※この作品はR-18です。

黒ティルと僕と   作:やす、

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! このSSには暴力シーンやグロテスクな表現が含まれています。



スイハ「バイオハザード」

 

私はティルヘルム王国のある部隊に所属してしている。その部隊の名はチームコマンド。

 

ティルヘルム王国の先鋭部隊であり主な任務は王国内で行われた犯罪の取り締まり及び機密任務の遂行。こう言ってしまえば聞こえは良いが実際は汚れ仕事だ。その為私達は現場では本名では無くコードネームで名を呼び合っている。

 

 

「お疲れ様でしたテュール。ヘル、フリッグ」

 

「お疲れ様オーディン」

 

「お疲れ様〜オーディンちゃん」

 

「お疲れ、様」

 

 

私が所属する部隊、チームコマンドは八名の部隊。それは基本的にチームアルファ、チームベータのニチームに分けられており大規模な任務でない限り八名で任務を行う事は無い。

 

私はチームベータに所属し隊をまとめるのはオーディンと呼ばれるリーダー。

 

本日もティルヘルムに害を為す他国のイミテーションを戦闘を行い無事にティルヘルムへと帰還していた。

 

 

「お疲れ様。今日もみんな無事に帰って来れたね」

 

 

ティルヘルムの中心地、オベロン城にて前述のチーム、アルファと合流し戦果を報告し合う。

 

アルファチームのリーダーであるユグドラシルがチームコマンドをまとめるリーダーだ。

 

 

「きょうもいい断罪びよりであった」

 

「敵対する相手には規則に則り罰を与えなければいけませんからね」

 

「私達の国を守る信念があれば大丈夫ですよ」

 

 

アルファチームにはユグドラシルの他にフォルセティ、トール、スクルドが所属する。

 

この八人がチームコマンドのメンバーである。

 

 

「皆の衆。ご苦労であった。おぉ、姿勢はそのままで良い」

 

「オベロン様、いえ、私達には勿体のないお言葉です」

 

 

オベロン城の主でありティルヘルムの大統領であるオベロンがコマンド部隊の宿舎に顔を出し隊員である私達は姿勢を正しオベロンを迎えリーダーであるユグドラシルが対応を行う。

 

 

「うむ。今日儂が宿舎に出向いたのはチームコマンドにとある任務を頼みたくてな」

 

 

顎に蓄えた髭を撫でながらオベロンが任務を伝えてゆく。このティルヘルムがあるのはロストラグナロク大陸でありこの大陸にはティルヘルム王国の他にハルモニア皇国、ケイオスリオン帝国、トレイセーマ共和国があるのだがこの三カ国は領地を奪い合い血を流し続けている。

 

ティルヘルムは中立の姿勢を貫き仲裁を行うのだが三カ国からしばし攻撃を受ける時がある。その殲滅も私達、コマンドの任務の一つだ。

 

 

そんな四カ国だが唯一として四カ国が共同で管理する土地がある。それがロストラグナロク大陸の中心部に位置する大穴と呼ばれる土地。

 

その名の通り大きな穴なのだが最奥にはどの国も未だ観測できないほどの広さを持つ穴だ。

 

 

「それでオベロン様。私達は大穴で何をすれば良いのかしら」

 

「うむ。ケイオスリオン帝国が大穴にて極秘に新兵器の開発を進めているとの情報が手に入った。そこで君たちチームコマンドを大穴に派遣し新兵器の把握と破壊を頼みたい」

 

 

オベロンが私達の顔を見渡し満足気に頷いた。

 

 

「うむ。作戦は明日の明朝より開始する。準備を怠らない様に」

 

「了解です。それとオベロン様」

 

「うむ。銃火器の使用は許可しよう。何よりも身の安全を第一とし生き残る事を念頭においてくれたまえ」

 

 

去り行くオベロンに向かい敬礼を送りオベロンを見送る。やがてドアが閉まりしばらくしてからため息と共に会話が始まってゆく。

 

 

「また争いが始まるのですね」

 

「仕方ないわよオーディン。こんな時代なんだしさ」

 

「平和とはたたかってかちとらねばならん。でなければわたしたちのような子がまたあらわれてしまう」

 

「そうだよね、、おねーさん達みたいな思いをする子供は居ない方が良いもんね、、」

 

 

私達も以前は平和に暮らしていた。だが戦火に巻き込まれ家族を失い孤児となった私達はティルヘルムに保護され特殊部隊としての教育を受けたのだ。

 

オベロンが何度も繰り返し謳う「争いを止める為には力が必要」との言葉を信じ。

 

 

「装備の確認をしてから眠りましょう。忘れ物があれば任務を遂行する事ができなくなってしまいます」

 

「武器が無くたって愛があればなんとかなるって♪」

 

「そんな事ありませんよ!ヘルもちゃんと装備を確認して下さい!」

 

「まぁまぁ♪ほら、ここには私達しか居ないんだからクレス、って名前で呼んでよ♪」

 

「むぅ、、ちゃんと確認して下さいねクレス」

 

「はーい♪りょーかいだよ♪」

 

「早く争いを止めて大陸全土の復興を目指しましょう。これが私達の掲げる信念です」

 

 

エルキュールの言葉に頷き各自装備を整えてゆく。

 

チームコマンドに与えられている主な装備はM4カービンと呼ばれるアサルトライフルとナイフでありその他の装備は個人の趣味が反映される。この私、スイハは幼き頃狩りにより生計を立てていた両親に教えてもらった弓をサブウェポンとして愛用している。

 

 

「準備が終わったらもう寝よっか。明日に備えないといけないからね」

 

 

ラグナロクの言葉の後準備が整った者から寝床へと入ってゆく。

 

 

「ゆっくり休んでね。消灯するわ」

 

 

真っ暗となった部屋に誰かの寝息が聞こえ寝息は重なりハーモニーとなる。やがて私の寝息もハーモニーの一つとなった。

 

 

 

 

………………………………………………………………

 

 

 

 

翌日の明朝。私達はオベロン城、前へと集っていた。そこで点呼を行いメンバーを確認しオベロンを待つ。

 

 

「明朝よりすまない。これよりケイオスリオン帝国研究所の調査を頼もう」

 

「了解」

 

 

オベロンの言葉にユグドラシルが返事をし私達を見渡す。

 

 

「必ずケイオスリオン帝国の兵器製造を阻止し帰還するわ」

 

「うむ。武運を祈っておる」

 

 

敬礼をするオベロンに敬礼を返し私達は大穴へと向かう。

 

大穴の位置はこのティルヘルムから少し離れた所にある。その為他国の兵と接触する事なく大穴へと向かう事ができた。

 

 

「やっぱりこの穴は大きいね」

 

 

ヘルの言葉に大穴を見下ろすのだが縦に空いた穴は底が見えない程。だが誰一人臆する事なくロープを垂らし穴の底へと降って行く。

 

 

「ユグドラシル。研究所は何処にあるのですか」

 

「この道を真っ直ぐ進めば見えてくるはずよ。それより全員居る?」

 

 

ユグドラシルが見渡しメンバーの安否を確認した後隊は動き出した。

 

 

前方にユグドラシルとオーディン。下方に私とトール。右翼をフォルセティ、ヘル。左翼をスクルド、フリッグで囲い陣形を組みながら進軍しやがて研究所らしき建物へと辿り着いた。

 

 

「………………」

 

 

辿り着いた建物はコンクリート製を思わせる風貌なのだが外壁は苔に覆われ建てられてから長い年月が経ち放置された建物だと思わせる。

 

だが入り口には苔が生えておらず使われている建物だという事を認識させる。

 

 

「アルファ、ベータに分かれて研究所の外部を調べましょう。アルファチームは右から。ベータは左を頼んだわ」

 

「了解」

 

 

ユグドラシルの声の後ニチームに分かれ建物の周りを観察して行く。正面から見ても大きな建物だという事は分かっていたがこうして歩いていると大きさに圧倒される。

 

探索しながら歩いているとはいえ五分以上歩いているのにまだ反対から回るアルファチームと遭遇しないどころか角を曲がってすらいない。

 

 

「テュール、ヘル。やっと角です」

 

 

オーディンに言われM4を構え直し壁へと張り付く。そして視線で合図を取り合うとフリッグがライトを持ち角を照らしそれに合わせ私とヘルが銃口を向ける。

 

 

「オーライだよ」

 

 

ヘルの声が聞こえ進軍を開始する。

 

 

[こちらオーディン。今角を曲がりました。そちらはどうでしょう?]

