※この作品はR-18です。

ゼロの使い魔 イルククゥ√   作:超高校級の切望

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呪い師アルゥ

 アルゥは呪い師だ。精霊の力を心のこもった品々に込め、魔道具を生み出し依頼者に頼まれた相手(主に依頼者の子供)に渡す触媒作りの中継役。

 両親から継いだ仕事を誇りに思っていたし、何れ誰かと子をなし、受け継がせるのだと思っていた。

 

「思ってたんだがなあ………」

 

 月が3つあるはずの夜空には2つしか浮いておらず、色も赤と青という変な色の夜空を眺めため息を吐くとアルゥ。

 ここはトリステイン魔法学院と呼ばれる魔法を学ぶ学園らしい。そんな国きいたこと無いし、魔法とは触媒さえあれば誰でも使える筈だ。最初は文化の異なる場所に来たのかと思った。しかし実際は、これもう別の世界だ。

 

「はぁ………」

 

 何でもこの世界の魔法には使い魔をわざわざ呼び出す魔法が存在し、アルゥはそれによって呼び出されたのだ。

 呼び出した本人は優しく、妹の様子を定期的に見に行ってくれれば給料も出すし帰れる手段も探してみると言ってくれた。常識的で助かった。その妹は自分のように呼び出された人間をこき使い人間扱いしないゴミクズのような性格だが。なぜ姉と妹ではこうも性格にも見た目にも差が出たのだろう。

 

「というか家族から引き離したことをなんとも思わんのかね、あのチビは………ああ、ちょいとそこの精霊、明日、あの子が転ぶように足に絡まってくれ。階段とかだと危ないから、廊下とかで………ん、報酬? ほれ………」

 

 フヨフヨと漂っていた風の微精霊にブレスレットの中にいる精霊の魔力を分け与える。

 精霊は実態がない。実態がないから、実態のない人の心を好む。真に心が込められた作品には精霊が宿り、時には動く絵や石像になったりする事もある。

 触媒はそんな精霊達に宿を提供し、代わりに精霊の力を借りるための道具だ。これがアルゥの世界の魔法。

 呪い師であるアルゥは触媒を介さず精霊の力を行使できるがその為には契約が必要となる。大国の呪い師などはそれ故に土地に縛られるそうだが、アルゥのような辺境育ちでは精霊のためにと心を込め道具を作り、それを触媒にする。触媒を得た精霊はただ存在するだけの大気に散る精霊と違い存在が安定し力を蓄えられるため、それを餌に精霊と簡易契約をしたりする。

 他にも赤封石、緑封石、青封石などといった精霊と協力して自然の力そのものを固めた石を使った装飾品も持っている。これは精霊に命じなくとも即座に術を行使できる、突発的戦闘のために使うアイテムだ。

 なので野外でも獣や賊の心配はいらない。トリステイン魔法学院から近い場所で野宿しよう、とちょうどいい場所を空から探す。

 見つけたのは森の奥の、少し開けた場所。精霊達も沢山いる。あそこにしよう、と決めた時、ふと精霊達が後ろ髪を引っ張る。何だなんだとついていくとトリステインの中庭に暗くて見えないが何何やら大きな動物の気配。精霊達はそれに引き合わせたいらしく、アルゥは中庭に降り立った。

 

「きゅい!? な、何なのね! お前は誰なのよ!」

「…………おお」

 

 精霊達が警戒していないのだから魔法学院の人間はその場におらず、大きな気配も亜龍か何かだろうと思っていたが、喋った。まだまだ気配は獣と遜色ない幼い個体だが、龍だ。青い美しい鱗に見を包んだ、奇麗な幼龍。

 

「はじめまして、叡智なる君。我が名はアルゥ。この出会い、精霊の導きに感謝を」

「きゅい? お前、人間なのに精霊を信仰してるのね?」

「ああ。この国では異端のようだが、うちの国では精霊は我等と共にある隣人故に」

 

 彼を召喚した主いわく、この国では精霊の力はエルフや一部亜人達しか使えず、人間には見えないのだとか。その辺りはまあ、アルゥの世界と同じだが呪い師も居ないらしい。一応アルゥ達にとっては高位の精霊、この世の物質に干渉可能な精霊なんかと交流を持つ貴族もいないことはないらしいが。

 

「なるほどなのね。確かに、精霊達がお前に集まっているのね………ところでエイチナルキミってなんなのね〜?」

「俺の世界の呪い師達の、お前等のような言葉を発する獣達の呼び方だ。通常、年月を経た獣たちなどを指すが龍は生まれてまもなく言葉を介し、精霊と会話する。特に我が国は龍王と国王は代々共に手を取り合い空をかける龍の一族と近隣諸国に呼ばれてる」

 

 その話を聞いて、ほんとうなのね!? とガバリと起き上がる幼龍。

 

「お父様たちったらなぁにが人間は恐ろしい、なのね! 話の分かる人間もいるじゃないの!」

「まあ、国によっては様々だろうさ。俺も召喚されて遠くから来ただけだし」

「きゅ? あなたも召喚されたの? お揃いなのね!」

 

 嬉しそうにはしゃぐ幼龍もどうやら召喚されたらしい。しかしこの世界では言葉を話す龍は絶滅したことになっており、どいつもこいつも風竜風竜と言ってきて嫌になったそうだ。おまけに主人には言葉を話すなと言われる始末。

