ある日の休日、紫音は日課の鍛錬後の瞑想を行っていた。しんと静まり返った部屋の中、目を閉じて深く静かに思いをめぐらせる。海中深くに身体が沈んでいくような感覚。この穏やかな時間が紫音は好きだった。しかし、その静寂を破るように通信の音が鳴り響く。静かに目を開け通信に出ると少し慌てた様子の浩二の声が聞こえてた。
「シオ姉、エニグマの機械兵器が出現した!出現場所の座標を転送するけど出れる!?」
「もちろん出れるに決まっているわ、レクシアハート、現場に急行する」
そう言って通信を一旦切り、ふぅ、と一息吐くと紫音は立ち上がり鍛錬用の衣服から着替えるために自室へと向かう。
「シャワーぐらいは浴びたかったけど、仕方ないわね…」
鍛錬後ということもあり、紫音の身体からはほんのりと汗の匂いが漂っていた。シャワーを浴びれないことを不満そうに呟くと、手早く私服へと着替え、猛スピードで家を飛び出した。
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紫音が現場に到着すると、そこにはサソリのような形をした機械兵器が大量にいた。辺りは逃げ惑う人々で騒然とし、逃げ遅れてしまったのか機械兵器の近くには数名の倒れている犠牲者がおり、紫音は歯噛みする。
「くっ…これ以上やらせはしない!着装!」
紫音がそう叫ぶと、手に持った変身デバイスから体を包み込むように蒼い光の粒子が展開し、着ていた衣服が掻き消え、鍛えられたスレンダーボディが露わになる。
代わりに裸身を包むのは蒼いタイトなボディスーツだ。極薄の生地で出来たそれは僅かな隙間もなく肌に密着し、瑞々しい肢体をぴっちりとコーティングしていく。抜群のスタイルを誇る肢体はいっそうシェイプアップされ、程よい大きさの美乳や躍動感溢れる太ももはさらに肉感を強調していく。光沢感溢れる艶めかしいボディスーツに身を包み、全裸以上に強調された完璧なボディラインは誰もが見惚れるほどの艶めかしさに輝いていた。
「くっ…ふぅ…」
紫音は身体を締め上げられるフィット感に、僅かだが甘い声を漏らしてしまう。陥没した乳首や局部の形がくっきり浮き出るほどに密着したスーツ越しに、わずかに紅潮した肌具合が透けて見える。肌を直接コーティングするような極薄生地の上から、恥部を隠すように、そしてしなやかな四肢を包み込むように装甲が展開される。両腕には二の腕まで包む軽装甲が施されたロンググラブが装着され。指先の一本一本までをしっかりとコーティングする。両足にも太ももまでを包む同様のヒールブーツが装着された。
防御力よりも機動性を重視したボディスーツは要所のみを守る設計で、そのデザインはひどく際どい。スーツに締め上げられた肢体は魅力的なボディラインをより扇情的に映しだし、紫音の形の良い美乳や美尻をセクシーに露出してしまっていた。そのボディスーツの上から乳首や局部、そして四肢への装甲をまとっただけの軽装姿は、凛々しくもフェティッシュな色香に満ちていた。エネルギーの奔流にたなびく青みがかった黒髪は、透き通った空色に染まりヘッドアーマーが展開される。目元を隠すようにバイザーが装着されるとレクシアハート軽装形態への変身が完了した。
「すぅ…ふっ!」
短く呼気し、愛用の刀を手に持ち意識を集中させる。スーツを伝播する微弱な電流の刺激が、緊張した身体をほぐしていく。
ウィスタリスの設計によるこのボディスーツは、フォトンクォーツの中にあるをエネルギーを全身に伝達させ、装着者の肉体能力を数百倍にも強化する。軽装形態でも常人を遥かに超える身体能力を発揮するようにできており、エニグマの兵器にも対抗できる力を手に入れることができる。
「レクシアハート、敵機械兵器の排除を開始する!」
戦闘準備を完了させたところでエニグマの機械兵器がレクシアハートに気づき一斉にこちらの方を向く。
「おや、ようやく変身ヒロインの登場ですか。待ちくたびれましたよ。しかもあの「刃鬼」とは私は運がいい。」
(喋った…!?)
