昨日の一件のせいか、二人は完全に眠っていた。
シンジはいつもなら既に起きている時間だったが、なかなか寝付けず、飽きることなくアスカの寝顔を見ていたため、寝たのは午前3時を回っていた。
ピッ・・・プシッ。
ドアを開けて入りこんできたのはミサトであった。
(・・・・はぁぁぁ・・・・・アスカ怒ってるだろうなぁぁ・・・)
(せめて、朝風呂にアスカを入れたげよっかな・・・でも・・・二人どうしてたかな・・・。
まさか、これがきっかけで・・・・まさかね、シンちゃんにそんな甲斐性ないしぃ・・・・
でも、アスカが率先したら・・・・ああ、せめて赤ちゃんだけは勘弁してほしいわね・・・・ちゃんと避妊薬、使ったのかしら・・・。)
ミサトは、風呂にお湯を張って、そっとアスカの部屋を開けた。
(いない・・・・やっぱり、夕べは・・・・ああ、どうしよう・・・あの子達しちゃったのかしら・・・・・・そうよね・・・・仕事とはいえ、あの状態のアスカをシンちゃんに押し付けて・・・・。
ばれたら、きっと首かな・・・・しくしく。)
シンジの部屋をそっと開けると、そこには一つの布団ですやすやと眠っている二人がいた。
アスカに至っては、シンジの肩に頭を乗せ、包帯で巻かれた手をしっかりとシンジの首に回している。
「はぁぁぁぁ~。やっぱり・・・・。」
(・・・・・・・どうしよう・・・・・)
シンジの側の布団をそっとまくる。
(あれ?二人ともちゃんと着てるじゃない・・・。でもねシンちゃんの几帳面な性格なら終わった後
着でたという可能性も・・・。)
「シンちゃん・・・・ちっょっと起きて・・・。シンちゃん・・・。」
「ん・・・・・あれ?ミサトさん、おかえりなさい。」
「シンちゃん・・・静かに起きて居間まで来てくれる?」
「はい・・・あれ?アスカ・・・いつのまに・・・・・・」
「そっとね・・・。」
「はい・・。」
「ねえ、シンちゃん・・・・・急な仕事でね・・・二人をほっぽり出したのは悪かったと思っているわ・・・・。」
「大変だったんですよ・・・この二日間。」
「ええ、本当にごめんなさいね。」
「アスカ・・・泣きながら恥ずかしがってました・・・。かわいそうで・・・・。」
「でね・・・・シンちゃん・・・・ズバリ聞くわ・・・アスカと・・・その・・・最後まで、しちゃったの?」
「え?・・・えと・・・そのっ・・・」
シンジの部屋の襖がスラッと開くと、アスカが出てきた。
「「アスカ!」」
「ミサト!あたしシンジと寝たわよ。」
がっくりと肩を落とすミサトにさらに追い討ちをかけていく。
「昨日ね、お風呂に入れてもらったの。もちろんシンジによ!ぜーんぶきれいに洗ってもらったのっ。 そのあとは解るでしょ!」
「アスカ・・・昨日は・・・」
「シンジは黙ってて!」
「・・でも・・・・はい。」
「シンちゃんは、優しくしてくれた?」
「もちろんよ、とってもね。」
「うん。二人が幸せになってくれればそれでいいの。できるだけ協力するわ。でもね・・。」
「でもなによ。」
「まだ・・・ちょっち赤ちゃんは早いかなって・・・。お薬ちゃんと使ったの?」
「使う暇なんかないわよ。昨日危ない日だったから、出来ちゃったかもね。
そうなったらあたし生むからね!ミサトも必死で協力するのよ!いい?」
「はうっ・・・・・・しょんなぁぁ・・・・」
(ああぁぁぁ・・エビチュな生活が遠のいていくぅぅ。)
「なによ、ほっぽり出して行ったのはミサトじゃない。」
「(ねえ、アスカ・・・もうそこらへんで・・・・。)」
「(あんたってほんっ・・・・とに甘いわね。少し灸を据えてやらなきゃ)」
「ミサトさん、僕たち最後までまだなんです。」
「あによ、シンジ、もうばらしちゃうの?」
