パパとママとプルメリアおかーさん~益虫保護区育成記~ 作:インティライミ
森の中で騎士団がボロボロになった馬車の周囲を捜索していた
「そっちに居るか!」
「まだ見つかりません⋯⋯居ました!軽症で意識もあります!」
「よし!要救助者を発見!撤収だ!」
「団長!敵の増援が!」
「くっ!」
迫りくる害虫を前に団長は決断を下す
数時間前
とある森を通る道で大きな商団が害虫の襲撃に合い、商団の一部が行方不明となった
騎士団へ害虫討伐と行方不明の捜索の任務が伝えられる
騎士団は団長率いる二十人の花騎士達が出撃し、現場へと向かう
現場周辺の害虫を討伐し、行方不明の捜索へと移行した時に害虫の増援が出現、捜索は難航し始める
団長は部隊を二つに分け、捜索隊と迎撃隊に分かれ行動するように指示を出す
「団長さんの所には行かせません!」
そんな迎撃隊を指揮するのは花飾りで藤色の髪を束ねた少女であった
小柄な肉体を水着で包み込み、動く度に束ねた髪とフリル付きスカートを揺らしてて戦う少女の名はプルメリア
両手に付けたガントレットで迫りくる害虫の硬い外殻を打ち砕き、中の柔らかな身を殴り潰し倒していく
「はぁっ!そこっ!」
迫りくる害虫達を仲間と協力し討伐していくプルメリア
もう少しで害虫を倒し終わる、そんな中団長達が救助者を発見して戻ってくる
「要救助者を発見した!撤収するぞ!」
その場を離れようとした時に害虫達の鳴き声が響き渡る
「団長!敵の増援が!」
「くっ!要救助者を二つの部隊で護衛、先頭は道を切り開け!⋯⋯最後尾は迫りくる害虫を倒し時間を稼いでくれ⋯⋯!!」
殿を配置するときに団長は苦しげに声を出して指示を飛ばす
「団長さん、最後尾はプルメリアに任せてください!一人で残って時間を稼ぎます」
「⋯⋯ッ!?ダメだ!君を一人残せるわけがない!」
「でもみんな疲れてます!プルメリアは大丈夫ですから⋯⋯」
「プルメリアママは水臭いなぁ~、あたしも手伝うよ」
「プルメリアさん一人で止められるなら五人ならもっと止めれますよね」
「「一緒にやるよ!任せて!」」
「皆さん⋯⋯」
「頼んだぞ皆!」
「「「「「はい!」」」」」
プルメリアと共に戦っていた花騎士達が弓や銃、対になっている剣を掲げ、プルメリアもガントレットを掲げて団長に答えるのだった
「近寄るな害虫め!」
「貫けぇ!!」
「絶対に!」「行かせないんだから!」
殿部隊は害虫達を屠り続けていた、その身体は自らの血と害虫の体液で汚れており無事な花騎士は誰一人として居なかった
「ふぅ⋯⋯これで最後みたいですね♪皆さんお疲れ様でした!いい子いい子です♪」
最後の害虫を仕留めて、周囲の安全を確認して武器を降ろし、部隊の花騎士達を誉めるプルメリア
誉められた花騎士達も照れ臭そうにはにかんで場が和んでいく
そんな花騎士達をじっと見つめる複眼が有った
生い茂る茂みの中を器用に動き、静かに忍び寄る影が銃弾を補充する花騎士の後ろに迫り、鋭い鎌を振り上げ、柔肌を切り裂かんと迫る
「!?危ない!!」
「きゃっ!どうしたのプルメリアマ⋯⋯マ?」
彼女が見た光景、それは突き飛ばしたプルメリアの身体を害虫の鎌が貫いている光景だった
「「離せぇぇぇ!」」
双子の対となる剣が害虫の頭とプルメリアに刺さる鎌を切り落とし、害虫はもがき苦しみ絶命する
「ママ?⋯⋯プルメリアママ?」
助けられた花騎士は目の前の光景が信じられず呆然としながら尊敬するプルメリアの名を呼び続ける
「急いで止血を!鎌はそのままに!抜くと助からないわ!何を呆けてるの!プルメリアさんを救いたいなら目を覚ましなさい!」
四人はプルメリアの身体に千切った布を巻いて応急措置を済ませると、プルメリアを抱え、味方陣地へと駆けていった
