる専門だ。それと飲む」

 

「ふーんだ。じゃあそこの君手伝ってよ」

 

 

ダモクレスが声をかけたのは若い男。ダモクレスの姿にドキドキしながら串作りを手伝ってゆく。

 

 

「うーん、、もっと上手く挿れて。そうそう♪」

 

 

硬い肉に難儀をする男の手を取り誘導してゆく。漢字が違う気がするが気のせいだろう。

 

 

「上手に挿れれたね♪」

 

 

肉、葱、肉、葱に刺された串を見てダモクレスは笑う。

 

 

「・・・・・」

 

 

その様子を面白く無さそうにハンターは見るがビールを煽り顔をジョッキで隠す。

 

 

「じゃあ串の様子を見ててね、クレス様はこっちを見るから」

 

 

ダモクレスは鍋の元へ。蓋を取り中蓋を取ると煮込まれた匂いが村に漂ってゆく。菜箸で摘むとほろほろと崩れてしまいそうな角煮が。

 

 

「はいハンター」

 

 

小皿に移した角煮をハンターの元へ。それを一口食べ美味いと言いビールを煽る。

 

 

フルフルのゼラチン質が熱で溶け身と脂だけとなった角煮は大きさこそ小さいが味は確かであり沢山作ったはずの角煮はすぐに完食となった。

 

 

そして〆に茶碗一杯に盛り付けたご飯に残った汁をかけ頂き宴はお開きとなった。

 

 

 

その宴の少し後に村の若者はハンターの家に集まり耳を澄ませていた。せめてダモクレスの声だけでも聞こうと。

 

 

ダモクレスは見た目は幼いが色気に満ちており果ての見えない淫靡を兼ね備える少女。あんな可憐な少女と屋根の下で2人っきりなら間違いなく行為に及んでいると目論んでだ。

 

 

「「「………………」」」

 

 

だがいくら耳を澄ませても物音一つ聞こえず愕然と肩を落とし家へと帰ってゆく。次の日からハンターはモンスターにしか欲情しないだとかクエスト中に性器をモンスターに食われただのと噂が流れるのだが。

 

 

 

次の日ハンターより早く目を覚ましたダモクレスは村を散歩する事に。大きく欠伸をしながら村を歩いてゆく。

 

 

「おはようクレスちゃん」

 

「おはよーおばちゃん」

 

「そうだ、さっき集会所にハチミツをとって来てほしいって頼んだからクエストを受けてくれないかな?」

 

 

話を聞いてゆくと村で受けるクエストは村人達の頼みの様で、それが食材を集めるのかモンスターを討伐するようだ。

 

 

「うん良いよー♪」

 

 

早速ダモクレスはハンターを起こしに行く事に。

 

 

「ハンター起きて、クエストだよ〜」

 

「んんーきょーは休みだ、、」

 

「むぅ〜じゃあクレス様一人で行ってくるよ」

 

「くえすとはしゅうかいじょうでうけれる、、」

 

 

まだ寝ぼけているハンターから教えてもらいダモクレスは集会所へ。そこでクエストを受け一人森丘へと向かってゆく。

 

 

 

森丘はダモクレスが初めてクエストに出た土地であり思い出の場所。ハンターと歩いた道を辿りながらハチミツが取れた木を目指して歩んでゆく。

 

 

そんなダモクレスを木の影から狙うモンスターが。

 

 

「!!」

 

 

ダモクレスが気配を感じ振り返ると木々を薙ぎ倒しながら迫るディノバルドの姿が。以前のようにダモクレスの前に立ち止まると大地を揺るがす程の咆哮を上げた。

 

 

顔を見ると顔に付けられた傷が見えあの時のディノバルドだとダモクレスは悟った。

 

 

「君はディノバルドだっけ?そうだ、次はクレス様の番って言ったよね」

 

 

ディノバルドは戦慄した。目の前に居るのは以前一撃を加え後一歩で食えると思った少女。だがその少女の様子がおかしい。不敵に笑う顔に研ぎ澄まされた一本の大剣、そこまではそこらに居るハンターと変わりは無い。だが、地獄へ引き摺りこまれそうな邪悪なオーラを放っているのだ。

 

 

この相手はヤバい。本能が警告を出し一歩後退り。ダモクレスが一歩踏み出せばもう一歩下がる。

 

 

そしてディノバルドは見た。ダモクレスから溢れ出した邪悪なオーラが死神の形となりダモクレスの背後に居るのを。

 

 

そんなはずはないと瞬きをすると死神の姿は消えていた。

 

 

思い過ごしかと思いダモクレスを捕食する為に迫ろうとしたのだが脚が動かず。何事かと思い足元を見るとナニかがディノバルドの脚を掴んでいる。

 

 

それは巨大な髑髏。地面にある髑髏がディノバルドの脚を噛んでいたのだ。

 

 

「ーーーーーー!!??」

 

 

意味の分からない光景にディノバルドは深い恐怖へと堕ちる。生物が最も恐る死が足元から自身の命を喰らおうとしている。この髑髏は確実に自身を死へと追いやると。

 

 

それでも、その恐怖に打ち勝ちディノバルド最大の武器である研ぎ澄まされた尻尾を使いダモクレスへと攻撃を仕掛けようとした。

 

 

「?」

 

 

どれだけ尻尾を振ろうとしても動かない。不審に思ったディノバルドは振り返り尻尾を見る。すると尻尾は根元まで髑髏に喰われているではないか。

 

 

ディノバルドは斬竜と呼ばれ生態系の頂点に立つモンスターである。それがたった一人の少女にここまで恐怖するとは。尻尾と脚をナニかに掴まれ反撃も身動きもできないディノバルドに向かいダモクレスは歩んでゆく。

 

 

「さぁ、君はどんなふうに愛してほしいかな」

 

 

ディノバルドは恐怖の悲鳴をあげた。

 

 

 

 

………………………………………………………………

 

 

 

 

その頃ハンターは目を覚ましダモクレスが居ない事に気が付き記憶を辿っていた。眠っている時にダモクレスに話しかけられたのは何となく思い出せるのだがどんな話をしたのか内容を全く覚えていない。深く考えようとするのだが昨晩飲み過ぎ二日酔いの頭痛が思考の邪魔をする。

 

 

そんな時ドアがノックされ返事をすると野菜を持ったおばさんの姿が。

 

 

「あれ、今朝クレスちゃんにクエストを頼んだけどハンターは一緒に行かなかったんだね」

 

 

その言葉にみるみるハンターの顔が青ざめてゆく。ダモクレスの実力は本物だと認識しているが知識無くクエストに出れば命の保証は無いからだ。おばさんからハチミツを取りに行って貰ったと伝えられハンターは防具を付ける時間が惜しくインナー姿に大剣だけを持ち森丘へと駆け出してゆく。

 

 

 

 

息を切らしながらハンターが森を探し回るとダモクレスの姿を見つけた。

 

 

「ハンター見て見てー♪」

 

 

同じくハンターを見つけ笑顔で話すダモクレスはディノバルドの背に跨りまるで調教された馬の様に扱っていたのだ。背から飛び降りディノバルドにお手、お座り、ちんちんと命令を出すとディノバルドは従い芸をこなす。ハンターに助けを求める様な眼差しを送りながら。

 

 

