みんな騙されてるっ!!
朝の電車内。
半年前なら気にも留めなかったろう話題に、高巻杏は人知れず静かに憤慨していた。
口を開けば誰も彼もが、獅堂正義や明智吾郎の話ばかり。
世を騒がせた怪盗団のリーダーが死亡したというのが、思い出したみたいにごくごく稀に紛れ込む程度である。
異常だ。
夢中になって踊っている。
大衆は偽りのヒーローに熱狂していた。
私たちがなんとかしなきゃっ!!
とこのように狂った熱さに対抗するみたいに燃えていた杏の背後に、パーカーを頭からすっぽり被った男が忽然と現れて、バックハグでもするかのように隙間無くぴったり身体を寄り添わせてくる。
え? ち、痴漢?
モデル体型で黙ってさえいれば間違いなく美人の杏ではあるが、これで意外かもしれないがまったく痴漢というのに遭ったことはない。
やや茶色がかった髪は、左右の耳の上で纏めてツインテールにしていた。
可愛いが下手をするとあざとく映る髪型を、ストレートに可愛いと捉えさせている時点で、少女としてのクオリティの高さが窺えてしまう。
スウェーデンからの帰国子女であり、アメリカ系のクォーターである少女は、卑劣な行為に及ぶのにもそれなりの勇気が必要だ。
彼女はか弱い愛玩動物のキャットなどでなく、どこまでも気高くて優雅な野生のパンサーである。
憐れな獲物ではない。
汚いハイエナがしなやかな肢体に馴れ馴れしく触れようものなら、その牙や爪の鋭さを身を持って知ることになるであろう。
大胆すぎるアプローチに初めこそ戸惑った杏ではあったが、しかしこのままいつまでも抱きつかせてやるほど安くない。
肘鉄を食らわせるのも良し、踵で甲を踏み抜くのも良し、さあさあどっちにしてやろうか。
などと物騒な二択をしていた杏だったが、
あれ?
微かにふんわりコーヒーの香りがしていることに気づいた。
嫌いではないが苦手。
得意ではないが好き。
最近はミルクなしでもチョットだけ、まだほんとうにチョットだけだが、ある人物の煎れてくれたものなら我慢して飲めるときもある。
年季の入った腕前を持っているルブランのマスターにはゴメンなさい。
本当に申し訳ない。
でもたぶん彼の煎れてくれたコーヒーの方が、ブラックを飲んだときより美味しいと感じれそうだった。
杏の肩口からひょっこり顔を出したのは、ここにいるのを想像もしていなかった予想通りの人物。
なんせ死んでいるはずだからだ。
本来なら反撃のそのときまで、息を殺しアジトでジッとしているはずの人物。
「れ、蓮っ!?」
怪盗団のリーダーであるジョーカーこと雨宮蓮だった。
眼鏡の奥にある瞳が不敵に光っている。
ドキッとした。
……もしくはギクッと。
日常であれば眠たそうな印象があり、クセのある天然パーマの髪型も相まって、普段はあまり覇気だったりを感じさせない。
けれどやるときはやる頼れる男だというのを、怪盗団のメンバーであれば、疑うことのない全会一致で認知している。
単独行動のようだ。
しゃべる黒猫がどこにもいない。
いつもならモルガナを潜ませたバッグを背負っているが、ぱっと見たところどうやら今日は手ぶらみたいである。
そのフリーになっている手が壊れ物を扱うように、杏のグラマラスなボディをまさぐり始めていた。
お察しの通りでふたりの関係は仲間という以上に発展しているが、この数ヶ月はなんやかんやゴタゴタしていてイマイチ停滞している。
交際をスタートさせたのがフタバ・パレス攻略終了後の海水浴からで、修学旅行という一大イベントを挟んでの進捗具合はなかなかだったものの、そこからのオクムラ・パレスやニイジマ・パレスまでの流れは怒涛で、のんびり恋人ムードを楽しんでいるような余裕はなかった。
「ど、どうしたの? っていうか出歩いててだいじょうぶなの?」
声を上ずらせドモりキョドっている杏に、蓮は間髪入れず落ち着き払って頷いてみせる。
シドウ・パレス攻略を目指してのミッションは、すでにオタカラを奪うタイミングを窺っている段階だった。
