※この作品はR-18です。

黒ティルと僕と   作:やす、

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人の命とは容易く奪えるものだ。例えば首を手で締めたり私の場合だとこの槍で心臓を一突きにしたり。それだけで、少し力を込めるだけで人は死んでしまう。


何故人は人を殺すのか。理由はそれぞれあると思うが例えば邪魔であったり恨みがあったり。私達は過去にバイブスを排除するという目的で人を殺めていたが。


でも今の私達は人を殺す必要など無く。平和な日常を過ごしている。


この話は平和なティルヘルム城で起きた城主であるオベロン様を殺害した犯人を追う私の話だ。









ミネルヴァ「オベロン公殺人事件」

皆で夕食を食べ終えた後私とニケは自室へと戻り明日の任務の段取りを考えていた。

 

 

私達神令キラーズはオベロン様の好意によりティルヘルムの城に住まわしてもらっている。その対価としてオベロン様から任務を言い渡され確実に遂行する。少し堅苦しい言い方をしたが与えられるものは任務と言う程でもなくお手伝い程度のものなのだが。

 

 

ここで少しオベロン様がどの様な人物なのか知るそう。

 

 

元々はトレイセーマの重役であった彼はイミテーションと呼ばれ下等な扱いを受ける人々の存在を知りオベロン様はトレイセーマより独立しイミテーションを守る為にこのティルヘルムという国を創りあげたのだ。

 

 

そしてこの世界からバイブスを排除しようとした私達すら国に招き入れてくれる程の懐の広さを持つ人だ。

 

 

今はティルヘルムは他の3カ国と肩を並べる、とまでは言えないが安定した領土を持ち人口も増加傾向にある。オベロン様の手腕の賜物だろう。

 

 

「ニケ、どうしましょう?」

 

 

任務に割り振る人で悩み肩に止まる相棒の梟、ニケに声をかける。すると私と同じ様に困った顔で机に置かれているノートへと眼差しを向けてくれた。

 

 

最近異世界に行くのが流行っているのかグラーシーザ、エルキュール、ダモクレスは異世界に遊びに行っており今は不在。ラグナロクも用があると言ってラグナ大陸へと出かけている。今この城に居るのはリル=ティルフィング、ギル、ウコンバサラ、ネス、フライシュッツ、スイハ、アルマス、ティニ、そしてこの私ミネルヴァだ。

 

 

それを踏まえてこの任務は私含め四人の内誰に行って貰うか。任務の内容はティルヘルム郊外にある畑の手伝いなのだけど。

 

 

誰に行ってもらおうか悩みノートの上をボールペンを持った手が泳ぐ。そんな時ニケが私へと視線を向けている事に気が付いた。

 

 

「そうですね、運動だと思って私が行きます」

 

 

平和な世界に浸かりすっかり体を動かす機会が減ってしまいニケが目を向ける私の二の腕を掴むとぷにぷにとした感触。健康と体型の維持だと思いノートに書かれている私の名前に丸を付けた。

 

 

この時期に収穫できる野菜の事を考えているとドアがノックされ返事をするとこの城の女王であるリル=ティルフィングの姿が。

 

 

「どうしましたリルティル」

 

「明後日行われる4カ国の会談の資料作りを手伝って貰いたくて、お時間宜しいでしょうか?」

 

「はい、私にできる事ならお手伝いしますよ」

 

 

快く返事をすると安堵の息を漏らした後私が座る机の横に椅子を運び座ると資料を机の上に広げてくれた。

 

 

「少し纏めたのですが、どうでしょうか?」

 

「そうですね、、、」

 

 

リルティルが作成した資料に目を通し改善点を告げる。それから双方が意見を言い合い資料を煮詰めてゆく。

 

 

「何か飲みますか?常温でよければ缶コーヒーがありますけど」

 

「ごめんなさい、私のお手伝いをしてもらっているのに」

 

「構いませんよ。微糖とブラックどちらがよろしいですか?」

 

「なら微糖を頂きます」

 

 

机の引き出しから微糖の缶コーヒーを取り出しリルティルへと手渡す。もう季節は春に向かい夜間でも暖房を付けなくても過ごしやすい温度だ。寒がりな私にとってありがたい季節。

 

 

「そうだ、城の庭園にある桜が咲いたらみんなでお花見をしませんか?」

 

「良いですね、花より団子の人が何人か居ますけど」

 

 

喋りながら作業を進め結局資料が出来上がった頃には窓から日が差し込んでいた。

 

 

「ありがとうございました。もうすっかり日が昇ってしまいましたね」

 

「本当ですね、そうだ。朝食の用意を手伝ってもらっても良いですか?今日は私が当番なので」

 

「はい、もちろんです」

 

 

二人して大きなアクビをした後朝食の準備をする為に部屋を出て廊下を歩きリビングを抜けキッチンへ。そこで二手に分かれ朝食の準備を行なってゆく。

 

 

私がパンをトーストしている間にリルティルが湯を沸かしコーヒーを淹れトーストと共にリビングにあるテーブルへと並べてゆく。

 

 

半分ほど準備が終わった頃にリビングへと朝食を求め住民が集まってくる。最初に顔を出したのはギルとウコンバサラの二人。

 

 

「おはよー姫様、ミネルヴァさん」

 