「えっ?」(きょとん)
「だってアスカ、ミサトさんがかわいそうだよ。」
「あによっ!シンジに全てをさらけ出さなきゃならなかった、あたしはかわいそうじゃないって言うのっ?!あたし、どんなに恥ずかしかったか・・・。」
「あんたたち、まだだったの??・・・・・・・・よかった・・・・・。」
「よかぁないわよっ!」
「「え?(はい?)」」
「いや・・・そういう意味じゃないっ!と、とにかく反省してよねっ!」
「ひゃい。」
「アスカ・・・もう許してあげようよ。ミサトさん疲れているみたいだし。」
「ありがと・・・シンちゃん。 そうだ、アスカ・・・お風呂入っているけど入る?手伝ってあげるから。」
「・・・・・結構よ!シンジが手伝ってくれるから。あんたなんか頼りにするより、シンジの方がよっぽどマシよっ!」
「そうね・・・そうよね。じゃ、シンちゃん、アスカのことお願いね。」
「ミサトっ!こうなった原因はあんたにあるんだから、あたしたちがいちゃいちゃしても、何も言わせないからね。」
「・・・・・・・アスカ・・・・・・・(いちゃいちゃ・・・って・・・)」
「はいはい。しかたないわね。 じゃあたしは寝るわ。」
「ふんっ!勝手に寝ればいいわっ!」
~翌朝~
「はい、麦茶。」
コトリとシンジはテーブルにストロー付きのグラスを置いた。
「シンジっ、トイレ!」
「はいはい。」
シンジはアスカのトイレを済ますと、話し出した。
「ねえ、アスカ・・・。」
「あによ。」
「まだ、怒ってるの?」
「うん、少しね・・・このままんまじゃ気がすまないわよ。」
「アスカ、気持ちはわかるけど、許してあげようよ。」
「シンジったらホントに甘いのね、だれにだって優しいし。いい?今後はあたし以外優しくしちゃだめなんだからね。」
「・・・・・・そうだ、アスカ。なんかプレゼントしてあげるから、機嫌なおしてよ。」
「・・・・・・しかたないわね。じゃ、シンジに免じて許してあげるわよ。そのかわり・・・そうだ、指輪買ってよ。」
「へっ?指輪?」
「そうよ、スティディリング・・・・よりも婚約指輪が良いわ。」
「うん。いいよ。でもその手じゃはめられないよ。」
「なおったら、すぐに買いに行くわよ。いいわねシンジっ。」
「うん。」
カシャンッ。
シンジは、自分の首に強固な鎖が繋がった気がした。
「シンジ、着替え手伝いなさいよ。」
「どっか出かけるの?」
「そうよ、必要なものを買いにね。」
「じゃ、朝ご飯の準備するね。」
「早くね。」
簡単に朝食を済ますと、二人は街に出ていた。
「シンジ、こっちよ。」
「これって、家具屋さんだよね。 壊れた家具は先々週取り替えたばかりだし・・。」
「なに、ぶつくさ言ってんのよ。ベットよベット。」
「えっ?だってベットなんか壊れてないよ。」
「ミサトに買わせるのよ。それで勘弁してあげるわ。」
「はぁ・・・そんなもんかなぁ。(でも、なんでベット?)」
「いいのよ、これぐらい。」
「あ、アスカ。これなんかどうだい。」
「だめよ、シンジっ、もっと大きいのじゃなきゃ。」
「おおきいって、シングルは大体おなじ・・・」
「いい?シンジ、ダブルベットを買うのよ。」
「たしかに、広くていいだろうけど・・・。」
「なに言ってんのよ、一緒に寝るのよ。」
「ええっ!だってまだ・・・僕ら・・・」
「なによ、やっぱり捨てる気なのね、あんなことまでしておいて・・・ひどいっ。・・・ううっ・・・」
「あ、アスカ泣かないでよ・・・わかった。少し早いと思うけど・・・いいよ。」
(・・・い、生殺し地獄だよ・・・それって。)
「へっへっ~。じゃ行きましょう。」
(・・・・・・・アスカ・・・・泣きまねなんて・・・いつの間に・・・覚えたの?)
