シンジとアスカは、いつもの様に、夕食を終え、お茶を飲んでいた。
「ねえ、アスカ、ミサトさん今何ヶ月だっけ。」
「ん、たしか、今4ヶ月ね、つわり結構辛いらしいわ。」
「そうか、後半年か・・・そろそろお祝い・・・考えなくちゃね。」
「ええ。どんなものがいいのかしら。」
「う~ん。」
「そういえば、マヤの結婚式も来月ね。」
「うん・・・なんかあわただしいね。」
「早いものね、シンジももうすぐあたし達も一年ね・・・。」
「そうだね、この一年・・・・いろんな事があったな・・。」
「ねえ、シンジ。」
「ん?」
「来週のあなたの誕生日・・・・プレゼント楽しみにしていてね。」
「結婚して・・初めての誕生日か・・・・・。」
「いい?誕生日の料理は全部あたしが作るからね。シンジの大好きな物ばっかり。」
「そりゃ、すごいや。その日は、楽しみだな。」
「ね、そういえば大学、また、飛び級の試験受けたんでしょ?どうだったの?」
「結果は、来週の教授会の後らしいよ。」
「受かってるといいね。」
「うん。でもね、実習は飛び級というわけに行かなくてさ。4年に進級するだけだよ。」
「うーん、進級しても後2年残っているわけね。」
「実習は、飛び級というのは無いからね。今年の残りも全部実習だもの。」
「解剖実習なんかもあるんでしょ?シンジ大丈夫なの?」
「うん。多分ね。それより、そろそろ論文のテーマ決めなくちゃな。」
「卒業の?」
「それもだけど、博士号の。」
「わおっ!すごいじゃない。あたしも、ぼやぼやしてると、追い越されちゃうな。」
翌日、二人は、シンジの実習が終ってからネルフへと向かっていた。
「あら、二人ともちょうどよかったわ。第三会議室で会議よ。」
「急な話ですね。」
「司令から話があるらしいわ。」
「さて、今日集まってもらったのは、今後のネルフの体制についてだ。
現在、ゼーレ残党の危機がほとんどなくなった今、国連本部から新しい要請がきている。
今後、万一の他国エヴァや機動大型攻撃装置の脅威に備えるのは、今までどおりだが、今後は、
国際紛争や内乱の鎮圧、抑止にネルフの力を使いたい意向とのことだ。」
「それは、保守エリアが地球全体に広がる・・・という事ですね。」
「そうだ、碇少佐。エヴァは金食い虫でな、ただ遊んでいるわけには出来ないとの声があった。」
「しかし、実際に、エヴァに対抗しうる攻撃は地球上にエヴァを除いてないのではありませんか?
攻撃力が違いすぎますし、現状の内戦や国際紛争では、かえって使いにくいと考えますが。」
「ここ、一番の抑止力として、使うとのことだ。」
「我々が、エヴァ以外での軍事行動を行う可能性はありますか?」
「いや、詳細は決まっておらんが、それは、別にあるからな。君達は、スペシャリストとしてのみ動く
事となる。」
「という事で、多少、組み替えが必要となった。
ま、日向ミサト少佐からは、産休が出るだろうし、そうなれば、作戦課長の実務が居なくなる。
そこで、碇大尉、日向ミサト少佐の副官となって、暫く動いてもらう。どうかね。」
「別に依存はありませんわ。単に動かしたり、飛んだりする事は、シンジ一人で出来るでしょうしね。」
「うむ。で、パイロットだが、もう一人補充する事とした。」
「「パイロット?」」
「あの・・・司令、マルドック機関も無い今、どうやって・・・・・」
「ユウカじゃよ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「どうしたね、碇少佐。あまり乗り気でないようだが。」
「あまり気が進みませんね。実際、アスカの言う通り、動かしたり飛んだりするのは、一人で可能です。
万一、戦闘となっても、地上戦であれば一人で可能ですし、最悪の場合は、二人で乗ります。」
「しかし、君達は、ずっと子供も持てないことになるぞ。」
「・・・・・・嫌よ・・・あたし、そんなの。」
「碇少佐、確かに君達はまだ若い。しかし、これは、いつまでと言うものじゃないんだよ。
パイロットの予備は必要だ。それに、ユウカがパイロットとなれば、保護が正式にできる。チルドレンはエヴァより貴重なのだよ。」
「わかりました。」
「作戦行動時の指揮はどうするのですか?あたしがシンジに?」
「いや、ミサト君が居ない間は、碇少佐がこの任に就く。指揮所は、オペレーターの統括と、指揮。
作戦の立案は、碇少佐が行う。」
「もしかして、兼務ですか?保安課と。」
「すまん。人材不足でな。暫くは頼むことになる。」
「司令。」
「なんだね、ミサト少佐。」
「すみません。私が・・・・・・・。」
「ミサト君。人の幸せを無視しての人類の平和なぞ無い。それは君達も同じだ。だから、交代の効く組織を作る。判るね。」
「はい。」
「次の世代を生み、育て、未来に繋ぐことは、我々人類の重要な課題でもあるのだ。
そう言う意味では、君達も、それが出来るように体制を作る事が重要なのだよ。胸を張って、生み、育てたまえ。」
