※この作品はR-18です。

黒ティルと僕と   作:やす、

199 / 201
キル姫コラボ第七だん!

神令されたラグナロクが行くPSYCHO-PASSの世界。


徹底された管理社会で彼女は何を思うのか。



※原作等理解して書いてありますが粗相は見逃して下さい。


ラグナロク「PSYCHO-PASS」

 

槙島聖護が起こそうとしたバイオテロ未遂事件からしばらくが経った。

 

あの事件があったせいで私の所属する一係の人員、六名の内一名が殉職、二名が行方不明、二名が大怪我を負い現在一係で動ける人員は私一人となってしまっていた。

 

 

それでも世間には沢山の犯罪が行われており起きてしまった犯罪を取り締まるのが私、常守朱の使命である。それでも。

 

 

「疲れたぁ〜」

 

「お疲れ様朱ちゃん」

 

「やっぱり私一人じゃ無理なのかな、、」

 

 

疲れ果て机にうつ伏せた私に公安局の分析官である唐之杜志恩さんがコーヒーを淹れ出してくれた。

 

 

「ありがとうございます。それで宜野座さんと弥生さんの容体はどうですか?」

 

「二人共病後は順調だけど現場に復帰するにはまだ一週間はかかるわね」

 

「そうですよね、、」

 

「私もできる限りのサポートはさせてもらうわ」

 

「ありがとうございます」

 

「そんな目で私を見ても私は現場へは行かないわよ」

 

「あはは、、そんな目をしていましたか、、」

 

「そうだ。こないだ朱ちゃんが執行官の模擬で行ったラグナ大陸だっけ?その時会った人を応援で呼ぶのはどう?良い動きをするって朱ちゃん褒めてたじゃない」

 

「ん、、、」

 

 

そう言われてあの時出会った二人の事を思い出していた。あの二人にはドミネーターを渡したからユグドラシルとリンクさえ繋げば会話をする事ができる。二人の勤務状態次第では私の手伝いをしてもらうのもありかもしれない。

 

 

「唐之杜さん」

 

「もうユグドラシルとはリンクさせてあるわ」

 

「ありがとうございます!」

 

 

早速二人が持つドミネーターへ通信を開始する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………………………………………………………………

 

 

 

 

 

 

そんな異世界の事など知らず僕達は相変わらず家でゴロゴロとしていた。

 

 

 

「・・・退屈ね」」

 

「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

 

こないだ来客用に買った三つ目のキル姫をダメにするクッションにダメにされてしまったラグナロクが呟く。それでもダメになっている僕達は返事をせずひたすらにダメになっていた。

 

 

そんな時部屋の何処からか電子音が響き目線だけで音の位置を探してゆくとどうやらクローゼットの中から。

 

 

「ティル、なにか鳴ってるよ」

 

「動きたくありません」

 

「私が見てみるわ」

 

 

あまりに動かない僕達に痺れを切らしラグナロクがクローゼットへ行き戸を開け音の正体を探す。しばらくしてラグナロクが見せたのは以前常守朱さんから貰ったドミネーターだった。僕達が目線を送る中ラグナロクは応答し会話を始めていた。

 

 

[お久しぶりです二人共。お元気でしたか?]

 

[その二人は今ダメになってしまっているわ]

 

[一体そちらの世界で何が起きているのですか?あなたは、、?]

 

[私はラグナロク。あなたの名前は]

 

[私は公安局刑事課一係所属の常守朱と言います。そちらに応援を要請したくて連絡をさせて貰ったのですが、、]

 

[そう。私で良ければそちらに応援に行かせて貰うわ]

 

[ありがとうございます!そちらの教会にある転送装置とこちらをリンクさせておきますので来てもらっても宜しいですか?]

 

[分かったわ]

 

 

通信を切るとラグナロクが僕達に顔を向けた。

 

 

「行ってくるわ」

 

「行くって何処にですか?」

 

「場所は分からない。だけどとても心が踊るの」

 

 

顔に掛かる長い銀髪をかきあげた後ラグナロクは部屋を出て行った。

 

 

「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

 

出て行ったラグナロクを見送った後僕達はまたダメになってゆく。

 

 

そうしてラグナロクはラグナ教会にある転送装置に乗り示された転送先を押し東京へと転送されていった。

 

 

 

 

 

………………………………………………………………

 

 

 

 

 

 

時を同じくして常守朱は頼もしい応援を呼ぶ事ができたとご機嫌であった。

 

 

「それでそのラグナロクって人は何処に転送されてくるのよ」

 

「多分公安局ビルの前だと思います」

 

「そう。じゃあこのヤバそうな人がどうやら助っ人のようね」

 

 

唐之杜が画面を指差すのと公安局ビルに警報が鳴り響くのはほぼ同時だった。警報を聞きながら唐之杜が指差す画面を見ると四桁の犯罪係数を示す人物が監視カメラにより映し出されていた。

 

 

「えっ!?」

 

「早く朱ちゃんが迎えに行かないと二係や三係の連中が処理に当たるわよ」

 

「いっ、行ってきます!」

 

 

飲みかけのコーヒーを乱暴に机に置くと常守朱は慌てながら分析室を飛び出してゆく。

 

 

 

 

 

そして公安局ビルの前に転送されたラグナロクはやや笑顔を作りながら東京と呼ばれる街並みを眺めていた。

 

最近仲間の神令キラーズ達が異世界に行ったという話を聞きいつか自分も異世界に行ってみたいと人知れず思い馳せていた。それがこんな形で叶う事になるとは。

 

ラグナ大陸、千年王国とはまるで違う街並みを繁々と眺め連絡を取り合った常守朱と言う人物を探す為に歩もうとした。

 

 

 

「止まれ!そこの潜在犯!」

 

 

その時誰かの声が聞こえそちらへと目線を向けるとラグナロクに向かい銃を構える数人の人の姿が。

 

 

「・・私は常守朱という人物を探している。お前達に何か知っている事があれば私に教えて欲しい」

 

 

相手が持つ銃はあの通信で使ったドミネーターと同じ。それならば彼らは常守朱に付いて何かを知っていると思い話しかけたのだが相手からの返答は無く鋭い目線と共に銃口を向けられている。

 

 

「どうします青柳さん」

 

「これ程に濁った潜在犯なんて私に聞くまでも無いわよ」

 

 

何かの会話が聞こえた後ドミネーターを持つ人物の瞳が蒼く輝く。そして魔弾の様な弾丸が放たれた。

 

 

「争いは避けたいが、かかってくるというのなら容赦はしない」

 

 

迫る弾丸を人並みを超える運動能力で回避する対象に呆気に取られる。しかし監視官である青柳の指示の元再び銃口が向けられる。

 

 

[対象の脅威判定が大幅に変更されました。犯罪係数オーバー1951。デストロイデコンポーザー。対象を完全排除して下さい]

 

 

「嘘でしょ!?」

 

 

通常の人間であるのならあり得ない犯罪係数に本来なら対人用のエリミネーターではなくデコンポーザーにドミネーターが姿を変え驚愕の声が上がる。そして対象を見ると一本の剣を持ち背後には九つの剣のフォログラムが現出している。

 

 

「生命の黄昏へ誘ってあげる」

 

 

冷たい声と共に九つの剣を自在に操りながら対象が迫る。あの対象はただの人間では無い。そう思ってしまう程の常人を遥かに超える威圧を感じさせられるのだが監視官、執行官の意地とプライドで対象を執行しようとドミネーターを向ける。

 

 

 

「青柳さん!ラグナロクさん!もうやめて下さい!!!その人は私が呼んだ執行官の方です!!!」

 

 

一触即発の間に常守朱が割り込み事態は安息へと向かってゆく。

 

 

 

「それで、無事応援の人を連れて来られたみたいね」

 

「無事っていうか、、上に相談無く呼んでしまったので後で禾生局長の所に行かないとですけどね」

 

「良いじゃない、始末書の一枚や二枚で応援が呼べたんだし。それでこの人が応援に来てくれた人ね」

 

