※この作品はR-18です。

虹の彼方に~NEO~   作:黒須一騎

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虹の彼方に~NEO~51 「クリテリウム」

それから一週間後、ナツミは必死でトレーニングしていた。

ペースも上がり、クリテリウムのトレーニングも始める。

土日は、ミナミも加わり三人でローテの練習を繰り返した。

 

「資料では、一周8.5キロ、これを6週・・・結構スプリントになりそうね。」

「ミナミさん、配分難しそう。」

「そうね、これだとトップ集団から抜け出てとのまま逃げ切りもあるわね、

 いいわ、私が指示を出すわ、はいこれ。今日からインカム使うから使い方覚えてね。」

そういって、小型のインカムが渡される。

 

「すご・・本格的だ。」

「そうよ、実業団やサイクルショップのチームも出るから事実上セミプロやプロとの戦いよ。

 勝てる確率は少ないけど、ペースは最初は多分遅いわ。

 50オーバーになるのは最後の3週程度ね。

 でもここでトレインから脱落したら戻れ無いわ。

 だから、三人でローテ組んで回すわよ。

 なんとか食らいつくの。

 最後のスプリントは最終速度が60から70キロね。

 スプリンターは居ないから・・・私が発射台でナツミちゃんを打ち出すわ。

 最後の100Mは熾烈よ。」

 

「う~みなぎってきた!!」

サユリが拳を作ってはしゃいでいる。

 

ハイペースローテーションやミナミのスパートのスリップストリームにすっぽりと入り、ゴール前で抜け出てスパートする練習を繰り返した。

苦手だったサユリのダンシングも様になって来ている。

 

 

「あと、サユリちゃん。」

「はい。」

「来週は新しいマシンが届くから、シェイクダウン宜しく。馴れておいて。」

 

「え、私もあるんですか?」

「もちろんよ、ウェアもオーダーしておいたし。

 マシンも追加して置いたわ。

 そのかわり、TTマシンキャンセルしたのよ、レギュレーションの関係で日本じゃ使い道無いし。」

 

「頂けませんそんな高価なの。」

「高校生活終わったら返してくれればいいわ。貸すだけ。

 なら問題ないでしよ。あと、スポンサーもついたし。うふふ。

 ということで、日ごろから乗って慣れておいてね。」

「スポンサー? 何処なんです? 」

 

「ほら、フェミールよ。お尻におっきなハートのデザインがあって、でその内側にロゴが入るの。

 ほら、メーカータグについてるあのシルエットね。

 その下に小さく文字が入る感じ。

 ということで、今日着ているウェアは練習用。本番用は来週届きます。」

 

「うわ~なんかプロみたいになってきた。」

「サユリちゃん、スポンサー貰った段階ですでにプロなのよ。

 ウェアの費用全額持ってくれるんだし。」

 

「あの~今更なんですが新しいマシンは何処のですか?」

「フレームセットはMワークスよ、ホイールはマビックのコスミック中空カーボンプロトXR、それにシマノの電動デュラ12速、チェーンはグラファイトカーボンのコンポジット。油分の潤滑は一切不要よ。

 タイヤはもちろんチューブラー、ホイールとタイヤは2セット。ただし、走れる距離は300Kね。」

「まんま、プロツアーのワークスマシン・・・・く、車が買える・・・」

 

「ねえ、ミナミさん下世話だけど組みあげると幾ら位? 」

「300万ぐらいかしら。でもホイールは原価で出してくれたから250ぐらいね。」

「マビックでも聞いた事の無いモデルですね。」

「ええ、プロトだもの、来年には新モデルで出で出てくるでしょうね、

 そうそう、ハブもオリジナルなのよ、ラッチじゃなくてワンウェイベアリング使った。

 無音のホイールよ。」

 

「私たちが使ってもいいのかな、そんなの。」

「いいのよ、ただし最低限1年間は3レースに出る事が条件なの。ウェアも出来るだけ着てね。」

 

翌週、マシンが届いた。

「うわーーーー派手!!」ナツミが頭を抱える。

「うん、良い色!!」ミナミはドヤ顔だ。

ショッキングピンクのフレームに大きくM-Worksと入っている。

 

サユリが持ち上げて驚いている。

「うわっ!軽っ!」

「カーボンとアラミドのコンポジットだしね。さ、ポジション合わせて。」

 

「きゃ~!! ウェアも派手でカッコいい!! ねね、ナッチ、着て見てよ早く。」

ビブショーツは、黒を基調としてショッキングピンクでアクセントが付けられ、上のサイクルジャージはショッキングピンクが基調で黒のアクセントが入っている。

ヒップに大きな目立つハートマークが有り、その中にロゴマークであるナツミとミルクのシルエットだ。

ロゴマークの真ん中に英文字でフェミールの文字が入り、サイクルグローブも同じ配色だ。

 

そして、驚いたことにビンディングシューズまでもがメタリックのショッキングピンクと来ている。

直射日光が当たれば目に痛いぐらいに目立つ。

 

三人で、町中を流し高校へと向かった。

今日は来週のレースのための最終調整と、合同の練習会だ。

 

 

「ちわ~、顧問いる?」

「あ、今来ます。ナツミちゃんのお母さんですか?」

「ええ、いつもウチのナツミがお世話になってます。」

「いえいえ、僕は部長の斎藤です。宜しく。」

「今日は、私も一緒に走らせてもらうの。宜しくね。」

「お手柔らかに。」

このとき斎藤は、佐伯をまだ舐めていた。

いくら乗ってたとしても、7年前。

脚力も落ちてるだろうし、男子と女子では圧倒的に早さが違う・・・と。

 