 

[こちらユグドラシル。私達ももうすぐに角を曲がるわ。そこで落ち合いましょう]

 

 

無線機で連絡を取り合いやがて入り口の真裏でアルファチームと落ち合う。そして互いのチームが来た道を進み入り口まで戻って行く。

 

 

「外部に異常は無しね。でも妙な建物ね」

 

「どうしたのだユグドラシル?」

 

「だって壁に一つも窓が無かったのよ?例え研究所だとしても換気の為の窓ぐらいあっても良いのに」

 

「兵器を製造しているから埃とか湿気を防ぐ為ではないでしょうか?」

 

「そうなのかな?これより内部に潜入するわ。皆、準備は良い?」

 

 

ユグドラシルの声に全員が頷き突入体制となる。研究所のドアにオーディンが手を掛けフリッグとユグドラシルが銃を持ち構える。

 

 

「開けます、、、!」

 

 

オーディンがドアを開けた瞬間に室内をライトで照らしながら二人が突入し室内へと。続き私達も突入するのだが室内には誰もおらずシンっと鎮まり返ったまま。

 

 

「誰も、、いませんね、、」

 

 

外壁と同じくコンクリートで作られた内装にオーディンの声が反響する。

 

 

「油断は禁物だよー。ケイオスリオンの兵士が居るかもしれないしさ」

 

 

フリッグの声に警戒を解く事なく室内を探索して行く。一階はエントランスとなっており二階へと続く階段があり再びニチームに分かれ一階と二階をくまなく捜索してゆく。

 

 

「だーれも居ないや。おーい、一階はどぉー?」

 

 

階段から廊下を隈なく探したのだがやはり人気は無く。一階を捜索するアルファチームにヘルが声をかけたのだが私達と同じで何も見つからず一度階段前で合流をする事に。

 

 

「一階、二階は異常無しね。これより各自部屋を探索に切り替えるわ。異論はある?」

 

 

ユグドラシルの案にトールが意見を。

 

 

「なぜ固まって動かないのですか?安全を考慮するのなら固まるべきだと思います」

 

「私もそう思うのだけど外周を歩いたら分かっていると思うけどこの建物は広いわ。だから安全よりも探索を優先にしたいの。それに各自の能力の高さは分かっているし決して無理な案では無いはずよ」

 

 

確かにユグドラシルが言う通りこの建物は広い。一階は探索してないから分からないが二階には他の部屋へと続くドアが無数にありまとまって部屋を一つずつ見ていれば時間はいくらあっても足りないだろう。

 

 

「分かりました。ユグドラシルの案で進行しましょう。階はどうしますか?」

 

「一階はアルファチームで、二階はベータに任せるわ。もし何かあれば速やかに無線で連絡を取り報告する事。それと無理はせず危険と判断したらエントランスに待機する事。いいね?」

 

 

ユグドラシルの言葉に頷き私達は二階へと上がってゆき各自がドアの前に立った。

 

 

「では武運を祈ってます。それと探索を終えた部屋のドアにはナイフで傷を付けておいて下さいね。何かあればすぐに無線で連絡を」

 

 

オーディンの言葉に顔を見合わせて頷き部屋へと突入を。

 

 

ドアノブを回し半ドアにしM4を構えながらドアを蹴り開け室内へと。

 

 

「誰も居ない、、」

 

 

真っ暗な部屋を隅々までライトで照らし捜索を行うのだが生活に必要な家具はあるのだが肝心の人が居ない。タンスの中、ベッドに至るまで調べるのだが本当に誰も居ない。

 

 

「…」(二階は居住スペースになっているのか?)

 

 

最後に部屋にぐるりと視線を向け確認するのだが人はおらず。諦めて次の部屋へと。

 

 

「っと」

 

 

次の部屋を探索する前に今居た部屋のドアにドアノブの横にナイフで傷を付けておく。そして隣の部屋へと。

 

 

先ほどと同じ様にドアを蹴り開け室内へと入り込みライトで照らすと部屋の中心に蹲る人の姿が見えた。

 

 

「ケイオスリオンの兵か。大人しく手を上げろ」

 

 

捕虜として捉え兵器の場所を吐かせれば任務を手早く終わらせる事ができると思い銃口を向け威嚇をするのだが兵は蹲ったまま。そして耳を澄ませると何かを咀嚼するくちゃくちゃと音が部屋に響いていた。

 

 

「この状態で飯を食うとは肝の据わった奴だ。こっちを向け」

 

 

そう告げるのだが兵は未だ咀嚼をやめず。その姿が癇に障り天井に向かい威嚇射撃を行うのだが咀嚼は止まらない。

 

 

「おい」(精神異常者か、、?)

 

 

疑問を持ちながら近づき後二メートルと言うところまで近づいた時その兵が立ち上がり私へと振り返った。

 

 

(!!!!)

 

 

振り返った兵は口元を真っ赤に汚し肌色は腐った様に白く生者では無いと悟らせる。なのだがこうして立ち私に向かいうめき声を立てながら両手を突き出し歩んで来る。

 

一歩足を踏み出す度に腐った体液が流れ落ち水の足音を立て腐臭が酷く鼻を付く。

 

 

理解を完全に超える光景に銃を持っている事も忘れて恐怖に取り憑かれ立ちすくむ。だがすぐに銃撃を開始する。

 

 

(えっなんで!!?!?)

 

 

打ち出された弾丸は心臓を貫き穴を開けるのだが兵は倒れる様子も無く手を伸ばしながら私へと歩む。あまりの恐怖に20発のマガジンが空になるまで弾を兵に向けて放ち上半身が弾丸により消し飛ばされその兵はようやく床に倒れた。

 

 

(ひっ、、)

 

 

ほぼ下半身だけどなった今でも脚は歩こうと動きやがて痙攣を起こした後動きを止めた。

 

 

「ゔっ、、、!」

 

 

あまりの気持ち悪さに胃から込み上げたものを床に吐き散らかしようやく落ち着きを取り戻した。

 

 

「はぁ、、、っ」

 

 

空になったマガジンを入れ替え部屋の探索を開始する事に。そして私は兵が咀嚼していた物の正体を知り再び嘔吐した。

 

 

兵が咀嚼していた物は人間。兵が蹲っていた場所には体の至る所が食いちぎられた死体が転がっていたのだ。

 

人が人を食う。そんな想像すらしない事が目の前で行われていた事実を知り生理的嫌悪感に苛まれていた。

 

 

(そうだ。みんなに報告しなくちゃ)

 

 

無線機を操作し他の隊員と連絡を取り合おうとするのだが電波が繋がらず雑音が流れるだけで誰一人として応答せず。

 

 

「こんな時にっ!」

 

 

悪態を付き無線機をフォルダーへとしまおうとした時呻き声を立て体中を食い荒らされた人が立ち上がった。

 

 

「!?!?」

 

 

生死を確認した訳では無いが体中を食い荒らされ生きているはずの人が立ち上がり先ほどの兵と同じ様に呻めきながら両手を突き出し私へと向かい歩んで来る。

 

 

想像を超える事態が次々に起こり半狂乱となるのだが冷静を装い向けた銃口から放たれた弾丸は人の頭を貫き頭部に風穴を開けた。

 

