再建された第三中学ではSHRが開かれていた。
ケンスケは、茶色に染めた髪を風になびかせて、なにを考えるでもなく、ぼうっと外を眺めていた。
写真販売のアルバイトはすでにしておらず、今は事故や事件などを追い掛け回していた。
既に新聞やネットニュースに何度か採用されたりしていたが、クラスメートでは、それを知る者は少なかった。
「さて、今日は、転校生を紹介します。」
第三東京市が復興を遂げ、ネルフが大学や研究機関を設置してからは、多くの転校生がやってきていた。
しかし、ケンスケの周りには、昔の仲間はいなかった。
綾波は帰ってこなかったし、シンジ、アスカは大学へ、洞木も九州へ転校してしまい、もっとも親友だった、鈴原は他界していた。
たまに話をする、昔の旧友数人を除けば、その顔ぶれは、まったく変わってしまっていた。
「先生っ!男ですか?女ですか?」
「え~、女子です。暫く病気療養してましたが、お母さんの仕事の都合で、このたびこの第三・・・。」
「先生っ!はやくっ!」
「じゃ、入ってきてください。」
ゴロロロロッ。
一人の少女が、教室のドアを開けて入ってきた。
「第二東京市から来ました、綾波ユウカです。宜しくお願いします。」
ケンスケは、綾波という珍しい苗字に反応して、外を眺めていた目を彼女の方に向けた。
(へえ・・・けっこういい被写体だな・・・・・。)
「えっと・・・席は・・っと・・・相田、ちょっと手を上げて・・・・そう、彼の隣の席です。」
「はい。」
「宜しくね、相田君。」
「あ、ああ。」
「相田、綾波さんにテキストを見せてやってください。では、これでSHRを終わります。」
~SHRと一校時目の間~
「ねえねえ、綾波さんて、彼氏いるの?」
「ねえ、どこ住んでるの?」
「ねえねえ・・・・・」
ガタッ。
ケンスケは、席を立ちながらぶっきらぼうに言った。
「そんなに、急に聞いたら、面食らうだろ。おい、委員長っ。面倒見てやれよ、役目だろ?」
「委員長は今日休んでるよ、聞いてなかったの相田君。その仕事は、副委員長の相田くんの仕事よ。」
「わかった・・・・・ほら、行くぞ・・・・・。」
「えっ?どこへ?」
「案内してやるよ、便所の場所も知らないだろ?」
「う、うん。ありがとっ!」
ケンスケはすたすたと教室を出て行こうとする。
「あ、相田君ちょっとまって。」
「ここが、女子トイレ・・・・・・・・・」
「うん。」
「ここが、下駄箱・・・・・空いているところを適当に使うといいよ。」
「ええ。」
「あとは、体育館や更衣室・・・・・保健室・・・・ま、おいおいわかるだろ。」
「うん。」
「じゃあな・・・。」
「相田君・・・教室もどらないの?」
「悪いけどちょっとフケるよ。」
そういって、ケンスケは屋上へと向かった。
ガチャ。
ケンスケは、屋上のドアの上ある屋根に登って、ごろりと寝転がった。
ガチャ。
だれかが屋上に出た音がした。
(サボリは、俺だけじゃないってことか・・・・ま、俺には関係ないや。)
綾波という名が、ケンスケに昔を思い出させていた。
「・・・・・んしょ・・・んしょ・・・・あ、ここだったんだ。」
「・・・・ふうっ・・・・気持ちいいね・・・・・ここ。」
「突っ立てっると、パンツ見えるぞ・・・・。」
「きゃっ!・・・・・見えた?」
「・・・・・・・・・別に・・・・・。」
ケンスケは、ごろりとユウカの反対側に寝返りを打った。
「あの・・・・さっきは・・・ありがとう。」
「あん?別に・・・・。役目だから・・・・・。」
「ね、ここって、気持ちいいね。相田君の隠れ家?」
「・・・・・・・まあね・・・・それより、授業・・・出なくていいのか?」
「うん、だって、教科書・・・まだないもの。」
「・・・・・・・・そうか・・・すまなかったな、勝手に使っていいよ。」