「おはよう二人共。私も手伝うよ」

 

 

挨拶をしながらキッチンへと入ってくると準備が済んでいるお皿を持ちリビングへと。その後にスイハが、そして朝食が始まる八時ぴったりにネスが。その後に眠たそうな顔をしながらフライシュッツが。

 

 

「みんなおはよ〜」

 

「おはようございます。眠そうな顔ですね」

 

「うん〜ずっとゲームしてたんだ〜」

 

「ほどほどにして下さいね」

 

 

眠たそうに欠伸をしながらフライシュッツが席へと座る。

 

 

「みんなおはよう!寝坊したわ」

 

「本当にアルマスは起こしても起きてくれなくて、、」

 

 

それからアルマスとティニが。

 

 

「オベロン様は?まだ来てないの?」

 

「そういえばそうですね。私が呼びに行って来ますのでみんなは先に食べていて下さい」

 

 

そう言ってリルティルが席を立ちオベロン様の自室へと向かう。その間に私達はこんがりと焼かれたトーストへと手を伸ばしてゆく。

 

 

「たまにはみんなで遊ぼうぜ!俺も今日は休みだしさ」

 

「ギル君、食べながら話すのはお行儀が良く無いよ」

 

「そうよギル」

 

「うへっ、ってアルマスには言われたく無いぜ!」

 

「そう言うアルマスもお行儀が良くありません!もぉぅ、、」

 

 

騒がしい会話を聞きながらトーストを一口。私もフライシュッツと同じく睡眠が不足しているので朝食を取ったあとは寝ようと思っていた。それなのについコーヒーを飲んでしまっているのだが。

 

 

「予定を立てるのは構いませんが食事中に会話はやめて下さい。それと食べ終わった人から食器をキッチンへ運んで下さい」

 

「はーい」

 

 

ネスの言葉によりリビングは静寂を取り戻し部屋にはトーストをかじる音とコーヒーを飲む音、時計が針を刻む音が聞こえている。

 

 

そんな時静寂を切り裂く悲鳴が聞こえ一瞬にして皆が立ち上がり声の方を向く。

 

 

「リルティルの悲鳴ね、何かあったんだわ!」

 

 

アルマスの声と共にリビングを飛び出し一同がオベロン様の自室へと向かう。長い廊下を走りオベロン様の自室の前へと。

 

 

「リルティル!」

 

 

開け放たれたままのドアの前には立ちすくむリルティルの姿。走ってきた私達に気がつくと蒼白した顔で部屋に向かい指を刺し指の先を見るとこの城の主であるオベロン様が床に倒れ血の海に沈んでいる。

 

 

「!?」

 

 

動揺に構わず部屋に入り込むと廊下と室内の温度差とじっとりと湿る湿気に血の生臭い臭いが鼻をつく。

 

 

「ネス!」

 

「私の回復魔法で!今助けますからね!」

 

 

それでもすぐさまネスが杖を取り出し回復魔法をかけてゆくのだがオベロン様は立ち上がる事なく。ネスの使う回復魔法は確かにどんな傷も癒す事ができるのだが既に事切れてしまった人には通じず杖から放たれる光を浴びてもオベロン様は指先すら動く事はなかった。

 

 

「ごめんなさい、、私の手には負えません、、」

 

「そんな、、。嘘だろオベロン様!!」

 

 

オベロン様の現状を知りギルがその場に崩れ落ちた。私達も例外では無く頭を下げただ冥福を祈る事しかできないでいた。

 

 

「リルティル、オベロン様は」

 

「はい、私がドアを開けた時には既に、、」

 

 

オベロン様を見るとパジャマ姿のまま。良く観察してみると血は既に黒く変色しており乾き始めている。この事から考えると亡くなったのは昨晩か。

 

 

更に目を部屋に向けてゆくとドアの近くに置いてある本棚の角に血痕が見える。夜中に起き歩いた時にここに頭を打ったと考えるべきだろう。

 

 

(・・・・・)

 

 

なんだろうこの違和感は。何かが心に引っ掛かる。まるでこれは事故では無く事件だと思わせるような。

 

 

「このままにしておく訳にはいきません、悲しいですが埋葬しましょう」

 

 

深く頭を下げた後リルティルがオベロン様の顔に白い布をかけ遺体を運ぼうとしていた。

 

 

「待って下さい。もう少しだけ観察をさせて下さい」

 

「何言ってるのよミネルヴァ!私はこんな姿のオベロン様を絶・見たく無いわ!早く埋葬してあげましょうよ、、、」

 

「そうだよミネルヴァちゃん。おねーさんもアルマスちゃんと同じ気持ちだよ」

 

「私も失礼な事は承知です。もう少しだけで良いのです」

 

 

オベロン様の前に跪き両手を合わせ遺体を観察してゆく。ベッドからここまでの距離はおおよそ2メーター、遺体は仰向けに床に寝転がっている。

 

 

頭部を持ち上げ傷を確認すると後頭部が陥没している。この傷が致命傷になったのだろう。回復魔法をかけた事により身体が暖かいのが心を痛めるが心を無にし観察を続けてゆく。

 

 

ふと私は顔を上げた。オベロン様が倒れて居るところから頭を打った本棚までの距離に違和感を感じた。後頭部とは頭蓋骨の中でも比較的柔らかい部分だ。それをここまで強打しオベロン様は数歩歩き仰向けに倒れた。

 

 

本来なら後頭部を打ったのならうつ伏せに倒れるのでは無いか?それに本棚からここまでに血痕が残っていない。これ程に出血をしながら血を垂らす事なく歩く事ができるのか?