「ありがとうございます、司令。」
「さて、話を元に戻そう。相田ユウカは本日付、シックススチルドレンとして、ネルフに配属となる。
階級は准尉。所属は作戦課、階級は准尉となるが、命令権無し、命令を受けるのは直属の上司のみとなる。
現在の命令系統には組み込まれん。ま、アスカ大尉、女同士面倒を見てやってくれ。」
「はい。」
「カンファレンスと指導の計画は、碇少佐に頼む。日向ミサト少佐、色々と相談に乗ってやってくれ。」
「「はい。」」
「なにか質問はあるかね。」
「司令、質問ではないのですが、検討して頂きたいことがあります。」
「なんだね、碇少佐。」
「まず、赤木博士の完全復帰です。保安部としては、嫌疑が晴れましたので。」
「うむ、それはすぐにでもしよう。」
「あと、赤木博士の後任が必要かと思います。」
「・・・・・赤木博士か・・・・・。」
「ねえ、シンジ。リツコそんなに悪いの?」
「・・・・僕の知ってる情報が正しければ・・・・・・あと・・・3ヶ月。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「司令、これは本人の了解も必要なんですが、エヴァによる肉体再構成を行えば・・・。」
「うむ、では、碇少佐、その件は担当してもらえるかな。」
「司令・・・・その件は、私が。」
「うむ、ではミサト君よろしく頼む、亡くすには惜しい人材だ。」
「碇少佐・・・その・・・またあれをやるのかね。」
「そうですね、400%近くのシンクロ率は、ある意味極限状態が必要です。最も安全かつ、簡単に出来るのは、今のところ。」
「本人次第だが決まったら、知らせてくれ。計画・立案は、本人と相談して、決定する。」
「さて、実は、もう一つ事項があってな。ネルフは、今後、公開された組織として、動いていく。
実際には、問題の無い部分の情報公開、見学の許可、その他もろもろ。
もっとも、頭の痛いところは、下部組織を作り、収入の道を得よとの事だ。」
「独立採算と言うことですか?」
「いや、そこまでは、無理だから、各国からの予算は、必要だ、しかし、ゼーレの無き今、これに変わる財源が必要なのだよ。
そこで、オーバーデクノロジーを大学の協力を得て、民間転用し、これをネルフの維持の財源とすると言うのが骨子だ。」
「・・・・そんなに、収支状況・・・・大変なんですか?」
「なにも無かったとして、維持だけで1年後には、ネルフの予算は、ショートする。」
「たはっ、厳しいわね。1年で黒字・・・・それも巨額の黒字を出さなきゃならないなんて・・・・。」
「そのとうりだ。碇大尉。なり振り構ってられんのだよ。来月、(株)ネルフが発足する。
君達にも強力を頼む。」
「エヴァンゲリオン饅頭でも売りますか。」
「ミサト少佐、冗談ではなく、ありとあらゆる物の業界に進出する事となろう。饅頭も有り得る。」
「でも、有事の際の特別な支出については、どうなるんでしょうか?」
「その部分だが、当事国または、受益国に負担してもらうしかないだろう。あ・れ・ばの話だが。」
「きっびし~。万一戦闘が起これば、通常時のネルフの予算なんか数回の戦闘でパアの可能性も有りか・・・・・・。」
「ま、それをかっさらって来るのが、私の役目でもあろうな。」
ミサトは、リツコのマンションに居た。
「ね、リツコ。そう言うことなのよ、すぐとは言わないけど、出来るだけ早く回答を出して欲しいの。」
「・・・・・・・・・私、思うのよ。もう、私の役目は終ったわ。ちょうどいい時期よ。」
「まだ、碇司令を?」
「そうでは無いと言えば嘘になるけど、疲れたのよ。あと三ヶ月もすれば解放されると思うと、ほっとするわ。」
「生きてるのが、そんなに辛い?」
「それとも、違うわね、生きる気力・・・かしら。生きて行きたいと言う気力が沸かないのよ。」
「・・・・・・・私たちが、あなたを必要だと言っても?」
「私の知ってる事は、全てMAGIに入れてあるわ。あとは、シンジ君が居ればなんとかなるでしょう。」
「では、どうやっても、シンジ君の案は、受けないと。」
「そうね、コアの中にでも入ろうかしら。それなら、良いわ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「イヴに入っているのは、擬似人格よ。私が入ったほうがよほど反応が良くなるわ。」
「どうせ、生きてもあと3・40年・・・・これが私の寿命よ。」
「・・・・・・・・・・・・・・判ったわ。」
「ミサト。」
「なに。」
「いえ、なんでもないわ。」
「・・・・・・・・・と言うわけよ。」
「やはり、ダメでしたか・・・。」
「ごめんね、シンジくん。」
「いえ、ミサトさんでダメなら、だれが言っても、だめでしょう。」
「あたしも、ネルフ辞めちゃおうかな。これを期に。」
「ミサトさんまで、そんなこと言わないで下さいよ。ネルフ・・ばらばらになっちゃいますよ。」
