タタン、タララララララララッ、タッタララララ。
シンジの打つキーボードの音が病室に響いていた。
その速度は、かつての赤木を凌駕するスピードであった。
シンジは、憎きキール・ロレンツの微かな痕跡の行方を追っていた。
すでに彼の端末には、彼のダミー会社と思われるいくつかの企業がリストアップされている。
(きっと彼は、体制を立て直してくるだろう・・・まだ、Evaシリーズを隠している可能性だってありうる。 あの性格だ、きっと復讐に燃えて期を狙っているに違いない。
こちらの体制ができあがるか、彼の体制が早いのか・・・。
時間との戦いか・・・・。それに、冬月副指令の家族を助けなくちゃ。
もう、これ以上の犠牲は絶対に許さない! )
アスカの眠る病室で、キーボードの音と、彼女の心電モニターだけが響いていた。
カチャ。
とっさにシンジの右腕が反応し、右足のソックスに隠しこんだスティレットを手にしていた。
隠しながら、ゆっくりと振り向く。
「患者さんお変わりありませんか?」
「ええ、看護師さん。」
「あれ?看護師さん始めてですね。」
シンジは、すでにこの病院の全ての医師と看護師の顔、氏名を暗記していた。
「ええ、今日こちらの方へ松代から配属になった斉藤といいます。よろしくね。」
「検温ですか?」
「ええ、それと注射を。」
「おかしいですね、そんな指示はドクターから出ていないはずですが・・・。」
(それに、配属になったばかりなのに単独で?)
「くっ・・・」
(くそっ、サードが張り付いているのば誤算だったわ、なに子供1人、すぐにケリを付けらける。)
ヒュンッ!
シンジの喉元を正確にナイフが通り過ぎた。
しかし、そこにシンジの姿は無かった。
シンジは、咄嗟にしゃがみ込みながら、手にしたスティレットを彼女の股関節に深く突き立てていた。
相手は激痛に顔を顰め、左足から力が抜ける。
「ぐっっ!!」
すかさず、シンジは膝をついた彼女の後ろを取り、延髄に正確にスティレットを当てた。
「少しでも、動けば、死にますよ。武器を放してください。次は警告無しですよ。」
(くっ、たかが少年と侮ったのが間違いか・・・)
急所を的確に捉えているシンジの動きは、まるで訓練された兵士並であることを彼女は感じた。
シンジは、ベット横のテーブルから、絆創膏を取ると、彼女の手を後ろに回し、親指を絆創膏で巻き上げた。そして、足首も同様に絆創膏で縛り上げた。
「さて、話してもらいましょうか? だれの差し金です?」
「・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
「話す気がないのなら、こちらにも手があります。」
ナースコールを押すと、指令所のだれかを緊急に呼び出すよう話した。
「どうしました?」
当直看護婦の声が聞こえた。
「ねずみが引っかかりました。すぐにそう指令所に伝えて下さい。」
「え、??」
「いいから、そう早く伝えてください。」
「は・・・はい。」
看護師たちがどたどたと駆け込んできた。
「いったいどうしたの・・・あれ?なんで看護師がいるの?」
「彼女は刺客です。僕が止めました。」
「なぜ・・・・。」
「すぐ、ドクターを呼んできます。」
ドクターにシンジは事の顛末を簡単に説明した。
「すまんな、碇くん、現在ここは、以前と違って手薄なことは否めない。君たちが重要な人間とは聞いていたが、命を狙われるほどとはな・・・・。」
「すみません、先生。それは良く承知しています。」
「ICUに彼女を移すとしよう、あそこならIDが無いとはいれないから。」
「いえ、信用しないわけではありませんが、この事態がはっきりとした以上、その程度のセキュリティはプロなら簡単に突破します。彼女の目覚めるまで、僕が守ります。」
「わかった。しかし、彼女がなぜ刺客とわかったのかね。」
「僕はここの医療システムにアクセスしてだいたいスタッフの顔は覚えたています。彼女は現在のスタッフには登録されていません。」
「そうか・・・。しかし・・・」
「すみません、失礼なのは重々承知でした。しかし、自分たちを守るには仕方なかったのです。」
「わかった。こちらも、できるだけ協力しよう。しかし、君の体が持たないぞ。」
「解っています、ですから、指令所に連絡をお願いしたんです。」
「シンジくん、何が有ったんだ。ねずみってなんだい?」
「あ、青葉さん。アスカを狙った刺客です。」
シンジは、再度説明をした。
「わかったシンジくん、彼女を指令所に近い医療室に移動しよう。ご協力いただけますか?先生。」
「うむ。できるだけのバックアップをしよう。」
彼女の移設に伴い、司令室に近い医療室の電源と病院ホットラインが設置された。
看護師が交代で、病院から出向き担当することになった。
ただし、人員の関係から、昼間の間だけとなった。
「すまないなシンジくん。今は、これが精一杯なんだ。」
「いえ、ありがとうございます。これで、僕も昼の間は動けますから。」
「僕らも協力できるからね。」
「ありがうございます。青葉さん。」
「シンジくん、先ほど保安部から連絡があってね、吐いたそうだよ。彼女は、金で雇われた単なる殺し屋で、詳しいことはなにも知らないらしい。」