 

 

「これは、、、」

 

 

オベロン様の手を見て更なる違和感を感じた。オベロン様の手のひらに血が付いていないのだ。普通なら痛みを感じる場所を手で抑えるはず。そうすれば両手、もしくは片手には血が付着していなければおかしい。

 

 

視線を手に向けると手首に擦れた様な跡が。目を凝らして見ると老人特有の乾燥した肌に5センチ幅に跡が残っている。それは右手左手も同じ。

 

 

「ミネルヴァ、もうやめておけ」(私も早く埋葬してあげたいよ、、)

 

「はい。失礼しました。それと皆さんに伝えなければならない事があります」

 

 

私の言葉に一斉に視線が集まり言葉を待つ。

 

 

「オベロン様は何者かに殺されています。私がこう断言した理由を今からご説明しますね」

 

 

私の言葉に全員の顔に驚きの表情が。少ししてから場所を部屋からリビングに変え皆に説明をおこなってゆく。

 

 

 

 

………………………………………………………………

 

 

 

 

 

 

 

「以上が私が事故では無く事件だと感じた事です。何か異論はありますか」

 

 

説明を行い前を向くとみんなは俯いたまま。それもそうだろう、親しい人との別れが誰かの手によって行われたのなら。

 

 

「それと皆さんは容疑者としての疑いをかけられていますので一人で外に出て行かないように。それともし外出が必要ならば必ず誰かと一緒にお願いしますね」

 

 

淡々と私が告げるのだが部屋には重苦しい空気が流れている。私自身も淡々と告げたと言ったが心の中は動揺で溢れている。誰かがしっかりしていなければならないと自分自身に言い聞かせながら。

 

 

「皆の気持ちは分かります。私も心をとても痛めています。だけど、この中にオベロン様を殺害した人が居るのです。犯人を見つけ出し法により裁く事が何よりの供養、私に神令されたオーディンの名にかけて必ず犯人を見つけ出します」

 

「そう、だよな、、、!みんなでオベロン様を殺した奴を見つけ出そうぜ!そんな奴絶対許されて良いわけが無い!」

 

「そうね、絶・犯人を見つけてみせるわ!」

 

 

意気込む二人に鼓舞されたのか少しだけ先程より場の空気が明るくなった気がする。

 

 

「ありがとうございます。まずは皆さんが昨日の夜何をしていたのかを教えてもらえませんか?リルティルは私と同じ部屋に居たので大丈夫ですよ」

 

 

それからみんなが昨日の夜何をしていたのか一人ずつ聞いてゆく事に。まずはアルマスとティニから。

 

 

「私はティニと部屋にずっと居たわ。昨日の夜夕食を食べた後から部屋からは一歩も出ていないわ」

 

「はい、私達はアルマスが言う様に部屋から出ていません。寝る時も同じ時間だったので」

 

「ありがとうございます」

 

 

次はギルとウコンバラサに話を聞く事に。

 

 

「俺達も部屋にずっと一緒に居たぜ。な、バサラさん」

 

「うん、私とギル君は一緒に居たよ。部屋からは一歩も出ていないよ」

 

「ありがとうございます」

 

 

次はフライシュッツの話を聞く事に。

 

 

「おねーさんは夕食を食べた後ずっとお部屋でゲームしてたよ〜」

 

「それを証明する人は居ますか?」

 

「おねーさん友達と電話しながらゲームしてたから履歴を調べて貰えば分かると思うよーもしかしてミネルヴァちゃんはおねーさんを疑っているの?」

 

「いえ、その様な事はありませんが万が一という事があるので。気を悪くしないで下さいね」

 

 

次はスイハ。

 

 

「私は昨晩はソロモンのところに行っていた。私が帰って来たのは朝食が始まる午前八時前ぐらいか。ソロモンやディスラプターズに聞いてもらえればアリバイは証明できる」

 

「分かりました。ありがとうございます」

 

 

次はネス。

 

 

「私は夕食を食べた後部屋で一人で本を読んでいました。けれど部屋からは出ていません」

 

「ネスは一人だったのですね」

 

「はい」

 

 

ネスの言葉に視線が向けられる。この中でたった一人だけ昨日の夜一人だったと言えば無理もないだろう。降り注ぐ視線の棘にネスが俯いてしまう。

 

 

「まだネスが犯人だと決まった訳ではありません。その様な目を向けるのはやめて下さい。次の質問です。オベロン様に不満を持っている人は居ますか?」

 

 

荒ぶりかけた場に質問を問いかけると一人ずつ答えてくれた。

 

 

「俺はオベロン様に感謝してるぜ。オベロン様がティルヘルムを建国しなかったら俺はイミテーションとして何処かの国に殺されていたからな」

 

「私も、オベロン様がこの城に来て良いよって言ってくれなかったら私は皇帝に討たれていたはずだよ」

 

 

ギルとウコンバラサは同じ。

 

 

「私もティルヘルムが無ければ妖精という物珍しさに囚われていたかも知れません、、」

 

