シンジは、大学で実習を終え、学食で一休みしていた。
キールに動きがあればすぐに連絡が飛んでくるはずだ。
ほけっと気を抜いている彼を見ると、とても軍人とは見えなかった。
「ようっ!天才少年。どうした。」
「・・・その天才少年ての止めましょうよ。聞いてる方が恥ずかしいですよ。」
「で、今日はもう終わりかい?」
「ええ。」
「どうだ、今日、合コンがあるんだが、こないか?金なら心配ないぞ。」
「僕、まだ未成年なんですよ、お酒飲めないですから。」
「コーラで付き合えば良いじゃないか。相手は、OLだが、新卒らしいから、ぴちぴちだぞ。」
「女性には興味が無いといえば嘘になりますけど、歳が違いすぎますよ・・・
それにバイトがあるんですよ。」
「まいったな・・・・実は、天才少年を連れて行くって約束しちまったんだ。」
「ひどいなあ・・・でも今日は約束があるんですよ。」
「そっか、しかたないな。」
「シンジっお~またせっ」
「おおっ、かわいい子。ねえ、君どこの学校?」
「シンジ、なに?この人。」
「同級生。」
「なあ、碇。紹介しろよ。もしかして、彼女か?」
「いいえ。」
「ね、君、なんて名前?」
「碇アスカです。いつも主人がお世話になっております。」
そう言って、にっこり笑った。
「・・・僕の妻です。」
「わははははっ、こりゃ受ける天才少年、嘘ももう少し考えないとつまらないぞ。」
「ホントですよ。」
「え?マジ?」
「はい。」
アスカは、相手に、左手を見せた。
「こりゃまた、ぶったまげた。」
「じゃ、すいませんね、また。」
「あ、ああ。」
「アスカ、行こうか。」
ちょうど買い物をしているとき、携帯が呼び出しを告げた。
『緊急呼出』
以前散々見た画面だ。
二人は、ネルフへとタクシーで急いだ。
「ミサトさんっ!」
「二人とも着替えて。エヴァシリーズがイスラエルを出たのが確認されたわ。到着は2時間後。着替えたら、作戦室へ。」
「「了解。」」
「もいいけど、ミサトごめん、これ冷蔵庫に入れといて。」
「あによ、これ。」
「夕食の材料よ。」
「さて、これがイスラエルを立った量産機よ。」
「ロンギヌスの槍!!」
「本物でしょうか?」
「多分ね。日本へまっすぐ向かっているわ。ここへの到達予定時刻は、1520時。日本海到達が1500時、打って出るわよ。二人とも。」
「わかりました。」
「イヴ発信準備!」
「A10神経接続」
「シンクロスタート。」
「起動限界突破、40、50、60、70、80、90、95で安定。」
「ハーモニクス異常なし。」
「S2稼動開始」
「S2始動を確認」
「起動用電源切断」
「ロックボルト解除」
「ハッチオープン」
「防壁下ろせ」
「行くよ、アスカ。」
「いいわよ、シンジ」
イヴはATFの羽を広げて、大気をその六枚の中に溜め込みはじめた。
ヒュゴーーーーーーーーーー
ATFの羽が大気の断熱圧縮で数千度のプラズマとなっていき白く輝きだす。
『発進せよ。』
「イヴ発進します。」
ドオォォォン。
羽の中の大気を少しだけ解放したシンジは、かなりのGを受けながら、空へと向かって行った。
「指令所。敵の高度は?」
『8800M、少しずつ降下しているわ。』
「アスカ、1万まで昇るよ。」
「了解。レーダーに出たわ、そっちのモニターに回すわね。」
「敵の速度は?」
「マッハ3.2」
「早いな・・・」
「距離は?」
「あと10分で遭遇予定。」
「シンジ、仕掛けるの」
「いや、様子を見るよ。まだ、敵の攻撃目標がわからないしね。」
「そろそろモニターでも見えるわ。」
「いた。」
「こちらイヴ。敵を発見。接触を図る。」
シンジは、ひねりを加えながら、ダイブする。
「気づいたみたいね。」
量産機は急激な上昇に転じた。
ズドン。
すれ違いざま、衝撃波が伝わる。
量産機は高度を1万まで取ると、ターンをして急降下に入った。
量産機は槍を横に構え、突っ込んできた。
ぎりぎりで、イヴが体をひねりかわした。
「空中戦では不利だな。」
「アスカ、あれの用意して。」
「了解っと。」
シンジは急速反転すると、量産機に向かった。
「アスカ・・・3.2.1 発射!」
ドン!