 

「ヒグゥ」

 

 

呻き声とも悲鳴とも取れる声を出し人は横たわり痙攣を起こしていた。

 

 

「一体この研究所で何が起きているの、、、」

 

 

痙攣は止み確実に死を迎えた何かを見下ろしながら呟く。そして連絡の取れない仲間の安否が気になり部屋を出てエントランスへと目線を向けるのだが誰一人として隊員はおらず。

 

耳を澄ませば微かに銃声が聞こえ誰かがアレと遭遇し戦闘を行っている事を窺わせる。

 

 

(よし、、っ)

 

 

他の隊員が任務を行っているのなら私も任務を遂行するまで。大きく深呼吸をし先ほどの部屋のドアに大きくバツを書き次の部屋へと入ってゆく。

 

 

(………)

 

 

この部屋にはアレはおらず荒らされた様子も無い。それでも念入りに操作を行い安全を確保し細かく部屋を調べてゆく。

 

 

「これは、、メモ書き?」

 

 

机の上を調べた時に一枚の紙切れを見つけた。そこには走り書きで「あんな化け物がいるだなんてきいてねぇよ!」と記されていた。

 

紙の質感からしてまだ書かれたのは日が浅い。もしかしたら生存者がこの建物に居るのかもしれない。

 

この事を報告しようと無線機を取るのだが電波が入らない事を思い出しフォルダーへとそっとしまった。

 

 

(このメモを書いた主がケイオスリオン兵なら書いた主は何も聞かされずにここに連れて来られたのか?それならこの研究所はケイオスリオンでも極秘に扱われていたと考えるべきか)

 

 

なんて推測をした後部屋を見渡し何も無い事を見届け部屋の外へ出てナイフで傷を付けようとした。

 

 

「!」

 

その時気配を感じ銃口を向けると同じく銃口を向けるヘルの姿が。

 

 

「なーんだ。テュールか」

 

「無事で良かった、、ヘルは化け物に遭遇しましたか?」

 

「うん。あの人みたいな奴でしょ?警告したけど近付いてきたから撃ち殺しちゃったよ♪」

 

(あはは)

 

 

私があれだけ恐怖に苛まれたというのにヘルは無邪気に笑う。そのメンタルの強さを見習いたいところだ。

 

 

「オーディンとフリッグは見ていませんか?」

 

「うん、たまーに銃声が聞こえるから生きてはいると思うけど。だけど戦闘してるから迂闊に近寄れば誤射されるかもしれないから会いには行けないね、、」

 

「そう、ですね。アルファチームの安否も気に掛かります。早急に二階の探索を終わらせ一階へと行きましょう」

 

「りょーかいだよ!じゃ、またあとでね♪」

 

 

まるで親しい友人の部屋に入るかの様にドアを開け入ってゆくヘルを見届けた後先ほどのドアに印を刻み別の部屋へと。

 

 

(ひっ)

 

 

ドアを開けライトで照らした光景はあのモノが二人部屋の中心に居る光景。それだけでも悍ましいのに二人は互いの体を噛み合い共食いをしているのだ。

 

先ほど戦闘を行い慣れたと思っていたのだがあまりの光景に再び胃から物が込み上げその場へと吐き出す。

 

 

大きく咳き込み吐き出していると私の存在に気が付いた二人が両手を突き出し呻き声を立てながら迫る。

 

だが頭部を撃ち抜かれ再び死者へと返ってゆく。

 

 

この部屋にはベッドが二つ置かれておりこの二名はこの部屋を利用していた人なのだろう。目を向けたベッドにはおびただしく血が付着し何があったのかを容易に想像させる。

 

 

(……………)

 

 

酷い腐臭に鼻を曲げられながらも部屋を探索すると机の上に置かれたノートを見つけ目を通してゆく。

 

 

[あぁ、まさか捕虜となってしまうだなんて、、殺さず生かし生き地獄を味わうのか、、]

 

[今日部屋に同居人として一人男が入って来た。出身地を聞くと敵国であるトレイセーマの奴だ。この世に神など居ない。そう考えてしまった私をお許しください]

 

[同居人の奴だが話すとなかなか面白い奴だ。もしかしたら悪いのは民では無く国なのだろうか]

 

[検査と称して注射を打たれてからやけに身体が痒い。一体何を打ちやがったんだ]

 

[奴も同じ注射を打たれた様で腕を掻きむしっている。ボリボリボリボリボリ。かきすぎて腕の皮が破れ血が湧き出ても痒みが治らない]

 

[痒い、美味い、、]

 

 

ノートの後半は血に汚れ文字が見えなくなっていた。このノートに書かれた神という単語から推測するとどちらかの男はハルモニア皇国の兵か。そしてもう一人はトレイセーマの兵。

 

何故トレイセーマの兵はハルモニア兵と同じ部屋に入れられたのか。敵国同士であるのなら争う恐れを考慮し別の部屋にすべきだと思うのだが。

 

 

考えても分からない。部屋を出ようとした際に死体の腕を見ると腐敗した腕は骨が見えてしまいそうな程に抉れているのが見えた。これは共食いの結果なのか掻きむしった跡なのかは分からないが。

 

 

そして気になるのは何を注射されたかという事だ。このノートを読む限り異変が起きたのは注射を打たれてからだ。まさかだとは思うが人をこの様な姿に変える薬物が存在するとでもいうのか。

 

 

(…………)

 

 

しかし事実この様に死体が歩くという事態が起きている以上事実だと認めざるを得ない。もしこれがケイオスリオンが開発している兵器だとすれば合点がゆく。

 

 

「この異常性が悪魔の国と呼ばれる所以か」

 

 

そう呟きながら部屋を後にしドアに傷を付け次の部屋へと向かう。

 

 

(………………)

 

 

他の部屋も見てみたのだが結果は同じでありアレが居るか誰も居ないのか。ついに二階の探索を終えてしまいチームベータは一階へと降りて来ていた。

 

 

「皆さんは何かアレに付いての手掛かりを得る事はできましたか?」

 

 

オーディンの問いにフリッグ、ヘルは首を振るのだが私はノートに書かれていた事を報告していた。

 

 

「なるほど。やはりアレはケイオスリオンの兵器と見て問題なさそうですね。二階は居住スペースの様ですし本題はこの一階にありそうですね、、」

 

 

「アルファのみんなとは連絡取れたー?おねーさん何度も無線を使ったけど繋がらなかったんだー」

 

「ヘルもだよ。オーディンのはさっき使えてたから使えるんじゃない?」

 

「私のもダメでした。外部との連絡を遮断されるのなら分かりますが内部での通信を遮断するだなんて、、」

 

「ケイオスリオンの妨害か。まさか出口も!?」

 

 

玄関へと駆け出しドアノブを回すのだがピクリとも動かず。

 

 

「私達は監視されている、、」

 

 

オーディンの呟きに沈黙がのしかかり各自言葉を失い目線を逸らす。

 

 

「で、でも監視されているのなら一体誰に、、?」

 

「ケイオスリオンだよね、、きっと何処かに監視カメラがあるんだよ、、」

 

「ふざけている、、、っ!まあ良い。生きてここを出れば良いだけの話」

 

「そう、ですね。一階の探索を開始しましょう。立ち止まっていても事は動きません。各自アルファチームと合流を前提に捜査を開始します!無線での連絡が取れない以上連絡手段はありませんが何かあればエントランスにて待機をお願いします!」

 

「りょーかい♪」

 

「了解だよ♪」

 

「了承。行こう」

 

 

ざっと一階を見渡すと二階以上にドアがあるのが見える。それでもアルファチームが探索を行っているので半分は終わっていると思われる。

 

 

一番近くのドアの前に立ち中へと入ってゆく。

 

 

(食堂か、、)

 

 