「ラグナロク・神令・ユグドラシル。よろしく」

 

 

二人は再び分析室へと戻り唐之杜に報告を行っていた。ソファーに座るラグナロクに品定めをする様な視線を向けた後煙草を咥え火を灯していた。

 

 

「なので私は席を外すので唐之杜さんラグナロクさんに執行官の事を説明しておいてもらってよろしいですか?」

 

「それは良いけど。朱ちゃんが帰ってくる頃には骨抜きになってるかも知れないわよ」

 

「それはやめて下さい!ごめんなさいラグナロクさん、少し行ってきますね」

 

 

唐之杜に何度も釘を刺しながら常守朱は禾生局長の元へ。部屋には唐之杜とラグナロクが残る。

 

 

咥えた煙草から煙を吸い上げると煙を吐き出しながら灰皿へ煙草を押し込みラグナロクへと視線を向ける。

 

 

「監視官と執行官に付いて簡単に説明をさせてもらうと執行官は猟犬、監視官はその飼い主って言ったところね。監視官が指示を出し執行官が喰らう。簡単でしょ?」

 

「そうね。単純明快で分かりやすかったわ。それで私は誰を狩れば良いのかしら」

 

「さっきラグナロクが銃を向けられたでしょ?あの銃を向ければ狩るべき相手が分かるわ」

 

「犯罪係数ね」

 

「そう、それよそれ。この世界で犯罪係数が高い人間はシュビラシステムに要らないものとして扱われるの」

 

「なるほど。それでそのシュビラシステムとはどの様なものなの」

 

「この日本の神様みたいなものよ。シュビラがヒト様の精神状態を勝手に計測してその人の才能を見い出し職を進めたり結婚相手なんかを決めちゃうわけ。それでそのシュビラシステムに規定された犯罪係数を超えた人物はこの世界には要らないって事になるのよ」

 

「下らない世界ね」

 

「そうだとしても私達はこの世界で生きているからこのルールを受け入れるしかないのよ。ラグナロクが居た世界にも私達が見たら下らないと思う事はいくらでもあると思うわ」

 

 

一瞬の思考の末いくつかの下らないと思われる事を思い出しラグナロクは唐之杜へ謝罪の言葉を口にしていた。

 

 

「素直で良い子ね。私こう見えてどっちでもイケちゃうタイプなんだけど、良かったら一晩どうかしら」

 

 

ラグナロクへ目線を向けながら再び煙草を咥え火を灯してゆく。

 

 

「答えは拒否ね。他人の性的思考を咎めるつもりは無いけどこの身に降りかかるというのなら抵抗はさせてもらうわ」

 

「連れないわね。まっ。良いけど」

 

 

吸いかけた煙草を灰皿へ押し付けると山盛りとなった吸い殻の山が出来上がる。

 

 

「それと大事な事を聞かせてもらうわ」

 

「何かしら?私が答えられる事なら答えてあげるわよ」

 

「この世界では魔女と戦ったりシンフォギアを纏ったりモンスターと戦ったり忍者と遭遇したりウマ娘を育成したりイカやタコと仲良くする事はできるのかしら」

 

 

真顔でファンタジーな問いをするラグナロクの話を聞いていた唐之杜だったが途中で堪え切れなくなり盛大に笑いながらまた煙草を咥え火を灯した。

 

 

「・・・・」

 

「ごめんごめん。あまりにコミカルな事を言うから笑ってしまったわ。そうね、この世界では其れ等と遭遇する事は無いわね」

 

「そう」

 

「でも人の心という名前のない怪物と戦えるわよ。それでは不服かしら」

 

 

部屋に充満する煙から覗く唐之杜の視線を見てラグナロクは不敵に笑った。

 

 

 

それからしばらくするとドアが開き息を切らした常守朱が姿を見せた。

 

 

「ごめんなさい、遅くなってしまいました!」

 

「遅かったわね。始末書何枚書かされたの?」

 

「五枚ほど、、それとラグナロクさんの執行官の登録と制服とドミネーターの準備を。一応サイズは測ってありますけどサイズが合わなかったら言って下さいね」

 

 

常守朱がラグナロクに渡したのは丁寧に畳まれたスーツ。少し考えた後服を脱ぎスーツへと着替えてゆく。

 

 

「見た目より動きやすいのね。気に入ったわ」

 

 

初めてスーツを着た感想だった。全身を覆う布生地は体の動きに追従し体の動きを遮る事なく。そして腰まで届く銀髪は背後で纏めてポニーテールへ。

 

 

「似合ってますよラグナロクさん」

 

 

そう言われて悪い気はせずニヤリと。

 

 

「それで私は何を成せば良いのかしら」

 

「そうですね。事件がなければ業務を手伝って貰いたいです」

 

「分かったわ」

 

 

こうして分析室から一係のオフィスへと場所を変え業務の内容を簡単に説明された後ラグナロクは一台のパソコンが設置されている机へと座った。

 

 

「そうだラグナロクさん。業務を行う前にもう一度自己紹介と挨拶をしますね。公安局刑事課一係所属、監視官常守朱です。一週間の間よろしくお願いしますね」

 

「ラグナロク・神令・ユグドラシル。こちらの世界の事はまだ分からないが粗相がない様にするわ。よろしく」

 

「はい。では日報を書いてもらってもよろしいですか?」

 

「分かったわ。それで紙とペンはどこに?」

 

「いえ、パソコンを開いてウンタラカンタラ」

 

 

難解な言葉を話しながらパソコンを起動させ日報を書く様に言われたのだがパソコンなど触った事も聞いた事もないラグナロクは怪訝な瞳で薄く光るモニターと常守朱を交互に見た。

 

その瞳に気が付きキーボードの扱い方を説明し常守朱は自身のデスクへと座り業務をこなしてゆく。

 

 

しばらくして部屋には常守朱がリズムカルにキーボードを叩く音、ラグナロクが十秒に一度キーボードを押す音が。キーボードを押すたびに画面に出現する文字を見て最初は科学の力に関心していたのだが慣れない作業に心が折れてゆく。

 

こうして昼から始まった日報作りは定時まで続き二百文字を打つのに半日程かかってしまっていた。

 

 

「お疲れ様でした。では部屋へと案内しますね」

 

「お願いするわ」

 

 

一係を出て廊下を歩きながら説明を受けてゆく。

 

 

「執行官の方は監視官と同伴でないと外出できないのでもし何かあれば私に声をかけて下さいね。この公安局ビル内にレストランや生活に必要な物は揃っていますので大丈夫だと思いますけど」

 

「分かったわ」

 

「せっかく来てもらったのに堅苦しい思いをさせてすいません」

 

「構わないわ」

 

「それと部屋をフォロで模様替えする事ができるので一度試してみて下さいね」

 

「ありがと」

 

「ではまた明日よろしくお願いしますね」

 

 

こうして案内された部屋へと入ってゆくのだがフォロの出し方など分かるはずもなくラグナロクは簡易のベッドへと寝転がり自身が想像していた異世界と実際の異世界との差に絶望をしていた。

 

仲間達から聞いた異世界とは違いこの世界は堅苦しく規則にまみれパソコンと呼ばれる機械はもう姿すら見たくない程。

 

それでもこの世界に行きたいと言ったのは自身でありこの一週間を有意義なものにしようとラグナロクは意気込み身体を起こした。

 

 

「そうね」

 

 

腹が減ってはなんとやら。常守朱が言っていたレストランへと行くために部屋を出て廊下にある案内を見ながらレストランへと向かってゆく。

 

 

「・・・」

 

 

公安局ビルの上層階に作られたレストランは一面ガラス張りになっており高階層から夜景を見渡しながら夜食を食べる事ができる。不慣れながら注文をし運ばれてきたうどんと夜景を楽しんでゆく。

 

 

「・・・」

 

 

時刻は午後21時を指すのだが見える景色は昼と変わらず騒がしい。異世界の雰囲気に浸りながら夜飯を食べ終え部屋へと戻る事に。

 

 

「・・・」

 

 