イヴから発射された円筒は、量産機の目の前で爆発し、特殊ワイヤー製のネットが量産機の前に広がった。
止まりきれない量産機はモロにネットに突っ込んだ。
「キシャャャャャャャャッ!」
量産機はネットごと墜落していき、シンジもすぐに方向を変え、後を追った。
『シンジくん、量産機の情報よ。量産機には人が乗ってるわ。』
「・・・・・くっ・・・またか。」
「シンジっ、やらなきゃ・・・・。」
「解ってる。くそっ・・・。」
『量産機のパイロットは冬月司令のお孫さんよ。』
「くそっ!キール!! 絶対にぶっ殺す!!」
「シンジっ!冷静にっ!」
シンジは、量産機が落ちた海の上を小さく旋回していた。
突然、海が盛り上がり、量産機が飛び上がってきた。
バキイィィィン。
槍がイヴのわき腹を掠める。
「ぐっ・・・・」
装甲が数枚剥ぎ取られ、海面に落ちていった。
「あの特殊ネットを切ったというの?」
「槍があるからねぇ」
「シンジ、手足もぎ取ったらどうかしら。」
「その前に、槍をなんとかしないとね。こっちがもがれかねないよ、厄介だよまったく。」
槍にATFは無力だ。
実際、さっきもアスカがATFを張ってたが、難なく突き破られた。
「シンジ、地上へ誘って。」
シンジは白馬山系へ向かった。
量産機も追ってくる。
「狙いは、こっちか。」
量産機がすぐ近くに降り立った。
シンジはすかさず、大地に両手両足を叩き込み、体を固定した。
羽を、量産機に向け、圧縮を解放する。
ズドォォォォォォォォォォ。
すさまじい風圧に、羽をたたもうとしていた、量産機はもんどり打って倒れた。
シンジは、解放を終える直前、羽を戻し、残った大気を解放し量産機に向かって飛び出した。
立ち上がろうとしていた量産機の腕は、イヴのプログナイフで切り取られ、握っていた槍とともに、落ちた。
シンジは、すかさず槍を奪った。
量産機の後ろを取り、左腕を槍で切り落とす。
キシャァァァァァァ。
「はん!戦闘はシロートね。」
「問題は、パイロットの神経が持つかどうかだな。それっ!」
シンジは、量産機を背中から蹴り倒し、馬乗りになった。
ズニュ!
突然量産機の右腕が再生する。
シンジは咄嗟に、飛び退った。
手には、銀色の球体が握られていた。
量産機が起き上がりざまに、投げつけてくる。
咄嗟に、アスカは全力でATFを展開した。
眩い光が一瞬見え、モニターがブラックアウトする。
モニターが回復すると同時に、強い衝撃が襲った。
量産機がイヴに突っ込んできて、イヴの頭を握る。
ミシッ・・・・ミシッ。
「ぐあっ・・・・くうぅぅぅぅ。」
アスカは、咄嗟にA10フィードバックの比率を変更した。
「ぐっぅぅぅぅぅっ!!。」
シンジの痛みがすっと軽くなった。
「くっ・・・・」
ドシッ!
左肩に激痛が走る。
「ぐっ!・・・・」
「んあっ!・・・・」
量産機は、イヴから槍を奪い、左肩に突き刺して来た。
シンジは、羽を広げ上空に飛び上がった。
量産機も羽を展開し、追いかけてきた。
シンジはダイブする姿勢を取り、羽を消した。
残っていた空気が強大な大気の塊となってイヴを強力に推し戻し、量産機に迫った。
メキィ!
