抜きゲーみたいな島に住んでるロリビッチ好きはどうすりゃいいですか? 作:鳴らない警鐘
赤い髪をした彼女──遊城夕奈と名乗った彼女は、しばらく島の事情や俺達の名前について聞くと、
夕奈『ごめんね!この後ちょっと行かなくちゃいけない所があるから、もう行くね!』
そう言って、どこかへ走り去ってしまった。
桐香「非常に元気いっぱいな方でしたねぇ」
淳之介「うん…」
赤い髪とスカートの下に履いていた黒いスパッツが特徴的な彼女は、少し話をしただけでも、その人の良さが垣間見えた。
あの“お姉ちゃん宣言”については、未だによく理解できなかったが、どうやら悪い人ではないらしい。
淳之介「……そうだ」
そういえば、勘違い──でもないかもしれないが、俺がおねショタプレイに誘われてると思い、声をかけてくれた桐香にまだお礼を言っていない。
淳之介「助かったよ。桐香──っと…」
危ないところだった。
今の俺は、橘淳之介ではなく──橘ちんのすけ。
小さくなった理由…“あの事”について、秘密にするためにも、ここは正体を隠すべきだろう。
であれば──
淳之介「さっきは助けてくれてありがとう。桐香お姉ちゃん」
桐香「…あら?やはり先輩は、おねショタプレイがお望みだったんですか?」
淳之介「……」
──気のせいか?
今こいつ“先輩”って言わなかったか?
俺の聞き間違いだよな…
淳之介「…何言ってるの?僕がお姉ちゃんより先輩なわけないでしょ…?」
桐香「…?先輩は先輩でしょう?」
淳之介「……えっと…」
こいつマジか?
マジで俺の正体を──?
そう考えていると、桐香は俺の目線に合わすようにその場にしゃがみこみ、いつも通りの──橘淳之介に向ける笑顔で話し始める。
桐香「──確かに、姿形はいつもの先輩とは違うかもしれません」
桐香「ですが、私は先輩の見た目…その美醜について、好きになったわけではありません」
桐香「ですから、先輩が例えどんな姿になっていようと──私は先輩を“先輩”だと認識できますよ」
淳之介「……桐香」
俺を真っ直ぐ見据え、微笑みながら言葉を紡ぐ彼女の目は、とても嘘をついているようには思えない。
桐香「それとも、こう言った方が正体を看破された実感が湧きますか?──お前、工藤やろ?」
淳之介「──服部…!?」
…
…
結局、桐香に正体を明かした俺は、体が縮んでしまった理由を彼女に包み隠さず説明した。
話の途中、何故か顔を赤らめ、何度か体をビクンビクンと痙攣させていた桐香だが、俺が話を終えると満足そうに頷いた。
なんだこいつ…?
