エヴァはオーバーザレインボウに運ばれ、佐世保に入港した。
積み下ろし作業が、続けられていた。
「では、葛城少佐。これにサインを。」
「ご協力ありがとうございます。」
「しかし、なんだな・・・あんな子供たちが世界を救ったとはな。」
「自慢の子供たちです。」
「ま、何にせよ、今回は甲板をめちゃくちゃにされずに済んだからほっとするよ。」
エヴァは陸路を8時間かけて運ばれ、ネルフのケージに運び込まれた。
基本的には、S2を除いて二号機と同じ構造の為、整備は意外に早く進んだ。
慣れた作業員がほとんど残っていたのが幸いだ。
「ミサトさん、これ、テストの計画書です。」
シンジは、ミサトに書類を渡しながら、コーヒーを取った。
「あら、シンちゃん、珍しいわね、コーヒーなんて。」
「母が好きだったみたいですね。」
「えっと、シンクロテスト、起動テスト、戦闘テストに・・・えっ?飛行テストぉ?シンちゃんなにこれ?」
「前回の最終戦の時、飛べなくて悔しい思いをしましたからね。」
「でも飛べる構造になってないわよ。」
「ATFを羽状に何枚か広げて、羽の間にATFによる圧縮と解放を行えれば十分に可能です。
ま、出来なくとも羽さえ広げれれば、滑空はできますから。」
「できるのかしら・・・そんな事。」
「理論的には可能です。あとは、僕らがどうイメージできるかの問題ですね。」
「大気圏内ならということね。」
「ええ、ただ星間物質を取り込めれば、宇宙空間でも可能かと思いますが、動きは相当鈍くなるでしょうね。いっそ、大気圏内にいるうちに、羽状の内部に目一倍大気を圧縮して取り込めれば、暫くは機敏に動けるでしょうね。 圧力かけて高温にすれは体積増やせますし。」
「シンちゃんすごい。」
「いえ、まだできるとは決まってませんから。僕ら生身で飛んだこと無いんですよ。」
「そうね・・・・・そうだシンちゃん。ハンググライダーでの練習がいいわ。多分生身に一番近いでしょ?」
「じゃ、手配お願いします。トレーニングの日程は後で。」
「解ったわ。よろしくぅ、シンちゃん。」
「えっ?ハンググライダー?」
「そう、飛ぶ練習。」
「あんた、高いとこ駄目じゃなかったっけ。」
「うん、そこが問題だね。どうやって克服するか・・・はぁぁ。」
「じゃ、あれね。そうあれしかないわ。」
「あれって?」
「スカイダイビングよっ!」
「げげっ、やだなあ・・・。」
「大丈夫よ、あたしも付き合ってあげるから。」
「ジェットコースターでさえ怖いのにぃ・・・・。」
それから、1ヶ月ほどはシンジにとって、地獄の訓練だった。
アスカはというと、しっかり楽しんでいるようだった。
スカイダイビングではアスカには内緒だが、ちびりそうになるし、ハンググライダーでは、着地という
か着陸に何度か失敗し、3機を使い物にならなくさせた。
「(ピッ)ねえ、シンジ。そろそろ降りてきなさいよ。」
『(ザッ)降りれないんだよぉぉぉ。このハングさぁぁぁぁ・・・・すごく浮くんだぁぁぁぁ。』
「まったくう。お腹空いたのにぃ。」
「(ピッ)軽いきりもみに持っていって高度下げればぁ?」
『(ザッ)了解ぃぃぃっ、その手があったぁぁぁぁ。』
シンジは何度か大きなループを描き、きりもみに入った後、姿勢を回復させ、着地した。
「ひゃ~、しんどい目にあったよ。」
「なんですぐに降りてこないのよ。」
「サーマルがすごい出ててね、勝手に高度が上がっちゃうんだ。あ~まだ目が回ってる。」
「大丈夫なの?」
「ああ、暫くすれば治るよ。」
「さ、ご飯行きましょ?」
そう言うと、アスカは、シンジの腕を取った。
「え、どうしたのさ。」
「いいじゃない、あんたが転ばないように支えてるだけよ。」
アスカと二人で、食堂に入っていった。
ちょうど、ミサトとマヤが昼食を取っていた。
「あ、シンちゃん、こっちよ。」
「あ、ミサトさん、マヤさんも。」
「あら、ラブラブで良いけど、あまり見せ付けると反感買うわよん。」
「これはシンジがハングで目を回したから、支えているだけよ。」
「その割には、嬉しそうね、アスカ。」
「別にいいじゃない。そんな事。」
「そうそう、シンちゃん、アスカちょうどいいからここ座って。」
「どうしたんですか?」
「新しいエヴァ、来週には完成よ。コード名は「イヴ」よん。」
