「アスカぁ、無理しないのよぉ。」
「あら、大丈夫よ。病気じゃないんだから。」
そう言うと、アスカはコンテナのチェックに向かった。
「・・・えっと、これはOK。・・・これも良しっと。」
アスカは、PDA片手に巨大なコンテナの回りを歩いていた。
ミサトも同様に向こうのコンテナのキャットウオークの上で作業をしている。
「さて、アスカぁ。お昼にしましょう。」
「了解。」
ランチを簡単に済ますと、二人はお茶を飲んでいた。
「アスカ、はい、これ。」
「なに?・・・・・これって航空券じゃないの・・・それも明日の・・・。」
「ご苦労様、あなた先に帰りなさい。あとはあたしだけで間に合うから。」
「いいのっ? やったあっ!」
「ふふっ、そんなにシンちゃんが恋しい?」
「当然よ。」
「あら、からかい甲斐が無いわね。」
「さて、仕事は大体済んだわね。今日コンテナのチェックが終われば積み込みだけだから。」
「そうね、あとはミサトの事務処理だけね。そうだ、あたしも上に昇るわ。その方が早く終わるでしょ。」
「だめよ、アスカ。もしよ、もし万一のことがあったら、大変じゃない。」
「あら、大丈夫よ。キャットウォークって言ったって、幅が2Mもあるんだもん。落ちやしないわ。」
「だめよ、手擦りもついてない場所もあるのよ。」
「大丈夫だって。」
「そう?」
「よし、そうと決まったら、いくわよ。」
「はいはい。」
危ないと思ったときは遅かった。
目の前にあった、ワイヤーに気をとられ、避けようとして手擦りを掴もうとしたが、そこに手擦りは無かった。
手擦りのちょうど切れ目から、アスカの体がゆっくりと落ちていった。
「きゃあぁぁぁ!」
キャットウォークの上から、落ちた体は、コンテナの角に当り、フックリングが下腹部にめり込んだ。
「げはっ!」
そのまま、コンテナの上で一度バウンドし、床に足から落ちた。
ミサトが見たときは、アスカは床の上に倒れていた。
「アスカぁっ!」
「おい!人が落ちたぞ!!」
「おい!ドクターを呼んで来い!」
「担架だ!早く担架をもってこい!」
(赤ちゃん・・・・助けて・・・・シンジ・・・・・)
怒号が飛び交う中で、アスカの意識は消えていった。
ミサトは支部の病院で、廊下で待っていた。
「惣流少尉の関係者の方ですね。」
「はい、あの子はっ?お腹の子供はっ?」
「まず、こちらへどうぞ。」
そう言うと、ミサトは、廊下のベンチに下ろした。
「まず、少尉の命に別状はありません。」
「よかった。」
「ただし、下腹部を強く打っており、残念ながら、お腹の子供は胎盤剥離を起こしダメでした。」
「そんな・・・・あの子やっと幸せになれたのに・・・・これからもっと幸せになるはずだったのに・・・・・・あたし・・・なんて言えば・・・・。」
「我々も、ベストを尽くしましたが、お気の毒です。」
(アスカ・・・・・もっと早く帰していれば・・・・・・。)
休みだというのに、シンジは、朝からなんとなく落ち着かなかった。
シンジの携帯が呼び出しを告げる。
ピルッ、ピルッ、ピルッ・・・ピッ。
「はい、碇です。」
『シンジくんっ!落ち着いて、聞いてね。』
「な、なにかあったんですかっ!ミサトさいっ!」
『アスカが・・・アスカが落ちたの。でも命には別状はないわ。』
「怪我はっ!ひどいんですかっ?」
『ごめんなさい・・・私がついていながら・・・』
「子供はっ!お腹の子供はっ!」
『流れちゃった・・・・シンジくん・・・。ごめんなさい・・。』
「くっ・・・・・いまから、すぐそちらへ向かいます。」
『わかったわ、ネルフには私から連絡しておくから、シンジくんはすぐに飛行機で。』
「わかりました。それまではアスカについてあげてください。お願いします。絶対に一人にしないであげて下さい。」
『わかった。早くね。』
携帯を切ると、バックに着替えとパスポートを押し込み、マンションを飛び出た。
こういうときに限って、タクシーは見つからない。
大通りへの近道の公園を抜けようとしたとき、数人の屈強そうな男たちが現れた。
シンジは冷静に、回りを分析した。
(三人か・・・・茂みにも・・・一人・・・。)
男たちは、シンジの進路を塞いだ。
「通してください、急いでますから。」
シンジは、ポケットの中の携帯の緊急ボタンを静かに押した。
「碇シンジだな。悪く思うなよ。」
そう言うと、懐からトカレフを取り出した。
シンジは身を横に投げ出しながら、自分の銃を抜き、撃つ。
バンッバンッバンッ!