これといって獅堂からも明智からもアプローチはない。
あちらがこちらを完全に舐め切っているのもあって、リーダーを失った怪盗団の残党勢力をとくに警戒している様子はみられなかった。
嵐の前のエアポケット。
これまでで最も困難であろうミッションを控え、昂ぶりを抑えることはできなかったみたいだ。
トリックスターと称されるジョーカーも、その前にお年頃の高校二年生思春期男子である。
発情期である。
草食系っぽいがその本性はバリバリの肉食系で、良い意味に置いても悪い意味に置いてもポジティブでアクティブだ。
怪盗を開店休業中の蓮はどうやらこの隙に、喫茶店の屋根裏で暇だったのもあり、恋人としてのランクアップのアクションを起こしたらしい。
とはいえさすがに逃げも隠れもせず、どこかに大っぴらに遊びに行くというチョイスは、結構なイケイケのジョーカーも避けたようだった。
「あの、それで、な、ナニしてるのかな?」
だが怪盗団のリーダーなんぞをやっているだけあって、恋人との逢瀬にもそれなりのスリリングさを欲しているらしい。
そしてそれは程度の差こそあれ、メンバー全員に存在している。
でなければ怪盗団はできない。
ペルソナ。
それは反逆の意志。
といった理由はほぼほぼ後付でしかないが、辻褄は合わなくとも帳尻を合わせるのが怪盗だ。
「え、れ、蓮? ちょ、ちょ、ちょ、チョットっ!? 待って待って、こ、こんなとこで、や、ヤバいって、いくらなんでもヤバいってばっ!!」
あくまで花も恥らう乙女としての形式である。
慌てふためきつつ抗議する杏にしても、これといって抵抗らしい抵抗はしてなかった。
いくら相手が恋人とはいえ、衆人環視の中での痴漢プレイ。
それこそ痴女でもなければ到底、受け入れるようなことはしないであろう。
しかしふたりはこれまで数々のパレスを攻略してきた怪盗団であり、襲い掛かってくる数多のシャドウの索敵を掻い潜ってきていた。
安全地帯であるセーフルームの感覚を応用して、認知の希薄な部分に溶け込むのはお手のものである。
プラス使ってみるものだ。
気配消臭剤と存在消臭剤の効果が現実世界でも発揮されている。
そもそも人間は人間を然程見てないし、電車内ともなればスマホの画面に目を落としている者がほとんどだ。
杏のヴィジュアルに対し向けられていた視線も、関心が失せたかのように唐突になくなっている。
車内という小さメメントスの警戒レベルが、0パーセントになった瞬間を見計らうと、
「あンッ!?」
ワイルドに杏の身体を押して、窓に手を突かせると前屈みにさせた。
満員状態のはずなのに不自然なほど自然に、恋人たちのためのオープンスペースができている。
蓮は杏の腋の下から両手を差し入れ、制服の胸元を持ち上げている双球を鷲づかみにした。
たっぷりとした巨乳を揉みしだく。
間には制服もあればブラジャーもあって邪魔しており、乳房の柔らかさを十全には発揮できていないかもしれない。
それでもその感触と手のひらに収まり切らない大きさは、やりたい盛りの少年を興奮させるのに十二分だった。
蓮の表情からそれを読み取ることはできない。
でもノープロブレム。
劣情で張ち切れんばかりになっている自分の股間の隆起を、肉づきのいいヒップにグリグリと押しつけることで伝えていた。
「れ、蓮……」
言葉はいらない。
これ以上はない露骨な欲情の証だった。
芯に骨が通っているのではと認知を変えそうな強張りの硬さと、鼻孔から漏れる息の熱さが体内で渦巻く性欲の激しさを物語っている。
抱擁されながら杏の身体はグリグリされているお尻を基点に、ダンスでもするみたいに右に左にゆらゆら妖しく小刻みに揺れていた。
淫らなチークである。
青く若いふたりの興奮のユニゾンはパーフェクトだ。
「あ……」
なので蓮の手が乳房から離れると、杏の口からは未練がましい声が漏れてしまう。
振り向いた顔は拗ねているみたいで、泣くのを我慢しているみたいで、抱き締めずにはいられないくらい可愛かった。
