※この作品はR-18です。

虹の彼方に~NEO~   作:黒須一騎

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虹の彼方に~NEO~16 「事故」

「アスカぁ、無理しないのよぉ。」

「あら、大丈夫よ。病気じゃないんだから。」

そう言うと、アスカはコンテナのチェックに向かった。

 

「・・・えっと、これはOK。・・・これも良しっと。」

アスカは、PDA片手に巨大なコンテナの回りを歩いていた。

ミサトも同様に向こうのコンテナのキャットウオークの上で作業をしている。

 

「さて、アスカぁ。お昼にしましょう。」

「了解。」

 

ランチを簡単に済ますと、二人はお茶を飲んでいた。

「アスカ、はい、これ。」

「なに?・・・・・これって航空券じゃないの・・・それも明日の・・・。」

「ご苦労様、あなた先に帰りなさい。あとはあたしだけで間に合うから。」

「いいのっ? やったあっ!」

「ふふっ、そんなにシンちゃんが恋しい?」

「当然よ。」

「あら、からかい甲斐が無いわね。」

 

 

「さて、仕事は大体済んだわね。今日コンテナのチェックが終われば積み込みだけだから。」

「そうね、あとはミサトの事務処理だけね。そうだ、あたしも上に昇るわ。その方が早く終わるでしょ。」

「だめよ、アスカ。もしよ、もし万一のことがあったら、大変じゃない。」

「あら、大丈夫よ。キャットウォークって言ったって、幅が2Mもあるんだもん。落ちやしないわ。」

 

「だめよ、手擦りもついてない場所もあるのよ。」

「大丈夫だって。」

「そう?」

「よし、そうと決まったら、いくわよ。」

「はいはい。」

 

 

危ないと思ったときは遅かった。

目の前にあった、ワイヤーに気をとられ、避けようとして手擦りを掴もうとしたが、そこに手擦りは無かった。

手擦りのちょうど切れ目から、アスカの体がゆっくりと落ちていった。

 

「きゃあぁぁぁ!」

キャットウォークの上から、落ちた体は、コンテナの角に当り、フックリングが下腹部にめり込んだ。

 

「げはっ!」

そのまま、コンテナの上で一度バウンドし、床に足から落ちた。

ミサトが見たときは、アスカは床の上に倒れていた。

 

「アスカぁっ!」

「おい!人が落ちたぞ!!」

「おい!ドクターを呼んで来い!」

「担架だ!早く担架をもってこい!」

(赤ちゃん・・・・助けて・・・・シンジ・・・・・)

怒号が飛び交う中で、アスカの意識は消えていった。

 

 

ミサトは支部の病院で、廊下で待っていた。

 

「惣流少尉の関係者の方ですね。」

「はい、あの子はっ?お腹の子供はっ?」

「まず、こちらへどうぞ。」

そう言うと、ミサトは、廊下のベンチに下ろした。

「まず、少尉の命に別状はありません。」

「よかった。」

「ただし、下腹部を強く打っており、残念ながら、お腹の子供は胎盤剥離を起こしダメでした。」

「そんな・・・・あの子やっと幸せになれたのに・・・・これからもっと幸せになるはずだったのに・・・・・・あたし・・・なんて言えば・・・・。」

「我々も、ベストを尽くしましたが、お気の毒です。」

(アスカ・・・・・もっと早く帰していれば・・・・・・。)

 

 

 

休みだというのに、シンジは、朝からなんとなく落ち着かなかった。

シンジの携帯が呼び出しを告げる。

 

ピルッ、ピルッ、ピルッ・・・ピッ。

 

「はい、碇です。」

 

『シンジくんっ!落ち着いて、聞いてね。』

「な、なにかあったんですかっ!ミサトさいっ!」

『アスカが・・・アスカが落ちたの。でも命には別状はないわ。』

 

「怪我はっ!ひどいんですかっ?」

『ごめんなさい・・・私がついていながら・・・』

 

「子供はっ!お腹の子供はっ!」

『流れちゃった・・・・シンジくん・・・。ごめんなさい・・。』

 