「そんな事無いわよ、最近ね主婦もいいと思うのよ。子供生んで、育てて、旦那の為に料理を作って。」
(料理はヤバいよ、ミサトさん。)
それから、一月後、リツコは入退院を繰り返し、まもなくホスピスへと移っていった。
ユウカは、訓練を順調にこなして行き、シンクロテストでは、アスカと遜色ないシンクロ率をたたき出すようになった。。
意外だったのは、アスカとユウカの相性が良く、シンジとユウカの組み合わせ並にシンクロ率を出した事だ。
アスカも、イヴの羽を一対まで展開できるようになったが、大気を圧縮し噴出させるまでは至っていない。
それから、二ヵ月後、リツコは、静かに眠るように息を引き取った。
残された物は、僅かばかりの家具、衣類、そして、たった一枚の猫の写真だった。
ささやかな葬儀も終わり、やっと落ち着いた頃にはネルフの事業計画が進行していた。
「シンジっ!待った?」
「いや、そんなでも無いよ。」
「お昼は?」
「まだ。一緒に食べようと思ってさ。」
「嬉しい事言ってくれちゃって。ところで、なに書いてんの?」
「新しいゲーム機の立案書。」
「ゲーム機?」
「うん、A10神経の接続を利用した物だよ。格闘ゲームなんかどうかと思ってさ。」
「フィードバックはどうするの?」
「うん、一方通行にして、ダミーのフィードバックを返す。これなら、ダメージにはならないからね。」
「でも、みんなが使えなきゃ、売れないわよ。」
「そこなんだけど、ほら、ユウカちゃんのお母さんをサルベージした時の事を解析したんだ。
そしたら面白い事がわかってね、なんとあの人は、不適格な人つまり、一般の人と同じだったんだ。」
「ふうん。」
「今、解析してるとこなんだけど、僕の理論が正しければ、A10神経からある特別な順序で接続すれば、誰でもある程度は、接続できるようになる。」
「シンクロ率で言うと?」
「最大7.28%」
「なによ、それ、起動さえしないわよ。」
「エヴァはね。でも、増幅してあげれば、コントローラーとしては十分だよ。」
「ふうん。あ、話は変わるけど、こんど色々商品企画があるんですって。」
「どんな?」
「エヴァのゲームとか、人形とか・・・、そうそう、キャラクター商品て言うのかしら。
あたし達のフィギュアまであるらしいわよ。見たら笑っちゃうから、シンジのなんか、あのナルシスホモにそっくりなのよ。」
「うっ・・・。見たの?」
「うん。企画書をね。」
「僕のってことは、当然アスカのも有るんでしょ?」
「あたしは、まるでファーストそっくりよ。」
「実名なの?」
「もちろん違うわ、シンジは、葛城カオル あたしが榊原・ヨーコ・ローゼンヴァッハ」
「なんだそりゃ。あはははっ。」
「それとね、紹介ビデオも作るらしいわよ。」
「エヴァやあたし達も出演するんですって。」
「えっ?顔出すの?」
「シルエットらしいけどね。世界を守る、ネルフ!てな感じね。」
「はぁぁぁぁ、なんか気が重くなってくるね。」
それから暫くして、シンジが発案したゲーム機のプロトタイプが完成した。
「じゃ、二人とも準備はいいかい?」
『OKよ!シンジ。いつでも行っちゃって。』
『わたしもOKで~す。』
アスカとユウカは、シンクロテスト用のタンクでそれぞれのコックピットに乗り込んで、ヘッドアップディスプレイを被っていた。
「アスカとりあえず、戦闘は後にして、近くの建物壊して見てくれる?」
『了解・・・・・・・とりゃっ!・・・・・・・・・・・・おおっ!ちゃんと壊れてくぅ・・・・。』
『ユウカちゃん、飛び跳ねながら、アスカの方へ近づいてくれる?』
「は~い。・・・よっ・・・はっ・・・・ほっ・・・・・ほっ・・・・・。」
「二人とも、今度はする事交代してやってみて。」
モニターの中で、今度は、ユウカが建物を壊し出し、アスは飛び跳ねながら、ユウカの方へ向かった。
「二人とも、フィードバックはどう?」
『建物壊す時なんだけど、大きなグローブつけてやってるような感じね。動きもトロいし。』
『そうね、もう少しフィードバックが強いほうが、感覚的にわかりやすいかな。』
「なるほどね。・・・・・よし。軽く戦闘やってみようか。武器の使用はなし。」
「待ってましたっ!行くわよっ!ユウカ。」
「はいなっ!」
二人の戦闘が始まった。
暫くシンジは、二人の戦いをモニターでじっと見詰める。
「OK、二人とも中止して。どう?感触は。」
『まあまあね、でも、シュミレーションタンクには程遠いわ。』
『これ、なんか違和感あります。体が勝手に動いてるみたい。』
「ビギナーモードだからね。」
『シンジ、どんなモードが有るの?』
「ノービスモード、パワーモード、それとエキスパートモードだけど、調整中でね、動くのは、ビギナ
ーモードとパワーモードだけ。」
『シンジ。パワーモードに移行して。注意点と変更点は?』
「速度や反応が10倍に、フィードバックは事由に設定できる。あと、プログナイフが装備してる。」
『わかったわ。いい?ユウカ。』