レストランへは案内の看板が出ているのだが自室に戻る看板は無く二時間ほどビル内を彷徨いようやく自室へと戻る事ができたのだ。

 

 

 

 

 

次の日常守朱と一係で作業を行なっている時常守朱が持つ端末が鳴り響き事件発生を伝える。

 

 

「ラグナロクさん。事件です」

 

「分かったわ」

 

 

作業の手を止め急ぎながら現場へと向かってゆく。

 

 

 

二人が到着した現場は町外れに建てられた古民家。玄関にはこじ開けられた様な跡があり力尽くでの犯行を思わせる。

 

 

「これは、、酷い、、」

 

 

二人が室内に入ると既に犯人の姿は無く。その代わり室内は荒らされこの家の住民の遺体が二人縛られた状態で転がっている。

 

 

「ラグナロクさんはこの現場を見てどう思いますか?」

 

「そうね」

 

 

常守朱の言葉に部屋を見渡してゆく。荒らされている場所はタンスやテーブルの上に限られ遺体はリビングの中央にある。

 

 

遺体を観察すると二人共高齢者であり頭部に傷がありこれが致命傷となったのだろう。

 

 

「強盗に入られたのだと思うわ。そうだと思う理由として金目の物がある場所しか荒らされていない」

 

「それで合っていると思います。殺害した道具は玄関をこじ開けた物と同じ」

 

「この現場からどうやって犯人に辿り着くの」

 

「この部屋から犯人の痕跡を探し出し後は外にある監視カメラの映像と照らし合わせてゆきます。なので私達は残された痕跡を探し出します」

 

「分かったわ。それで私は何をすれば良い?」

 

「遺留品の捜索はドローンに任せるので。この家全体に目を向けて見ましょう」

 

「外からこの家を見ても良いかしら」

 

「私も同伴します」

 

 

家の外に行き古民家を眺めてゆく。隣の家とは距離があり大きな音を出したとしても気づく事はないだろう。

 

 

「私が犯人だとしてもこの家を狙うわ。日中でも人目に付かず遠慮なく音を出す事ができるこの家をね」

 

「帰ったら街灯スキャナーでこの辺りに犯罪係数が高い人が居なかったから確認してみます」

 

「犯罪係数が高い人が犯罪を犯すという認識で良いのね?」

 

「そう、ですね。一概にとは言えませんが目安にはなります。ドローンの調査が終わったみたいなので唐之杜さんの解析を聞きに行きましょう」

 

 

 

 

…………………………………………………………

 

 

 

 

「被害者は吉田誠82歳とその家内の恵81歳。二人とも鈍器で頭部を殴られたのが致命傷ね。良くある強盗だとは思うけど」

 

「犯人の手がかりとかは見つかれませんでした?」

 

「そうね、、鑑識ドローンも手掛かりらしい手掛かりは見つけられて無いわね。一応被害者と接点があるかどうかだけは調べておくけど」

 

「何故被害者との接点を調べるの」

 

「恨み、妬みによる犯行なら交友関係を洗えば大体の目星が付けれるからよ」

 

「成程ね」

 

 

咥え煙草でキーボードを操作し見上げればモニターに被害者の情報が提示されている。

 

 

「特に目立ったトラブルは無いわね。やっぱりただの強盗じゃないかしら」

 

 

煙草を揉み消した後振り返り告げる。そして二人の顔を見た後に煙草を咥え再び火を灯す。

 

 

「現場付近の監視カメラの映像はどうですか?」

 

「ダメね。田舎過ぎて監視カメラの設置が少なくて犯人を捕らえられていないわ。もしかしたらこれも犯人の計算かもしれないわね」

 

「監視の目を掻い潜っての犯行という事ですね」

 

「こうなってしまっては打つ手はないわね」

 

 

公安局を嘲笑う様な犯行に沈黙が。そして再び警報が鳴り響き事件の発生を伝える。

 

 

「場所はさっきの現場から少し離れた所ね」

 

「行きましょうラグナロクさん」

 

 

分析室を飛び出した常守朱の背後を着いてゆく。

 

 

 

 

「・・・・」

 

 

そこで目にした光景は先程と同じ光景であった。町外れの古民家、こじ開けられた玄関、そしてリビングに縛られた老夫婦の死体、荒らされた室内。

 

 

すぐさま鑑識ドローンを出すのだが先程と同じで証拠らしい証拠は見つけ出せずに。

 

 

「同一犯による計画的犯行と見て良さそうですね。二件続けて同じ手口による犯行、、」

 

「そのようね。そして同じ金銭を目的とした犯行」

 

「そうだとしたらこの辺りの同じ様な家が次に狙われるという事ですね。ラグナロクさん」

 

「私は監視官の指示に従うわ」

 

 

苦笑いを浮かべる常守朱の指示の元、犯人確保の為の作戦が実行される事に。

 

 

[唐之杜さん。この辺りに事件現場と同じ様な民間はありませんか?]

 

[ちょっとまってね、、合ったわ。ここから三キロ北に進んだ方に同じ様な古民家があるわ]

 

[ありがとうございます!]

 

 

常守朱の作戦とは次の犯行現場を予測しての張り込みである。刑事課の車両に擬態フォログラムをかけ辺りの景色に溶け込み犯行の現場を捉えるというもの。

 

 

張り込み捜索とは忍耐を要求される捜査である。いつ現れるか分からない犯人に本当に犯行が行われるのかという疑心暗鬼での心理状態での捜査は精神をすり減らし快適に保たれる車内は眠気を誘う。

 

 

「・・・・」

 

「・・・・」

 

 

そして車内にあるのは沈黙である。気の知れた仲であるなら会話により退屈が紛らわされるかも知れないが常守朱と同車内に居るのは威圧感を放ち続けるラグナロク。なんとなく気不味い雰囲気が車内に溢れてゆく。

 

 

「ラグナロクさんって趣味とかあるのですか?」

 

「そうね、いうのであればお昼寝かな」

 

 

当然のように告げるお昼寝というワードがツボに刺さり笑いを堪えていたのだがついに堪えられなくなりクスリと笑ってしまう。

 

 

「何かおかしな事でも言ったかしら」

 

「い、いえ!想像していたのと全く違う答えだったので、、」

 

「構わないわ。監視官は一体私の趣味はなんだと思っていたの?」

 

「えっと、乗馬とかゴルフとかそういうのを想像していました」

 

「退屈な時間をそのような事に充てるのも良いかも知れないわね。監視官、あなたの趣味は?」

 

「私は、、仕事が忙しくて趣味をする時間が無いんですよね、、」

 

「監視官というものはそれ程に多事多端なのね」

 

「まぁ、、この世界で犯罪を取り締まるのは私達しかいませんから」

 

 

たわいも無い会話をしていると目線は三人の男達を見つけた。手にはバールの様な物を持ち辺りを見渡しながら歩くというなんとも不自然な様子。

 

そんな様子を見逃すはずも無く二人の目線は男達を追う。

 

 

「ラグナロクさん」

 

「えぇ、分かっているわ」

 

 

同時に車内から降り三人を背後から追跡してゆく。追跡されてるとも知らずに男達は古民家の玄関先に行くとドアをバールでこじ開けてゆく。

 

 

「公安局です!両手を頭に上げ地面に伏せ投降しなさい!」

 

 

ドミネーターを構え警告を叫ぶ。その声を聞き男達は振り返ったが気にする様子も無くドアをこじ開け室内へと入ってゆく。

 

 

「っ!」

 

 

交渉の余儀なしと悟り構えたドミネーターで犯罪係数を測ろうとする。しかし返ってきた答えは。

 

 

[犯罪係数測定不可。トリガーをロックします]

 

 

無機質な機械音声に告げられ何度も犯人に向かいドミネーターを向けるのだが返ってくる答えは同じ。ドミネーターによる計測は三人共測定不可。

 

 

「ラグナロクさんのドミネーターでも計測して下さい!」

 

 

常守朱に言われた通り腰のフォルダーにかけたドミネーターを取り出し三人に向かい構えてゆく。

 

