……長い、永い間、悪夢を見ていたような気分だった。
殺される時、私の身を包んでいたのは後悔でもなく、懺悔でもなく、安堵だった。
もう、この身でも抑え切れない悪しき衝動に身を振り回されることもない。無為に竜を殺す事もない。漸く、この私は罪を積み重ねる事から解放されるのだ。
ただ、一つだけ心残りなのは。
狂う前に伴侶となった彼と会いたかった。
ただ……それだけは。
*
夢を見ていた。狂った彼女を抑え切れず、忸怩たる思いを抱えて強くなろうと決めたあの日。
けれど、そんな弱った私に襲いかかって来た、同じく狂った竜達。
狂った彼女は弱くなっていた。普段ならば私を容易く詰みにまで追いやって見せる彼女は、狂った事で弱くなっていた。私とほぼ互角の戦いを繰り広げられる程にまで。
それでも私は彼女を抑え切れなかった。粘りに粘ったが、身を蝕む数多の羽虫を凍り砕く事も適わず、敗走してきた私。
そんな私に襲いかかって来た狂った竜達。彼女とは違って、命を圧縮される事で力を倍増させた竜達。
私は倒す事も、逃げる事すらも適わなかった。力を倍増された竜に相対する事も、眠る事もせずひたすらに追ってくる竜達から逃げ延びる事も出来ず、私はただの竜達に追い詰められ、仕留められた。
それが、私の前世。
*
長い長い冬が過ぎ去ったと思えば、さっさと夏が来た。
このイヴェルカーナとやらが力の限り冬を延ばしていたからなのだが、こいつでも日本の夏には敵わないようで、得意の氷の鎧も身につけずにぐったりと過ごしている様が各地で見られた。
で。そんな様子でやって来たそいつをクーラーの効いた室内からトビカガチ二匹と眺めていたのが運の尽きであった。
何故そんな涼しげに過ごしていると分かられてしまえば、ガラスを割るぞと脅されて入れざるを得なかった。無駄に広く作っていた家の中は、そうして鮨詰めになったのであった。
ついでに後からあのデカウサギ、ウルクススとやらもちゃっかり入って来て、ぎゅうぎゅう詰めの中全員興味津々にテレビを見たりだとか、中でおっ始めたりだとか、もうやりたい放題。
飯を作ればその長く鋭い尻尾を廊下越しにまで伸ばして来て要求してきたり、終いにはいつの間にか手懐けられていたウルクススに、ごめんなさい従わないと俺の命が危ないんですと言わんばかりに涙目を浮かべられて申し訳なさげに奪い取られていくわ、やりたい放題。流石に文句を言えば、鱗をべりっと一枚渡して来た。
……うん。残念ながらそれで釣り合ってるんだけどね!?
俺の家なんだけどなぁ、と思いながら自衛隊に相談したら、俺用の離れを作る事を提案された。
あ、避難するの俺なんですね。はい。まあ、あの巨体専用の箱を作るより、俺が避難する方が安価ですよね、はい。
すっかり俺の家を占領する事に慣れきったイヴェルカーナは、数日に一度だけは外に出ていく。その体躯を維持する為の狩猟なのだろうが、大抵それは涼しい深夜か早朝で、本当に暑いのが嫌いなんだな、と。
寒い場所に行けば良いんじゃねえかと提案してみれば、そこにテレビやらはあるのか? と問われて、拒否された。
前の世界では狩人とゴリゴリに殺り合っていたり傲慢不遜に過ごしていたと既に知っている身としては、そんな姿が中々に違和感があり、人に迎合してるんですね、って言えば仕方ないだろというような顔をされた。
まあ、そうですね。
あっちの世界には戦闘機とか原爆とかまでは無いっぽいし。
そんな夏のある日。
広い部屋で、イヴェルカーナ、ウルクスス、トビカガチ二匹(ついでに言うと、時々ジンオウガの子供二匹)というぎゅうぎゅう詰めながらひんやりした(そして拭い去れない臭いがこびりついた)空間で過ごすのにも慣れて来た頃。
相変わらずのうだるような快晴の外が、唐突に曇った。