シンジの銃は続けざまに火を吐き、確実に男たちの頭に吸い込まれていった。
悲鳴も上げられずにそのまま倒れていく男たちを横目に、シンジはすばやく公園の垣根にみを隠し静かに移動した。
直後、今までいた垣根に向かって、数発の弾丸が打ち込まれた。
シンジは、発射地点を確認すると、静かにそこへ回り込み、相手の後頭部に銃を突きつけた。
「銃をすてろ。」
少年とは思えない、恐ろしく乾いた口調だった。
「もう一度だけ言う、捨てろ。」
チキッ。 撃鉄を起こす音がする。
男は、後頭部からすさまじい殺気を感じた。
逆らえば、間違いなく殺す気なのをはっきりと感じ取れた。
男の手から、拳銃が落ちた。
「動けば殺す。聞くが、おとなしく捉まるのと、死ぬの。どっちがいい?」
「わ、わかった・・・殺さないでくれ。投降する。」
シンジは、最高に機嫌が悪かった。
多分死んだであろう男たちもにも、まったく後悔はなく、逆に気分が良かった。
バキッ!
シンジはそのまま、銃で男の後頭部を思いっきり殴った。
男の体を探り、武器や爆発物が無い事を確認すると、ポケットから、タイロックを取り出すと男の腕をブランコの支柱に縛りった。
大通りに出て、タクシーを捕まえると空港へ向かった。
シンジは、携帯でネルフに連絡をした。
「碇少尉です。冬月司令に繋いでください。」
『シンジくん、ちょうど連絡しようとしたところだ。』
「急いでいたものですから。」
『刺客のうち、君が捕まえた男はこちらで確保した。
あとの死体は、一般人に発見されてね、回収している時間がなかったので、適当にこちらで処理しておく。』
「司令。暫く休暇を貰います。」
『うむ。葛城少佐から聞いている。気をつけて。あと、チケットは空港で受け取れるよう手配しておいた。ネルフのカードで受け取れる。銃はカウンターで預けてくれ。』
「はい、すみません。」
シンジは、チェックインし銃を預け、ドイツへの飛行機に乗り込んだ。
アスカは、処置も終わり、病院のベットで寝ていた。
ミサトが、ベットの横の椅子で、まんじりともせず、ただアスカを見つめていた。
「・・・・んっ・・・・・・ここは?」
「病院よ支部の。」
「子供はっ!あたしの赤ちゃんはっ!」
「落ち着いて、アスカ、お願いだから。」
「ねえ・・・教えて・・・お願い・・・・。」
「アスカ、赤ちゃんは助からなかったの。」
「・・いやっ・・・なんで・・・・・嫌あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
「落ち着きなさいっ!アスカっ!」
「嫌っ!!嫌っ! 嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁ。」
看護婦とドクターが走ってきて、鎮静剤を注射してやっと落ち着いた。
「精神的ケアが必要です。彼女の旦那さんはまだ日本に?」
「いえ、いまこちらに向かってます。まもなく着くころとは思いますが。」
「着たら、彼女に合わせる前に、私のところへ来るように伝えてください。」
「はい。」
シンジは、空港からタクシーを飛ばし、病院に着くとナースセンターでアスカの病室を聞き、急いで向かった。
コンコン。
「はい。どうぞ。」
「ミサトさんっ。アスカは?」
「とりあえず今は鎮静剤で眠っているわ。彼女の主治医がシンジくんと話をしたいから来るようにって。」
「わかりました。」
「本部の碇少尉です。」
「どうぞ。」
「え、きみが・・・・。」
「はい、惣流のお腹の子の父親です。」