 

[ユーザー認証。臨時執行官ラグナロク。犯罪係数測定不可。トリガーをロックします]

 

 

聞こえた機械音声は常守朱が持つドミネーターと同じ事を告げトリガーをロックした。

 

 

「監視官」

 

 

慌て焦る常守朱に声をかけ横を見れば一本の剣を構えたラグナロク。

 

 

「それはダメです!しまって下さい!」

 

「何を躊躇っているの?奴らは今犯罪行為を行おうとしているのよ」

 

「だとしてもダメなんです、、、!」

 

 

やがて悲鳴が二つ聞こえ鈍い音が二つ。しばらくすると犯行を終えた犯人達が自宅から出る様に玄関から現れ二人の真横を通り抜けて行く。

 

 

「監視官」

 

「・・・・・」

 

 

蒼白した表情の常守朱を見てラグナロクは困惑の表情を浮かべた。

 

 

 

 

………………………………………………………………

 

 

 

 

しばらくの時が経った後ラグナロクは先ほどの行動の意味を知る為常守朱へと質問を行っていた。

 

 

「何故私を止めたの監視官」

 

「この世界では犯罪係数が一定の数値を超えてなければ犯罪を犯していたとしても罪として裁けないのです。このシュビラシステム(世界)は彼等は犯罪者でないと断定しドミネーターの使用を禁じさせた」

 

「なるほどね。だけど少なくとも私の目には犯罪行為を行なっていると見えたけど」

 

「もちろん私にもです。ですが法で取り締まれない以上私達には彼等を捕まえる手段はありません、、」

 

「なら奴等の行為は犯罪では無いというわけね」

 

「きっと何かカラクリがあるはずです。シュビラシステムから認証されなくなるカラクリが、、、!」

 

 

必ず犯人を裁くという決意を固める常守朱にラグナロクは冷笑した視線を向けた。

 

 

「先ほどこの銃を向けた時言われた犯罪係数想定不可という言葉は一体どんな意味を持つのかしら」

 

「以前居た槙島聖護という男は免罪体質といってシュビラシステムよる色相チェックを免れる事ができる人は居ました。けれど槙島はサイコパスを図る事ができたのに今回は図る事すらできなかった。ごめんなさい、原因は今は分かりません、、」

 

「分かったわ。それと監視官に前もって伝えておくわ。今回私は監視官の制止命令を受け踏み止まった。だが、奴らが私と監視官に攻撃を仕掛けてくるのであれば容赦はしない」

 

「えっ、私も入っているのですか?」

 

「そう、キル姫とはマスターを護る存在。だから私は私の監視官である常守朱を脅威から護るわ。不服?」

 

「いえ、そんな事は無いですけど、、」

 

「私はこの世界に居る限りこの世界の理を通すつもりよ。だがキル姫ともって生まれた信念は揺るがせるつもりはない」

 

 

なんとも気不味い雰囲気の二人を乗せた車両は公安局ビルへと。その足で唐之杜の所へと行き分析の結果を聞いてゆくのだが。

 

 

「ドミネーターが反応しないっておかしな話ね。二丁ともそうだったの?」

 

「はい、私のもラグナロクさんのも犯罪係数を測定する事はできませんでした」

 

「車両のドラレコに三人の顔が写っていたわ。これを辿って三人の身元を特定してあげる」

 

 

ドライブレコーダーに写った三人の顔をスキャンし検索をかけてゆくのだがいくら待とうとデータは出ず。

 

 

「嘘、一体どうなってんのよ」

 

 

その後どの検索エンジンを使用しても三人の身元はおろか名前さえ検索する事はできず。舌打ちの後煙草を咥え火を灯す。

 

 

「データが出てこないってどういう事なのでしょう?」

 

「分からないわ。だけどこの私が調べて出てこないという事は不法滞在している外国人か出生届を出していないか」

 

「出生届?」

 

「子が産まれた事を国に届けるのよ。そうする事により戸籍が与えられ国民として認められるって事」

 

「そういう事ね。では戸籍が与えられなければどうなるの?」

 

「そりゃ国民として認められてない訳だから認知もされなからば行政のサービスも殆ど受けられなくなるわ」

 

「それですよ!唐之杜さん!」

 

「どうしたの朱ちゃん。急に大きな声出して」

 

「あの男三人が無戸籍であるなら、国民として認められていないからシュビラシステムによる色相チェックを受けられなかったんですよ!」

 

「なるほどね。でもそれなら異世界から来たラグナロクが街灯スキャナーに引っかかるはずが無いわ。ラグナロクの戸籍がこちらの世界にある訳無いんだから」

 

「それも、そうですね、、」

 

「一つ良いかしら」

 

「どうしたの?」

 

「この国の法が通用しない人間にこちらが法を待って対処するのはおかしいとは思わないの?彼等が無法であるのならこちらも法に則る必要は無いと思うのだけど」

 

「それはダメです。なんとかして彼等のカラクリを暴き法による裁きを与えるできです!」

 

「監視官がそう言うのであれば私は何も言わないわ」

 

「私思ったのだけど」

 

「どうしました?」

 

「二人は三人にドミネーターを向けたのよね?」

 

「そうですけど」

 

「それで二人が発砲してこないと分かればあいつら調子に乗っちゃうんじゃない?」

 

「合点がいったわ。犯罪行為を行ったとして取り締まる事ができないのであれば町外れの民家を襲う必要が無いという事ね」

 

「そういう事。ほら、早速エリアストレス警報よ」

 

 

唐之杜が指差す画面には東京の地図が。指を指す地域が赤く光り異常を伝える。

 

 

「監視カメラの映像映すわよ」

 

 

映し出された映像は先程の三人組が鈍器を片手に街を歩く人に襲いかかる映像。一人を鈍器で殴り付け倒れた被害者に馬乗りになり顔面を強打してゆく。

 

その隣でも、また隣でも同じように被害者を殴りつける様子が。血が飛び散り臓器が露わになり漂う血の匂いにその光景を見ていた観衆がパニックを起こしサイコハザードを発生させている。

 

サイコハザードに付いて簡単に説明を行うと犯罪係数の上昇が伝染し辺りに居る人まで犯罪係数が上昇してしまう事だ。

 

 

「っ!!」

 

 

目に映る光景を唖然と見た後分析室を飛び出してゆく。その後をラグナロクが追う。二人は犯行が行われている現場へと急行する。

 

 

「監視官。この銃は犯人では無く被害者を打てと言っているけど」

 

 

ラグナロクがドミネーターを構えながら常守朱へと疑問をなげる。

 

ラグナロクが構えたドミネーターは人を殴っている犯人では無く殴られ犯罪係数が上昇した被害者を打てと機械音声で告げる。

 

 

[犯罪係数オーバー124。ノンリーサルパラライザー。慎重に照準を合わせ対象を排除して下さい]

 

「監視官。私は今殴られている被害者をこの銃で撃てば良いのね」

 

 

ドミネーターによる音声案内を受け瞳を蒼く輝かせながらラグナロクが問う。

 

 

「・・・」

 

 

異常過ぎる事態に常守朱は返す言葉を無くしただ惨劇に向かいドミネーターを向ける事しかできずにいた。

 

 

やがて気が済んだのか三人は何処かへと行ってしまう。

 

 

「監視官、あなたが言う正義とはこうしてドミネーターに従い犯罪を見逃すという事ね」

 

「監視官、あなたの正義がそうであるなら私は従うわ。だがあなたがこの正義に少しでも疑問を持つのであれば私はあなたの指示に従う」

 

「・・・私は、、これが正義だとは思いません。しかしドミネーターが反応しない以上あの人達を裁く事はできません。それにラグナロクさんに人殺しをさせる事になってしまう、、」

 

「甘いのね。それに人を殺すなど私には慣れた事よ。あなたが一言やれと言えば私の持つ剣は迷わずあの人達を斬り伏せる」

 

「私はその指示は絶対に出しません。必ずあいつらの犯罪係数をドミネーターで計測して法の裁きを受けさせます。絶対に」

 

