ブンッ、ブンッ、ブンッ、ブンッ、
シンジの携帯の振動アラームが枕の下で朝を告げていた。
携帯を取り出し、アラームを止め、時間を見る。
(・・・・今日から学校か・・・・。そうだ、お弁当作らなくっちゃ。)
アスカを起こさないように、静かにベットから起き出すと、自分のトランクスを探した。
アスカの下着や自分のTシャツをかき集め、洗濯籠に入れると、着替えて朝食の準備に取り掛かった。ついでに、ティッシュで一杯の屑篭を持って部屋を出る。
(なんか夢みたいたな・・・・アスカと・・・・・)
ベットが動く感覚がしたためアスカは、自分の隣を探った。
いるはずのシンジの体は無く、どこまでもシーツが手に絡むばかりだった。
ふと、夕べの事が、夢ではなかったのかと感じられ、言いようの無い不安に駆られた。
「・・・シンジぃ・・・・・・・・・・・・シンジぃ・・・・どこぉ?」
台所からは、カチャカチャと食器の音がする。
「シンジぃっ!・・・。」
パタパタパタ、スラッ。
「おはよう、アスカ。」
シンジが部屋に戻っ来て、ベットに座った。
「ん・・・・・ねっ、朝の・・・・・」
「アスカ、今日は学校だよ、早く起きて。お風呂入れてあるから。」
「やだ、キスしてくんなきゃおきないわよぉ。」
「・・・(やれやれ)・・・・」
チュッ。
「もっとぉ・・・・。」
「アスカ、時間がなくなるよ、それより何か着てよ、目のやり場が・・・。」
彼女の胸がすっかりあらわになり、綺麗なピンク色の乳首が朝日を浴びていた。
「きゃっ・・・シンジのえっちぃ・・・・。」
「ほら、遅刻するよ。」
「ん、わかった。」
「ね、シンジ・・・あたしきれい?」
シャワーの後、制服に着替えたアスカがくるりと回った。
ボックスプリーツが少し広がり、細くしなやかな足があらわになる。
「・・・うん、今日も綺麗だよ。」
「ふふふっ。(今日から、あたしは、大人の女・・・・嬉しい・・・)」
「さ、早く食べちゃってよ。」
「うん。」
シンジは、焼きあがったトーストをアスカの皿に乗せ、バターのカップを開けた。
「ね、シンジ。お醤油とって。」
「はい。」
「ありがと。」
「ジャムいる?」
「うん、ちょっと頂戴。」
「んー、コーヒーがおいしいわ。」
「あ、アスカ、そろそろ出ないと。」
「そうね、行きましょ。」
「ア・・・アスカ。」
「なに。」
「腕組むのよさない?」
「どうしてよ。」
「だって、なんかすごく目立っちゃってるよ・・・僕ら。」
「なによ、良いじゃない。それともこのあたしと組むのが嫌なの?」
「そうじゃないけど・・・みんなに・・・」
「あたしは大丈夫よ、それよりあんた自分がからかわれると考えてるんでしょ。」
「・・・それはないけど・・・。」
「・・・・はじき飛ばしなさいよ。そんぐらい。こんな美人を妻にするのよ。少しは自分に自信持ちなさいよね。」
「・・・(妻って・・・)・・でも、アスカ・・・。」
「ま、校門が見えたら、離してあげる。」
「・・うん。(でもアスカ、顔から火が出るほど恥ずかしいよ・・・)」
「よっ!センセ、久しぶりやな。なんや、再開初日から夫婦でアツアツかいな。かぁ~、見せ付けてくれんのぉ~。」
「あ、トウジひさしぶり。」
「見たでぇ、おまえらやっぱりそうゆう関係やったんか。」
「あによ、あんたには関係ないでしょ。」
「朝から熱つうてやっとられんわ。ホンマ。」
「それより、トウジ。ケンスケはまだ第2東京なんだって?」
「ああ、戻ってくるかどうか解らへんな。」
「そうか・・・。」
「シンジ。そろそろ急がないと遅刻するわよ。」
「あ、そうだね。行こう。」
ガヤガヤガヤ・・・。
「なあ、センセ、惣流どないなっとんのや?なんか、雰囲気違うで。」
「・・・そ、そうかな。別に変らなくみえるけど。」
アスカは、ヒカリと楽しそうに談笑していた。時折、シンジの方をちらっと見ている。
頬はピンク色に上気したままだ。
「ねえ、アスカ、ドイツ行きは今日話すの?」
「ええ、今日のSHRで話すつもりよ、さっき先生にも言ってきたもの。」
「あ、始まるわよ。」
「起立っ・・・・礼っ」
「はい、みなさんおはようございます。今日は学校が再開され・・・・。」
暫く連絡事項が続いたあと、アスカの出番となった。
「・・・・・・では詳しくは、惣流さんから。」
「はい、え~、仕事の都合で、ドイツに行く事になりました。3ヶ月ですが、その後は日本へ戻って
きます。でも、そのまま今度新設される大学に行く事になりますので、皆さんとは今週でお別れです。
みなさん、いままでありがとうございました。」
「すげえ・・」、「ほんとかよ・・・」、「・・・なんで・・・」
さまざまな声が飛び交った。
「さあ、昼や昼や。」