「私もよ、オベロン様が居なかったらきっとのたれ死んでいたと思う」

 

 

アルマスとティニも同じ。

 

 

「私もです。ナディアであった頃の私はオベロン様により護られていました。もしオベロン様が居なければ何処かの国にこの力を利用されていたでしょう」

 

 

この中にオベロン様に不満がある者はおらず。全員に犯行の動機が無い。私達神令キラーズもあの大戦の後は大穴の奥に身を置いて居た。それを知ったオベロン様にリルティルを通して声をかけてもらい城へと迎え入れてくれた。そして他の3カ国にももう争う事は無いと訴え今では3カ国との交友ができるほどに。

 

 

オベロン様が声を掛けてくれなければ未だ私達は薄暗い大穴の奥地で生活をしていただろう。

 

 

「なぁ、他の国の人がオベロン様を殺した可能性は無いのか?例えば領地を取り戻す為にトレイセーマが攻めて来たとか」

 

「それはあり得ません、4カ国には平和条約が結ばれているので。国民同士の喧嘩程度ならともかく国の首相を手にかかればどうなるか重々承知しているはずです。それにこの城にはオベロン様の結界が張られているので認可を受けた人で無ければ立ち入る事はできません」

 

「じゃあやっぱりこの中にオベロン様を殺した人が、、、」

 

「そうだ、リルティルとミネルヴァは夕食を食べた後何をしていたのよ。私達だけに聞いておいて自分は話さないのはおかしいわ」

 

 

アルマスの言葉に視線が集まる。疑問を晴らすべく何をしていたのかを話してゆく。

 

 

「私は夕食を食べた後部屋で任務の段取りを考えていました。その後にリルティルが部屋に来て一緒に会談の資料を作っていました」

 

「私は夕食を食べ終えた後一人で片付けをしてそれからミネルヴァの部屋に行きました」

 

「なら二人にも一人の時間があったという事ですね。昨日の夕飯は10人で食べました。その食器を一人で片付けたのなら30分はかかると思います」

 

「ですがもし私がその時間にオベロン様を殺害しているのであれば食器を片付ける時間がありません。見てもらえれば分かりますが昨日の夕食の片付けは済んでいます」

 

「そうなると一人の時間があったのはネスとミネルヴァか」

 

 

鋭い視線が向けられる。この視線は疑いと軽蔑と憎悪を含む視線。

 

 

「確かに私にはリルティルが来るまでの空白の時間に何をしていたのか証明する事はできません」

 

「それならネスとミネルヴァ、どちらかが犯人ってことになるね」

 

 

ギルの前にウコンバラサが立ちティニの前にアルマスが立つ。どちらも瞳に警戒を宿し臨戦体制。アルマスに至っては右手に剣の柄を握っている。

 

 

「二人のうちどっちがオベロン様を殺したのよ!私が仇を絶・とってやるわ!」

 

「アルマス落ち着いて下さい!まだ二人が犯人と決まった訳ではありませんよ!」

 

「でも!」

 

「良いのですティニ、言わせておけば。私は必ず犯人を見つけ出し私とネスの無罪を証明してみせますから」

 

 

断言しカチューシャを外す。そして左手で髪を掻き上げカチューシャで止め髪で隠れていた右目を顕にする。

 

 

「これより現場検証をもう一度行いたいと思います。ネス、アルマス、ティニ。ついて来てくれますよね」

 

 

そう言いながらリビングを出る為に歩む。私の行動に固まっていたアルマスが顔を振った後後に続く。

 

 

廊下を歩き再びオベロン様の自室へ。先ほどと同じようにドアは開け放たれオベロン様は床に倒れたまま。そして乾燥が進み血は床にこびり付く。室温は廊下と同じで適温だ。

 

 

「犯人は必ず現場に戻るって言うわ、それを証明したわね」

 

「何を言っているのですか?それならもうすでに犯人は現場へと戻っています。オベロン様を殺した後全員がこの部屋に入っていますよね、私の言葉の意味が分かりますか?」

 

「うぐ」

 

 

言い返す言葉が浮かばず苦虫を噛み潰したような表情のアルマスを尻目に部屋を観察してゆく。先程はオベロン様を観察するだけであったが今回は時間が許す限り部屋を観察してゆく。

 

 

私がまず調べる事にしたのはベッドだ。起き上がった時にめくられたままの掛け布団。シーツは乱れ寝相の悪さを感じさせる。

 

 

大きさはシングルのベッド、形状は四本の足で支える簡易なベッドで枕元の上の棚には少量の水が入ったペットボトルが置かれ左右には転落防止の鉄パイプでできた柵がありベッドが置かれている位置は壁と壁の角に置かれている。

 

 

オベロン様は夜中になんらかの理由で目を覚ましベッドを降り部屋を出ようとし何かにつまずき後頭部を打った。

 

 

(…………)

 

 

目を閉じて光景を想像すると明らかに不自然な光景が広がってゆく。

 

 

「アルマス」

 

「何よ」

 

「アルマスはつまずいたらどうなりますか?」

 

「質問の意味が分からないわ」

 

「ネスとティニもつまずいたらどうなりますか?」

 

「えっと、転びます」

 

「ではどのように転びますか?」

 