 

「うお、すげぇぇぇぇMワークスだ!」

「マビックのコスミック初めてみた。げっ!チェーンはグラファイトだよ。」

「おおっ! 電動デュラエースの12速だよ。」

「部長!なんすかアレ。」

「女子の決戦用マシンだって。すげーよな。」

「いいな~オレも欲しいっす」

「ちなみに、高級乗用車買えるから、あれ1台で。」

「・・がっくし。」

 

「おす、ミナミ。おお、相変わらず派手だな。」

「お久しぶり、コーチ。」

「おお。今日は車出すから、予備のホイールとか入れとけ。

 男子、オメーらも気合入れなきゃ簡単にチギられるからな。」

 

「はい!」「へ~い。」

「無理して怪我すんなよ、無理すンのはレースだけ。」

 

いつものコースへと皆が出て行く。

今日は3年も加わって、皆テンションが上がっていた。

 

「行きは、全員でローテだ。ミナミ悪いが引いてくれ。」

「いいわよ。ぺースは?」

「アベ40で、10キロ過ぎたら45、残りの10キロは引けるだけ。俺は最後からついて行く。」

「じゃ、インカム渡しとくわ、なにか有ったら知らせて。」

「わかった。」

 

ミナミを先頭に、トレインを作って行く。

サインで次々とローテーションを繰り返し、少しづつペースを上げて行く。

 

「ナツミ、少し抑えて、1年男子が遅れはじめた。」

「了解。」

 

「サユリちゃん、45ペースに上げて。」

10キロ過ぎにサユリが45まで引っぱった。

 

「サユリちゃん、どう?調子。」

『問題無いです、ホイールが軽くてまだ散歩しているような気分です。

 自転車もこんなに違うって驚くぐらいの感動です。』

「ナツミは?」

『問題ナシ。次ぎ引くの誰?』

「そうね、私が引くわ。いつもの50まで上げるからね。」

『『了解!!』』

ミナミは、前へ出てダンシングに入り50へと 加速する。

男子も数名は意地でなんとか着いて来てたが、残り5キロで失速、ズルズルと後退した。

 

「・・・はっ・・はっ・・チギられた・・・うそだろぉ?」

 

 

50キロを維持し三人でトレインを形成、維持したまま。折り返し地点の空地に到着した。

 

「どう、二人とも。もう少し上げられそう?」

「うん、あと2.3キロは行けそうです。」

 

「ナツミは?」

「私はあと4キロぐらいなら。」

「じゃ、帰りは53で引くね、きついようならインカムで。」

 

「男子・・・来ないね。」

 

「コーチ、今どこらへン?」

『あと5キロだ。もう着いたのか?』

「ええ、暇よ。」

『わりい、もうちょっと休んでてくれや。』

「10分くらいかしら。まってましょうか。」

 

暫くすると、部長の斎藤、そして3年、ずいぶん遅れて1年と顧問の車が来た。

 

「いゃ~佐伯さん早いっす。」

「斎藤、ピンクの悪魔に勝てる訳ねーべ。こっちは今から調整だしよ。」

 

「よし、全員集まったな。

 今年のクリテリは3年がスプリンター、2年と1年でアシストだ、女子は佐伯に任せた。」

「相変らずの放任ねぇ。」

「しかたねえだろ、メンバーいねえし。

 ま、これで良いとこいけば部員も増えるかもな、それと湯川。」

「はい。」

 

「お前、副部長だ。女子といっても二人だが纏めろ。

 帰りはフリーだ。無茶すンナよ。いつもどおり違反したらクビだ。男子先に行け。」

 

「男子いくぞぉ~、ローテで帰るからな。1年はローテせんでいいぞ。」

男子たちが出発していく。

 

「なんか、今年の男子は期待むりか、こりゃ。」

「それでも引っぱって育てるのがコーチの仕事でしょ。」

「まあな、顧問だよ。コーチは昔のことだ。」

「私に取ってはコーチよ。」

「そうか、あと5分ほどしたら、行って良いぞ。」

 

「二人とも、スタートしてすぐに50キープ。

 男子トップを捕らえるまでローテしながらね。

 トップ捉えたら、53まで上げるよ。」

「おけ。」

「は~い。」

三人は、ダンシングで加速しすぐにトップスピードに乗せ50をキープして行く。

 

暫くすると男子の集団が見えて来た。

『レッツダンシング!!』

 

三人がダンシングして加速し、男子をぶち抜いて行く。

 

「なんだ、あれ。学生のスピードじゃないぜ。」

「う、エロイな~あのウェア。」

「いいから、回せ。アホッ」

 

『あと1キロよ、スパート! サユリ、限界まで引きなさい!』

『了解。』

声は既にインカムを通してしか聞こえない。

風きり音が肉声を遮断している速度域だ。

 

500Mをサユリが引き、次にミナミが引く。

 

ミナミが残りの500Mを最初からダンシングに入りグングンと加速していく。

浮き上がる前輪を腕の力で抑え込み、さらに引き足と踏み足全力で加速していく。

時速65キロ。落車したら怪我では済まない速度だ。

 

最後の150Mでナツミはミナミのスリップストリームから出て、一気に加速する。

大きく左右に車体を揺すり、限界までの前傾で、引き足も踏み足も100%で回した。

ケイデンスは既に200を越えている。

 

そのまま、ゴール地点を過ぎた。

 

ゆっくりとペースを落とし、弾んだ息を整える。

 

「う・・・足つりそう・・・」

「よかったわナツミ。これならいいとこイケそうね。」

 

「はふっ・・はふっ・・・」

サユリも戻ってくる。

 