「いや、すまない、あまりにも若く見えたものだから・・、ちょっと驚いたよ。」
「ドクター・・・・惣流は・・・・。」
「うん、いま説明してあげよう。そこにかけて。英語は大丈夫?解るね?」
「はい、大丈夫です。」
「一つ確認したいんだが、惣流少尉は君の恋人かい?」
「はい。将来を約束しています。」
「彼女を支える自信があるかい?」
「はい。もちろんです。どんな事をしてでも。」
「わかった。見かけ以上にしっかりしているようだね。すまないね、どうも日系の人の年齢って解りにくくってね。」
「慣れてますから。それより・・・」
「ん、わかっているよ。まず、彼女の状態だが、天井から落ちたらしい。
詳しくは彼女の上司が一緒だったらしいから後で聞くといい。
その落下の時、コンテナの角のフック・・・ま、リング状の引っ掛ける部分だが、ここに下腹部を強打している。
その後床に落下したらしいがこれはたいした事がなかったらしい。
まず現状は彼女の体には一部打撲があるが、大丈夫だ。ただ、子宮を強く圧迫され、胎盤が剥離してしまったんだ。
よって彼女はそれが原因で流産してしまった。子供はあまりにも週が若いために助けることができなかった。」
「後遺症は残る可能性・・・ありますか?」
「それは、大丈夫だよ。1ヶ月もすれば内臓も回復する。また子供を得ることに問題はないよ。」
「そうですか。」
「問題なのは、彼女の精神のほうだ。子供を失った事で、かなりのショックを受けている。目を覚ましたときかなり暴れてね。鎮静剤でいまは眠っている。」
「わかりました。ドクター。いつ頃日本には帰れるでしょうか?」
「なに、体の方は、3日もすれば大丈夫だよ。それより、カウンセリングを受けるかね?」
「本人と相談します。」
「ん、わかった。いつでも相談してくれ。」
「はい。」
シンジは、アスカのベットに戻った。
「シンちゃん、ごめんなさい。」
「ミサトさん、いいんです。それよりアスカ、目を覚ました時どうでした。」
「ゲシュタルト崩壊に近かったわ。また壊れる恐れもね・・・・。それで貴方を呼んだのよ。」
「すみません。」
「本当に役に立たなくて・・・・あの時無理にでも私がアスカを止めておけば・・・・。」
「アスカに、ついてあげて。」
「はい、そのつもりです。」
「じゃ、あたし・・・外にいるから。」
「はい・・・あの・・・ミサトさん・・・。」
「なに。」
「あまり自分を責めないでください。アスカが自分から起こした事なんでしょ?」
「ええ、そうだけど・・・でも、それをさせないのが私の役目なのよ。そう言う意味では、私は失格ね。ごめんなさい。」
そう言うと、ミサトは部屋の外のベンチに腰を落とした。
ミサトにしては、ひどく落ち込んでいた。
胎児とはいえ、家族と感じる一人の宿した命が消えたのだ。
「・・・・・・・・・・・アスカ・・・・。」
アスカの目の横には、いく筋もの涙の乾いた跡があった。
シンジは、ハンカチを濡らすと、そっと涙の跡を拭った。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・んっ・・・・・・・・・・・・」
「気がついた?」
「シンジっ・・・・・・・・・・わあああぁぁぁぁん!」
彼女は、シンジに必死にしがみついた。
シンジは、彼女の頭を胸に抱き、ゆっくりと撫でた。
「ひぐっ・・・ひぐっ・・・ううっ・・・ご・・・ひぐっ・・・ごめ・・・。」
「アスカ・・・大丈夫だよ・・・。落ち着いて。」
「・・・・ぐすっ・・・ずるっ・・・・うん。」
「寂しかった?」