心配して損した。ハンターは前も同じ事を思ったと思い出しながら苦笑いを浮かべてゆく。

 

 

「ばいばーいディノバルド♪次クレス様に何かをしようとしたら分かってるよね?」

 

 

ディノバルドは何度も頷きながら森へと帰ってゆく。それを見届けた後ハチミツを採取し村へと帰ってゆく。

 

 

「ったく、、本当にお前は、、」

 

「ハンターも背に乗りたかった?今から呼ぼうか?」

 

「俺が言いたいのはそこじゃない。今回は俺に非があるから何も言わんが今度から勝手に一人でクエストに行くな」

 

「はーい♪」

 

 

笑顔で前を歩くダモクレスをやれやれと見守りながら二人は村へと帰って行く。

 

 

次の日二人はクエストで火山を訪れていた。クエストの内容はウラガンキンの討伐とケルビから生肉を剥ぎ取る事。

 

 

「火山の内部は灼熱の溶岩が流れるフィールドだ。流石のひよっこでも溶岩に落ちれば命は無いぞ」

 

「気をつけるね♪」

 

 

村を西へ進んだ先の火山地帯を歩んでゆくと砂の地面が消え岩の道へと変わり次第に溶岩が固まった様な道へと変わってゆく。そして火山に近づくにつれて気温が上がり始めただ歩いているだけでも汗が滴り落ちてゆく。

 

 

「あつーい、、。」

 

「これを飲め」

 

 

ハンターから渡されたのは青い瓶に入った飲み物。それを一気に飲み干すと暑さが和らいてゆくのを感じた。

 

 

「クーラードリンクだ。暑さに強くなるが限度があるからな」

 

「うん、ありがとう♪」

 

 

二人は火山の入り口を通り内部へと入ってゆく。

 

 

「うわーーっ」

 

 

ダモクレスの視線の先には奥へと続いてゆく岩道に辺りを流れてゆく溶岩。内部に入った瞬間から肌を刺す程の熱気に包み込まれてゆく。こんな過酷な環境にモンスターは本当に居るのか疑問に思ってしまう。

 

 

「モンスターはありとあらゆる環境に存在する。例えそれが雪山であろうと火山であろうと。奴らは環境に適応する力があるんだ」

 

 

そう言われて良く観察をしてみると岩の上を走ってゆく小さな虫が。溶岩に焼かれながらも葉を茂らせる草が。言葉を失ってしまう程に自然の力に圧倒されてしまう。

 

 

「ウラガンキンは火山を代表するモンスターだ。溶岩の中でも生きて行ける対応能力と鉱物を食べる為に発達した顎が特徴だ。それに身を鉱物で固め高い防御力を持っている」

 

 

なんという事実。この灼熱の溶岩に入り生きて行ける。そして鉱物を食べるという事に。見るからに食べれそうもない岩を食べる様になったのは一体どんな生態をしているのだろう?ダモクレスの好奇心をくすぐってゆく。

 

 

「ねぇねぇ!早くウラガンキンに会いに行こうよ♪」

 

「慌てるな。それと奴は討伐対象だからな?」

 

「うん!クレス様その区別はつけてるよぉ」

 

 

ニンマリと笑うダモクレスの顔は溶岩に照らされ妖しく光る。その笑顔は天真爛漫な少女の顔だが裏に悪魔が潜む。

 

 

ゾクリと背が震える程の恐怖。だがハンターは気にする事なく奥へと続く道を歩んでゆく。

 

 

しばらくして火山の最深部へと辿り着き岩陰から様子を伺っていた。

 

 

「すごーーぃ!!」

 

 

そこには巨大な体格を持つモンスターの姿が。背を折れたトゲが覆い顔は鉱物を食べる為に発達したのか顎が大きく、例えるならマ●バオーの様。そして溶岩地帯を気にする事なく歩き大きく口を開け岩を齧っている。

 

 

「俺達が動けるのはあの岩場だけだがウラガンキンはこのエリア全体を移動する事ができる。それに奴は体に付いた鉱物を飛ばし攻撃する。充分に気を付けろ」

 

「えっと、体が硬くて岩を飛ばすんだね?」

 

「簡単に言うとな。それと奴の弱点は比較的柔らかい頭部と腹部だ。二人で頭部を狙い隙を見て腹部を叩くぞ」

 

「おぉー!」

 

「行くぞひよっこ!」

 

 

二人は岩陰から飛び出しエリア中央にある岩の広場へと向かう。すると先程まで岩を食べていたウラガンキンがハンターの存在に気が付き外敵を縄張りから追い払う為に攻撃を仕掛けてきた。

 

 

正面から見るウラガンキンの凄まじい迫力。発達した顎に隠れ背に生えるトゲが少し見えるだけ。それ程に顎が発達しているのだ。岩を簡単に砕く顎に噛まれれば命は無い。それでも弱点である頭部を討つ為二人は果敢に攻め立てる。

 

 

「ひよっこ!」

 

「うん!」

 

 

ダモクレスが先行し前に立ち軽さを活かした剣戟を仕掛けてゆく。蒐集剣では重さが足りず致命傷を負わせる事はできないが研がれた鋭さで外皮を裂き傷を負わせる。

 

 

「ハンター!」

 

「おう!」

 

 

そしてハンターとのバトンタッチ。ダモクレスが付けた傷に寸分狂わず斬撃を打ち込んでゆく。ハンターの持つ大剣は一撃の威力は高いが小回りが効かずダモクレスの持つ蒐集剣と対極する。だからこそお互いの剣のメリットを活かし合い戦闘を優位に進める事ができる。

 

 

ハンターの持つ大剣を顔面に受け堪らずウラガンキンは悲鳴をあげ溶岩の上へと逃げる。ここに居ればハンターからの攻撃は届かないと知っているのだ。そして。

 

 

「ブルァァァァァァ!!!」

 

 

体を震わせ体に付けた鉱物を飛ばし攻撃をしてゆく。ウラガンキンにすれば一個一個が小さな鉱物だが人間からしてみれば頭程の岩が猛スピードで飛んでくるのだ。当たればひとたまりも無い。

 

 

「もう終わり?ウラガンキン」

 

「岩が取れ体が一回り小さくなったな」

 

 

だが二人には通用しない。常人を超える剣技で岩を切り崩しこの場に立つ。

 

 

「しかし溶岩の上に居られたら手の出しようが無いな」

 

 

安全地帯である溶岩の上に居座るウラガンキンを恨めしく見ていると岩に体を擦り身に岩を付着してゆく。ただでさえ巨大なウラガンキンが岩に体当たりを繰り返すと火山が揺れてしまう程の衝撃が走る。

 

 

「危ないひよっこ!!」

 

 

その光景を見ているとハンターがダモクレスを突き飛ばした。

 

 

「ハンター?ハンター!?」

 

 

ハンターが受けたのは振動により剥がれ落ちた落石。全身を鎧で包むハンターだが落石によるダメージで気を失っていた。

 

 

「許さないよウラガンキン。、、、その命、クレス様に献上してもらうね」

 

 

落石が当たりカタカタと笑うウラガンキンだがダモクレスを見て震え上がった。ダモクレスの背後にはこの世の物とは思えないナニかがいるのだ。

 

 

その何かは宙を浮かび大鎌を構えながらウラガンキンへと迫る。

 

 