 

 

 

 

 

 

………………………………………………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

三人による惨劇の後片付けをドローンに任せて二人は分析室へと戻って来ていた。そこで今回の事件の被害者の人数とサイコパスが上がってしまった人の数を知る。

 

 

「犠牲者が六名に犯罪係数が規定値を超えてしまった人は13人ね。それであの三人は相変わらずだったのね」

 

「そうです、、もうどうすれば良いのか、、」

 

「まるで姿が見える幽霊ね。私達には見えているのにドミネーターからは見えていない。色相幽霊ね」

 

「ならお塩を撒かないといけませんね、、」

 

「この様な事は過去にあったの?」

 

「私も気になって調べたんだけどこの件と同じ様な事は過去に一度も無かったわ。シュビラシステムによる人民の管理ができないだなんて」

 

「それ程までにシュビラシステムを信用しているのね」

 

「そんな事無いわよ。今すぐにでも消えて欲しいって私は思っているわ」

 

 

唐之杜の軽口に乾いた笑い声が。

 

 

「今日はもう遅いので調査は明日にしましょか。無理をしても良い結果は得られると思えませんので」

 

 

色相幽霊の調査は明日へと持ち越されてゆく。

 

 

 

次の日二人は分析室で朝のコーヒーを飲んでいた。

 

 

「私の部屋で当然の様にくつろぐのやめてもらえない?」

 

「まぁ良いじゃないですか」

 

「それで、今日は何をするというの?」

 

「メインは色相幽霊の調査ですけどほかに事件があればそちらの対応も行います」

 

「了解」

 

「とりあえず今のところ分かっている事をまとめたので一度目を通して下さい」

 

 

常守朱から渡された資料には色相幽霊に付いて細かく纏められていた。

 

 

「やっぱり名前が無いとピンとこないわね。私が名前付けてあげよっか?」

 

「良い名前が思い付いたのです?」

 

「この緑の服を着ている人は霊太、赤い服の男は霊登、そして黄色の服の男は霊男ね」

 

 

しばらくの沈黙の後コーヒーを啜る音が二つ。その後に煙草に火を付ける音が。

 

 

「犯人達は何かしらの移動手段を持っていると思われます。でなければ東京郊外から都心まで移動する手段がありませんから」

 

「そうだとしても車を手に入れるとしても戸籍が無ければ買う事もできないわよ」

 

「はい、なのでもしかしたら三人を手引きしている人物が居る可能性もあります」

 

「そうだとしたらそいつのメリットは何?ドミネーターで裁くことができない私達を傍観して楽しんでいるというの」

 

「三人を動かす事によってその人が得るメリット、、、」

 

「今のところお金ね。最初の事件は三件、その三件は強盗だったわ。それとこれを見て」

 

 

画面に映し出されたのは被害者六名のプロフィール。

 

 

「三件とも裕福な家庭だったわね。一人は都内の有名な会社の元役員。もう一人は中規模の運送会社の元社長。そしてもう一人は製薬会社の役員よ。年寄りだから口座に預けるんじゃなくてタンス貯金していたようね」

 

「なるほどね。ではあの三人がたまたま強盗に入ったのでは無く目星を付けてあったという事か」

 

「つまり幽霊を影で操る人が居るという事。そいつは三人にドミネーターが通用しないという事を知っている、だから都心であんな事件を起こしたのね」

 

「ドミネーターが通じないとなれば恐る物は無いからね。もしかしたらまだ犯行は増えるかも知れないわ」

 

 

唐之杜が言い終わると同時に警報が鳴り事件発生を伝える。場所は銀座にある宝石店。

 

 

「行きましょうか」

 

「そうですね、、」

 

 

モニターに映る三人の顔を見てげんなりしながら現場へと向かってゆく。

 

 

「これを持っていきなさい」

 

「これは?」

 

「発信機よ。これ付けとけばあいつらのアジトの場所が掴めるってわけ」

 

「ありがとうございます!」

 

 

唐之杜に深く頭を下げた後急いで現場へと向かう。

 

 

 

 

 

[公安局です!武器を捨てて大人しく投降して下さい!!]

 

 

宝石店のドアを破り店内を物色する三人組に告げるのだが聞く耳持たず袋に宝石を詰め込んでゆく。そして袋詰めが終わると何事もなかったかの様に出て行こうとする。

 

 

「いい加減にしておきなさい。次その顔を見た時この剣はあなた達の墓標となる」

 

 

ラグナロクが具現化した黄昏剣・コマンド・ユグドラシルを道路に突き立て告げると目を向け一度立ち止まった後何事もなかったかのように何処かへと。

 

 

「警告はしたわ」

 

「注意を引いてもらいありがとうございました」

 

「結果はどうだった」

 

「バッチリです!」

 

 

常守朱が付ける腕時計からモニターが投影され三人の行方が示されている。それを見ていると廃棄区画へと向かってゆき何処かの建物へと入ってゆく。

 

 

「奴らは廃棄区画に向かいましたね」

 

「廃棄区画?」

 

「インフラの整備が追いつかず放置された土地です。あまり良い場所では無いのですが、、」

 

「追うのなら行きましょう。それともまだ機が熟してないというの?」

 

「いえ、ここは退却します。追い付いたとしても彼らを裁く方法が無い以上手を出す事はできませんから」

 

「懸命な判断ね」

 

「ひとまず犯行現場をスキャンしてから帰りましょう」

 

 

犯行現場である宝石店へ行こうとした時何かが常守朱の顔に当たる。

 

 

「っ」

 

「何が公安局だ!犯人を逃しやがって!」

 

「街の安全はどうだって言いっていうの!?」

 

 

2回、同じ犯人を逃した事により住民の不満と怒りが爆発し公安局の人物である常守朱へと投石を始めた。

 

 

「やめて下さい!」

 

 

制止の声を響かせるが投石は止まずついに頭に当たった石により血が流れた。

 

 

「これ以上監視官に手を出すというのなら私が相手になるわ。命を捨てる覚悟がある者は前に出なさい」

 

 

ラグナロクの一声により一度民衆の手が止まったが再び石を投げようとする。

 

 

「愚かね」

 

 

民衆に向かい剣を向けると蜘蛛の子を散らすように逃げ惑いその場には二人が残った。

 

 

「大丈夫だった監視官」

 

「私は平気です、、」

 

「早く犯人を裁かないと公安局の信頼は地に堕ちるわよ」

 

「分かっています、、」

 

 

犯行現場のスキャンを行い二人は公安局へと戻ってゆく。

 

 

 

 

………………………………………………………………

 

 

 

「お手柄よ朱ちゃん」

 

「どうしたのですか?」

 

「ドローンがスキャンした痕跡にあの中の誰かの血があったわ。この血からあいつの情報を作り出してシュビラに認知させる。そうすればドミネーターで裁く事ができるはず」

 

「なるほどね。血は個人の情報そのものという事が」

 

「そう。完全な身元は分からないけどこっちで勝手に戸籍を作ればもうあいつはこの国の国民よ」

 

「ありがとうございます。今回血が検出されたのは一人だけですか?」

 

「そのようね。割れたガラスケースで手を切ったおバカちゃんは一人だけ。発信機も良い感じにあいつらの居場所を探知してくれてるわね」

 

 

モニターに映し出された地図には三人の居場所がマークされている。場所は廃棄区画の一角。

 

 

「どうする監視官。私はいつでも行けるわよ」

 

「いえ、まだ待ちます。あの二人の血を入手して三人同時に執行しなければ警戒されまた行方を眩ませるおそれがあります」

 

「なら残りの二人の血も採取しないとね。三人がチームを組んで動いているのなら一人が街灯スキャナーに引っ掛かれば追跡は容易ね」

 

「今日はもう遅いので明日奴らが犯行を行い次第血を採取して必ず罪を裁かせます」

 

「その前に監視官」

 

 

振り向いた常守朱の顔をラグナロクが見つめる。

 

 

「ど、どうしたのですか?」

 

「傷の手当てをしてあげる」

 