こくっ。
彼女はシンジに両腕を回したまま頷いた。
「シンジ・・・・ごめんなさ・・・さい。あたしがしっかりしていればこんな事には・・・・・。」
「もういいんだよ。アスカが無事だったんだから。」
「でも・・・・赤ちゃん・・・・・私の・・・赤ちゃんが・・・・ひぐっ・・・・。」
「アスカ・・・良く聞いて・・・・。あの子は、またきっと僕たちのところへ帰ってきてくれるよ。
いまは、ちょっと寄り道したかっただけだよ。だから・・・ね。」
「そうかな・・・ぐすっ・・・・帰ってきてくれるかな・・・。」
「うん、僕らがそう望んでいれさえすれば、必ず帰ってきてくれる。そう、僕は信じてるよ。」
「ホント?・・・くすん・・・」
「僕が、アスカに嘘を言った事があったかい?できない事を言ったことが有ったかい?」
「・・・・ない・・・・でも。」
「だからね、あの子のことは忘れちゃいけないよ。必ず帰ってくるから。」
「うん。」
「さ、だからね、今は、体を休める事だけ考えて。」
「うん。」
「あたしね・・・昔の事・・・思い出しちゃったの・・・・・。
あたしのママがあたしを殺そうとしたように、あたしも同じじゃないかって。」
「アスカ?あの子の事愛してなかったの? 生みたくなかったの? 疎ましかったの?」
「ううん。絶対にない。愛してたの。生んであげたかったの。たとえ自分の命と引き換えでも・・・生きて欲しかったの。」
「なら、大丈夫だよ。きっとあの子もアスカのこと愛してたと思う。
だから、きっと帰ってくるよアスカだって、君のママがいたからあそこから帰って来れたんだよ。
君のママは、いわば自分の命と引き換えに、君の心を作った。解るよね。」
「うん。」
「ただ、一つだけ小言、言わせてもらえるかな?」
「はい。」
「今後は、僕やミサトさんの言う事を素直に聞くこと。できるかい?」
「うん。もう軽はずみなことは二度としない・・・。」
「さ、横になって。」
「はい。」
「じゃ、ミサトさん入れていいよね。ずいぶんと落ち込んでたみたいだから。」
「うん、ちゃんと謝りたい。」
「わかった。ちょっと待っててね。」
シンジは廊下に居たミサトに話した。
「ミサトさん、もう大丈夫ですよ、会ってやってくれますか?」
「アスカ、落ち着いた?」
「ええ。」
「ありがとう。シンちゃん。」
コンコン。
「アスカ、ミサトよ、入るわね。」
「うん。」
「もう、落ち着いた?」
「うん。あの・・・ミサト・・・ありがとう、それと心配かけてごめんなさい。」
「いいのよ、もう。貴方が無事だったらそれで。」
「あたしって、ほんとにまだ子供よね、浮かれて、子供が居る事さえ忘れて・・・。
ホントにバカなのはあたし・・。シンジに・・・怒られちゃった。」
「そうね、でもシンちゃんは許してくれたでしょ?」
「ええ。」
「よかったわね。」
「シンジに迷惑かけてばっかり。ほんとにダメねあたしって。」
「そうよ、シンちゃんに愛想つかされないようにしなさいね。」
「うん。」
「よかった。元気になって。」
「ミサト、またあたしが壊れると思ったんでしょ。」
「そうよ、あたしシンちゃんにどうやって顔向けするのかと落ち込んだわ。」
「ごめん。ミサト。ね、シンジも呼んで。」
「シンちゃん、居るんでしょ?奥さんがお呼びよ。」
「み、ミサト。まだ・・・奥さんになってないもの・・。」
「入るよ、アスカ。」
「シンジっ。」
「早く元気にならなきゃね。アスカ。」
「うん。」
ミサトはシンジからする僅かな、硝煙の匂いを感じたが、後で聞くことにした。
