※この作品はR-18です。

虹の彼方に~NEO~   作:黒須一騎

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虹の彼方に~NEO~31 「試練」

ケンスケとユウカは冬月邸の門扉の前にいた。

 

「・・・・・ここか・・・・よしっ!」

「大丈夫?なんか、顔色悪いみたいだけど。」

「あ、うん。緊張しているせいだよ・・・きっと。」

 

「ママぁ、ただいま。」

「あら、お帰りユウカ。早かったのね。」

「うん。・・・実は、・・・・・ママに会ってもらいたい人がいるの。」

「・・・・・あらら、上がっていただきなさい。」

 

「は~い。ケンスケ・・・。」

 

ケンスケは、ユウカに連れられ、客間に通された。

庭には、植木鉢のプランターが整然と並べられ、決して広くは無いが、いかにも日本の家という感じだ。

ふかふかの厚い座布団がなんとなく、居心地を悪くしていた。

 

「ね、ユウカ。これ、お茶菓子よ。お友達・・・・・じゃ・・・・ないわよね・・・。」

「うん。クラスメートだけど・・・。後で話す。」

ジュンコは、エプロンを取ると、髪の毛をチェックし、客間に向かった。

 

「こんにちわ。ユウカの母です。ユウカのクラスメートなんですってね、うちの子、迷惑かけてません?」

「は、はい・・・い、いえっ!迷惑なんてとんでもない。あ、お、僕・・・相田ケンスケっていいます。」

「うふふっ、そんなに緊張しなくたって、大丈夫ですよ、別にユウカをお嫁さんにしに来たわけじゃないんですから。」

ケンスケは、ねっとりとした、汗を手に感じていた。

 

「ま、お茶でもいかがですか?」

「は、はいっ!」

 

「ユウカの・・・ボーイフレンドで・・・・いいのかしらね?」

「あ、はいっ・・・・ユ、ユ、ユウカさんと、お、お付き合いさせてくださいっ!」

ケンスケは、手を畳について、お辞儀しようとしたが、場所が悪かったのか、緊張して目測を誤ったのか、凄い音とともに、塗り物のテーブルに頭をぶつけた。

 

ゴガッ!

 

「ふぐっ!」

「あらら、大丈夫?」

「痛っ!・・・い、いえ、大丈夫です。はい・・。」

 

「くっ・・・ぷぷぷふっ!」

ついに、ユウカが笑い出してしまった。

 

「うふふふっ」

ジュンコもつられて笑い出す。

 

「・・・あは、・・・あは、あはっ・・・・はぁ。」

「ごめんなさいね、笑ったりして・・・・だって、昔を思い出しちゃって。」

 

「昔?ママの?」

「ええ、お父さんがね、ママとお付き合い始めたときとおんなじ言葉で、おんなじところに頭をぶつ

 けたのよ。うふふっ」

「あははっ、そうだったんだ。」

 

「・・・は、はあ。」

 

「相田ケンスケ君ね、ユウカが好き?」

「は、はいっ!」

「そう。ユウカが選んだボーイフレンドなら・・・・でも、もうユウカもそんなお年頃になったのね、初めてなのよ、ユウカが男の子連れてきたの。」

「は、はあ・・・。」

 

「相田さんて・・・・確か・・・ネルフに?」

「はい・・・そうでした。」

「えっ、今は?」

「亡くなりました、前のサードインパクトで・・。」

「・・・・そうだったの・・・ごめんなさい・・・知らずとはいえ・・・。」

 

「いえ、別に構いません。」

「では、今はお母さんと?」

「・・・母は、僕が生まれてすぐに・・・・。」

「・・・・・・・・・そう。辛かったでしょうに。」

「いえ・・・もう慣れました。」

 

「では、ご親戚と?」

「はい、ネルフに遠い親戚がおりまして、今は、そこに・・・。あ、でも、住んでるところはアパートで一人住まいです。」

「あら、大変ね、一人で?」

「はあ。親戚に無理言って、一人暮らしを・・・。」

「そう、しっかりしてるのね。ユウカはまだ甘えっ子で・・・。」

 