周りは他の学生達も集まって来た。

 

「凄い早いね、びっくりした。」

「あれ、自転車のスピードなの?」

 

「はい、みんなゴールしても女の子なんだからだらしないカッコしないの。」

 

「ナッチ・・・」

「・・なに・・・」

「ナッチのお母さん・・・化物?」

「あれは・・まだ余裕だね。」

 

「ナツミちゃん、あと少しゴール前のスパートいけそう?」

「う~ん、何とかなるかも。でもきついな。」

「わかった、本番ではあと50M引くわ。そこで私は売り切れ。コール手前100Mよろしくね。」

 

 

 

そして、レース当日を迎えた。

 

「うふふっ。くふふっ。ナツミちゃん。今日は狙えるかもよ。」

「なして?」

「一番ヤバいのでてきてないし~、実業系はほとんどがサブの選手だし~。」

「でも、一流どころですよ、女子の競輪選手もいるし。」

「大丈夫、競輪選手は中盤までよ、マークするのはほらあのチームよ。みんな、インカムはOK?」

「はい。」「オッケー」

 

 

『はい、今年もこのクリテリウムを迎えました。今日は海外チームでも走ってる東庄選手に実況を頂きます。

 最初は女子のレースからです。毎年少しづつですが選手が増えて来てますね。』

『そうですね、日本ではまだ女子の選手層が薄いですから、選手の熱い走りに期待したいところです。』

『ずいぶん派手なチームもありますね、あ、これ桜ノ宮高校とエリートクラスの一般参加の混成チームですね。一名は・・・まだ9歳のキッズです。』

『なんで、高校なんでしょうかね。』

『資料によれば飛び級で高校一年・・・ですね。どんな走りをしてくれるのでしょうか。』

『その選手のお母さんですね。。。ああ、思いだした。

 あの選手、7年前の国体の選手ですよ。確か・・佐伯選手ですね。復活したんだ。』

 

『いま大会事務局からの資料が届きました。

 佐伯ミナミ選手、7年前にトップを取りながらも走行妨害で失格という経歴を持ってます。

 一緒に走るのはお子さんでしょうか。佐伯ナツミ選手。』

 

『ああ~、思い出した。ピンクの悪魔ですね、あははっ。』

『そんな二つ名ですか、では差し詰めお子さんはピンクの子悪魔でしょうか。あと一人は皆川サユリ選手、高校2年です。』

『お子さんたちは未知数ですが、佐伯選手は実業団以上とみて良いでしょうね。』

『ところで、なぜ悪魔なんでしょうか。』

『たしか、レース中に暴言を受けて怒った佐伯選手がトップを走る選手のお尻に文字通り噛みついたと聞いてます。レースはもちろんコール前ですから、走行妨害と判定され失格ですね。あのまま走ってれば優勝できたはずなんですけと。』

『そんなことがあったんですか~。

 おっと、なにか本部横にスペースが作られてます・・・あ、桜ノ宮航行のチア部です。

 可愛い女子高校生のチアが大会に花を添えています。』

 

 

「ミナミさん・・・私、子悪魔だって・・・」

「うふふ・・・恐ろしさを見せてやる。後で、あのアナウンサーの尻齧っていい、許すナツミ。」

「・・かたそうだから、イヤ。」

 

『レース3分前!間もなくスタートです。』

『桜ノ宮チームほとんどワークスマシンですね、僕の物とおなじです。

 こりゃ凄いの持ち込んできましたね。』

『Mワークスですね、でもあのショッキングピンク、壮観です。目に痛いぐらいです。

 さて、春の台風の目となるか、期待されます。』

 

スタート直後、何名かの実業系がトップを取る。

三人は、ミナミの指示で、競輪選手を含めたトップ集団に入っていた。

相手のスリップを巧みに利用し足を休ませながら走る。

 

『実業系は顔見世走行ね、すぐに下がってくるわ、周りのチームに合わせて。』

三週目、トップ集団は長く伸び、脱落者が出始めた。

 

『グルペッ! 前に出る。サユリ、引いて。』

『了解』

トップ集団の中に入る。

後ろからピッタリと競輪選手の何名かがついてくる。

 

 

『頭の2台を利用する。後ろにつかせて貰お。』

上手く選手の後ろを換えながら、引いてもらう。

トップを逃げていた2台が下がってきた。

 

『後ろに気をつけて! 引くよ。アベ5キロアップ』

集団のトップに立ち集団を引っぱる。

 

ミナミは、ペースを微妙に落としたり、引いたりして揺さぶりをかけた。

残ったのは、マークしていた実業系のチームだ。

 

『来た!!』

喰らいついていた実業団の2台が追い越し行く。

『ここから、サユリ引いて!!』

サユリがダンシングで越して行ったチームの尻に食らいつく。

まるで、ゴール前で失速することは覚悟したかのような加速だ。

すかさずミナミが続きナツミもミナミのスリップに入る。

ミナミの大きな体とお尻によるスリップストリームが強烈にナツミを引き出す。

 

実業団との1車分の差を詰めていく。

車列を右に振るが、向こうの2台も喰らいついてきた。

ミナミと二人のローテでナツミを引っぱった。

 

『限界!! 』

サユリが後ろへ下がる。

 

『ナツミ、付いて!』

速度はすでに65キロを超えている。

その速度においてミナミとナツミのタイヤはわずかに10センチ程度の間隔だ。

ミナミは、残り半週の時点で、スパートをかけた。

 

大きく車体を揺すり、ナツミを引き上げて行く。

 

それに負けじと、実業系のチーム2名が食い下がった。

ライバルチームを含めた5台のトレインが加速して行く。

サユリも頑張って4番手のスリップに入っている。

 

既に時速70キロを越えていた、ゴールが見えてきた。

実業系のチームがスパートする。

ミナミもそれに続き、ナツミは僅か5センチの接触寸前の距離でミナミの尻に食らいついた。

この速度で接触すれば、間違いなく2台とも宙に弾き飛ばされる。

 

『行くよ!!』

ミナミが大きなダンシングでフルスパートを入る。

ナツミも、出来るだけ体を小さくして、ミナミの尻必死で付いていく。

 

前から、カチカチと歯の音?がする。

 

『行けっ!』

ナツミは、ミナミの影から左に出て早いダンシングでフルにスパートした。

踏み足も引き足もこれまでないほどに付からをいれ、。ケイデンスをひたすらに上げていった。

ゴールまであと、50M・・・いける!!

