※この作品はR-18です。

吠えよクルーゼ   作:GGアライグマ

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注意 キラ・ヤマトのキャラ崩壊、下ネタがあります


第3話

 ルナマリア・ホーク14歳。メイリン・ホーク13歳。赤毛のホーク姉妹は誰がどう見てもな美少女達。追い詰められた仮面の変態に見つかったりしたら、これ幸いにと人質に取られてもおかしくない。

 

「さあ! 船を発進させろ! 人質を無事に返して欲しければな!」

「くっ、卑怯な!」

「お母さぁん! お父さぁん!」

 

 クルーゼは今にも出航しそうな民間船を見つけるや、見送りに来ていた家族に目を付け、この赤毛の姉妹を縄で縛った。その後、MSの左手に少女達を持ち、右手に76mm重突撃機銃を構え、船を明け渡すよう脅したのだが、自分達だけで船を動かすのは難しいので、人質の両親やその友人を残し彼等に動かさせることにしたのだ。

 この間ザフトの襲撃が無かったわけではないが、彼の敵になるような相手は来なかった。そもそもクルーゼが強過ぎるのだが、戦争で優秀な人材が前線に出回っているのも大きな要因だろう。どころか、今回は子供と同じような10代半ばの相手ばかりが追って来て、クルーゼは身をもって知っていたが、ザフトの人材難の深刻さを再確認させられた。

 

 アスラン・ザラは、今日初めて懲戒任務を行ったばかりの15歳。近づく戦場、終わる気配の無い戦争に、不安、緊張は増すばかりで、そのストレスが頭部に表れ始めている。彼も年頃なので、今夜はその頭部を念入りにケアすると決めていた。

 ところが、午後7時頃になって、彼の婚約者であるラクス・クラインの行方が分からなくなったと報告が入ってきた。彼は一瞬婚約者の気まぐれを疑ったが、通信相手の焦燥に安易な決めつけを振り払い、むしろ捜索を買って出た。

 話を聞くに、ラクスはホテルで夕食を済ませた後、「少し動きたい」と言ってホテル内の遊技場へ1人で向かったが、その道中で行方不明になったらしい。遊技場にいた護衛は彼女を見ておらず、そこの監視カメラにも映っていない。彼女に持たせていた携帯電話と発信機はホテル付近の車道に捨てられていた。警察(ザフト)は誘拐事件と見て捜索を始めた。

 アスランは1人で証拠を探して回った。すると、ふと、何故か彼女のファーストライブの会場が怪しい気がして、その移動だけに3時間もかけたが、当然と言うべきか何も見つかりはしなかった。彼は自分の浅慮を後悔した。しかし、そうしていると有力な手がかりを見つけたとの通信が入った。

 彼は一瞬喜び、しかし、その真相を聞くにつれて絶句、最後には怒りのあまり激昂してしまう。それも無理はない。なんと婚約者は誘拐された相手に強姦され、しかもそれをネットにばら撒かれてしまっていたのだから。

 容疑者はラウ・ル・クルーゼ。妙な縁と言うべきか、彼はアスランが属する隊の長であったが、それがアスランの怒りを抑えることはなかった。むしろ『軍人の身でありながら守るべき民間人に手を出した』『ナチュラルがまた自分の大切な物を奪った』『すぐ近くにいたのに悪意に気付けなかった』こと等により、怒りは増すばかりだった。

 日を跨いで午前2時、アスランを最後に、クルーゼ隊改めミゲル隊の面々がナスカ級高速戦闘艦ヴェサリウスに集まった。初任務は、元隊長たるクルーゼの逮捕、及びラクス・クラインの救出だった。

 

 キラ・ヤマトは一流のハッカーだ。ネットでの情報取得には一日の長がある。そんな彼がラクス・クラインのお宝動画流失の情報を見逃すはずがないだろう。彼はその情報を手に入れるや、即そのURLに飛び、ダウンロード保存することに成功していた。

 しかし、そこで彼がまず行うのは、単純な動画視聴などでは無い。本物か偽物かのチェックだ。具体的には静止させながらの首元チェックだ。彼はもちろんアイコラ程度は作れるし、どころかかなり上手なので、審査も厳しい。自分より下手だったら侮蔑の対象だ。

 その彼の調査の結果、怪しい点はどこにも無かった。それでもよく似た顔の別人という可能性は消せないが、それはそれで賞賛に値する。映像の女性は十分に美人だった。

 だが、彼はまだ視聴しない。一流のキラ氏に言わせてみれば、この動画はまだ実用性が足りない。モザイクを消し、男優の声を消し、女優の声をはっきりとさせ、時にはライブラリー的に喘ぎ声を演出することで、やっとホンモノになる。それが天才動画コーディネーターことキラ・ヤマトの芸術性だ。

 

「キャリブレーションを取りつつ、モザイクパターンを解析、及び解除……、チッ!なら別女優の該当箇所を移植!男優の音声データを全削除!ラクス・クラインの音声を補正!別音声から喘ぎ声をライブラリー的に移植!明るさ調整!男優の顔にモザイク!トリミング!結合!動画編集完了!」

 

 トン、と最後にエンターを押し、キラ少年はふうと胸をなで下ろす。額には汗がびっしょりだ。いい仕事だった。

 とその時、不意に玄関のインターホンが鳴る。現在午後11時であり、コロニーは夜に設定されている。こんな時間に客とは珍しい。キラは自室に留まったまま、よく聞こえる耳を澄ませる。

 

「どちら様でしょうか」

 

 母が迎えるようだ。相手は、足音を数えるに3人だろうか?