「わたしも・・・サボっちゃおうかなぁ。」
「変わった奴だな・・・・。」
「へへっ。」
「ね、良くここに居るの?」
「ああ・・・・・。」
「ここって、柵が無いから、そっちへ行ったら、落ちて死んじゃうよ。」
「かまわないさ・・・・。悲しむ奴なんか・・・・もう誰も居ないから。」
「・・・・・・・ご両親は?」
「いない・・・・・・死んだ。」
「・・・・・・・・・あ、あの・・・・・ごめんなさい。」
「・・・・気にするな・・・・ここじゃ良くある話さ。」
「あの・・・・あたしも父親いないんだ・・・・。」
「・・・・・・ここはさ・・・ちょっと前まで全員がそうだったんだ・・・いまは違うけど。」
「ふうん。」
「・・・・・・・・ある理由で、そういう子供が集められたらしい・・・。もう・・・ほとんど散っちまって居ないけどね。」
「相田君て・・・ずっとこの中学に?」
「・・・・・・ああ、1年からな・・・・・死んだ親父がネルフに勤めていたから・・・。」
「ね、相田君て・・・・教室で浮いてる?」
「聞きにくいことをズバリと聞くやつだな・・。」
「怒ったら・・ごめん。」
「・・・・浮いてるよ、思いっきりな・・・・。」
「でも、副委員長なんだよね。」
「古株だから、押し付けられただけさ・・・・。」
「ね、眠いの?」
「・・・・・・・・・・・・少しな・・・・。」
「落ちちゃうよ・・・。」
「・・・・・・・・行けよ、初日からサボったら、騒ぎになるぞ。」
「いいもん、相田君に案内してもらっていたって言うから。」
「・・・・・・・・・・・なんて迷惑なやつだ。」
「へへっ、だからもどろ?ねっ?」
「・・・・・・・・・・・わかった。」
ケンスケは、昇降口の屋根から飛び降りた。
ユウカも遅れて飛び降りる。
「!!・・・・・アブねーぞ、真似すると。」
「大丈夫だもんっ、結構体育は自信あるんだ。へへっ。」
ユウカが飛び降りるとき、白地に青いストライプの下着がケンスケの目に入った。
少し、ドキリとするが、知らん振りをした。
「見えちゃった?」
「ああ・・・・・。」
「きゃっ・・・恥ずかしい。」
「・・・・・・・・・飛び降りなきゃいいだろ。」
キーンコーンカーン。
「あ、一時間目・・・終わっちゃったね。」
クラスに戻ったケンスケは、教室の後ろの場所から、ユウカと少し離れるようにして、また外を眺めていた。
クラスの女子がユウカの周りに集まってきた。
「綾波さん、大丈夫だった?変な事されなかった?」
「へっ?なんでもなかったよ。相田君てそうなの?」
「いや、ちっよと彼、ネクラだしね。クラスでもほとんど話ししないし、浮いてんのよ。」
「そうなんだ。」
「あまり、近づかない方がいいわよ。」
「ね、相田君のご両親て亡くなったってきいたけど・・。」
「うん、なんでも、ネルフに勤めていて、サードインパクトでね・・・・それ以来暗くなったって聞いたわ。」
「そうなんだ・・・・。」
「気になるの?あのネクラ。」
「いや・・・そう言うわけじゃ・・・・。」
ユウカは、端末を起動し、ケンスケへの回線を開いた。
(ユウカ) さっきはありがとう。 >
(ケンスケ)別に。 >
(ユウカ)ね、後で購買とかも教えて。>
(ケンスケ)一回切るよ。これ通常回線だから。> logoff #
ちょっとするとユウカの端末右下に見たことの無いアイコンが現れた。
ケンスケが、自分の端末の画面をタップして、クリックしろという意味のようだ。
画面の一番下に別窓が開いた。
(Ken)>これならいいよ。先生にはわからないから。
(ユウカ)>すごいね、こんな事もできるんだ。
(ユウカ)>ね、碇君って知ってる?
(Ken)>知ってる。きみこそ、なんで知ってる?
(ユウカ)>助けてもらったんだ。二人に。
(Ken)>そうか。
(ユウカ)>聞かないの?