「アスカ、はい。お弁当。」
「ありがと、シンジ。」
「そうだ、またみんなで屋上で食べましょうよ。」
「そうだね。行こう。」
「わあ、相変わらず碇君のお弁当ってすごいのね。」
アスカとトウジは黙々と食べている。
「そんなことないよ、洞木さんのお弁当だって、正に愛妻弁当って感じだものね。」
「ぐっ・・・・ぐほっ・・げほげほっ」
「なにやってんのよ、鈴原・・・。ほら、ハンカチ。い、碇君もからかわないでよ。」
「あははっ、あんたたちお似合いだわよ。」
「あ、アスカまで何言ってんのよ。もう。」
「なあ、いいんちょ、しっとるか?こいつら朝、腕組んで登校しとったんで。」
「え?う、うん。そうよね。」
「なんや、いいんちょ、しっとんのか?」
「だって、二人とも婚約したんだって。」
「なにぃぃぃぃ!!!ホンマかセンセっ!!」
「ほら、鈴原。アスカの左手見てみなさいよ。」
「うおぉぉぉ。センセも思い切った事するやっちゃなあ。」
シンジとアスカは、真っ赤になったままフリーズしていた。
「さ、早く食べちゃいましょ。お昼終わっちゃうわ。」
「ぷはっ・・・食った食った。ごちそうさん、いいんちょ、うまかったわ。」
「それはそうと、碇くんたちは、まだネルフで仕事してるの?」
「うん、今は公開されているから話してもいいかな。実は、僕らは軍人なんだ。
ネルフが国連軍の正規軍に組み入れになって、二人とも任官したんだ。」
「へぇ、そりゃすごいな。」
「でも、実際には戦いは終わったんでしょう?それなのに・・・。」
「うん。たしかに戦いは終わったように見えるけど、まだその可能性が消えた訳ではないんだ。
また、いつかどこかの国がエヴァを作るかもしれないし、ゼーレの首謀者も捉まっていないしね。」
「それに、エヴァに乗れる人は限られているの、まして、それに乗って戦えるのはごく一部よ。」
「じゃ、なんやお前らその抑止力って訳なんか。」
「そうね、あたしたちは昔の核兵器みたいなもんね。」
「だから、僕らは自ら望んで仕官したんだ。二度と戦いを起こさせないためにね。」
「そう、エヴァ一機で世界をも征服できる力があんのよ。」
「そら、物騒やな。」
「そうよね・・・・戦いはもうたくさんだわ。あたしなんかシンジがいなきゃ、ここにはこうして居な かったもの。」
「でもね、平時は簡単な訓練程度なんだ。普通の兵士みたいな仕事はないし。非常勤みたいなものかな?」
「給料とかはもろてんのか?」
「うん、一応ね。こうやって学校にこれるのもそれのおかげだしね。でも、エヴァが完全に必要なくなったら、軍は辞めるつもりだよ。」
「シンジ、医者になるんだもんね?」
「アスカ・・まだ決まったわけじゃないよ。目指すだけだから。」
「すごいな、二人とも。じゃ、アスカは将来お医者様の奥様ね?」
「ヒ・・ヒカリ・・恥ずかしいじゃない。そんなこと・・。」
「わっはっはっ、ええなあ。応援しとるでシンジ!」
「ト・・・トウジ・・・トウジこそ、洞木さんちゃんと捕まえておかないとね。」
「うっ・・・ワイは別に・・・いいんちょとは・・・・」
「そ、そ、そうよ・・・鈴原とは・・・・」
「「二人とも往生際が悪いよ(わよ)」」
「「アスカ(シンジ)から全部聞いてるよ(わよ)」」
二人のユニゾン攻撃が決まった。
トウジは真っ赤になって撃沈。
ヒカリに至っては、顔を同じく真っ赤にして、いやんいやんをしている。
明るい日差しの屋上では、さわやかな風が吹き抜けていった。
「どや、センセ、帰りにゲーセンでも・・・・・」
「鈴原!あんたは掃除当番でしょ!」
「う・・・見つかってもうた・・。」
「いいから、こっちいらっしゃい!」
「鈴原、少しは気つかいなさいよ。アスカあとすこしでドイツ行っちゃうんだから。」
「おお、そやな・・。」
「シンジ!悪い。わし、掃除やから、またこの次な。」
「うん、かまわないよ」
「シンジ!帰るわよ。じゃぁね、ヒカリまた明日ね。」
「うん、またね。」
プシッ。
「「ただいま。」」
「おかえり~二人とも。」
「あれ?ミサトさん帰ってたんですか?」
「そう、ドイツ行きの準備もあるしね。アスカもそろそろ準備したほうがいいわよ。」
「そうね、じゃシンジ手伝ってよ。」
「はいはい。」
「うふん、シンちゃん大変ねえ。我侭な奥さん貰うと。」
「ミサト~、それって、ケンカ売ってんの?」
「まあまあ、アスカ、それより準備しちゃおうよ。」
「ふんっだ!!」
「シンジ、あんた、あたしの写真もってる?」
「うん、みんなで撮った写真ならあるけど・・・」
「はい、じゃこれ。」
「これって・・・アスカの・・・」
「そうよ、これちゃんと飾っておきなさいね。」
「うん、ありがと。大切にするね。でも、これ良く撮れてるね。」