もちろん蓮がそんな薄情な真似をするわけもなく、放ったらかしなんて勿体無い真似をするわけもない。
狙ったオタカラは必ず頂戴する。
シニカル。
いまにも涙を零しそうな、潤んだ瞳の恋人にニヤリと微笑んだ。
杏の着ているパーカーの裾を掴み少しずつ、焦らすみたいにしてゆっくりと捲くっていく。
腰もくびれてた。
本気でモデルを志し始めた筋トレの影響なのか、ハワイで見たビキニのときよりも引き締まった腹部が覗き、フリルの付いたかわいらしいピンクのブラジャーまで電車内でさらされてしまう。
北欧の血脈のおかげなのかカップに収まり切らない柔肉は雪のように白い。
魅惑的な深い谷間からは、香水と甘い体臭が仄かに漂ってくる。
ジョーカーのセキュリティ解除の方法は蹴り一発など、乱暴なものも多いが超魔術のような精密動作もお手のもの。
ワンタッチ。
探り当てたホックを恐ろしく器用な指先で、衣服の上から撫でるようにしただけで外してしまう。
日々サイズの合わなくなる窮屈な下着の戒めから解放されたふくらみが、たわわに育った旬の果実のようにゆさりと重たげに揺れた。
刹那の躊躇すらすることもなく、即座にぷるんっとセクシーなブラを引き下げる。
「ンッ!?」
どうやら布地がデリケートなパーツを擦ったらしく、電気でも走ったみたいに杏がぴくんっと身体を震わせた。
肌の白さに映える儚いほど淡い桜色をしている乳首は、蓮のバキバキのペニスに負けないくらいぴんぴんに勃起している。
蓮の手がぷるぷる揺れている柔肉にダイレクトに触れた。
美乳をねっとり揉みしだく。
いっぱいに開いた手のひらで下からすくい上げるようにしながら、恋人のマシュマロのようなやわらかさを貪欲に堪能していた。
そのタッチはまるで卵の殻を割るみたいに繊細。
強くもなく弱くもなく緩急を織り交ぜて、杏のふくらみは形状を落ち着きなく変えている。
「ん……ゥ……んンッ……、ハァ……ああッ……あッ……、クゥ……はぁんッ……」
息が弾んでいた。
艶っぽい。
小さめの乳輪が指先で円を描くようにくるくる撫でられている。
ルートを確保するみたいにしつこく諦めず、大胆に慎重に飽きることなく蓮はくすぐり続けた。
早く……早く……早く触ってよっ!!
心の中で叫んでみるが、これでジョーカーは意地が悪い。
徹底的にやる男だ。
ガラスに映る杏の切なそうな顔を見つめながら、これから奪い去る身体への嗜虐欲を昂ぶらせている。
一足飛びにはいかない。
何事にも攻略にはステップがあることを、怪盗としてパレスをクリアすることで蓮は学んでいた。
悩ましげに身体を震わせている恋人の、認知を変える必要があると判断したらしい。
「あ……」
憂いを帯びた吐息が漏れる。
ボリューム満点のミルクプリンのような乳房から、興味をなくしたみたいにあっさり蓮の手が離れていった。
たったそれだけのことで杏の胸には、親とはぐれ迷子になったような心細さ、雨の日に捨てられた仔猫のような悲しみが生まれる。
しかしそれは無論、杞憂というやつだった。
「……ぁ……はぁ……あッ……」
蓮は将来の育メンぶりを確信させるかのように、命に対しての無責任を許さないかのように、杏の身体にまだ眠っている性感を揺り起こしていく。
ジョーカーはオブジェクトのアイテムを残らず回収していくタイプらしい。
サードアイ発動。
恋人の身体のいたるところがほんのり、怪盗団のリーダーの眼には光って視えていた。
指先を蠢かしてまるでシルクのような肌触りを愉しみながら、くびれたウエストからうっすらと浮いている肋骨まで丁寧に撫であげる。
まさに羽毛のようなフェザータッチ。
「んふぅ!?」
こそばゆくも甘い感覚に杏の神経はぞくぞくと毛羽立った。
発展途上の未熟な性感を蕩かす絶妙な摩擦で、さざ波のように走った喜悦に瞬く間に身体が支配される。
ただそれはトロ火で炙られるかのような、もどかしさばかりが募る感覚で、期待しているような感覚をけっして得られない。