(Ken)>別に。もう、友達だったのは、過去の話だ。
(ユウカ)>ケンカでもしたの?あの二人と。
(Ken)>別に。みんなバラバラになって、自然と遠縁になった。それだけだ。
(ユウカ)>こんど一緒に遊びにいかない?<碇さんの家
(Ken)>苦手なんだ、アスカは。
(ユウカ)>ね、案内してよ。
(Ken)>やだ。
(ユウカ)>どうして、また友達になれるよ。
(Ken)>昔を思い出すからな。一人で行けば?
(ユウカ)>せっかく誘ってるのに・・・・。
(Ken)>場所なら教えてやるよ。それでカンベンしてくれ。
(Ken)>もう、切るよ。
窓が端末から消え去った。
ユウカは、持ち前の明るさもあってか、回りのクラスメートにすぐに溶け込んだ。
昼休みはいつも、ケンスケの姿は消えていた。
「ユウカっ、ご飯たべにいこっ。」
「ウノちゃん、今日はごめん。ちょっと用事があるの。」
ユウカは自分で作った弁当をもって、屋上に上った。
ユウカは、昇降口の屋根に上るとそこで、寝転んで空を見ているケンスケを見つけた。
「ここ、いい?」
「ああ。」
「お昼・・・食べたの?」
「いや。」
「具合でも、悪いの?」
「別に・・・気にするな。ただ、食いたくないだけだ。」
「ね、一緒に食べよか、少し分けてあげるよ。」
「・・・ふふっ、はははっ・・・お前って変わってんのな。」
「ふふっ、そうかも。」
「ね、碇君・・・・仲良かったんだよね、心配してたよ。」
「あいつらと、仲いいんだ。」
「大切な友達よ。というより、叔母さんかな。」
「へっ?叔母?」
「うん。アスカさんが結婚するときにね、帰化する為に一時的だけど冬月の養子になったの。
で、あたしのママが旧姓、冬月。つまり、私のママとアスカさんは、義理の姉妹なのよ。」
「・・・・・へえ。そうだったんだ。」
「しらなかったの?」
「ああ、あいつらの結婚式・・・・呼ばれてたけど・・・行かなかったから。」
「好きだったんでしょ、アスカさんのこと。」
「シンジが話したのか・・。」
「ううん、実は事故があって、碇さんたちと記憶の共有があったの。だから・・・・。」
「・・・・・じゃなにか、君もエヴァのパイロットだって。」
「以前ね。今は乗ってないわ。・・・・・・わたしね、とっても辛い恋をしてるの・・・・。」
「まさか、シンジを好きになったとか。」
「・・・・・うん。」
「・・・・そうか・・・・・。」
「でね、新しい恋を見つけなさいって・・・・。相田君はまだずっとアスカさんの事・・・・?」
「いや、とっくに、吹っ切れてるよ。俺には無理だよ、彼女は。」
「ね、相田くんって、もっと明るかったよね。」
「そっか、昔も・・・知ってるんだっけ・・・。」
「なんで?あ、あの、無理にとは・・・。」
「構わないよ・・・・オヤジがサードインパクトで死んで、孤児院送りになった俺は、いじめられたよ。散々ね。もともと、いじめられやすい風貌だったからね。風呂に沈められて、死にそうになった事も何度もあった。
生爪をペンチではがされた事もあったな。いま考えると、良く死ななかったよ。
最後は、カッターナイフで切られそうになったとき、手じかにあった鉛筆で相手の目を突いたんだ。
それで相手は失明さ。べつに憎かったから構わなかった。おれは、もう一方の目も・・・・・・。
自分の暗さと陰を知ったのはそれからさ。幸い少年院送りは免れたが、居にくくなってね。
何度も飛び出したよ。やっと帰ってきたときは、シンジも惣流もいなくなってた。
一番の親友だった、トウジはあっさりと事故で逝ったし。委員長だった洞木は、九州へいっちまった。」
「辛い想いをしたのね。」
「なに、よく有る話しさっ。ところで・・・・綾波っていや、レイの親戚かなんかか?」
「ううん。違うわ。」
「そうか。つまらない話したな。忘れてくれ。ついでに、俺の事も忘れてくれるとありがたい。」