「たぶんキールが絡んでいることは間違いないでしょうね。」
「どうしたものかな・・・・」
「泳がせましょう。」
「えっ?どうして・・・」
「裏を探るには、好機です。それに、僕たちパイロットを狙うということは、ゼーレの残党がエヴァシリーズをまだ保有している可能性が高くなりました。
いま叩かないと悲劇がまた起きます。」
「わかった保安部に連絡して、協力を仰ごう。」
「お願いします。ところで副指令は指令所ですか?」
「そう、僕ももどろう。」
「しかし、こまった事態だな・・・どうするねシンジくん」
「金で動いた刺客なら、なんらかの成功報酬があるはずです。そこから引きずり出せませんか?」
「惣流くんの死亡記事を出そう。もちろんダミーでだが。」
「お願いします。」
「あとは、保安部に移管しよう。彼らの方がプロだからね。
シンジくんも狙われている可能性だってありえる。」
「拳銃の携帯許可をいただけませんか?」
「オフィシャルにはまだ無理かもしれんが、なんとかしてみよう。
あと、青葉二尉、彼のトレーニングを頼めるか?」
「僕は厳しいぞ、シンジくん。」
「宜しくお願いします。」
「では、医務室に戻ります。 あと、僕が病院にいるとき調べたゼーレの関係企業らしきリストを作って有ります。保安部へ連絡しておいて下さい。」
「わかった。」
シンジは、戻るとアスカの顔をじっと見つめていた。
「・・・・・・・帰っておいで、アスカ・・・・・・・」
コンコン。
「シンジくん、私、ミサトよ。」
プシュッ!
「ミサトさん、もういいんですか?指令所は。」
「ええ、一段落ついたわ、アスカはまだ・・・」
「はい・・・・・・・。」
「シンジくん、できるだけ一緒にいてあげて・・・手を握ってあげて・・・」
「・・・・・・・そうするつもりです。」
「目覚めるといいわね・・・。」
「ミサトさん・・・。」
「でも、シンジくん、守るためには体力も必要よ、今日は青葉くんが詰めるから、あなたは一緒に帰って休みましょう?」
「・・・・命令ですか?」
「いいえ。家族としてのお願いよ。」
「解りました。でも、アスカに変化があったら夜中でもすぐに起こしてください。」
「もちろんよ、愛するアスカちゃんの為ですもんね?
で、いつからなのか今日はじっくり教えてくれるんでしょ?おねいさんに。(にやり)」
「うっ、それが目的ですね・・」
「あら、そんなことないわよ、私もここ数日ほとんど寝てないし、着替えたいしね。
それに、こうでもしないとシンちゃん休みそうにもないから。」
「すいません、ミサトさん、やっぱり心配かけてばかりですね。僕・・・」
「そう思ったら、15分後に帰るわよん。いいわね。」
「はい。」
コンフォート17は奇跡的に無傷だったが、割れたガラスで、アスカの部屋とミサトの部屋は惨憺たるものだった。
電源が落ちていた為、メンテナンスハッチを開き、クランクを使ってドアをやっと開けた。
「かぁぁ~、ひどいありさまねぇ。」
「電源は死んでいるか。これじゃフロも沸かせないですね。」
「じゃ~ん!」
「発電機ですか!よく有りましたね。」
「ネルフの倉庫から、失敬してきたのよ。私は、外の配電盤をなんとかするわ、シンちゃんは居間と浴室を片付けてくれる?あと、これ。キャンドルね。」
「ミサトさん・・・寝るとこありませんよ。」
「シンちゃんの部屋は無傷よ。おねいさんとじゃ嫌なのかなぁ?」
「・・・布団一組しかありませんけど・・・」
「問題ないわん。シンちゃんに襲われる覚悟は出来ているから。」
「どっ、どうしてそうなるんですかっ!!」
「じゃ、大丈夫でしょ?」
「う~。」
「はいはい、さっさと片付けましよう。」
「シンちゃん、電気ながすわよ~。」
「はい、いいですよ。」
ゴトゴト・・・。
ミサトがドア脇のクランクを回して入ってきた。
コンプレッサーは地下に有る為、電力が回復するまで使えないのだ。
しばらく非常用のクランクが開閉の頼りとなる。
「お風呂入るまで、食事の準備しますね。冷蔵庫のものがほとんどダメになってますから、簡単なものしかできないですけど。」
「なんでもいいわ、私は、着替えを取ってくるわね。」
「スリッパ履いて行ってくださいね。ガラスだらけですから。」
「はいはい。」
ジャリリッ。
「あ~ひっど~い。めちゃくちゃじゃない。んもぅ。」
シンジは、発電機の電気で、ご飯を炊いた。おかずは、缶詰をメインになんとか使えそうな野菜が少々。
「ああ。いいお湯だった。やはりお風呂は命の洗濯ねん。」
ミサトが身に付けているのは、Tシャツとピンクのショーツだけだった。
多少大きめのTシャツだが、彼女のショーツを隠すには短すぎた。
「ミサトさん!なんて格好してるんですかっ!せめてパジャマか、ホットパンツぐらい履いてくださいよ。」
「ん、だけど、箪笥がひっくり返って、私服がほとんどガラスだらけなのよ。制服着ろって言うの?」
「それより、エビチュ!エビチュっと・・・」
ぶしゅうぅ~。
「ごくごく。・・・ひえ~ん、ぬる~い・・・・しくしく。」
「あたりまえですよ、冷蔵庫まだ冷えてないんですから。」
「そ・・・それよりミサトさん、お願いですから、椅子にあぐらで座るの止めてくれませんか?