叶わない。
杏はジョーカーによってそのことをすっかりたっぷり、モルガナによる怪盗の心得以上に身体に覚え込まされていた。
「はぁはぁ……ン……あッ……」
いつの間にか下半身にまで範囲を拡張させた手が、内腿を撫でるとスライドして戻ってくるをくり返している。
毎度のことだ。
望まれていることは杏だってわかっている。
……望んでいることも。
「さ、触って、んッ、んンッ、ゥ、ち、ちゃんと、あッ、あッ、あッ、も、もっと、もっとギュって、んぅううッ、さ、触ってぇ……ッ」
なんかそれこそ毎度毎度のことだけど、調教されてるっていうか負けたみたいで悔しいかも。
とそんなことも思ったりしたが、湧きあがってくる欲求をとても抑えられない。
「アアンッ、か、硬くなって、ぴんぴんの乳首摘んで、あ、アソコもクチュクチュして、お、お願いだから、く、クチュクチュしてよ」
またこうやって恥ずかしいお願いをさせられた。
恋人とはいえ屈辱である。
けれどこの恥辱の代価はいつだって、杏の期待を裏切らず格別なものだった。
「はぁんッ」
おねだりさせたことで牡の征服感が刺激されたのか、ヒップの谷間にフィットしていたペニスがびくんびくん脈打つ。
チュッ。
「ひゃンッ!?」
合図するように首筋にキスすると、蓮は恋人のお望み通り充血している乳首を優しく摘んだ。
クニクニして苛める。
あるいはしごくようにしながら、愛情をトッピングして勃起している乳首を嬲った。
「ひッ……あッ……あひッ!!」
だけではない。
狩猟本能のままスカートの中に手を忍び込ませ、どころか美脚を彩る赤いタイツの中にまで忍び込ませた。
ようやくである。
蓮の手はやっと恋人の秘められた部位に触れてくれた。
最後の砦。
ショーツに守られたデルタ地帯をそっと撫でる。
夢うつつの状態でベルベットルームに、あの牢獄に招かれるときほどでないにしてもだ。
時間の感覚は人それぞれバラバラで、長いのか短いのかにはかなりの個人差があった。
なので杏としてはハレンチだとかどうだとか非難される謂れはない。
なかなかの時間を堪えたはずだ。
バカバカっ!! これはぜ~んぶ蓮のせいなんだからねっ!!
などと言葉にしてみても説得力は皆無であり、虚しいだけでなく恥を上塗りするだけなので、杏は心中での自己弁護に留める。
ねっとりした粘液を布地に染み込ませて、ショーツが水分を含んだスポンジみたいになってるので、なるほどナイスジャッジをしたみたいだった。
パソコンのマウスのように、手のひらに馴染む恥丘の曲面を擦りながら、秘裂に宛がった中指を喰い込ませる。
濡れそぼり水分を吸って重くなったショーツ越しに、粘液が蓮の指に絡みついてきた。
「ンッ、ンッ、ンッ」
からかうみたいにクックッと押されるたびに、すっかりエロくされてしまったソコは潤滑油を絶えず分泌してしまう。
怪盗をする際のパレスでの経験が活かされているかどうかは定かでない。
ショーツの脇からぬるりと侵入された。
下腹部からじんわり身体全体へと拡散していく肉の愉悦に、恋人の指戯に過剰なほど敏感にされた花弁はもう気持ちいくらい浅ましい。
いや、素直と表現してあげるべきなのだろうか。
ヴァージンみたいに狭くキツい膣口なのに、中指を歓迎するように粘膜の奥にすんなり受け入れている。
ぬかるんだ秘裂を掻きまわされると、すぐにチュクチュクと卑猥な音がショーツの中でした。
「ん……ンッ……ふぅ……、あッ……ああッ……、んァアアッ……」
頬をピンクに染めている杏の吐息が、羞恥とともにまた一段階ランクアップする。
脚がガクガクしていた。
待ち望んでいた即物的でダイレクトな刺激に腰をくねらせる。
恋人に支えられていなければ、このまま車内で崩れ落ちていたかもしれない。
もっとも恋人がいなければ、車内で支えてもらう必要もないのだが。
「はぁぁッ……ぁ……くンンッ……あッ……ひッ、んァ……あッ、あッ、あッ、ああああッ!!」