ドアを開けた先をライトで照らすと多くの長机と椅子が並べられた部屋。テーブルの上には片付けられていない食器が置かれており食堂だと認識させる。

 

耳を澄ませても呻き声は聞こえずアレは居ない。だが油断せず注意深く室内を探索してゆく。

 

 

(………………)

 

 

食器を見ると中に料理が少し残っている。さらによく見るとまだカビは生えておらずつい最近まで誰かが食事を行っていたと思っても良いだろう。

 

たった数日の間に一体この研究所で何があった?ふとそんな事を考えてしまう。

 

 

長机を避けながら歩いてゆくと部屋の奥にカウンターが見え奥にキッチンが見える。何も無いとは思うが念のため調べる為にキッチンへと歩んでゆく。

 

 

(……………)

 

 

カウンターと壁の間を通りキッチンへゆくと多くの料理を一度に作るために多くのコンロが並び大型の冷蔵庫が。この建物に居る人の多さを悟らせる。

 

 

(んっ)

 

 

キッチンを調べている時小さな物音が聞こえた気がした。辺りを伺うのだがキッチンはおろか食堂にも人影すらない。

 

 

[ドンッ]

 

 

(まただ)

 

 

どこから聞こえる物音に耳を澄ませるのだが音の位置は把握できず。首を傾げた瞬間に冷蔵庫のドアが開き中からアレが姿を現した。

 

 

「ひっ!?」

 

 

思わず悲鳴をあげ銃を構える事すら忘れ体を守る為に両手を突き出した。

 

愚策。そう判断し飛び退くと私がいた所にアレが倒れ込み体を動かそうと踠く。

 

 

「…………」

 

 

踠く頭部に向かい弾丸を放つとそれは完全に動きを止めた。

 

 

「はぁ、、、っ、、」

 

 

コレが潜んでいたのが冷凍庫で良かった。冷蔵庫ならあのまま捕まり食われていただろう。外気に触れ溶け出し流れ始めた血を見ながらほっと胸を撫で下ろし高まった精神が落ち着いてから探索を再開する。

 

 

コンロ、冷蔵庫、冷凍庫、カウンター、さらには長机までくまなく調べても目ぼしい物はなく次の部屋へと向かう事に。

 

 

エントランスへと出て歩き次の部屋へと繋がるドアを開ける。

 

 

(トイレか、、)

 

 

次の部屋の床はタイルに覆われライトに男性用の便器が照らされトイレだと見て分かる。問題は個室だ。先ほどのように中にアレが潜んでいる恐れがある以上警戒をしなければならない。

 

 

(…………)

 

 

三つある個室は奥に開く。それならばと銃を構えながら蹴り開けてゆく。

 

 

一つ目、異常無し。

 

二つ目、異常無し。

 

三つ目のドアを蹴飛ばした時何かに当たりドアが半開きとなり止まった。

 

 

「生存者か!」

 

 

叫ぶと聞き慣れた声が返ってきた。

 

 

「そのこえはテュールか。ぶじだったのだな!」

 

「フォルセティ、、居るのなら早く返事をするのだ」

 

「いやぁ、、すまない。少しつかれてしまってな、ここでやすんでいたのだ」

 

「ならいいが、、。他の隊員は無事なのか」

 

「あたしもはぐれてしまってな。はあくはしていないんだ。もうすこしやすんだら行く」

 

「エントランスまで肩をかそうか?エントランスなら皆が通る」

 

「いや、それにはおよばん。さきにいけ」

 

「了承。何かあれば言って欲しい」

 

「テュールはたのもしいな。あたしはうれしいぞ」

 

 

結局フォルセティの姿を見る事なく私はトイレを後にし次の部屋へと。

 

 

ドアを開けた先は廊下となっており歩くたび通路に足音を響かせながら歩む。そして最奥にあるドアへと辿り着いた。

 

ドアを開け中へと入ると二階の部屋よりも少し豪華な部屋。この研究所の上層部の連中の部屋なのだろうか?疑問を持ちながら部屋をライトで照らし探索を行ってゆくと机の上に置かれた日記を見つけ目を通す事に。

 

 

[×月×日。ついに死者を甦らせる実験を完成させた。まさか死んだ人間の細胞を活性化させるウイルスが居るだなんて。これを使えばきっと、、、]

 

[×月×日。なんて事!蘇った人間は人と呼べる物では無い。あの姿、人を襲う行動はまさにゾンビそのものだ。私は恐ろしい実験を完成させてしまった]

 

[×月×日。ゾンビに襲われた人はウイルスに感染しゾンビとして蘇る。このままではこの研究所はゾンビに埋め尽くされてしまう、、]

 

[×月×日。あのウイルスを軍事利用したいとのオファーが届いた。自暴破棄の私はその案を受け更なる研究を重ねる事に]

 

[×月×日。ウイルスに改善を加える事により知能を残したままゾンビ化させる事に成功をした。更に動物の遺伝子と組み合わせる事により死を恐れる事の無い生物兵器が産まれた。命令を遂行する程の知能と人間では敵うことのない筋力を備えた生物兵器を異族と呼ぶ事に]

 

[馬鹿な!ここまで来て研究を打ち切るだと!?今良い所なのだ!]

 

 

日記はここで途絶えていた。

 

 

(アレはゾンビと呼ばれる者なのか。それに生物兵器の存在も気にかかる)

 

 

日記を読み納得をしていた。ゾンビに喰われればゾンビとして蘇る。だから死んだと思っていた人がゾンビとして蘇ったのか。

 

確かにこのウイルスを兵器として使えば戦場で死んだ者がゾンビとして蘇り敵を襲うだろう。異常を脱した事態に直面してすれば敵も混乱し攻め入る隙を生む。

 

 

(関心はするが褒められた実験では無いな)

 

 

最後に部屋を探索し部屋を出る事に。

 

 

廊下を歩いていると前からライトの光が。壁に身を預け叫ぶ。

 

 

「誰だ」

 

「スクルドです!その声はテュールですね。無事で良かったです、、」

 

「スクルド、、」

 

 

二人目のアルファチームの隊員と出会い安堵のため息を溢し再会を喜び合う。

 

 

「無事で何よりだ。他の隊員は無事なのか?」

 

「私も探しているのですが見当たらず、、ベータの隊員はどうですか?」

 

「二階の探索を終え今は一階を探索している。そちらは?」

 

「一階はある程度は探索したと思うのですが未だ兵器らしき物は見つけられていません」

 

「スクルド。あの化け物を見たか?アレがケイオスリオンが開発にした兵器の様だ」

 

 

私の言葉に驚いた顔をしたがすぐに納得する様に頷いていた。

 

 

「死者を再び甦らせるなどなんて悍ましい、、ケイオスリオンには必ず罪を償わせなければいけませんね」

 

 

声色に確かな怒りを感じた。

 

 

「あぁ。しかし今は生きてここから出る事を考えなければならない」

 

「そうですね、、。分かりました、お互い無事にここを出ましょう」

 

 

スクルドと拳をぶつけ合いエントランスへ。そして別々のドアを開け部屋へと入ってゆく。

 

 

(…………)

 

 

次に入った部屋は多くの機械が並ぶ部屋。機械室なのだろう。電力が供給されていないのかどの機械も動きを止め沈黙している。

 

ライトで照らしながら歩いてゆくと天井付近にブレーカーを見つけ台に登りブレーカーをオンにしてゆく。

 

パチッパチッとスイッチを入れると部屋に電気が灯った。これなら探索も容易になるだろう。

 

そしてこの部屋にある機械もモーター音を立て駆動を始めていた。

 

 

(なんの機械か分からないから触るのはよそう、、)

 

 

けたたましい音を立てる機械を見て部屋を後にしエントランスに入った時つんざく様な悲鳴が聞こえ声の位置を探る。

 

 

「トールっ!!」

 

 