こちらの品定めをするように見つめていた機械兵器の一体から男性の声が聞こえてくる。紫音は機械兵器が喋ったことに驚きながらも相手が発した言葉に疑問を抱いていた。
「待ちくたびれた、と言ったの?つまり目的は私たちだったということ?」
「えぇ、そうです。あなたたち変身ヒロインが来るまでの暇つぶしにそこら辺にいた人間相手に機械兵器の性能を試していたところです」
さも当然と言った感じの軽い口調で機械兵器の声の主はそう言う。人間を殺すことに罪悪感なども何も感じておらず、本当にただの暇つぶしといったようなその口調に、紫音の中でふつふつと静かに怒りが沸き上がる。
「暇つぶしで人を…?そうやって、お前たちは…また人を無闇に殺戮する…!私は絶対にお前たちを許さない!」
その言葉と共に紫音は地を蹴り、目にも留まらぬ速度で機械兵器に突進していく。そのままの勢いで刀を振るうと、いともたやすく敵を一刀両断にする。紫音が持つ刀は高周波発生機が取り付けられており、その刀身は高周波によって原子間結合を強固にしその強度が高められている。逆に、高周波エネルギーを帯びた刀身に触れた物体は原子間結合力が弱められるため、通常の刃物を遥かに越える切断能力を持っているのである。強化された刀身はエニグマの兵器も難なくと斬り裂くことができ、敵の強力な攻撃をも防ぐ強度を持っている。
「やはりやりますねぇ、我らの兵器をこうも簡単に倒してしまうとは…ですが、数はまだまだいますよ」
斬り捨てたものとは別の機械兵器から声が聞こえてくる。その声を合図とするように機械兵器たちはレクシアハートを引き裂くために一斉に迫り、その鉤爪を振り下ろす。
「安心しなさい、何体かかってこようが全部斬り捨ててあげるわ」
振り下ろされた鉤爪が、少女の身体を引き裂く―――そう見えた瞬間には、すでに紫音の姿はそこにはなかった。蒼銀のヒールブーツで地面を蹴り、華麗なバックステップを踏むレクシアハート。風を孕んで空色の髪がたなびき、形の良い美乳が柔らかに踊る。見とれるほどに美しい動作で舞いながら、紫音は僅か数ミリの差で攻撃を回避する。
華麗な動きで攻撃を回避するレクシアハートだったが、機械兵器はその体からは考えられないような俊敏な動きで休みなく鉤爪や尻尾で連撃を繰り出してくる。それを紫音はすべて触れるか触れないかのギリギリのタイミングで回避して見せた。ボディスーツによって強化された肉体能力もさることながら、卓越した戦闘センスと刹那の判断力がなせる神業だった。
「っふ!」
僅かの無駄もない最小限の回避行動から、反撃の一閃を放つ。その攻撃は機械兵器の動力部を斬り裂いていく。バイザーの奥に隠された鋭い瞳は僅かな攻撃のチャンスも見逃さず、その瞬間を完全に見切っていた。
「そこっ!」
唸りを上げて振り下ろされる鉤爪を寸前でかわし、ギュッと地面を踏みしめる蒼銀の剣士、溜めこんだ力をそのまま解放し、機械兵器の胴体部に飛び込み斬り捨てる。的確な紫音の攻撃に機械兵器は一体、また一体と確実に数を減らしていった。
「これで…最後っ!」
残る一体の攻撃を頭上に飛んでかわし、重力によって落ちてくる勢いをそのままに刀を振り下ろす。機械兵器が両断され、地面に着地すると紫音は残心の構えをとり、周囲を警戒する。圧倒。ウィスタリスの中でもトップクラスの変身ヒロインであるレクシアハート。その戦闘能力はまさに圧倒的と言ってもよいほどだった。
周囲に新たな敵は見当たらない。バイザーに表示されているレーダーにも敵性存在の表示はない。敵が全滅したことを確認すると、紫音はゆっくりと構えを解いていく。
「こちらレクシアハート、出現した敵機械兵器を排除完―――」
刀をスッと掻き消し、任務の完了を通信で報告しようとしたところ、それを遮るように通信の先で浩二の緊迫した声が響く。
「レクシアハート、まだだっ!」