「相田が撮ってたのよ。あいつこれ売って商売してたんだから、このぐらい貰ってもバチは当たらない
わ。シンジのだって、そうよ。」
「もしかして、これ?」
アスカのスーツケースに入っている写真立てを手にとった。
「そうよ、結構売れてたみたいよ。あんたの写真。」
「さてと、後は前日に整理するだけね。」
「うん、お茶にしようか。」
「あら、二人とももう終わったの?」
「あとは、前日に準備するだけなのよ。ミサトはもういいの?」
「ん、あたしはスーツケース一つよ。あとは現地調達よん。」
「ね、シンジっ。お茶にしよ?」
「うん、カステラあるから切ってくるね。」
「あら、このカステラおいしいわね。」
「そうですか?スーパーで売ってたものですけど。あ、ほんとだ以外においしいや。」
「ところでアスカ、月曜日だけど16時の飛行機よ、はい、チケット。なくさないでね。」
「ええっ、ファーストクラスじゃないのぉ?」
「普通の兵士はエコノミーなのよ、セキュリティの関係でビジネスクラス利用できるけど、贅沢言うんじゃないわよ。それともC-130の方がいい? 」
「ちぇっ。いいわよそれで。」
「ねえ、銃はどうすんの?民間線でしょ?」
「そう、あたしのと一緒にカーゴに預けるわ。機内には持ち込めないのよ。」
「ふうん。」
「それはそうと、あたしは明日からネルフに詰めるわよ。書類がすごいのなんのって。はぁぁ。」
「そのあいだ、しっかりシンちゃんにかわいがってもらうのねぇ。アスカ。なんたって、さぁんかげつも会えないんだから。」
「ふんだ。出発までネルフから急に帰って来ないでよね。ま、あたしたちのあられもない姿が見たいんなら別だけどぉ。」
「ミ・・ミサトさんっ・・・それにアスカも・・・。恥ずかしいですよぉ。」
「アスカ。ただし、赤ちゃんは勘弁してねくれぐれも。」
「・・・・・・」
「どうしたの?アスカ・・・。まさか・・・・あなたたち・・・。」
「・・・・・・すみません。ミサトさん・・・・。しちゃったんです・・・僕達・・・。」
「いいわよ、ちょっち早かった気がするけど。」
「でも、二人とも約束してくれる?」
「はい・・・。なんでしょう?」
「二人とも必ず、幸せになること。いいわね。つまらないケンカ別れや、嫉妬、見栄や意地なんかで、別れたりしちゃだめよ、特にアスカは解るわね。どんな事があっても、シンちゃんを放しちゃだめよ。・・・・・・・・約束できる?」
「はい。」
「うん。」
「はぁぁ・・しかし、シンちゃんも男の子よねえ、ま、一緒にベットに寝てるんだから時間の問題だったか。」
「それだけじゃないもん・・・」
「えっ?」
「あたし、戻ってきてから、時々夢を見るのよ。殺される直前の夢よ、いつも同じ。
シンジと一緒にいるようになってから、見なくなったのよ。」
「そっか、アスカにとっては、シンちゃんが白馬の王子様ってわけね。」
「で、ちゃんとお薬は使ったんでしょ?」
「うん、ちゃんと飲んだわよ・・・・・直前に・・・・・。」
「うん、それは・・・よかっ・・・はいぃぃぃ? 今飲んだって言ったぁ!!?
あ・・まさか使い方しらなかったの?あれって、女の方に挿れるのよっ!」
「ええっ!!、飲んじゃったわよぉ!。だ、だって・・・・ピルだと思ったんだもん。」
「ま、飲んでも害は無いからいいけど、効果はないわよ。」
「じゃ・・・・もしかしたら・・・・・。」
「どうしよう・・・・シンジ・・・・。」
「検査で解らないんですか?」
「そうね、あと1ヶ月もしないと多分無理ね。まだ検査には出ないわ。」
「でも、ミサトさん、その避妊薬って、説明書ぐらいあったんでしょ?」
「ええ、あ、もしかして、アスカ読めなかったんでしょ。」
「だって・・・難しい漢字ばっかりだったんだもん・・・・・。」
「「はあぁぁぁ・・・。」」
「で、もしよ、もし出来ちゃってたら。あなたたちはどうしたいの?」
「・・・・・・・・・・」
「僕は、もし・・・・アスカが・・・・・・生んくれるのなら・・・・殺したくないです。」
シンジの殺すという一言にアスカの肩はびくっと震えた。
「でも、人を育てるのって大変なのよ、犬や猫と違うんだから。」
「はい・・・・。だからこそ、殺したくありません。僕はろくに親子の愛情なんて知らずに育ってきました。だからこそ、僕らの子供にはそんな思いは絶対にさせたくありません。
どんな状況になっても、アスカと子供を守り抜きます・・・・・・・絶対に。」
「シンちゃんの気持ちはわかったわ。で、アスカはどうなの?」
「・・・・ん、正直なところわかんない・・・・育てられるのかどうかも・・・・
ママは私を道連れに死のうとしたのよ・・・・その血が私にも流れていると思うと・・・・