私の視界に入ったのは銃を構えたまま後ずさるトールの姿。そして向けられた銃口の先には呻き声を立てながら歩むフォルセティの姿が。

 

 

「あ。あぁ、、」

 

 

戦友の変わり果てた姿に声にならない言葉が溢れて溢れる。その声はフォルセティの呻き声とトールの悲鳴にかき消された。

 

 

「っ!!」

 

 

一瞬の思考の末、私はM4カービンをしまいコンバットボウを取り出し構え矢を引き絞る。

 

 

「伏せろトールっ!!」

 

 

私の顔を涙で濡れた顔で見た後トールはしゃがんだ。その寸前を矢が走りフォルセティの頭部を射抜いた。

 

 

「グゥ」

 

 

短く悲鳴を上げた後フォルセティは床に倒れ痙攣を起こしやがて動かなくなった。

 

 

「どうして、。どうしてグラーシーザをっ!!っぅぅぅう、、、、、」

 

 

グラーシーザの死を見届けたトールが泣き叫び私に向かい震えた銃口を向ける。私はトールの行動を唇を噛み締めたまま見つめやがて顔を背けた。

 

 

「仕方の無い事だ、、」

 

 

トールの横を通り抜けグラーシーザの前に跪き深く頭を下げる。うつ伏せに倒れた事が勇逸の救い。

 

しばらくしトールも跪き頭を下げた。

 

 

「どうか安らかに」

 

 

エントランスに死後の安寧を祈る声が響いた。

 

 

 

しばらくし落ち着きを取り戻したトールと情報を交換し合い今までの経過を話す。

 

 

「私は、、地下へと続く階段を見つけて報告に戻ってきたのです。そうしたらドアが開いてグラーシーザが、、」

 

「それもケイオスリオンの科学者が作ったウイルスのせい。トール、必ずここを生きて脱出しケイオスリオンに報復を、、、!」

 

「そう、ですね。グラーシーザを殺しただけでなくあんな姿に、、。許す事はできません」

 

 

ふらりとトールが立ち上がりドアの方へと歩んでゆく。

 

 

「何処に行くつもりだ」

 

「見つけた地下へ行きます。そこに行けば確かな手掛かりが掴めるはずです!」

 

「待て!一人では危険だ!、、私も行く」

 

「いえ、大丈夫ですよ。テュールは他のみんなと合流してから地下へと来てください」

 

 

私に待てのハンドサインを向けるとトールはドアの向こうへと歩んで行った。

 

 

(…………)

 

 

止めようにもトールの心境を察するとどうしても腕を掴む事ができず伸ばされた手の先でドアが閉まった。

 

 

それから私は一階を探索し隊員と合流しエントランスへと招集していた。

 

 

「フォルセティ、、」

 

 

隊員一人一人が手を合わせグラーシーザの安寧を祈りトールが進んで行ったドアを開け地下施設へと向かってゆく。

 

 

「うわ、、凄い湿気だね、、」

 

 

ドアを開け廊下を進み階段を降りてゆくと体中にまとわりつく様な湿気に包まれ不快感に苛まれる。それでも進軍する足は止まらず長い階段を降りきり地下へと降り立った。

 

 

(…………)

 

 

そして無機質なコンクリートで作られた室内へ。幸いにもあの時上げたブレーカーのおかげで電力が供給されているのか天井にかけられた照明が通路を照らしている。

 

 

「この先は今まで以上に危険が伴うはずだわ。単独行動を止めアルファ、ベータに分かれ探索を行いましょう」

 

 

ユグドラシルの提案に異論は無くニチームに分かれ地下エリアの探索を行う事に。

 

 

「合図を決めておきませんか?部屋に入る時は一度ノック、出る時は二度ノック。この合図があれば万が一の同士討ちを防ぐ事ができます」

 

「流石オーディンだね。ドアに傷を付けていたのもオーディンの案?」

 

「はい。誰かが一度入った部屋に入る事は二度手間になってしまいますから」

 

「分かったわ、私達もそうするね。他に何かある?」

 

 

ユグドラシルが見渡すが他に案は無く頷き合い作戦へと移ってゆく。

 

 

「では行きましょうか」

 

 

オーディンの後に続き廊下を歩き見つけた第一のドアへ一度ノックした後中へと入ってゆく。

 

 

「これは、、、」

 

「ひどい、、、」

 

 

ドアを抜けた先には淡い水色に光る筒状の水槽が。その中には何本ものチューブに繋がれた成人男性らしき者が苦悶の表情を浮かべたまま展示されていた。ただ、その男性の体は大きく肥大化しているのだが。所狭しと置かれている実験材料を避けながら真下へと来ると水槽の下にはモニターらしきものがあり幾つものグラフを忙しなく写し続けている。

 

 

「実験の一部なのでしょう。こうした実験を繰り返しあのウイルスを作り出した、、」

 

「ねぇ、中の人は生きているのかな?」

 

「どうでしょうか、、?でもグラフが動いているという事はまだ生きているのかも知れません」

 

「じゃあ後で撃って楽にしてあげようよ。こんなんになってまで生きているのは可哀想だよ、、」

 

「ヘルちゃんは優しいね。おねーさんもヘルちゃんの案に賛成だよ」

 

「私も、、そうしたいのですが水槽の中にある者が何者か分からない以上下手に触れば何が起こるか検討も付きません」

 

「そうだよね、、」

 

「それよりもこの部屋を探索しましょう。これだけの実験道具があるのなら実験の結果をまとめた物があるかもしれません」

 

 

オーディンの言葉により部屋の探索を開始する。机に置かれた得体の知れない道具に触れない様に物色をしてゆくとフリッグが声を上げた。

 

 

「このノートに色々書いてあるよー!」

 

 

各自捜索を止めフリッグの元へ。そしてノートを覗き込んでゆく。

 

 

[現在軍事利用可能な異族は四体。飛行種、騎種、鎧種。そしてミノタウルス。実戦の時が楽しみだ]

 

[なんという事だ。一体の異族が拘束を破り研究員に襲いかかるなんて。このおかげで部下を五名程失ってしまったが戦闘能力に問題がない事が分かっただけでも良しとしよう]

 

[異族の戦闘能力が知りたい。しかし異族を相手にできる兵は数少ないだろう]

 

[上層部に研究の報告を行ったらある部隊をここに配属してくれる様だ。あの部隊なら異族の戦闘能力を測るのに都合が良いだろう]

 

 

ノートを読み終わった後四人に沈黙が訪れた。

 

 

「この部隊って、、まさか!」

 

 

オーディンの叫びをかき消す様にガラスが割れる音が響く。一斉にその方を見ると水槽に展示されていた男性がこちらを見ている。

 

やがて体を繋ぐチューブを引きちぎると咆哮をあげこちらへと迫る。

 

 

「戦闘を開始します!各自距離を取り銃撃を!」

 

 

瞬時に動き出し異族に向かい銃撃を開始する。

 

 

「頭部だ!頭部を狙え!」

 

 

四方から弾丸が頭部へと降り注ぐのだが異族は怯む様子も無く机を蹴散らしながら私へと迫る。

 

 

「っ!」

 

 

迫る異族に向かい後退しながら銃撃を続けていると弾切れを起こし慌てながら新しいマガジンへと手を伸ばす。

 

 

「テュール!危ない!」

 

 

ヘルの言葉に顔を上げると異族が伸ばした腕が私の首を掴み大きく開けた口元へと引き寄せてゆく。

 

 

(食われてたまるか!)