「・・・・・・ど、どうして・・・・・」
「言ったろ、俺なんかと居ると、村八分にされるぜ。」
「べつに、かまわないわ。それより、明日からおべんと作ってきてあげるね。食べてくれる?」
「おまえって、やっぱり変わってるよ。」
次の日、ケンスケの姿は昼休み前には無かった。
「ユウカっ、今日はどうするの?また、あのネクラと?」
「あははっ、ネクラじゃないわよ。彼。他のみんなより、大人しいだけよ。(あなた達が、ガキなのよ。)」
「ねえ、ユウカ。今度別の男の子紹介するから、よしなさいってば。
いい噂聞かないよ、女の子の写真売ってたとか、人刺しちゃったとか・・・・。怖くないの?」
「彼も望んでそうなった訳じゃないわ。」
「あら、ユウカったら、相田におネツ?」
「そんなんじゃないってば。」
「へえ、ほんとにぃ?」
「あ~いだ君。いる~?」
「ああ・・・・・」
「ごめんね、おそくなっちゃって。」
「いま、そっちへ降りるよ。」
「大丈夫だよ、私が上ってくから。」
スタッ。
「えっ、おりてきちゃったの?」
「ああ、毎回パンツ見せられてたら堪らんからな。」
「・・・エッチ。」
「へへっ、はい。お弁当。ここでたべよっか。」
「・・・・・・なんか、懐かしいな。」
「でしょ、昔よくここでみんなで食べてたのよね。」
「ああ・・・・・・。でも、俺に弁当を作って来てくれる奴なんかいなかったよ。」
「ここに、いるじゃない。」
「なんで、俺なんだ?」
「うん・・・相田君のこと知ってたからかな。」
「俺は知らんぞ、お前の事。」
「そっか・・・・えとね。お父さんは、セカンドインパクトで死んじゃったの。
お母さんは、ネルフでお医者さんをしていて、おじいちゃんは、冬月っていうの。」
「もしかして、ネルフの司令の孫?」
「うん。おじいちゃん知ってるんだ。」
「知ってるも何も、昔、こってり油を絞られたよ。」
「あ、戦闘中に出てきちゃったってアレね。」
「ああ、あの頃は、エヴァのパイロットになりたくてな。でも、アレで戦う事の恐ろしさを知ったよ。」
「そうね、戦うって怖いわ。」
「あるのか。」
「うん・・・・ほら、ちょっと前に日本海へイスラエルがエヴァが攻めてきたでしょ。あれ、乗ってたの。」
「なんだって、じゃあ、シンジと・・・。」
「・・・・そう、私は、脅迫と洗脳をされ、碇さんと戦ったの。てんで、問題にならなかったわ。」
「パイロットは死んだって・・・・聞いてるけど。」
「うん・・・・公式にはね。でも・・・あたしだったの。碇さんは、何度も助けてくれたわ。最後は、アスカさんも一緒に助けてくれたの。」
「そんなことがあったんだ。相変わらず、情報統制はあるのか・・・。」
「あたし達護るためっだって・・・・・。普通の生活に戻れる為・・・・・。ほんとは、ばらしちゃいけないんだけど・・・」
「・・・・・・・そうだな・・・・。心配するな、誰にも言いはしないよ。」
「ね、おべんと・・・おいしい?」
「ん、ああ。うまいよ。」
「へへっ、よかった・・・それね、あたしが作ったの。ママがそろそろ自分でしなさいって。」
「へえ、上手じゃないか。」
「んふふっ、ありがと。」
「ね、今は生活どうしてるの?」
「あ?一人だよ。ネルフに遠い親戚がいて、一応保護者になってるけどね。なんとか説得して、一人暮らしさせてもらってる。」
「自宅に一人で?」
「いや、今は、アパート。一人じゃ広すぎてね。いまは、人に貸してる。」
「どこらへん?」
「結構遠いよ、市内は高いからね、下地町のあたり。」
「あら、家に近いわよ。家は3丁目」
「2丁目」
「リニア通学?」
「いや、バス停が近いから、バスだよ。」
「ふうん、じゃあたしも今度バスにしようかな。」
「なんでさ。」
「だって、おんなじ方向じゃない。」
「・・・・・なんでかな・・・・(答えになってないって。)」
「ね、今度、ご飯作りに行ってあげよっか。」