怖いの・・・・私がそうなるかもって考えると・・・。」
「アスカ・・・・。」
ミサトは静かにアスカの頭を抱き寄せた。
「アスカ・・・実は僕・・・調べたんだ。アスカには言ってなかったけど、キョウコさんも実はエヴァの起動テストを受けていたんだ。
その記録には、特Sクラスのプロテクトがかかっていたけど、実はキョウコさん・・・その時暴走事故で精神汚染を受けた疑いがあるんだ。」
「・・・・・・シンちゃん・・・ほんと?」
「はい、これは母も知らなかったことのようです。実験を進めるために自ら検体となって・・・・そして・・・・。
事実を知った父は、キョウコさんの頼みでもみ消した形跡がありました。その後です、キョウコさんが亡くなったのは。」
「すべては、エヴァに始まっていたのね・・・・。」
「・・・・・・・・・・・ねえ、シンジ・・・・・・・・もし・・・・出来てたら・・・・
生んでもいいかな・・・・あたし・・・母親になれるかな・・・・。」
「うん、大丈夫だと思うよ。」
「・・・・・・・・・・・・生みたい・・・・・・やっぱり殺したくない・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・あなたたちの気持ちはわかったわ。なに、まだ出来ているって決まったわけじゃないでしょ?アスカも元気出しなさい。」
「うん。」
「まあ、しおらしくなっちゃって・・・。以前からは考えられないわねぇ。」
「僕は、こっちが本当のアスカのような気がしてます。寂しがりやで、素直で・・・。そして自分に正直で・・・。」
「良かったわね、アスカ。ちゃんと判ってくれてて。その手・・どんな事があっても離しちゃダメよ。」
「うん。・・・・(ぐすっ)・・・。」
「そうだ、兆候があったら、すぐにあたしに言うのよ。わかった?アスカ。」
コクンと頷くアスカが居た。
「あの・・・・もしそうなったら・・・司令や他の人に言わなきゃならないですかね・・・。」
「そうね、あなたたちが、普通の成人したカップルだったら、ハッピーエンドなんだけど、エヴァのパイロットというのは特殊でね。
言わない訳にはいかないでしょうね。まして冬月司令は、仮とは言っても親になるんだから・・。
それに、大きいお腹で、訓練やテストは出来ないわよ。」
「そうですよね。」
「ま、そんときゃあたしに任せなさい!あたしの首と引き換えでもあんたたちを護ってあげるから。」
「ありがとう・・・ミサト・・。んっく・・・ひぐっ・・・・。」
「さあ、カステラが乾いちゃうわ、いたたぎましょう。」
「あ、お茶冷めちゃったから入れなおしてきますね。」
「そうね。お願い。」
シンジが、台所へ立つと、ミサトも自分の部屋から小箱を持って来た。
「これ・・・使いなさい。」
「こ・・これ。」
「そ、コンドームよ。まさか、使い方わからないわけじゃないでしょ?」
「うん。・・・・て、なんで、10個しか入ってないのよ。これって1ダース入りでしょ?」
「べっ、別にいいじゃない、そんなこと・・・、いらなきゃ返してもらうわよ。」
「も、貰うわよ・・別にいらないって言ってないじゃない・・。」
「はい、お茶はいりましたよ。」
「はい、シンジ・・・これ。」
「ん?なに?これ。」
「ミサトがくれたのよ。」
「開けていいですか?ミサトさん。」
「いいけど、あんまり人前じゃ・・・・。うふふっ。」
かさかさ。
「えっ!!!これって・・・・・はうっ。・・・(わたわたわた・・・)」
「ふははははっ、シンジったら、慌ててどうするのよ。あっははははっ。」
「あっはっはっはっ、ひぃ~。アスカも人が悪いわねぇ。」
「あっはっはははははっ。だって・・・おかしいんだもん・・・。」
「あっははははっ、でもね、二人とも、今晩はやめてね、せめてあたしが居ないときにしてね。あははっ。」
「あら、せっかく今晩ためそうかと思ったのに。うふふっ」
「・・・・! アスカぁ・・・。」
夕食が終わり、三人はシンジの入れたお茶をすすっていた。
「ねえ、ミサト。行きは飛行機で、帰りはどうすんの?まさか、船じゃないでしょうね。」
「いえ、そんなの時間の無駄よぉ。帰りもちゃんと飛行機よ。」
「そう・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ね、話し変るけど・・・・やっぱり会わなきゃいけなくなるのかな・・・・。」
「ああ、あなたのお父さんのことね。うーん、とりあえずネルフの専門エージェントが交渉を担当するけど、もし、裁判になったら、いやでも顔を合わすことになるでしょうね。」
「そう・・なんか、やだな・・・会うの・・・・。」
「アスカ、お風呂入ってきたら?」
「そうね、今から考えてもしかたがないか。」
