あれから、2週間後、最初寝不足だったシンジもすっかり慣れ、アスカの手も元通りになっていた。
シンジが二人のベットで目を覚ますと、いつも居るアスカはいなかった。
「・・・・あれ?アスカ。どこいったんだろう。トイレかな?」
「あ、おきたのね。シンジ、ネルフ行く前に、この間の指輪の店に行くわよ。」
「うん、いいけど。じゃ、朝ご飯作っちゃうね。」
(めずらしいな・・・・雨降んなきゃいいけど。)
サイズ直しを頼んだ婚約指輪はピッタリだった。
アスカは満面の笑みを浮かべて、自分の左手の薬指にはまった指輪を眺めている。
「お客様、是非結婚指輪も当店で・・・ありがとうございましたぁ!」
そして、元通りとは行かないまでも、ほとんどの機能が回復したネルフでは、今日もシンジたちの訓練が行われていた。
「パン!パン!パン!パン!パン!パン!」
「バン・・・バン・・・バン・・・バン!」
シンジとアスカの射撃の音が響いていた。
「アスカ、すごいね。速射でちゃんと当たってる。」
「へへん、あたりまえじゃない。ドイツじゃ銃の訓練も受けてたのよ。
それにシンジだって、センター外してないじゃない。」
「アスカのは僕のと似てるけどなんていう銃?」
「あ、これね、ノースアメリカンアームズのガーディアン38口径よ。でもコンパクトでしょ。」
「38口径って、反動すごくない?」
「要は慣れよ慣れ。」
「シンジったら、男なんだから、もっと大きな銃にしたら?」
「護身用だからね、常に持ち歩きを考えるとちょっとね・・・。それに重いし。」
「アスカ君、その銃はもっと体の重心を前に持っていくといいよ。」
「了解。青葉さん。」
「それじゃ、二人とももう一連射ね。」
「「はい。」」
「パン!パン!パン!パン!パン!パン!」
「バン・・・バン・・・バン・・・バン!」
「ねえ、シンジ、ちょっととっかえっこして撃ってみようよ。」
「青葉さん、いいですか?」
「いいよ。」
「じゃ行くわよ。」
「バン!バン!バン!バン!バン!バン!」
「パン!・・パン!・・パン!・・パン!・・パン!・・パン!」
「な、なによこれ!ぜんぜん当たらないじゃない! 」
「・・・撃ちやすいよこれ・・・」
シンジの撃った的は、全てセンターの2cm以内に集中していた。
「ん、シンジ君のは強装弾を使用しているからね。だから音も違うだろ。」
「んむぅ・・・なんか悔しいわね。」
「あ、シンジくん、来週からコンバットシューティングの訓練にはいるからね。今日のところはここまでね。ちゃんと銃は分解して綺麗にしとくんだよ、いざと言うとき回転不良じゃシャレに成らないからね。」
「「はい。(は~い。)」」
「ねえ、シンジ。明日から学校再開するようだけど、どうするの?」
アスカは、レンジに付属する整備室で銃の手入れをしながら話し掛けていた。
「うん、大検受かったから、9月から新設されるネルフの大学に行くことになると思うよ。」
「あたしも、どうしよっかなぁ。」
「だって、アスカは大学出てるじゃないか。」
「うん、でもね、あたしが履修したのは産業工学なのよ。でも、電子工学もやってみたくなったのよね。」
「じゃ、僕と一緒に行く?」
「そうね、そうするわ。でも、学年違うかもね。あたしは3年次から履修することになると思うから。」
「大丈夫だよ、きっと追いつくから。飛び級の制度も取るって冬月司令言ってたからね。」
「うん、出来ればシンジと一緒に卒業もしたいな。」
「そうだね、司令に相談してみようよ。」
「ええ。」
『(キョロロン!)作戦課の碇シンジ准尉、および惣流少尉は至急司令室に出頭してください。くりかえします・・・』
「シンジ、いくわよ。」
「珍しいね、呼び出しなんて。」
プシッ。
「ああ、二人ともちょっち作戦室に来てちょうだい。」
「なにかあったんですか?」
「二人ともよく聞いて、ドイツにエヴァがあったわ。」