そのっ・・・目のやり場に困ります。」
「ふふふっ、早くシンちゃんもお風呂は行ってきなさい。発電機落とすから。」
「え?落とすんですか? 」
「そうよん、朝までガス持たないしね。」
「一緒にご飯たべましょう。」
「はい。」
シンジが風呂から上がってくるとすでにテーブルの上には、4本もの空き缶が林立していた。
「シンちゃん、おっそ~い。」
「はいはい。すぐご飯にしますね。電気もう止めたんですね。」
「そっ、キャンドルもいいもんでしょ?ちょっちロマンチックで。」
「ねえ、シンちゃん。?」
「はい。」
「あの時の約束覚えてる?」
「!!(大人のキスの続き・・・の事かな?)」
「酔ってますね? ミサトさん。」
「うふふっ、答えになってないわよ。」
「お願いですから、パンツ一枚で言わないで下さいよ。これでも男なんですから、端くれですけどね。」
「あら、約束は約束よ。それになんかシンちゃん魅力的になってるしぃ~。」
「中学生誘惑して面白いですか? 」
「うふふふっ、教えてア・ゲ・ル。」
「わっ、ミサトさん、止めてくださいよ。!とっ・・・ちょっ・・・うむっ!」
ミサトの豊満な胸がシンジの顔を包んだ。
「んむっ!むごっ!んっん~!」
「シンちゃん・・・・聞いて。」
「私はあなた達に何も出来なかった。ただ、戦場に送り出すしかなかったわ。
・・・・・・・許してとは言わないわ。でも、謝らせて・・・お願い・・・。」
シンジの頭に水滴が垂れる感じがしている・・。
「・・・ごめん・・・なさい・・・・・」
ゆっくりとシンジを離すと、ミサトの唇が近づいてきた。
「ぴちゅ。チュプッ・・・・。」
少し、涙の味がする大人のキスだった。
ミサトの舌がシンジの歯をこじ開け、入ってきた。
シンジの舌を求めて、動き回る。
シンジの意識は霞がかかって来ていた。
「んっ・・・・んむっ・・・・ちゅぷっ」
「シンちゃん・・・私と同じように・・・ちゅぷっ」
「んむっ・・・ん・・・」
「・・・ぷはっ・・・はあ、はあ、はあ。」
「・・・・はあ、はあ・・・」
「うふふっ、シンちゃん元気ィ・・」
「はうっ!つかまないで!」
シンジは、慌てて椅子を立ち、股間を抑え後ずさりした。
「経験してみる?」
「なっ・・・なに言ってるんですかっ!明日も早いんでしょ?もう寝ましょうよ。」
「いやん・・シンちゃん大胆。寝ようだなんて・・・。」
「ミサトさんっ!!いい間違いましたっ! 眠るですっ!」
「はいはい。」
「くすくすっ・・・あっはっはっ。ごめんごめん。そうね、もう眠りましょ。」
「じゃ、僕は、簡単に片付けちゃいますね。」
「明日でいいでしょ?、先ずは休養よ!」
「ふうぅぅ。解りました。休みましょう。」
シンジは、予備のタオルケットを取り出すと、床に敷いた。
包まって眠るつもりだったが、ミサトがシンジのベットの奥で隣をポンポンと叩いている。
「・・・・ミサトさん・・・」
「・・・(ポンポン)・・・」
「でも・・・・。」
「・・・(ポンポン)・・・」
「だって・・・」
「・・・(バンバン)・・・」
「う~~~・・・」
「・・・(バフッ、バフッ)・・・」
「・・・・わかりました・・・(しくしく)」
(ミサトさん、寝相悪そうだもんなぁ・・・・)
シンジは、ミサトの待つベットに潜っていった。
成熟した女性の甘い香りがシンジの鼻腔をくすぐったが、母のにおいを思い出させるものでも有った。
「で、シンちゃん、アスカを好きになったのはいつからかなぁ~。お姉さんに教えなさいよぉ。」
「えっ、いつからって・・・。それより明日も朝から忙しくなりそうですから、早く眠りましょうよ。」
「なんか、シンちゃんごまかすの上手になっちゃってぇ~。」
「でも、帰ってきてくれてほんとにありがとう。」
その声を聞きながら、僕は、眠りへと落ちていった。
「・・・・おかえり・・・シンちゃん・・・」
ミサトは、シンジを抱き寄せると、次の瞬間には自らも眠りへと落ちていった。
結局、シンジは、朝まで、5回もミサトにベットから落とされた。