それはどれだけ威嚇をしようと岩を飛ばそうと決して動きを止めず気が付けはウラガンキンの眼前に立ち大鎌を振り下ろした。

 

 

「ブルァァ!?ブルァァァァ!?!」

 

 

大鎌で斬られた場所が激しく痛む。痛みに耐えながら傷口をみると血の色では無く濃い紫色の液体が。それは身を溶かしウラガンキンを蝕んでゆく。

 

 

それを受けたウラガンキンはこの世の物とは思えない悲鳴をあげながら溶岩の上に身を横たわらせ命を散らせた。

 

 

「ハンター!ハンタァ、、目を覚ましてよ、、」

 

 

それを見届けた後ダモクレスは必死にハンターを呼び起こしてゆく。しばらくすると唸り声と共にハンターが目を覚ました。

 

 

「ひよっこ、、ウラガンキンは?」

 

「もう倒したよ!それとクレス様すっごく心配したんだよ!」

 

「あれほどで気を失うとは俺もまだまだだな」

 

 

泣きそうな顔のダモクレスの頭をわしゃわしゃと撫で溶岩の上で力尽きたウラガンキンを見つけた。

 

 

「ふっふーん♪どう、どう?ハンター♪これでクレス様の事ひよっこって呼ばないよねー?」

 

「いや、お前はまだひよっこだ」

 

「えぇ!?なんでだよハンター」

 

「一人前のハンターであるなら相手を倒す場所は選べる。あれを見ろ」

 

 

目線の先には溶岩の上で力付き身を焼かれているウラガンキンの姿が。二人が見ているうちに身は焼き尽くされ灰となり崩れていった。

 

 

「うぅぅぅ、、、ごめんねハンター」

 

「今回は仕方ない。残った骨を持って帰るか」

 

 

焼け残った骨をロープを使い手繰り寄せ持って帰る事に。後はケルビから生肉を剥ぎ取り持って帰ればクエストクリアだ。

 

 

火山入り口付近に群れを成すケルビを狩り生肉を剥ぎ取ってゆく。そんな二人を遥か上から見下ろす者が。

 

 

「あれー?」

 

「どうしたひよっこ」

 

「なんかクレス様の髪が逆立ってる?」

 

 

ダモクレスが結び後ろに流している髪が逆立っている。突然の現象に疑問を抱く。

 

 

「風か?」

 

 

火山の熱で温められた空気の動きだと思うのだがハンターの鎧も動かす度にパチパチと静電気が飛ぶ。

 

 

「これは電気、、ひよっこ!上だ!」

 

 

ハンターが叫んだのと怪鳥が姿を見せたのは同時だった。天空から舞い降りた飛龍の名はライゼクス。凶暴な性格から電の反逆者の異名を誇るモンスター。餌として狙っていたケルビを二人に横取りされ怒りを宿し二人へと襲いかかる。

 

 

ステンドグラスの様な翼に金と黒の甲殻に電気を纏う姿の美しさに目を奪われるが見た目とは裏腹に咆哮をあげながら二人を猛烈に攻め立ててゆく。

 

 

「ひよっこ!迂闊に奴を攻撃をするな!全身に纏う電気が剣を伝い感電するぞ!」

 

 

地を這いながら移動し振り上げる翼を鞭の様に使い攻撃をしてゆく。ライゼクスが通った後の地面は高圧の電流により黒く焦げ目を付ける。

 

 

「ならいつ攻撃すれば良いんだよぉー!」

 

「奴が放電をやめた隙を突く!いくら電気を作り出せるとはいえ作り続ければ疲労が溜まり電気を作るのをやめるはずだ!」

 

 

広い広場を二人が隙を狙いながら駆け回る。それが気に食わないライゼクスはさらに電圧を上げ二人を圧倒してゆく。

 

 

あまりに高い電圧に二人の体は磁石に吸い付く鉄の様にライゼクスの元へと吸い寄せられてゆく。

 

 

「ハンター!!」

 

「万事休すか、、」

 

 

広場の中心で仁王立ちをするライゼクスの元へ吸い寄せられる。このまま吸い寄せられてしまえば電気をまともに食い黒焦げになるだろう。

 

 

「ひよっこ、俺はお前の事を信じている。お前はどうだ」

 

「クレス様もハンターの事信じてるよ!」

 

「なら俺が合図を出したら全力でライゼクスを攻撃しろ」

 

 

吸い寄せに踏ん張り耐えるダモクレスが驚いた顔をする。それはライゼクスへ向かうハンターの姿を見だからだ。

 

 

諦め自ら餌となりに来たのかとライゼクスは笑う。そして来るハンターを捉える為嘴を尖らせた。

 

 

「今だ!ひよっこ!!」

 

 

突き出された嘴を躱しハンターはライゼクスの体に大剣を立て掛ける。その瞬間にライゼクスを纏う電気が大剣を伝い地面へと流れた。

 

 

「!?」

 

 

ハンターの奇策に驚き再び電気を作り出そうとするがどれだけ電気を起こしても大剣を伝い地面へと逃げてゆく。ハンターは大剣をアース代わりにしたのだ。

 

 

「流石だねハンター♪じゃあクレス様の剣、魅せてあげる!」

 

 

大地を疾走するダモクレスが剣を構え飛び一閃を放つ。それはライゼクスのトサカを斬り落とした。

 

 

ライゼクスにとって初めての経験であった。数々のモンスターやハンターを電気により仕留め喰らってきた。それが二人には通用せずさらにトカサを切り落とされライゼクスの首には二本の大剣がクロスして止まっている。

 

 

「どうするひよっこ。俺はライゼクスの肉も食べてみたいが」

 

「そうだね〜♪どうやって料理してあげようか」

 

 

さらに物騒な発言が聞こえライゼクスは覚悟を決める。これが自然の定めであり自身も弱肉を何度も喰らってきた。ライゼクスは覚悟を決め目を閉じた。

 

 

「おぉ、ひよっこ。残念な知らせだ」

 

「どうしたのハンター?」

 

「俺のポーチが生肉で埋まりライゼクスの肉を入れる場所が無い。こいつを討伐しても持って帰る事ができない」

 

「じゃあまだ生きてるし逃してあげよっか」

 

「残念だがそうするか」

 

 

二人が剣を納めるのを見てライゼクスは慌てふためきながら空へと舞い上がって行く。それを見て二人は豪快に笑うのであった。

 

 

しばらくして二人は村へと帰り剥ぎ取った素材を集会所に納め温泉に来ていた。

 

 

クーラードリンクを飲んだとはいえ全身に汗をかき汗ばむ体を湯で流した後湯船へと身を沈めてゆく。

 

 

「はぁ、、、気持ち良いねハンター」

 

「俺が言っていた言葉の意味が分かるだろ?」

 

「うん♪」

 

 

クエストで溜まった疲労が湯船に溶けてゆく。それほどにリラックスできる場所、それがこのベムラ村の温泉。

 

 

「ねぇハンター」

 

「どうしたひよっこ」

 

「ハンターはクレス様の事抱いてくれないの?」

 

 

突然のダモクレスの発言に唾が変な所に入り盛大に咳き込む。そんなハンターの前にダモクレスが立つ。

 

 

目を開ければ長い銀髪が湯を吸い全身に張り付く魅力的な裸体が。そんな姿を見てもハンターは言葉を返さず黙り込む。

 

 