「くっ・・・・・いまから、すぐそちらへ向かいます。」

『わかったわ、ネルフには私から連絡しておくから、シンジくんはすぐに飛行機で。』

「わかりました。それまではアスカについてあげてください。お願いします。絶対に一人にしないであげて下さい。」

『わかった。早くね。』

 

携帯を切ると、バックに着替えとパスポートを押し込み、マンションを飛び出た。

こういうときに限って、タクシーは見つからない。

 

大通りへの近道の公園を抜けようとしたとき、数人の屈強そうな男たちが現れた。

シンジは冷静に、回りを分析した。

(三人か・・・・茂みにも・・・一人・・・。)

 

男たちは、シンジの進路を塞いだ。

「通してください、急いでますから。」

シンジは、ポケットの中の携帯の緊急ボタンを静かに押した。

 

「碇シンジだな。悪く思うなよ。」

そう言うと、懐からトカレフを取り出した。

 

シンジは身を横に投げ出しながら、自分の銃を抜き、撃つ。

 

バンッバンッバンッ!

 

シンジの銃は続けざまに火を吐き、確実に男たちの頭に吸い込まれていった。

悲鳴も上げられずにそのまま倒れていく男たちを横目に、シンジはすばやく公園の垣根にみを隠し静かに移動した。

 

直後、今までいた垣根に向かって、数発の弾丸が打ち込まれた。

シンジは、発射地点を確認すると、静かにそこへ回り込み、相手の後頭部に銃を突きつけた。

 

「銃をすてろ。」

少年とは思えない、恐ろしく乾いた口調だった。

 

「もう一度だけ言う、捨てろ。」

チキッ。 撃鉄を起こす音がする。

男は、後頭部からすさまじい殺気を感じた。

逆らえば、間違いなく殺す気なのをはっきりと感じ取れた。

 

男の手から、拳銃が落ちた。

「動けば殺す。聞くが、おとなしく捉まるのと、死ぬの。どっちがいい?」

「わ、わかった・・・殺さないでくれ。投降する。」

 

シンジは、最高に機嫌が悪かった。

多分死んだであろう男たちもにも、まったく後悔はなく、逆に気分が良かった。

バキッ!

 

シンジはそのまま、銃で男の後頭部を思いっきり殴った。

男の体を探り、武器や爆発物が無い事を確認すると、ポケットから、タイロックを取り出すと男の腕をブランコの支柱に縛りった。

 

大通りに出て、タクシーを捕まえると空港へ向かった。

シンジは、携帯でネルフに連絡をした。

 

「碇少尉です。冬月司令に繋いでください。」

『シンジくん、ちょうど連絡しようとしたところだ。』

「急いでいたものですから。」

『刺客のうち、君が捕まえた男はこちらで確保した。

 あとの死体は、一般人に発見されてね、回収している時間がなかったので、適当にこちらで処理しておく。』

 

「司令。暫く休暇を貰います。」

『うむ。葛城少佐から聞いている。気をつけて。あと、チケットは空港で受け取れるよう手配しておいた。ネルフのカードで受け取れる。銃はカウンターで預けてくれ。』

「はい、すみません。」

シンジは、チェックインし銃を預け、ドイツへの飛行機に乗り込んだ。

 

 

アスカは、処置も終わり、病院のベットで寝ていた。

ミサトが、ベットの横の椅子で、まんじりともせず、ただアスカを見つめていた。

 

「・・・・んっ・・・・・・ここは?」

「病院よ支部の。」

「子供はっ!あたしの赤ちゃんはっ!」

「落ち着いて、アスカ、お願いだから。」

「ねえ・・・教えて・・・お願い・・・・。」

「アスカ、赤ちゃんは助からなかったの。」

 

「・・いやっ・・・なんで・・・・・嫌あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

「落ち着きなさいっ!アスカっ!」

「嫌っ!!嫌っ!  嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁ。」

 

看護婦とドクターが走ってきて、鎮静剤を注射してやっと落ち着いた。

 

 