 

 

大きく開けられた異族の口に右手を突っ込み噛みつきを阻止し腰に携えたナイフを引き抜くと左目に向かい突き刺した。

 

 

「〜〜〜〜〜〜!!!!」

 

 

左目から走る痛みに私を突き飛ばし目を押さえ悶える。その隙に追撃を加えようとしたのだがフリッグの呼ぶ声が。

 

 

「テュールちゃんこっちだよ!」

 

 

目線を向けると三人の姿が。銃口を向けながら三人と合流。

 

 

「きっとあの異族は鎧種ですね、、。銃弾を弾く程の外皮を持つだなんて、、」

 

「ねぇみんな。少しだけ異族の動きを止められるかな?」

 

「何か策があるのか?」

 

「うん。M4が効かないのならこれで撃ち抜いてみるよ!」

 

 

フリッグが見せたのはバレット M82。大口径の弾丸を放つ事ができるライフル銃。

 

 

「狙撃用だからここだとちょっと取り回しが悪いけど、、だからおねーさんが狙える様にして欲しいんだ」

 

「それなら三人の力を合わせて机で押し込みましょう!」

 

 

オーディンの提案した作戦が実行へと移される。長机の左右中を持ち鎧種へと突撃してゆく。

 

 

「いっくよー!みんな!」

 

 

ヘルの合図と共に鎧種へと。長机を持ち踏ん張るのだが力に押し返されてしまう。

 

 

「フリッグ!早く!」

 

 

私の叫びと同時に火薬の破裂音が響き鎧種の頭部が消し飛んでいた。

 

 

「おねーさん達の大勝利、だね♪」

 

 

銃口から上がる煙を吹き消しフリッグが笑う。

 

 

「一時はどうなるかと思いましたが、、。テュール、噛まれた手は大丈夫でしたか?」

 

「私の右手は義手だ。問題は無い」

 

 

そうは言っても動きに違和感を感じ目を向けると鋼でできている義手に歯形が付けられていた。もしこれが生身の手なら噛みちぎられていたであろう。

 

 

「あんな化け物が後三体居るんだね、、」

 

「早くトールちゃんを見付けないと、、」

 

「そうですね、、しかし隊を分けて動くのは危険です。アルファチームと合流すべきだと思います」

 

「オーディンの案に賛成だ。トールの事は心配だがこちらの安全も考慮しなければならない」

 

「二人はどうですか?そうは言っても単独行動は私は許しませんが」

 

 

オーディンの言葉に四人で纏まり動きアルファチームと合流すると決断を出し部屋を出て次の部屋へと向かう。

 

 

もちろん合図のノックは欠かさずに。

 

 

「書斎みたいですね」

 

 

次に訪れた部屋はドアを開けるなり本棚に所狭しと並べられた本が目に入った。

 

 

「あれ、、!」

 

 

部屋の中心にある机にうつ伏せに座る人の姿が。長い茶髪に白衣の姿が見える。

 

 

「女性の様ですね」

 

 

銃を構えながら近づいてゆくのだがゾンビ特有の腐敗臭はせず。それでも警戒は怠らずに。

 

 

「返事をして下さい」

 

 

オーディンが銃口で突くのだが返事は無く。髪を掴み顔を上げさせると抵抗も無く顔が上がった。

 

 

「死んでいますね、、目立った外傷は見当たりません。自殺でしょうか?」

 

「オーディンこれ」

 

 

ヘルが見つけたのは机の上に置かれた錠剤が入った小瓶。ラベルを見ると劇物の様だ。

 

 

「服毒自殺でしょうか?遺書があるかもしれません。探しましょう」

 

 

遺体を部屋の中心に置き机の引き出しを開けてゆくとメモが一枚見つかり目を通してゆく。

 

 

[私の実験がこの様な悲劇を生むだなんて、、もう私には罪を償う方法はこれしかありません。この遺書をもしコマンド部隊の方が読んでくれたのならオベロンに一矢報いて欲しい。××年×月×日。ヴァリン]

 

 

「………………」

 

 

遺書を読み誰しもが言葉を失い先ほどの実験室で見たノートと内容を思い返していた。

 

 

「そうだ、あのノートにもある部隊と書かれていましたね」

 

「チームコマンドは機密部隊だよね、、他国の人がヘル達の事を知っているはずがないし、、」

 

「なら、この研究所はケイオスリオンじゃ無くて、、」

 

「ティルヘルムの研究所、、、!」

 

 

そう理解した瞬間に頭が沸騰しそうな程の怒りに燃える。私達がここに配属された理由に、中立国を装いながらこうして秘密裏に生物兵器を製造し戦争を加速させようとしている。

 

思えば違和感を感じる部分はいくらでもあった。だがこうして繋がってしまい事実を確証した以上私達はオベロンを許す事はできない。

 

 

「早くアルファチームと合流してこの事実を伝えましょう!」

 

 

手に持つメモを丁寧に折りたたみポーチへとしまいオーディンが立ち上がった。それに続き私達も立ち上がり次の部屋へと行こうとドアを開けた。

 

 

「銃声!」

 

 

ドアを開けた瞬間から響き渡る銃声が聞こえ交戦中だと悟る。だが何処から聞こえるのかは定かでは無い。

 

迂闊に飛び出せば流れ弾を受ける恐れがあり躊躇していると銃声に足音が混ざり聞こえてきた。

 

 

「あそこだよー!」

 

 

フリッグが指差す方を見ていると廊下の角から人影が現れた。そこには走りながら振り返り銃撃を加えるアルファチームの姿。

 

 

「ユグドラシル!こっちです!」

 

 

オーディンの声に気が付きチームに指示を出し私達がいる部屋へと退却。アルファチームが部屋に飛び込むと同時にドアを閉めバリケードとして本棚でドアを塞いだ。

 

 

「ありがとう。助かったよ」

 

「助かりました」

 

 

切らした息を整えた後何と交戦していたのか聞くと四足で移動する異形の異族との返答が。

 

 

「もしかしたら騎種と呼ばれている異族かもしれませんね。そうだユグドラシル!ユグドラシル達にこれを」

 

 

そう言ってポーチからメモを取り出し見せるとみるみるユグドラシルとスクルドの顔が強張ってゆく。

 

 

「嘘だ、、こんなの嘘に決まってます!だってオベロン様は私達を救ってくれたんですよ!?」

 

「落ち着いてスクルド。そうこの博士が残したんだよね」

 

 

ユグドラシルの視線は床に安置されているヴァリン博士へと向きすぐに視線を戻した。

 

 

「確かにそう思える事は沢山あったけど、、私はまだオベロン様を信じているよ。スクルドの言う通り孤児だった私達を救ってくれたしオベロン様が居なかったら私はもうこの世にはいないからさ」

 

「真意は生きてここを出てオベロン様に直接聞きましょう」

 

 

ため息を溢した時ドアを強く叩く音が。その強さはドアが軋みバリケードとして置いてある本棚が揺れ動く程。

 

やがて本棚が動きドアが少し開いた。

 

 

「〜〜〜!!!〜〜〜!!!!」

 

 

獣の様な叫び声を上げながらドアをこじ開けようと喚く。その姿にチームに緊張が走る。

 

 

「私に任せて。これでドアごと撃ち抜いてあげるわ」

 

 

ユグドラシルがフォルダーから取り出したのは大型拳銃であるコルトパイソン。ドアの前に立ち両足を開き射撃の姿勢をとる。

 

 

「穿つ!」

 

 

轟音と共に放たれた弾丸の発射威力にユグドラシルの両手が上に跳ね上がる。そして放たれた弾丸は本棚を貫きドアを破り騎種へと襲いかかる。

 

 

ドアの隙間から響き渡る悲鳴とバタンバタンと暴れ狂う音が聞こえやがて静まり返った。

 

 

「………………」

 

 

ドアの隙間から覗くと胸部に風穴を開けられ般若の形相を浮かべ地に伏す異形の姿が。

 

 

「死んでいると思います、、」

 

 

バリケードを退かしドアを開けソレを見て全員が戦慄した。倒れている異族は上半身は人で下半身は馬。想像を絶する異族が倒れていたのだ。

 

 

「この姿が騎種と呼ばれていた所以でしょうね、、」

 

 

