うん、一旦落ち着いて考えてみよう。
私はなんで自分からアレックスに抱かれようとしている。どう考えてもおかしいだろう。
カイルの目の前で犯すとか言っていたから、それが現実になろうとしてると考えればその通りなんだけど、まさか自分から挿れるなんて想像出来ただろうか。私はてっきり無理やりカイルの目の前で犯されると考えていただけに、この状況に戸惑ってしまう。
アレックスは我が物顔でベッドに寝転がってスタンバイしてるし、これ自分でやるの?
好きな人の目の前でセックスするって、シチュエーション的にはアウトだろう。見る側が寝取られ性癖に目覚めてる以外、ほぼ精神壊れるぞ。でも、私って気づいてなかっただけでアレックスとのセックスで理性飛んで溺れてるところを見せてたらしいから、今更な気もしなくもない。でも、本人が目の前にいるのにセックスするのって無理じゃね? だって私がカイルの立場だったら、他所でやれと怒鳴ってる。
「どうした? 感じてないってことを見せるんじゃないのか?」
そうアレックスに促されても、なかなか踏ん切りがつかない。
「あの、今更言うのもあれなんだけど……好きな人の目の前で違う男に抱かれるのって普通に考えておかしくない?」
「お前が抱かれると言ってきたんだから、その通りにしてるだけだろ」
「カイルは? 私が貴方以外の他の人とセックスするのっておかしいよね?」
「今更なに言ってるんだ。お前とはもう婚約者でも何でもない。ベッドは貸してやるから、好きにやったらどうだ?」
「ヒドい」
「じゃあ、なんで俺がいなくなってすぐ他の男に抱かれてるんだよ! お前は結局、男なら誰でもよかったんだろ!」
「…………」
何もそこまで言わなくてもいいじゃないか。私にだって言い分はある。カイルと一緒にいるためには、アレックスに抱かれ続けなければいけなかった。そうしなければいけなかった。
本当は嫌なのに、無理やり感じさせられておかしくなるくらいイカされて何度も中出しされてそれでもカイルと一緒にいられるって思って頑張ってきた。
真っ向から否定されて、私はどうしたらいいのか解らない。感じてないってことを証明するためにアレックスに抱かれたところで、その行為に意味はない。
今のカイルは病的なまでにリリアに夢中で、私のことは『男であれば誰にでも股を開くビッチ』みたいに思って軽蔑している。なんでこんな事になったんだっけ。どこで間違えた。理由や条件はどうであれ、カイル以外の男に抱かれたのが間違いだったのか。
そう思ったところで、どうしようもなく笑いが込み上げてきた。
「何がおかしい?」
カイルにそう問われ、私は笑いを噛み殺しながら答える。
「だって、こんなシチュエーション笑うしかないもの。さぞかし楽しかったでしょうね、貴方たちの掌の上で腰を振ってる私を見ているのは。ああ、本当に最悪。キサマらの好き勝手にされてた自分に嫌気が差すよ。それで、リリア。私がアレックスの上で腰を振って何か見返りがあるの?」
「好きでもない人とのセックスは気持ちよくないって証明できます」
「ああ、それは無理。証明できそうにないわ」
「な……」
開き直った私にリリアは絶句し、言葉が出てこないのをいいことに私は畳み掛ける。
「だって無理。アレックスのチンポは気持ちよかったもの。前戯も上手だし。貴方の初体験が痛かったなんて、どうせろくに濡らされもしないで突っ込まれたんでしょう。カイルやアルフレッドはちゃんと前戯して昂ぶらせてから挿れたから、気持ちよかった。結局、貴方も私も同じ穴にいる人間なのよ」
「違う! 私はカイルだけです、カイルだけなんです! エルシア様とは違います!」
「ふーん」
ウザい。
「人から奪って手に入れたんだから、気持ちよくて当然よね。本当に最悪。何もしなかった自分がムカつく」
なんであの時、カイルの意思を尊重してしまったのだろう。なんで私は全てを捨ててでも、カイルと一緒にいると覚悟を決められなかったのだろう。ただ彼を苦しめただけで、私がしたことは無意味だった。
これ以上苦しめるくらいなら、と私、踵を返して扉を出ようとする。
「に、逃げるんですか?」
「あいにく、私は余程のことがない限り他人に見せる趣味はないの。もうこれ以上、2人の邪魔をしたくないから私は帰らせてもらいます」
好きな人を取られた。自分が原因で他の女に取られる、とか笑えない。滑稽だな、本当に。
「じゃあね、カイル。愛していたわ」
バタンと部屋を後にして、ゆっくりと階段を下りていこうとして隣の部屋に引き摺り込まれた。
えぇっ、なになに? 怖いんだけど! 誰っ? 誰がやったの?