何か来たようだと一番先に気付いたのは、イヴェルカーナではなく、そっちの世界では弱者に位置するウルクススとトビカガチ達で。ついでおやと顔を上げたイヴェルカーナがびくんと体を跳ね上げた。
陰のシルエットだけで何者か分かったのか、ガラスの引き戸を丁寧に開けてするりと、そのクソ暑い外へと飛び出していった。
振る舞いからするに、敵意ではない。敵意だったらそもそもガラス戸も容赦無く砕いていただろう。
何だなんだと追って外を覗けば、そこには竜が居た。しかも四本の脚と翼を併せ持つ、派手で特殊な能力を持つ古龍と呼ばれる存在である。
端的に言うと、騎士のような見た目の古龍である。イヴェルカーナと異なり、頭の先から翼の隅々まで頑強な鎧のような鱗で覆われており、特に分厚い翼とそれを支える骨格は盾のようにも槍のようにも扱えそうだった。
ただ古龍と呼ばれる種族がそれぞれ持ち合わせるような特殊能力が何なのかは、皆目検討がつかない。
相対したその二匹はどうにもそれぞれが自分の見知った相手であるのかを確かめているようで、それぞれを観察した後に、いきなり口を交え始めた。
「あっ、そういう」
前の世界で番だったのか。いや、要するにこれまでの全てはお遊びだったんですね。いや、お遊びだったんだろうけど。
そういう方でニュートを見てみると、まあ少しだけ寂しそうにしてた。
最初は流石に丁寧にやりたいのかそのまま森の中へと去っていき、それを眺めているとウルクススが隣にやってきて早く閉めましょうと器用に窓を閉め始めた。
あ、貴方はそのままウチに居るんですね。別に良いけど。
「それにしても……すっかり広くなったように見えるなあ」
って思ったら、寂しくなったニュートがウルクススに仕掛けやがった。
そして俺もカチュウに押し倒された。ここ、いつからラブホになったんでしょうね。
*
元々の縄張りにまでやってきて、ここらで大丈夫だろうと振り返れば、我慢出来ないように押し倒される。
優しいようで有無を言わせないような力強さ。人が兜を被ったように見えづらいその表情は、けれど嬉しさに満ち溢れているのが分かる。
あっという間にひっくり返される。それをあるがままに受け入れる。圧し掛かってくる、その重み。私よりも遥かに頑強である肉体が、腹をもさながら金属のような強固な鱗で覆われているある種の冷徹さがとても懐かしい。
私は雄であったが、雌ながらも力強さと美しさを兼ね備えているその姿に私は最初から見惚れてしまっていたのだ。
炎王龍でさえも凍らせる事の出来る実力を持つが故に高慢であった私は最初、その感情を認めたくなかった。
爵銀の口が僅かに開き、私の首を僅かにその牙が貫く。
懐かしい、僅かな痛み。体越しに爵銀の喉が動き、私の血が余す事なく爵銀の体内へと入っていくのが分かる。
彼の地で荒々しく何者よりも強い暴力を持つが故に、結果として安寧を保っていた滅尽とは違い、その爵銀は自らの意志で安寧を作り出していた。そして歯向かう者にさえも打ちのめしてから血を頂く程度で済ませる寛大さ。古龍のくせして特別な能力など何も持っていないその爵銀に何度挑もうとも、私は大した傷すらもつけられず、親しい仲に打ち解ける前も後も、こうして幾度となく血を献上してきたのだった。
死に、この場所に来た時。この身に消えない傷としてすっかり馴染んだその首の傷すらも綺麗になっていたのに、植え付けられていた知識よりも見慣れぬ光景よりも何よりも、異世界に来てしまった事を実感した。
いつもよりやや長めに爵銀が私の血を味わってから口を離す。二度程私の首に舌をなぞらせると、すっかり血は止まる。
顔を上げた爵銀は、本当に、本当に貴様なのだな、と私を見つめて来た。
私は頷いた。
*
口と口を交わらせる。青い舌はこの蒸し暑さの中ではひんやりと心地良く、つい深くまでねじ込んでしまう。
死後の世界、と言うには鮮やか過ぎるこの世界に身を下ろして、そして彼の気配を感じた。