イヴの右手が、量産機の羽を引きちぎると、きりもみとなり、大地に落ちていった。
ズドオォォォン。
量産機が大地にめり込み、槍が手から離れた。
シンジは、そのまま大地に降り立ち、量産機の体を折り曲げ、背中のエントリープラグを無理やり引き抜いた。
メキンッ・・・ブチブチブチッ・・・・ガボッ。
その奥に見えるコアも、手を突っ込み取り出す。
ブチャ・・・メキッ・・・ブチブチッ・・・・ボギィ・・・バキン・・・。
その瞬間、量産機に仕掛けられた全てのN2爆雷が炸裂した。
そのとたん、すさまじい光と衝撃が襲った。
ドガアァァァァァァァァァァン。
ATFの羽を体を包む様に広げる。
それでも衝撃の為、数KMほど吹き飛ばされた。
羽を調節し、空中で、姿勢を整える。
「アスカ、ありがとう。大丈夫かい。」
「あ痛つつつ、まだ痛むけど大丈夫よ。でも、忘れないであたしたちは夫婦なのよっ!」
「・・・・・解った。」
「にしても、N2爆雷まで仕込んでるとはね。」
「最初から自爆させるつもりだったんだろうね。」
「あ~あ、山がいくつか消えちゃってるよ。」
「ねえ、シンジ、エントリープラグはわかるけど、そのコアどうすんのよ。」
「こうするのさ。」
イヴは大きく口を開けた。
バキンッ!
顎部拘束具が弾け飛ぶ。
コアにかぶりつき、一気に飲み込む。
「・・・・・・・・・・・・ぐうっ・・・・んっんんんっ!」
「ちょ、シンジっ・・・うげっ・・・おえっ・・・・・げほげほっ・・・・・・・・
はぁぁぁ・・・飲みこむなら言ってよおぉぉ。」
「・・・・・・・おえっ・・・・胃が重たい・・・。」
「・・・・ぎもぢわるい・・・。」
シンジは、槍を拾うと、エントリープラグを近くの草原に置いた。
「ミサトさん、量産機のプラグを回収願います。」
『解ったわ』
シンジは羽を広げて、飛び上がった。
「ちょっと、シンジ。方向違うわよ。」
「いいんだよ、イスラエルへ行くんだから。」
シンジは、冷静ではあったが表情が消えるほど怒っていた。
「イヴ、成層圏を・・・いや、衛星軌道に出ました。」
「シンちゃん、どこ行くつもりよぉぉ。」
『ミサトさん、量産機の発進場所を送ってください。』
「それなら、近隣諸国のUNが既に向かったわ。戻ってらっしゃい。」
『いえ、このままゼーレの息の根を止めます。』
「シンジくん。この場所よ。」
「ちょっと、リツコ何する気?」
「キールもきっとそこにいるわ。」
『リツコさん、ありがとう。』
「アスカ、再突入でドーム状にATFを張って。」
「任せて。」
「イヴ、大気圏へ再突入します。」
その容姿は、摩擦熱で明るく光り、まるで不死鳥の様だったという。
「神なのか、悪魔なのか・・・・。」
「神ね、シンジくんは、この世を再生した、メシアだもの。そしてその世界を護るために戦っているわ。」
『シンちゃ~ん、あまり手荒な事しないでよぉ~。』
「ちょっと脅かすだけですよ。それより、イスラエル軍との折衝はどうですか?」
『イスラエル軍はUNに対して、協力を申し出てきたわ。付近の住民も避難が完了。
いま、キールの一味の投降を呼びかけている所よ。』
「イスラエル軍とUNに対して、イヴが行く事を通知してください。
間違えて身内とドンパチしたくありませんから。
あと、投降の状況は、逐一、教えてください。」
『あんまり、やりすぎちゃダメよぉ~。お願いだから。』
「了解です。」
シンジは、ゼーレの本拠地に下りた。
どうやら、郊外にある工場のような敷地で、人影はほとんど見えない。
英語で、投降を呼びかけ、5分間だけ待つ事を告げた。
数人の人が、建物から出て来た。
シンジは、モニターの倍率を上げ、人の顔が良く見えるようにする。
「ミサトさん、キールがいないかどうか、モニターしてください。もし、いたら、教えて下さい。」
『解ったわ。』
車が、タイヤをきしませながら、飛び出て来た。
シンジは、車のフロントをイヴの指で弾いた。
それだけでタイヤや部品を撒き散らし、車が止まった。
シンジは、投降するよう呼びかけ、車からすぐ出てくるように命令した。
ばらばらと、飛び出た一味は、怯えながら、両手を上げて出て来た。
UNの地上部隊が引き連れていく。
5分が経過したので、建屋の屋根から、壁から全て壊しながら剥がした。
キールに投降を呼びかけるが出てこない。
「ね、アスカ。あれどう思う?」
「地下室ね、後は、あそこしかいないわ。」
「よし。」
シンジは上空へ飛び上がり、槍を計算地点に、投的した。
ズドオォォォォン。
槍が派手に土やコンクリートを巻き上げ、爆発したように、大地に突き刺さった。
「ありゃ、ちょっと強かったかな。」
降りて、槍をテコにしてほじくり返す。
地中からは、強固な核シェルターが出て来た。
シンジは数回シェルターを振り、地上に下ろした。
ドアが開いて、一人の老人がふらふらと出て来る。
『シンちゃん、キールよ。間違いないわ。』
「キール!止まって、ひざまずけ!」
キールは、機関銃を撒き散らしながら、必死で逃げようとしている。
ズドォッ!