『いいわよ、でもお手柔らかにね。』
アスカとユウカは、見違えるような動きを見せた。
最後は、アスカがユウカのバックを取り、喉元にナイフを突きつけ戦闘は終了した。
パシュ。
「ふう~。まあまあの出来ね。」
「結構しんどいですね。これ。」
その後も、週一のペースで開発試乗が続き、後は、偽装や市販化に向けた、設計の為、開発に回された。
「シンジ、後は、どうなるの?」
「僕らの方は大体終わりかな。後は、市販に向けての開発と、プロモーション、PRや販売の仕事だよ。
後は、試作が出来たら、テストするだけかな。」
「市販のゲーム機作るの?」
「動かすには今度できるMINIマギが必要なんだ。軽いシンクロの為の接続用機器も必要だしね。
常時高速回線で接続してMINIマギ3台ほど並列で回すんだって。」
「へえ、でも実際の接続なんかはどうするの?」
「市販版の方は大きなヘッドセット・・まあ、ヘルメットみたいなやつね、で体動センサーの付いたセンサースーツかな」
「なかなか難儀なのね。」
「いや、アスカが、フィードバックレギュレーター開発してくれなきゃ、まだ日の目は見なかったよ、
ありがとう。」
「そういえば、特許とれたのよ。あれ。」
「へえ。そりゃ、おめでとう。お祝いしなくっちゃね。」
暫くして、プロモーションとゲームに使用するビデオの撮影が始まった。
戦闘シーンや、派手な決めポーズ、ここいら変は、アスカが担当した。
「シンちゃん、今度は、あなたも出るのよ。はい、台本。」
「え~!ちょっとこれキスシーンもあるのおっ!」
「そうよ、アスカ。ぶちゅっと行っちゃって、ぶちゅっとね。」
「顔・・・・出しちゃうんですか?」
「大丈夫よ、シルエットだし、キスシーンはアップだから。てもごまかし効かないからホントにするのよ。」
「・・・ミサトさん・・・楽しんでません?」
「あら、楽しいわよ。こんなおいしい事他の人には任せられないわ。」
「ところで、フィギュアとか売り出すと聞いたんですが、そっちは?」
「あ、あれ没ね。MAGIで試算したら、赤字よ。」
「やれやれ。」
「・・・これが僕らが守った地球だ。」
真っ赤な夕日をシルエットにシンジが言った。
「私たち勝ったのね・・・・・・・・愛してる・・・・・・・ぷっ・・あっははははははっ」
『カ~~ットォ!ダメでしょう、アスカ、そこで笑っちゃ。』
「だ~てぇ・・・あっははははは・・・セリフ臭すぎよぉ。」
「アスカ、僕だって。我慢してるんだから。」
『あんたら、今日撮れなかったら、明日も、明後日も・・・ずうっ・・・・・・とやるわよ。』
「は~い。」
ビデオ撮りも何とか終え、後は、最終の仕上げを待つばかりだった。
市販機のテストも終え、大々的なPRが始まった。
「いよっ!ご両人!CM良かったぞ。」
「碇さん、かっこ良かったですよ。」
「ねえ、アスカ・・・なんだろね・・・・。」
「あっ・・・シンジ。そういえば、CM放映、今日からだったわ。」
「えっ、あのゲーム機の?」
「ええ。確かよ。」
二人は、急いで、執務室に向かった。
「あれ、なんかMailが入ってる・・・・・アスカ、これってCMのビデオクリップだよ。」
「どれどれ・・・・・・・・・・・・・・・。」
二人は暫く端末に表示されるビデオクリップに見入っていた。
『・・・・・・・・・・・・そして、戦いの火蓋は落とされた・・・人類の存続をかけて。』
「結構かっこいいじゃない。」
『・・・・・人類に、希望はあるのかっ!』
一転して、夕焼けの空と、シルエットに浮かぶ少年と少女のシーンに変わり、触れ合う唇が大写しとなった。
『・・・・・・・・・愛してる・・・・・・・・・・。』
「ひゃ~、結構恥ずかしいね。これ。」
「きゃ~っ、きゃ~っ。」
ピルルルッ、ピルルルッ、ピルルルッ、カチャ。
「はい、碇です。」
『あ、シンちゃん?司令室まで来てくれる?』
「良いですよ。」
『あ、アスカもね。』
「はい。」
「なに?」
「司令室にって、アスカも。」
「何かしら。」
プシュッ。
「あ、二人とも、CMは見た?」
「ええ、とりあえず。」
「でね、二人にお願いがあんのよ。」
「また、ビデオ?」
「違うわ。来月この郊外に(株)ネルフ直営のゲームセンターが出来るのよ。
そのこけら落としに出席して欲しいのよ。」
「ええ?」
「ちょっとミサト、それはまずいんじゃない?」
「大丈夫よ。フロアの上の方からだし、グラサンするから。」
「ところで、今時ゲーセンなんて儲かるんですか? 」
「それがね、同時進行してたタンクタイプの筐体ができたの。価格は高いけど市販のヘッドセットなんかと違って映像もフィードバックも段違い!! 利用料高くたって十分採算可能よ。」
「いつのまに・・・」
「あら、一般人に使えなきゃゲームにならないでしょ。事業部の方で開発してたのよ。
ということで、予定開けててね。」
当日、二人は、プラグスーツ姿で、新しく出来たゲームセンターに居た。
「すっごい人出ですね。」