「クレス様はハンターの事大好きだよ。ハンターは?」

 

「・・・俺もお前の事は好きだ」

 

「じゃあ「俺はお前の事は抱けない」

 

「どうして?それはクレス様がひよっこだから?クレス様がキル姫だから?」

 

 

悲しげな顔をするダモクレスを見て言葉を詰まらせるがやがて口を開いた。

 

 

「俺は、、そうだな。お前になら話してやる」

 

 

神妙な顔付きのハンターにダモクレスは湯船に身を沈め静かに続きの言葉を待つ。

 

 

 

「俺は若い頃どうしようもない悪ガキだった。盗賊紛いの事をして生計を立て気に入った女は無理矢理にでも抱いていた。俺に楯突く奴は力でねじ伏せてきた。そんな時俺は師匠と呼べる人に出会ったんだ」

 

 

「その人は俺を本気で叱り付けハンターとして生きる事を教えてくれた。それから俺は師匠と共にフィールドを駆けありとあらゆる事を教えてもらってきたんだ」

 

 

今俺が知っている知識も師匠からの受け売りだ。そう言ってハンターは湯を両手ですくい顔を洗った。

 

 

「師匠は俺がどんなに頑張ってもひよっこと言って笑うんだ。それが悔しくて毎日努力をして師匠を追い抜こうとしていた。そんな時あるモンスターに出会った。そいつの名はイビルジョー。全てを食う暴君」

 

「俺の師匠は俺を庇いイビルジョーの攻撃を受け死んだ。俺の持っている鎧と大剣は死んだ師匠から譲って貰った物だ」

 

「それから俺は師匠の故郷であるベムラ村に身を置きイビルジョーと戦い師匠の仇を討つ機会を狙っている。その時俺は決めたんだ、奴を倒すまで女は抱かないと」

 

「じゃあイビルジョーを倒したらクレス様の事抱いてくれる?」

 

「そう、だな。討伐祝いでニ晩でも三晩でも抱いてやるぞ」

 

 

豪快に笑いダモクレスの頭をわしゃわしゃと撫でる。それにダモクレスは心地良さそうに目を閉じた。

 

 

それからしばらく二人に依頼されるクエストは食材の収集ばかりであった。今日も森丘に出向き草食獣の卵を村へと運んでいた。

 

 

「うーむ。これはこれでなかなか便利だな」

 

「でしょー?♪」

 

「卵を持っていれば剣が使えず俺もこのクエストは嫌いだったのだが」

 

 

草食獣の巣から盗み出した卵を両手に抱えて二人は帰り道を歩む。二人の背後にはあの時のディノバルドが二人を守る為に睨みを効かせている。

 

 

ディノバルドも本来なら生態系の頂点に立つモンスター。だがダモクレスに手懐けられこの様な有様なのだが。それでも他のモンスターにとって脅威であり二人の運搬を邪魔をするモンスターは背後にいるディノバルドを見ただけで逃げ出してゆく。

 

 

「またねディノ♪呼んで来なかったらどうなるか分かってるよね?」

 

 

あだ名まで付けられてしまったディノバルドはこくんと頷き森丘へと帰ってゆく。

 

 

次の日は渓流に魚を釣りにやって来ていた。ステージ入り口から流れる渓流で二人はのんびりと釣り糸を垂れる。

 

 

「ねぇーまだ釣れないのー?クレス様飽きちゃったよ」

 

「釣りというものは忍耐を要求されるからな。文句を言うな」

 

「はぁーい」

 

 

釣り竿を持ち直しウキを見つめるのだが反応が無いウキがつまらなく景色を眺める事に。すると密林に白桃のモンスターの姿を見つけた。

 

 

「ねぇハンターあれって」

 

「タマミツネだな。あの時の奴か」

 

 

二人の姿を見たタマミツネは密林に姿を消した。

 

 

「あっ、、、行っちゃった」

 

「元気になった姿を見せに来たんだろ」

 

 

再び釣りを始め二時間が経過したのだがウキはぴくりとも動かずハンターの脳内にクエスト失敗の言葉がチラつき始めていた。

 

 

そんな時何かを引き摺る音が聞こえ目を向けるとタマミツネが何かを咥えてこちらへと歩いて来た。二人の近くにそれを置くと短く鳴き声を上げ密林へと姿を消した。

 

 

「何を置いてったんだろ?」

 

 

近づき見てみると大きな葉っぱが。それを開けてみると中に沢山の魚の姿が。

 

 

「こいつは驚いた。タマミツネが恩を返すとは」

 

「これも愛、だね♪」

 

 

次の日は雪山に霜ふり草を取りに。大雪に見舞われながら雪山を歩んでゆく。

 

 

「すごい雪だね、前が全く見えないや」

 

「はぐれるなよ。探すのが面倒だ」

 

「じゃあクレス様の手、握っててよね♪」

 

 

ダモクレスが伸ばした手がハンターの手を握る。だがその手は振り払われた。

 

 

「手を繋いでいれば何かあった時すぐに反応ができんだろ」

 

「むぅ〜〜!!」

 

「それにその、少し照れ臭い」

 

 

明後日の方を見ながら呟くハンターに気を良くしダモクレスはニヤニヤしながらハンターの周りを小躍りする。その姿に言わなければ良かったとハンターは後悔するのだが。

 

 

しばらく地図を片手に雪山を歩くのだがあまりの吹雪に方向感覚が狂わされ二人は吹雪が収まるのを風裏に隠れ待つ事に。

 

 

「うぅ〜ホットドリンク飲んだのにさむ〜い!」

 

「この天気だとクエストは困難だな、村に戻り日を改めるか」

 

「でもどうやって帰るの?」

 

「それもそうだな、、」

 

 

荒れ狂う大雪に進む事も戻る事もできず。遭難に一歩足を踏み入れていた。雪こそ防げているが強風に吹かれ体温を奪われ続けこのままでは凍死の恐れも出てきた。

 

 

そんな時風が止み天気が変わったのか?と岩陰から顔を出すと山ほどある巨大なモンスターの姿が。

 

 

「あっ、ガムートだ。それにポポ達も♪」

 

 

巨大な体格に風と雪が遮られていた。ガムートの足元にいるポポ達をダモクレスが撫でてゆく。

 

 

「ねぇガムート、クレス様達霜ふり草ってのを探してるんだけど知らない?」

 

 

ダモクレスの問いにガムートは歩み始めた。その後に付いて行く。

 

 

「ここは、地図にも載っていない未開の地か」

 

 

しばらく進んだ先には一面に草が生い茂る場所。どう地図と照らし合わせてもこの場所は記されておらずモンスターのみが知る人類未到の地。そんな場所にガムートに案内されたのだ。

 

 

「霜ふり草って聞いて美味しそうだと思ってたのにただの草じゃんか」

 

「この草の名は抜いた後も冷たさを保つ事からきている。決して霜降り肉の意味では無いぞ」

 

 

ガッカリしながらも霜ふり草を収穫し帰路へ。帰り道も迷わぬ様ガムートの案内を受けながら。

 

 

「ばいばーいみんな♪まったねー♪」

 

 

雪山の入り口で引き返して行くガムート達にダモクレスが手を振る。それに応える様にガムートが長い鼻を上げた。

 

 

 

次の日は火山へトウガラシを採取しに。

 

 