「いいよ、べつに・・・・その・・・散らかってるし・・。」
「遠慮しないの。なんか昔しっから、知ってるみたいでさ。相田君て。」
「いいってば、ほんとに散らかってて、きたないから。」
「じゃ、片付けるの手伝ってあげる。」
「・・・・・・・・・・うっ・・・・どうしても?」
「だめ?」
「・・・・・・・・・(エロ本・・・片さなくちゃ・・。)・・・・・日曜日なら。」
「やった。約束よ。ついでに、土曜日もあけてくれると嬉しいんだけどな。」
「・・・え、土曜日もかい?なにするのさ。」
「夕べね、アスカさんに電話したの、土曜日なら開いてるから、是非遊びに来いって。」
「君は・・・・だろ?おれなんか・・・」
「相田君もだよぉ。碇さん、仕事切り上げて帰ってくるって。」
「・・・もし、行かないって言ったら?」
「そんなこと・・言わないよね・・・泣くよ・・・ユウカ・・・泣いゃうよ・・・・。」
「わ、わかった、行くから泣かないでくれ。」
「えへへへっ(にこぱっ)」
「・・・・うっ(泣きまねかい・・・)」
ケンスケは、自分のアパートに帰り、途方にくれていた。
「・・・・・・・いったい、どこから手をつけていいんだ・・・・」
「たしか、ここいらだと思ったけど・・・・。あ、これだ・・・葛城・・・・・あれ、なんでもう一つ表札あるんだろ・・・・日向?はて・・・。」
「相田く~んっ、こっちこっち!」
「え?そっち?・・・・・・・・・・・・碇シンジ・アスカ・・・・・ほんとだ。」
「なんども来た事があったんじゃないの?」
「彼らが、まだ隣に居た頃だよ。」
ピンポ~ン。
『はい、どちら様?』
「ユウカっでえ~すっ!」
ピッ、プシュッ。
「ハーイ、ユウカ。元気してた?」
「うん。アスカささんは?」
「元気元気!さ、上がって。あ、相田もね。」
「麦茶でいい?」
「うん。」
「はい。」
「シンジも、もうすぐ帰ってくると思うわ。久しぶりね、相田。相変わらず、女の子の写真売りさばいてるの?」
「あ、あれは廃業したよ。おまえらみたいなスターが居なくなってね、採算が合わない。」
「知ってる?ユウカちゃん。こいつったらね、あたしや、シンジの写真撮って、ブロマイドみたいに売ってたのよ。」
「ええ、でも一番の売上がアスカさんでしょ。」
「ま、それは当然として、こいつあたしのブルマー姿の写真までとってたのよ。」
「ええ、そうですよね。」
「おかげで、シンジがうふふっ。」
「それ以上言っちゃ、碇さんかわいそうです。んふふふっ。きゃっ。」
「か、かわりに、額付きで写真あげたじゃないか・・・結構高かったんだぜアレ。」
「そうね、あんまりいじめちゃかわいそうか。」
「そう。ま、俺にとっては、惣流・・じゃなかった、碇夫人のエプロン姿が驚きだけどね。」
「あら、人は、変わっていくものよ、そういうあんたも変わったわねえ。すっかり、不良になって。」
「今時、不良なんて言葉、老人ホームでも聞けないぞ。碇夫人。」
「その、碇夫人てのやめてくんない?なんか老けたみたいでいや。」
「じゃ、どう呼べばいいんだ?碇夫人。」
「苗字で呼んでよ。シンジはシンジだから、区別がつくわ。」
「わかった。碇さんでいいんだな。」
プシュ。
「ただいま~。」
「あ、お帰りシンジ。来てるわよ、二人とも。」
「やあ、よく来てくれたね。ケンスケ!久しぶり!」
「ああ、トウジの葬式以来だな。」
「やだ、あんた制服着て帰ってきたの?」
「うん、早く会いたくてね、会議からそのまま帰ってきた。」
「シンジっ、それって・・・少佐じゃないか。すげえな。」
「あ、うん。」
「へえ、凄い出世じゃないか。惣流・・・じゃなくて・・碇さんもか?」
「あたしは、大尉よ。」
「ぼ・・・僕着替えてくるよ・・。」
シンジはそそくさと部屋に着替えに行った。
「あれでも、保安課担当上級士官なのよ。笑っちゃうでしょ。で、もっと笑えるのが、このあたしがその補佐官だってこと。ネルフの保安は、子供が守ってるのよ。ま、今までも、ザルのようだったんだけどね。」