あまりに悍ましい光景に戸惑うが再び探索を開始して行く。

 

 

次に訪れた部屋は先程と同じく実験室の様。しかし水槽は設置されてはおらずそれだけで安堵の息を吐く。

 

 

「調べたらウイルスに付いて何か分かるかも知れないわ。身の安全を優先に探索を行いましょう」

 

 

ユグドラシルの言葉の後室内の探索を開始して行く。机の上にはシャーレやビーカー、試験管などが綺麗に並べられており何かの実験の準備をしていたと思わせる。

 

それでもあまり触りたくは無いので触れない様に。

 

 

「これを見てください!」

 

 

声の方に視線を向けると手を挙げるスクルドの姿。そこに隊員達が集まって行く。

 

 

「このノートにウイルスに付いてまとめられています」

 

 

机の上に広げられたノートを読んでゆく。

 

 

[この人をゾンビ化される事ができるウイルスはラグナ大陸奥地、冥花繁殖帯に咲く花から見つけられた。その地方に住む人が死後蘇る伝承を聞き半信半疑であったのだが。試しに犬の死体を冥花の群生地帯に放置した所蘇り我々は確信した]

 

[蘇生した犬だが凶暴性が増し目に付く生き物を喰らうという特性が付属されている事が分かった。ドッグフードには目もくれず動物、及び人間に襲いかかる姿から強い肉食性になるのだろう]

 

[なんという事だ。蘇生した犬を調べた所細胞核が未知のウイルスにより変化しているという事が分かった。この未知のウイルスを蘇生させる力からカミノツカイと名を付けた]

 

[このカミノツカイは感染する。犬に襲われた動物や人が死んでいたにも関わらず蘇生したのだ。そして犬も同じ様に強い肉食性を示す]

 

[このカミノツカイに感染した者は筋組織が異常に発達している事が分かった。その為強い空腹に苛まれ食料を求め続けるのだろう。一人の感染した検体を檻に放置した所一週間程で行動を停止した。これは体内のエネルギーを使い果たしたという事だろう」

 

 

ノートはここで途切れていた。

 

 

「なるほどね。ゾンビになるという事はこのカミノツカイに感染したという事なのね」

 

「ウイルスであるのならワクチンさえ作れば抗体ができそうですけどね」

 

「でも身体中を食い荒らされたら死んじゃうよ?」

 

「おねーさん体を食べられたらそのまま死んじゃいそうだよ、、」

 

「とりあえず後少しこの部屋を調べて次の部屋に行こっか。トールの事も気にかかるし」

 

 

もう一度部屋を探索するのだが目立ったものは無く次の部屋へ。

 

 

「地下の部屋はここで最後みたいだね。飛行種かミノタウルスが居るかも知れないから気を抜かずに」

 

 

ユグドラシルが私達を見た後ドアを蹴り開ける。その瞬間に私達は室内へと突入して行く。

 

 

入った先には大きな空間が広がり実験道具も無ければ家具もなくただだだっ広い空間。

 

 

「運動場なのかな?」

 

 

ヘルがそう思うほどにこの空間は広い。しかし何処に視線を向けても何も無い。

 

それでも警戒をしながら室内を進んでゆく。その時一瞬照明が瞬いた気がした。

 

 

「〜〜〜〜〜っ!!!」

 

「スクルド!!」

 

 

悲痛な叫び声と共にスクルドの身体が宙へと浮いた。それは大翼を背に付けた異族の仕業だった。

 

 

「っ!!」

 

 

天井まで舞い上がったスクルドを私達はただ見ている事しかできなかった。抱かれているスクルドが居る限り銃撃を行う事はできず。

 

 

「助け、、」

 

 

やがて血の雨が降り無惨に食い散らかされたスクルドがぐしゃりと落ちてきた。

 

 

あまりに無惨な光景だが顔を背ける暇すら無く私達は迫る飛行種へと銃口を向けてゆく。

 

 

「奴を殺す!絶対にだっ!!」

 

 

スクルドの仇を取るために五つの銃口から怒涛の射撃が行われるのだが飛行種は天井を舞い銃撃を躱す。

 

そして嘲笑うかの如く同じ場所を転回する。

 

 

「銃撃をやめて!」

 

 

ユグドラシルの言葉に銃撃が止まり視線はユグドラシルへ。

 

 

「無闇に撃っても弾を消費するだけ。ちゃんと飛行種の動きを捉えないと」

 

「しかし!」

 

「分かってるよ。だからこそ冷静に対処するの。相手の策に飲まれれば勝ち目なんて見えないよ」

 

「ユグドラシルの言う通りです。相手を惹きつけて確実に撃ち抜きましょう!」

 

 

ユグドラシルの案により昂っていた隊は冷静さを取り戻していた。流石ユグドラシル。

 

 

「それで一体どうするの?」

 

「まずは相手の事を良く観察しそして行動パターンを見極めるの」

 

 

ユグドラシルの言葉に宙を舞う飛行種へと目線を向ける。

 

猛禽類を思わせる大翼に白い女性を思わせる体型。そして腕には鋭い爪が生え揃う。

 

 

「そう言う事かー!相手は近付かないと攻撃できないって事だね」

 

「そう。奴は飛び道具を持たない。だから攻撃を仕掛ける時必ず接近するわ。その時を待つのよ」

 

 

先程は隙を突かれたが警戒している以上飛行種の接近は許す事は無い。

 

五つの銃口は再び飛行種へと向く。

 

しかし万全の体制をとるのだがそれを崩す事態が起きてしまった。それはスクルドのゾンビ化である。

 

飛行種に食われた事によりウイルスに感染したスクルドはゾンビとなり私達に向かう。最悪の光景に全員の銃がスクルドへと向けられた。

 

 

その隙を待っていたかの様に飛行種は宙を舞いヘルを掴み上空へと舞い上がった。

 

 

「ヘルっ!」

 

「みんなー!来世で待ってるからね!絶対またあおーね!」

 

 

ヘルの叫びの後、ピンっと金属が跳ねる音がした。

 

 

「伏せて下さいっ!!」

 

 

ヘルが何をしたか悟ったオーディンが叫ぶと同時に天井で爆発が起こり衝撃が地上へと迫る。

 

ヘルは持っていた手榴弾を使い飛行種共々爆散した。

 

やがて煙が晴れると粉々になってしまった肉片が辺りに散りばめられ火薬と血が混ざった臭いが部屋中に漂う。

 

 

誰もが言葉を失う光景の中ゾンビと化したスクルドの呻き声が響くが一発の銃声の後部屋は静寂を取り戻していた。

 

 

長い沈黙の後ユグドラシルが口を開いた。

 

 

「各自弾薬の確認を。補填はスクルドの弾を使うわ」

 

「ふざけるな!お前に人の心は無いのか!」

 

 

淡々と告げるユグドラシルが許せず叫びユグドラシルの首元を掴む。そして私は見た。涙が溢れない様に何度も瞬きをするユグドラシルの顔を。

 

 

「……すまない」

 

「大丈夫だよ。私も冷静すぎたね。もう少し落ち着こっか」

 

 

首元を掴む力が抜けるとパタンとユグドラシルはその場に座り込んだ。

 

もう私は何も言えず天を仰ぐ。

 

 

しばらくして各自が装備の確認を行い報告をしていた。弾薬は合計240発。コンバットボウの矢は五本。コルトバイソンの弾は五つ。バレット M82の弾は十。

 

 

「オーディンのサブウェポンは?」

 

「私はこれを持っています」

 

 

そう言って見せてくれたのはレミントンM870。ポンプアクション式のショットガンだ。

 

 

「至近戦闘を想定して持ってきたのです。弾薬は八発です」

 

 

スクルドの持っていた弾薬を含めての数。スクルドのサブウェポンは医療道具だったのだが血に濡れ使える物では無かったのでそのままに。

 