「アダムとイヴのイヴですか・・・。」
「ね、何色なの?」
「ベースは白色。それに、紫と赤でラインが入っているわ。」
「げ~、なんてダサいのよ。」
「しょうがないでしょ。UNは白が基本よ。」
「前みたいに、機体番号はないんですか?」
「ま、一機だけだから。」
「ねえ、ミサト。一つ相談があるんだけど。」
「なに、アスカ。」
「今度のエヴァ・・・イヴだっけ、副座にならない?」
「実はね、アスカ。相談したいことってそれもあったのよ。
アスカもこの前のシンクロテストで知ってるように、副座だと、確かにシンクロ率は上がるわ。
ただし、それは二人の精神が安定していた時はね。もしケンカでもしたら、とたんにぼろぼろよ。
それと万一の場合は、生死を一連托生となるわ。」
「あたしとシンジなら大丈夫よ。最近ケンカなんかしてないし、お互いの事は、全部知ってるし。」
「全て・・・・・・・不潔よぉ・・・・中学生なのに・・・」
「マヤさん意味が違いますよ。アスカが言っているのは、精神的にという話です。」
「あっ、ごめんなさい・・・。」
「確かに、貴方たちは、身も、心もラブラブだけど、こじれた時は大変よ。そこまでお互いを信頼できる?」
「僕はアスカを信頼していますから。」
「あたしだって・・・。それに、待ってるのはしょうに合わないのよ。」
「身も心も・・・・やっぱり不潔よぉぉぉぉ・・・。」
マヤはしっかり聞いていた。
マヤを無視してアスカが話しつづける。
「シンジ一人だけなんて、あたしは絶対いやよ。一人だけ残されるなんて絶対にいやっ!」
「わかったわ、アスカ。副座の件はOKでいいのね。」
「僕は反対です。」
「シンジ・・・・どうして。」
「非人間的な生活をするのは、僕だけでたくさんです。アスカには、幸せを掴んでほしいから。
それに、最悪の場合は、LCLに消えて帰って来れない可能性だってあります。」
「シンジ・・・・あたしは、いやよぉぉぉ、一人なんて嫌・・・・・待ってるのも嫌。
一人にしないって約束してくれたじゃないのよ。あんたが死んだら、生きてる意味なんてあたしには、無いんだから。」
「・・・・・・・・・・・・」
「シンちゃん。負けね。」
「でも・・・・」
「なによおぉぉぉっ!あのベットでの言葉は嘘だったのおぉぉぉ!」
「ベット・・・・ふ、不潔よおぉぉぉぉぉ!」
マヤは走って食堂から出て行った。
「アスカっ!突然何を・・・・。」
「無様ね。アスカ。」
「あの、ミサトさん・・・もしかして僕らの事知ってるの・・・」
「あたりまえよぉ、プライベートなことだもん。知ってるのは、あたしと、司令とドクターだけよん。 あ~あばらしちゃうんだもんなぁ。」
「ぐっ・・・・。」
司令室に戻ると、作戦室で二人は、マヤと対峙していた。
「マ、マヤさん、さっきの事なんですけど・・・・内緒に・・・。」
「二人とも・・・まだ中学生なのに・・・・。」
「お願い・・・マヤ、秘密にしといて。」
「う、うん。もちろん言いはしないけど・・・・。」
「「けど?」」
「ホントなの?」
「ええ、まあ・・・。」
「シンジくん。アスカちゃんの事、ちゃんと責任とらなきゃ駄目よ。いい?アスカちゃんを泣かせちゃだめよ、いい?」
「わ、わかってますよ・・・そうだ、ほら、アスカ、あれ見せて。」
「これ?」
そう言って、アスカは指輪をマヤによく見えるように見せた。
小さいが、ダイヤの輝きがマヤの目に止まる。
「・・・・・いいなぁ・・・」
ふと本音が漏れてしまうマヤだった。
「あら、マヤだって、青葉さんに貰えば良いじゃない。」
アスカはすかさず、話題を別に持っていく。
(ナイス!アスカ。)
「え、・・・あ、あたしたちは、べっ、別に・・・。」
「ねえ、マヤ。あたし最近思うの・・・。今まで、何度も死を覚悟したことがあったわ。
今の時を生きるってなんだろうかって考えるようになったの。
あたしたちって、エヴァに乗っている以上、いつ死んでもおかしくないのよ。
・・・・・・・・あたしは、人並みの幸せも掴む権利は無いのかって考えるの。
確かにあたしたちは、中学生の年齢よ。
でも、こうして働いているし、生活能力だってあるわ。
あたしは大卒だし、シンジも今は大学生。
・・・・・・・・ね、マヤ、・・・・・・・・・あたしは幸せを掴んじゃいけないの?