 

そのまま、相手のスリップに入ろうとするが器用にかわされる。

ナツミは、渾身の力を振り絞り、ペダルの回転数を上げて行く。

もう、後は無い。

 

『があぁぁぁぁぁ!!』

 

ミナミのインカムにナツミの声が大きく響いた。

 

 

 

 

 

 

『ゴール!!なんと大穴!実業団も競輪選手も抑えてのジュニアの選手がトーーーープ!!!

 ありえない事が起こってしまったぁぁぁぁぁ!!』

『いやはや、大変な事が起こりましたね。これがロードですね。』

 

『二位三位は実業団の選手、そして話題のママさんレーサー佐伯ミナミ選手が四位入りました。

 桜の宮高校の皆川選手も五位に入っています。六位は競輪の牧選手。』

 

『これ、ホントにクリテリですよね、まるでツールドやジロデイタリアのゴール見たいですよ。』

『佐伯ナツミ選手、若干9歳の選手が優勝してしまいました。』

『いや~女子のレースは荒れることが多いですが、まさかね。

 でも、あの子の走りプロ並ですよ。異常な速さと言っても良いです。』

 

「はふっ・はふっ・・はふっ・・はふっ・・」

荒い呼吸もままならず酸素を求める体と共に、係員の指示に従って本部前に案内された。

 

「はあっ・・はあっ・・はあっ・・やった・・ナツミ・・やったね。」

すぐ横にミナミがやってきて肩を抱いた。

「はふっ・うん・・やった・・・勝っちゃった・・はふっ・・はふっ・・」

 

本部から飲み物を貰い、自転車から降りようとするがナツミはぐらついた。

足を上げて自転車から降りる体力さえ残っていなかった。

すかさず、係員が支えて下りるのを手伝ってくれた。

 

「表彰式は男子レースの後になります。それまで休憩してください。」

気がつくと、異様に本部横が盛り上がっている。

チア部が盛り上げてくれていた。

 

「さ、勝者の甘露よ。二人でいってらっしゃい。」

サユリとナツミはチア部の前に来た。

ウォーというとても女子とは思えない歓声も混ざっているが、黄色い声援に応えお辞儀する。

 

「やったね!!二人ともすごいよ!」

「ありがとう。」

チア部の部長も抱きついてくる。

どさくさに紛れてキスされた。

 

男子のレースも始まった。

応援するが、さすがに実業系がトップを占めた。

それでも、ジュニアでは2位に三年の一人がなんとか入る。

 

『では、表彰式です。最初は女子ジュニアの部、優勝。桜ノ宮高校、一年佐伯ナツミ選手!』

『続いて、第二位、桜ノ宮高校二年、皆川サユリ選手!  第3位!・・・』

『次にエリート女子オープンクラスです。優勝! 桜ノ宮高校一年、若干9歳の選手が優勝です。

 佐伯ナツミ選手!・・・二位は・・・そして、三位は実業団の△□選手。四位にはナツミ選手のお母さんである佐伯ミナミ選手、皆川選手もなんと五位に入賞しました。』

 

『では、インタビューです。ナツミ選手。優勝おめでとうございます。』

『はい・・ありがとうございます。』

『並み居る実業団と競輪選手を抑えての優勝。

 史上初めての最年少ですが、レースはいかがでしたか。』

 

『はい、母とチームメイトのサポートがあっての優勝です。

 なので皆でもぎ取ったレースだと思います。』

『去年の男子以上に盛り上がったレースですが、初優勝まで大変だったでしょ。』

『はい、いっぱい練習しました。良い先輩や学校皆さんのサポートもあって、

 初めてのレースで優勝できて凄く嬉しいです。』

 

『お母さんのミナミ選手。一言。』

『まあ、私はピンクの悪魔と呼ばれてるらしいですから、この子はピンクの子悪魔かしら。

 母としての責務も果たせましたし。』

『は、はい・・ありがとうございます。

 ピンクの悪魔って言ったのは東庄選手ですので、私は咬まないでくださいね。』

『あら、じゃナツミちゃん、東庄選手のお尻噛み付くの許可します。噛み千切っておやんなさい。』

ナツミもふざけ、カチカチと歯を鳴らす。

東庄選手もノリが良く、自分のお尻を両手で押さえた。

 

周りから大きな拍手と、笑いが飛んだ。

 

「最後にナツミ選手一言お願いします。」

 

「自転車大好きっ!!」

それから地元紙やTV局のインタビューにもみくちゃにされながら、やっと帰途についたのは夕方だった。

 

翌朝の、新聞には大きくは無いが、写真入りでナツミが載った。

丁度ゴール直後に両手を上にあげ、一指し指を上に突出しているポーズだった。

まんま、ツールドのゴールそのものであった。

『第3東京市クリテリウム、優勝は若干9歳の美少女!エリートクラス・ジュニアクラス二階級制覇!!』

そんな見出しが出ていた。

 