(射撃訓練でもしてたのかしら・・・)
「ねえ、シンジ。いつまで居られるの?」
「ウン、ちゃんと司令から許可もらったから、一緒に帰れるまでいるよ。」
「よかったわね、アスカ。」
「うんっ。」
「で?、アスカ。何に浮かれてたのさ。」
「うん、ほんとは、今日の便で帰る手はずだったの。ミサトが航空券くれて・・・・・・。」
「あぁっ!アスカっ!航空券は?」
「あたしのバックに入っているはずだけど。」
「ごめん。ちょっち、行ってくるわ。キャンセルしなくっちゃ。じゃあね!」
「悪いことしちゃったな、ミサトには。」
「そうだね。ま、仕方ないよ、事故だもの。」
「うん。後で謝るわ。」
「うん。ところでお腹すいてない?」
「うん、あたしは大丈夫。」
「シンジ、ちゃんと食べてるの?」
「そういや、今日というか・・・朝から食べてないや。」
「だめよ、ちゃんとたべなきゃ。」
「そうだね、ちょっと食堂へ行ってくるよ。」
「あ、帰りにゼリーがプリンあったらほしいんだけど・・・いい?」
「うん、わかった。」
「まって・・・シンジ。」
「なに?」
アスカは、目を瞑ってキスをおねだりしていた。
(やれやれ、ま、元気になったからいいか。)
ちゅっ。
「早く戻ってきて・・・・。」
「うん。」
シンジは、病院内のレストランで食事をすますと、売店に寄った。
ドイツ語も幾分母のおかげ問題なく会話できていた。
フルーツゼリーとプリンを買い込むと、病室へ戻った。
「ただいま。」
「あ、お帰りシンジ。」
ちょうど、ドクターが来ており、聴診器を当てていた。
患者衣がはだけられ、白い双丘と、アスカの使い捨てショーツが見えて少し赤くなった。
「終わるまで外にいるね。」
「うん。」
「碇少尉、もう大丈夫なようだね。」
「はい、ありがとうございました。」
「退院は、あさってごろかな、ただ、帰るのは1週間後にしてくれるとありがたいんだか。」
「そうですか。なにか・・・」
「いやなに、一応の経過観察だよ。それで問題ないなら、帰国しても医者の世話にならなくとも大丈夫だと思うよ。」
「そうでしたか、ありがとうございます。」
「いや、私も彼女がここに居るときから知っているからね。」
「そうでしたか。」
「しかし、びっくりしたよ。あの、跳ねっ返りが、ちゃんとレディになってるんだものな、碇少尉はどんな魔法を使ったんだい?」
「軍事機密ですよ。トップシークレットのね。」
「あははっ、さすがサードチルドレン。」
「知ってたんですか?」
「ああ、こう見えても、惣流少尉がここに居た頃は、僕がチルドレンの医務担当だったんだ。」
「そうだったんですか。」
「さ、彼女の側に居てやりたまえ。」
「はい。ありがとうございました。」
「アスカ、入るよ。」
「あの先生ね、ここに居る頃、あたしの担当医だったの。」
「うん、いま先生から聞いたよ。ほら、プリンとゼリーだよ。」
「ありがとう。シンジ。」
「ね、シンジは今日どうするの?」
「うん、ここに居てほしけりゃそうするつもりだよ。」
「そうね・・・・、そうだ、シンジ。ホテルに泊まりなさいよ。ここから歩いても10分程度よ。あたしの部屋があるから。」
「でも、今日はここにいてもいいかい?」
「うん。ありがとシンジ。でも明日はちゃんとホテルで体を休めなくちゃだめよ。」
「うん、そうするよ。」
シンジは、アスカのベットの下にマットを敷いて横になっていた。
「ねえシンジ・・・・・・あたし・・・また・・・・作れるかな・・・・赤ちゃん。」
「先生は、一ヶ月もすれば完全に回復するって・・・。」