「頭から転びます、そして受け身を取る為に両手を前に」

 

「そうなりますよね。ではオベロン様の傷は?」

 

「後頭部に、、、!」

 

「はい、おかしいですよね。普通なら顔を本棚に打つはずです。顔面をぶつけるか額をぶつけてしまうか。後頭部は打つはずがありません」

 

「それなのにオベロン様は後頭部を打っている、、、」

 

「でもドアから出ようとしてよろけてしまったかもしれないわ」

 

「ならアルマスがよろけて後頭部を本棚にぶつけたとしましょう。どのように倒れますか?」

 

「えっと、多分本棚にもたれかかりながら崩れるか前に倒れると思う」

 

「オベロン様の遺体は?」

 

「仰向け、しかもベッドに足を向けているわ」

 

 

オベロン様は殺されている。致命傷は後頭部の傷。だが大人しく犯人に後頭部を本棚にぶつけられるのは考えずらい。一緒に部屋を出ようとしてその時にぶつけられたのか。だが夜間にどんな事を言いオベロン様を外に連れ出そうとしたのか。

 

 

考えながら再びベッドに目線を向ける。めくられた掛け布団に寝相で乱れたシーツ。さらによく見てみると一部に掻きむしったような跡を見つけた。

 

 

「これは、、爪?」

 

 

掻きむしった跡を見るとシーツがほつれ爪が落ちていた。それ程に強く掻きむしったのなら寝ている時に引っ掻いたとは考え難い。

 

 

そして私はもう一つ掻きむしったような跡を見つけた。シーツの跡は床側に付いているのだがこの反対側の壁紙に引っ掻いたような跡があるのだ。強く引っ掻いたのだろう壁紙がめくれ下地が見えてしまっている。

 

 

ベッドからオベロン様の元へゆき両手の指先を見てみると右手の爪先が白くなっており爪の間には何かが詰まっている。そして左の指先を見ると爪が折れておりささくれてしまった爪先にシーツの繊維が絡まっている。

 

 

「何を見ているのですか?」

 

「オベロン様の爪です。ベッドのシーツがほつれた跡があったので見てみたのですが」

 

 

もう一度ベッドに戻り残された跡を見てみると二つとも転落防止にある柵の近くだ。

 

 

「そういう事ですか」

 

「どうしたのですか?」

 

「オベロン様は後頭部を打って殺された訳ではありません。このベッドの上で殺されています」

 

「どういうことよ!眠っている時に殺されたって事!?」

 

「そうだと思います。オベロン様の手首に五センチ幅の跡が残っています。これは転落防止の柵に手を縛られた時にもがき引っ掻いたものだと思うのです」

 

「でも殺したっていっても傷は後頭部にしか無いし首にも絞められた跡はありません」

 

「そうなのですよね、、外傷は後頭部にしか無いんです」

 

 

犯人はオベロン様に外傷を与える事なく殺し後頭部を本棚にぶつけ事故を装った。ここまでは合っているだろう。なら犯人はどうやってオベロン様に外傷を与える事なく殺害したのか。オーソドックスなのは絞殺だが首に絞められた跡は無い。そうなると注射による薬物の投与か?それとも火を起こし一酸化炭素を発生させたのか。

 

 

「オベロン様って結構ダラシないのね。あれを見て」

 

 

アルマスが指差すのは枕の上にひかれたタオル。見ればしばらく洗濯をしていないのか汚れとシワが目立つ。

 

 

「ってか枕にタオルをひく人って居るのね」

 

「タオルをひくのは女性の方が多いですよ。髪に付いたトリートメントが枕カバーに付くのを防いだり寝ている時によだれがたれてしまっても枕本体を汚さない為に」

 

「へぇ、、じゃあこんなタオルをひいて寝てたら意味は無いわね」

 

 

タオルを持ち上げてみるとパリパリに乾いてしまっている。まるで洗剤を使わずに水だけで洗ってしまったように。

 

 

「まだ部屋を調べますか?」

 

「そうですね、次は机を調べてみます」

 

 

部屋にある机へと。形状は良くある机で上段に引き出しが二つ、下段に四つ。上段にある引き出しを引くと文房具が、もう一つには何かの書類が。読んでみるとティルヘルムに関する事が書かれている。

 

 

次に下段の引き出しを覗いてゆく。上から順に開けてゆくのだが何も入っておらず、最下段の引き出しには鍵がかけられ開ける事はできなかった。

 

 

「そうだアルマス。部屋に氷を置く事はできますか?気温は低いとはいえこのままではオベロン様が痛んでしまいます」

 

「そうね、どこに置く?」

 

「ドアの近くなら良いですよ。あそこには何もありませんので」

 

「分かったわ。絶・氷弾!」

 

 

アルマスの手のひらから放たれた魔弾は部屋の隅に着弾すると大きな氷となった。氷が出現した瞬間から部屋の温度が一気に下がる。

 

 

「アルマスの属性の力ですね。属性の力、、、」

 

「どうしたのですか?」

 

「いえ、なんでもありません。一度リビングに戻りましょう」

 

 

最後に机を眺めた後部屋全体を見た。その時視界に部屋の天井が目に入った。

 

 

「あれは?汚れ?」

 

 

天井から真下に視線を移すと下にはオベロン様の遺体。見上げれば真っ白な天井の一部に薄く円状に模様が広がっている。

 