「精神的ケアが必要です。彼女の旦那さんはまだ日本に?」

「いえ、いまこちらに向かってます。まもなく着くころとは思いますが。」

「着たら、彼女に合わせる前に、私のところへ来るように伝えてください。」

「はい。」

 

シンジは、空港からタクシーを飛ばし、病院に着くとナースセンターでアスカの病室を聞き、急いで向かった。

 

コンコン。

「はい。どうぞ。」

「ミサトさんっ。アスカは?」

「とりあえず今は鎮静剤で眠っているわ。彼女の主治医がシンジくんと話をしたいから来るようにって。」

「わかりました。」

 

 

 

「本部の碇少尉です。」

「どうぞ。」

「え、きみが・・・・。」

「はい、惣流のお腹の子の父親です。」

「いや、すまない、あまりにも若く見えたものだから・・、ちょっと驚いたよ。」

「ドクター・・・・惣流は・・・・。」

「うん、いま説明してあげよう。そこにかけて。英語は大丈夫?解るね?」

 

「はい、大丈夫です。」

「一つ確認したいんだが、惣流少尉は君の恋人かい?」

「はい。将来を約束しています。」

「彼女を支える自信があるかい?」

「はい。もちろんです。どんな事をしてでも。」

「わかった。見かけ以上にしっかりしているようだね。すまないね、どうも日系の人の年齢って解りにくくってね。」

「慣れてますから。それより・・・」

「ん、わかっているよ。まず、彼女の状態だが、天井から落ちたらしい。

 詳しくは彼女の上司が一緒だったらしいから後で聞くといい。

 その落下の時、コンテナの角のフック・・・ま、リング状の引っ掛ける部分だが、ここに下腹部を強打している。

 その後床に落下したらしいがこれはたいした事がなかったらしい。

 まず現状は彼女の体には一部打撲があるが、大丈夫だ。ただ、子宮を強く圧迫され、胎盤が剥離してしまったんだ。

 よって彼女はそれが原因で流産してしまった。子供はあまりにも週が若いために助けることができなかった。」

 

「後遺症は残る可能性・・・ありますか?」

「それは、大丈夫だよ。1ヶ月もすれば内臓も回復する。また子供を得ることに問題はないよ。」

「そうですか。」

「問題なのは、彼女の精神のほうだ。子供を失った事で、かなりのショックを受けている。目を覚ましたときかなり暴れてね。鎮静剤でいまは眠っている。」

「わかりました。ドクター。いつ頃日本には帰れるでしょうか?」

「なに、体の方は、3日もすれば大丈夫だよ。それより、カウンセリングを受けるかね?」

 

「本人と相談します。」

「ん、わかった。いつでも相談してくれ。」

「はい。」

 

 

 

シンジは、アスカのベットに戻った。

「シンちゃん、ごめんなさい。」

「ミサトさん、いいんです。それよりアスカ、目を覚ました時どうでした。」

「ゲシュタルト崩壊に近かったわ。また壊れる恐れもね・・・・。それで貴方を呼んだのよ。」

「すみません。」

「本当に役に立たなくて・・・・あの時無理にでも私がアスカを止めておけば・・・・。」

 

「アスカに、ついてあげて。」

「はい、そのつもりです。」

 

「じゃ、あたし・・・外にいるから。」

「はい・・・あの・・・ミサトさん・・・。」

「なに。」

 

「あまり自分を責めないでください。アスカが自分から起こした事なんでしょ?」

「ええ、そうだけど・・・でも、それをさせないのが私の役目なのよ。そう言う意味では、私は失格ね。ごめんなさい。」

 

そう言うと、ミサトは部屋の外のベンチに腰を落とした。

ミサトにしては、ひどく落ち込んでいた。

胎児とはいえ、家族と感じる一人の宿した命が消えたのだ。

 

「・・・・・・・・・・・アスカ・・・・。」

 

 

アスカの目の横には、いく筋もの涙の乾いた跡があった。

シンジは、ハンカチを濡らすと、そっと涙の跡を拭った。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・んっ・・・・・・・・・・・・」