そして、桐香と共に家に戻った俺は、事の顛末をアサちゃんと文乃に伝えた。
麻沙音「私達以外でこのちっさいのを兄だと見破るなんて、流石冷泉院さんとしかいいようがないね…」
桐香「えっへん…!!」
淳之介「は?なんだこいつ可愛すぎだろキレそう…」
文乃「わ、私はこの豊玉の瞳がなくとも、この子が淳之介さんだと見破れます…!!」
そう言って、再び俺を後ろから抱き締める文乃。
麻沙音「もう文乃は“ちんのすけ”を我が子のように扱ってるし、兄と区別するのは無理そうじゃない?」
文乃「文乃にはできます…!むしろ淳之介さんこそ私の子供です…っ!」
麻沙音「やべえよ兄…文乃がお母さん化しすぎて頭が畔さんになっちゃってるよ…」
文乃「す、好きなものはご飯あんどご飯……?」
麻沙音「いや、それは違う人だからね…」
文乃「……み、みさー…」
麻沙音「畔さんについての情報少なすぎじゃない…?」
淳之介「──だが、これで俺の正体を知る人間はここにいる3人ということになるが…」
そう言って3人の顔を見ると、桐香が俺の頭を撫でながら言葉を発する。
桐香「…先輩には非常に申し訳ないのですが、この状況は私達にとって好都合かもしれません」
淳之介「?…どういうことだ?」
桐香「先輩は、私の相談の内容を覚えていますか?」
淳之介「ああ──魔王のことだろう?」
桐香「ええ。件の魔王はこの島で、子供を5人もさらっています」
桐香「ですから、小さくなってしまった先輩には、魔王を誘き出す“おとり”になって欲しいんです──」
……
…
淳之介「……それで、ここはどこだ?」
その日の夜。
訪れた記憶もないような山中で、俺は首を傾げる。
桐香「ここは、魔王が現れたとされる場所──具体的には、ドスケベランドの近くです」
大きな木々に囲まれたその場所は、確かに“魔王”でも現れそうなくらい不気味な場所だった。
淳之介「…つまり、ドスケベランドに遊びに来た子供をここまで誘きだし、さらったということか?」
桐香「さあ…手段まではわかりませんが、その可能性は充分に考えられますね」
──今回、まずは“視察”ということで、現場にいるのは俺と桐香のふたり。
夜目が効き、この島を知り尽くしている文乃には、万が一“魔王”が現れた場合に備えて、森の入り口付近に待機してもらっている。
淳之介「──麻沙音。聞こえるか?」
麻沙音『ほいほいアサちゃんです。そっちの様子はどう?』
淳之介「そうだな…あまりに暗すぎて、人影らしいものも見えない状況だ」
麻沙音『それなら、とりあえずレーダーを使ってみたら?』
淳之介「わかった──“アリアドネー・プロトコル”起動…!!」
俺の言葉に“アリアドネー・プロトコル”が立ち上がる。
IFFは正常。森の中はスパイカメラがないため、元より動作はしないが──
俺はレーダーをスーパーサーチ、索敵範囲を最大まで拡大する。
淳之介「敵影はない、か……」
これで少なくとも、今現在この森の中に“淫スタ”を入れているものはいない。
淳之介「……だけど、くそっ…やっぱり緩いな…」
急な出番でゴーグルのベルトを直す暇がなかったため、少しでも頭を動かすと、頭に着けたゴーグルがずれ落ちそうになる。
桐香「ふふっ…」
淳之介「?どうした桐香…?」
桐香「いえ、大きなゴーグルをつけている今の先輩が本当の子供のように見えてきてしまって…」
淳之介「……あぁ、そう…」
桐香は、後ろからずれ落ちそうになっているゴーグルを直しながら、俺の耳元で囁く。
桐香「──ねえ、先輩。いつかもし私達が添い遂げたとしたら……ちんのすけくんのような子供に恵まれるのでしょうか?」
淳之介「!」
そう言った彼女の声は、どこかイタズラっぽい感情を帯びていて──
ゴーグルを掴むその手は、微かに震えていた。
──冷泉院桐香は、人の心がわからない。
それは他人だけではなく、自分の心も同じで。
その天才性ゆえ、誰からも理解されず、求めることすらなかったため、自分の心がわからない。
──だが、俺はそんな彼女が嫌いじゃない。
元々、倒すべき敵であった彼女は、異世界に行った時、郁子や礼先輩と共に俺を支えてくれた。
“とーかちゃん係”だった俺と最後まで一緒に戦ってくれた。
そんな彼女が望んでいるもの。
それは、俺が望んでいるものでもあるのだろうか?
淳之介「桐香。俺は──」
「──ここで、何をしているのかな?」
俺の彼女への“返答”は、ある男──魔王の声により遮られた。
書いてて思ったけど、私は自分で考えてた以上に桐香が好きらしい。
いや、やっぱりそこまで好きじゃないし、一途な私は奈々瀬と文乃とアサちゃんがいればいいし、桐香なんて全然全くこれっぽっちも好きじゃないんだからね!
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