キールの行く手をイヴの手が塞いだ。
勢いあまったキールは、もんどり打ってひっくり返った。
シンジは、エントリープラグをハーフエジェクトし、愛用の銃を持って出た。
「キール、もう一度言う、手を上げて、跪け。」
「くそっ、父親ばかりでなく、息子までも歯向かうか。殺してやるっ!」
キールは、足元の銃を拾い、シンジに向け撃った。
パパパパパッ!
シンジは、イヴの腕を滑り落ちながら、キールの左肩と右肩に正確に、銃弾を打ち込んだ。
バンッ、バンッ!
「アスカ、モニターを全て切れ!」
「了解!」
シンジは、キールから数メートル離れて対峙する。
「キール、跪け。」
「くそっ・・・・・」
「今の二発は、僕とアスカの分。そして、これがトウジの分。」
バンッ!
銃弾が、キールの左のスネにめり込んだ。
「ぎゃあっ!」
「これが、今まで、貴様の所為で死んだ全ての人の分。」
バンッ!
キールの右のスネにめり込む。
「ぐはぁぁぁぁぁぁ。」
「これは、インパクトで帰って来れなかった人の分。」
バンッ!
銃弾は、キールの股間に当り、睾丸を吹き飛ばした。
「ぐぎゃあぁぁぁぁぁぁ。」
「さて、キール最後の一発だが、お前に選ばせてやる。どこがいい?」
「こ・・・・殺せ・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・やーめた。お前を殺しても面白くない。生きてる事を後悔させてやる。」
「アスカぁ、手を退けて、UNを入れてくれ。」
イヴの手が上がり、UNの兵士が銃を構えてなだれ込んできた。
「碇中尉、大丈夫ですか。」
「はい、抵抗したので、撃ちました。すぐ病院へ運べば、助かります。あとはお任せします。」
「はっ!」
「シンジ、殺しちゃっても良かったのに。」
「いや、あいつには生きて裁判を受ける方が、さらに苦しめられるだろ? 簡単には舞台降りさせないさ。」
「怖い人ね、貴方も。」
「多くの人が、苦しめられてきた。もう二度と、こんなことは、起きて欲しくない・・・それだけだよ。 そのためには、悪魔にでもなるさ。」
「さ、帰りましょう。シンジ。」
「ああ、帰ろう。」
ユウカは、見知らぬ天井を見詰めていた。
(ここは、どこかしら・・・・。)
脳裏に戦いの一瞬が呼び覚まされた。
イヴがすさまじい速度で襲ってきて、右肩に衝撃とすさまじい痛みが走って・・・・。
眩い光・・・・、再び衝撃・・・・・・脊髄ごと引きずり出されるような・・・痛み・・・・・そして、暗闇・・・・。
怖かった・・・・・。
「アレフ・・・・・・どこ・・・・。頭・・・・・痛い・・・・・。」
ユウカはふらふらと病室の窓に寄ってみた。
(鉄格子・・・・・。)
ドアのノブを回すとカギがかかっているのか、びくともしなかった。
(鉄製のドア・・・・・そうか・・・・私・・・・負けたんだ・・・・・。おかあさん・・・・・・。
アレフ・・・・・・・・。・・・・・・・・・・ごめんなさい・・・・・・・。)
涙がユウカの両頬を濡らした・・・・。
ピッ、ガチャッ。
ドアが開いて、見知らぬ女性が入ってきた。
金髪は染めたものなのであろう、多少生え際に黒い髪が見られた。
「気が付いた?」
「ここは?」
「ネルフの捕虜病室よ。」
「私・・・・・負けたの?」
「ええ、完璧にね。ユウカちゃん。」
「・・・・・・・・・・・・嫌よ・・・・母さんっ!母さん・・・・なんで・・・・・・。」
「いまから、わたしの質問に答えて貰うわ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・殺してよ・・・・・あたしを。」
「それは、質問に答えてからね。」
捉まった当時の状況・・・訓練・・・母がエントリープラグに消えた事・・・。