「そうよん。なにせ、一週間前から泊り込みで待ってる人も居るんだから。
既に、2000人以上並んでるわね。」
「へえ~、そんなに。」
「今日は、初日だから、プレスしか入れないのにね。」
「でも、これで売れてくれればいいんですけとね。」
楽屋に入った、二人は、スタイリストやメイクさんに散々弄られた後、出番を待っていた。
「では、ご紹介します。元初号機専任パイロット。及び二号機専任パイロットです。」
二人は、フラッシュの嵐の中、ステージへ進み出た。
ゲームの特徴や、プロモーションが流されると会場からは、感嘆の声とが上がった。
「このゲームでは、お二人のパイロットも開発スタッフとして参加しています。
では、これから、お二人にデモプレイを行って頂きます。」
二人は筐体のコックピットに乗り込むと、エキスパートモードでゲームを開始した。
会場の画面には、二人が見ている画面が映し出され、派手な効果音と共に、バトルが繰り広げられ、
最後にユウカのコントロールする、使徒やゼーレエヴァとの戦闘が繰り広げられた。
「ありがとうございました。では、質問に入らせていただきます。」
「通信対戦には対応していますか?」
「はい。設置しネットに繋ぐだけで、世界中の人たちと対戦可能です。」
ゲーム機の質問が暫くつづいた。
「お二人のお名前とお年を。」
「名前は、残念ながら、公開できません。お二人とも15歳です。」
「え~、お二人は、恋人同士ですか?」
「はい。本人に効いて見ましょうか?」
シンジとアスカは、ステージ上で短くキスを交わし、アスカが英語で答えた。
「Now's is our answer. The rest is left to imagination.」
「え~。今のが答えだそうです。あとはご想像にとの事です。」
「サングラスを取ってもらえますか?」
「残念ながら、それはできません。」
その後、プレスに対して、ゲーム機の試乗が行われ、盛大に幕を閉じた。
プレスに対しては、いろいろと準備されたガジェット品やプレミアムグッズが配られ、
翌日から、多くの新聞や雑誌で連日のように取り上げられた。
「シンちゃん。大当りよ。初日だけで、6000人がゲームセンターを訪れたわ。」
「ほっとしましたよ。僕らの給料がかかってますからね。」
「よし、シナリオをバンバン作って売り捲るわよ。」
ゲームセンターは、全国展開が決定され、さまざまなグッズが販売された。
Tシャツやトレーナー、延いては下着まで売り出されて、結構な販売を誇っていた。
後日、(株)ネルフはあっという間に、ゲーム界のトップを奪い去り、一大ブームを巻き起こす事になる。
暫くするとゲーム機騒ぎもやっとひと段落して、碇宅では、いつものように夕食が始まっていた。
ミサトは、マタニティー用のワンピースで、ぼけっと椅子に座っていた。
「ミサトさん。悪阻、まだ酷いんですか?」
「まあね、一番キツイのはご飯の匂いね。カップめんの匂いも嫌いになったわよ。
でも、あと1ヶ月もすればよくなるって。」
「で、リクエストがそうめんだったんですね。」
「ごめんね、シンちゃん、アスカ。」
「いいのよ、それより、きちんと食べてるんでしょうね。悪阻が酷いからって、食べなきゃお腹の子供にも良くないわよ。」
「そのなのよねん。わかっちゃいるけど、ビールが無いとなんとなく食欲が無くって・・。」
「アルコールはダメだよ、ミサト。子供が離乳したらいくら飲んでもいいからさ。」
「分かってるって、ア・ナ・タ。」
「はい。ミサトさん。素麺だけじゃ無く、これも食べてくださいね。」
シンジは、揚げナスを酢醤油で味付けしたものを出した。
少しだけポン酢を混ぜてすっきりと作ってあった。
「ありがと、シンちゃん。・・・・・んんっ!おいしい!これなら食が進むわ。」
「ねえ、シンジ。」
「なんだい。」
「あたしも、赤ちゃんほしい。」
「げほっ!ぐふっ、ごほごほ・・・・・・・あ、アスカ。」
「だって、ミサトの幸せそうな顔見てると・・・・ね、いいでしょ。」
「できることなら、うんと言ってあげたいけど、今ネルフはベビーブームと言っても過言じゃないんだ。
マヤさんだって、結婚したし、いつ赤ちゃんが出来てもおかしくない状況でしょ。
これで、アスカまで出来ちゃったら、イヴの運用どうすんのさ。」
「う~~だってぇ・・・・・。」
「アスカ、あなたには、まだ時間があるけど、あたしには無いのよ。高齢出産ギリギリだしね。
それに、結構大変よぉ、育てるのって。うちの子で練習してからでも遅くないわ。」
「そうだ、アスカ。出産だって、先輩が居ればなにかと安心でしょ。
だからミサトさんの赤ちゃんが生まれてから、もう一度相談しようよ・・・・ねっ?」
「・・・・・・・・・ごちそうさま。あたし・・・疲れたから・・・先に休むわ。」
「・・・・・・・・アスカ・・・・・・。」
「シンちゃん。状況はわからないでもないけど、アスカにはきつかったんじゃない?