「ママ・・・・私も相田君の事・・・・好きになったみたいなの・・・。」

 

「そう・・・良かったわね。相田君、ユウカの事・・・・我侭な娘がも知れないけど、宜しくね。」

「は、はいっ!」

「わ~いっ!ママっ!ありがとっ!」

 

「ユウカ・・・一つ言っておきますね。どんなに好きでも、人に迷惑を掛ける事とはダメ。

 それと、まさかとは思うけど、赤ちゃんはまだ早すぎますからね。」

ケンスケは、赤ちゃんの言葉にびくっとした。

 

「ね、相田君、あなた達はまだ若くて、いろんな可能性を持っているの。

 人と人との出会いもそうよ。まだまだ、いろんな事を知らなければならないし、大人まで、焦る事は無いと思うの。」

「はっ・・・・はいっ!」

 

「私は、あなたとユウカが幸せの道を歩んで行けたら、親としてこんなに、幸せな事はないのよ。

 だから、ユウカもそうですけど、自分も大切にしてくださいね。」

「はい。」

「ママ、ありがとう・・・・大好きっ!」

ユウカが、ジュンコに抱きついた。

 

かすかに、石鹸の香りがするが、家で使っている石鹸とは違うものに気がついた。

(後で、ユウカに問い詰めてみましょ・・・・。)

 

「そうだ、もし良かったら、夕飯食べて行ってね。ちょっとおでん作り過ぎちゃったみたいなのよ。」

「い、いえ・・・もう、そろそろ・・・。」

「ね、ケンスケ、別に約束ないんでしょ?食べてってよ。」

「う、うん。でも・・・。」

 

「ユウカ・・・相田君に早速我侭言っちゃって。でも、一人暮らしでしょ、まだ、若いんだから遠慮なんてしない方がいいのよ。」

「はい・・・では・・。」

(ふ・・・冬月さんが帰ってくる前に帰ろう・・・。帰れるるかな・・・・。帰りたい・・・・・・。)

 

ケンスケは、冬月が苦手だった。

 

「相田君、ゆっくりして行ってね。じゃ私は夕飯の仕度があるから。そうね、できるまで、居間でお茶でもいかがかしら。 ここでは落ち着かないでしょ。ユウカ、お手伝いしてね。」

「は~い。行こ、ケンスケ。」

ジュンコは、そう言うと台所へ戻っていった。

 

お茶を下げに来た、ユウカにジュンコは話した。

 

「ねえ、ユウカちゃん。今日は彼の家のお掃除でもしに行ったの?」

「うん。何で知ってるの?」

「洗剤やら、漂白剤やら、あれだけ抱えてたら、誰だって気が付くわよ。」

「うん。そうよね。」

 

「いつからなの?ママまったく気が付かなかったわ。」

「最近かな・・・・へへっ。」

「そう・・・・・・・・。  ね、ユウカちゃん・・・・・・ママはどんな付き合い方しろとか言わないけど、胸を張って言えるお付き合いだけはお願いね。」

「う、うん。」

 

「もしかして・・・・・しちゃったの・・・・・ね。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

「はぁ・・・・・ね、まさか、ユウカ・・・まだ後遺症が・・・・。」

「違うわ・・・・。」

 

「ね、ユウカとママの間でしょ、隠し事は止めましょ。ママは心配しているのよ。

 場合によっては、彼もあなたも苦しむことになって・・・・そうなって欲しくないのよ。

 ユウカの苦しむ姿はもう・・・見たくないの・・。」

 

「分かってる・・・・・。」

「ね、正直に言って、決して怒ったりしないから。もう・・・そうなの?」

 

「・・・・・・・・・・うん。」

「はぁ・・・・・あなたって、昔から直情的だから・・・。」

「ちゃんと、避妊したの?」

 

「一応・・・・・。」

「きちんとするのよ・・・・これだけは・・・ママのお願い・・・。」

「はい・・・・。でも、ママ、なんでわかっちゃったの?」

 

