接見室のガラス越しに雨宮蓮は不敵な笑みを返す。
変わりのない様子にホッとした。
「ひさしぶり」
柔らかい笑みで冴も応える。
やり手キャリア検察官の新島冴しか知らない人には、それは想像すらできない無警戒で無防備な笑みだった。
ずっと一緒に住んでいる妹でさえ忘れかけていたスマイル。
もう無邪気ではないが打算のないものだ。
ときには相手を気後れさせてしまう怜悧で理知的な美貌の持ち主だが、切れ長の目尻を細めて笑うとどことなく子供っぽくすらある。
掻きあげる仕草に色気を纏わせるややウェーブのかかった髪型や、洒落ているがカッチリしたパンツスーツも五十一日前ととくに変わってない。
これといってヴィジュアルに変化はなかった。
「嬉しいニュースを持ってきたの」
ならば内面しかない。
ガラス一枚を隔てて蓮に微笑む冴の、美しさに磨きがかかっているのは……。
その切欠となったのは間違いなく去年の十一月十九日、嫉妬の賭場が閉鎖されパレスが崩壊したときだ。
しかしそれが色気というカタチでランクアップしたのは、解放されたのは十二月二十四日のクリスマスイブの夜である。
「今日で釈放よ」
晴れて自由の身になる蓮のことを、裏無し含みなしの笑顔で冴は我がことのように喜んでいた。
無実の証明のためにここまで多大な尽力をしたのだろう。
それはもちろん冴だけの力ではなかったが、裁判に勝利し蓮を救うことができたのに、冴が矢面の最前線に立って戦い続けたのは疑いない。
自分の出世よりも若者の未来を守れた充実感に、誰かの為の正義に気づいた冴は、これまでにない喜びを感じているようだった。
「じゃあ、手続してくる。……あ、最後にもうひとつだけいい?」
ただ冴の美しさの部分はともかく色気というのを説明するのに、ジャスティスだけではイマイチ腑に落ちないだろう。
一連の事件が片付いたら検事を辞めて、弁護士になろうと志したクールな美女の、纏っている雰囲気がここにキテまたガラリと変わっていた。
瞳が潤んでいる。
熱っぽく妖しい輝きを帯びていた。
メイクでは隠せないくらい頬が赤くなっている。
見るからに緊張もしていた。
これから恋心を告白しようとするうぶな乙女のように眩しく微笑ましい。
少女時代に戻ったようにモジモジしている冴の記憶は、カメラのコマ割りみたいにカタカタ過去へ飛んでいた。
……。
……。
……。
彼は世界を救った英雄だ。
望みさえすれが華やかな人生を謳歌していいだけの資格がある。
それができないというのならば心穏やかな日々を、せめて大人は感謝の言葉とともに約束せねばならない。
「ありがとう」
……少なくともこうして出頭を要請するなど、恥知らずもいいところの唾棄すべき行為だ。
冴の後ろを静かに黙って歩いている少年、蓮は傷害事件の前科者であるが、それだって濡れ衣の冤罪なのはわかり切っている。
だというのにまだ鞭を打とうというのだ。
身勝手な大人の都合でこれだけ振り回しているのだから、いいかげんこの少年にちょっとぐらい飴があってもいい。
報酬があってもいい。
リスクにはリターンは当然であり、取り引きというのはそういうものである。
犯人。
その出頭前夜。
蓮という少年に対してそうした扱いをしたくはないが、残念なことに現在の置かれている状況は酷似している。
そしてなにより同じ男であれば、こうしたとき覚悟を決めるために望むものが、似通ってしまうのもまた必然であろう。
これから戦地に赴かんとする軍人などもそうだ。
善悪や好き嫌いを脇に置けば、犠牲を伴う行為は踏ん切りをつけるための、やはりなにかしらの儀式めいたものが必要になる。
執り行うのに生贄が必要だ。
拒否できるような資格も、厚顔無恥さも冴は持ってない。
ただ意外だったのはてっきり、付き合っているコがいるのかと思っていたが、そういう関係の女のコはいないらしいということだ。
夜の渋谷の街。
白い雪がハラハラ舞い落ちている。
これだけシチュエーションの御膳立てされたロマンチックなクリスマスイブだ。
急な誘いであっても、恋人であればキャンセルする理由はない。
百パーセントの確率でされることもないだろう。
……モテるでしょうに。
冴は蓮という少年をかなり理解しているという自信がある。
共有した時間こそ微々たるものであるが、密度となればこれほど濃い関係の相手もそうそういない。
きっといい男になる。
怪盗団の仲間のコにでも声を掛ければ、すぐさまカップルが成立しそうなものだが、とりあえず妹のクリスマスに今年も浮いた話はなさそうだ。
もっとも姉は姉でその手の話とは、とんとご無沙汰ではあるのだが。
何年ぶりになるのかしら……。
世間のイベントと仕事のスケジュールが重なれば、ここ数年は迷いなく後者を選んできた。
いや、考えてみれば学生の頃からあまり、刑事だった父も仕事を優先させることが多く、その影響かそういったことに左右された記憶がない。
父を亡くしてからは逃げ込むように、目的と手段がすり替わったのにも気づかぬまま、ひたすら仕事に没頭し打ち込んできた。