それにあの子一度・・・・。」
「ええ、分かってるつもりだったんですが・・・・・・実際、人員の確保が難しいんですよ。
保安課なんか、8人の女性職員の内、半数が産休で、残り半数は、ここ1.2ヶ月で寿退職ですし・・・・・。他の課も似たりよったりですよ。これじゃネルフの機能が・・。」
「そ、そんなに凄いの?」
「ええ、戦いも終って、ほっとした所為でしょうか?昼休みにネルフ内の庭園行ってみてくださいよ。
どこもかしこも熱々のペアだらけで目のやり場に困るほどですから。」
「・・・・・・・・・・・」
「かといって、結婚するなとか、子供作るなとか・・・非人道的にことも言えませんしね。」
「・・・・そうね、でも、それは新採用やパートでなんとか凌げるでしょ。」
「ええ、事務職はそれで凌げるんですが、保安課でも頭の痛いのは、女性の保安課員が産休を取るんですよ。事務員ならなんとかなりますが、保安課員となるとね・・・・教育に2年近くかかりますし。」
「そうね・・・・それは困ったわね。まさか、女性の体を男性が調べるわけにも行かないし。
・・・・・・・そうだ、ちょっと心当たりがあるから、任せてね、シンちゃん。」
「・・・助かります。出来れば、早めに。」
「はいはい。それより、これ。お代わり頂戴。」
「アスカとは後でゆっくり話してみますよ。」
夕食の片付けが終ったシンジは、自分達の寝室を開けた。
アスカは、タオルケットを被っていた。
シンジは、ベットに座って、アスカを後ろから抱きしめた。
「・・・・アスカ・・・眠っているの?」
「・・・・・・ううん・・・・。」
「さっきのこと・・・・ごめん、アスカの気持ちも考えずに。」
「・・・・・・・・・・いいの・・・・あたしの我侭だっていうのは、分かっているから・・・
でも・・・でも・・・・・」
「分かっているよ、アスカ。」
「・・・・・・・最近・・・夢をみるの・・・・あの子を抱いてる夢よ・・・・朝起きると、いつも空しさが襲ってくるの・・・・きっとあの子戻りたがっているのよ・・・・。」
「・・・アスカ。」
「あの子・・・・きっと寂しがってる・・・・。」
「アスカ・・・あと3ヶ月だけ待ってくれないか。そしたら、ネルフの体制をなんとか出来ると思うんだ。」
「ほんとっ!シンジっ!」
「うん。そしたら赤ちゃん・・・作ろう。」
「・・・・・・・うん。・・・ごめんなさい・・・我侭ばっかりで。」
「いいんだよ、でも、母親になるといろいろと大変だよ、覚悟はいいかい?」
「うん。前に一度覚悟は決めてるもん。大丈夫、シンジが側に居てくれれば、どんな事だって、乗り越えて行けるって思うの。
もちろん、あたしがいい母親になれると言う自信は無いけど、たくさんの愛情で包んであげられる自信はあるわ。」
「よかった・・・。」
「なにが?」
「わかってくれて。僕もかんばるよ。なんとか3ヶ月以内にアスカが産めるような体制作るから。」
「そうよ、シンジ。お願いね。」
「と、言うわけで司令、今後の人事や採用はそうして行きたいのですが。」
「うむ。確かに、現在、ネルフの現状ではしかた無いだろうな。人事課には私の方から話を通しておこう。」
「はい。それと、問題は、予算のことです。㈱ネルフは確かに軌道に乗りそうですが、まだまだ巨額の収益を上げるまで行ってません。
そこで相談なのですが、父が残した遺産を全て寄付してネルフの技術を民間転用の研究をする専門部署を作りたいんですが。」
「碇少佐。確かに君のお父さんが残した遺産は小さなものではない。働かなくとも一生使ってお釣りが来るぐらいだ。しかし、君はそれを寄付という形で投げ出していいのかね。」
「かまいません、もともと、あれは自分のものではありませんし、父から貰うつもりも有りませんから。
たとえ、僕の案が通らなくとも、全額どこかへ寄付するつもりです。」
「わかった、決意は固いようだね。」
「はい。どうせなら、これからの人々の利益になるように使いたいのが僕の希望です。
今日の1つのパンより明日の10個のパンが人類には必要です。」
シンジの案は、全面的に採用され、ネルフの付属機関として、新技術平和利用研究所(俗名:新平研)が設立される事となった。
もちろん、設立に必要な資金はシンジの受け継いだ遺産が全て当てられ、不足した分は、国連基金からの借入金という形で当てられることになった。
「と言うわけで、初代理事長、受けてくれるね。シンジくん。」
「困りましたね、僕は、大学やネルフそれに㈱ネルフで手一杯なんですよ。実務は厳しいと思いますが。」
「まあ、実際の運用と運営は、国連から出向の者が暫く行うし、君は、方向を決めるだけでいい。
ま、国連の第三セクター方式に近いから、実務はそんなにないだろう。」
「わかりました。ただし、無理なようなときは、助け舟宜しくお願いします。」
「うむ。わかった。それと、新平研の完成は来年になる。そのときは、君はネルフの上級士官としての出向くことになる、来月付けで、君は、中佐に任命される。あと、保安課には、君の変わりに高梨君が正式に赴任する。ただ、保安課自体の最高責任者はキミだがね。」