「ふう。あ、アスカ、玄関にあった、食材は?」
「もう、冷蔵庫に入れたわ。」
「ありがと。」
「葛城さんとこも誘ったんだよ。今晩、鍋どうですかってね。」
「あら、じゃお酒頼まなくっちゃ。ミサトが来るんじゃね。」
「ね、いつもあの制服なんですか?」
「ああ、今日ね予算会議だったのよ。国連の担当者も来たからその為でしょ。いつもは、ラフなもんよ。」
「よかった、無理にでも連れてきて。」
「へっ?相田ちゃんが?」
「最初は、来たくないなんて言うんですよ。」
「ほお・・・、で。」
「こんな生き生きした相田君見たの初めて。」
「ええっ!あんたこんなのがいいの?よしなってば。もっといい男見つけてあげるから。」
「そりゃないだろ、碇さん、俺だって人間だぞ。」
「あはははっ、そりゃそうね。」
「しかし、信じられないほど、丸くなったな。以前だったら、罵詈雑言とビンタの嵐だったのに。」
「あら、そんなに酷くなかったわよぉ、ねえ~、シンジっ!」
「・・えっ・・・うん・・・まあ。」
(シンジよ・・・やっぱり敷かれてるのか・・・・。)
「ま、それより、クッキーでもどうぞ。昨日焼いたから、今日ちょうどいいと思うけど。」
「ん、うまいな。相変わらず。」
「いいなあ、こんな旦那さんで、ユウカも欲しい。」
「あら、あんたなら、かわいいからすぐに見つかるわよ。」
「ええ、そうかなあ。へへっ。」
「なに、ユウカってば、本気で相田がいいの?」
「ま、ちょっとだけ気になってるかな・・・。」
「相田。良かったじゃない。春よ春!。」
「え、何が春なの?アスカ。」
シンジがコーヒーのお代わりを持って台所から戻ってきた。
「ん、ユウカちゃんがね、相田にホの字だってこと。」
「へえ、そうだったの?いつのまに?」
「碇さん、まだそんな・・・わたし・・・。」
「ケンスケ、真面目な話。ちゃんとするなら僕はなにも言わないよ。」
「シンジ・・・話、肥大しすぎ。まだ、そんなんじゃないよ。」
「そう、でもそうなったら、本当に大切にしてね、かわいい姪なんだから。」
「相田・・・・ユウカちゃん泣かせる用な事したら・・・・エヴァでグッチャグチャに踏み付けるからね、覚悟して付き合うのよ。」
「・・・・・・マジ?・・・・」
「ええ、マジよ。」
「にっこり笑いながら言うなよ・・・。」
「うん。でも、僕もアスカも、ユウカちゃんを大切に思っている事は同じだよ。」
「わかった、わかった。そのときは、真っ先にお前らに相談するよ。」
「さて、そろそろ夕食の準備しようか。」
「そうね、あたしも手伝うわ。」
ピンポ~ン。
「あ、ミサトさんいらっしゃい。日向さんも。」
「シンちゃん、お呼ばれに来たわん。」
「悪いね、シンジくんいいのかい?」
「鍋って、みんなでやった方が楽しいじゃないですか。さ、入ってください。」
「あ、ユウカちゃん。元気してたぁ?」
「はい、葛城さん。」
「えと・・・・君は・・・たしか・・・。」
「相田です。」
「そうそう、戦闘中に飛び出してきた、シンちゃんの同級生ね。」
「はい、ミサトさん。ビールです。」
「きゃはっ、エビチュ~。!」
「ミサト、一本だけだよ。」
「しょんなぁ~。ね、あと一本。」
「ダメです。おなかの子に障ったらどうするんですか?」
「「「「ええっ!」」」」
「・・・・おめでとうで、いいんですよね、ミサトさん。」
「へへっ、ま、マコトがかわいそうだからぁ、しかたなくよ、仕方なく。」
「ミサトおめでとう。でも、・・・素直じゃないわよ。」
「アスカに言われたかぁないわよ。」
「日向さん、おめでとうございます。」
「ありがとう、シンジくん。・・・・く・・・くくくっ」
「えっと・・・よくわかんないけど・・・・おめでとうございます。葛城さん。」
「おめでとうございます。ミサトさん。」
