退社してから街灯も殆どない道路で車を走らせていると、ヘッドライトに小さな生き物が二つ見えて車を止めた。
角と甲殻を生やした子犬が二匹。見るからに土や泥に汚れていて、力尽きそうな程に疲労している。
「…………マジか」
俺が歩いて近付いても、もう動けそうにもない程にキュウキュウと声を垂れ流すだけ。
子犬の体色は青と黒。日本では雷狼と獄狼……そちらは別称でケルベロスとも呼ばれている、唐突に姿を現した生き物達の一つ。
そして獄狼や他に暴食ゴーヤやら黒爪狼は、未知のエネルギーを扱う生物であり、強い研究対象として……端的に言えば金になる。
子供を保護したなど言えば、きっと数カ月は遊んで暮らせる位の金が貰える事だろう。
ただ、そこでその後の事を考えるとどうにも伝える事など気が向かない性格だからこそ、あのモモンガ達は俺の所に来たのかもしれない、とも思う。
まあ、その位の性格の人間なら結構居そうでもあるが。
「取り敢えず、水でも飲ませてみるか」
飲みかけのジュースしか無いが、別にスパイスとかカフェインとかが入っているものではないし、大丈夫だろう。
それにモモンガ達は豚キムチだって、この頃は納豆だって食うし。
そう思って一旦車に戻ろうとした時。
「グルオオオオッ!!」
遠くから、けれど明確に聞こえて来たおぞましい咆哮。
この声を聞いたらとにかく静かに逃げて下さい、この電話番号に連絡して下さいとテレビで今でも繰り返し伝えている、通称暴食ゴーヤの声だった。
「ウオオオォン!」
「グオオオオン!」
それに立ち向かう狼のような遠吠え。
全てを察した。
「俺がすべきは? ああやばい、すぐに逃げないと」
無視して逃げるか? それとも保護して逃げるか?
無視して逃げるべきだと理性が叫ぶ。保護して逃げるべきだと感情が叫ぶ。
雷狼も獄狼も、モモンガ達と同じく人に匹敵する程に理知的な部類に入る。保護すれば、雷狼と獄狼が暴食ゴーヤに勝てば、少なくとも俺が献身的な手当てをしていればそんな悪い目には遭わないだろう。
無視して逃げた後に、明日ここに残るのが血の痕だけだったならば、それは俺の心に長く傷として残るだろう。
「あー、くそ!」
結局、俺はそういう人間ですよ。
俺は二匹の子狼を抱きかかえて「意外と重いぞ……」車の中に突っ込む。
そして車を一気に走らせるその前に、対策として伝えられていた物を落として逃げた。
幸いにも、前脚が殆ど退化している暴食ゴーヤの脚力は車には遠く及ばない。
暫く走らせた後に、俺はジュースを二匹の子狼に飲ませてから、しかし電話は一旦しない事にする。
本能しかないような動きをする暴食ゴーヤは、同じようなスーパーサイヤ猿よりは出遭っても生き残れる可能性がある生物だ。
その理由は、暴食ゴーヤがとにかく何でも食べるという事と、常に飢餓状態である為に食べてからそれが体に巡るのが途轍もなく早いという事。
人が逃げながら物を落とせば、それが毒でも食べる。そしてそれはすぐに体を巡って影響を及ぼす。
だからでっかいホウ酸団子やら、フグの肝でも落としてしまえば、すぐに死ぬ。死ななくても動けなくってしまえば、その尋常でない新陳代謝が災いしても一日と少し程度で餓死する。
暴食ゴーヤ専用の毒団子も売り出され、また俺が落としてきたのはそれである。しかし、電話しない理由はそれではない。
狼達まで殺されやしないだろうか、という懸念だった。
唐突に摩訶不思議な生き物達が現れるようになってから、もう数カ月が経っている。そんな間にどこの国もこの日本の自衛隊も対物ライフルを数多に常備するようになり、相手が何だろうと一発で黙らせる力を備えた。
ゾウをも遥かに凌ぐ膂力? 巨体でありながらツバメより速く複雑に飛ぶべる翼? 爆発? 嵐? 雷? ウイルス? 不可思議な黒い雷? その生き物達が持つどんな強烈な力も、全部一キロ先からでも戦車の装甲をも貫く弾丸には敗北する。
確かに、その生き物達はこの地球に生きる他の生き物達よりも遥かに強くて頑丈だ。けれど、どの生き物も流石にそんな先からの狙撃を察知する能力も持たなければ、それを防御出来る程の甲殻も備えていない。
新しい生き物達はそんな事をどこか理解している立ち振る舞いをしているが、人に害したならば等しく一発チュドンな末路を迎える。
少しばかし元気を取り戻した二匹の子狼に対して、俺は聞いた。