「そうですか、それは助かります。ミサトさんが産休の間は僕がバックアップしましょう。」
「いつもすまんな。シンジ君」
一週間ほどして、マヤが妊娠したことが知らされた。
「ミサト君の次は、伊吹・・いや、今はマヤ君か、ベビーブームは暫く続くな・・・。いっそ、ネルフに保育所でも作るか・・。」
冬月の言葉が半年後に現実の物となるとは、冬月自身も思わなかった。
「碇少佐、今日保安部に新しい女性課員が赴任するだが、高梨課長がどうしても手が離せなくってね。すまんが案内してやってくれないか。」
「わかりました。でも、まだその人物の書類さえ来ていないのですが。」
「すまん、遅れたがこれが書類だ。もう来ている頃だろう。」
冬月はシンジに書類を渡した。
「わかりました。では。」
シンジは、その足で、保安課に向かった。
「あ、少佐。ちょうど良かった。いま連絡しようとしたところです。新しい保安課員がゲートに到着したとの事です。」
「では、僕が行きましょう。どう見ても、一番暇そうなのは僕のようですから。」
「申し訳ありません。」
「気にしなくていいですよ。少し歩きたかった所ですから。ゲートに連絡しておいて下さい。新人にそこで待ってる様にと。」
「はっ!」
シンジは、向かった。
(参ったな、資料を読む暇もないや。)
「・・・・・ゲート3・・・ここか。・・・・・すみません、保安課の碇ですが、新人・・来てますか?」
「はっ!碇少佐。こちらです。」
新人は、ゲートの詰め所に居た。
カチャ。
「すみませんね、お待たせして・・・・・・・・・!! ・・・・・・マナ・・・どうしてここに・・・。」
霧島マナは、直立不動の姿勢を取ると、シンジに敬礼した。
「霧島マナ。本日付で着任いたしました。」
シンジもつられて敬礼を返す。
「ご、ご苦労・・・・・って、新人って君だったのか。驚いたよ。」
マナは、まだ直立不動で立っていた。
「ま、とにかく、食堂へでも行こう、なにか飲もうよ。」
「きゃははっ。シンジ、私、戻ってきちゃった。」
そう言って、涙を溜め、シンジに抱きついた。
「・・・・マ、マナ・・・・」
「・・・・・・よかったら、話してくれないか。どう言う経緯でここへ?」
「・・・・・・・・命令?」
「無理にとは言わないよ。」
「・・・うん、担当士官が迎えにくるから待ってろって、ゲートで言ってたから・・・だから、少なくともシンジは上司なんでしょ?」
「うん、確かにそうなるけど、直接の上司じゃないよ。それに今の質問は、僕個人の質問だから、無理に答えなくて良いよ。」
「・・・・・・・・・わたしね・・・・・・彼と別れちゃったの・・・。」
「・・・・・・・てっきりアメリカで幸せに暮らしてるかと思ったけど。」
「うん、あの後、暫くは、そうだったの。生活は、苦しいけど楽しかったわ。
でも、あの大バカ、浮気して子供までこさえたのよ。ぶん殴って出て来ちゃった。」
「君に、話をしたのは、ミサトさんかい?」
「ううん。ネルフの黒服よ。」
「そう・・・。」
「ちょうど家を飛び出して、3日目だったわ。そろそろ手持ちのお金も無くなって、
どうしようかと思ってたところへ、黒服が来て日本に戻らないかって。」
「・・・・もう・・・彼とは・・・戻れないのかい?」
「はんっ!結婚するらしいわ。相手が資産家なんだって。」
「ごめん。辛い話をさせてしまったね。」
「いいのよ。もう吹っ切れたわ。私も青かったのよね。
やっぱりあの時シンジにしとけば良かった。」
「ごめん。」
「どうして、謝るの?シンジは悪くないわ、逆にいまこうして生きてられるのは、シンジのお陰よ。」
二人は、保安課の事務室への向かった。
数人残っている課員が立ち上がって、シンジに敬礼した。
「楽にしろ。さて、新人を紹介しましょう。本日付で着任した霧島マナさんです。
高梨少尉、後はお任せします。マナ、彼が君の直属の上司になる高梨少尉。」
「はっ、よろしくお願いします。高梨少尉。・・・て、碇君とは別なの?」
「霧島っ!姿勢を崩すなっ!少佐殿に失礼だぞ。」
「えっ?し・・・・少佐?」
「私の上司。この部署の最高責任者、碇シンジ少佐だ。」
「は、はいぃぃぃぃっ!」
「ま、二人とも楽にして。という訳なんだ。あくまでも仕事中だけね。
そうそう。二人とも、僕の執務室に1500時に出頭してください。いろいろと話しておくことがありますから。」
「「はっ!」」
「まったく・・・冷や汗がでるよ、霧島。頼むから、少佐のファーストネームを呼び捨てるのは辞めてくれ。命がいくら有ってもたらん。いったい、どう言う関係なんだ。」
「もと、恋人同士・・・に成りかけた間です。」
「まったく、書類もさっき少佐から渡されたばかりだし・・・・・・・・
なに?おまえ戦自にいたのか・・・・。」
「はい。」
プシッ。
「ただ今、アスカ。」
「お帰り、シンジ。何か飲む?」
「いや、さっき食堂で飲んできたからいいよ。」
「むっ、まさか、新人と?あんたまさか。」