「やっぱり・・・。」
「それでね、アスカあなたにドイツに一緒に行ってほしいのよ。」
「期間はどのぐらいなの?」
「積み込みや、付属設備の移設・・・なんだかんだで、3ヶ月はかかるわね。」
「長いわね・・・もっと短くならないの?それにあたしじゃなくっても・・・・。」
「アスカ、実はね、あなたのお父さんから退役申請が出てきてるのよ。」
「はん、なにを今更。親の顔する権利があると思っているのかしら。
あいつは、ママと私を捨てたのよ!」
「アスカ、それでも彼は法律上の親なのよ。国連としても無碍にはできないのよ。
あくまでも私たちはあなたの意思を尊重するわ。」
「ふん!あんな男、父でもなんでもないわ!どうせ血なんか繋がってないんだし。
ねえ、ミサト。いっそ日本に帰化できないかしら。」
「そう言うと思っての3ヶ月なのよ、いいの?法廷闘争になるわよ。
ま、今までのことを考えれば、勝つ可能性は大きいけど。」
「しかたないわね、シンジも一緒でしょ?」
「あら、シンちゃんには、こっちでの仕事があるのよ。」
「いやよ、そんな長く・・・・」
「はいはい、愛するシンちゃんと離れるのはつらいでしょうけど、仕事なのよ、シ・ゴ・ト。(ちきしょーリア充がっ!!)」
「なっ、なによ。私はそんなこと・・・・。」
「アスカ、エヴァはまだここに必要なんだ。まだキールが捉まっていないし。
他の国で開発している可能性だって残ってる。抑止力として必要なんだよ。」
「う、・・・うん。わかってる。出来ればあたしたちの世代で無くしたいわ。」
「それはそうと帰化についてだけど、二人の意思がはっきりしているのなら、なおさらよ。
シンちゃん。アスカをしっかりと捕まえておくのよ。
さて、そうときまったら、アスカ、あなたの養子先となる冬月司令にお願いに行くわよ。
司令はアスカの養子を買って出てくれたのよ。シンちゃんも一緒にいらっしゃい。」
「「はい。」」
「あ、ミサトさん。僕の仕事って。」
「そうそう、二人があんまりラブラブなんで忘れるとこだったわ。
実はね、キールの動きが見えてきたのよ。あなたには、保安部と協力して追い込んでほしいの。
詳しくはこの資料に書いてあるわ。」
「はい、待ってろキール・・・。」
「じゃ行動開始っと。」
「冬月司令。葛城少佐です。碇、惣流両名、同行しました。」
プシッ。
「やあ、待っていたよ。葛城君、惣流くんは了解してもらえたかね。」
「はい。二人の意思もはっきりしてますし、彼女の意思も確認しました。」
「よかった。惣流くん、本当に私でかまわないかね。」
「はい。ありがとうございます。」
「ん、来月には私もドイツに行くよ。それまでは葛城くん準備をたのむぞ。」
「はい。お任せください。」
「あの、アスカが行くのはいつからですか?」
「来週からよ。」
「「ええっ、5日後ですか。」」
「それとだな・・・・おお、これだ、シンジくん。」
「はい。」
「少尉任官おめでとう。来週には、辞令が出る。それと、作戦部から保安部への一時出向となる。」
「君のゼーレ残党の追跡が認められたのだよ。」
「やった、シンジ。一緒ね。」
アスカがこぼれるような笑顔で言った。
二人で夕食を取った後、お茶をすすりながらアスカが話し出した。
「ねえ、シンジ・・・。明日学校行ってちゃんと話してこなくっちゃね。」
「そうだね、僕は飛び級で進学、アスカは留学と仕事でドイツ。で進級という話でね。」
「ねえ、あたしのいない間、浮気したらだめよ。」
「ん、そんなことしないよ。」
「ちゃんとヒカルに頼んで行くからね!あんた最近、妙にかっこ良くなってきたから心配なのよ。」
「大丈夫だよ、絶対にしないよアスカ。」
ピルルルルッ、ピルルルルッ、ピルルルルッ。
「あ、ごめんアスカちょっとまってね。」
カチャ。
「はい、葛城です。」
『あ、シンちゃん。今日どうしても帰れそうにもないのよ、留守番宜しくね。』