「こんなに食材を取ってどうするの?」

 

「明日は村のお祭りの日なんだ。村を守る為とはいえ討伐したモンスター達の魂を鎮魂する鎮魂祭。集めた食材は明日の祭りの食材だな」

 

「おぉ〜♪じゃあクレス様も愛を込めた料理作ってあげるね♪」

 

「楽しみにしてるよ」

 

 

二人はクーラードリンクを飲み火山の奥地へと足を進めて行く。

 

 

灼熱の溶岩が沸る道を進み火山を抜け裏側にある広場へと。そこにある僅かな大地に赤い実を宿らせるトウガラシを収穫して行く。

 

 

「へぇーティルヘルムのトウガラシと一緒。なんか不思議」

 

「ティルヘルムのトウガラシはどうか知らんがここのトウガラシは涙が止まらなくなる程辛いぞ」

 

 

ふ〜んっと呟きながら収穫したてのトウガラシを少し口に含み噛むと口いっぱいにツンっと辛味が広がり口内が痛みだした。

 

 

「うぇ!?ぺっ!ぺぺっ!から〜〜ぃっ!!!」

 

「荒れた大地で逞しく育ったんだ。生半可な辛さじゃ無いぜ」

 

 

急いで吐き出し何度も唾を吐くが辛味は治らず唇を腫れさせ涙が溢れてゆく。そんな姿を見てハンターは豪快に笑う。

 

 

「うぅ、、まだ口の中が痛いよ、、」

 

 

山肌を流れる水を見つけクーラードリンクの空き瓶に入れ口を何度も洗い流したのだが口の中のヒリつきは消えずダモクレスを悩ませる。そんな帰り道、以前ライゼクスと戦った広場を歩いていた。

 

 

天空より響く鳴き声を聞き二人が空を見上げるとライゼクスの姿が。天空より舞い降りると両翼を広げ咆哮を放つ。その頭は以前ダモクレスに斬られたトサカが無くあの時のライゼクスと確信した。

 

 

「ハンター!」

 

「仕方ない。一狩りいくか!」

 

 

大剣を構え瞬時に戦闘態勢へ。広場の中央に舞い降りたライゼクスに狙いを定めてゆく。

 

 

以前と同じく広場の中央で高圧の電気を起こし二人を引き寄せてゆく。戦法はあの時と同じだが引き寄せられてゆく二人をライゼクスは嘴だけで無く両翼で攻撃しようとしていた。

 

 

剣をアース代わりにすれば電気は逃がせられるのだがそれを封じられてしまえば二人に打つ手は無い。勝利を確信しライゼクスは咆哮をあげる。

 

 

「そうだ!」

 

 

ダモクレスは策を思い付きニヤリと笑う。

 

 

「ほらライゼクスーご飯だよー♪」

 

 

ダモクレスは先ほど収穫後したトウガラシをライゼクスの口へと投げた。それは咆哮をやめ呼吸をしようとしたライゼクスの口へと飛び呼吸と共に口の中へと入り込んだ。

 

 

「グァぇ!!」

 

 

身を焼いてしまう程の辛さを持つトウガラシを咀嚼してしまいライゼクスが悲鳴を上げ辛さを紛らわせるために水を探すのだが火山地帯に水場があるわけも無くライゼクスはのたうち回る。

 

 

「ほーらライゼクス、クレス様水を持ってるよ」

 

 

ダモクレスが悶えるライゼクスの前で瓶を振るとちゃぽちゃぽと水の音が。それを聞きライゼクスは躾けられた鳥の様に姿勢を正し水をねだる。

 

 

「もうクレス様達を襲わない?攻撃しない?」

 

 

ダモクレスの問いにブンブンと首を振る。それを見てダモクレスは蓋を捻りライゼクスの口に水を流し込む。

 

 

飲み干した水が辛さを和らげ一息付きライゼクスは再び戦闘態勢へ。

 

 

「受けた恩を仇で返すとはモンスターの風上にもおけん奴だな」

 

「そうだね。もう愛してあげちゃおうよ」

 

 

電気を起こそうとした時には二人の大剣がライゼクスの首元にクロスして止まる。

 

 

「今日はポーチに空きがあるからこいつの肉を持って帰れるぞ」

 

「やったー♪じゃあ焼き鳥にして、手羽先は照り焼きにしちゃおっかな♪新鮮だから鳥刺しもいいかな♪」

 

 

騙し討ちすら通じず自身の料理方法まで考えられライゼクス涙目である。

 

 

「おぉひよっこ大変だ」

 

「どうしたのハンター?」

 

「収穫したトウガラシが火山の熱で萎びかけている。早く帰らないとクエスト失敗になってしまうぞ」

 

「じゃあしょうがないね。ライゼクスはどうするの?」

 

「時間が惜しい、今回も見逃してやるか」

 

「ハンターがそう言うなら許してあげよう」

 

 

二人が剣を引くと慌てふためきながらライゼクスが舞い上がってゆく。それを見て二人は豪快に笑う。

 

 

 

集会所に素材を渡し二人は温泉へ行き家に帰って来ていた。

 

 

「祭りは明日の昼からだ。たらふく飲んで食って祭りを楽しむんだぞ」

 

「ハンターはいつも食べて飲んでばかりじゃんか、たまには料理手伝ってよ」

 

「前も言ったが俺は食べると狩る専門だ。それと飲む」

 

「むぅぅ!そんなんじゃ飢え死にしちゃうよ」

 

「俺が飢え死ぬ前にひよっこが飯を作ってくれるだろ」

 

 

そうだけどさ。そう言ったダモクレスに笑いハンターは布団に潜り込む。

 

 

「明日の為に寝るぞ」

 

「ねぇハンター、一緒に寝ていい?」

 

 

そう言いながらダモクレスはハンターの布団に潜り込んでゆく。

 

 

「お前は俺を殺す気か?」

 

「えっ、なんで?クレス様そんな事しないよ?ハンターってあったかいんだね♪」

 

 

ハンターの腕の中でダモクレスが和かな顔で見上げる。胸に胸を押し当て足を絡めるダモクレスに理性が攻撃される。

 

 

長い葛藤を終えダモクレスを見ると何も知らずに寝息を立てていた。ベッドから追い出してやりたい気持ちを堪えハンターも眠りにつく事に。

 

 

 

「今日はベムラ村一番のお祭り、鎮魂祭だにゃ!皆太陽の恵み、水の恵み、大地の恵みに感謝しモンスター達の鎮魂を祈るにゃ!」

 

「そして村を守るハンター達に感謝を!さぁ!お手を借りるにゃ!」

 

 

村長が片手に持つコップを掲げると村人達がコップを高く上げる。

 

 

「「かんぱーーーい!!!」」

 

 

鎮魂祭の始まりの合図が終わり盛大なお祭りが開催される。そうはいってもただのご飯会なのだが。

 

 

それでもダモクレスは深い愛を感じていた。自然と共存する村人達に、大地の恵みに感謝を忘れない村人達に。

 

 

この形こそダモクレスが探していた愛なのかもしれない。

 

 

「どうしたひよっこ」

 

「んーん。愛だな、って♪」

 

 

手に持つビールを飲み干しおかわりしてコップを片手に料理を頂く。焼き魚にケルビの焼き肉、トウガラシで和えられた霜ふり草。どれもこれも美味しく箸が進みビールが進む。

 