「よせやい。部下に手を出すわけないでしょ。それに、僕が愛してるのはアスカだけ。」
「可愛い子だったの?」
「・・・・・・霧島マナ・・・・・・。」
「うそっ・・・・まさか・・・・・どうしてよ。」
「後で、話すよ。」
「ミサトね。後でとっちめてやらなきゃ。」
「違うんだよ、アスカ。マナは、彼と別れちゃったらしいんだ。」
「で、日本に?」
「いや、たまたま、彼女が家を飛び出して、黒服が保護したらしいんだけど、ちょうどその連絡とミサトさんに新人を頼んだのが重なったらしいんだ。」
「う~~、なんで、よりによって、あの女なのよ。」
「アスカ、君は僕の奥さんだろ?」
「あたりまえよ。」
「じゃ、堂々としていれば良いじゃないか。マナは仕事で来たんだ。
マナだって、働き口があったら、ここには来なかったと思うよ。わかってやろうよ。」
「・・・・・ん、たしかにちょっとかわいそうね。」
「1500時には、高梨少尉が彼女を連れてくるよ。おいしいお茶でもいれてあげようよ。」
「そ、そうよね。あたしは、シンジの奥さん・・・奥さん・・・妻よっ!」
アスカの右手はガッツポーズを取っていた。
(やれやれ。)
コンコン。
「高梨少尉、霧島両名出頭しました。」
「どうぞ。」
プシッ。
「そこへ掛けてください。」
「はっ。」
「さて、まずは仕事の方をしてしまいましょう。高梨少尉、霧島さんの教育と面倒をお願いします。
教育と言っても、戦自で基礎教育は受けていると思いますので、確認程度でよいでしょう。
あと、今日からの宿舎はとりあえず女子寮を手配して置きました。希望があれば、官舎を引き当てます。」
「お言葉ですが、少佐殿。官舎は上級士官のみですが。」
「うん。彼女はちょっと訳ありでね。身辺保護が必要になるかもしれないんだ、官舎の方が都合がいいだろう?」
「はっ。」
「でも、それ以外は、特別扱いは特に無い。霧島さん、先輩は厳しい人ですが、しっかりした人です。
引継ぎは、1ヶ月ちょっとしかありませんが、お願いします。」
「はっ、霧島、ご期待に添えるよう、頑張ります。」
「一つだけ、約束して欲しい事があります。けっして、死なない事。いいですね。
あと、大怪我もできるだけ避けてください。高梨少尉、彼女はプライベートでも良く知っています。
困った事があったら、なんなりと話してください。あと、くれぐれも、宜しくお願いします。」
「はっ、この高梨も、必ず少佐のご期待に添うよう努力します。」
「うん、でも彼女以前戦自にいたといってもほとんど非合法的に加入させられてたから、お手柔らかにね。」
「はい。ご苦労様でした。あとはプライベートの時間です。」
そういって、アスカがコーヒーを出した。
「はっ、しかし・・・・私がいては。」
「高梨さんも相変わらず固いのね。はい。コーヒーでもいかが?」
「は、大尉みずから、恐れ入ります。」
「暫くぶりね、マナ。」
「ええ、アスカさん。二人とも幸せそうで良かったわ。」
「ええ、ありがと。ね、マナ、もし、シンジに話しにくいことがあったら、なんでも相談してね。」
「ええ、・・・でも、大丈夫よ。聞いてるんでしょ?私の事情。」
「ええ、だから。しっかし、あいつ私たちの好意を無碍にしてくれちゃって。
一度天誅食らわす必要があるわね。」
「アスカ・・・そっとしておいてあげようよ。マナがそうなら別だけど。」
「あんたも、良く黙っているわね。少しはマナを好きだったんでしょ?
その子が、失意のズンドコに落とされて帰ってきたのよ。なにも感じないの?」
ズリッ。アスカを除く三人は、少しズッこけた。
「アスカ、ズンドコじゃなくって、ドンゾコ。ま、それは良いけど、マナ次第だと思うよ。
復讐なんて、お互いに後味も悪いし。」
高梨は、脂汗が額ににじみ出るのを感じていた。
(なんて馬鹿な男なんだ・・・)
この二人を敵に回したら、世界中いや、月まで逃げようとも、隠れる事は出来ない。
「惣流さんも保安課なの?」
「あたしは、シンジの副官よ。それと、もう惣流姓ではないの。今は、碇アスカよ。」
「えええっ!・・・・い、碇君と・・・・・そんな・・・。」
「ええ、だから、シンジにちょっかいだけは止めてね。」
「・・・・・おめでとう・・・・・・。」
「ありがとう。マナ。」
「アスカさん・・・素直になっちゃったのね。別人みたいよ。」
「誉め言葉として受け取っておくわ。」
「碇くん、アスカ優しくしてくれてるの?」
「うん。僕にだけはね。もともと、アスカは優しい娘なんだ。」
「ええっ、良くシンジくん引っ叩かれてたじゃない。」
「ちょっとぉ!! あたんたケンカなら買うわよ。」
高梨は、体全体に嫌な汗をかいているのを自覚した。
「へへっ、冗談よ。わたし勝てないケンカはしないの。でも、奥さんに飽きたら、私を誘ってね。」
「霧島・・・頼む・・・それ以上・・・・お願いだ・・・・。」
高梨は、胃のあたりをつかみながら、消え入りそうな声で頼んだ。
「は~い。上司がそう言ってるんで止めま~す。」
「シンジ、浮気なんかしたら、ネルフの玄関で首つるからね。」
「はいはい。肝に銘じて。」