「私は母親よ、さ、彼のところへ行ってあげなさい。」

「うん・・。」

 

 

「ケンスケ。・・・・・・・ママにばれちゃった・・・。えへへっ。」

「・・・・・マジぃ?」

「うん。ごめんね。ごめんね・・・・。怒った?」

「いや、遅かれ早かれ・・・でも、お母さん・・・怒ってた?」

「ううん。ただ・・・・きちんとしなさいって・・・・その、・・・・あれ。」

「あれ?」

 

「・・・・・避妊・・・・。」

 

「・・・・・・・・・・・・・・ははっ・・・そ、そうだよね・・・当然だよね・・・・・・・。」

「私の事・・・ちゃんと守ってくれる?」

「ああ、もう決めたんだ。ちゃんと守る・・・・いや、守らせてくれ。」

「・・・・ありがとう・・・・。」

 

 

「ユウカ。これ、そっちに運ぶの手伝って。」

「は~いっ!」

おでんは、ちゃんとダシから取ったもので、コンビニのおでんとは違ってた。

 

「たくさん食べてね。その歳で遠慮しちゃダメよ。」

「は、はい。頂きます。」

 

「ね、ママ。明日から、ケンスケのお弁当・・・自分のと一緒に造っていい?」

「ええ、いいわよ。時々なら手伝ってあげるわ。」

「ケンスケったらね、いつもお昼取ってないみたいなの。」

「あらあら、相田君、ちゃんと食べなきゃダメよ。あなたはまだまだ成長するんだから、ユウカの事守ってあげられないわよ。」

「はいっ!明日から、ちゃんとします。」

 

「そうね、朝は仕方ないとしても・・・・そうだ、お住まいは近いの?」

「はい。ここから歩いて15分程度ですが。」

「だったら、夕飯はここで食べて行きなさい。」

 

「えっ・・・・でも・・。」

「いい?あなたの体には、レトルトや外食だけでは足りないものが一杯なのよ。一人じゃついつい、いい加減になりがちなの。特に男の人はそうよ。ユウカを守っていくんでしょ?だったら、いう事を聞いてね。」

「はい・・・すみません。」

「遠慮しちゃダメよ。ユウカの大切な人みたいだからね。うふふっ。」

「やだ、ママったらからかわないでよ。」

「あら、本気よ。もしかしたら、息子になるかも知れない人に不健康な生活で体でも壊したら、とんでもないもの。」

「はい。では遠慮なくお世話になります。」

「ええ、それで良いのよ。じゃ、明日っからね。」

 

 

その後、学校の事や、ケンスケの趣味の写真の事を話しながら、食事は終わった。

 

「あの、ご馳走様でした。暫くぶりで、家庭の味・・・おいしかったです。」

「良かったわ、気に入ってもらえて。」

「ね、ケンスケ。ついでにお風呂も入っていけば?」

「いや、そんなに甘えるわけには・・・そろそろ、おいとまします。」

(やっべーよ、そろそろ冬月さん帰ってきそうだよ。)

 

「ユウカ、相田くんにも都合があるかも・・・。」

「いや・・・実は、少し仕事が残ってて・・・・。」

(・・・仕事は既にやっつけてた・・・・。)

 

「あら、バイトでもしてるの?」

「はい。新聞社やインターネット関係の画像処理を少し・・・。」

 

「あの・・・間違ってたらごめんなさいね。生活の方・・・大変なの?」

「いえ、生活費は、親の残してくれた蓄えで・・・・、ただ、カメラをやっているものですから、その機材とかは、自分で働いてと思っています。それに、将来はその道に進みたいと考えてますんで。」

「うん。いい事よ。カメラって、写真家か何に?」

「はい、以前はそうでしたが、今は報道写真家かな・・・・ロバート・キャパみたいになりたいんです。

 父も母も戦いで亡くしたようなものですから、その無意味さ、残された人の悲しさをいろんな人に伝えれればと、思っています。」

「ね、ケンスケ。ロバート・キャパって?」

 