「あっら~ナツミちゃん可愛く写ってるじゃない。永久保存しとこ。

 というか、画像データもらえないかしら。」

「うう・・全身筋肉痛で突っ込む気力も無いよぉ・・・」

 

月曜日は、学校で全校集会が急遽行われ、壇上に上げられ賛辞された。

翌日から、女子の部員が集まりだした。

良い事ではあるが、なにせ初めて乗る者も多く、顧問が一番頭を抱えたのが自転車を持て無い部員の自転車確保と、女子部員の更衣室の確保だ。

 

「禿げたらどうしてくれる・・・ったく。」

 

 

「ナツミちゃん、ファンが来てるよ。」

「ファン?」

「そ、女の子が多いけどね。」

ナツミは、教室で手を振るだけにした。

あの中に飛び込んでもみくちゃにされる勇気は無い。

 

放課後サユリが迎えに来た。

 

「ナッチ行こ!新しい部室へ!」

「はい、先輩・・迎えに来なくても大丈夫ですから。」

「私が来たいの!ダメ? 泣くよ。私泣いちゃうよ。」

「んもう、ズーレと勘違いされても知りませんよ?」

「ナッチならいいや。いっそズーレもいいかも、ナッチなら。」

 

「・・・帰ろっかな・・・」

「あん、ダメよ。さ、行こ!新入部員も待ってるし。」

「はい。」

 

 

 

 

 

部室は新しくチア部の隣に確保された。

シャワー室はチアと共同だが、広すぎたチア部から部室を分けてもらいドアが新設された。

シャワーには廊下に出ずに入れる。

全裸になる事もある自転車にとって、これは助かった。

 

「えっと、私が副部長の皆川です。実質、女子を纏めてます。よろしく。」

「あの、自転車って高いです?」

「少しは自分で調べなさいね、エントリークラスなら、中古で3~4万ね、それよりウェアとか個人装備にお金がかかるの。

親と相談して購入を勧めるわ。あと、私の古いのクラブ用にするから。

顧問も自転車の確保には動いてくれてると思います。」

 

「あ、副部長。私のもいいって、ミナミさんが。ただフレーム小さいから150以下の人になるけど。」

「と言うことで、初めての人は?」

 

「私、レーサーではないですけどクロスなら持ってます。」

「何処の?」

「ジロスの○○です。」

「それならハンドルとシフター、ワイヤーの交換ですぐレーサーにできるわ、多分3万ぐらい。

 中古のパーツなら1万ぐらいね。」

 

「他には?」

「ヘルメットは必須ですか?」

「被らなきゃ乗車禁止よ。グローブも出来るだけ着けて。」

 

コンコン。

ドアがノックされた。

 

「おーい、空けてくれ~」

「あ、顧問だ。」

 

「男子の方からかき集めてきた、佐伯、外にあと二台あるから入れてくれ。」

「はい。」

 

「皆川、校長と相談して、自転車確保する、何台足りない? 」

「あと6台です。でも私たちの古いのを出せは・・」

「それはダメだ。確保するから個人のは出すな。あと、グローブやメットは何とかなる。ジャージはレース用だけは確保する。練習用は個人負担となるが、ショップの学校指定をなんとか認めさせた。」

「じゃ、練習用のウェアと、個人の必要なものですね。」

「それと、ごく普通の三本ローラーを地元企業から寄付があった。2台もだ。」

「やったあ!」

「事故の無いように皆川と佐伯で指導してくれ。

 あと、自転車ショップから古いラックが貰えた。明日据え付けて置く。

 それとパールシミズからパッチ提供の申し出が有ったんで貰っておいた。

 なんでもマイナーチェンジするそうで在庫を200枚くれるそうだ。」

「消耗品なんで助かります。」

 

「ああ、そうだ、佐伯と皆川は明日時間空けておけ。市役所へ行かなきゃならん。」

「授業終わってからですか? 」

「いや、二人は公休だ。市長が会いたいンだと。ついでにこの困窮訴えて予算ゲットする。」

 

「はい。」

翌日、教頭、顧問そしてナツミとサユリは市役所へ向かった。

そこでは、広報紙の写真を取ったり、市長と談話した。

 

なんでも、有力者の会社から学校にポンと1000万もの寄付が有ったそうな。

部室も、ウェアメーカーに相談したら、完全な個室が必要で、機材を買った後、小体育館の一部に使って居ない用具室がありそこが改造され女子の部室となるとのことだ。

 

 

学校へ帰ると、放課後に集まってきた部員に皆川が説明した。

 

「先輩、パッチってなんですか?」

「えっとね、ウェアは本来素肌に着るの。まあ、走る距離が短いとかなら下着付けてもいいけど、長距離とかレースになると素肌が基本。で、それでもウェアと皮膚が擦れてへたすりゃ怪我するの。パッチは陰部に貼り着けてそれを防ぐの。

 何回かは洗って再利用できるから。

 粘着性がなくなったり、汚れた時は廃棄ね。あと、専用のクリーム使ったり、ワセリンを使うときもあるけど、洗濯が大変なの。」

 

「と言うことは、すっぽんぽんに?」

「ええ、だから個室ができるの。交代で使ってね。」

「自分で貼れるんですか?」

「えと・・ナッチ。ヘルプ」

 

「慣れれば問題なく貼れます、最初は貼り方を教えてもらった方が良いかもです。」

「恥ずかしいなぁ」

「痛くなったらそんな事言ってる余裕無いわよ。マニュアルはあるから張った後見てあげる。」

 

