おっティルフィング弓使えるんじゃん
竜に跨り弓を構える姿はとても美しかった
って夢を見たんだ
はぁ、
昨日温泉でのぼせて倒れたはずなのに目を覚ますと布団の上だった。
何時か確かめようと身体を起こそうとするも身体が重し身動きもとれないのぼせた後遺症だろうか?
横を見るとティルフィングの姿が。そして僕を抱き枕にして寝ていた。
寝ているんだしこれぐらい許されるだろうと起こさないようにゆっくりとティルフィングを抱きしめるとパジャマ越しに伝わる体温,柔らかな寝息,ほのかに香る髪。
朝からご馳走様です。
この時間がずっと続けばいいのにと思っていると目覚ましが鳴り響く。現実は残酷である。
「ティルフィング,朝だよ」
頭を撫でて起こしてあげる。だけど返事はなかった。
「ティルフィング?」
「んっマスターおはよございます」
「おはよ,ティルフィング」
寝惚け眼のティルフィング、これはこれでなかなか可愛い。
「はっ!」
その声と共に俊敏な動きで布団から飛び出しその場に直立不動なティルフィング。冷めていく体温が悲しい。
「ありがと,ティルフィング、心配してくれたんだね」
「はい,心配で側に居なきゃって、そしたら気づいたらマスターの隣で寝てしまいました」
「うん、ありがとね」
起き上がりティルフィングの頭を撫でていた。
「そんな,当然の事をしただけですよ」
嬉しそうなティルフィングを見ているとなぜか実家の猫を思い出した。
「そろそろ準備をして行こっか」
「はい」
部屋に戻るティルフィング,とりあえず着替えて荷物をまとめて…その前にこの朝立ちをなんとかしようかな。
……………………………………………………………
身支度を整え宿のロビーで合流し教会への道を二人で歩いて行く。
「今日の任務はなんだろね?」
「さぁ?どんな任務でも早く終わらせて帰りましょう」
「そうだね」
「今日帰ったら買ってもらった服を着るので見てくださいね」
「それは楽しみだよ、たくさん買ってたもんね」
早く終わらせて早く帰る,これが仕事の鉄則。楽しみが待っているなら余計にである。
教会に着いたらまず喫茶店へ行き腹ごしらえと朝のコーヒー。
「すいませーん,いつもの二つ」
「あいよー」
いつのまにか[いつもの]で通じる程になってしまった。サンドイッチをかじりコーヒーを飲む。
僕はブラック,ティルフィングはミルクと砂糖マシマシである。
自分はブラックなくせにコーヒーは違うみたいだ,なんねて。
今日はティルフィングが目を合わせようとしない。
「どうしたの?」
「いえ,朝の事を思い出すと少し恥ずかしくて…」
顔を紅めるティルフィング,恥ずかしがるタイミングが謎である,以前裸で寝ていたのは幻か夢だったのだろう。
「いつでも抱き枕にしていいよ」
「ほんとですか?」
「そんなウソはつかないよ,ティルフィングの温もりは心地いいからね」
「ではまたお願いします♪」
チラリと時計を見るとそろそろ受付の時間だ。
「ちょっと聞いてくるから待ってて」
「はい,マスター」
受付を済ませて任務を聞く、ふむ。
「ただいま」
「お帰りなさい,どうでしたか?」
「人外域ワスレナにある古いお城に異族の目撃情報があってそれの調査をしてきてくれってさ。調査っていう名の討伐かな?」
「長旅になりそうですね」
「大体一週間ぐらいかな?まぁのんびり行こうよ」
「了解です」
「とりあえずルートはサフランを抜けて休憩,クレナイで情報収集と休憩それから城を見に行こう,もし異族と戦闘になっても全部切り払っちゃってね」
「分かりました,任せて下さいね」
ティルフィングと教会から借りた地図を見ながらルートを考えていた。
「それなら私の竜に乗って行きましょう,飛んでいけば1日でクレナイに行けますよ」
「おっいいね,そしたら余った時間は休みにしてゴロゴロしよう」
「はい」
情報が無くてもティルフィングの戦闘力ならなんとかなるだろう。とりあえず教会の倉庫に行き備品を貰いに行きそれを教会の広場へと運び出していた。足りないと困るから少し多めに持ってゆこうか。
荷物の確認も終わり教会の前に竜を呼んでもらう事に。
「ティルフィング,お願いね」
「はい」
ピーーーーーーーー
ティルフィングの指笛が響くと遠くから羽の音が聞こえた、しかし来たのは子供の竜であった。
「ギャーーーっギャーー」
それを不思議に見ているとティルフィングと何やら会話をしている様子。
「はい,分かりました。この薬草を飲ませてあげて下さい」
「ギャーーー」
ティルフィングが渡した薬草を咥えて飛び去って行った。
「なんだったの?」
「いつも私が乗る竜が体調を崩しているみたいで代わりに使いの小竜が来てくれたみたいです,薬草を渡したのですぐに良くなると思いますけど……」
「ふむ」
竜も体調崩すんだ、ってか竜と会話できるのか。
「じゃあ教会で馬車を借りてのんびり行こうか」
「はい、申し訳ありません」
受付に頼み馬車を借りてきて広場で荷物を積み込み教会を出る事に。大荷物だが足りないより余る方がいいだろう、次にここに帰ってくるのは一週間後ぐらいかな?