そう言うと、アスカは浴室に向かっていった。
「ねえ、ミサトさん。」
「なに?シンちゃん。」
「アスカの事・・・・お願いします。」
「ええ、大丈夫よ。まかせなさいって。」
ミサトとシンジは暫く会話も無くただ、テレビを見つめていた。
「ふう~。お風呂空いたわよ。」
「どれ、あたしも入っちゃって今日は早く寝よ寝よ。」
「僕も後片付けしちゃお。」
その夜は何事もなくいつもの夜が過ぎていった。
翌朝、シンジが起きると、既にミサトが起きていた。
自分で煎れたのであろう、インスタントコーヒーの香りがシンジの鼻をくすぐる。
「あ、おはようございます。ミサトさん。」
「おはよう、シンちゃん。」
「すぐご飯作りますね。」
「あ、シンちゃん、いいのよ。それより、アスカ起きたら渡しといてくれる?あたし、今から出なくちゃいけないから。」
「あ、はい・・・接収計画書?」
「そそ、エヴァのね。」
「向こうの連絡先とか、後で教えてくださいね。」
「ええ、今日決まるからMailで送っておくわ。じゃ留守番宜しくね。」
「はい。いってらっしゃい。」
プシッ。
「アスカ・・・そろそろ起きないと・・・。」
「ん・・・・シンジ・・・・。ミサトは?」
「もう出かけたよ。僕らもそろそろ起きないと。」
「ね、朝の・・・・。」
「んもう、しょうがないな・・。」
ちゅっ。
「ほら、シャワー使っておいで。」
「うん。」
朝食のトーストを食べながらシンジが話し出した。
「ね、今日ネルフの方は射撃訓練だっけ。」
「うん、アスカはそのはずだったけど打ち合わせがあるでしょ、僕はコンバット訓練。」
「ねぇ、先に終わった方が食堂で待ってるようにしましょうよ。」
「いいよ。」
「あ、いっけない、もうこんな時間、着替えなくちゃ。」
台所を片付け、二人のお弁当を持つと、アスカーが部屋から着替えて出てきた。
「さあ、行きましょう。シンジ。」
「おはようさん。」
「あ、トウジおはよう。」
「おはよ。」
アスカの下駄箱からいくつかのラブレターが落ちるのはいつものことだが、今日はシンジの下駄箱からも何通かラブレターが落ちてきた。
「シンジっ、それよこしなさいよ。」
「これ?でも僕宛みだいだよ。」
「そんなのラブレターに決まっているじゃない。一緒に捨てるからよこしなさいってばっ!」
「うん・・・いいのかなあ・・・はい。」
「さて、昼や昼!いくで、センセ。」
「あ、うん。そうだね。」
「シンジっ、行こ。」
いつものメンバーで屋上の一角を陣取る。
「はい、アスカ。」シンジはお弁当を取り出した。
「ん、ありがと。」
「鈴原、これ。」ヒカリも同じように渡す。
「お、サンキュ。」
「ね、ヒカリ、シンジの事ほんとにお願いね。」
「ええ、いいわよ。任せて。」
トウジが黙々と食べる横で、シンジは目を二人に向けながら箸を動かしていた。
「もうちょっと信用してよ、アスカ。」
「だめよ、防備は固いことにこしたことはないから。」
「センセも難儀やなぁ。」
「うっ・・・」
「ねえ、アスカ。朝の手紙なんだけど・・・もう捨てちゃったの?」
「家に帰ってから捨てるのよ。それよりなによっ!シンジまさか気になるの?」
「いや、そう言うわけじゃ・・・というか・・・。」
「な、なによ!、他の女が気になるのっ!あたしを抱いたのは何だったのよっ!」
「アスカ!そんな大きな声で・・・。」
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
「えっ? あばばばばっ・・・。」
アスカは、真っ赤になって下をうつむいてしまった。
「あはっ・・・あはっ、ははっ・・早く食べようよ。」
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
トウジとヒカリはフリーズ状態のまま、じっと二人を見ていた。
フリーズから回復したヒカリが、アスカの腕を引きずり、屋上の端っこへと引っ張っていった。
「ア、ア、アスカ・・・あげちゃったの?」
アスカは、真っ赤になってコクンと頷いた。
「ああ、なんかショックぅ・・・。」
「お願い・・・内緒にしてよぉ・・ヒカリ。」
「い、言えないわよ・・・。だれにも。はぁぁぁ。」
「あ、ト、ト、トウジ?ご飯早く食べないと・・・。」
「もう、食ってもうた。それより、おめでとさん。惣流のこと、大事にしたれや。いや~まさかセンセが一番先に大人になるとはなぁ。」
「ト、トウジ・・・声がおおきいよ・・・。」
「しっかし、一足飛びやなぁ。どや、どないな気分や大人になった感じは。」
「い、言えないよ・・・・そんなこと。」
「ねえ、アスカ・・・月曜日まではいるんでしょ?」
「うん、そうよ。」