「そう。よかった・・・・・・生めるんだね・・・・・・あたし・・・。」
「うん。」
~翌朝~
コンコン。
「はい。」
「おはようございます。」
「あ、先生。おはようございます。」
「さて、お嬢さんのお加減はいかがかな?」
「ええ、痛みはまだ少し・・・・。」
「そう。起きれるようだったら、食堂で食事をとってもいいよ。」
「はい、そうします。」
「碇少尉、ドイツは初めて?」
「ええ。」
「どうだね、いい所だろ。ここは。」
「はい。町並みがとても綺麗ですね。」
「秋には、街の木々も紅葉する。とても綺麗なんだ。」
「日本は、常夏ですけど、ここには四季があるんですね。」
「じゃ、なにかあったら、呼んでくれ。」
「はい。」
二人は朝食を済ませ、部屋に戻っていた。
シンジは、売店から買ってきた雑誌に目を通していた。
「ねえ、シンジ。」
「なに?」
「あんた、いつからドイツ語読めるようになったの?」
「補完後・・。」
「へえ。話す方は?」
「ん~。あんまり得意じゃないかな。なんか口が馴染まないっていうか、でも会話に不便は感じないよ」
「英語は?」
「問題ないと思うよ。あと、ヘブライ語が少し・・・。」
「なんでヘブライ語?」
「母が少し勉強したみたいだね。生活するのには十分な程度かな。」
「へえ。じゃあんた今、四ヶ国語話せるんだ。」
「まあね。」
「ね、他にお母さんから受け継いだものってどんなのがあるの?」
「神経生理学、大脳生理学、生物工学、医学、臨床心理学、生化学、そのたもろもろ・・・。あ、情報処理もね。話すと時間かかりそう。」
「すごいわね。ま、碇ユイ博士の記憶を受け継いだら、あたりまえね。どう?あんた天才になったのよ?」
「それは違うと思うよ。ぼくにあるのは知識だけ。それをどう使うかということが、問題じゃないかな。
利用できない知識は意味が無いよ。今持っている知識から新しい理論や応用が作れれば、それは天才かもしれないけど・・・。」
「そっかぁ・・・。でも、それだけの知識がその頭に詰まっているのよね。」
「うん。これは予測だけど、人間の大脳って、70%は利用されていないよね。」
「ええ。」
「もしだよ、もし、その70%がコンピューターのハードディスクのように使えたら?」
「実際に記憶に利用しているのは、半分以下ね、2週間程度の記憶は海馬に蓄えられ、整理と関連付けがなされて大脳の記憶領に蓄えられる。
実際の容量はずいぶんと小さくなる・・・でしたっけ?」
「うん。だいたい正解だね。」
「でも、そうなったら、すごいわね。もしコントロールできたらすごいわ。」
「可能性はあるね。帰ったら自分の頭のNMR取ってみるよ。脳の領域調べて見なきゃ。」
「その知識ってどんな感じなの?」
「そうだね・・・・ちょうど映画の記憶に近いかな。擬似体験の記憶みたいな感じ。ま、それよりもう少しはっきりしているけど。」
「それよりアスカ、来月から大学始まるけどどうするの?」
「そうね、帰ったらすぐに手続きするわ。」
「電子工学系だっけ。」
「そう。」
「じゃ、来月からまた一緒に行けるね。学校。」
「うん。」
それから、二日後、アスカは退院した。
退院手続きを済ますと、アスカと二人でホテルに戻ってきた。
「休んでたほうが良いんじゃない?」
「ん、大丈夫みたい。」
「痛みは?」
「無いわよ。」
「ね、ミサトさんの仕事手伝ってこようかと思うんだけど・・・。」
「そうね、本来はあたしの仕事なんだけど・・・大体終わったしね。」
ピルッ、ピルッ、ピルッ、ピルッ。