「いい、ユウカちゃん、貴方のお母さんは、コアに取り込まれたの。」
「・・・・・そしてネルフのエヴァに破壊された・・・・・そうでしょ。もう・・・お母さんは・・・
帰ってこない・・・。」
「コアは、イヴが・・・あ、イヴっていうのは、ネルフのエヴァだけど、回収したわ。」
「それって・・・・・。」
「飲み込んだのよ。イヴが貴方のお母さんが吸収されたコアをね。」
「・・・・・・・・・・助かるの?」
「確立は低いけど、ゼロではないわ。」
「わたし・・・・どうして助かったの?」
「シン・・・イヴのパイロットが貴方の乗った量産機から、エントリープラグごと引き抜いたのよ。」
「お願い・・・お母さんを助けて・・・・。」
「コアの換装に時間がかかるの。膨大な作業量よ。その前に、貴方の体を直さなきゃね。」
「・・・・・・・体?・・・・」
「そう、貴方は、発見されたとき、強力な麻薬を打たれてたわ。明日になれば、禁断症状が出てくるでしょうね。」
「・・・・・・・・・・・・・」
「アレフ・・・・アレフは?」
「アルフレッド・アッザム・・・・キールの息子ね、彼は逮捕されたわ。」
「えっ・・・・息子?」
「知らなかったの?アルフレッドはキールがキールの組織で下働きをしていた現地人に生ませた息子よ。」
「そっ・・・・・・そんな・・・・・・・嘘よっ!だって・・・・・。」
「本当よ。」
赤木は、メモリーキューブを取り出すと、自分のPDAに突っ込み、ディスプレイをユウカに向けた。
そこには、黒いスーツを着た男から、尋問を受けている、アレフが映っていた。
『さあ、アルフレッド。綾波ユウカは知っているね。』
『それがどうした。』
『彼女になにをした。』
『ふん、つまらん女だったな。変態医者のおかげで、処女も頂けなかったし、フェラはへたくそでよ。
オヤジの言い付けじゃなかったら、ごめんだね。
どうなろうと知ったこっちゃねーよ。それより、タバコくれよ、タバコ。持ってんだろ?』
『それより、綾波ユウカに何をした。全て吐いてもらおうか。』
『へっ、ま、処女は頂けなかったが、きつくて具合よかったぜ。さいごなんか、ひーひー言ってよ。』
『・・・・・図に乗るなよ、小僧。お前の腕をへし折るぐらいなんとも思っておらん。なにをしたか素直に答えれば痛い目に会わなくて済むのにな。』
『・・・・わかったよ、話すからタバコくれよ。』
男は、マルボロメンソールをアレフの前に投げ出した。
シュボッ。
『ふう・・・・・・。オヤジのいい付けでね、物にして骨抜きにしろって。言っとくが、あれは和姦だからな。誘ったのは女の方さ。おれは、被害者だぜ、まったく。』
『薬を使っただろ?』
『おいおい、ちょっとした媚薬だせ。あれがドラッグだっつうなら、タバコは麻薬だせ。
カンベンしてくれよ。あんただって、抱きたい女に酒勧めたことぐらいあんだろ?』
『ふん、アレを知らずに使っていたというのか?れっきとした、麻薬だよ。
二種の薬品を体内で合成させ、出来上がるものはベンツェドリンという大脳皮質興奮物質、そしてメチルエンケファリンの一種、エンゼルフライと言われる、強力な最淫剤。知らぬという気か?』
『しってんなら、聞くなよ。オヤジは、量産機ごと吹っ飛ばすつもりだったらしいからな。おれは命令されただけさ。』
『量産機の狙いは?』
『しらねーよ、俺は、小娘を骨抜きにしろって言われただけさ、いいじゃねーかよ、女だってまんざらじゃなかったんだぜ。
俺を強姦罪で起訴するってなら、お門違いもいいところだ。俺は、精神的に支えをやってやったんだぜ。感謝してほしーぐれーだよ。』
『それより、あんたも抱いてみたら?結構具合いいぜ。』
『言われた事だけに、答えろ。』
「・・・・・・・・・もう・・・・もう・・・・止めて・・・・。」
赤木はPDAを停止した。