「20世紀の高名な報道写真家だよ。5つの戦争で、戦争で苦しむ人々や、悲惨な戦争の犠牲者の写真を撮り続けたんだ。

  去年その人の写真をみたときは、足の震えが止まらなかった。まるで、悲鳴や泣き声が聞こえるような写真だった・・・・。

 でもね、キャパは、それだけじゃなく、そんな中にある小さな幸せや、楽しいひと時も写し取れる人だったんだ。こんど写真集見せてあげるよ。」

「ふうん。ただの報道写真じゃないんだ。」

「うん・・・まるでその一瞬を切り取ったように、そう・・・音や情景・・・そんなものも写真の中に凝縮するよな・・・・とても言葉では、言い表せないほどの凄いものだよ。」

 

「ふうん。すごいんだ・・・ね、ケンスケもそんな風になりたいの?」

「うん、僕もできればね。時代の瞬間をあんなふうに残していけたらと思ってる。」

「いつ頃活躍した人なの?」

「1930年ごろからかな・・・・最後は、ベトナムはベトナムの戦争で取材中に地雷で亡くなったけ ど、58年ごろだったかな、たしか。」

 

「・・・・・・・やだ・・・報道写真家はいいけど、ケンスケが死んぬなんて、絶対にヤダからね。」

「はは、まだなれるとは決まってないよ。まだまだ、勉強しなきゃいけない事は山ほどあるから。

 まだ、僕にはキャパの足元どころか、姿が見えるところまで行ってないよ。」

 

「本当よ・・・・危ないことだけはしないで・・・・。」

「あらあら、ユウカはよっぽど相田君にお熱ね。」

「マ、ママ・・・・ヤダっ・・・私ったら・・。きゃっ、恥ずかしい。」

 

 

がらがらがら。

 

「ただいま。」

 

「あら、おじいちゃんだわ。」

(やっべー・・・・冬月さん・・帰ってきちゃったよ・・・)

 

 

「お、いらっしゃい。」

「お、・・・お邪魔してます。」

 

ジュンコが冬月に小声で話し掛けている。

ふむふむと、頷く冬月がダイニングに座った。

 

 

「相田君だったね。」

「はっ、はいっ!あの・・・・いつぞやは・・・すいませんでした。」

「ん、もう危ないことをしなければ、わしは何も言わんよ。」

 

「はいっ。」

ケンスケはダイニングの椅子に姿勢を正して、硬直していた。

 

 

「食事はもう済んだのかね。」

「ええ、さっき終わったばかりですよ。おじいちゃんもご飯でよろしいんですよね?」

「うむ、そうだな。そうだ、君もお茶ぐらい付き合いたまえ。」

「は、はいっ!」

「はははっ、ここはネルフじゃないんだから、そう硬くならんでよろしい。」

 

 

「はい、おぢいちゃん。ビール。」

「うむ、ありがとう。」

 

「ん~。うまい。」

「ね、お父様。ネルフの方・・・もう少し楽には・・・。日曜日まで会議なんて・・。」

 

「うむ・・・あと少しすれば、なんとかな・・・。ま、あと1ヶ月ほどの辛抱、辛抱。」

「そうですか?もう、お年ですから、お体壊しますよ。」

 

「うむ、大学の方はもう任せておいても大丈夫だか、ネルフの方がな。

 再来月には、日本政府も落ち着くだろうて。そうなれば、ずいぶんと楽になるならな。」

 

「あの・・・シンジ・・・碇は、もう少佐なんですね。先日遊びに行ったとき、知りましたけど。」

「うむ、彼は凄いよ。正に新人類なのかもな。彼は実力であの地位になった。

 エヴァのパイロットとしてだけで無く、士官としても国連でトップクラスだよ。

 あれは、父親とは、別の意味で人の頂点に立つやも知れぬ力を持っておる。」

 

「凄いんだな・・・シンジって。」

「うむ、15歳にして、ネルフといえど今は国連軍だ、、その保安課を統括しておる。

 最初は人間的にできるかと思ったが、たった数週間で並み居る猛者をも完全に従えおった。」

 