「あんたらの親はあのゴーヤに勝てるのか?」
けれど、その二匹は不安そうに体を縮こめるだけだった。
暫く待っても音沙汰は無く、結局連れて帰った。
電気モモンガが出迎えて(残念ながらコイツは研究対象としても強さとしても大した価値を人からは付けられていない。……その代わりにアッチ系としてはかなり需要があると言うが)、そして中の子狼二匹を見て目を見開く。
「暴食ゴーヤが現れた」
そう言うと、ビクと体を震わせた。もう言葉も大体理解している。
そして俺を引っ張り、そして家の中に入ると電気を付ける事さえ許してくれなかった。
その酷い怯えようは、遥かに俺よりも脅威を分かっている姿だった。そして、それでもソワソワと落ち着かない様子は外に居るであろう毒モモンガの事を気にしているのだろう。
「行くなら今の内だ。こいつらの親が今、その暴食ゴーヤと戦っている」
そう言うと、少し逡巡した後に家を飛び出して行った。
それを見届けてから、濡れたタオルで二匹の体を拭う。水を飲んで多少落ち着いたとは言え、疲労は激しいようで動く様子は余り無い。
二匹で寄り添って、されるがままだ。
それから飯は買ってきた総菜は全部味が濃い。缶詰……しょっぱいのとかしかない。冷蔵庫……豆腐、納豆、卵、トマト、それから冷凍食品。
「……豆腐だな」
一丁の豆腐を半分に切ってからそれぞれ皿に乗せて、二匹の前に置いた。
臭いもしない、ただの真っ白でプルプルな何か。そんなものを目にして、まあ当たり前と言えば当たり前かもしれないが、中々に二匹は口にしない。
俺が少し手で削いで口にすれば、恐る恐る雷狼の方が口にした。
月明かりしかない家の中ではその表情などは分からないが、素振りからして頭の上にハテナマークが浮かぶような様子だった。
けれど、豆腐とは大豆の旨味が凝縮されたようなモノだ。スポーツドリンク程ではないが、疲れた時にはより一層旨味が染み渡る。シンプルなその味は、こんな疲れ果てた二匹には効くだろう……多分。
そして雷狼が豆腐を食べ終える頃には、獄狼も恐る恐る食べ始めて、そして一気に食べ切ってしまった。
それからまたジュースを飲ませると、もうすっかり落ち着いて。そしてそれから程なく、電気モモンガも毒モモンガを連れて戻って来た。
電気モモンガの切羽詰まった様子に引っ張られてきた感じで、しかし俺が暴食ゴーヤの事を言えば理解したようで目を細めた。
多少元気になった狼達はその二匹に少し怯えて唸ったが、そんな唸り声を無視されてリビングに居座られると、少なくとも敵意が無い事が分かってかほっとして、また二匹で寄り添って床に丸まった。
俺も冷めきっている総菜と、残り丁度一人分の炊飯器の米を茶碗に盛って。
ほかほかのご飯の匂いでピスピスと鼻をひくつかせる声が聞こえた。
「…………」
結局俺は、それに抗う非情さを持ち併せていなかった。
米はすぐに平らげられて、俺は総菜と缶詰の冷たく悲しい夜飯を食べた。
影しか見えないが、食べ終えた互いの口の周りを舐め合う姿は分かる。道路で倒れていた時よりはもうすっかり元気になっていて、もう警戒もしていない。いや、しても結局俺とモモンガ達が生殺与奪を握っている状況は変わらない事を理解しているか。
捨て犬でも拾った気分だった。
「……さて」
明かりを付ける事すらしてはいけない。万一気付かれたら、あの暴食ゴーヤの全てが筋肉だと言う肉体がこの家を簡単に壊してしまうだろう。
生物学者が揃って頭を捻る程の欠陥生物に対して、けれど今はこの二匹の親に成り行きを任せる事に決めた。この狼の成体が暴食ゴーヤと比べてどの位強いのか、それとも弱いのかは分からないが、少なくとも数の有利というアドバンテージがある事には変わらない。
そしてまた、狼と同じように群れで暮らす事ももう分かっている。あの二匹だけではない可能性だって十分にある。
モモンガ達も居る事だし、電話しない理由はそれらでもう十分だった。正直、あんまりよろしくない事だろうが、そこまで危機感も抱いていない。
だから今出来る事は、寝る事だけだった。
カーテンを閉めれば、殆ど完全な暗闇が辺りを支配する。シャワーすら浴びていないが、幸いにも暑い季節は過ぎていた。そこまで抵抗がある訳でもない。
けれど、ベッドに乗る前に一つだけ。大き目のクッションを狼達の前に置いておいた。