なんにせよ蓮の蠢く中指に杏の膣内粘膜が纏わりつき、奏でられる淫らな粘着音のボリュームもどんどん上がってきてる。
同じくらいふたりのボルテージも上がってきている。
容易。
このままイカせることもできた。
「あぁン……」
しかしクール。
でありながらジョーカーはホットな男だ。
恋人を味わうのに余念がない。
またしてもイイトコロで肩透かしされた杏が切なそうな声と、泣きそうな顔で振り返るが視線の先に蓮はいなかった。
蓮は杏の身体から離れると乳房と恥丘の感触がまだ残っている手で、スカートを捲り間髪入れずショーツごとタイツをペロリと引き下ろした。
大きくもなければ小さくもない形のいいヒップが、電車内の蛍光灯の光を浴びて露わにされる。
細部のディティールまで、くっきり鮮明にアナライズされていた。
キレイにカットされているやや茶色がかった恥毛は、べったり肌に張り付いてフォルムを浮かしている。
誘うようにひくついている媚粘膜だけでなく、慎ましやかなお尻の穴までさらされていた。
長い脚の間から覗けば、重たげな乳房までワンフレームで視界に捉えられる。
これぞ絶景の素晴らしい眺めだった。
拝ませる気は蓮にも杏にも微塵もないが、怪盗であるだけでなく芸術家でもある喜多川裕介なら、感動に身を打ち震わせることだろう。
その機会はどうやっても永遠に訪れことはなく、フォックスのアーティスト魂が残念ながら、このシチュエーションで満たされることはなかった。
そしてジョーカーが拝むだけで満足することもない。
跪き屈み込む。
篭っていたおかげで熟成された汗と分泌液の匂いを、胸いっぱいに吸い込みながら襲い掛かる獣みたいにむしゃぶりついた。
「あひィ!?」
物陰に隠れ死角から不意打ちされたシャドウの気持ちとは、もしかしたらこんな感じなのかもしれない。
鮮烈な衝撃に杏は色に歪んだ美しい貌を、柔らかな乳房ともども窓ガラスに押しつけた。
このままアンという絵にして、是非とも額縁に飾ってしまいたい。
けれどまずは味だ。
れろんッ。
蓮の舌が潤みぬかるんだ粘膜を、アイスの蓋に付いたクリームみたいに舐める。
口内に恋人の濃厚な愛液の味が広がった。
中毒性のある危険な甘さを息継ぎもせずに舐め続けると、マナーもへったくれもない子どもみたいに口の周りがベトベトになる。
少し双葉っぽい。
「ひッ……あッ……はひッ!!」
雷にでも打たれたみたいに身悶えさせながら、杏が可愛さをランクMAXにさせた声で喘ぐ。
尖らせた舌が抉るようにして、濡れ光る粘膜の奥に深く突き挿された。
軟体動物みたいにねっとりとした異物の侵入により、杏の背が寝起きの猫みたいに大きく仰け反る。
乳房が妖しく揺れた。
じゅちゅッ・ちゅるるッ・じゅッ・じゅるるッ……。
蓮は粘膜の狭間で舌を蠢かせながら、下品な音を立てて愛液を啜りあげる。
喉をごくごく鳴らして飲んでいた。
自動販売機でこの味が売っていたのなら、十万円の岩塩どころじゃなくボッタくられても買うかもしれない。
どころか適正価格として、この味を買い占めるだろう。
ふぅ~。
しばらくしてさすがに蓮も呼吸が苦しくなってきたようで、ひと仕事終えたみたいに深い息を吐いて秘裂から口を離す。
手の甲でベトベトを拭った。
あくまでクールダウンするためではなく、さらにヒートアップするためのインターバル。
ハァハァハァハァ……。
ショーツとタイツを太腿に中途半端に引っ掛けたまま、荒い呼吸をくり返している杏にもいったん休憩が必要だ。
とはいえ高校二年生思春期女子の痴態を前にして、高校二年生思春期男子の我慢はそうは長く続かない。
ワガママ。
焦らすのは好きだが、焦らされるのは嫌いだ。
ヒップを高く掲げたまま蕩けている杏を尻目に、蓮はその背後で悠々とチャックを下ろし、準備万端でチャージされた猛るペニスを取り出す。
怪盗団の女性陣不人気NO.1のシャドウの座は、ちぎれた煩悩大王ともう一体が不動のツートップだった。
そのもう一体。
凶悪な形状をしたマーラがそこにいた。