羽虫までは私に着いて来なかった事を喜びつつも、私の中では一つの確信が生まれていた。
……彼も死んだのだ。私よりも先に。
もしかして、私が殺してしまったのではないだろうか。あの羽虫に纏わりつかれてからというものの、意識すらも時折失せて気付けば獲物を貪っている時すらもあった。
彼がどのように死んだのか、まだ私には察する事は出来ていない。しかし今、彼は心の底から私と交わう事を楽しんでいた。ならば、今だけはそれに合わせようと思った。
彼の鋭い肉棒が股間から飛び出してくる。氷を司る龍と言えどそこだけは熱く、私はそれを鎧の中へと受け入れる。
いつ振りだろうか。酷く懐かしい気がした。どれ程の時を私が狂っていたのか私には皆目見当もつかないが、きっとそれ相応に私は狂い続けていたのだ。
私の重みを彼に押し付ける。彼の体内から押し出された冷たい空気が私の中を占めていく。腰を持ち上げる。私の中を占めていた空気が彼に戻っていく。二度、三度と繰り返す内に、彼はすぐに苦しさから涙目になった。
彼は可愛かった。程々に長い時を生きて来て、相応よりはやや強く、強さに対して妥当な矜持の強さを持っていた。しかし、一度その矜持を砕いてみれば、その中から新たに矜持を作り出そうとしてきた。自分なりに考え、手を替え品を替え私に挑んできた。私をそれを毎回砕き、授業料として血を頂く。程なくして、どう足掻こうと勝てないと悟った彼は私に付いて来るようになった。その愚直さに私からも好意を抱くのに、交わるのにそう時間は掛からなかった。
こうして私が上になるのも、最初は嫌がられた。雄なのにという不満を露わにする顔をしていたのは僅かで、それでも興奮していた雄を絞り上げればすぐに顔から余裕がなくなる。
一度顔を持ち上げれば、まだ余裕そうな彼の顔が見えた。一度軽く鳴いた彼は、もっと激しくと要求している。良いのか? と顔を近付ける。彼は唾を飲んで、頷いた。
*
肩に手を回され、胸と胸が密着した。前足が私の甲殻に穴を開ける勢いで突き立てられ固定される。後ろ足にぐっと力が籠ったのを感じる。
爵銀は寛大であった。一方的に襲いかかった私など、どのような扱いをされても文句は言えないのにも関わらず、動ける程度の血を飲まれるばかりだった。
真なる強者としての余裕に私は苛立ち、次こそはと幾度と挑んだものの、そのどれもを容易くあしらわれた。その度に血を奪われ、背を向けて去っていかれる。どう足掻こうとも何をしようとも今の私では勝つ事が出来ないと理解させられた後、私の中に思い浮かんだ選択肢は自ずと一つになっていた。
そして私は、爵銀にどうしようもなく惚れていると自覚したのだ。
雌の癖して。何の能力も持たない癖して。そんな不満たらたらな心情の中で、爵銀の全身を事細かに常に想起しているのに気付いてしまったのだ。
爵銀は、決して柔くはない私の肉体をまるで飛雷竜でも抱いているかのように揉み砕く。鱗と密着しているはずの甲殻が音を立てて軋み、私の体は良いように扱われる。
そして私の雄は、爵銀の分厚い肉の迸る熱に全方位から圧迫されている。良いように扱われるだけの飛毒竜とも違う。膣の中まで筋肉質なばかりで柔らかさなど微塵もない金獅子とも違う。勿論、人の尻などとは比べ物にならない。爵銀の中は柔らかく、分厚く、力強く、真直な生命力に溢れている。私は今、きっとあられもない顔をしているだろう。私は今、全身がどのようになっているのかも理解できていない。私が今出来る事は、ただ耐えるばかり。爵銀の太く肉肉しい尾が私の突き刺すしか能のない尾を一方的にねじり上げる。爵銀が私をより強く抱き、私の背が強く反る。体から空気を抜かれ、甲殻どころか私の全身が軋み、それと同等に私の雄が全方位からぎゅううと締め上げられる。気持ちが、良い。爵銀に良いように扱われる事に、私の全てが爵銀のモノになるのに、一切の躊躇いなどあるものか、あるものか!