 

「嫌になっちゃうのね!」

「それは、まあなあ。うちの龍たちも亜龍扱いされたら普通に怒るし」

 

 何なら家を壊されたと泣きついてくる幼馴染(男)も居た。ちなみにアルゥも本来なら連れの龍が居たのだが、辺境故に隣国との戦争の際に死んでしまった。

 アルゥの怒りに精霊達が騒ぎ敵軍は燃えたし吹き飛んだし凍ったし地面に飲まれた。勉強の警護も仕事のうちである辺境呪い師は強いのだ。精霊達と契約している陣地だし。

 

「きゅう〜、悲しいお話なのね」

「そうだな。俺を食わせてやることも出来なかった」

「……………食わせる?」

「ん、ああ。うちの風習だよ」

 

 龍とは大いなる自然の化身。故に、寿命で死んだ者は己の龍に己の死体を食わせ自然に還る。逆に龍が寿命で死ねば、その自然を身に宿すために人間達で食うのだ。特に巨大な竜王の時は、楽しく騒ぎ、魂が安心して大いなる流れに変えれるように国を上げて祭りを行う。

 祭りが終わった頃には魂も大いなる流れに返っているから、その時ようやく人々は泣けるのだ。

 

「変わった価値観なのね。でも、悪くはないと思うのね! アルゥが死んだら私が食べてあげるのね」

「ははは。まあ、俺はエルフの血が混じってるから寿命は龍種と遜色ないんだけどね」

 

 ちなみにこの世界、エルフと敵対的らしい。アルゥの世界では全ての住民が精霊と会話できる尊き一族なのに。それを鼻にかけない謙虚さも人気の要素。

 人間は全ての種族と子をなせるから意外とエルフと結婚している者もいる。寿命差から、共にあろうとする者達は少ないが。アルゥはそんな変わり者のエルフを祖先にもつ。身体的特徴には出ないが呪い師家系とエルフのハイブリットなのだ。

 

 

 

 

 その翌日、召喚主である少女に本を買いに行くように命じられた幼龍、名をイルククゥというらしい彼女と別れアルゥの主に命じられた通り妹の観察。

 同じ人間なのにどうしてあんなに酷い扱いが出来るのだろう。あ、飯抜きにされた。まあ今のは魔法が使えないことを馬鹿にしすぎた彼にも非がある。というか、彼女の魔法は、何だ? 石に宿っていた精霊が消し飛んだぞ。

 後彼女の使い魔、そこそこ強い。アルゥの世界の騎士団見習いぐらいはあるかもしれない。

 

 

 

 その夜、帰ってきたイルククゥはおねえさまから名前を貰ったとはしゃいでいた。シルフィードというらしい。

 朝までチビスケと呼んでいたのに。何でも人攫いに殺されそうになったところを助けられたらしい。

 

「きゅいきゅい! アルゥ、いい場所を知ってるのね〜♪ 早速ねぐらを作るのね」

「はいはい。あ、木を倒すのは別に止めないが、それだと何れ腐るぞ。長居するなら、こっちだな…………我が手に触れし木々よ、我が望みを聞き届けよ」

 

 アルゥが大樹に触れるとメキメキ音を立てながら枝が伸びていく。それは絡み合い、屋根を作る。そこに土を被せ、草を生やし根により土を固めていく。

 裏側には石をアーチ状に敷き詰め雨漏りはそちらに当たり流れるようにすると、柔らかな苔を大量に生やす。

 

「おお、なのよ! すごいのね、アルゥは天才精霊師なのよ!」

「ははは。まあ老龍達や親父に比べたらまだまださ。さ、寝ようか」

「きゅい!」

 

 一人と一匹はそのまま巣の中にはいる。季節は春。夜は、少し肌寒い。くし、とクシャミしたアルゥにイルククゥが心配そうに擦り寄ってくる。

 

「寒いのね? わたしが温めてあげるのね」

「気持ちはありがたいが、夜風に冷やされた鱗じゃ余計に冷える」

「む〜………そうなのね!」

 

 ポン、とイルククゥは両手を合わせる。カチンと爪が音を立てた。

 

「我をまといし風よ。我の姿を変えよ」

 

 呪文を唱えると、シュルシュルと風がイルククゥにまとわりつき、青い渦となる。渦が消えると20歳ほどの若い女性が現れた。

 

「これで抱きあえば暖かくなるのね!」

 

 女性は、裸のままアルゥに抱きついた。




アルゥ・カントラー・ウェルターメイン

月が3つある世界の呪い師。青髪の美青年で、その顔はある人物に似ている。
とある貴族令嬢にペット達の頭目を作るべく召喚された。良識のある主人で帰る方法を探してくれてる。カントラーは村の名前。ウェルターメインは呪い師としての世襲名。
エルフの血を引いており実は58歳だが先は長いからと出会いより仕事を優先していて女性に対する免疫がない。呪い師としての腕は高く領主が息子に送るための触媒作りを依頼されたこともある。

アンナ・カントラー・ウェルターメイン

アルゥの師匠にしてウェルターメイン始祖のエルフ。
高い精霊干渉能力を持ちその気になれば世界の1つ2つは超えられる。エルフとしての故郷には子孫たちを連れて行こうとしない。理由は王族であることがバレるから
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