「気がついた?」

「シンジっ・・・・・・・・・・わあああぁぁぁぁん!」

彼女は、シンジに必死にしがみついた。

シンジは、彼女の頭を胸に抱き、ゆっくりと撫でた。

 

「ひぐっ・・・ひぐっ・・・ううっ・・・ご・・・ひぐっ・・・ごめ・・・。」

「アスカ・・・大丈夫だよ・・・。落ち着いて。」

「・・・・ぐすっ・・・ずるっ・・・・うん。」

「寂しかった?」

 

こくっ。

彼女はシンジに両腕を回したまま頷いた。

 

「シンジ・・・・ごめんなさ・・・さい。あたしがしっかりしていればこんな事には・・・・・。」

「もういいんだよ。アスカが無事だったんだから。」

「でも・・・・赤ちゃん・・・・・私の・・・赤ちゃんが・・・・ひぐっ・・・・。」

 

「アスカ・・・良く聞いて・・・・。あの子は、またきっと僕たちのところへ帰ってきてくれるよ。

 いまは、ちょっと寄り道したかっただけだよ。だから・・・ね。」

「そうかな・・・ぐすっ・・・・帰ってきてくれるかな・・・。」

「うん、僕らがそう望んでいれさえすれば、必ず帰ってきてくれる。そう、僕は信じてるよ。」

「ホント?・・・くすん・・・」

「僕が、アスカに嘘を言った事があったかい?できない事を言ったことが有ったかい?」

「・・・・ない・・・・でも。」

「だからね、あの子のことは忘れちゃいけないよ。必ず帰ってくるから。」

「うん。」

「さ、だからね、今は、体を休める事だけ考えて。」

「うん。」

 

「あたしね・・・昔の事・・・思い出しちゃったの・・・・・。

 あたしのママがあたしを殺そうとしたように、あたしも同じじゃないかって。」

「アスカ?あの子の事愛してなかったの? 生みたくなかったの? 疎ましかったの?」

「ううん。絶対にない。愛してたの。生んであげたかったの。たとえ自分の命と引き換えでも・・・生きて欲しかったの。」

「なら、大丈夫だよ。きっとあの子もアスカのこと愛してたと思う。

 だから、きっと帰ってくるよアスカだって、君のママがいたからあそこから帰って来れたんだよ。

 君のママは、いわば自分の命と引き換えに、君の心を作った。解るよね。」

「うん。」

 

「ただ、一つだけ小言、言わせてもらえるかな?」

「はい。」

「今後は、僕やミサトさんの言う事を素直に聞くこと。できるかい?」

「うん。もう軽はずみなことは二度としない・・・。」

 

「さ、横になって。」

「はい。」

「じゃ、ミサトさん入れていいよね。ずいぶんと落ち込んでたみたいだから。」

「うん、ちゃんと謝りたい。」

「わかった。ちょっと待っててね。」

 

 

 

シンジは廊下に居たミサトに話した。

「ミサトさん、もう大丈夫ですよ、会ってやってくれますか?」

「アスカ、落ち着いた?」

「ええ。」

「ありがとう。シンちゃん。」

 

 

コンコン。

「アスカ、ミサトよ、入るわね。」

「うん。」

 

「もう、落ち着いた?」

「うん。あの・・・ミサト・・・ありがとう、それと心配かけてごめんなさい。」

「いいのよ、もう。貴方が無事だったらそれで。」

「あたしって、ほんとにまだ子供よね、浮かれて、子供が居る事さえ忘れて・・・。

 ホントにバカなのはあたし・・。シンジに・・・怒られちゃった。」

 

「そうね、でもシンちゃんは許してくれたでしょ?」

「ええ。」

「よかったわね。」

 

「シンジに迷惑かけてばっかり。ほんとにダメねあたしって。」

「そうよ、シンちゃんに愛想つかされないようにしなさいね。」

「うん。」

 

「よかった。元気になって。」

「ミサト、またあたしが壊れると思ったんでしょ。」

「そうよ、あたしシンちゃんにどうやって顔向けするのかと落ち込んだわ。」

「ごめん。ミサト。ね、シンジも呼んで。」

 