そんな中、爵銀が私の顔を覗き込んでくる。まだ序の口だぞと言わんばかりの余裕のある顔に私はひたすら頷くばかり。再び口を交えられ、私の雄はとうとう子種を放ってしまった。
びゅう、びゅるる。
「……ギュウ?」
爵銀が、首を傾げた。
……あ。
ふぅん、と爵銀が私の上から離れた。そして仰向けのままの私の首をその三叉に分かれている尾で差し押さえ、その私の雄に顔を動かす。
*
随分と愉しんでいたようで。
あの人間の家から漏れて来た臭いで最初から分かってはいたし、私までこの世界に来るなど思ってもいなかっただろうから、別にそうして肉欲を発散していた事は責める事ではない、が、腹が立つ。
先日もやっていたのだろう。一発出しただけで萎えそうになっているそのだらしない肉棒をピンと爪で弾く。
「ギャッ」
情けない声だ。この私が、たった一度で満足すると思っているのか? 初めて交わった時、寝返りすら出来なくなった事まで忘れているのか?
しかし縫い付けられながらも、その顔はどこかそれを望んでいるようでもあった。
……不快でもあるが、望んでいると言うのならば相応以上の仕置きが必要であろう。
今まで大きい顔をしていたようだが、この私が来た以上、どちらが上なのかしっかりとこの地の者達に教えなければな。
磔にしていたその長い首を持ち上げる。
泣いても許さん。喚いても許さん。何をどうしようが、どれだけの時間が経とうが、貴様の雄を最後の一滴まで搾り尽くしてやる。
その意志を明確に伝えてやれば、とうとうその快楽ばかりを希う顔が歪んだ。今日は、今日ばかりは、私が最大限に楽しむ日だ。
乱雑に元気を失いつつあるその雄を掴む。鋭いその先を押さえつつ、穏やかな血流をゆっくりと温めてやる。私の前脚に握られ温められ刺激され、しかし絶頂へと辿り着けない無様な雄をじっくりとこいつ自身に見せつけてやる。
雄の脈動が私の手の内で暴れ回るのは、顔以上に雄弁に精を吐き出したいその欲求を伝えて来る。この根本の二つの玉から溜まりつつある白濁を貴様はどうしたいのだ? 私を孕ませたいのか? 汚したいのか? それとも味わって欲しいのか?
手を離す。その瞬間に堪えきれずに白濁が虚空へと溢れ出る。汚い欲望さえも貴様は叶えられないではないか。仕方ない。少しは掬って味を見てやろう。
……なんだこの薄さは。これが貴様の欲望なのか? 貴様の私への想いはその程度なのか? そうではないだろう? もっと締め上げてやろうではないか。今日くらい、甲殻が砕けても良いだろう? 反論は聞かぬ。
貴様は私のものだ。貴様は私の下だ。これから未来永劫、私が私である限り、貴様は私にこうして搾り取られる運命だとその心身に刻みつけてやる。
だから。
この世界で、貴様は私と最期まで共に居ろ。
*
騎士だと思ってたら女王様だった。
色欲魔だと思っていたら一途だった。
今までの遊び具合はどうだったのかと言う位にイヴェルカーナはその龍にひっついて離れないし、未だ名前の分からないその龍は驚くほど早くにこの世界に順応して人との交流も深めている。
それで、広くなった室内。変わった事と言えば、ウルクススが今日も当たり前のように冷房を貪っている事。
腹を丸出しにして寝ている姿なんて、ウサギというよりクマというより、オヤジである。
「お前達もあっちの世界では何か愛してる奴とか居たの?」
何となく聞いてみれば。ニュートとウルクススは別に、と。特にウルクススは多分童貞だったなこれ。童貞オヤジがリビングで惰眠か……。
それでカチュウは何と言うか……微妙そうな反応を返した。そして深掘りされたくないような素振り。
「そいつがこっちに来たらどうするんだ?」
余り会いたくないようだった。……DVでもされてたのかね? 幸薄い人生ならぬ竜生を送っていそうだった。
マガマガくんと一緒に暮らしてたけど、色々あって食料が足りなくなって泣く泣く食べられたとかそんな設定を考えてる。
メルイヴェはpornhubで12時間連続セックス生放送をその内する。
メルイヴェ
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メル♂イヴェ♂
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イヴェ♂メル♂
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