 

「ティニ。天井の模様を見れますか?」

 

「はい、良いですよ」

 

 

ティニにお願いをすると透明な羽を羽ばたかせ天井へと。天井の模様を観察してもらっていた。

 

 

「汚れでしょうか?触ってもらっても良いですか?」

 

「はい、これは、、煤?」

 

 

ティニが模様に指先で触れると触れた部分が消えた。私の方へ戻って来てくれたティニの指を見ると黒く汚れてしまっている。

 

 

「煤みたいですね。でも何故こんなところに煤が?」

 

 

この部屋の暖房はエアコンだし火を使うものは無い。それならこんなところに煤が付くはずがないのに。やはり火を起こし一酸化炭素を発生させ殺害したのか。

 

 

疑問を抱いたままリビングへと戻り時計をみると時計の針は正午を指す。こんな事件があったとしても人は生きている限りお腹が空く。人数分の昼食を作る為にキッチンへと足を運んでゆく。

 

 

「私もお手伝いします」

 

「ありがとうございます。何を作りましょうか?」

 

「皆さんを元気付ける為に中華料理にしましょう。チャーハンと青椒肉絲はどうでしょう」

 

 

中華料理が好きなリルティルの提案により昼食はチャーハンと青椒肉絲にする事に。担当は私が青椒肉絲でリルティルがチャーハンだ。

 

 

具材を切り分け中華鍋に入れ調味料と共に炒めてゆく私の隣で同じく中華鍋を振るうリルティル。九人分のご飯が入った中華鍋を軽々と振るい中華料理店のような高火力のコンロで炒めてゆく。中華料理は火力が命と聞くが隣で料理を作る私まで届く様な炎で炒める必要はあるのだろうか。

 

 

ごうごうと音を立てながら炎をあげるコンロの前に立ち鍋を片手で振るいチャーハンを炒めてゆくリルティルを見ながら青椒肉絲を仕上げ大皿へと移してゆく。

 

 

「いただきます」

 

 

各皿にチャーハンを盛り付けリビングへと運び昼食をいただいてゆく。朝食の事を思うと誰一人として話す事はなく黙々とご飯を食べている。あんな事件があったのに楽しく話せるような神経は誰も持ち合わせていなかったようだ。

 

 

昼食を食べ終え片付けを終え席に座り考えをまとめてゆく。今分かっている事はオベロンのはベッドの上で殺害され死因を欺く為に後頭部を本棚にぶつけられた。

 

 

いや、まてよ。本棚にぶつけてはいないのでは無いだろうか?こう考えるのならオベロン様が仰向けであった理由も納得がゆく。残るは犯人の動機と殺害した方法だ。

 

 

「っ」

 

 

目を酷使した為かやや両目に疲れを感じていた。それに寝不足もたたりドライアイ気味。こんな時はぐっすりと眠るに限るのだがあいにくそんな時間はない。手早く目の疲れを取る方法を思い付きキッチンへと向かう。

 

 

タオルを水で濡らしレンジにかけ温めてゆく。それを振り適温まで温度を下げた後椅子に座り温タオルで両目を温める。こうする事により目の血行が良くなり疲れが癒えるのだ。

 

 

最後に目に置いていたタオルで顔を拭き柔軟剤の匂いを堪能しておく。タオルの繊維に含まれた水分に阻害されながら鼻に匂いが入ってゆく。

 

 

「これです!!」

 

 

オベロン様を殺害した方法を思い付き立ち上がりながら盛大に大声をあげた。そんな私に視線が集まっている。

 

 

「ごめんなさい、大きな声を出してしまいました」

 

 

少し恥ずかしくなりながら席に座る。後は犯人がオベロン様を殺害する動機を探すだけだ。しかし朝に聞いた話では誰一人としてオベロン様に不満を持っていない。私は閉ざされている人の心の中に足を踏み込まなければならないのだ。ここに居る人全員の。

 

 

心の中を読む事ができれば簡単な話なのだがそんな事はできるはずがない。それなら心の中を映し出す物を探せば良いのだ。思考は行動となり行動は痕跡を残す。例えば日記は心の中を書き記すといえるだろう。

 

 

「そうだ。リサナウトに頼んで過去を見せてもらいましょうよ。そうすれば誰が犯人かすぐに絶・分かるわ!」

 

「それは可能ですが半年は彼女はこの時代に戻ってこれません」

 

「えぇ、、何してるのよリサナウト、、、」

 

 

さり気無く過去作の宣伝をしておくのだが。そんな事は良いのだ、人の心が残した痕跡を探さなければ。

 

 

「そうだ。もう一度オベロン様の自室は行きたいのですが誰が着いて来てもらえませんか?」

 

 

私は再びオベロン様の自室へと来ていた。今回私と来てくれたのはフライシュッツとスイハ。二人を部屋の前に待たせて部屋を調べてゆく。今回調べるのは先ほど鍵が掛けられており開けられなかった引き出しだ。

 

 

引き出しの鍵は良くある簡易な物。しかしどこに鍵があるのかは不明なまま。それならば。

 

 

「少々荒っぽいですが捜査の為です」

 

 

キラーズを意識し盲目槍・コマンド・オーディンを召喚し引き出しの隙間に槍先を差し込むと梃子の原理を利用し力をかけてゆく。

 