「シンちゃん、居るんでしょ?奥さんがお呼びよ。」

「み、ミサト。まだ・・・奥さんになってないもの・・。」

 

「入るよ、アスカ。」

「シンジっ。」

「早く元気にならなきゃね。アスカ。」

「うん。」

 

ミサトはシンジからする僅かな、硝煙の匂いを感じたが、後で聞くことにした。

(射撃訓練でもしてたのかしら・・・)

 

「ねえ、シンジ。いつまで居られるの?」

「ウン、ちゃんと司令から許可もらったから、一緒に帰れるまでいるよ。」

「よかったわね、アスカ。」

「うんっ。」

 

「で?、アスカ。何に浮かれてたのさ。」

「うん、ほんとは、今日の便で帰る手はずだったの。ミサトが航空券くれて・・・・・・。」

「あぁっ!アスカっ!航空券は?」

「あたしのバックに入っているはずだけど。」

「ごめん。ちょっち、行ってくるわ。キャンセルしなくっちゃ。じゃあね!」

 

 

「悪いことしちゃったな、ミサトには。」

「そうだね。ま、仕方ないよ、事故だもの。」

「うん。後で謝るわ。」

「うん。ところでお腹すいてない?」

「うん、あたしは大丈夫。」

 

「シンジ、ちゃんと食べてるの?」

「そういや、今日というか・・・朝から食べてないや。」

「だめよ、ちゃんとたべなきゃ。」

「そうだね、ちょっと食堂へ行ってくるよ。」

「あ、帰りにゼリーがプリンあったらほしいんだけど・・・いい?」

「うん、わかった。」

「まって・・・シンジ。」

「なに?」

 

アスカは、目を瞑ってキスをおねだりしていた。

(やれやれ、ま、元気になったからいいか。)

 

ちゅっ。

 

「早く戻ってきて・・・・。」

「うん。」

 

シンジは、病院内のレストランで食事をすますと、売店に寄った。

ドイツ語も幾分母のおかげ問題なく会話できていた。

フルーツゼリーとプリンを買い込むと、病室へ戻った。

 

 

「ただいま。」

「あ、お帰りシンジ。」

ちょうど、ドクターが来ており、聴診器を当てていた。

 

患者衣がはだけられ、白い双丘と、アスカの使い捨てショーツが見えて少し赤くなった。

「終わるまで外にいるね。」

「うん。」

 

 

「碇少尉、もう大丈夫なようだね。」

「はい、ありがとうございました。」

「退院は、あさってごろかな、ただ、帰るのは1週間後にしてくれるとありがたいんだか。」

「そうですか。なにか・・・」

「いやなに、一応の経過観察だよ。それで問題ないなら、帰国しても医者の世話にならなくとも大丈夫だと思うよ。」

「そうでしたか、ありがとうございます。」

「いや、私も彼女がここに居るときから知っているからね。」

「そうでしたか。」

 

「しかし、びっくりしたよ。あの、跳ねっ返りが、ちゃんとレディになってるんだものな、碇少尉はどんな魔法を使ったんだい?」

「軍事機密ですよ。トップシークレットのね。」

「あははっ、さすがサードチルドレン。」

「知ってたんですか?」

「ああ、こう見えても、惣流少尉がここに居た頃は、僕がチルドレンの医務担当だったんだ。」

「そうだったんですか。」

「さ、彼女の側に居てやりたまえ。」

「はい。ありがとうございました。」

 

 

「アスカ、入るよ。」

「あの先生ね、ここに居る頃、あたしの担当医だったの。」

「うん、いま先生から聞いたよ。ほら、プリンとゼリーだよ。」

「ありがとう。シンジ。」

 

 

「ね、シンジは今日どうするの?」

「うん、ここに居てほしけりゃそうするつもりだよ。」

「そうね・・・・、そうだ、シンジ。ホテルに泊まりなさいよ。ここから歩いても10分程度よ。あたしの部屋があるから。」

「でも、今日はここにいてもいいかい?」

「うん。ありがとシンジ。でも明日はちゃんとホテルで体を休めなくちゃだめよ。」

「うん、そうするよ。」

 