手綱を握り馬を操る。パカパカと蹄の音と爽やかな天気が心地いい。
「いつも雑用みたいな任務ばっかりだったから少し気合を入れようか」
「そうですねマスター」
と,いつでも退屈なのでティルフィングとおしゃべり。
「異族って海から現れるんだっけ?」
「そう言われていますがどうなんでしょうか?」
「ティルフィングは海に行ったことはあるの?」
「一度だけならあります」
「へぇ、海に何しに行ってきたの?」
「前の部隊の休暇に他のブラックキラーズとどれだけ異族を狩れるか競ってました,私は2万3千ぐらいでしたけど他の姫は4〜5万は狩っていましたよ」
…………まさか異族に同情する事があるなんて,そんな事してて休暇になるのだろうか?
「もしかして海って異族にとって守りたいものでもあるのかな?」
「そうかもしれませんね,意思疎通は出来ないので分かりませんが」
「実は政府もそれに絡んでたりして」
「それは今の政府なら無いと思いますよ?」
昔はそんな事があった様な言い方だが気にしないでおこう。気づけば馬車はサフランの半ばに差し掛かった,そろそろ馬を休めてあげよう。
木陰に馬車を停めしばし休む事に。
「はーい,どおどお」
ティルフィングが馬を撫で水を与えてくれた。やはり美女は何をしてても絵になるのだ。
その間に地図と睨めっこ,このまま真っ直ぐ行けばサフランとクレナイを繋ぐ関所がある,関所を抜けるか抜けないかで特産物が変わるのだ,どういうことかって?関所次第で宿のご飯が大きく変わってしまうのだ,せっかくこんな事まで来たんだ,どうせなら美味しい物が食べたい。
安定のサフラン牛か野生味溢れるクレナイ豚か,あー悩む。
「こら,くすぐったい」
ティルフィングは馬になつかれた様だ。
「ティルフィングは豚と牛どっちがいい?」
「私はこの子達が良いです」
馬を撫でながら穏やかな顔のティルフィング,夕飯の話って言いづらくなってしまった。
それからしばらく進んで行くと道に倒れている人を見つけた。
「行き倒れですかね?」
「どうなんだろ?様子を見てくるね」
「いえ、私が見に行きます」
そう言うと馬の背から飛び降り倒れている人の元へと歩いてゆく。
「あの、大丈夫ですか?」
「うがぁ、シユウは腹ペコだぁ、、」
「マスターお腹を空かせたシユウです、どうしますか?」
「うーん、ご飯あげよっか。連れてきてよ」
「はい」
シユウを馬車の荷台に乗せて食料を分けてあげる事に。
「はい、たくさん食べてね」
そう言うと返事をする事なく手を伸ばし食べ物を口へと放り込んでいた。その姿はまるで吸い込む様に。
「シユウってこんなに食べるんだね」
「大食漢ですからね」
「ティルフィングもたくさん食べるの?」
「お酒なら浴びる程飲めますよ?」
「あぁ、うん」
そんな話をしている間にもその手と口を動かし続け僕達の食料の三日分
を食べた後にようやくその手を止めた。
「ふぅ、、お前らいい奴だな!気に入ったぞ!」
満面の笑みでそう言っていた。その笑顔が眩しい。
「シユウは何をしていたのですか?」
「シユウはお使いの途中だったんだ!だけどお腹が空いてあそこで倒れていたんだ!」
「ふむ。そのお使いは大丈夫なの?」
「うが?あ!シユウは行くぞ!お礼は今度するからな!」
そう言ってシユウは去って行った。
「嵐みたいだったね」
「そうですね、それよりこれはどうしますか?」
荷台をみると食い散らかされた跡が。それを見てため息を吐いた後片付けをして再び馬車を進めるのであった。