混乱する私を熱く抱擁し、唇に深く熱いキスをする背の高い細身だけど鍛え抜かれた肢体の男は、抵抗する私を無視してひたすら口腔内を蹂躙する。
この獣のように貪ってくるのは、アレックスのやり方だ。この3日間ですっかり覚え込まされた味により、彼が唇を離す頃には私はトロンと蕩けた表情になっていた。
「いきなり……なにするん……だ……」
「また恥をかかせたからな。これはそのお返しだ」
恥をかかせたって……。
あの状況でセックスするような気分になる人間の方がおかしいだろう。
私が立ち去ってすぐ追いかけるとか、どんだけ欲求不満でプライド高いんだよ。別にいいんだけどさー。
「それで私に相手をしろって?」
「お前は1週間は俺が求めるんなら抱かれる約束したんだから、拒否できないハズだ」
「そんなに女を抱きたいならミランダやエリィにしてもらいなさい。私はもういいでしょう。放っておいてくれない?」
「俺は女好きだから、エルシアも欲しい。とりあえず、あと今日も含めて4日は抱かせろ。その後は自由にしていい」
「…………本当に?」
「本当だ」
何してやろうか。八つ裂きにしてやろうか。
人一人の人生を台無しにしたんだから、ぶん殴るくらいは許されるだろう。で、もし妊娠していたらコイツに援助してもらおう。骨の髄までしゃぶり尽くしてやる。私は寛大だからな。
とりあえず、抱かれなければいけないんだろう。
「アンタも物好きね。さっきまでビッチだの何だの言われたアバズレを抱こうなんて……。ミランダやエリィは初モノだったんだから、そっちに夢中にならないの?」
この王国の女に対する考えは、何より貞淑であることが求められる。貞操は夫となる男性にのみ捧げられ、浮気や不倫は女の場合は死罪になる。逆に男の場合はそれが無い。でも、一夫多妻とかではないのでマジで実行したら王族ですら世間体が悪くなる。
帝国は一夫多妻は認められ、皇族や貴族の男ならば複数の美女を侍らせるのが一種のステータスとなっている。どうせハーレム作るなら、私みたいに処女を別な男に捧げた相手より処女を貰った女を侍らせた方がいいと思う。
なんかおかしいぞ。まるで自分じゃあハーレム要員になりたいけどなれない、みたいに考えてやがる。
「なんだ、ようやく俺の女になりたくなってきたのか?」
「どうやったら、そういう風に解釈できる?」
「他の女を気にしてる時点でだ。心配しなくても、俺はエルシアもミランダもエリィも平等に愛してやるよ」
「このクズめ」
ハーレムはリトさんとおっぱいドラゴンくらいは認めれる。遠山は事案だ。
いや、それよりもアレックスに絆されてきてる感じがしてきていよいよ持ってマズいな。
「あの、離してくれない? 1日延ばしてもいいから、今日は一人にさせて」
「嫌だね。俺はカイルの前で犯すって言ったぞ。妥協してやってここで可愛がってやるから、おとなしく俺のメスになってろ」
「暴君だな、おい」
またキスされた。
どうせ抱きしめられた時点で拒めないのだから、もう諦めの境地に達している。それに体がアレックスが与えてくれる快楽の味を覚えているから、勝手に発情してしまって既にアソコはショーツから滲み出すくらいグジュグジュに濡れている。
体が犯されたがっているとはいえ、それをアレックスに覚られるのは癪だ。でも、どうやって隠せばいいんだ。
どうするも何も、アレックスに口腔内を犯され、口を離したかと思えば、今度は耳を舐め始めた。
ヌルヌルとした何かが耳を這いずり、不快なハズなのにくすぐったくて気持ちいいのだ。
「ひぁっ……耳、舐め……るなぁ……」
ピクピクと小さく体を震わせ、ゾクゾクとした快感が背筋を這い上がり、下品で淫靡な音を立てて耳の穴までもアレックスの舌に蹂躙される。
「あっ! あっ! やだ……なんでこんな……いやいやぁ……あん♡」
片方の耳を攻め終わって舌を離して一息つけるかと思いきや、今度はもう片方の耳へ口撃する。
「ひぅっ……耳ばっかりイジメちゃ……だめぇ♡ 気持ちよくてイッちゃうからぁ♡」
「そんなんでいいのか? 隣には愛しいカイルがいるんだぞ」
「やめてよ。貴方が私を自分の女としたいんなら、前の男を忘れさせるくらいイカセて上書きしなさい。私は確かに体は貴方に堕ちたかもしれないけど、心までは堕ちてないからね。体だけじゃあ、私は堕ちないわよ」
「面白いよ。エルシア、君は最高だよ」
なんでやねん。
「君と君の侍女くらいなものだよ。他の女は体が堕ちたら、すぐに心も堕ちたし、それに俺に迫られてどんな形であれ拒める女はいなかった。本当に俺を飽きさせないよな。だからこそ、手折り甲斐があって面白いよ」
「ふんっ、貴方の嗜好なんてどうでもいいことだ。さっさと思う存分抱けばいいじゃない。それで理性が飛んだ私をカイルの前にいって見せつけてもやればいい。そんな辱めをしたところで私は貴方に堕ちることは有り得ないでしょうけどね」
「エリィなら、毎日犯し続けたら堕ちたがな。少しやり方変えようか」
毎日犯した、とか不穏なものが聞こえたが気にしても今更か。
快楽に染まればその内私は堕ちるかもしれないけど、絶対にあと4日では私は堕ちない。恋人でも何でもないアレックスの女になることはしないし、絶対にならない。
そう決意を新たにしていたら、アレックスに横抱きにされて持ち上げられる。
「なんのつもり?」
「気が変わった。場所は王宮のカイルの部屋でいいか。そこでドロドロに犯してやるよ」
「あっそう。とりあえず運んでくれるのはありがたいわ。せめて、これくらいはしてあげよう」
アレックスの首に腕を回し、抱っこしやすいようにしてあげる。
なんか顔を赤くしているが、胸を押し当てられたくらいで何をそんな童貞みたいな反応してるんだ?
「顔が赤いようですけど」
「慣れてないだけだ」
「ふーん……」
何故嬉しく思ったんだろう。なんですぐにアレックスに情を移してるんだ、私は。そんな節操なしじゃないハズだ。
私はカイルを一途に想ってきたハズだ。カイルをいつの間にか裏切ってて別れを告げたようなものだけど、それでもこのカイルを好きだった気持ちは変わらないハズだ。
私は、私は────―!