「・・・・・・・・・酷い・・・・・信じてたのに・・・・・」
「貴方のおじいさんが心配してたわ。会ってみる?」
「・・・・・・・・・・・死にたい・・・・もう・・・・死んでしまいたい。」
「おじいさんはきっと悲しむわよ。」
「これから、眠剤を投与するわ、それと拘束衣。麻薬が切れる時は、すさまじい苦しみを伴うわ、
耐えなさい。もとの生活に戻る為に。」
そう言って、赤木は数本の注射をして帰っていった。
「どうですか?ユウカさんの状態は。」
「シンジくん気になるの?」
「ええ、司令と約束しましたから。それに、戸籍上は親戚ですからね、僕が心配してはおかしいですか?」
「べつに、ま、いいわ。彼女は強力な大脳皮質興奮剤と強力な媚薬。
そして、多分、量産機に乗っていた時に投与された、別の麻薬・・・これらが、いっせいに今晩から明日に切れるわ。精神が持つかどうかが問題ね。」
「暴れますかね?」
「多分ね。それと異常な性欲発作が出るでしょうね。下手すりゃ廃人ね。」
「眠らせておいたらどうですか?」
「その手は既に初めているわ。量産機の中で投与された麻薬は、これで凌げるけど、問題は、大脳皮質興奮剤と媚薬ね。
体の脂肪層に貯留されていて、麻酔が切れる反動で、これが一斉に放出されるの。」
「そこで、さらに眠らせておけば・・・・。」
「ダメね、強力だから、麻酔並のものじゃないと効かないわ。麻薬と麻酔・・・体がもたないわ。」
「じゃ、どうすれば・・・・。」
「だれかが、慰めてあげるしかないわね・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「もし、そのままに拘束しておけば・・・・」
「自我が崩壊して発狂する可能性もあるわ。」
「崩壊するか、否かは賭けと言う事ですか・・・。」
「まさか、司令の孫娘さんに、適当な男をあてがう訳にも行かないでしょうしね。」
「あの・・・・リツコさん、この話は、司令に?」
「報告しないわけには行かないでしょうね。」
「確率的にはどのぐらいですか?その、自我崩壊する確立は?」
「今の血中濃度と、脂肪貯留量から言って、80%の確立ね。」
「相手がいれば?」
「10%以下に下がるわ。」
赤木はそう言って、廊下に消えた。
シンジは、ユウカのいる病室に入った。
「・・・・・・・・・・あなた・・・・だれ。」
「綾波ユウカさんだね。」
「どうでもいいわ・・・・・・・・・・眠いわ。ついでに、このまま死ねればもっといいけど。」
「・・・・・・冬月さんが悲しむよ、きみの事をとても心配していたんだ。」
「おじいちゃんが?」
「そう、だから、死ぬなんて言わないで・・・・・・生きていれば、楽しい事だって、みんな無くなってしまうよ。」
「・・・・・・・もう・・・疲れたわ・・・あたしの気持ちなんて・・・・
あんたにゃ解りゃしないもの・・・。」
「・・・・・・・・・そのままでいいから、聞いてくれるかな。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「僕も、今まで、すごく辛い事ばかりが続いた次期があった。
回りの多くの人が死んで、親も死んで・・・好きだった子さえ護れずに・・・死んでいった。
・・・・・・・・・僕も、何度も戦いで死にかけ、そして自分の弱さから、自殺したんだ。
でも、今は生きてて本当に感謝している。」
「・・・・・・・・・・・・・・・あなた・・・・何者?」
「ネルフのエヴァの第一パイロット、碇シンジ。」
「・・・・・・・・・いっそ、殺してくれれば良かったのに。」
「約束したんだ、必ず助けるって・・・・冬月さんと。」
「・・・・・・・・・・・・・おじいちゃんと?・・・・・」
「・・・・・・・うん、僕をとても助けてくれた。だから、今度は僕が冬月さんの力になる番。」