 

額に付いた傷にガーゼを当て紙テープで止めてゆく。

 

 

「ありがとうございます」

 

「それとごめんなさい。あなたに怪我を負わせてしまったのは私の失態よ。何なりと罰は受ける覚悟だから」

 

「そんな良いですって!」

 

「私は監視官に従う執行官。だがそれと同時に奏官に従うキル姫でもあるのよ」

 

「バイブスとキラーズですよね。前に二人から聞いた事があります」

 

「知っているのなら話が早いわ。監視官は私にどんな罰を与えるの」

 

「えっと、、じゃあ今日の日報をお願いします」

 

 

この言葉によりラグナロクの顔はみるみる青ざめてゆく。

 

 

「パソコンではなく手書きでも良いのなら」

 

「パソコンでお願いします」

 

 

がっくりと肩を落としたラグナロクと共に二人は一係のオフィスへと。そこでパソコンの使い方を教わりながら日報を打ち込んでゆく。

 

 

 

 

 

………………………………………………………………

 

 

 

次の日二人は一係で業務をこなしていた。ラグナロクは常守朱に教わったようにパソコンを操作し簡単な作業を行ってゆく。

 

それでも不慣れなデスクワークに何度も手を止め肩を回しながら。

 

 

「監視官はこうしてパソコンを操作していて疲れないの?」

 

「私は物心ついた時からパソコンを触っているので大丈夫なんです」

 

「それ程にパソコンというものは市民の生活に馴染んでいるのね」

 

「そうですね。ラグナ大陸にはパソコンは無いのですか?」

 

「無いわね。もし合ったとしたら私も監視官と同じようにパソコンを扱えているわ」

 

「あると便利なのですけどね」

 

「今のところ私には便利だと言う認識は持てないわ」

 

「あはは、、そうだ。後で休憩がてら体を動かしませんか?」

 

「そうね。このまま椅子に座っているとお尻から根が生えてしまいそう」

 

 

しばらく作業を続けた後二人はビル内にある運動施設へと来ていた。そこにある器具を見たラグナロクが目を輝かせる。

 

 

「これは何という機械なの?」

 

「これはランニングマシンです。隣にあるのがベンチプレスの器具です」

 

「なるほどね。奥の広場には何が?」

 

「奥の広場にはスパーリングロボットと模擬戦が行う事ができます。試しにやってみますか?」

 

「お願いするわ」

 

 

常守朱が出してくれたのは無骨な姿のロボット。起動スイッチを押すとフォログラムを纏い人の姿へと変わる。

 

 

「強さはどうしますか?1から5の段階で選べますけど」

 

「そうね。5でお願いするわ」

 

「うぇ、いきなり最高設定ですか、、?怪我しても知りませんよ」

 

 

言われた通りに設定しその場を離れると起動し対戦相手であるラグナロクを標的に動き始めた。

 

下段から上段に向かい繰り出される回し蹴りを左肘で受けそのまま足を掴み背に背負い強引に床へと叩き付けるとゴギリと何かが壊れる音が。

 

 

「うわ、、無茶苦茶すぎません?」

 

「随分と脆いのね」

 

「キル姫とスパーリングする事は前提に作られていませんからね」

 

「それでも体が動かせて満足よ。ありがとう」

 

 

にっこりと笑顔を常守朱へと向ける。その後スパーリングロボットを破損した事に付いて始末書を書かされるのだが。

 

 

その後二人は業務を行ってゆく。部屋には二人がパソコンをタイプする音が響く。

 

 

「ラグナロクさん上手になりましたね」

 

「これでも努力はしているつもりだからね」

 

 

しばらくし定時を迎えると二人は別々の部屋へと帰ってゆく。

 

 

 

 

 

 

………………………………………………………………

 

 

 

次の日一係のオフィスへと集まり挨拶を交わした後警報が鳴り響く。モニターを見上げると街灯スキャナーに潜在犯が検知されたようだ。

 

 

「行きましょう!」

 

「もちろんよ」

 

 

二人は一係を飛び出し現場へと向かう。

 

 

 

[公安局です!大人しく武器を捨て投降しなさい!]

 

 

刑事課車両に取り付けられたスピーカーから警告を発するのだがあの三人は聞く耳を持たずドアを破り銀行へと押し入ってゆく。三人が押し入った銀行からは悲鳴が上がる。

 

 

「人質の安全を第一に行動します!私が突入するのでラグナロクさんは待機をお願いします!」

 

「愚かね監視官。ここは私が行くわ」

 

「しかし、、!」

 

「私に任せて。必ず人質を解放させあの男達の血を採取してくるわ」

 

 

並ならぬ威圧を感じ取りラグナロクへ突入命令を出す。その命を受けラグナロクが銀行へと入ってゆく。

 

 

「公安局よ。大人しく武器を捨てなさい」

 

 

ドミネーターを向けながら告げるのだが三人は聞く耳を持たず。それでも三人に向かい銃口を向けてゆく。

 

 

[犯罪係数オーバー325。リーサルエリミネーター。標準を合わせ落ち着いて執行して下さい]

 

 

三人のうちの一人はドミネーターが反応しエリミネーターへと姿を変える。この事実は戸籍が与えられこの国の国民と認識された事を示す。

 

それでも三人は人質にカバンに金を詰めさせ店外へと出てゆこうとする。

 

 

そしてラグナロクを通り抜けて行く。その瞬間一陣の風が吹いた。

 

 

「次は無い。その時を覚悟しておきなさい」

 

 

ギロリと睨む瞳は三人の背を見つめ手には血が付着した黄昏剣・コマンド・ユグドラシルが。それにも関わらず三人は何事も無かったかのように逃走して行く。

 

 

「・・・ラグナロクさん。剣を使ったんですね」

 

「使ったわ。だが奴らの命を奪ってはいない。見たでしょ?奴らが逃げて行く様を」

 

「確かにそうですけど。どうやったのですか?」

 

「達人の侍は痛みを感じさせる事なく相手を斬る。それと同じ事をしたのよ。例えるならカミソリで皮膚を切ってしまった時のように」

 

「例えがよく分かりませんが、、」

 

「痛覚を感じる事が無い程度に斬ったのよ。この血があれば奴らを裁く事ができるのでしょ。分析室へ行きましょう」

 

 

なんともいえない表情の常守朱と共に二人は分析室へ。

 

 

 

「お手柄ねラグナロク。この血があれば残りの二人も幽霊で無くなるわ」

 

「先程ドミネーターを向けたが一人は反応があったわ。この作戦は成功のようね」

 

「これで廃棄区画に居る奴らを裁く事ができる」

 

「でも廃棄区画の地下に逃げられたら電波が届かなくなってドミネーターは使い物にならなくなるわよ」

 

「そうなの?」

 

「ドミネーターはシュビラシステムと通信する事によって起動し犯罪係数を測ることができるのです。なので電波が届かなければ使えないのです」

 

「一応通信ケーブルとドローンは手配しておくけど地下の奥に逃げられたら手の出しようが無いわ」

 

「それでも三人を従える者を発見する為には行かなければなりません」

 

「私はいつでも行けるわ。監視罠」

 

「私も、唐之杜さん」

 

「はいよ、もう分析と残りの二人の戸籍付属は終わっているわよ。それに発信機はちゃんと奴らの居場所を教えてくれているわ」

 

 

モニターに浮かぶのは三人の居場所。それは廃棄区画にあるゴミ処理施設の跡地。

 

 

「シュビラシステムができて直ぐに放置された施設ね。かなり老朽化してると思うから気をつけて」

 

「それはどれぐらい前に放棄された施設なの?」

 

「おおよそ40年前ってところね」

 

「成程。たった40年でシュビラシステムはこの国の要を担うようになったのね」

 

「シュビラシステムの前身はその前から合ったわ。それを踏まえて考えると一世紀ってとこね」

 

「それでも今回の事件のようにまだ改善の余地を残している」

 

「不完全なこの世界の要、か」

 

「とにかく行きましょう!奴らがこれ以上罪を増やす前に、、!」

 

 

二人同時に分析室を飛び出し刑事車両に乗り込むと廃棄区画に向かってゆく。その後ろを沢山の刑事課ドローンが追従。

 

 

「監視官。後ろのあれば一体何?」

 

「刑事課のドローンです。私の指示に従ってくれるので犯人の護送や犯人からの攻撃の盾となってくれます」

 

「成程ね」

 

「それとドローン一つ一つが電波の中継機となる事によって電波の届かない地下に逃げたとしても追跡が可能です」

 

 

赤色灯を回しながら後ろに続くドローン達を振り返り見た後また前方へと視線を戻す。

 

 

しばらくして二人は廃棄区画にあるゴミ処理施設へと辿り着き施設を眺めていた。

 

 

茶色く錆びてしまったフェンスが囲う奥には塗装が剥がれ落ちコンクリートを剥き出しにした建物があり外壁は蔦に覆われ敷地内は雑草に覆われてしまっており放置された年月の長さを伺わせる。そして入り口を塞ぐ門には錆が付いていない部分があり人が出入りしていると感じさせる。

 

 

[唐之杜さん、この施設の地図出せますか?]