 

「もうなくなっちゃったの?じゃあクレス様が作ってあげよう♪」

 

 

料理の作り手であるおばちゃんに変わりダモクレスが鉄板の前に立ち腕を振るってゆく。手際良く食材を切り炒めてゆく。

 

 

「クレスちゃんはハンターのお嫁さんにピッタリだよ。ハンターもいい歳なんだからクレスちゃんを逃したらダメよ!」

 

 

お節介な言葉を聞き二人が顔を赤くする。

 

 

「でもハンターはモンスターにしか欲情しないんだぜ!」

 

「モンスターにちんこ食われたんでしょ?」

 

「そんな訳があるか!俺は女は好きだしちゃんと付いてるぞ!」

 

 

若者にからかわれながらビールを煽る。

 

 

朝から始まった鎮魂祭は気が付けば昼を過ぎ夕方を迎えていた。日が暮れる前にと村人総出で片付けが行われてゆく。

 

 

そんな時村にある監視台に居た見張りが何かを見つけた。村へと猛進するモンスターの姿を。

 

 

「モンスターが来るぞー!!」

 

 

その言葉に村に緊張が走る。ハンターである二人は鎧を纏い大剣を握り村長の指示を待つ。

 

 

「にゃ、にゃんと!?」

 

 

見張り台に登った村長が驚きの声をあげる。村へと猛進するモンスターを何か知ったのだ。

 

 

「ハンター、クレス、君達に緊急クエストにゃ!村へと迫るイビルジョーを討伐するのにゃ!!」

 

「イビルジョーだと、、、!!!」

 

 

見張り台から飛び降りてきた村長に告げられハンターが怒りを露わにする。師匠の仇であり師匠の故郷を襲うイビルジョーに。

 

 

「ひよっこ、お前はここで村人達を守れ。奴は俺がこの手で殺す」

 

「でも一人じゃ危ないよ!クレス様も行く!」

 

「あいつと戦うのは俺一人で十分だ。それに奴とは俺一人で戦いたい」

 

 

怒りを宿す瞳を向けた後頭に鎧を付けハンターはイビルジョーが来る方角へと駆け出してゆく。

 

 

「ハンター、、、」

 

「クレス、君も行くにゃ!ハンターは確かに強い、だけど怒りに身を任せて勝てる相手ではないにゃ!」

 

「そうだよクレスちゃん!自分の身は自分で守るから行っておいで!」

 

「うん、、分かったよ!クレス様行ってくるね!」

 

「イビルジョーは全てを喰らう恐暴竜の名を持つモンスターにゃ!くれぐれも気を付けるにゃ!」

 

 

村長の言葉を背に聞きながらダモクレスは駆けてゆく。

 

 

 

「・・・・」

 

 

ハンターが戦う相手、イビルジョーを見てダモクレスは戦慄した。深緑の体色に喉まで裂けた大口に無数に乱雑に生え揃う牙。全身を覆う棘状の鱗。太く長い尻尾に。

 

 

生命活動を維持する為に目に入る物は全て食らう暴君の姿に一度立ち止まったが邪悪な闘志を燃やしハンターの元へ。

 

 

 

全身全霊を込め怒りの大剣を振るうのだがイビルジョーの持つ鱗に阻まれ目立ったダメージは与えられず。それでも振るわれる尻尾を、迫る大口を回避しながらイビルジョーを倒す為果敢に攻め立ててゆく。

 

 

「!!」

 

 

そんなハンターだが一瞬の隙を突かれ尻尾による打ち払いを受けてしまい転がり地に伏す。そんなハンターを仕留める為にイビルジョーが踏み潰そうと脚を上げた。

 

 

(くっ、、、)

 

 

鎧を砕かれる程の威力の打ち払いを喰らい身動きが取れなくなったハンターは上げられた脚を見て目を閉じた。師匠の仇を取れない自分を恨みながら。

 

 

「ハンター!!」

 

 

足が振り落とされる間一髪でダモクレスがそこに飛び込みハンターと共に大地を転がり危機を脱した。

 

 

「ひよっこ!」

 

「ハンター!クレス様も一緒に戦うよ!ハンターの仇はクレス様の仇。だから一緒に、、、!」

 

「、、、すまない、少し時間を稼いでくれないか」

 

「うん任せてよ!」

 

 

動けないハンターの前にダモクレスが立ちイビルジョーと対峙する。そしてイビルジョーの迫力に圧倒されていた。

 

 

身体に無数に付いた古傷は生存競争を勝ち上がってきた証。そして何より全てを喰らうという意志を全身から感じさせるのだ。このモンスターはただのモンスターじゃない。モンスターの姿をした悪魔。そう錯覚してしまう程。

 

 

「ふぅ〜ん?じゃあその命、クレス様に献上して」

 

 

ダモクレスも負けてはいない。神令されたヘルの力を解放し背後に死神を現出させるハンターの前では使わなかったヘルの力の解放はダモクレスの覚悟の現れである。

 

 

ダモクレスに神令されたヘルは死者の国を司る女神。地上で荒ぶる悪魔と死を司る女神の戦いが始まった。

 

 

素早い身のこなしでイビルジョーへと接近し斬撃を放ち身を翻す。ハンターの持つ大剣ですら傷を付けるのがやっとの身体にダモクレスが持つ蒐集剣では傷を付ける事すらできず。

 

 

それならばとショウグンギザミで学んだ事を試す。斬るのが通じないのなら突けば良いと。

 

 

イビルジョーの攻撃は威力こそあるが噛みつきと尻尾による攻撃のみ。それさえ躱してしまえば攻撃は容易く通る。振り回された尻尾を掻い潜り全体重をかけた突きをくり出す。

 

 

「えぇー!?」

 

 

渾身の突きはイビルジョーの体を捉えたのだが強靭な鱗に遮られ切先が滑り勢いあまりダモクレスはイビルジョーにぶつかった。

 

 

そして前脚に掴まれ見上げれば捕食する為に開かれた大口。何百の牙が並び滴る涎がダモクレスへと垂れる。

 

 

悲鳴をあげるダモクレスの頭を大口で喰らう。

 

 

 

「・・・・・あれ?」

 

「よく頑張ったなひよっこ」

 

 

ハンターの声で目を開けるとイビルジョーの大口につっかえ棒のように大剣が挟まれている。ダモクレスが逃げ出すのを見て大剣を外し構え直した。

 

 

「ハンター!傷は?もう大丈夫なの!?」

 

「回復薬を飲んだからな。それと秘薬と大剣の研ぎ直しもさせてもらったよ。ひよっこ、俺と共に戦ってくれるか」

 

「今さらだよハンター!クレス様達の愛の力みせてあげよう!」

 

 

後方へと飛び跳ね剣を構え直し同時にイビルジョーへと斬りかかる。

 

 

「ハンター!あいつの身体に傷を付けて!そしたらクレス様がこのヘルの力であいつを愛してあげるから!」

 

「策があるんだな?お前の言葉を俺は信じるぞ!」

 

 

ハンターへ喰らい付こうとする大口の真っ向に立ち振り上げた大剣はイビルジョーの顔面へと振り下ろされる。強靭な肉体を秘薬により強化された一撃に堪らず悲鳴をあげ後ずさる。

 

 

「ハンター!」

 

 