「じゃ、碇も自衛隊所属なんですか?」

「いや、以前はその形だったんだが、現在は出向と最初から国連軍所属の二通りがかる。碇少佐や大尉は国連軍所属でね。エヴァ運用のため設立されたんだ。正式には国連職員となる。日向君の所は少佐がもともと自衛隊所属でね、いまでも籍は自衛隊にあるが中尉の方は国連軍だ。きみは、そちらの方は詳しいと思ったんだか?」

 

「いえ、暫くそっち系は遠ざかっていたものでして。」

「あ、そろそろ僕、おいとまします。ほんとうにご馳走様でした。」

 

「うむ、もう暗いから気をつけてかえりたまえ。」

「はい。失礼します。」

 

 

ケンスケは、玄関でジュンコに礼を言って、冬月邸を後にした。

 

「ね、ママ。少しだけ外でケンスケと話していい?」

「いいわ、ただ遠くに行かないで、戻ってくるのよ。」

「はい。」

 

 

「ケンスケっ!まってっ!」

「どうしたんだい。ユウカ。」

「ううん。ただ少しだけ話したかっただけ・・・・・ね、ありがと。ケンスケ。」

「いや、別に。お礼を言うのはこっちのほうだよ。」

「ね、キス・・・して。お休みの・・。」

 

ちゅっ。

 

「さ、心配するといけないから、お帰り。」

「うんっ!大好きっ!ケンスケ。また明日学校でね。」

「ああ。また明日な。」

 

 

「ただいま。」

「ユウカちゃん、ちょっと。」

「なに?」

 

「おじいちゃんには、相田君との・・・その・・・まだ内緒よ。」

「も、もちろんよ。」

「さ、お風呂、入ってきなさい。」

「はあい。」

 

 

ちゃぷっ・・・・・。コトーン。

 

(はあ・・・・大丈夫だったかな・・・・出来てたら・・・・・・・・・怒られるな・・・・やっばり・

 ・・・・。)

(でも・・・・ケンスケは守ってくれるって言ってくれた・・・・・赤ちゃん・・・・出来ても・・・・

 いいかな。)

ユウカは風呂に漬かったまま、自分の下腹部をそっと撫でた。

 

「・・・・ユウカ?入るわよ。」

「えっ!ママ・・・・ど、どうしたのよ。」

 

カチャ。

 

「たまにはいいじゃない。親子なんだし。」

「う、うん別にいいけど。」

 

ザバァ。

 

「あ、あたし体洗うね。」

ユウカは、何故か気恥ずかしくて、黙々と体を洗った。

 

「ユウカ・・・・。彼・・・しっかりしてるじゃない。」

「う・・・うん。」

「ま、碇さんに比べられないけど、将来の目標を今からきちんと持ってるなんて、凄いことよ。」

「そうだよねっ!私今日ちょっと感激しちゃった。」

 

「彼のお嫁さんになりたい?」

ユウカが真っ赤になって、コクリと頷いた。

 

「ま、ゆっくりおやりなさい。焦らずに。あなたはまだ若いのよ、というより子供なのよ。」

 

「ね、ママって他のお母さんより若く見えるね。へへっ。」

「あら、嬉しいけど、お小遣いの追加は出ないわよ。」

「あら、ホントよ。とても40台には見えないもの。」

「うふふっ、40台だけ余計よ。」

 

「ね、パパって南極のセカンドインパクトで死んだのよね。」

「ええ、パパは優秀な科学者だったのよ。碇さんのお父様や、葛城さんのお父様もそうだったの。

 碇さんのお父様はあの時、たまたま日本に一時的に帰ってきてたから助かったけど。でも南極にいた

 パパは、助からなかったの。」

「パパって、どんな人だったの?」

「そうね・・・・とても優しいけど、情熱的な人だったわ。パパったら、毎日南極から電話かけてくるのよ。ちょうどユウカがまだおなかの中にいたときね。パパとても楽しみにしてたの。あなたが生まれることを。」

 