人やらモモンガ達の臭いが付いているであろうそれを気に入るかは正直余り期待を持てないが、フローリングの床の上で寝るよりかは良い心地になれるんじゃないだろうか。
そう思いながら、ベッドの上で横になる。
流石に電気モモンガは毒モモンガの方に居るか、と思っていると二匹がのっそりと俺の傍らにまで近付いてきた。
「明日は来るさ……」
そう言うと、カルルッと小さく返された。
とても早い就寝だが、モモンガ達が隣に居れば安心感からかすぐに眠くなる。
そして気付けば、いつも通りの朝がやって来ていた。
変わらない朝の日差し。窓を開けば冷たい空気。何の変哲もない光景。
「……」
外に出てモモンガ達もひっきりなしに風から流れて来る臭いを嗅ぐが、今の風は残念ながら俺が車で帰って来る方向とは逆向きだ。
子狼達も次いで出て来るが、体を寄り添って未だ不安そうな様子を隠していない。
ネットを開いても、ニュースサイトを眺めても、こんな人気の外れた場所の事など何も書かれていない。
暴食ゴーヤは、この二匹の親はどうなったのだろう。
「オォーーーーンッ……」
その後ろで、唐突に雷狼の子が遠吠えをした。その小柄な身にしてはとても立派な、そして遠く、遠くまで響きそうな遠吠え。
もし暴食ゴーヤが生きていたら、とモモンガ達が怯えて、けれど雷狼を睨みつける事はしなかった。万が一でも恨みを買いたくないのだろうと言うような。
そしてその直後に返って来たのは、別の遠吠えだった。昨日聞いた雄叫びに近いそれの二つ。
「勝ったのか……。じゃ、帰れよ」
そう言うと、雷狼と獄狼の子はチラチラとこちらを振り返りながらも、遠吠えの方へと走って行った。
けれど、見えなくなる前にその親達が雑木林の中から飛び出して来る。
モモンガ達よりも二回り程大きい、その親達だ。
両方とも土に塗れて疲れ果てている様子が見受けられたが、そう強い傷を負っている訳ではない。強いて言えば、獄狼の方の角が片方折れているくらいで。
そして子供達の無事を確認すると、こちらの方を見て来る。
「ウオォーーーーンッ……」
そして遠吠えをすると雑木林の中へと帰って行った。
そこでモモンガ達の緊張が切れたようで、ぐったりと地面に寝転がった。
「そろそろ……会社辞めても良いかな……」
本当に、どうやらここの近くにはその魔訶不思議な生き物が現れる場所があるようだ。そして、俺は少なくとも二匹と友好な……密接な関係を築けている。
「……でも、もう少し待つか」
結局それは、このモモンガ達を周知させるという事であるし、言葉が通じるのならばそうして良いかを先にこいつらに聞いた方が良いとも思う。
「う……ん……」
背を伸ばして、シャワーを浴びる事にする。
そして、シャワーを浴びていると途中電気モモンガがカリカリと扉を引っ掻いてきた。
「え、何だ?」
シャワーを止めると「オォーーンッ」と遠吠えが響いた。
「何だ何だ?」
急いで外に出て、体を拭って服を着直して。
外に出ると、その巨大な暴食ゴーヤの死体と共に狼達が居た。
「これ、くれるってか……?」
俺がそれを指差せば、その親の雷狼と獄狼が近付いて来て、口を近付けて来る。モモンガよりも一回りも二回りも大きいその体の威圧は思わず後退りをしたくなる程だったが、敵意は無い。
そして、一回ずつべろりと顔を舐められた。
「んっぷ」
一瞬で獣臭い涎塗れになった顔を思わず袖で拭っていると、獄狼が前脚を上げて頭をポンポンと叩かれた。
……多分こっちが雌だな、と何となく思う。
それから二匹の子狼が歩いてきて「オォンッ!」と元気な声で返してきた。
しゃがんでそれぞれを撫でてやると、心地良さげな顔をした。
こいつらが親の大きさになるまでにどの位の時間が掛かるんだろうな。
そんな事を思いながら背中の見るからに帯電しそうなチリチリな毛を撫で続けていると、親が帰るぞというように突いてきて、俺は立ち直す。
親がそれぞれ子を咥えると軽く上に投げて、そして子は背中にちゃんと脚から着地する。
「オォーーーーンッ!」
遥か遠くまで届きそうな強く長い遠吠え。けれど、不思議とうるさくない。
そう空に一度吠えてから、ゆっくりとその狼達は去って行った。
一歩一歩の足取りが王者としての風格を備えているようで、ファンが多いのも分かった。
ただ……雑木林の中に消えるまで待ってから、その暴食ゴーヤを見る。
「これ、どうしろってんだ……」