 

「そんな事したらダメだよミネルヴァちゃんー!」

 

「もう城の主は居ません!不服なら調査が終わった後私が新しいのを購入します!」

 

 

部屋の前に居たフライシュッツが止めるより先に金属でできた金物が曲がり引き出しが開かれた。閉ざされていた引き出しの中には沢山の手紙が保管されていた。

 

 

「これは、、、」

 

 

手紙の差し出し人はそれぞれだ。私達であったりギルやウコンバサラ、アルマス、ティニであったりリルティルであったり。この城のリビングにはポストが設けられており相談事や悩み事を書き投函するとオベロン様に届くという物だ。以前私が代理で相談事を引き受けたそれ以外にも沢山の手紙が届いている。

 

 

何十通とある手紙を机に広げ一枚一枚目を通してゆく。書かれている内容は些細な事であったり人生相談であったり休暇の申請であったりと様々だ。

 

 

手早く目を通してゆくととある手紙を見つけ目が止まってしまった。そしてその手紙に目を通した後引き出しを覗くと確かにそれはここにあった。

 

 

(これが犯行の動機?確かに嫌ではあるが何も殺す必要ないが)

 

 

数枚の布切れを机の上へと乗せ引き出しを覗くと引き出しの下に隠されたノートを見つけた。見つけてしまった。

 

 

念入りに隠されていたノートを机へと置き一ページ目から目を通してゆく。このノートはティルヘルム建国からオベロン様がつけている日記の様だ。一国の主人としての苦労や喜び民との触れ合い方が書かれている。そしてナディアとの出会い、アルマス、ティニとの出会い。ユウさんグリードとの出会い。私達神令キラーズとの出会い。ウコンバサラとの出会い。

 

 

ティルヘルムは小国とはいえ私達を城に招き入れた事により軍事力は他の3カ国に劣らない程の力を手に入れた。強大な力を手にしてしまえば人は力を試したくなるものだ。

 

 

それはオベロン様も例外では無く私達の力を使いトレイセーマへと攻撃を仕掛けようとしていた。目的は領土拡大と労働力の確保。行く末はケイオスリオン、ハルモニア、3カ国を手中に収めようとしていた。

 

 

キル姫とはバイブスに適合した者を主とし絶対の服従を誓う。彼程魔法を使う事ができるのなら魔力により強制的にバイブスを繋げる事が可能だろう。犯人はこの事に気が付きオベロン様を止める為に殺害をした。

 

 

この城でオベロン様の行動を誰よりも知っている者の犯行と断言して良いだろう。彼は殺されるべくして殺された。だが、事情を知ったところで許す訳にはいかない。

 

 

「スイハ、フライシュッツ。みんなをここに呼んできてもらってよろしいですか?それとこれを持ってきて下さい」

 

 

二人に持ってきて欲しい物を伝えると頷きリビングへと向かう。待っている間に私は窓から外の景色を眺めていた。朝は快晴であった空はいつの間にか雲に覆われ今にも雨を降らせてしまいそう。

 

 

「連れてきたよー!」

 

 

フライシュッツの声に振り返るとドアの前に皆が揃う。

 

 

「ありがとうございます。これより私の推理をお見せしましょう」

 

 

堂々と告げる私に視線が集まり精神を昂らせる。しかし冷静に得た証拠を淡々と話してゆく。

 

 

「まずオベロン様の死因ですが後頭部を打ち付けた事では無く窒息死だとここに断言しましょう」

 

「窒息死?じゃあオベロン様をどうやって殺したって言うんだよ」

 

「そうだよーオベロン様には首を絞められた跡は無いんだよー?」

 

「窒息死とは呼吸ができなくなる事による死です。首を絞める事だけが窒息死させる方法ではありません。例えば、このタオルを水で濡らし口と鼻を塞ぐだけでも窒息死させる事ができます」

 

 

枕の上にひかれていたタオルを皆に見せる。この薄汚れてしまったタオルを。

 

 

「このタオルの汚れは長く使い続けたものではありません。オベロン様の口と鼻を押さえた時に付いた鼻血か唇からの出血でしょう。水で滲んでしまいこの様に見えるのです」

 

「ですがご老体とはいえ顔だけを押さえているだけでは抵抗されてしまいます」

 

「はい。なので犯人はオベロン様の手をベッドの手すりに縛ったのです。両手首に同じ様な跡が残りオベロン様の手首が縛られていた部分はもがき苦しんだ時に引っ掻いた跡が残されていました。それは右手には壁紙が、左手にはシーツの繊維が。これがオベロン様をベッドの上で殺害した証拠です。そして犯人は事故を装いオベロン様の頭を床に打ちつけた」

 

「床に?じゃあ本棚の血は何なのよ」

 

「事故を装うために付けたのでしょう。でなければ本棚からオベロン様が倒れている位置までに血痕が残っていなければおかしいのです。そして生きている時に頭をぶつけたのなら痛みを抑える為に手で傷口を押さえますよね?オベロン様の手のひらには血が付いていません。これが事故を装ったという証拠となります」

 

「じゃあ犯人は夜一人だったネスって事?」

 

「いいえ、それは違います。オベロン様を殺害した時刻は今日の朝です」

 