二人は、配送を頼んだシーツや掛け布団もサイズが違うので使えないとアスカの意見で全て揃え直したため、かなりの荷物量になっていた。
「じゃ、この住所にお願いします。あと、古いベットも引き取ってもらえます?」
「はい、別途でこれぐらいかかりますがよろしいですか?」
「いいわよ、お願いね。」
「お支払いは、いかが致しますか?」
「配送時に支払うわ。領収書持ってきてね。」
「はい、かしこまりました。ありがとうございましたぁ。」
「さ、シンジ。次に行くわよ。」
「えっ、これ以上はミサトさん大変だよ。」
「違うわよ、今度はあんたに買ってもらうのっ。」
「えっ、僕の?」
「指輪、買ってくれるんでしょ?」
「ああ、そうだったね・・・なんか進展が早くて・・・。」
「苦労は買ってでもしろって言うじゃない。」
(・・・・アスカ・・・それってちょっと違うと思うけど・・・)
「ボヤボヤっとしないの、しっかりしなさいよ。」
宝飾店へ入り二人が指輪を物色しだすと、店員はすかさず寄ってきた。
「どのような物をお探しですか?」
「婚約指輪を見せてちょうだい。」
「・・・・・・・・・・はい?」
「だから、婚約指輪よ。」
「は、・・・はい。」
怪訝そうな、店員はそれでも二人をそのコーナーに案内した。
当然である。中学生のカップルが婚約指輪を買いに来たのだ。
「あのぅ、一般的にはダイヤか誕生石ですけど、高いのよ?大丈夫?」
「シンジ、大丈夫でしょ?」
「あ、うん、この前の振込みで足りると思うけど。」
「これ、見せて。」
アスカは、ダイヤモンドがリングの上にあしらわれた指輪を取り出させた。
「ちょっとお高いですけど、いいものですよ。」
「決めたわ、シンジ。これにする。」
「あの~。お支払いは・・・。」
「シンジ。」
「あ、うん。これですけど。」
「こ、これはネルフのカード!」
店員はびっくりしている様子だ。
(しまった!もっち高いの売りつければよかった。)
「ありがとうございます。では、・・・サイズはどうしましょう。そのお手では・・・・。」
「サイズは8号ね。」
「では、少し直しが必要ですね、2週間ほどいただけますか?」
「え、そんなにかかるの?」
「はい、申し訳ありません、彫金師がサードインパクトで・・・・。」
「そう、しかたないわね。じゃお願いするわ。」
「ありがとうございましたぁ!!」
店員の異様に明るい声に送られ、二人は店を後にした。
「さ、シンジっ、帰るわよ。」
「そうだね。」
(・・・・ミサトさん・・・大丈夫かなあ・・・・そうだ、お金は僕がこっそり立て替えよう。)
「あ、アスカ。ちょっとキャッシュディスペンサーに寄って行っていい?」
「いいわよ、早くね。」
「うん。」
「「ただいま。」」
「あらぁ、二人ともお帰り。いいわねぇ、さっそくデート?羨ましいわ。」
「買い物よ、カ、イ、モ、ノ。それより、ミサト、今日荷物が届くからお金用意しておいてね。それで勘弁してあげるわ。」
「ベットよ、ベット。あたしたちの。」
「ええっ!」
「二人のって・・・・。」
「いいじゃない、フィアンセなんだもの、シンジはあたしの部屋に住むのよ、一緒にね。
フィアンセが物置に住んでるのって許せないわ。」
「ア、アスカ・・・やっぱり・・・。」
「なによ、またさっきのぶり返す気?シンジ?」
「・・・・・・・・・・わかった、アスカの好きにしていいよ。」
「好きにって・・・シンちゃん・・・・。」
「ええ、ミサトさん、夕べ決めたんです。二人で一緒に生きていこうって。」
「はぁ、ならもうなにも言わないわ。」
(今からすっかり敷かれてどうすんのよ!ってシンちゃんとアスカじゃなぁぁ。)
「さあって、部屋の間取りを考えなくっちゃ!シンジ、決まったら手伝いなさいね。」
「うん、わかった。」
アスカが自分の部屋へ入ったことを確認してから、ミサトは小声で聞き出した。
「・・・ねえ、シンちゃん・・・ベットっていくらなの?」
(エビチュがぁぁぁぁぁ)
「ミサトさん、これ、使ってください。」
シンジはそっと銀行の封筒を差し出した。
「シンちゃん・・・これって・・・。」
「半分は、僕にも責任があります。どのみち一緒になったら、遅かれ早かれですから。」
「ごめんね、シンちゃん。ありがたく使わせてもらうわ。」
「はい。但しアスカには・・・。」
「わかってるって。」
「シンジぃ~、ちょっと来てよ。」
「なんだい。」
答えるとシンジもアスカの部屋へと向かった。
「ちょっち、早すぎる展開だけど・・・まっ、いっか。幸せになんなきゃダメよ、あんたたち。」