「ね、今日遊びに来ない?」
「あ、ごめん・・・今日はネルフなの。」
「あら、じゃあ終わってからお泊りに来てよ。ね?アスカと暫く会えないし、ね?」
「うん、いいわ。でも・・・さっきの話は・・・勘弁してよ?」
「あら、今まで親友で、いろいろ相談にも乗ってたと思ったんだけどな・・・・。」
「うっ・・・・・わ、わかったわよ・・・・。」
「じゃ、決まりねっ。」
ヒカリはアスカの腕を引っ張って言った。
「ねっ!碇くん、アスカ今晩借りていい?」
「あ、うん。アスカがいいなら・・。」
「そか、じゃセンセは今日ミサトさんと二人っきりかいな。」
「ミサトさん、今日からネルフに詰めてるんだ。一人だよ。」
「そっか!なんなら、シンジも今日ワイのとこ遊びに来へんか?惣流もおらんやろし、久々にワイのカレー食わしてやるわ。ええか?惣流。」
「あ、あたしは別に・・。」
「よっしゃ、久々に対戦や、シンジ。」
「あ、ゲームね・・・うんいいよ。ただ今日はネルフで訓練があるから、7時ごろになるけど。いい?」
「かまへん、カレー作ってまっとるで。」
学校を引けると二人はネルフに向かった。
ミサトにそれぞれ電話で今日は外泊することを告げると、着替えとお泊りセットを取りに、一旦マンションに帰ってきていた。
「シンジ・・・あのぉ・・・・ごめんね。今日・・・お昼・・・。」
「大丈夫だよ。僕なら。それよりアスカの方がからかわれないか心配でさ。」
「ん、ありがと。じゃ今日は別々だけど。」
「うん、楽しんでおいで。僕もトウジと久しぶりにゲーム三昧みたいだから。」
「ね、帰る前に連絡してね。」
「うん。」
ちゅっ。
「さあ、行こうか。」
「ええ。」
-(鈴原邸)-
ピンポーン
「トウジ・・・いる?」
「お、センセ待っとんたんや。」
「失礼しま~す。」
「あ、碇おにいちゃん、いらっしゃい。」
ナツミが車いすで器用に玄関まで出迎えた。
「やあ、ナツミちゃん久しぶりだね。」
「うん。(ぽっ)」
「そや、シンジまずは汗でも流してこいや。」
「うん・・そうだね。」
「はふっ・・・トウジ、お先にお風呂頂きましたぁ。」
「さあ、座った、座った。おーい。飯やぞう」
「はあい。」
「ナツミ、スプーンと水、用意してくれへんか。」
「はいっ、碇おにいちゃん。」
「ありがとう、ナツミちゃん。」
「うふっ・・・(ぽぽっ)」
「なんや、ナツミ。顔赤くして、どないしたんや。」
「お兄ちゃんには関係ないも~ん。」
「なんや、変なやっちゃな。」
「「「いただきます。」」」
「うん、トウジ、これおいしいよ。」
「お兄ちゃんの十八番だもんね。」
「カレーだけは自信あんのや。」
「シンジお兄ちゃん、あたしも手伝ったんだよ。でね、にんじん切ったんだよ。」
「そう。上手に切れてるよ。えらいねぇ。」
「んふふふっ。(きゃあ!うれしい!)」
「あの、お兄ちゃん・・・お風呂あがったら、わたしも一緒に遊んでいい?」
「ああ、ええで。但し8時までやぞ。」
「うん。(にこぱっ)」
暫く、ゲーム機で3人で遊んだ。
その間、ナツミはシンジにぴったりとくっついている。
「こら、ナツミ・・・いいかげんシンジから離れんかい。」
「やだ、シンジお兄ちゃんは、あたしの命を救ってくれた、王子様だもん。」
「ナツミ・・・シンジにはな、ちゃんと彼女おんねんど。かわいそうやけど、諦めるんや。」
「・・・・・うそ・・・・。ほんと?シンジおにいちゃん。」
「え・・・うんまあ。」
「な、だから、シンジは諦めんとな。」
「やだっ!」
「ナツミ・・・・わかったってや。お前苦しむの見とうないんや。」
「ね、シンジお兄ちゃん。ナツミのこと嫌い?」
「ナツミちゃん。君には僕よりもっと、素敵なひとが現れるよ、きっとね。」
「そうかなあ・・・でも、それまでは好きでいていいよね。」
(ふん、どうせあの惣流とかという派手なお姉ちゃんね。年増には負けないわ。)
「ほら、もう8時やぞ。」
「うん。じゃおやすみ。シンジおにいちゃん。」
「はい、おやすみ、ナツミちゃん。」
-(洞木邸)-
ピンポン
「あ、アスカ。いらっしゃい。さあ、上がって。」
「おじゃましま~す。」
「お仕事大変ね。まずは汗を流したら?」
「そうね、じゃ遠慮なく。」
「牛乳いる?」
「ふう、あんがとヒカリ。」
二人は暫く占いのことや新しくできたブティックの話で盛り上がったていた。
「ね、ヒカリ。今度そのブティックに行ってみましょうよ。」
「ん、でも私には大人っぽすぎて、きっと似合わないわよ。」
「あら、大丈夫よ。少し冒険したほうが、鈴原だって喜ぶんじゃないかしら。」
「と、どうして鈴原がででくんのよ、もう。」
「あら、着飾るのは、相手に喜んでほしい、似合ってるって言って欲しいからでしょ。