「ね、ママ・・・。」

「私を生んでくれて・・・ありがとう。」

「なに言ってるのよ、この子ったら。あたりまえよ。あなたはパパが残してくれた唯一の分身なんですもの。」

「うん。・・・・・・・・・・・・ふう・・・私上がるね。」

「あした学校なんだから、早く寝なさいよ。」

「はあい。」

 

 

 

翌朝、早く目を覚ましたユウカは、自分の弁当のほかに、ケンスケの弁当も作った。

彼のためになにか出来る事は、彼女の心をうきうきとさせた。

 

(よろこんで、くれるといいな。♪)

 

「ユウカ、今日はずいぶんと早いのね。」

「うん。目がさめちゃって。今日から毎日このぐらいになるわ。」

「でも、お弁当でそんなに時間かからないでしょ。」

「へへっ、実は、一緒に学校行きたいんだ。」

「あらあら。大変ね。そうそう、じゃ、おにぎり作ってあげるから、彼と一緒に食べなさい。」

 

「うん。ママありがと。」

 

 

 

 

ピンポン。

コンコン。

 

「ケンスケ、お・は・よっ!」

 

ガチャ。

 

「・・・・・・・・・ユウカ・・・・どうしたの?」

「おはよっ!ケンスケ、学校いこ?」

「あ、ああ。まあ、とりあえず上がって。」

 

「バスだよね、何分の?」

「45分・・。あと30分もあるよ。」

「はい。朝ごはん。おにぎりだけどね。」

「あ、ありがと。これもユウカが?」

「ううん、それはママが作ってくれたの。」

「へえ、朝ご飯なんて、何年ぶりだろ。」

 

「そんなに前から?」

「うん、オヤジは、そのままネルフへ行って、食堂で取ってたみたいだしね。折角だからお茶でも入れるよ。」

「あ、私やるから、顔でも洗ってきて。」

 

「「頂きま~す。」」

「ん、おいしいや。」

「へへっ、だね。一人じゃご飯おいしくないもの。」

「うん。そうだね。」

 

「ね、」

「ん?」

「なんかこうして、朝ご飯食べてると、結婚したみたいだね。」

 

「ぐっ・・・んぐっ・・・ぐほっ、けほけほ。」

「大丈夫?はいお茶。」

「んぐっ、んぐっ・・・・はぁ・・。ありがと。」

 

 

「あ、そろそろね、時間。」

「うん、行こうか、バス停まで、歩いて20秒。近いだろ・・。」

「そうね、これならリニアより楽よね。」

「ユウカはリニアだろ?あそこからだと駅まで何分ぐらい歩くの?」

「えとね、20分ぐらい。」

 

「じゃ、ここに来るのとあんまり変わらないね、どっちが好き?」

「バスって混む?」

「いや、がらがら。」

「じゃバスにする。」

 

 

二人は、学校に着くと、普通に過ごしていた。

 

お昼を学校のチャイムが告げた。

 

「ケンスケ、お昼いつものとこ?」

「ああ、先行ってよか?」

「なんで?一緒でいいじゃない。嫌?」

「別に。俺は構わないけど。」

 

「はい。おべんと。」

「ああ、ありがと。しかし、なんだな・・・朝飯食うと、昼にはちゃんと減るもんなんだな。初めて知ったよ。」

「これからは、ちゃんと食べてね。あたしと赤ちゃんの為に。」

「う・・・・・ああ。そうするよ。」

 

 

 

「ねえねえ、ユウカ。あのネクラとつき合ってんの?」

「うん、そだよ。」

「ええ~、ユウカなら可愛いから選り取りみどりなのにぃ。ユウカってゲテモノ好き?」

(相田君も凄い言われかたね。一昔前の低次元なイジメを思い出させるわ。)

 

「それに、金髪だしなんか怖いよ。ピアスだってしてるしさ。」

「あら、今時、普通じゃない。それにちゃんと話すといい人よ。」

「そーお?ま、ユウカがいいんなら、別にあたしには関係ないけどね。」

 

 

 

 

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