「はい。あんまり無理しないで下さいね。」
『ありがとシンちゃん。ところで二人っきりだからって、子作りしちゃだめよん。』
「なっ、なにいってるんですか、僕らはまだ・・・」
『そ、二人ともちゃんと結婚してからね、そういうことは。はははっじゃあね。』
「なに?ミサトまた遅くなるの?」
「うん。今日は帰れないって。」
「そう。」
「じゃ今夜は、この間の大人のキスの続きでもしてもらおうかなぁ。ねえ、シンジ」
「えっ?ええっ?」
「なによ、これから3ヶ月も会えないのよ。来週までは目いっぱい甘えてやるから覚悟しなさいよね。」
「うっ・・・・・・・・・・。」(ここしばらくオナニーだってしてないのに・・・もう自制する自信が・・・・)
「アスカ、お風呂いいよ。先に入っちゃってくれる?」
「そうね。そういや、昨日DVD借りてきたから後で一緒にみましょうよ。」
「うん。いいよ。」
ピルルルルッ、ピルルルルッ、ピルルルルッ、ピルルルルッ。
カチャッ。
「はい、葛城です。」
『あ、碇くん?洞木です。アスカいます?』
「やあ久しぶり、ちょっとまってね。」
「アスカ、洞木さんだよ。」
「久しぶりじゃない。」
『アスカっ!元気にしてた?』
「うん、いつ帰ってきたの?」
『昨日なの、ごめんね。ちょっと連絡できる状態じゃなくって。』
「いいのよ、そんなこと。それより明日から始まる学校で会えるんでしょ?」
『ええ、ねえ、アスカ、今から会わない?』
「ええ、良いわよ。そっち行く?」
『ううん、もしよければ、私がそっち行って良いかしら?』
「良いわよ。お茶用意して待ってるわ。」
『うん、じゃ。』
「洞木さん元気そうだった?」
「ええ、ただなんとなく声に張りがないような・・・久しぶりだからかしら。」
「じゃ、僕お茶の用意するね。」
ピンポーン。
「やあ。いらっしゃい。洞木さん。」
「きゃぁ、ヒカリぃ、久しぶり!さ、上がって。」
「今日は夕飯食べてくでしょ?」
「碇くん、ごめんなさいね、突然お邪魔しちゃって。」
「大丈夫だよ、それよりみんな元気だった?」
「ええ、クラスのみんなは元気よ、ケンスケだけはまだ第2東京だけど。」
「あら、シンジが3バカ組めなくなっちゃうわね。」
「実は、ケンスケくんお父さんが帰ってこなかったらしいの。親戚もほとんどいないらしくて、孤児院に行くって・・・。」
「そう・・・・。孤児院に・・・・・。ケンスケ・・・・。」
「シンジ、友達なんでしょ。連絡あとで取ってみたら?ねえ、ヒカリ、ケンスケの居場所知ってるんでしょ?」
「ええ、知ってるわ。碇くん後で教えるわね。」
「ねえ、ヒカリ、あとはみんな帰って来てるんでしょ?」
「ええ、でもね、親が未帰還者で孤児になったりして、結構別々になっちゃうみたいね。
さびしいけどこれが生きるための現実かも。そう、綾波さんとも連絡が取れないの。碇くんなら知ってると思って・・・・。」
「洞木さん・・・・・・・・綾波は・・・・・もう帰ってこないんだ。」
「そう・・・・。綾波さんって、なんとなくそんな雰囲気の人だったものね。」
「元気だしてよ、ヒカリ。あんたんとこは、大丈夫だったんでしょ?」
「・・・・・・・・・・」
「ヒカリ・・・・・・・・。」
「お姉ちゃん・・・・・・・帰ってこなかったの・・・・・・・・・。」
「「・・・・・・・・・・・・・」」
「洞木さん、お父さんや妹さんは大丈夫だったの?」
「・・・・・・・・うん。」
「そう・・・・・・・・。ごめん。」
「シンジ・・・よしなさい。」
「でも・・・。」
「今回のことは、ゼーレが全て悪かったのよ。あんたが悪いわけじゃないわ。」
「そうよね、碇君は人類を救ったのだもの・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・」
シンジは、答えることが出来なかった。
