はい,私はユグドラシル大陸の美味しい物巡りの旅がしてみたいです,一人で
そ,そうなんだ
目覚めると僕は宿の布団に居た。それにしても頭が痛い、二日酔いだろう。最悪の目覚めだ、そして昨日の記憶が曖昧である。
確かバーを出てからティルフィングの知り合いの店に行きテュルソスに絡まれアダマスにちょん切られそうになったのをティルフィングが止めていたのは覚えている。ちょん切るって何を切るつもりだったのだろうか。
そろそろ起きようかな。そう思い気怠い身体を起こし部屋を見渡すと隣にティルフィングが寝ていた。そして床にはティルフィングの服が散乱していた。
「…………ん?」
なぜだ?昨日の夜はロビーで別れたはず,良く思い出せないが僕はティルフィングとナニかしてしまったのだろうか?
童貞卒業が記憶に無いものなのは嫌だ。変な心配をしている僕と違い穏やかな寝顔だった。
………………こんな可愛い子が横で寝ているんだ、それに一回しているのなら二回も変わらないであろう、段々と欲望が湧いてくる。
欲望に押され少し布団をめくって覗くと重力に逆らう乳房、美しくくびれた腰、柔らかそうな肌,すらりとした脚が。ゴクリと生唾を飲み、ゆっくりと手を伸ばした。
「………………………はぁ、、、」
乳房を揉みそうになった手でティルフィングの頭を撫で目を瞑る。そんな勇気なんて無いのは自分が一番分かっている、それにティルフィングも寝込みを襲われたくは無いだろう。
「おやすみ」
深呼吸をして心を落ち着かせ眠りの世界に引き込まれる前に(良かったのに)と聞こえた気がした,きっと気のせいだ。
……………………………………………………
「おはようございますマスター」
「んっおはよー」
寝ていた所をティルフィングに起され僕は目を覚ましていた。
「もうお昼過ぎですよ」
「はーい、、」
意識を覚醒させティルフィングを見てみると当たり前なのだが服は着ていた。
「起こしに来てくれたの?」
「はい、いつまで経っても起きてこないので」
「ありがとね、二日酔いはしてない?」
「大丈夫ですよ」
一緒に寝ていたのは幻だったのか?それとも夢だったのか?とりあえず朝立ちを隠しながら起き上がり身体を大きく伸ばしていた。
「ご飯でも食べに行こうか」
「はい」
服を着替え宿を出て町へと繰り出し適当なご飯屋さんに行く事に。朝昼兼用のご飯である。
「ご飯食べたらティルフィングの服を買いに行こうよ。昨日服が欲しいって言ってたからさ」
ご飯を食べながらそんな事を言うと困った顔をされてしまった。
「えっ、何でそんな困った様な顔をするの?」
「マスターに気を遣わせてしまった気がしてしまいまして、、」
「気にすんなって。たまにはさ」
諦めずに口説くと諦めた様な顔をしてくれた。
「じゃあ決定ね、ご飯食べたら服屋に行こうよ」
「分かりました」
そんなこんなでご飯を食べてから近くにあった服屋さんへ。
「好きなの選びなよ,僕には服を選ぶようなセンスは無いからさ」
「では遠慮無く選ばせてもらいます,このワンピースとハイカットとこのネックレスとイヤリングもこの指輪も可愛い,部屋着も欲しいしパジャマも」
年相応の笑顔で服を選ぶティルフィング、何歳なのかは知らないけど。
「ゆっくり選んでなよ、ここで待ってるからさ」
そう言って店内に置かれているソファーに腰掛けた。
「はい,マスター♪」
服と人混みに紛れてゆくティルフィングを見届け店内を見渡しているのだがどれも同じような服なのに何か違うのだろうか?僕には分からない。しばらく待っているとティルフィングが帰ってきた。
「マスターお待たせしました」
「oh…」
カートを引いて現れたティルフィング。そのカートの上にはこれでもかって程に積まれた服の山ができている。ここまで選ぶとは計算外だ。
「少し選び過ぎてしまったでしょうか?」
「大丈夫,ノープロブレム、心配ない」
今更これは買い過ぎと言えるはずもなく震えながらレジへとカートを押してゆきお会計をしてもらっていた。
「240,000ゼニーになります,袋にお入れしますか?」
「お願いします」
震える手で財布を開けて中を覗き数えるとなんとか足りた。こういうのは心臓に良くない。沢山の袋を抱えて店を出る事に。
「ありがとうございました」と笑顔のティルフィング。やはり朝に乳ぐらい揉んでおくべきであった。
「マスター?どうしました?」
「いや,なんでもない」
町で買い物とご飯を済ませ宿へと帰って行く。途中にテュルソスにお酒のお誘いを受けたが丁重に断っておいた。
明日は仕事だしね,それにティルフィングも試着とかしたいかも知れないし。
重くなった荷物に対し軽くなった財布、だが,ティルフィングの満面の笑みが見れたのならプライスレス,買えるものはなんちゃらカードで。
「じゃあ明日の朝にロビーでね」
「はい,マスター」
「また明日ね」
そう言って部屋に入ろうとした時にティルフィングに呼ばれ振り返っていた。
「ありがとうございました♪」
天使の様な笑顔のティルフィング、その笑顔だけで使った金額の事なんて忘れられた。
「いつも頑張ってくれてるお礼だよ」
くるりとティルフィングに背を向け部屋へと入ってゆく。こんな緩み切った顔を見られる訳にはいかない。
ガチャりとドアを開けそのままベットに寝転ぶ、明日はどんな事が待っているのだろうか?