単に保温と体を被うだけだったら、ジャージでも言い訳よ。」
「う、うん。」
「そうだわ、明日シンジや鈴原も誘って、行きましょうよ。」
「ええっ、鈴原も?」
「そ、ダブルデートね。」
「だって・・・・。」
「大丈夫よ、荷物持ちだと思えばいいのよ。よしっそうと決まれば!」
アスカは携帯を取ると、シンジをコールした。
『プルルルッ、プルルルッ、プルルルッ、・・・・・・あ、アスカ?。』
「あ、シンジ?明日あんたたちヒマ?」
『あんたたちって、トウジも?』
「そう。」
『ちょっとまって、・・・・・・・・・・・・・うん、ヒマだって。』
「じゃぁさ、10時に駅前のマックで集合ね。」
『買い物?』
「うん、鈴原もちゃんと連れてくるのよ。あ、それとジャージはダメよ。」
『え、それはいいけど、どうしてトウジも?』
「あたしは、ヒカリを連れて行くわ。」
『・・・あ、なるほど。うん、わかった。』
「じゃあね。シンジ。」
ピッ。
「さ、ヒカリ。明日はバシッと決めて行きましょうね。」
「え・・・どうしよう。」
「別に二人っきりじゃないんだから大丈夫よ。」
「う・・・うん。そうね。」
「さ、そうと決まったら、早くねましょ。寝不足はお肌の大敵っと。」
-(鈴原邸)-
「ねえ、トウジ。明日ヒマある?」
「ああ、別になんにも無いけど。」
「・・・うん、ヒマだって。・・・・・・・・・・買い物?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
え、それはいいけど、どうしてトウジも?・・・・・・・・・・・・・あ、なるほど。
うん、わかった。・・・・・・・ん、じゃあね、アスカ。」
「トウジ。明日さ、一緒につきあわない?」
「ええけど、なんや、お邪魔虫みたいで・・わし・・。」
「あ、大丈夫だよ。アスカさ、洞木さんも連れて来るみたいだから。」
「な・・いいんちょもか・・。」
「そう、トウジ、ジャージ以外も着るもの持ってるよね。」
「ああ、Gパンぐらいならあるけど。って、ジャージでええで。」
「ダメなんだよ、トウジ。それだと、僕がアスカに怒られるんだよ。ま、たまにはいいだろ?」
「ワシ・・どうも普通の服は苦手でなぁ。なんか、窮屈やし。」
「そう言わないでさ。」
「まぁ、しゃないか・・・。ところで、シンジ・・・それって。」
「そ、ダブルデートかな?」
翌日。
-(鈴原邸)-
「なあ、シンジ。こんなもんでええやろ・・。」
「ん~。トウジ。上それしかないの?」
トウジはジャージの上を着ていた。
「はぁ、じゃトウジ、これ着なよ。」
そう言って、シンジは自分のカッターシャツをバックから取り出した。
シンジは、シンプルなプルオフに膝丈のパンツだ。
忘れずに、ガンホルスターを付ける。
「シンジ・・なんやそれ。」
「あ、別に単なるウェストポーチだよ。それよりもうそろそろ出ないと。」
-(洞木邸)-
「う~ん。ねえヒカリ。髪型変えてみない?」
「え?どういうふうに?」
「ちょっとじっとしててね。」
アスカは、ヒカリの髪をポニーテールにまとめると、ボリュームのあるシュシュで縛った。
「ほらね、これのほうが似合うわよ。」
「そ、そうかな。似合う?」
「そうよ、鈴原もきっと見直すから。」
「・・・えっ・・・そ、そうかな・・・(ぽっ)」
「それとね・・・ちょっとこっち向いて。」
アスカは、自分のファンデーションでそばかすを目立たない程度に隠すと。
ピンク系のルージュをヒカリの唇に塗った。さらに、シャインリップも塗る。
「よしっ、これでばっちりね。」
「いいのかしら・・・お化粧なんて・・・。」
「べつに、今時あたりまえよ。学校へ行くんじゃないんだからね。少しはおしゃれしなきゃ。」
「自分じゃないみたい・・・。」
「女の子はね、好きな人のためなら、いくらでも綺麗になれるのよ。 さて、そろそろ行きましょ。」
「あ、アスカっ。こっちだよ。」
「あ、シンジ!待った?」
「いや、僕らも今きたとこだよ。」
ヒカリはアスカに少し隠れるようにしていた。
「朝食まだでしょ?」
「うん、食べてきましょ。」
「トウジたちは、何にする?」
「わしは、これや。」
この店で一番ボリュームのあるセットを指差した。
「じゃ、僕はこれっと・・・アスカたちは?」
「あたしもおんなじのでいいわ。ヒカリは?」
「アスカと同じ。」
「OK。じゃ買ってくるね。」
「あ、持ちきれないでしょうから、手伝うわね。」
ヒカリはそう言うとシンジの後を追った。
「鈴原。」
「なんや、惣流。」
「あんた、ちゃんとヒカリのこと誉めなさいよ。」
「な、なんでや。」
「女の子は好きな人に誉めてもらうのが一番なのよ。少しは理解しなさい。」