「はい、碇です。」
『あ、シンちゃん?退院した?』
「ええ、いまホテルに居ます。」
『そう、あたしも一度戻るわ。一緒にお昼でもしましょう。』
「ええ、じゃ、待ってます。」
「ミサトから?」
「うん、一度こっちへ戻るって。昼一緒にどうって言ってた。」
「そう。ね、シンジっ、おいしい店知ってるから行ってみましょうか?」
「そうだな・・・・よしミサトさんが戻ってきたら、行こうか。」
「じゃ、あたしシャワー浴びちゃうね。あんたももう少しまともな格好してよ。」
「はいはい。(べつにこれでも良いと思うんだけどな・・・・)」
「シンちゃん?アスカ?」
「あ、ミサトさん、おかえりなさい。」
「アスカは?」
「今、シャワー使ってます。」
「そう、じゃ準備が出来たらご飯に行きましょうか?」
「ミサトさん、仕事の方は大丈夫なんですか?」
「ええ、事務処理だけだから、書類の整理だけよ。今日は、15時ごろ戻れればいいわ。」
「じゃ、ゆっくり食事できますね。」
「あら、ミサト、お帰り。」
「みんな、何が食べたい?」
「僕はなんでもいいですけど。」
「ミサト、いい店知ってんのよ。そこ行かない?」
「いいわよ。」
「よし、準備OK!」
「さあ、いくわよシンジっ。」
「あら、結構いいところね。」
「でしょ?」
「さて、ビール、ビールっと。」
「ミサトさん仕事中なのに大丈夫なんですか?」
「運転するわけじゃないから大丈夫よん。」
(そういう問題じゃないと思うけど・・・・)
「こっち来てから、これが楽しみでぇ~。」
「「はあぁぁ。」」
((だめだ、こりゃ。))
「ぐびっ、ぐびっ、ぷっはぁ~。」
「ちょっとぉ、恥ずかしいからオヤジみたいなことよしなさいよ。」
「ねえ、アスカ。このソーセージ、おいしいけどレバー?」
「それはね、血よ血。血をソーセージにしたものなの、この店の一番のお勧め。」
「ふうん、どうやって作るんだろ。」
「ね、ミサト。仕事手伝わなくて大丈夫?」
「そうね、後はあたしだけで大丈夫よ。」
「エヴァは、船便だけど、何で運ぶの。」
「あんたたちがベコベコにしたオーバーザレインボウよん。」
「げ、あたしあの艦長苦手。」
「たまたま、固定装備が残ったままだったのよ。すぐに積み込めるのはあれだった訳よ。」
「ねえ、ミサトさん。ここから日本へ運ぶエヴァって、完成してたんですか?」
「八割ほどはね。外装がまだなのと、コアはまっさらの状態ね。見てみたい?グロいわよぉ。」
「二号機とおんなじなの?」
「いいえ、あのエヴァはS2を積んでるの。」
「初号機に近いんだ。」
「ええ、でも元はリリスよ。」
「使う事がなきゃいいですけどね。」
「そうね、そのための抑止力なのよ。パイロットとして確認されているのは、世界でとりあえずあなたたちだけだし。」
「あたしは、動かせないかもよ。」
「ね、ミサトさん。さっきコアはまっさらだって言ってましたよね。だとすると、動くんでしょうか?」
「ええ、どうやら、量産機と同じテクノロジーが使われているらしいわ。」
「じゃ、あれかな・・。」
「なに、シンジ何か知ってるの?」
「あ、いや。母が研究しようとしていたのに、イルカの脳を使ったダミー人格のアイデアがあったんです。」
「イルカぁ?」
「そう、イルカの脳に強制的に人の意識・・・ま、意識パターンというのかな・・・それをコピーしてエヴァに積むのさ。」
「グリーンピースが騒ぎだすようなネタね。」
「でも、なぜ、ドイツにあったんでしょうね。量産機ならドイツでも作れたでしょ?」