シンジは、アスカのベットの下にマットを敷いて横になっていた。

 

「ねえシンジ・・・・・・あたし・・・また・・・・作れるかな・・・・赤ちゃん。」

「先生は、一ヶ月もすれば完全に回復するって・・・。」

「そう。よかった・・・・・・生めるんだね・・・・・・あたし・・・。」

「うん。」

 

 

~翌朝~

 

 

コンコン。

 

「はい。」

「おはようございます。」

「あ、先生。おはようございます。」

「さて、お嬢さんのお加減はいかがかな?」

「ええ、痛みはまだ少し・・・・。」

「そう。起きれるようだったら、食堂で食事をとってもいいよ。」

「はい、そうします。」

 

「碇少尉、ドイツは初めて?」

「ええ。」

 

「どうだね、いい所だろ。ここは。」

「はい。町並みがとても綺麗ですね。」

「秋には、街の木々も紅葉する。とても綺麗なんだ。」

「日本は、常夏ですけど、ここには四季があるんですね。」

 

「じゃ、なにかあったら、呼んでくれ。」

「はい。」

 

二人は朝食を済ませ、部屋に戻っていた。

シンジは、売店から買ってきた雑誌に目を通していた。

 

「ねえ、シンジ。」

「なに?」

「あんた、いつからドイツ語読めるようになったの?」

「補完後・・。」

「へえ。話す方は?」

「ん~。あんまり得意じゃないかな。なんか口が馴染まないっていうか、でも会話に不便は感じないよ」

「英語は?」

「問題ないと思うよ。あと、ヘブライ語が少し・・・。」

「なんでヘブライ語?」

「母が少し勉強したみたいだね。生活するのには十分な程度かな。」

「へえ。じゃあんた今、四ヶ国語話せるんだ。」

「まあね。」

「ね、他にお母さんから受け継いだものってどんなのがあるの?」

 

「神経生理学、大脳生理学、生物工学、医学、臨床心理学、生化学、そのたもろもろ・・・。あ、情報処理もね。話すと時間かかりそう。」

「すごいわね。ま、碇ユイ博士の記憶を受け継いだら、あたりまえね。どう?あんた天才になったのよ?」

「それは違うと思うよ。ぼくにあるのは知識だけ。それをどう使うかということが、問題じゃないかな。

 利用できない知識は意味が無いよ。今持っている知識から新しい理論や応用が作れれば、それは天才かもしれないけど・・・。」

「そっかぁ・・・。でも、それだけの知識がその頭に詰まっているのよね。」

「うん。これは予測だけど、人間の大脳って、70%は利用されていないよね。」

「ええ。」

 

「もしだよ、もし、その70%がコンピューターのハードディスクのように使えたら?」

「実際に記憶に利用しているのは、半分以下ね、2週間程度の記憶は海馬に蓄えられ、整理と関連付けがなされて大脳の記憶領に蓄えられる。

 実際の容量はずいぶんと小さくなる・・・でしたっけ?」

「うん。だいたい正解だね。」

「でも、そうなったら、すごいわね。もしコントロールできたらすごいわ。」

「可能性はあるね。帰ったら自分の頭のNMR取ってみるよ。脳の領域調べて見なきゃ。」

「その知識ってどんな感じなの?」

「そうだね・・・・ちょうど映画の記憶に近いかな。擬似体験の記憶みたいな感じ。ま、それよりもう少しはっきりしているけど。」

 

「それよりアスカ、来月から大学始まるけどどうするの?」

「そうね、帰ったらすぐに手続きするわ。」

「電子工学系だっけ。」

「そう。」

「じゃ、来月からまた一緒に行けるね。学校。」

「うん。」

 

 

 

それから、二日後、アスカは退院した。

 

退院手続きを済ますと、アスカと二人でホテルに戻ってきた。

 

「休んでたほうが良いんじゃない?」

「ん、大丈夫みたい。」

「痛みは?」

「無いわよ。」

 

「ね、ミサトさんの仕事手伝ってこようかと思うんだけど・・・。」

「そうね、本来はあたしの仕事なんだけど・・・大体終わったしね。」

 