 

[待っててね、、。ダメね。建物が古過ぎて図面が残されていないわ]

 

[そうですか、、]

 

[もう少し調べてみるから。それと残りの二人の幽霊の正体は暴けたわ。これで三人共ドミネーターで裁けるはずよ]

 

[ありがとうございます!これより潜入するのでサポートの方お願いしますね]

 

 

返事を聞いた後に通信を切り横を見ると頷くラグナロク。頷き返した後門を開け施設へと潜入しようとする。

 

 

「まずはドローンに調べさせ安全を確保しながら進みましょう」

 

「そうね。ここは敵の城。来る事を想定し罠があってもおかしくは無いわ」

 

 

常守朱の指示の元二台のドローンが前方を進んでゆく。その時一台のドローンの姿が消えた。

 

 

「「!!」」

 

 

直ぐ様ドローンが消えた場所を調べると人が入る程の穴が空いておりこの穴に落ちたと推測する。

 

 

「落とし穴、ですかね?」

 

「随分と古風な罠ね。それにしても穴は随分と深いわね」

 

 

穴を見下ろすのだが落ちたドローンの姿は見えず。

 

 

「重機で穴を掘ったとすれば辺りの草が枯れているはず、、」

 

「自然に開いたのでは?これを見て監視官」

 

 

ラグナロクが指す指の先を見ると他にも開いている穴が見える。この建物の築年数を考えれば不自然ではない。

 

 

「もしこの施設に地下があるのならそこに落ちたかも知れないわね」

 

「そうかも知れません。気を付けて進みましょう」

 

 

ラグナロクが持つ剣で地面を確かめながら進み二人は建物の入り口へと辿り着いていた。

 

 

[唐之杜さん。地図は手に入りましたか?]

 

[ちょうど今朱ちゃんに転送したところよ。やっぱり古い施設だから電波は届かないわ。私の声が聞けるのは戻ってきた時ね]

 

 

転送されてきた施設の見取り図を展開しラグナロクと二人で見てゆく。

 

 

[じゃ、無事を祈ってるわ]

 

 

返事をした後に通信が切れた。そして二人は見取り図を眺めている。

 

 

「一階建てで地下にゴミを処理する装置があるようですね。一階の大部分はゴミを収容する部屋で居住スペースは僅か」

 

「それなら犯人はそこに居るわね。ドローンはどうする?」

 

「残ったドローンは残り四機。入り口に一機配置して残りは私達に続かせ電波のアンテナにします」

 

 

常守朱の言葉に頷き二人は施設へと入っていった。

 

 

ドアを開け室内に入ると外より少し気温が低く思っていたより空気は澄んでいる。これだけの年月を放置された建物にしては室内は整理されており人の手が加わっていると思わせる。

 

 

「何処から行く?」

 

「そうですね、、一番広い部屋の施設管理室に行きましょう」

 

「了解」

 

 

ラグナロクを前にしながら施設内を進んでゆく。足を進めながら見渡せばわずかに積もった埃に足跡が残されている。ここに人が出入りしているのは確実だ。

 

 

そして長い廊下を抜け二人は管理室のドアの前に辿り着いていた。

 

 

ドアに手をかけるラグナロクに頷くとドアを開け放ちドミネーターを構えながら二人が部屋に飛び込んだ。

 

 

「公安局です!大人しく投降しなさい!」

 

 

二人の目線の先には三人の姿。そしてもう一人見知らぬ男が部屋の奥に佇む。

 

 

[犯罪係数オーバー345。リーサルエリミネーター。慎重に標準を定め対象を排除して下さい]

 

[犯罪係数オーバー354。リーサルエリミネーター。慎重に標準を定め対象を排除して下さい]

 

[犯罪係数オーバー325。リーサルエリミネーター。慎重に標準を定め対象を排除して下さい]

 

 

今まで測れなかった犯罪係数をドミネーターが計測しエリミネーターへと姿を変えた。そして残るもう一人へとドミネーターを向けた。

 

 

[犯罪係数オーバー386。リーサルエリミネーター。慎重に標準を定め対象を排除して下さい]

 

 

「お前達に逃げ場は無いわ。終焉を迎えさせてあげる」

 

 

ドミネーターによる反射で目を蒼く輝かせながら銃口を向ける。しかし四人は何も言わずに二人を見つめている。

 

 

「監視官」

 

「はい、やむを得ません。執行します」

 

 

トリガーに置いた指に力を込めようとした時、四人が両手を上へと上げ降伏の仕草を取る。それを見てドミネーターを下げた。

 

 

「公安局へ連行します」

 

「執行しないのね」

 

「罪を認め降伏をするのなら。それに色相がこれ程に濁っていたとしてもセラピーを受ければ犯罪係数が下がるかも知れないので。できれば執行は避けたいですからね」

 

 

ドミネーターを腰のフォルダーへとしまい四人に手錠を掛けるために常守朱が歩いてゆく。

 

それを見て四人の口元が歪んだ。

 

 

「!!」

 

「監視官っ!!」

 

 

歩いて行った常守朱の姿が消えた。床を見ると歩いた先の床が散り散りとなっておりフォログラムにより床に開いた穴を隠していたと気付かされる。

 

 

「っ!!」

 

 

ラグナロクは迷う事なく穴へと飛び込み常守朱の救出へと向かった。

 

 

「手を掴んで!」

 

 

勢い良く飛び込み落下している常守朱をキャッチすると同時に地下へと落下。着地の衝撃で溜まっていた埃が宙に舞い視界を塞ぐ。

 

 

「危ないところだったわね。怪我は無い?」

 

「ありがとうございます、、」

 

「監視官、一つ質問があるわ。奴らの犯罪係数は測ることができた。もう彼等に法の裁きを与えても良いのよね?」

 

「はい、、犯罪係数が300を上回っていたのでシュビラシステムは彼等はこの世界に不要と判断しました」

 

「うん。なら早く上に上がって裁きを与えましょう」

 

 

二人が居る場所は薄暗く地下に居ることは分かるのだが。

 

 

「現在地を確認しますね。今いる場所は施設の地下です。きっと集めたゴミを処理する場所」

 

 

次第に暗闇に目が慣れ視界が効くように。辺りを見渡すとこの地下はコンクリートに覆われており壁を登り上に上がる事はできなさそう。

 

 

「集めたゴミを廃棄する場所があるはずです。そこからなら外に出る事が可能だと思います」

 

「ならそこを探しましょう」

 

 

腕時計より展開された地図を頼りに出口に向かい歩いてゆく。そんな時ラグナロクがクスリと笑った。

 

 

「監視官、あなたはタフな人ね」

 

「えっ?どうしてそう思うのですか?」

 

「ついさっき死にかけたばかりなのに気にする事なく犯人を追おうとしている。並大抵の人間にできる行動では無いわ」

 