「・・・・・・・・・・・そう。」
「あした・・・・辛くなるかも知れないけど、頑張って・・・・・
そして、元の生活に戻ろう・・・・ね。」
「・・・・・・・・・・・あたし・・・・・また、学校行ったり、友達とあそんだりできるかな・・・・・。」
「うん、君がその望めばきっとね。・・・・・・・・・・・・・・・・・・さ、少し、眠って。
そろそろ眠剤が効いてくるころだから。じゃ・・・・これで。」
「ね・・・・・一人じゃ怖い・・・・・・少し側にいて。」
「うん。いいよ。」
シンジは、ユウカが眠った事を確認し、部屋を出た。
監視に変化があったら、すぐに赤木とシンジに連絡を入れるように頼む。
あ、シンジっ、お帰り。どうだった?ユウカさん。」
「状態は良いとは言えないけど、これは、彼女自身の戦いだから。」
「シンちゃん、司令執務室に行って、呼んでるわ。」
「はい。じゃ、アスカ、ちょっと行ってくるよ。」
「うん、遅くなるようだったら、連絡頂戴。」
「うん。」
「碇シンジ中尉、入ります。」
プシッ。
「あ、赤木博士。いらしたんですね。」
「中尉・・・・いや、シンジくん。折り入って頼みたいことがある。」
「お孫さんの事ですか?」
「うむ、シンジくん、この通りだ、ユウカを助けてやってくれないか。」
「頭を上げて下さい、司令。状況は赤木博士からお聞きになりましたか?人道的に責任は取れかねますが。」
「わかった上で、きみにこうして頼みたい。」
「しかし・・・・・僕はもう身を固めてるんですよ。もっと他に・・・。」
「シンジ君、あなた、たしか医者の卵よね、それも精神ケアの。」
「ええ、リツコさん。」
「この場合は、かなり特殊だけど医療行為の一環とし考えられない?」
「しかし、かなり特殊ですよ。冬月司令、場合によっては、お孫さんと体を合わせる場合だってあります。」
「知っておる。しかし、ユウカを失うよりは・・・・・。」
「解りました。引き受けましょう。でも、条件があります。」
「なんだね。」
「アスカの説得は僕には自信がありません。いくら、人助けと言っても、感情的には彼女には無理と思います。」
「わかった、ユウカを別の施設に移送しよう。アスカくんには、赤木博士の助手として、別の仕事をしてもらうことにする。
人身保護の為、機密扱いとしてな。これならどうだろう。」
「はい、アスカは、感が良いですから、この事は、完全に機密扱いでお願いします。
それと、アスカに適当な仕事を。そう、ここを離れられない程度の。」
「それは、あたしが手配しておくわ。
どの道、あなたがイヴで飲み込んだ、コアの換装作業でマヤがてんてこ舞してるのよ。彼女の補助として動いてもらうわ。」
「あと、一つだけ。彼女にこれから起こる事態の記録は、いかなるものもダミーを使用して下さい。」
「わかったわ。」
「当然だ。これはここ三人の秘密だ。ユウカのためにも、二人にお願いする。」
ユウカは眠ったまま、第二東京市のとある病院に収容された。
シンジは、司令の指示をアスカに伝えると、リツコとともにネルフの車で発った。
「ねえ、シンジっ、出張中に浮気したら・・・・・解っているわね。」
「うん、信じてよ。それより、コアの換装を頼むね。ユウカさんに今必要なのは、お母さんだから。」
「うん、まかしといて。マヤと進めておくわ。」
「でも、なんでリツコとシンジなのよ。」
「うん、赤木博士が薬物中毒の実態とメンタルケアの実習にいいだろうって。」
「そうね、義理とはいっても、親戚だから・・・・。ね、ちゃんと助けるのよ。いい?シンジ。」
「うん、僕にできることならね、でも、今回はあくまで、赤木博士の助手だから。」
「怪我なんかしないでよ。薬物中毒って突然暴れる時があるんだから。」
「うん、できるだけ気をつけるよ。」