「あの、ブラは付けるんですか?」

「当たり前です。でも普通のブラよりスポーツブラが良いわね。

 ブラ無しで乗ると乳首が擦れちゃって乳首に瘡蓋できるわよ。」

 

「あの、レースで履いてるスパッツ?みたいなの恥ずかしいんですが・・・」

「普通に着てた方がカッコいいのよ。水着と同じ。隠すと余計エロくなるわよ。

 ナッチ、ちょっとビブショーツ着て来て。あと、巻きスコートも。」

「了解。」

 

 

「いい?これが良く使うビブショーツ。確かに巻きスコートを付けてる人も多いけど。

 捲るよナッチ。」

「うん。」

 

「ね、スカート捲くれたみたいで余計にエッチでしよ。で、スコート取るとこう。

 自転車に乗ると、ちっょうどミニがまくれてお尻が見えてる感じになるのよ。」

 

「ホントだ、スコート付きの方がエロい・・・。」

「男どもを喜ばせたきゃ着てもいいかも、私たちは腰を冷やさないために使う時もあるけど」

「普通は、オーバーパンツ着ちゃう。暖かいし。」

ナツミがサユリの言葉を繋ぐ。

 

「水着のアンターショーツはダメなんでしょうか。」

「私も使った事があるけど見ごとに赤剥けになったわ、1時間走っただけで。治るまで5日もかかったの。」

それからもいろいろな質問が飛んだ。

 

「ナツミちゃん、生理の時どうすればいいの?」

「ごめん、私まだ9歳。生理まだなの。先輩ヘルプ。」

 

「ナプキンはダメ、走っている内に粉々になるわよ。部活休むかどうしても乗りたい時はタンポンね。」

「うう、タンポン使ったことないよぉ。」

「慣れれば快適よ。でも、重い子はお休みね。どうせ練習にならないし。」

「処女膜破けませんか? 」

「ちゃんと授業きいてたの?小学生で習っているはずよ。正しい使い方をすれば、普通の人は破けません。ま、ボケーっとして穴に填まってホイールや車体が壊れるほど衝撃を受ければ処女膜破けるかもね。」

 

「走ってる最中になったらどうしたらいいですか?」

「近くだったらすぐ帰る事ね。タンポン以外は対応無理よ。外へ出てた時はコンビニで買えるけど。そのまま乗ってるとサドル血だらけになるから止めてね。白いサドルだと皮に沁みちゃって経血が取れないから。」

 

「この中で自転車乗れない子は?・・・・さすがにいないか。来週には自転車来るらいしから、それまでは座学とマナー、交通法規、あと変わりばんこに乗りましょう。」

 

その後、有る程度スポーツ車以上に乗った事のある子と初めて乗る子のグループに分かれて講習に入った。

ナツミは有る程度載ったことの有る部員の担当だ。

 

「ナツミちゃん、飛び級だったよね。」

「はい。まだ9歳です。」

「凄いなあ、それで優勝だもんね、カッコ良すぎ。憧れちゃう。」

「でも、走ってるときは凄い表情でしょ。うふふ。」

「そんなこと無いよ、あれ男子のオナネタになってるって絶対。」

「あははっ、まあ、実害がなきゃ放置かな。」

「キモくないの?」

 

「そこまで清廉潔白じゃないし、男の子の生理は知ってるよ。

 このぐらいの男の子は頭の中エッチで四六時中いっぱいらしいし。」

 

「ナツミちゃん、色っぽいしね~。」

「ほえ?そかな。」

「ほら、そんな表情なんかね。校内にファンクラブも出来たぐらいだし。」

「あららら~、男の子が?」

「ううん、女の子ばっかり。ちなみに、私もファンクラブ会員なの。」

 

ナツミは数秒固まる。

「はい? まあ、いっか。さて、二人の自転車は?」

「私歩き。学校から300Mで自宅。今日はもってきてないの。」

「私は電車。20キロもあるの、自転車通学無理。」

「そうね、でも練習で使うから、乗って来るか置いておくか・・・任せますね。

片道20キロなら、ゆっくり流しても1時間も掛からないけど、安全面が問題だから顧問と相談してください。」

 

 

 

「ビンディングは初めて?」

二人ともコクコクと頷く。

「じゃ、とりあえずこの自転車にペダル付けよっか。交換した事は? あ、ないのね。

ペダルはセッティングやメーカーが違うから共有車の場合は、ペダルは個人持ちなの。

今日はフラペつけるからちょっと乗って見て。」

ナツミは、顧問が引きずってきた、自転車を軽くチェックし、フラットペダルを取りつけた。

 

「んしょっ! はい、フレームにまたがって・・・ってスカート!!」

「あ、下はスパッツよ」

「いや、そうじゃなくて。巻き込んだら大変なの、脱いで。」

「あん、エッチぃ!!」

「ふざけてるとスパッツもショーツも一緒に脱がすからね。」

 

「ジャージでもいい?」

「ええ、でも右足巻くって。膝まで。あと、スニーカーの紐は編み上げ部分に入れて。そう。」

 

二人に、部室にあったメットを被せ、跨らせた。

グローブはないので、とりあえず軍手だ。

 

「ドロハンに乗ったことは?・・・はい。じゃここを持って、これがブレーキ、ここを動かすとギア。でも今日はインナーローでね。いいって言うまでギア変えちゃダメです。」

 

ナツミは一緒に足で走りながら付いて行く。

 

「わっ、軽い。」

「ちょ、スピード抑えて!」

「そっちは、肘開かない!」

 

1時間ほど講義をしたり走らせたり、なんとか形になってきた。

ナツミも自分の自転車を持ち出した。

 