 

「行こうか」

 

 

ユグドラシルの言葉と共に歩き広場の先にあるドアを開け奥地へと向かって行く。

 

 

最後に私達が辿り着いた部屋は一面を壁に覆われた闘技場の様。そして中心には檻に捕えられた異形の者の姿が。

 

 

牛を思わせる顔に目は紅く光り凶暴性を窺わせる。そして左右の手は二本ずつ生え計四本の腕を持つ。

 

明らかに今までの異族を超える嫌悪感を放つ異族。

 

 

「良くぞここまで辿り着いた。流石我がチームコマンド」

 

 

異族に注意を向けていると何処かからか聞き慣れた声が響く。聞こえる声を頼りに目を向けていくと部屋の二階部にオベロンの姿が。

 

 

「ふむ。生き残ったのは四名か。まぁ上出来だ」

 

「オベロン!貴様ぁぁ!!」

 

 

銃口を向け叫ぶのだがオベロンは涼しい顔で蓄えた髭を触りやがて笑い声を上げた。

 

 

「まぁ待ちたまえ。今ミノタウルスを解放しようでは無いか」

 

 

オベロンの合図と共に檻がワイヤーに吊られゆっくりと上昇してゆくのだが檻の上昇がもどかしいのか四本の腕で檻を掴むと咆哮を上げワイヤーを引きちぎり檻を放り投げた。

 

 

「全員戦闘開始!必ずあいつを倒しオベロンの野望を打ち砕く!」

 

 

ユグドラシルの言葉と共に弾幕が張られ薬莢が飛び散る音と共に弾丸が放たれる。

 

それを受けてもミノタウルスは四本の腕を振り上げながらこちらへと迫る。

 

 

「フリッグは後方で狙撃の準備!前衛は私達が!」

 

 

ユグドラシルが叫び陣形が組み直される。後方に下がったフリッグを守るために再び弾幕を張る。

 

 

「っ!」

 

 

弾切れを起こし空になったマガジンを外し新しいマガジンをセットしようとした時ミノタウルスが私の持つM4を掴んだ。

 

取られてたまるかと全力で抵抗するのだが呆気なく私の手からM4が奪い取られ二本の腕で掴むと針金を曲げるかの如く銃身を折り曲げ後方へと投げ捨てた。

 

 

(ひっ)

 

 

あり得ない力に悲鳴を漏らし後ずさるのだが私を捕えようと腕が伸ばされた。

 

 

「テュール!!」

 

 

視界の端に金髪が踊るのが見えた。それは私の真横に立つとレミントンM870から散弾を放った。

 

 

一度放ち薬莢を排出し続け様に二発散弾を放つとミノタウルスの顔面の半分が消し飛び脳髄を露出させる。そうなっているのにも関わらずミノタウルスは変わらない様子で行動を再開する。

 

 

「二人共退いてー!!」

 

 

間延びした声が聞こえ左右に跳ぶと空気を押し除けながら弾丸が飛びミノタウルスの右肩を吹き飛ばした。

 

 

「〜〜〜〜〜っ!!!!」

 

 

右肩にある二本の腕を吹き飛ばされ悲鳴の様な咆哮をあげのたうち回る。

 

 

「これで終わりっ!」

 

 

その隙にユグドラシルがコルトパイソンを構え立つ。そして撃鉄が弾丸を叩き弾丸が放たれた。

 

 

放たれた弾丸は頭部へと向かい飛ぶ。だが当たる寸前で身を捩り躱された。

 

しかし左肩を貫き大口径の弾丸を浴びた左肩は吹き飛び左腕一本を残した。

 

 

「〜〜〜〜〜〜っ!!!!!」

 

 

計三本の腕を欠損させられ体のバランスを崩したミノタウルスはそれでも咆哮をあげ残る腕を振り回し戦う意志を見せる。

 

 

「後少し!だけど油断しないで!」

 

 

立ち上がる度によろけ倒れそれでも立ち上がるミノタウルスへと最後の弾幕が張られありったけの弾丸が放たれる。

 

やがて全身を撃ち抜かれたミノタウルスが地へと身を横たわらせた。

 

 

「勝った、、、」

 

 

身を横たわらせピクリとと動かなくなったミノタウルスを見て誰かが呟いた。

 

 

「ふふふふふ。これで勝ったと思うなよ」

 

 

しかしオベロンは不敵な笑みを浮かべ倒れるミノタウルスへと視線を向けている。

 

やがて変化が起きた。動かなくなっていたミノタウルスが突如起き上がり耳を塞いでしまう程の咆哮を上げた。

 

 

「死へと追いやられたミノタウルスは死を乗り越えるべく本来の力を発揮する。ここからがリミッターの外れたミノタウルス本来の力だ」

 

 

以前は右手、右足のみが黒色だったのだが全身が黒く染まり邪悪に両目が紅く輝く。そして欠損していた筈の腕が新たに生え完全に元の姿へと。

 

 

「………………」

 

 

誰しもが異常な光景に言葉を失い唖然とミノタウルスを見た。先程の弾幕でM4の弾は無くなり残るはサブウェポンとナイフのみ。

 

 

「何を諦めているの!?勝てる、私達なら勝てるよ!」

 

 

M4を投げ捨てコルトパイソンを構えるユグドラシルに鼓舞され各自武器を構えミノタウルスへと向ける。

 

 

そんな時ドアが開き誰かが入ってきた。

 

 

「遅くなってしまいました!ってあの化け物はなんですか!?」

 

「トール!無事だったのね!」

 

「でも私が来たからには大丈夫ですよ!これで、、、終わりです!」

 

 

トールの叫び声と共に何かが私達の間を飛んでゆきミノタウルスへと着弾し着弾と同時に爆炎を巻き上げミノタウルスを焼き尽くした。

 

 

「………………」

 

 

なんだろう。釈然としない。

 

 

「トール。今まで何処に?」

 

「ずっとこの地下施設で証拠を探していたのですけど何も見つからなくて、、そしたら銃声が聞こえて急いで来たんです!」

 

 

ドヤ顔で告げるトールに乾いた笑いが起きるのだが憤怒するオベロンの声が聞こえ全員の視線がオベロンへと向けられる。

 

 

「ぬぅぅぅぅ!!小癪な小娘どもがぁ!」

 

 

手すりを叩き怒りを露わにするオベロンへと向かいコンバットボウへ矢を重ね弦を引く。

 

 

「小言はあの世で気が済むまで言っていろ」

 

 

放たれた矢は額を撃ち抜きオベロンは手すりの向こうへと倒れていった。

 

 

 

「任務完了だね。帰ろっか」

 

 

ユグドラシルの言葉に返事をして私達は研究所を後にした。

 

 

 

研究所を脱出しティルヘルムへと戻った私達は三人の墓を作り埋葬を行っていた。ウイルスに汚染された遺体は持ち帰る事はできなかったが遺留品を埋め死後の安寧を祈る。

 

 

「これからどうしよっか?もうチームコマンドは解散するとして」

 

「私達に帰る場所はありませんから一緒に住みませんか?」

 

「おねーさんもさんせー♪一人になるよりみんなと居た方が良いもんね♪」

 

「それなら住む場所を決めないといけませんね。皆さんは何処が良いですか?」

 

「…………」

 

 

あれだけの出来事があったばかりなのに皆は立ち直りが早い。私はまだ引きずっているというのに。

 

 

「テュール、、いや、スイハは何処が良いかな?」

 

「私は、、、」

 

 

戸惑いながらも皆が手に持っている雑誌へと目を通して行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スイハ「バイオハザード2」へと続く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ここまで目を通してもらいありがとうございました!

初代バイオをモチーフにコマンド部隊が挑むバイオハザードでした。バイオの世界観にファンからの世界観を混ぜ込みつらつらと書き重ねましたが楽しんでもらえたなら幸いです。
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