もうすぐ受付時間ですよ
「やばい、ヤバい、ヤバイ!!」
朝から僕は教会に向かって全力で走っていた。
「遅刻だ!寝坊だ!」
昨日あの後にすぐに寝たのだが何故か目覚ましに気づかない程に眠っていてしまった,初任務で遅刻はしたくはない、いそがないと。
走りながら腕時計を確認する,確か受付は10時開始なはず、今は……9時50分、全力なら間に合うはず。
「ティルフィングごめん!荷物をまとめて教会まで来て!のんびりで良いから!」
「了解しました」
ティルフィングにそう言い残し小石を蹴飛ばし小川を飛び越え走る、このペースならギリギリ間に合うであろう。
「あっ」
小さな段差に足をとられ転んでしまった。
イテテっ。もういいや、諦めよう、今日はお魚釣って山菜摘んでのんびりしよう。そうしよう、良いじゃないかこういう日があっても。
仰向けに寝転び直し大空を見上げると大きな鳥が羽ばたいているのが見えた。良いな自由で。
しばらく見ていると鳥が僕の真横に降りたっていた。大きいけど人懐っこい鳥だ。
「マスター、乗ってください」
ティルフィングが鳥の上から手を伸ばしていた。
「ティルフィング!その鳥どうしたの!?」
「良いから乗って下さい」
ティルフィングの手を掴み鳥に跨ると柔らかな羽毛でなかなかの座り心地である。
「しっかり掴まってて下さい、後、鳥では無く竜です」
「はい」
ギュっとティルフィングにしがみつくと風に流された髪が顔をくすぐる、なんで女の子の髪ってこんなに良い匂いなんだろうか。ムクムクしちゃいそう。
「マスター余計な事は考えないでください」
「はい、すいません、まだムクムクしてないので許してください」
そんなこんなで受付に間に合いました。
「ありがとう、ティルフィング行ってくるよ」
受付へと駆け出して行くとなんとか間に合った様だ。まだ残っている任務を僕に教えてくれた。
「どうでしたか?」
教会の前で待っていてくれたティルフィングに告げる。「今日は、教会の周りの草むしりをします」と。
「そうですか、それはいつからですか?」
「11時からです。まだ時間があるから朝御飯食べに行こうか」
「それは任務ですか?」
そう提案すると思わぬ答えを返され困ってしまった。
「ご飯は必要ありません,任務なら付き添いますが」
「じゃあご飯食べるのも任務だからお願いね」
少し強引な提案をしてティルフィングと共に教会にある喫茶店へ行き席へと座っていた。
「とりあえずアイスコーヒーとサンドイッチ、ティルフィングは?」
「私もそれでお願いします」
注文した後に僕と向かい合って座っているティルフィングの顔を見ていた。
「少しくまができてるけどどうしたの?」
「寝ずにマスターの警護をしていましたので、任務には問題ありません」
「それは嬉しいけどちゃんと寝ないとダメだよ?後、それなら起こして欲しかったな」
「善処します」
「ティルフィングは草むしりした事ある?」
「無いです」
そりゃそうだ、草むしりした事あるキル姫なんて数少ないだろう。
「そういえばあの竜はどこから出てきたの?」
「呼びました、キル姫としてそれぐらい当たり前です」
それは知らなかった,今度他のキル姫にも聞いてみるとしよう。
お待たせしましたーっとその声と共に美味しそうな料理が運ばれて来た。
「いただきまーす」
「これ食べたら道具を買いに行こうか」
「草むしりのですか?」
「そうそう、軍手と鎌みたいなやつ」
私はこの剣で薙ぎ払うつもりでしたが…」
そう言って腰に携えている剣の柄を握っていた。それは楽そうだけどそうじゃないと思う。
朝ご飯を食べ終わり少しのんびりしていたらあっという間に任務開始の時間だった。
「そろそろ行こうかティルフィング」
「はい、ご馳走様でした」
とりあえず売店でそれっぽそうな道具を買ってきた。まぁなんとかなるだろう。楽観的な考えの元先程言われた場所に行くと受付の人が立っていた。
「すいませーん、朝受付した者ですけど」
「はい、ではこの城壁に沿って草をむしってください、終わるまで帰れないのでお願いします」
そう受付の人に案内されて行った先には広大な草むらがあった,例えるなら大聖堂一個分だ。この例えはよく分からないと思うけど。とりあえず広いと言う事だ。
「えっ………ティルフィング頑張ろっか…」
「はい」
照り付ける日差しの中ティルフィングとカリカリと草をむしる。それにしても暑い……。それにせっかく奏官になったと言うのになんでこんな事をしているのだろうか?
「ティルフィング、そろそろ休憩しようか」
「私は大丈夫です」
そう言うティルフィングは麦わら帽子を被りチマチマと草をむしっている。服装と髪色と麦わら帽子がミスマッチしている気がするが可愛い。
「じゃあちょっとお茶飲んでくるね、ティルフィングの分も貰ってくるよ」
休憩所に歩いて行く、このペースだと3日は草をむしらないと終わらなさそうだ,なぜ僕達二人にこんな事をやらせるのであろうか?
愚痴を思いながらお茶をいただく,うまい!汗をかいた身体に染み渡る。ティルフィングにも早く届けてあげよう。
「ティルフィングーお茶もらってきたよー?」
お茶を貰って帰ってくると草は全て刈り取られ、岩の上にティルフィングがドヤ顔で座っていた。
「どうやって刈り取ったの?」
「少し本気を出しただけです」
はいっとコップを渡すと美味しそうに麦茶を飲んでいた。
「ぷはぁっ」
「へぇ、結構可愛いところあるじゃん」
「別に、そんな事はありませんよ」
少しだけ恥ずかしそうにコップを口元に運んでゆくティルフィングを見ていた。