「で、いつですか?ミサトさん。」
「へっ?」
「結婚式ですよ。」
「うん、来月の末・・・ちょっち急だけどね。」
「へえ、ミサトも一児の母かぁ。大丈夫なの?ペンペンとは違うわよ。」
「なによぉ、アスカ。大丈夫よぉ。」
「ま、ミサトなら、ビール飲みながら、お産しそうね。8ヵ月後かぁ。」
「えっ?なんで今二ヶ月だって知ってんのよ。」
シンジとアスカは顔を見合わせてい笑った。
「うふふっ・・ミサト・・・夜は、窓くらい閉めなさいね。」
「「ひょえ~(あああっ)」」
翌朝、ミサトとマコトは、よく話したこともない職員から、何度もおめでとう、とかよくやったなどと、何度も言われた。
司令室に入ったとたん。
「よう!ヒーローのお出ましだ。おめでとう!マコトよくやった。パチパチ・・・。」
「え、な・・・なんだ・・・いったい・・・」
「葛城少佐・・・。」
「ふ・・・不潔ですぅっ!」
「は、はい?」
「でも・・・・おめでとうございます。」
「な、なんなのよ・・・。いったい。」
『(キョロロン) 葛城少佐および、日向中尉は、至急、司令執務室まで出頭してください・・・くり
かえします・・』
「葛城少佐及び日向中尉入ります。」
プシッ。
「おめでとう、二人とも。さ、そこへまずは・・。」
「二人ともコーヒーかね、それともお茶がいいかね。」
「あの・・・司令・・・ご用件は・・・。」
「で、和式かね、洋式かね。」
「は、はい?」
「はっ、前のアパートは、和式でしたが、今のマンションは洋式です。はいっ。」
「だれが、便所のスタイルを言えといったかね、日向君。そんな事で、大丈夫なのかね。」
「あ・・・あの、もしかして・・・。」
「そうだよ、葛城君、君達の結婚式の事だが。」
「「な・・・なんでっ!知ってるんですかっ!」」
「知ってるもなにも、わざわざメールの最重要項目で送ってこなくとも、毎朝職員用ページは目を通
しているよ。」
「ま・・・・・・まさかっ!!!!司令っ!今職員用ページと・・・・・。」
「なんだ、知らなかったのかね。ほら・・・・。」
そう言うと、冬月は、壁のディスプレイのスイッチを入れ、端末のキーを押した。
# 緊急速報!!
#
# 葛城少佐&日向中尉
#
# 電撃結婚!!
どうやら、シンジの家らしきバックと、並んで頭を掻いている自分達、その上にインポーズで真っ赤な文字が入っていた。
留めに、”電撃結婚!!”のところは、黄色の縁取りで、フラッシュしている。
ミサトの瞳孔が開いていった。
「・・・・・・ひっ・・・・・ひえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ。」
「あわわわわわわわあわわわわわあわわわわわ。」
二人とも、言葉になっていなかった。
冬月は、黙ってさらにクリックした。
小窓が出てきて、ビデオが始まる。
『ちゃらり~ん。電撃結婚の真実!!』
『はい、ミサトさん。ビールです。』
『きゃはっ、エビチュ~。!』
『ミサト、一本だけだよ。』
『しょんなぁ~。ね、あと一本。』
『ダメです。おなかの子に障ったらどうするんですか?』
『・・・・おめでとうで、いいんですよね、ミサトさん。』
『へへっ、ま、マコトがかわいそうだからぁ、しかたなくよ、仕方なく。』
『ミサトおめでとう。』
そこには、昨日シンジの家での出来事が鮮明に映し出されていた。
留めに、ミサトのおなかの周りに、インポーズで”できちゃった!”の文字がしつこくブリンクしながら出ている。
ふと、ミサトは、アスカの言葉を思い出した。
『『 ミサトっっ!おぼえてらっしゃいっ!』』
そう、以前、アスカが意識を回復したとき、ミニのボディコンを着て帰らざらなくなった時の事だ。
「・・・・・・・・・・・・やって・・・くれたわね・・・・アスカぁぁぁぁぁ!!!」
結局、洋式に決めミサトの父親役を頼み、日取りは月末と決まった。