身近な人の未帰還者は、シンジの心を暗くさせた。
「それより、ごはん食べてくでしょ?」
「うん。でも・・・・・・・・。」
「大丈夫よ。今日はミサトも帰ってこないみたいだし。」
「じゃ、僕は準備してくるね。」
「あ、碇君手伝うわ。」
「大丈夫だよ、洞木さん。今日は鍋だから材料切るだけだしね。それより、二人で積もる話もあるでしょ。」
「うん、ありがとう碇くん。」
「アスカぁ、お鍋そっち持っていくからテーブル片してくれる?」
「いいわよぉ。」
「いいわね、二人とも。なんかこうして見てると夫婦みたいよ。」
「ヒ、ヒカルっ・・・なんであたしが・・・」
「アスカ~、その左手に光っているものは、何かなぁ?」
「おめでとう、って言っていいんでしょ?アスカ。」
「う・・・うん。」
アスカは茹蛸のように真っ赤にり、俯いてしまった。
「碇くんもおめでとう。でいいのよね?」
「ありがとう。洞木さん。」
「アスカ、絶対に碇くんの手を離しちゃだめよ。 碇くん、アスカを必ず幸せにしてあげてね。」
「さ、こんな日は、これね。」
「アスカ・・・それってミサトさんの秘蔵の・・・・。」
「あら、大丈夫よ少しだけだから。再会のお祝いよ。なんてったって、鍋には日本酒よぉ。」
「ねえ、アスカ。指輪見せてもらっていいかしら。」
「いいわよ。はい。」
アスカは、指輪を外すと、ヒカリの手のひらに乗せた。
「とっても、きれい・・・・。これってダイヤよね・・・・いいなあ。アスカは。」
「あんたも、鈴原に買ってもらいなさいよ。」
「あっ、あったしは別に・・・。」
「僕らでよかったら、いつでも二人の相談にのるよ。ねえ、アスカ。」
「そうよ、あたしたち親友じゃない。今更隠してどうするのよ。」
「そうね、でもあいつ碇くんより鈍いから・・・・。」
「それより、二人はスティディになったのよね。」
「ううん、あたしたち婚約したの。」
「ええっ!ホント?碇くん!いつ?」
「うん。まだ正式なことはなにもしてないけど、二人では約束したんだ。」
「でも、よくミサトさん許してくれたわねぇ・・・・もしかして、まさかアスカっ・・・。」
「なにいってんのよ、ヒカリ。あたしたちはまだよ。」
「そうよ、赤ちゃんが先だなんて・・ふっ、不潔よぉ。」
「でも、いいなあ。あこがれちゃうわ。」
「でも、思い切った事よねぇ。こりゃ学校はじまったら、大騒ぎね。」
「それよりヒカリ、お願いがあるの。」
「なぁに、アスカ。」
「実は、あたし仕事で3ヶ月ほどドイツに行かなきゃなんないのよ。」
「あら。」
「でね、その間、シンジを見張っててほしいのよ。」
「見張るって?」
「変な虫が付かないようによ。こいつって、柔順不断なところがあるから、断れずズルズルとなんていうことも考えられるんだもん。」
「僕って、信用無いんだな・・・・。」
「だって、3ヶ月もよ。あんたのその優しさが、あたしだけだったらいいけどね・・・。」
「大丈夫よ、アスカ。ちゃんとあたしが見張っててあげる。」
「うん、お願いね。」
「ねえ、アスカ。学校には・・その。」
「なに、婚約の事?」
「うん。」
「別に知らせる必要も無いと思うし、それに9月からはあたしとシンジは大学だから。」
「ええっ!碇君が大学?」
「こいつね、大検に合格したのよ。」
「碇くん、すごい。おめでとう。でも、あなたたちって本当に驚かせてくれるわね。」
「ごめんね、隠してたわけじゃないけど、大学の受験は、これからだから。」
「いまのシンジなら多分受かるわよ。」
「でも、そうなるとお別れね。寂しくなるわ。」
「大丈夫よ、9月からネルフ研究付属機関で大学ができるのよ。同じ市内だからいつでも会えるわ。
それにあたしたちはいつまでも友達でしょ?」
「うん、そうね。でも、アスカって、大学卒業したんじゃなかったっけ?」
「うん、でも他の勉強もしてみたくなったのよ。」
「すごいなあ、二人とも。 」