そこにダモクレスが走りハンターの肩を踏み台に飛び上がると荒れ狂うイビルジョーの顔面に一閃を繰り出した。

 

 

ヘルの力を蒐集された蒐集剣、その能力は斬った相手に猛毒を流し込む事。受けた相手を必ず絶命させる蒐集剣はハンターが付けた傷を正確に切り裂きイビルジョーの体内に猛毒を流し込む。

 

 

「!!!!!」

 

 

血を沸騰させ肉を腐食させる猛毒が血流に乗り全身へと回りイビルジョーは断末魔の悲鳴を上げながら暴れ狂いやがてその身体を大地に横たわらせた。

 

 

「勝った、、。師匠、俺はあなたの仇をとりました、、、」

 

 

イビルジョーの亡骸の前に崩れ落ち天を仰ぐ。その様子をダモクレスは見守ってゆく。

 

 

「ありがとうひよっこ。お前のおかげだ」

 

「えへへ♪ねぇハンター、まだクレス様の事ひよっこて呼ぶのー?」

 

「あぁ、そうだったな。ありがとうクレス。なんだかこう呼ぶのはしっくりこないな」

 

「ふふーん♪じゃあクレス様の事抱いてくれる?」

 

「もちろんだ。その前にクエスト完了の報告だな」

 

 

立ち上がり村へと帰ろうとした時イビルジョーの身体がピクリと動いた。

 

 

「!!」

 

 

異様な気配を感じとり二人が振り返ると絶命したはずのイビルジョーが身体をゆらりと起こし立ち上がっていた。高い体温と生命力により毒を打ち消したのだ。

 

 

「グルルルルッッッ」

 

 

そして全身の筋肉を異常に奮立たせ狂暴状態へ。ここに貪食の恐王が降臨した。

 

 

「「・・・・!!」」

 

 

筋肉が隆起し紅く染まるイビルジョーに二人は戦慄した。通常状態のイビルジョーですら辛勝すら危ういのにそれが凶暴化し襲い掛かろうとしているのだ。

 

 

「クレス、逃げるなら今だぞ」

 

 

大きく開いた口から涎を垂らしながら二人を見る姿にハンターが告げる。

 

 

「その言葉そのまま返してあげるよ。ハンターが死んじゃったらクレス様を抱けないしね」

 

「お前が死んだら俺はお前を抱けないぜ?ならこうしようか。あいつを二人で倒し必ず生きて帰る」

 

「そうしよっか♪」

 

 

夕焼けに染まる大地に対峙するモンスターとハンター二人。命を賭けた戦いが始まった。

 

 

「クレスは乗りを狙え!俺は正面から奴を叩く!」

 

「りょーかい!いっくよー!」

 

 

暴れ狂うイビルジョーの攻撃を躱し身軽なダモクレスがイビルジョーの背に飛び乗り蒐集剣を振り上げる。狙うは筋肉の隆起により開いた古傷。そこからヘルの猛毒を流し込み完全なる死を与える。

 

 

「うりやぁ〜〜!!」

 

 

振り下ろした蒐集剣は強靭な筋肉に遮られながらも刀身が深く刺さる。そこから猛毒が溢れ出しイビルジョーを蝕んでゆく。

 

 

毒による死は与えられないものの激痛を伴わせイビルジョーの意識は背に乗るダモクレスへと移る。

 

 

「待たせたなイビルジョー真打をくれてやる」

 

 

そこには気を溜めたハンターの姿が。溜めた気は大剣へと移り紅く大剣が輝く。

 

 

「俺の狩技を食いやがれ!」

 

 

大剣を大地に擦りながらハンターが猛進。イビルジョーに向かい飛び上がり向けられた顔に向かい一閃を振り落とす。

 

 

「なっ!?」

 

 

繰り出された一撃をイビルジョーは強靭な口で白刃取りそのまま首を振りハンターを地面へと叩きつけた。

 

 

「うぐっ!」

 

 

地面がめり込むほどの力で叩きつけられ意識が霞む。そこにイビルジョーが脚を上げ踏み潰そうとする。

 

 

「ハンター!!!」

 

 

未だ背に乗るダモクレスにはハンターの救出に間に合わない。動きを止める為に蒐集剣を何度も突き刺すが動きは止まらない。

 

 

 

その時、一匹のモンスターの鳴き声が大地に響いた。

 

 

「ミツネ!!」

 

 

その正体はタマミツネだった。二人の悲鳴を聞き渓流より姿を見せたのだ。全身に泡を纏い歩く様は黄昏に輝き優雅なる舞のよう。

 

 

タマミツネの出現にイビルジョーの動きが止まる。そして食いごたえがあるタマミツネへと意識を向けた。

 

 

くるりと身を回すと遠吠えを上げイビルジョーと対立する。圧倒的に体型に差があるのだがタマミツネには武器がある。それは。

 

 

口より吐かれたのは泡。それが一つの道となり大地を濡らす。そこに一歩イビルジョーが踏み出せばぬるりと滑り体制を崩す。その瞬間に泡の道を駆けイビルジョーに体当たりを喰らわせる。

 

 

「ミツネー♪ありがとうね♪」

 

 

ひらりと飛び降りたダモクレスがタマミツネの頭を撫でる。それに心地良さそうに目を細め前を向く。

 

 

「ハンター大丈夫!?」

 

「あぁ、なんとかな。それよりタマミツネは助けに来てくれたのか」

 

 

ハンターの問いにコクリと頷く。そしてもう一匹姿を見せたモンスターが。

 

 

そのモンスターは黄昏が進み薄暮の草原に恍惚と光る紅い尻尾を振るう。

 

 

「ディノまで!」

 

 

摩擦により灼熱を浴びる尻尾は起きあがろうとするイビルジョーを打ち払い雄叫びを上げる。二人の声を聞き主人を助ける為に森丘より姿を見せたのだ。

 

 

日暮の空に雷鳴が連なる。見上げても雲は無く星が見える夜空。雷鳴の正体は雷の反逆者ライゼクス。

 

 

二人の悲鳴を聞き火山より姿を見せたのだ。そして対峙するイビルジョーに攻撃を仕掛けてゆく。

 

 

 

全身に電気を纏い大空より滑空し電気を纏う大翼でイビルジョーを打つ。その瞬間イビルジョーに大電流が流れ閃光が走る。

 

 

「ライゼクスか、、」

 

 

ライゼクスに二人を助ける恩は無い。だが二人を討たれては今までの屈辱が晴らさぬと現れたのだ。

 

 

そして彼方より響く足音が。彼方からでも大地を揺るがす程の巨体が草原を疾走する。

 

 

「ガムート!!」

 

 

ダモクレスの言葉に咆哮を上げながら焼け焦げ煙を吐くイビルジョーに向かい前脚を振り上げ踏み潰した。

 

 

 

ここに四第獣が揃い全モンスターの天敵であるイビルジョーを打ちのめしたのだ。

 

 

ガムートが脚を上げると無惨にも潰れてしまったイビルジョーの姿。それでも念の為首を切り離しハンターが高く掲げる。

 

 

「ありがとうタマミツネ、ディノバルド、ライゼクス、ガムート、そしてクレス。俺一人ではコイツに勝つ事はできなかった、、」

 

「うんうん♪これも愛の勝利だね♪」

 

「あぁ、お前の言う通り愛の勝利だ」

 