傷付き疲労した身体に鞭打ち、プルメリアを助けようと必死に足を動かし続けた
そして道中何度か害虫に襲われたが追い払い、無事味方陣地へと辿り着くもプルメリアはいつ力尽きてもおかしくない状態であった
「みんな無事だったか!!」
「団長!医療班を早く!プルメリアママが!ママが!」
呼び出された医療班が目にしたのは水着が赤く染まり、弱々しく呼吸をするプルメリアの姿だった
小柄で在りながらとても大きな母性愛を振り撒く暖かな笑みを浮かべた少女が今にも消えそうな小さな火のように見えてしまう
医療班は必死に治療を行った、失われた血を補い、傷口を塞ぎ、必死に向こう側へと行きそうなプルメリアの命を繋ぎ止めようと努力した
結果としてプルメリアは一命を取り留めた、しかし意識は一向に戻る気配は無かった
それから一月が経過した、プルメリアは騎士団側の病院へと移されていた
傷口は塞がっていたが意識は戻らず、団長は毎日プルメリアの見舞いに来ていた
「今日も来たよプルメリア⋯⋯君が居ないと寂しくて堪らないよ」
団長はプルメリアの手に自らの手を重ねて優しく握る
小さく暖かな手はプルメリアが生きている事を実感させていた
医療班も生存したのは奇跡だと言わんばかりの衰弱した状態だったが加護の力で辛うじて命を繋ぎ留めていた状態だったという
プルメリアの命の温もりをただ無言で感じ続けて一時間程経った頃に団長は立ち上がる
「また来るよプルメリア⋯⋯君の声が早く聞きたいな」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯んちょ⋯⋯⋯⋯」
「えっ⋯⋯?プルメリア?」
ふとプルメリアの声が聞こえて立ち止まる団長
プルメリアの口元に耳を近づけると掠れた声が聞こえてきた
「⋯⋯団長さん⋯⋯」
「プルメリア!ここだ!ここに居るぞ!」
プルメリアの手を掴むと、弱々しくもプルメリアが握り返してきた
団長は慌てて呼び鈴を鳴らし看護師や医師を呼び出す
病室内が騒がしくなる中、意識を取り戻したプルメリアは再び眠りに付くまでずっと団長の手を繋ぎ続けたのだった
それから毎日のようにプルメリアの元を訪ねる人が絶えなかった
そんな人々の繋がりが励みとなり、プルメリアは辛く苦しいリハビリ生活を半年続け、以前のように生活出来るほどに回復した
しかし傷付いた肉体は花騎士として復帰出来るような状態ではなかった
「プルメリアさん、リハビリの結果は大変素晴らしいものです。私としてもここまでの目覚ましい回復は見たことが無い。今の貴方なら以前と同じ生活を送れて、激しい運動も出きるでしょう⋯⋯しかし花騎士として活躍するのは難しいでしょう。花騎士を引退し、別の生活を送って欲しい⋯⋯それが医師としてのオススメする道です」
「そうですか⋯⋯」
プルメリアにとって害虫は人々を困らせる悪い子であり、メッ!しなければ沢山の人が困るから戦ってきた
それを辞めろと言われてプルメリアは途方に暮れていた
「今すぐ何かをしろって訳じゃないからゆっくり探そう」
「プルメリアママなら引く手あまただよ~♪」
「今の仕事はゆっくり休む事ですよ、プルメリアさん」
団長や花騎士達はゆっくり仕事を探せば良いと手持ち無沙汰なプルメリアを慰めるがプルメリアの心は落ち着かなかった
そんな時一人の女性がプルメリアの元を訪ねてきた
「初めまして、貴方が今度花騎士を引退する予定のプルメリアさんですね?」
「はい、そうです」
「私は益虫保護区『パラディーゾ』の所長を勤めるセイヨウヒイラギと申します。本日はプルメリアさん⋯⋯貴方を『代理母計画』のメンバーとしてスカウトしに来ました」
突然現れた謎の女性との出会いがプルメリアの運命を大きく変える瞬間を迎えようとしていた