己の力を誇示するみたいに力強く、天を衝くかのようにそそり立っている。
その物静かな雰囲気とスリムな身体からは想像できないほど、蓮の劣情に滾った勃起はワイルドであり雄々しく逞しかった。
うぶな処女であれば悲鳴を上げてしまいそうなシロモノだ。
杏も初見ではそうだった。
蓮はポケットを探る。
治験済み。
二人三脚の自慢の逸品。
完成までのシミュレーションは数え切れない。
蓮のためだけのオリジナル。
強度やサイズや薄さなどを院長が直々に綿密に測り、常に携帯している武見内科医院製のコンドームを装着した。
牡の欲望を臨界まで充填された勃起の根元に手を添えて、湯気を立てそうなほど火照った粘膜の奥に狙いを定める。
トロリと愛液の雫が垂れてきた。
ゆっくり扇情的に内腿を滴り落ちていきながら、拘束具のように絡まるショーツやタイツに染み込んでいく。
蓮は唾を呑んだ。
これで誘われていると感じないような牡はこの世に存在しないし、これで誘われていないと感じているようなら牡ではないだろう。
失格だ。
自分の惚れた牝にあんまり恥を掻かせるものではない。
秘裂に勃起の先端を宛がう。
ぬちゅ……。
霧のような白いまどろみに意識を彷徨わせていた杏は、膣口の捉えた圧倒的な圧迫にハッとなって閉じていた目を見開いた。
直面している状況を理解するよりも早く、蓮のペニスが勢いよく一気に押し入ってくる。
「んぁッ!?」
背後からの鋭いナイフみたいな勃起の突き込みに、折角戻ってきた意識がまたしても飛びかけた。
ガクンッと前のめりに崩れそうになる。
「あッ、あッ、あッ、ま、待って、ああンッ、ま、待って、ふぁッ、あッ、あッ、あッ、ま、は、激し、んくぅああ……ッ」
だがそれは許されない。
蓮は盛り発情した獣が交尾でもするみたいに覆い被さり、抱き締めることで床に這い蹲ることを赦さなかった。
乳房が乱暴に揉みくちゃにされ、潤みっぱなしの粘膜が掻きまわされる。
表情では読み取りづらいが蓮も興奮の極みであり、技巧や優しさよりも荒々しい激しさが際立っていた。
落ち着き払っていてもそこは思春期男子で、コーナーを投げ分けるよりど真ん中のストレート、やはりテクニックよりパワーの年頃である。
様子見のアイドリングはない。
「ひィイイッ!!」
そして蓮ひとりの勃起を迎え入れ型取りされた粘膜は、いきなりのトップスピードに対しても溢れんばかりの歓喜で応えていた。
ブレーキを踏むのを微塵も考えてないアクセル全開のピストン。
一歩間違えてしまえばバイオレンスの領域である。
けっして間違えてはいけない大きな一歩。
レイプにならないのは愛あればこその、愛があるから悦楽を感じる危険な突き込みだった。
いや、起こった事象だけを冷静に観測するなら、蓮のしている行為はレイプとなんら変わらないのかもしれない。
それが独りよがりなら。
○○ハラスメント全般もそうだが、それがそうであるかそうでないかは、詰まるところ受け取る側の認知次第である。
「あッ、あッ、んあッ、あッ、んンッ、あッ、ああああッ……」
ふたりよがりであればレイプにはならない。
ご都合主義もいいところだが、それは蓮と杏の共通の認知だった。
「蓮、れ、蓮、す、スゴイ、あッ、蓮、蓮、スゴイ、あひッ、ひッ、ひッ、ひッ、す、スゴイよ、れ、蓮ぇんんんんッ!!」
愛で犯す。
掘削機のようにパワフルではあるが、岩盤を壊したりしないような配慮があった。
これもその一環。
粘膜を勃起で責めつつ乳房や――ルビーのような肉の蕾にも、嬲り虐めはしても壊したりはしない。
繊細に力ずくで奪う。
デリケートでナイーブな快楽神経の塊を、指先で転がし玩弄し続けながら、尖りしこった乳首をクニクニするのも忘れない。
べつの生き物のようだ。
腰は憐れな獲物を貪る飢えた獣、でなくケダモノの動きをしているのに、手指は一流の医師がするオペのように精密なミッションを行っている。