 

ハンターは長くハンター生活を続けていたがモンスターとの共闘は初めてでありハンターとモンスターとの新しい共存の仕方を垣間見た。それは愛を語るダモクレスが居たからこそ。ハンター一人ではタマミツネに施さずガムートは助けずディノバルドとライゼクスは狩猟していただろう。

 

 

「ねぇねぇ♪せっかく助けてくれたんだから村でご飯食べてってよ♪クレス様料理頑張って作るからさ♪」

 

 

ダモクレスの誘いに四匹は困り顔を浮かべるのだがダモクレスに押されベムラ村へ。イビルジョーの出現にピリピリとした緊張が走る村に四匹を引き連れ戻ってきた事に村人は驚き慌てふためくのだが困惑するハンターに説明をされ徐々に冷静さを取り戻してゆく。そしてハンター達と共に村の危機を救ったと聞き感謝の宴が行われる。

 

 

 

初めは四匹のモンスターに恐れ多い村人であったがダモクレスが作ったご飯を食べ大人しくしている姿を見て次第にモンスターの元へ。手で触れても攻撃する事なく大人しくしている姿に関心の声が上がる。

 

 

「モンスターを手懐けるとはハンターさんは流石だにゃ」

 

「いや、手懐けたのは俺じゃない、クレスだ。あいつが居なければ俺はイビルジョーに食われこの村も破壊されていた」

 

「ハンターさんが謙遜するなんて珍しいにゃあ」

 

「事実を言っただけさ」

 

「この事をハンターズギルドに報告しても良いかにゃ?」

 

「任せるよ」

 

 

 

ハンターの言葉に頷き村長は早速レポートを書く。内容はイビルジョーが出現したがハンター二名と野生のモンスター四匹が共闘しイビルジョーを討伐した。っと。

 

 

 

しばらくして提出されたレポートを読んだハンターズギルドは内容に困惑していた。いくらイビルジョーが全モンスターの天敵であるとしてもハンターとモンスターが共にイビルジョーと戦うなんて夢物語、もしそれが事実であるなら前代未聞。ハンターズギルドはベムラ村に職員を派遣し様子を見に行かせた。

 

 

そこにはディノバルド、タマミツネ、ガムートが村人と戯れる姿が。その様子に職員は言葉を失った。

 

 

「ようこそベムラ村へにゃ」

 

 

村長に声をかけられようやく我を取り戻し話を伺ってゆく。

 

 

ひょいひょいとモンスターの横を通ってゆく村長の後を恐る恐る職員が通り二人は集会所へ。

 

 

「報告書通りですが、、、ハンターともう一匹のモンスターは何処へ?」

 

「ハンターさんとライゼクスは火山にヴォルガノスを討伐に行っているにゃ」

 

 

当然の様に告げる村長に職員は目眩を起こす。

 

 

 

「そう、ですか、、それともう一人のハンターも同行しているのですか?」

 

「もう一人のハンターは、、、、」

 

 

 

 

 

 

 

………………………………………………………………

 

 

 

 

 

 

宴は夜通し続き太陽が顔を出す頃に終わりを告げた。その頃には村人達もモンスター達も種族の壁を乗り越え仲を深めていた。

 

 

「ったく、、本当にひよっこには驚かされる」

 

「あっ!今クレス様の事ひよっこって言った!」

 

「悪い、癖だな。ありがとうクレス。お前のおかげだ。いや、お前達のおかげだ」

 

 

リラックスしている四匹に目線を向けると視線に気が付き目を向ける。その瞳に野生は残っているものの敵意は感じられない。

 

 

「じゃあクレス様との約束覚えてるよね?」

 

「あぁ、もちろんだ。お前こそ途中でやめてって言うなよ」

 

「ふっふーん♪ならクレス様はハンターの愛を全部受け止めてあげるよ♪」

 

 

ダモクレスが歩き始めた時足元がキラキラと輝いてゆく。

 

 

「あっ」

 

「どうしたクレス!?その光は!?」

 

「心配したみんながクレス様を元の世界に戻そうとしてる、、せっかくいいところだったのに、、、」

 

 

そう言う間にも光は増し見ればダモクレスの腰から下は消えている。それでもハンターの元へと進んでゆく。

 

 

「お別れ、だね。思い残す事はたくさんあるけど思い出もたくさんできたよ♪またねハンター、みんな♪」

 

「・・・・またこの世界に来れるのか?」

 

「どーだろ?でもクレス様は絶対またここに来るよ!約束ね♪」

 

 

ハンターの唇に唇を重ねニンマリと笑う。ダモクレスの行動に気を取られているとダモクレスの姿はもう無かった。

 

 

まるで夢から覚める様に呆気なく消えてしまったダモクレスに本当に夢だったのか疑ってしまう。だけど村には四匹のモンスターが居てハンターの唇には柔らかな感触がまだ残っている。

 

 

(ありがとうクレス。お前は立派なハンターだよ)

 

 

山々から差し込む太陽に向かい呟く。その言葉は誰にも聞かれる事なく風に乗り消えてゆく。

 

 

 

 

 

 

「って訳だにゃ」

 

「は、はぁ、、、」

 

 

異世界から来たキル姫という少女の話をされ職員は目眩を起こし椅子に座り込む。何を何処から理解していけば良いのか全く分からず認知を超える現実に考えるのをやめようとしていた。

 

 

「分かりました。そうハンターズギルドには報告しておきます」

 

 

それでも言葉を絞り出し職員はふらふらと表へ出てギルドへと帰ってゆく。

 

 

しばらくしてハンターはライゼクスの背に乗りベムラ村へと帰ってきた。

 

 

「ありがとうライゼクス。助かったよ」

 

 

ハンターの言葉に頷き鳴き声をあげ報酬の生肉をねだる。

 

 

「まてまて、まだディノとミツネにもあげないんだぞ。順番だ」

 

 

クレスが居なくなってからしばらくの時が流れた。あのまま自然に帰ってゆくと思っていた四匹は村に残り何かと村の手伝いをしてくれている。

 

 

四匹にご飯をやり温泉に浸かり家へと戻りベッドに寝転がり師匠が言っていた言葉を思い出した。

 

 

自然が廻り回り廻りめぐる。その言葉に支え支えると付け加えよう。

 

 

大きく体を伸ばし頭まで布団を被り眠気を待っていると外のモンスター達が騒ぎ始め仕方なく表の様子を見に行こうと玄関へ手をかけようとしたのと玄関が開くのは同時だった。

 

 

 

「わっ!あははははは♪どうどう?びっくりした?」

 

「お前、、、戻ってきたのか」

 

「うん♪オベロン様に頼んでこの世界にワープさせてもらったんだ♪じゃあクレス様との約束守ってもらおっかなー?」

 

「久しぶりに会って言う事がそれか?」

 

「クレス様ずーっと我慢してたんだよ?ほんとだよ?」

 

 

苦笑いを浮かべながらも右手はダモクレスの頭を撫でる。髪の毛をくしゃくしゃにされながらもダモクレスは目を細め心地良さそうに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ここまで目を通してもらいありがとうございました!


もう少し短く書くつもりだったのですがつらつらと書いていたら長くなってしまいました。


肝心?なダモクレスとハンターのイチャラブシーンは各自想像にお任せします。


よろしければ次作にも目を通していただけると幸いです。
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