「どうやら、テスト用の機体だったんだけど、テストが終わった後そのままになってたみたいね。すぐに量産機の製造に取り掛かったみたいだし。」
「じゃ、基本的には、量産機に近いわけか・・。」
「ところで、あなたたちはこれからどうするの?」
「あたしは、来週に最後の検査よ。だから火曜日かな。帰れるとしたら。」
「シンちゃんは?」
「司令には話して休暇という形になってますから、アスカと一緒に帰ります。」
「なに、自費で来たのぉ?」
「そうだよ、僕の場合、あくまでもプライベートだもの。」
「ま、仕方ないわね。」
「さて、あたしはそろそろ仕事に戻るわ。あんた達は?」
「ええ、ホテルに戻ります。」
「そう、じゃあとで。そうそう、まだエッチしちゃダメよ。アスカの体が回復してからねん。」
「ばっ・・・しないわよっ!」
「大丈夫ですよ。それより仕事手伝いましょうか?苦手でしょ?事務処理。」
「あら、切り返されちゃった。大丈夫よん。ま、書類にサインすることが多いから、頼むわけにもいかないのよ。」
「ね、ミサト、あたしも休暇ほしいなっと。」
「だめよ、アスカはちゃんと体の回復に努めなさい。それが仕事よ。これは上司としての命令。」
「ちぇっ。」
「アスカ、僕が一緒にいるから。」
「所在と行き先をはっきりしといてくれれば、市内にいる分はOKよ。」
「「はい。(~い)」」
二人はミサトと別れ、ホテルに戻ってきていた。
「ねえ。」
「なに?」
シンジは相変わらず、雑誌を読んでいた。
「ヒマ・・・・。」
「体の方は大丈夫なの?」
「ええ、なんともないわ。ま、少しだけ腰が重いかなって。」
「今日は、休んでた方がいいよ。」
「ぶうぅぅ・・・・・・。」
「明日、体が大丈夫なようだったら、少し出てみようね。」
「は~い。」
「ねえ、アスカ、ノート端末、貸してくれる?」
「いいわよ。あんた自分のは?」
「置いて来ちゃったよ。急いでたから。」
シンジはアスカの端末で、ネットにアクセスした。
MAGIとの回線を開き、日本での一件の報告書とメールをいくつか打った。
それが終わると、銃をばらして整備を始めた。
「ねえ、射撃訓練でもしてたの?」
「いや、出掛けにねずみが出てね。」
「ちっょとあんた大丈夫だったの?」
「うん。だからこうしているんだけど。」
「で、そのねずみさんはどうしたの?」
「うん、その時とても機嫌が悪かったんだ。早く飛行機に乗りたい一心でね。相手を思いやる時間も余裕なくてね。それに4人だったし。」
「逃げたの?」
「いや、3人は撃った。一人は縛って今ごろはネルフで絞り上げられてるだろうね。」
「死んだの?その三人。」
「たぶんね。」
「あんた・・・大丈夫?いやよトラウマなんか。」
「ああ、大丈夫だよ、知らない人だからね。それに、あの時は邪魔をするあいつらが憎かったし。」
「ならいいわ。どっちにしても正当防衛だし。でも、よく4人もねえ・・・。」
「保安部にいるし、訓練も受けたしね。こう見えても成績はいいんだよ。ま、得意なのは電子情報戦だけどね。」
「つくづく、あなたって、わからない人ね。」
「そう?僕ほどわかりやすい人間はないと思うけどな。」
チキッ・・・カチャッ・・・キャキッ。
ものの数秒で銃を組み立てる。
目は笑いながら、アスカを見たままだ。
ジャキッ。 シャコン。
弾槍を入れ、初弾を送り込み、セフティにしてから、ホルスターにしまった。
「早いわね、それも訓練?」
「うん、暗闇でも同じ事ができるよ。いや、目で確認しないだけ、暗闇の方が早いかな?」
「さて、お茶でもいれようか?」