良い事があるかも知れない,悪い事があるかも知れない,まぁ良いか,風呂行こ,風呂。
因みにここの宿にはお風呂が三つある,男湯女湯と混浴の露天風呂だ。だが、混浴だなんて下心を持った男しか居ないから実質男湯なのだ。
てな訳で混浴の露天風呂に行こう。けして下心があるわけでもワンチャンスを狙っているわけでも無い。僕は景色を眺めながらお風呂に入りたいだけなのだ。
着替えとお風呂セットを持っていざ行かん。
ほんの少しの期待を込めて廊下を歩く,露天風呂はここか?
ガラガラガラガラー
まだ時間が早いからか荷物も置かれていない,貸切である。身体を流し湯船に浸かる。
あーーーー
少し熱いぐらいだが芯まで温まりそうだ,自然とため息みたいなのが漏れる。
誰も居ないんだ,ひと泳ぎしてみようかな?
ガラガラガラガラー
泳ごうと思った時に誰か来たみたいだ。残念だがやめておこう。湯気で姿は見えないけどどうせ男だろう。
「あっマスター来てたんですね」
「おぶっっ!」
タオルで隠すわけでも無く平然と現れたティルフィング,湯船に髪をつけない様にお団子に纏めた髪型が凄くそそる,ご馳走様です。
「お隣,失礼します」
そう言って僕の隣に座るティルフィング。
「ティルフィングさん?ここ混浴ですよ?」
「はい、何か問題でもありましたか?」
少し困った顔をされた。問題は無いのだが問題があるのだ,伝わらないと思うけど。
「知らない人だったらどうしてたの?」
「斬りつけてました」
「えっ?」
「もちろん冗談ですよ?」
笑えない,キル姫ジョークというのもだろうか?
「私,マスターと出会えて本当に嬉しいんです、前にいた部隊ではこんな事一度も無かったから」
ティルフィングが語り始めた、それを静かに聞く事に。
「そんなに酷いマスターの下に居たの?」
「私が居た7人の部隊,ブラックキラーズって聞いた事ありませんか?」
「授業で聞いた事があるよ、粛正を専門とする7人のキル姫達でしょ?」
「はい,私はそこに所属していました、悪魔の血を取り込まされ大罪を与えられ強化された私達は毎日が戦いと破壊の日々でした,今でもあの時の記憶が脳裏に焼き付いています」
俯くティルフィング。
「なんでそんな事話してくれたの?」
「マスターには知って貰いたかったんです,私が過去に何をしていたのかを,言わないのはマスターに嘘をついてる様な気がして……」
「過去に何をしてても今は僕のキル姫だよ?そんな事聞いたって嫌いになんてならないし,それでも過去の事が気になるのなら一緒に教会に行って祈りを捧げよう,それでもダメなら次から良い事をすればいいんじゃないかな?」
ぽんぽんとティルフィングの頭を撫でてあげる。
「マスター………」
たらり
「マスター鼻から何か垂れてますよ?」
「え?」
鼻を触ると手に血が付いていた。鼻血?湯船に垂れないように立ち上がると足がもつれた。
バッシャーーーン
「マスター!大丈夫ですか!?マスター!」
のぼせたらしい、心配しているティルフィングに返事をする事は出来ず意識を失った。