「朝って、じゃあ朝一人でリビングに来たネス、スイハ、フライシュッツですか?」

 

「それも違います。犯人は朝食の時オベロン様を呼びに行ったリル=ティルフィングです」

 

 

私が告げた犯人の名に視線がリルティルへと集まる。そして両手を振り弁解の言葉を。

 

 

「そんな短時間で人を殺す事などできませんし私にはオベロン様を殺す理由がありません。第一あんなに直ぐに血は乾きません」

 

「人が窒息してから死に至るまでの時間はおおよそ四分。両手を縛る時間を入れたとしても五分ほど。そして窒息死していなくてもこれ程に頭を打ちつければ死に至るでしょう。私がオベロン様の遺体の傷を確かめた時まだ温かかったのが証拠です」

 

「ですがそれはネスの回復魔法で得た温度では無いでしょうか」

 

「では実際にやってもらいましょう。スイハ、持ってきてくれましたか?」

 

「はい。どこに置けば」

 

「床にでも置いて下さい」

 

 

私がスイハに頼んだ物それは新鮮な一匹の魚だ。今床の上にはお皿に乗った魚が置かれている。

 

 

「ネス、回復魔法をこのお魚にかけて下さい」

 

「分かりました」

 

 

ネスが杖を振い回復魔法をお魚へと。当然のことながら死んだ魚が命を取り戻す事はなくお皿の上に横たわったままだ。

 

 

「ではお魚の温度を確かめてみて下さい」

 

 

一人一人がお魚に触るのだが誰もが冷たい、ぬるいと言い誰一人として温かいとは言わなかった。

 

 

「ですがあれほどの血が乾燥するとは思えません」

 

「そうですね。ですがあなたの属性である炎を使えば容易い事ではありませんか?自らを灼熱で包み蜃気楼を作り出せる程の炎を操る事ができるあなたなら」

 

「・・・・・」

 

「そうすれば血は蒸発させ乾かす事ができる。水で濡らしたタオルも一緒に乾かしたのでしょう。そして炎を使った証拠が天井に残されていました。見て下さい、天井に残された煤を」

 

「しかし炎の属性は私だけではありません、ネスやスイハも私と同じ炎属性です。このトリックを使えば二人にもオベロン様を殺害する事が可能ですしリビングに集まる前に殺害する事もできます」

 

「分かりました、私があなたを犯人だと断定した証拠をお見せしましょう。あなたは見た事がありますよね?このオベロン様の日記を」

 

 

手に持った日記を見せると顔を蒼白させ目をぱちくりとさせていた。

 

 

「読み上げましょうか?」

 

「いえ、その必要はありません。私が犯人だと認めましょう」

 

「姫様、、、、」

 

「私には許せませんでした。やっと手にした平穏を自ら壊そうとするオベロン様の野望が。私も勿論止めました。しかしバイブスと共鳴させられたキラーズにより止める事ができずに」

 

「リルティル、あなたがした事はこの千年王国を争いから遠ざけ平穏をもたらしました。しかし人を殺すという事は許されて良い行為ではありません。法による裁きを受けて下さい」

 

 

窓を覗くと降り出した雨が打ちつけ遠くに見える赤色灯の灯りをぼんやりと映し出す。きっともうすぐ誰かが呼んだ警察がここに踏み込むだろう。

 

 

(………………)

 

 

リルティルがした事は間違ってはいない。リルティルがオベロン様を殺害した事により沢山の人の命が守られたであろう。そして私達の事も守ってくれた。そんな彼女が手錠をかけられ連れて行かれる後ろ姿を私は一体どんな顔で見ていたのだろうか。

 

 

振り返る事なく歩く彼女が見えなくなるまで見送りこの事件は解決となった。

 

 

(・・・・)

 

 

人の心とは残酷なものだ。もしあの時私達がバイブスを完全に排除していればこの様な事件は起きなかったのかもしれない。それともあの時オベロン様の提案を断りあのまま大穴に身を潜めていた方が良かったのだろうか。

 

 

答えの無い疑問はずっと私の心の中に残り続けるだろう。そして私達の心には決して消えない傷が残ってしまった。これから先ずっとこの事は心に潜み蝕み続けるだろう。

 

 

ふと見上げた空に雷鳴が轟き閃光を放つと再び静かさを取り戻していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

……………………………………………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

「ミネルヴァ、起きて下さい」

 

「えっ、どうしました?」

 

「朝食の時間になっても起きてこないので起こしに来たのですよ」

 

 

私に声をかけた主はリル=ティルフィング。と、いう事はさっきのは夢?

 

 

「珍しいですね、ミネルヴァがお寝坊をするなんて」

 

 

微笑みながら彼女は部屋を出て行った。それから少し遅れて私も部屋を出て皆が待つリビングへと。

 

 

「おはようミネルヴァ殿」

 

「お、おはようございます」

 

 

リビングにはオベロン様の姿も。やっぱり夢だったんだ。先ほどの夢の事を思い出しながら準備されているトーストを口に運んでゆく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ここまで読んでもらいありがとうございました!

初のミステリー物という事で見事にグダグダになってしまいましたが書いてて楽しかったです。

と、いう訳でまた時間がありましたらミネルヴァを主役にミステリー物を書きたいと思います。その時も是非よろしくお願いします
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