「犯人を取り締まる事ができるのは私達しかいませんからね。それにこの仕事は私にしかできない仕事ですから」

 

「私に任せるという事は言わないのね。私は監視官の猟犬よ」

 

「あはは、、私その関係ってあまり好きでは無いんです。執行官の方だって人間ですよ?それを犯罪係数だけでそんな風にして、、」

 

「私はシュビラシステムなんて下らないって思っていた。でもね、もし私が居る世界にシュビラシステムがあったら私は、私達はこの手を血で染める事は無かったかもしれない」

 

「一体ラグナロクさんは何をしたのですか?」

 

「混沌とした世界に革命を起こそうとしただけよ。キル姫へ霊装支配を施し玩具とする人類へのね」

 

「なーんてね。戯言だと思っておいて」

 

 

背後を歩く常守朱に冗談っぽく告げるが話を聞く聞いた本人にはとても冗談と捉える事ができる内容では無い。

 

それにラグナロクの高過ぎる犯罪係数の事を考えると冗談とは思えない。ラグナロクの過去の詮索をしたい気持ちを押し堪えながら出口に向かい歩んでゆく。

 

 

そんな時何かが起動するような音が聞こえ前を向くと赤いセンサーが薄暗闇に光っている。それは機械音と共に起動し姿を見せた。

 

 

「これはゴミを廃棄する為のドローン、、、?」

 

 

大きさは四メートル程であろうか。ゴツゴツとした無骨なデザインの機械の右腕にはゴミを粉砕する為のアームが付いており左腕にはゴミを押し込む為の棒が取り付けられている。

 

そして廃棄施設に居る二人を廃棄する為に動き始めた。

 

 

「っ!!」

 

 

それならばこのドローンを排除するしか無いとドミネーターを向けるのだが地下施設である廃棄施設には電波が届かずドミネーターは起動する事ができず。

 

唯一の戦闘手段であるドミネーターが使う事ができない今二人は絶体絶命の危機へ。それでもラグナロクは不敵に笑う。

 

 

「監視官、私に命令を。あのドローンを排除しろと」

 

「分かりました。ラグナロクさん!あのドローンを排除して下さい!」

 

「了解」

 

 

右手に握っていたドミネーターをフォルダーへとしまい右手に持ち替えたのは黄昏剣・コマンド・ユグドラシル。

 

銀鱗に輝く刃紋にラグナロクの瞳が反射した後、無双の一振りが繰り出される。

 

 

たった一振りで鋼鉄で作られたアームを切断し高く飛び上がると頭上より一閃。

 

 

「軟弱ね」

 

 

言葉と共にドローンは左右に分かれ崩れ落ちてゆく。

 

 

「凄い、、これがラグナロクさんの力、、」

 

「これぐらい当然よ。出口に急ぐわよ」

 

 

ニヤけた顔を見られないように先行して歩き辿り着いた出口から地上へと登りようやく日の目を見る事ができた。

 

 

「奴らはまだ施設内に居ます。行きましょう」

 

 

腕時計から発信機の位置を確認するとまだこの施設から反応がある。二人は先ほどの部屋に向かい進んでゆく。

 

 

その頃四人は談笑をしていた。公安局の監視官、執行官を排除し次に何を行うかを決めていた。

 

そのときドアが開き死んだと思われた二人がこの場へと戻った姿を見て四人の表情が強張る。

 

 

「遺言があるのなら聞く前に執行してあげる」

 

 

ラグナロクの冷たい声と共にドミネーターが起動しノンリーサルであるパラライザーへと姿を変える。その隣には同じくパラライザーを構え反射で目を蒼く輝かせる常守朱の姿。

 

 

しばらくの沈黙の後常守朱の合図の後パラライザーより弾丸が放たれ四人は肉塊へと姿を変えた。

 

 

「これで事件解決ですね」

 

「無事に解決できて良かったわ。帰りましょうか」

 

 

窓から刺す夕焼けに照らされながら二人はこの場を後にする事に。

 

 

 

次の日、常守朱が提出した報告書に目を通した禾生局長に呼び出され二人は局長室へと来ていた。

 

 

「シュビラシステムによる犯罪係数の測定ができない無戸籍人か。この件によりシュビラシステムの完璧さが損なわれたと思ったが良くやってくれた」

 

「それとラグナロクといったね。君の働きは常守朱監視官を通して聞いているよ。実に腕の立つ執行官だそうだね」

 

「私は監視官の指示に従っただけよ。優秀な監視官のね」

 

「時にラグナロク。臨時ではなくこのまま公安局の執行官になる気はないかね。刑事課は慢性的な人手不足でね、君の様な優秀な人材を探しているのだよ」

 

「有難い言葉だけど拒否させてもらうわ。私には帰る世界があるし私を待っている仲間が居る」

 

「それは残念だ。君が帰るまでに気が変わる事を熱望しているよ」

 

 

下がれとの言葉を受け二人は局長室を出てゆく。

 

 

「あはは、、スカウトされちゃいましたね」

 

「私には帰る世界がある。でも、監視官が望むのならまた私を呼んで。力になると誓うわ」

 

「頼もしいです。今日でラグナロクさんの業務期間は終わりなので午後から少しお話をしませんか?」

 

「了解」

 

 

午前中に業務を片付け二人は分析室へと来ていた。

 

 

「二人ともお疲れ様。ゆっくりしていきなさい」

 

 

唐之杜に渡されたコーヒーを飲みながら談笑。

 

 

「それで何故あの四人はこの様な事をしたのかしら」

 

「今回の事件はこの世界から認知されなかった事を逆恨みした犯行なんじゃない?この世界でシュビラから認識されないという事は存在を否定されるのと同じだから」

 

「確かに。そう考えるとあの人達もシュビラシステムの被害者なんですよね」

 

「でも無事シュビラに認識されて執行されたんだから満足なんじゃ無い?どう思っているのかは私には分からないけど」

 

「死人に口無しね」

 

「そうゆう事」

 

 

部屋にコーヒーを啜る音と煙草に火を付ける音が。

 

 

「そろそろ私は帰らせて貰うね。いい体験ができたわ」

 

「了解。じゃあユグドラシルとリンクを繋いであげるわ」

 

「ありがとうございましたラグナロクさん」

 

「こちらこそありがとう。監視官、あなたはこの世界は好き?」

 

「好きです。こんな世界ですけど私はこの世界が好きです」

 

「そう。今度私の住む世界にも遊びに来てね。歓迎するわ」

 

「是非!」

 

「ユグドラシルとリンク完了よ。また遊びに来てねラグナロク」

 

「了解。この制服とドミネーターは返却するわ」

 

「あっ、それ差し上げますよ。それにドミネーターがないとラグナロクさんと連絡取れませんし」

 

「大切にさせて貰うわ」

 

「あの二人にもよろしく伝えて下さいね」

 

「分かったわ。また会える時を楽しみにしているね」

 

 

自身を電子に変えラグナロクが転送されていった。

 

 

 

 

………………………………………………………………

 

 

 

 

「おかえりラグナロク」

 

「おかえりなさい」

 

 

気が付けば二人の住むアパートへと転送されていた。

 

 

「ただいま。いい体験ができたわ」

 

「それは良かったよ。朱さん元気だった?」

 

「ええ。彼女は優秀な人ね」

 

「ラグナロクが褒めるなんて珍しいですね」

 

「私だって優秀な人は褒めるわ」

 

 

そう言いながらキル姫をダメにするクッションに深く腰掛けた。

 

 

「今の時間は、、、。夕食の時間になったら起こして」

 

「りょーかい」

 

 

異世界で体験した事を思い出しながらラグナロクはお昼寝を楽しんでゆく。

 

 

 

 

 

 




ここまで目を通してもらいありがとうございました!

PSYCHO-PASS一期から二期の間の物語となってます!アニメを見直したところ弥生執行官は無傷である事に気が付きましたがこのままにさせて貰いました。


感想と書くとすればもう少しキャラの掘り下げと物語に厚みが欲しかったです。

それでも書いていて楽しかったです!また次作もよろしくお願いします!


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