 

「夜分遅くすいません。ヤマト夫妻のご自宅で間違いありませんでしょうか?」

 

 女性の声で尋ねられる。

 

「ええ、そうですが」

「私共こういうものでして、捜査にご協力を願いたく」

「はあ。何か事件が?」

 

 捜査と言っているので、やって来たのは警察か何かなのだろう。キラは何をしに来たのか気になった。

 

「ええ。実はラクス・クラインというアイドル歌手が攫われてしまいまして」

「えっ!」

 

 母とキラの声が重なる。母も驚いているのだろうが、きっとキラの方が感情の揺れは大きいだろう。つい先ほどのエロ動画を事件と関連付けてしまうからだ。思春期の男子には特に刺激の強い話だ。

 

「まあ、それは、大変ですね」

「長くなります。上がってもよろしいでしょうか?」

「ええ、どうぞ。ご迷惑でなければ」

 

 母の掛け声にやや遅れて、警察らしい女達が家に上がっていく。キラは詳細が知りたくて堪らず、こっそりと話を伺うことにする。忍び足で自室を出て、数人の声が漏れる部屋に近づいていき、そのドアの手元で座る。

 

「見ていただきたいのは、その、男性にはあまりお見せするべきでないものでして」

「うん? ああはい、分かりました。私は別室で待機しておきます」

「すみません」

 

 男性に見せたくないものとは、やはり例の動画だろうか。気になるが、父が部屋を出ようとドアに寄ってくるので、キラはまた忍び足でその場を離れる。もちろんこれで諦めたりはしない。父が別室に入るのを確認し、再びドアに近づく。

 

『その仮面……っ、あなたはラウ・ル・クルーっ』

『大きな声を出すなと言った……! だがまあ、安心しろ。何もお前の命が欲しいわけじゃない』

「これは、ひどいですね……」

 

 やはりあの動画なのだろうか。キラは本番シーン以外は見ていないが、ラクスの焦燥がそれっぽい。

 

「さて、問題はここからです。よくお聞きください」

「はあ」

 

 何が始まるのだろう。キラはゴクリと唾を飲み込む。前座もちゃんと見ておくべきだったと思ったりもする。

 

『俺の秘密を教えてやろう。俺はあの狂人、アル・ダ・フラガのクローンなんだよ! だから生まれつきテロメアが少なく、寿命ももうほとんどない!』

『ふっ、ぐむっ』

「こ、これは……っ!」

 

 母が息を飲むのが聞こえてくる。キラには衝撃的過ぎて逆に現実感が無い。が、それも母の態度で徐々に深刻さを理解していく。

 

『なぜ俺が作られたか分かるか? お前達コーディネーター、つまり遺伝子操作された人間、その最も優秀な個体を作るための、資金源としてだ! そして生まれたキラ・ヤマトは、何も知らずにヘリオポリスでナチュラルの兵器開発に関わっている! この理不尽が分かるか!』

「え? ええっ?」

「と、止めてください!」

 

 キラは急に名前を出され、驚きのあまり声を漏らしてしまった。母が叫んで気付かれなかったが、衝撃は無くならない。なぜ自分が出てくる? 流出と誘拐と強姦の事件では無かったの? それに、最高のコーディネーター? パソコンが得意なだけの自分が?

 

「この件に関して、やはり知っておられると」

 

 ふと、警察らしき女性が尋ねる。母は答えない。

 

「沈黙は肯定と取らせていただきます。もちろん私共も、お子様のプライバシーには十分配慮するつもりです。ですが、現在1人の女の子が暴漢に囚われたままなのです。どんなことでもいいですから、犯人に関わる情報が欲しいのです」

「……全て伝えれば、帰っていただけますか?」

「少なくとも今日のところは、と言っておきます」

「そうですか。すいません、主人を呼ばせていただきます」

「どうぞ」

 

 その後キラの父が部屋に戻り、父と母の口からとあるコロニーであった根の深い事件の説明がなされた。

 キラには本当の親がいて、父は最高のコーディネーターを作ろうとした科学者であり、その資金源としてアル・ダ・フラガの依頼を引き受けた。それはアルのクローンを作るものだったが、テロメアを長くすることができなかった。その後無事キラが産まれるが、幾人もの胎児を犠牲にした実験がブルーコスモスの目に止まり、襲撃を受けて父母共に行方不明になった。キラは叔母夫婦に当たるヤマト夫妻が引き取った。

 

「では、この犯人の行方に心当たりは?」

「ありません。全く知りません」

「そうですか。では、メンデルコロニーの実験を知る他の人物で、存命中の方に誰か心当たりは?」

 

 と、警察らしき女性が尋ねると、母の答えに少し間ができる。が、焦れる程でも無く告げられる。

 

「あり、ません」

 

 母は後ろめたそうな不審な言い方をした。

 

「そうですか。ならば、ひとまず今日のところは以上です。夜分遅くにすいませんでした。捜査にご協力ありがとうございました」

「いえ、お気づかい無く。ご苦労様です」

 

 そして警官達は帰って行った。

 その日、ヤマト夫妻はキラを呼び、今回の件について長く話し合った。秘密は世間に公開されたため、子に隠し続けるのは不可能だと夫妻は判断していた。また、ブルーコスモスに狙われぬように一家揃って改名し、住居もどこかの田舎に移すことに決めた。

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