「じゃ、学校の周りの周回路に行きます。他のクラブも使っているから、気を着けて。

 安全速度で走るんで私を絶対に追い越さないでください。

 危ないときはすぐ止まること。

 いまから、足を付くのは左りだけ。OK?」

「は~い。」

ナツミは、時速10キロから15キロ程度でゆっくりと回る、ただし、坂も含めて同じ速度だ。

平地ではルンルンで付いてきた二人も、のぼりの時速15キロキープは効いた様だ。

 

 

「インナーローでも効くでしょ。ここ意外に坂がきついから。」

「ナッチンは、アウターだよね」

「うん、だからローにはいれてないでしょ。アウターローとインナートップはタスキ掛けといってギアを傷めるの。だからローから二番目に入れてる。って、いつのまにかニックネーム増えてるし。」

 

「ナッチン、お尻超可愛いい。撫でていい?」

「脇見運転禁止です。ちゃんと周りや道路を見てくださいね」

 

「今日もその下はすっぽんぽん?」

「いえ、今日は距離も時間もそんなに乗らないんで、ショーツ穿いてますけど。」

「でも、ショーツライン無いよね。」

「・・・Tバックです・・・」

 

「わ、後で見せて!」

「な、なんで見せなくちゃいけないんですか。ごく普通のですよ。」

周回路を3週ほどすると二人とも大夫慣れて来た。

ナツミは、シフターの操作を許可し感覚に慣れさせた。

 

「ナッチン、ペダルを回す速さって普通はどのぐらいなの?」

「普段は、90から110回転ぐらいです。スパートだと200以上まわしますね、今日は慣れもあるし、フラペですから90前後でいいですよ。あまり早く回すと、ペダル踏み外しますから。」

 

「ビンディングって難しい? 」

「慣れと、バランスですね、最初は自転車を固定して、次にゆっくりとした速度でみっちり練習しますから。」

 

「靴も専用なの? 」

「はい、専用です。安売りなんかを探すと半額ぐらいでありますから、6.7千円からあります。

 新型だと最低1万オーバーで高いのになると3万ですね。」

 

「けっこう物要りね、バイト考えなくっちゃ。」

「靴も何足かは部で準備するらしいですが、身に着ける物は個人で準備した方が良いかもしれませんね。」

「ナッチン、もし自転車買うときは相談に乗ってね。」

「はい。」

 

「じゃ、そろそろ部室に戻りましょうか。木曜日は部のミーティングがありますので、集まってください。男子と合同ですから、男子の部室に集合です。」

 

 

「お~い!佐伯ぃー」

遠くで、顧問が呼んでいた。

 

「は~い。」

「わりいな、練習中に。新しい部室だが、来週には使える。お前のお蔭で学校側も考えたらしい。

 自転車や機材も、それに1箇所だけだが温水のシャワーも付く。

 もちろん、着替え用の個室も有る。

 旧体育館の用具室だが一部を部室に使うより、そのまま全部の方が改修費が安いらしい。

 水曜日に鍵を渡すから取りに来い。皆川にも伝えておいてくれ。」

 

「わかりました、鍵は部員数分作っていいのですか?」

「そこは、皆川と相談しろ。ただ、管理はちゃんとナ。

 ローラーが届いているがまだ組立てずに、新しい部室が出来たら渡す。」

「はい。」

 

「ナッチン、ローラーって難しいの?」

「そうですね~。固定なら難しくないですけど、三本ローラーは最初慣れるまで危険です。

 少しづつ練習しましょう。では戻りましょう。」

部室に帰ると皆川が外へ固定ローラーを出して順に乗らせていた。

 

「お帰り、ナッチ。」

「はい、ただ今です。」

「どう?二人は。」

「数日練習すれば、乗れるようになると思います。ペダルや自転車は来週ですっけ?」

「そう、部員のサイズ表出しとけって。

 あと、ビブショーツは買い取り、学校からも補助出すから、一着5000円だって。」

 

「結構高いんですね。」

「やっすいよ。普通は2万近いんだよ。と言うことで、皆保護者に話しておく事。

 はいこれ、学校の指定ショップの場所と購入券」

「はい。」

 

「あの副部長たちが着てたのですか?」

「いや、あれは特別。スポンサー入ってるから契約があって、校外の練習や試合用。

 今回のは学校の指定ウェアなの。

 普段は使わないわ、でも慣れのためレース前には何回か着るわよ。」

 

「すごい、なんかプロみたいね。」

「スポンサーもった時点でプロなのよって言われた。

 成績が上がれば貴方たちだって可能性あるのよ。」

 

「かっこいいなあ。」

「その前に走れるようになるのが先決でしょ。」

ナツミは、顧問からの事をサユリに伝えた。

 

翌週、部室の引越しと届いた自転車のセッティングを行った。

 

「掃除は、皆で交代でね。」

 

「副部長!固定ローラーここでいいですかぁ!」

「そこには三本ローラー設置するから、もっと右ね。そう、そこぉ。

 ロッカー決めて使って良いけど、鍵は無くさないでよ! 部室の鍵はナンバー錠だけど男子に教えたらダメだかんね。」

「は~い!」

 

初心者は、固定ローラーを終え周回路へとサユリが連れて行った。

 

「じゃ、私たちはビンディングの練習ね。最初は固定ローラーで、十分に付け外しを練習して。」

 

そのれ練習の間、ナツミは自分の自転車で三本ローラーを漕ぐ。

30秒のスパート、3分の定速と交互にこなす。

 

最後に、ローラーの上でダンシングで5分間、シッティングで5分を交互に行った。

 

 

「反射的に左足が外せるように練習ね。」

 