蓮は手触り指触りだけを頼りにして、そ~っとそ~っと傷つけないようにそ~っと、杏の包茎気味の陰核を剥きあげるのに成功した。
「ひぅッ!?」
杭のような太い勃起をぐっぷり咥えたまま、未熟なクリトリスが車内の外気にさらされる。
そしてついに蓮の指先が過剰に敏感な宝石にチョンッと、オーバーキルな甘い毒の悦びを杏の身体に付与していた。
脳の処理がとても追いつかない強烈で鮮烈な感覚に、無様にも金魚のように口をパクパクさせてしまう。
凶暴な痺れと疼きが杏の内部で、常軌を逸してメチャクチャに駆け巡る。
「もう、んあぁぁぁぁッ、あッ、ああッ、だ、ダメッ、こ、このまま、じゃ、お、おかしくなちゃうッ、ば、バカになっちゃうッ!!」
マズい。
英語まで赤点になってしまう。
甘受すべき悦楽のファーストチョイスはどれなのか。
それは勃起を咥え込んだ粘膜なのか、揉みしだかれる乳房なのか、それとも摘まれている乳首なのか、もしくは玩弄されるクリトリスなのか、
「あひぃぃぃぃッ!?」
ヨダレを垂らし喘ぐ杏にはどこに意識を集中すべきなのか、纏まろうとするたびに千々に乱れてもうわけがわからない。
血管の浮いた勃起で最奥まで貫かれると、先端が口から出そうな錯覚に囚われる。
串刺しが認知になりそうで怖い。
「突いて、もっと強く、……もっと……壊れてもいいから、もっとオ○○コの奥まで、グチャグチャにしてぇ!!」
鋭角に張り出した雁首のギリギリまでシャフトが後退すると、それに引きずられてシェルピンクの粘膜がスリットの外にまではみ出す。
内圧の下がった媚粘膜が亀頭を強く吸って、ぷりぷりした襞が妖しく蠢き纏わりついていた。
折り返してきた勃起がふたたび穿つみたいに突き進むと、ぷにょぷにょした大陰唇まで巻き込みながらぐぶりと秘裂を突き挿す。
じゅむッ・じゅむッ・じゅむッ……。
煽られるように蓮の腰の動きもさらに性急で切羽詰ったみたいな、それでいてより洗練され計算され尽くしたようなものになっていった。
的確に恋人の弱点を抉りダウンさせていく。
ここにキテいよいよジョーカーは、トドメとばかり総攻撃に踏み切った。
ラストスパート。
「あッ、あッ、スゴい。ち、チンポが、チンポが奥に当たってるぅううううッ!!」
卑語連発。
とりあえず国語は次のテストも赤点だ。
語彙力がない。
タイミングを合わせるみたいにパンサーの膣も収縮し、媚粘膜でしっかりと咥え込んだ勃起を締め上げた。
ウチら最強じゃない!!
そんな決めセリフも決めポーズもしている余裕は、もちろん杏にあるわけもないが、気持ちとしてはあながち間違ったものでないかもしれない。
蓮が最後のショットを叩き込む。
恋人の子宮に深々とめり込んでいた亀頭が弾け、秘裂の奥にスペルマのランダムファイアがエレクトリックに放たれた。
ぶびゅッ・ぶぴゅッ・びゅッ・びゅくんッ……!!
「そんな……そんなにいっぱい……いっぱ、い……んゥッ……あッ……んふぁッ……いッ、いっぱッ、いっぱ、出てる……出てるよぉおおッ!!」
交渉の余地すらなく、ホールドアップさえさせない銃撃の雨あられ。
スペルマの弾丸を撃ち出すのに合わせ、反動で何度も何度も勃起がしゃくり上げる。
その衝撃はゴムを突き破りそうな激しいものだった。
もしゴムがなければ百発百中とまでいかなくとも、どれか一発は必中するだろう夥しい量が膣内で炸裂している。
市場で流通販売どころか、学会にも発表すらできないのが惜しまれる高品質。
武見先生に感謝である。
「……あ……あ……、ああ……」
ダイレクトに浴びせられることこそはないが、熱さはそのままダイレクトに杏は感じられた。
――そして認知していた。
これアッチのセカイでセックスなんてしちゃったら、ゴム付けててもゼッタイに赤ちゃんできちゃう……。
パチパチと脳裏に火花を散らせながら、
「ああああッ!!」
この淫らなショータイムのフィナーレを杏の絶叫が飾った。
草葉、
「ア、アン殿ぉ~」
ではなく座席の蔭で黒猫が人知れず、男泣きしていたのにも気づかずに。