幸せになっちゃいけないの?」
「そうね・・・そうよね、貴方たちを子供だと考えてたのよね、私って。ごめんなさい。
大人でも逃げ出すような状況に追い込んどいて・・・・私・・・とやかく言える立場じゃないわよね。」
「マヤさん・・・言ってることは正しいと思います。僕らだって、そう思います。・・・・・・僕は、アスカを幸せにしたい。苦しみを一緒に背負っていきたい、ただそれだけなんです。」
「うん、そうよね、わかった。幸せになってね。二人とも。絶対よ。応援するから。」
「「はい。」」
出てった二人を見ながら、ぼんやりとマヤは考えていた。
(あたしも、考えてみようかな・・・・・。)
夕方、冬月司令にミサトは呼び出された。
「葛城少佐、実はな・・・シンジ君とアスカ君の事なんだが・・・・」
「なんでしょうか?」
「伊吹中尉が、なぜ知ってるのかね。」
「伊吹が何か言って来ましたか・・・。」
「ああ、二人を結婚させろとな・・・・。プライベートな問題だし、
まだ碇少尉はその年齢でないと、とりあえず帰したが・・・。」
「ひょんな事から、知られてしまいました。しかし、作戦行動自体には影響が無いと思いまして。」
「葛城少佐、いや葛城君、私の義理とは言っても娘なのだよ。娘の幸せを願わない親はいないよ。」
「そ、そうでした。では、どうすれば。緘口令でも・・・・・。」
「噂など勝手に広がるものだよ。いっそ、ホントに結婚させてはどうだろう。」
「はい?」
「二人をな。」
「はあ、しかし、シンジ君はまだ15歳。法的にはあと一年ありますが・・・。」
「実はな、アスカくんの妊娠を知ったとき、国連に根回ししておってな、
特例でと言う事が今ならできるんだ。」
「はい?それって・・・」
「うむ、インチキじゃよ。ま、表向きは、少子化が進んで、しかもこの世界状況だ、
経済力、生活能力があれば、社会発展のため・・・うんぬん。という訳だがね。」
「では、あとは二人の意思と?」
「うむ。わしの娘と孫娘も見つからない今、生きがいはアスカ君になりつつある。
この間なんか、初めて作ったとホットケーキを焼いてくれてな・・・ぐすっ・・・
い、いかん、どうも年を取ると涙もろくなってな・・・。」
(アスカ・・・もう、司令をてなづけたのね・・・・侮れない娘だわ・・・・)
いつものように、夕食が終わり、シンジが片付けをしていた。
最近では洗物などは、アスカも一緒に手伝っている。
「ねえ、二人とも、大事な話があるんだけど。おわったら、こっち来てくれる?」
「はい、なんですか?」
「なに?ミサト」
「あんたたち結婚したい?」
「どうしたんですか?突然。」
「まだ、無理でしょ?だって、シンジまだ16になってないもの。」
「あたしは、したいかどうかを聞いてるの。」
「今ですか?」
「そう。」
「ええ、できることなら。」
「アスカは?」
「聞くまでもないわ。」
「わかったわ。」
「でも、法律では・・・。」
「シンジくん、アスカ。できるわよ。結婚。」
「「はいっ?」」
ミサトは司令の話を二人にした。
シンジは、ずっと俯いている。
アスカは、ぼうっとしている。
「ね、ミサト、あんたあたしたちを担いでいるんじゃないでしょうね。だとしたら悪質なんてもんじゃないわよ。」
「ホントよ。」
「ミサトさん、それって・・・」
「そ、職権乱用に近いわよね。しかも国連には、二人のシンクロした意思が必要だと、副座の話までね・・・・・。
留めに、こう演説ぶったらしいわ。
「二人は幸せになる権利がある。それを奪っているのは我々だ。」 おかげで、反対数ゼロ。」
