そんな感じで引いてもらったお布団の上でゴロゴロとしていた時だった。むくりとティルフィングが起き上がった。
「どうしたの?」
「…………」
そう聞いても返事はなく少し薄暗い部屋を見渡し僕に視線を向けた。
「…………」
そして寝転がっている僕の方へとゆっくりと這い寄りお布団の上に覆いかぶさった。
「あ、あの、ティルさん?」
「マスター、私したくなってきちゃいました」
その言葉でただでさえ動揺していた僕に更なる動揺がプラスされた。だが、冷静になれ、ティルフィングはきっとトイレがしたいのだろう。
「トイレなら入り口の近くだよ?」
「むぅ」
そう言うと顔を膨れさせ浴衣の帯を解き始めた。
「待って!物事には順序というものがあってだね!」
「私は強欲です、欲しいと思った物は必ず手に入れなければ気が済まないのですよ」
そう怪しげに目を光らせ僕を見下ろしていた。そんな時。
[キル姫が暴走したぞぉぉぉぉぉ!!!!]
そう叫び声が聞こえ僕の上に居たティルフィングが素早く立ち上がり剣を手に取った。
「マスターいきましょう!」
「はいよ!」
二人共浴衣のまま部屋を飛び出し町の広場へと駆けてゆく。
「これはひどい、、。」
その光景は無残な物だった。建物が破壊され瓦礫となり燃えている家も見える。その炎に照らされて何かを振り回すキル姫が一人。キル姫が暴走するとは聞いていたけどこれほどまでとは。
「私が抑え込みます、その隙に住民の避難をお願いします」
「分かったよ、気をつけてね」
ティルフィングに促され二手に分かれようとした時に一人の女の子に気が付いた。
「危ないから下がってて」
「あのキル姫は私のキル姫なの、、お願い!殺さないで!」
そう泣きながら言われティルフィングと顔を見合わせた。
「暴走したキル姫は処分される運命です。あなたも奏官なら分かっていますよね?」
「私は奏官じゃないから知らない。お願い!バルムンクを助けて!」
ギュッとティルフィングの手を握りそう訴えていた。困った顔のティルフィングが僕に助けを求めるように目を向けていた。
「ティルフィング、とりあえず拘束できるかな?」
「はぁ、分かりました。ただ、状況次第では諦めて貰いますからね」
そう言うと女の子の手を振り払いバルムンクの元へと駆けて行った。
「…………」
「君はこの町の人?もしそうなら避難出来そうな場所を教えて!」
「向こうに川があるからそこなら、、。」
「じゃあ手伝ってよ!大丈夫、ティルフィングが何とかしてくれるからさ」
「うん、こっちだよ!」
その子の案内の元住民達を呼び集めその河原へと集めていた。
「後はお願いね!」
そう言い残しティルフィングの元へ向かおうとしたのだが流石に丸腰だと心許ないので水を汲んだバケツを持ち戦いの場所へと向かってゆく。
「…………」
そしてその戦いの光景に目を奪われていた。目を紅く光らせ鬼のごとく乱暴に振り回される剣を紙一重で躱しまるで踊るように、舞うように戦うティルフィング。
「ティルフィングーーーっ!!」
そう叫んだのが間違いだった。僕の声を聞き紅目で僕をギロリと睨みティルフィングの攻撃を掻い潜り僕の方へと走ってきた。
「マスターっ!!」
ティルフィングが追いかけるが一足早くバルムンクは僕の元へ辿り着き手に持った剣を振り上げた。
「うぉぉぉぉっ!?」
その瞬間に身を守るためにバケツでガードしようとしたのだがその水がバルムンクの身体にかかった。
「ぐガッ!?」
そう叫びその場に倒れ込みやがて動かなくなった。
「大丈夫そう………?」
「はい、気を失っているだけみたいですが念の為拘束しておきます」
そう言って浴衣の帯を解き手足をぐるぐる巻きにしていた。
「良かった、、」
「マスター、とりあえず正座して下さい」
一息付く間もなく僕はティルフィングにお説教をされていた。
「私が何とかすると言いましたよね?何故避難場所から動いたのですか」
「ティルフィングが心配だった「言い訳は聞きません」
「はい」
しばらくお説教は続き僕の足が限界を迎えた時にやっと解放された。