その声と同時にバイザー上のレーダーに警告音と共に敵性存在が表示される。すぐに座標を確かめるが、その位置は―――自分の座標とほぼ同じ、真後ろだった。
「くっ、うぁ!?」
確認した瞬間にその場を飛び退こうとしたが、既に手遅れだった。新たに出現した機械兵器は、紫音の四肢に拘束リングをはめて空中でX字に拘束していく。
(しまった…!こいつらどこから…周囲に反応はなかったはず…)
周囲の警戒を怠ったつもりはなかった。自分の目で確認し、バイザーの探知機能でも確かめた。四肢を引っ張られる痛みに顔をしかめながら考える。その答えは機械兵器からの声が教えてくれた。
「どうやら君たちの技術ではこのステルス機能は探知できなかったみたいだねぇ、いいデータがとれたよ。しかしこのステルス機能もいいとこばかりではなくてね…まぁ今はそんなことはどうでもいいか」
「ご丁寧に教えてくれてどうもありがとう。でもこの程度の拘束で私を縛れるとでも思っているの?もしそうだとしたら相当おめでたい頭をしてるわね」
ウィスタリスが開発した探知機能が今まで敵性存在を見逃すなんてことはなかった。エニグマが新たに開発したステルス機能ということだろう。エニグマの恐るべき技術力に内心で不安が沸き上がるが、それを見抜かれまいと紫音は表情を取り繕った。強気な表情で機械兵器を見据えて、挑発的な口調で煽りたてる。実際、この程度の拘束は解くのはわけがなかった。空中という不安定な場所で拘束されていることを考慮しても数分もあれば解くことができるだろう。
「そうであったならこんなに苦労はしないだろうね。だから手早く"仕込み"をさせてもらうよ」
声の主がそう言うと拘束しているものとは別の機械兵器が紫音の胸元に輝くフォトンクォーツに近づいてくる。そして先端に謎の装置を付けたワイヤーを伸ばし、フォトンクォーツをすっぽりと包み込む。拘束を解く準備をしていた紫音はその光景を見て得も言われぬ不安に襲われる
「一体何をするつもり―――ふぁっ、あぁん!?」
突如、ビリっと僅かに電流のようなものが流れ、バイザーの中にノイズが走る。予想していなかった刺激に思わず甘い声が漏れてしまったことに紫音は赤面するも、すぐに表情を引き締め状況を確認する。
(デバイスに何かをした…?でも特に異常は見られない。ファイアウォールが防いでくれたのかしら…)
紫音たち変身ヒロインが使っている変身デバイスには武装が電子データとして登録されている。そのため、デバイスにウイルスデータを入れられるなど電子的な細工をされると、武装に影響が出てしまう場合がある。そういった事態を防ぐためにファイアウォール機能が搭載されているのである。
機械兵器はフォトンクォーツから装置を外し、そのまま様子を見るように漂っている。だが特に何かが起きるような様子はなく、バイザーの異常検知機能も反応を示すことはなかった。
「何をするつもりだったのかは知らないけれど、どうやら無駄だったみたいね。んっ…はぁっ!」
紫音は四肢に力をこめ、拘束リングを破壊すると再び刀を手に持ち機械兵器たちを瞬く間に斬り捨てていく。
「ふむ、やはりもう少し解析が必要ですか…残念ですが今日はここま―――」
声の主が喋り終わる前に最後の一体も斬り捨てるとその場に静寂が戻った。紫音はまた不意打ちはされまいと周囲の警戒を始める。
十数分程は経った頃、何かが新たに出てくる気配はなく静寂を破るように通信が入る。
「敵性存在の確認無し。今度こそ大丈夫だろう。レクシアハート、後の処理はこちらでするので帰還してください。」
「了解。敵性存在の排除完了。レクシアハート、帰還します。」
敵の全滅が今度こそ確認されたことでレクシアハートは帰還するため素早くその場から立ち去る。その時、クチュっと小さく水音が鳴る。ボディスーツの中の股間部分を僅かに愛液で濡らしてしまっていることに戦闘による緊張と興奮から紫音は気付くことはなかった。