ピルッ、ピルッ、ピルッ、ピルッ。

 

「はい、碇です。」

『あ、シンちゃん?退院した?』

「ええ、いまホテルに居ます。」

『そう、あたしも一度戻るわ。一緒にお昼でもしましょう。』

「ええ、じゃ、待ってます。」

 

「ミサトから?」

「うん、一度こっちへ戻るって。昼一緒にどうって言ってた。」

「そう。ね、シンジっ、おいしい店知ってるから行ってみましょうか?」

「そうだな・・・・よしミサトさんが戻ってきたら、行こうか。」

「じゃ、あたしシャワー浴びちゃうね。あんたももう少しまともな格好してよ。」

「はいはい。(べつにこれでも良いと思うんだけどな・・・・)」

 

 

「シンちゃん?アスカ?」

「あ、ミサトさん、おかえりなさい。」

「アスカは?」

「今、シャワー使ってます。」

「そう、じゃ準備が出来たらご飯に行きましょうか?」

「ミサトさん、仕事の方は大丈夫なんですか?」

「ええ、事務処理だけだから、書類の整理だけよ。今日は、15時ごろ戻れればいいわ。」

「じゃ、ゆっくり食事できますね。」

 

「あら、ミサト、お帰り。」

「みんな、何が食べたい?」

「僕はなんでもいいですけど。」

「ミサト、いい店知ってんのよ。そこ行かない?」

「いいわよ。」

「よし、準備OK!」

「さあ、いくわよシンジっ。」

 

 

 

「あら、結構いいところね。」

「でしょ?」

「さて、ビール、ビールっと。」

「ミサトさん仕事中なのに大丈夫なんですか?」

「運転するわけじゃないから大丈夫よん。」

(そういう問題じゃないと思うけど・・・・)

「こっち来てから、これが楽しみでぇ~。」

「「はあぁぁ。」」

((だめだ、こりゃ。))

 

「ぐびっ、ぐびっ、ぷっはぁ~。」

 

「ちょっとぉ、恥ずかしいからオヤジみたいなことよしなさいよ。」

「ねえ、アスカ。このソーセージ、おいしいけどレバー?」

「それはね、血よ血。血をソーセージにしたものなの、この店の一番のお勧め。」

「ふうん、どうやって作るんだろ。」

 

「ね、ミサト。仕事手伝わなくて大丈夫?」

「そうね、後はあたしだけで大丈夫よ。」

「エヴァは、船便だけど、何で運ぶの。」

「あんたたちがベコベコにしたオーバーザレインボウよん。」

「げ、あたしあの艦長苦手。」

「たまたま、固定装備が残ったままだったのよ。すぐに積み込めるのはあれだった訳よ。」

 

「ねえ、ミサトさん。ここから日本へ運ぶエヴァって、完成してたんですか?」

「八割ほどはね。外装がまだなのと、コアはまっさらの状態ね。見てみたい?グロいわよぉ。」

「二号機とおんなじなの?」

「いいえ、あのエヴァはS2を積んでるの。」

「初号機に近いんだ。」

「ええ、でも元はリリスよ。」

「使う事がなきゃいいですけどね。」

「そうね、そのための抑止力なのよ。パイロットとして確認されているのは、世界でとりあえずあなたたちだけだし。」

 

「あたしは、動かせないかもよ。」

「ね、ミサトさん。さっきコアはまっさらだって言ってましたよね。だとすると、動くんでしょうか?」

「ええ、どうやら、量産機と同じテクノロジーが使われているらしいわ。」

「じゃ、あれかな・・。」

「なに、シンジ何か知ってるの?」

「あ、いや。母が研究しようとしていたのに、イルカの脳を使ったダミー人格のアイデアがあったんです。」

「イルカぁ?」

 

「そう、イルカの脳に強制的に人の意識・・・ま、意識パターンというのかな・・・それをコピーしてエヴァに積むのさ。」

「グリーンピースが騒ぎだすようなネタね。」

「でも、なぜ、ドイツにあったんでしょうね。量産機ならドイツでも作れたでしょ?」

「どうやら、テスト用の機体だったんだけど、テストが終わった後そのままになってたみたいね。すぐに量産機の製造に取り掛かったみたいだし。」

「じゃ、基本的には、量産機に近いわけか・・。」

 