「シンジっ!いいのかな、あたしこんなに幸せで。」
「アスカ・・・。でも、責任も発生するんだよ。ですよね、ミサトさん。」
「そう、法律的には酒、タバコを除いて大人として扱われることになるの。権利が発生する変わりに
当然、義務と責任も発生するわ。」
「アスカ・・・本当に僕でいいんだね。」
「いまさら、聞かないでよ。し、シンジこそあたしで・・・いいの?」
「わかった。ミサトさん、そのお話、進めていただけませんか。冬月司令には、
僕からも後でお願いに 行きます。」
「わかったわ。いいのね二人とも。」
「「はい。」」
翌日、ミサト呼び出された、シンジは、今度の土曜日に秋月司令の自宅に行くように伝えられた。
「シンジっ、ミサトっ、早くっ!」
「あらあら、アスカったらはりきちゃって。よっぼど嬉しいのね。」
「アスカ、忘れ物ないよね。」
三人は、ミサトの車で、秋月の自宅に向かった。
「ま、シンジくん。楽にしたまえ。あの、なんだな・・・・葛城少佐が・・・形は形だとな・・・・・
その・・・ま、いい天気だな。」
「はっ、はいっ・・・・そ、そうですか・・・はい、暑いですね今日も。」
まったく会話がかみ合ってなかった。
冬月の隣では、アスカが真っ赤になって座っている。
「あ、あのっ!冬月司令っ!じゃなかった・・・お義父さん、ア、ア、ア、アスカさんを、・・ごくっ・・・く、く、ください。!」
「う、うむ。幸せにしてやってくれ。」
「は、は、はい~っ!」
(な、なにやってんのよ!シンジっ、もっとシャキッとしてよ。!)
「ぶぁはっはっはっ・・・・・ひい~、ひい~。」
「そ、そんなに笑わなくたっていいじゃないですか。」
「だって・・・ぶぁっっはっはっはっはははははははっ・・・・・・ひい~、くるぴい・・・」
あの後、寿司をご馳走になり、三人はマンションへと向かっていた。
「だって・・・あの冬月司令の顔・・・シンちゃんの・・・あっはっはっはっ・・・ひい、ひい。」
「なによ、やれって言ったのミミサトじゃない。シンジは頑張ったわ。」
「はいはい。あ~くるしい。」
「こなんなん、二度とカンベンしてほしいな。」
シンジの言った言葉に、ちょっと考えたアスカは、シンジの腿をつねった。
「ててっ、アスカ何するのさ。」
「あたりまえよっ!他でやったら、ぶち殺すっ!!」
「ぎゃははははははははっ、お願いもう笑わせないで、二人とも。」
マンションに帰ってくると、ミサトはアスカに、メモリーキューブとコネクターの付いた体温計を渡した。
「ん?なに?これ。」
「コンピューターのソフトと専用体温計よ。」
「いや、それはわかってるけど、なんで?」
「明日から、毎日、朝に計るのよ。いいわね。」
「コンピューターが危険日と安全日、それと信頼率を出してくれるわ。」
「へえ、手回しいいわね。」
「そうじゃないのよ、ちゃんと計画しないと駄目よ。それに子供・・・できたらエヴァどころじゃないしね。」
「そうね、あの辛い思いはもうしたくないわ。いまだに考えるとブルー入るもの。」
「かといって、するの止めろとはいえないしねぇ。」
「な、なによ・・・。」
「でもね、そればかりに頼っちゃだめよ。来週ドクターの所へ行きなさい。事情説明してあるから、
相談に乗ってくれるはずよ。」
「うん。そうする。」
「ね、アスカ。今度は、作る前に一言相談してくれるとありがたいんだけど。」
「わかったわ。」
二人の結婚が決まった日、シンジは3年生への、飛び級試験の合格通知を受け取った。
アスカもまた、大学院への特別編入試験の合格を受け取った。