「そうはいっても・・・、どない言ったら・・・・。」
「あんた、ヒカリがあんたの為に、髪型まで変えて来たのよ。ちゃんとほめなさいよ!」
そう話終わったとき、シンジとヒカリは両手にセットのトレーを持って戻ってきた。
「はい。アスカ。」
「ありがとシンジ。」
「は、はい。す、鈴原。」
「・・あ、ありがとさん。」
「さて、食べよっか。」
アスカの靴がトウジのスネをコンコンと蹴った。
「あ、あ・・・あのな。いいんちょ・・・き、今日のその・・・・にあっとるで・・・。」
「そ、そう?・・・ありがと・・・・鈴原。・・・・す、鈴原も・・・にあってるよ・・・。それ。」
「そ、そ、そうか?おおきに。はぁ。」
「「ぷっ・・・あはははっ」」
「な、なんや!そんない笑わんでも・・・・」
「あっはははっ・・・・ひいぃぃ・・・だって、二人ともおかいしんだもん。」
「そうだね、二人とも・・・意識しすぎだよ・・んぷぷっ」
「そ、そんなことより、く、食うで!」
「ねえ、アスカ今日この後どこ行くの?」
「あん。これからブティック寄って、服買ってから、そうね・・・・それから遊園地、ていうのはどう?」
「いいよ。」
トウジとヒカリはお互いをちらちら見ながら、もくもくと食べている。
「ふう・・食った食った。」
「じゃ、そろそろ行きましょうか?」
四人は新しくできたブティックに来ていた。
「ねえ、シンジっ、これどうかしら。」
「・・・うん。似合うよ。」
「そう?じゃこれにしようっと。」
すぐ隣の試着室ではヒカリが着替えていた。
「ヒカリ、決まった?」
「ええ、でも似合うかしら。」
試着したままのアスカが隣の試着室を覗き込んだ。
「あら、良く似合ってるわよ。今日、そのまま着で行ったら?」
「え、でも・・。」
「大丈夫よ。」
支払いを済ますと。四人は駅に戻ってきた。
「ね、アスカ。荷物どうしょうか。」
「そうね・・・・コインロッカーに預けて帰りに取ってけばいいわよ。」
「ん、じゃあ預けてくるね。行こう、トウジ。」
「ん、ああ。」
カチャン。ロッカーの扉を閉めると、キーを引き抜いた。
「なんや、シンジ・・・今日のいいんちょ・・・いいんちょじゃ無いみたいや・・・。」
「そうだね、少し化粧もしてたみたいだし。きっとアスカの仕業かな?でも、似合ってたじゃないか。」
「なんや、わし・・・さっきから動悸がしよってからに・・・。」
「さ、戻ろう。」
「ね、アスカ。私・・これ似合ってるかな?」
「あん?大丈夫。ばっちりよ。」
「おまたせ。じゃあ行こうか。」
四人は遊園地で、散々楽しんだ。
「ふう・・・遊んだわね。しっかし、相変わらずシンジったら、ジェットコースター苦手なのね。」
「ん~。あれだけは慣れないなぁ。」
「ねえ、みんな。最後にあれに乗りましょうよ。」
「観覧車か。いいよ。」
アスカの手がシンジの手を引っ張って歩きだした。
後ろをちらりと見ると、トウジとヒカリが手は繋いでいないが、いつもよりくっついて歩いていた。
「ね、シンジっ。腕組んでいい?」
「うん。いいよ。」
「ね、あの二人って、なんかいいわね。」
「そやな・・・。」
「ね・・・す、鈴原・・・あのさ・・・・手・・・繋いでいい?(きゃあぁぁ・・言っちゃった。)」
「あ、ああ。ええで。」
「ね、シンジ。後ろ見てみなさいよ。 チラッとよ。チラッと。」
「あ、・・・・んふふっ」
「作戦成功ね。あとは、仕上げの観覧車っと。」
「さ、シンジ。乗るわよ。」
トウジたちも乗ろうとするとアスカが二人を止めて言った。
「ね、二人づつ別に乗りましょうよ。いいでしょ?ヒカリ。」
「え?ええ。」
「さ、アスカ。足元、気をつけて。」
別々のハコに乗った二組のカップルはそれぞれの時間を過ごしていった。
「ああ、今日は楽しかった。」
「うん、そうだね。こんな時間がずっと続くといいね。」
「これで、あの二人も少しは進展するかしら。」
「でも、おせっかいはしすぎると逆効果だから、あとは二人に任せた方がいいかもね。」
「そうね、でも最後の仕上げがあるのよ。」
「え、まだなにか企んでるの?」
「そうよ。ほら、見てなさいね。」
アスカはそう言うと、トウジたちの乗っているハコに向かって手を振り始めた。
向こうでも気がついたヒカリがトウジに教え、手を振り返している。
すぐさま、アスカの唇がシンジの唇を捉えた。
「・・・んっ・・・・・」
ちゅっ。
アスカの腕がシンジの首に回りこみ、しっかりと捕らえた。
ちゅるっ・・・ちゅぷっ・・・。
「あ、アスカったら・・・不潔よっ。こ、こんな所で・・。」
「ま、えやないか、あの二人はもうホンマに夫婦みたいなものやし・・・。」
「えっ・・・そうなのかな・・・。」
夕日がそれぞれの時間を綺麗に染め上げていった。