「ところで、あなたたちはこれからどうするの?」

「あたしは、来週に最後の検査よ。だから火曜日かな。帰れるとしたら。」

「シンちゃんは?」

 

「司令には話して休暇という形になってますから、アスカと一緒に帰ります。」

「なに、自費で来たのぉ?」

「そうだよ、僕の場合、あくまでもプライベートだもの。」

「ま、仕方ないわね。」

 

「さて、あたしはそろそろ仕事に戻るわ。あんた達は?」

「ええ、ホテルに戻ります。」

「そう、じゃあとで。そうそう、まだエッチしちゃダメよ。アスカの体が回復してからねん。」

「ばっ・・・しないわよっ!」

 

「大丈夫ですよ。それより仕事手伝いましょうか?苦手でしょ?事務処理。」

「あら、切り返されちゃった。大丈夫よん。ま、書類にサインすることが多いから、頼むわけにもいかないのよ。」

「ね、ミサト、あたしも休暇ほしいなっと。」

「だめよ、アスカはちゃんと体の回復に努めなさい。それが仕事よ。これは上司としての命令。」

「ちぇっ。」

「アスカ、僕が一緒にいるから。」

「所在と行き先をはっきりしといてくれれば、市内にいる分はOKよ。」

「「はい。(~い)」」

 

 

二人はミサトと別れ、ホテルに戻ってきていた。

 

「ねえ。」

「なに?」

シンジは相変わらず、雑誌を読んでいた。

 

「ヒマ・・・・。」

 

 

 

「体の方は大丈夫なの?」

「ええ、なんともないわ。ま、少しだけ腰が重いかなって。」

「今日は、休んでた方がいいよ。」

「ぶうぅぅ・・・・・・。」

「明日、体が大丈夫なようだったら、少し出てみようね。」

「は~い。」

 

「ねえ、アスカ、ノート端末、貸してくれる?」

「いいわよ。あんた自分のは?」

「置いて来ちゃったよ。急いでたから。」

シンジはアスカの端末で、ネットにアクセスした。

MAGIとの回線を開き、日本での一件の報告書とメールをいくつか打った。

それが終わると、銃をばらして整備を始めた。

 

「ねえ、射撃訓練でもしてたの?」

 

「いや、出掛けにねずみが出てね。」

「ちっょとあんた大丈夫だったの?」

「うん。だからこうしているんだけど。」

「で、そのねずみさんはどうしたの?」

「うん、その時とても機嫌が悪かったんだ。早く飛行機に乗りたい一心でね。相手を思いやる時間も余裕なくてね。それに4人だったし。」

「逃げたの?」

 

「いや、3人は撃った。一人は縛って今ごろはネルフで絞り上げられてるだろうね。」

「死んだの?その三人。」

「たぶんね。」

「あんた・・・大丈夫?いやよトラウマなんか。」

「ああ、大丈夫だよ、知らない人だからね。それに、あの時は邪魔をするあいつらが憎かったし。」

「ならいいわ。どっちにしても正当防衛だし。でも、よく4人もねえ・・・。」

「保安部にいるし、訓練も受けたしね。こう見えても成績はいいんだよ。ま、得意なのは電子情報戦だけどね。」

「つくづく、あなたって、わからない人ね。」

「そう?僕ほどわかりやすい人間はないと思うけどな。」

 

チキッ・・・カチャッ・・・キャキッ。

ものの数秒で銃を組み立てる。

目は笑いながら、アスカを見たままだ。

 

ジャキッ。  シャコン。

 

弾槍を入れ、初弾を送り込み、セフティにしてから、ホルスターにしまった。

「早いわね、それも訓練?」

「うん、暗闇でも同じ事ができるよ。いや、目で確認しないだけ、暗闇の方が早いかな?」

 

「さて、お茶でもいれようか?」

 

 

 

 

 

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