全身には切り裂かれた痕と焼かれた痕が数多にある。雷狼の体躯による攻撃と、そして虫を操っての雷の攻撃だろう。
そして顔面は叩き潰され、目玉は飛び出したのか抜けている。あの前脚から繰り出されるお手の威力が多分これなのだろう。
今更ながらに、その前脚でポンポンと頭を叩かれた事に恐怖を感じた。
モモンガ達も余り近寄りたくない雰囲気を出している。
「まあ、良い契機なんだろうな……」
暴食ゴーヤの死体は、きっと金になる。ウン十万、もしかしたら百万行く程に。
そして、黙っているのにも限界が来ている。逆に言えば、この周りに如何に民家が少ないとしても今まで気付かれていなかったのが奇跡的な事だ。
暴食ゴーヤの事と、そして会社を辞める事を電話しようと家の中に戻ろうとすると、電気モモンガが後ろから押し倒してきた。
そしてひっくり返されて、顔をべろべろと何度も舐められる。
強く抑えつけられ、抵抗も許されずに若干怒っているようでもあり。
要するに。こいつは俺が狼達の臭いを付けられたのがとても不満だった訳だ。
「悪かったよ」
そう言っても、電気モモンガは俺の顔を舐める事を一向に止めず。そんな様子に毒モモンガが近付いて来ると、頭をポンポンと叩いた。
時々投稿するようになると思うけれど、その為にも世界観固めが多少なりとも必要で。
まあ、以下の3つが根幹です。
・モンスター達はこちら側に来る際に、こちら側の人類の歴史を頭にある程度インプットされています。
・モンスター達はある程度こちら側の物理法則に引っ張られて小さく、また弱体化しています。
・また、こちら側の物理法則も多少モンハン側に引っ張られています。
1個目はそうでもしないと発見次第駆除という結論になってしまうから。
2個目はまあ小さくしないとイチャコラ出来ないよね、という。
3個目は龍属性の為だったり。
因みに、イビルジョーはそれを理解する頭があったとしても飢餓からの本能に引っ張られそうだし、ラージャンはそれの理解を拒むと思う。そう言う訳でこちらでも最優先駆除対象。
イャンガルルガは……どうなんだろうな。好むものが殺戮なのか闘争なのかで決まって来る。闘争だとするのならば、人間に逆らった結果が狩人と戦うような心湧き踊るものではなく、遠距離からの射殺というつまらない最期だと理解したならば、多少は大人しくしそう。
他のモンスターはある程度理解しそうかなあ。
また、研究対象として最も重きを置かれているのは龍属性を操るモンスター。未知のエネルギーなので。
次に重きを置かれるのがそれを利用して魔訶不思議な事象を起こす、要するに古龍達。
で、後はどっこいどっこい。
ジンオウガは雷光虫、トビカガチ亜種は毒で多少の研究価値はあるけど、トビカガチはもうほぼ研究価値はありません。その代わりにSEX出来る大きさなので、そっち系の人からは絶大な人気がある。
で、多少のキャラ紹介。
主人公:
察しろ。
トビカガチ:
♀
雨宿りしてたら色々手厚くされたので結構好きになった。
主人公は自分のもの。
ヒグマより膂力はないけど、ヒグマと対峙したらするりと背中に回り込んで首を掻っ切れる。
好物はストレートに美味しいもの。
トビカガチ亜種:
♀
トビカガチの親友。
主人公は良くしてくれて、肉欲も発散させてくれる都合の良い人。
毒は色々成分を体内で変えられて、精力剤にする事も出来るというご都合展開。
ただ、尻尾の棘は猛毒固定。
好物は匂いの強いクセのあるもの。
子供ジンオウガ:
♀
生まれてまだそんなに経ってない。
時々親と一緒に主人公の所に来るようになる。
好物は豆腐。
子供ジンオウガ亜種:
♂
子供ジンオウガとは双子。
好物は白飯。
ジンオウガ:
♂
ジンオウガ亜種と元々別のキャラの元に出す予定だった。
クレー射撃場に顔を出して雷光虫飛ばしてクレーを破壊する、っていう感じで射撃趣味の人と仲良くなるっていう感じで。
ただ、書き始めの形が思いつかなかった。
ジンオウガ亜種:
♀
ジンオウガと番。
イビルジョーに対しては龍属性のブレスを全て引き受けて、ジンオウガにダメージを稼いで貰っていた。
ダメージが溜まったところで押し倒して、頭に全力のお手で止め。
次書くとしたら
-
主人公とほのぼの
-
主人公とエッチ
-
主人公の所に他のモンスター登場
-
他のところのほのぼの
-
他のところのエッチ