最初はなかなか慣れない二人だったが、1時間も練習しているとなんとか形になってきた。

 

「外したり、填める時はなるだけ足元見なくともできるようにね。」

ナツミがローラーを回しながら指導する。

 

「じゃ、そろそろ私たちも周回路でてみようか。」

 

自転車のペダルをビンディングに交換し、二人を連れて出た。

「じゃ、定速で回るからね。ビンディングを使うときは、踏み足だけじゃなくて引き足も使うこと。」

ナツミはケイデンスを100ほどで流しだした。

途中で、わざと停止位置を何か所か決め、ビンディングに慣れさせる。

 

「どう?」

「うん、やっと慣れてきた。実は、SPDはちょっと使ったことあるの、一回目でコケてすぐ辞めちゃったけど。」

「右側に倒れそうになった時はどうすればいいの?」

もう一人の新入部員が聞いた。

 

「そうね、ハンドルで修正できない状態だったら、左足を後ろに振り回して下りるの。

 そうすれば、右足のビンディングは自然に外れるから。」

「なるほど~」

 

「じゃ、後30分ほど周回と一時停止の練習したら戻りましょう。」

「は~い。」

 

日差しも傾きかけ、三人は女子部室へと戻ってきた。

ナツミは、簡単なメンテと乾拭きを教える。

 

「あ~、なんかお腹すいた~」

新入部員の一人がぼやく。

 

「自転車の消費カロリーって、水泳並みですからね。」

「やたっ!痩せられる?」

「うふふ、今日程度では1000キロカロリーぐらいかな。

 この程度で食べてたら逆に太っちゃいますよぉ~。」

「本格的になればどのくらいのカロリー消費するの?」

「2000キロカロリーぐらいかな? だから、朝もしっかり食べないとハンガーノックって言って、低血糖で走れなくなるんです。」

「だとすると、今の倍食べられる??!!」

「ええ、練習した後は、低GIのエネルギーバーとか食べますね。夕飯まで持たないし。」

 

「私、来週から自転車で来る。」

一人が握り拳を自分の顔の前に持ってきて言った。

 

「だと、ちゃんと顧問と担任に申請しておいてくださいね。」

 

「あ、ナッチン、Tバック見せて? ね? 後学のために。」

「う・・・ちっょとだけですよ・・・汗かいてるし・・・恥ずかしいなぁ・・・」

 

ナツミは、ベンチに座ってビブショーツを脱いだ。

 

「きゃ~わかいい!! しかもエロいっ!!」

「ねえ、ナッチン、これどこで売ってるの?」

「駅近くのフェミールってお店ですけど。」

「あの超高級下着の?」

「はい、お店のスポーティコーナーにあります。特別に自転車用に作って貰ってるんです、買うなら紹介ますよ。」

「幾ら位なの?」

「多分2000ぐらいかな。でも、オーダーの手作りですから、すごく安いですよ。」

ナツミは、全裸で恥骨の位置、骨盤のサイズ、膣口の位置まで測られることは内緒にした。

しかし、そのお蔭で、パッチと遜色ない機能なのだ。

 

そんな、会話をしているうちにサユリが連れて出ていたこの理の新入部員が帰ってきた。

 

「は~い。みんな、今日乗った自転車は、必ず乾拭きしてからサイクルハンガーに乗せてね。」

ナツミを見たサユリもちっょとドキリとした。

それほど、可愛い少女がお尻を晒していたのだ。

 

ナツミを手を振って呼んだ。

「はい、なんです?」

 

「え~みんな、ちょっと見て。こういうTバックなら近距離や1時間程度なら使っても大丈夫なの。

 普通のショーツだと30分も限界よ。

 必要と思う人は各自で準備しておくこと。私も何枚か持っているから。

 ただ、ネットで売っているデザイン重視のTバックは縁が厚かったりすることもあるから注意して。」

 

周りから、「きゃ~」とか「可愛い・・」、「エロッ」などと声が飛んでいるが、数か月もすればみんな慣れる事だろう。

 

「ナッチ。ありがと。」

 

ナツミは、シャワーを浴びて制服に着替えた。

 

「あれ?ナッチンは徒歩通学?」

「はい、歩いて15分。」

「自転車じゃないんだ。」

「ええ、自転車だといちいち着替えないといけないし、その時間あったら家まで着いちゃいますし。」

「制服じゃ乗らないの?」

「ママチャリ持って無いんです。」

「部活で乗ってるのは?」

「うふふ、あれ制服で乗ったら、下着全開で見えちゃいますよ。

 あ、でも副部長なんかはレーサーで通学ですね、だからスカートの下いっつもスパッツかな?」

 

「そうだよ。」

そういいながら、スパッツ姿でシャワーから出てきたサユリが髪を拭きながら話した。

 

「スカート長くすれば・・・」

「それやったのよ・・1年の時。

 スカートが後ろのブレーキに巻き込んでさ、危うく車にぶつかりそうになってね。

 いや~あんときゃ顧問にメチャ怒られてさ。

 『女なのに顔に傷でもついたらどうすするっ!!』って。

 だから、制服乗るときスカートの上の方折って短くするの。

 で、スパッツね。」

「スカート無しでいいか。」

「うふふ、それはどうかなぁ?」

そう言って、下はスパッツのまま制服の上を着た。

 

「・・・・エロい・・・」

「・・・だね。」

ナツミは思った。

(やらなくて良かった・・・)

 

この後、練習している女子部員の姿を見てさらに部員が来ることになる。

それから間もなく、正式に女子自転車部が発足し、部長にサユリ、副部長にナツミがなった。

 

 

 

 

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