噂には聞いていたがさすがはイブである。
どこも満室だ。
空いているホテルを探しながら、街を彷徨うなど冴には初めての経験だった。
もともと蓮は口数が少ない。
冴も尋問だったり交渉だったりの、技術としての会話には長けているが、プライベートではそれほど饒舌ではない。
だんだん緊張してきた。
ってやれやれね。
まったく妹よりも年下の高校生の男のコを相手に、いい歳した社会人がいったいナニを意識してるんだか。
蓮は童貞ではないかもしれないがそれはそれ、年上としてここは自分がリードしなくてはならない。
男というのはあれでけっこう、デリケートでナイーブな生き物である。
ほんの些細なことでアレが機能しなくなるというのを、数年前にほんの些細なことで別れてしまった男から冴は学んでいた。
リラックスせねばできるものもできないし、できなければキズを抱えて入所することになる。
ましてや蓮を童貞だと仮定するのなら、ここは大人の女として気遣いしてやるべきだ。
まずは軽妙でウイットなトークが必要だろう。
でも高校二年生男子を、この場面で和ませる話題って……。
そうやってクールぶりながら冴が混乱していると、
ポンッ。
不意に肩を叩かれて心臓が跳ねる。
「ど、どうしたの?」
蓮は無言でレトロというか昭和のニオイがプンプンする如何にもラブホテルな、白河という看板に表示されている空室を指さしていた。
ひとつ頷くと歩きだす。
後ろを付いて来るのを疑う素振りもない。
ホテルに入っていく。
「ちょ!?」
慌てて追いかけてきた冴を尻目にモタつくこともなく、部屋選びを済ませチェックインを完了させていた。
手を握られる。
またしても心臓がドキッとした。
けれど今度はさっきのような、不意を打たれた驚きだけが原因ではない。
ではなにかと問われると即座に答えは出なかったものの、とにかく経験はあるが懐かしさすらある感覚に冴はドキッとした。
そしてその鼓動はすぐにドキドキに変化して激しさと、心臓にかける負荷をランクアップさせていく。
部屋まではそれほどの距離があったわけではない。
繋がれた手が少しだけ、ぬるっとしている。
もう小憎らしいくらいに落ち着いている彼のものではない。
これまでそれなりに修羅場をくぐってきている。
政治家。
暴力団。
マフィア。
etcetc。
あの手この手で凄み脅しをかけてくる卑劣な被疑者と、尋問室という閉鎖空間で一対一の対決をしたのは一度や二度ではない。
そのすべてに勝利を収めた自信がある。
プレッシャーを制してきた。
……なのに高校生の男のコに手を握られて、汗を掻いている自分に冴はひどくプライドを傷つけられていた。
そしてそれがけっして不快ではないことに気づき、また新鮮な驚きでハートをバウンドさせていると、目的のドアの前に辿り着いたみたいで蓮の脚がぴたりと停まる。
カードキーが翳されて小さく軽快な音とともにロックが解除された。
こくっ。
無意識に唾を呑んでしまったことに冴が赤面するのを、蓮は気づいてないふりをしつつ微笑を浮かべて部屋に踏み込む。
未練などまるでないみたいに、握っていた手をパッと離した。
「あ……」
思わず声が漏れてしまったことに、赤くなっていた冴の肌の色がさらに赤く上書きされる。
部屋はやたらムーディな間接照明で薄暗かったが、ハウス・オブ・ダークネスを突破したジョーカーにとっては、霧の中でメガネをかけるよりもクリアーな視界が確保されていた。
紅く染まる美女を捉えるなど造作もない。
これまた如何にも回転しそうなキングサイズのベッドから、ん? え? と二度見したあとで背けるようにして視線を外したのも。
造作もない。
冴もこうしたホテルに検察官という仕事柄、足を踏み入れたことは何度もある。
とはいえそれはあくまで捜査の一環として行う実況見分のためであり、プライベートで利用したことはこれまで一度もなかった。
けっして安らかな睡眠を摂るのが目的ではない寝具の、無視できない存在感というか生々しさに圧倒されてしまう。
冷静ではいられない。
くしゅんッ。
雪のちらつく街を歩けば普通の生理現象で、ミスというにはあまりに酷ではあるが、キャラクターに合わない妙に可愛いくしゃみをしてしまう。
冴の羞恥心は蓮といるだけで、毎秒で最高値を更新していた。
寒いのか暑いのかもよくわからなくなってくる。
自律神経や交感神経が働いてない。
頭がくるくるする。
そういったわけでまたしても、蓮のアクションは完璧な不意打ちだった。
「えっ?! ちょ、な、なに?」
唐突に頭に伸びてきた手に、冴はびくっとして仰け反る。
年上の美女の可愛いリアクションに笑みを返すと、再度ゆっくり頭に手を伸ばして微かにあった雪を払った。
「……え、あ、ああ、あの、あ、ありがとう」
自分のしてしまった過剰に敏感な反応に、さらにさらに肌を赤く染めつつ、されるがまま冴は年下の男のコに頭を撫でられている。
そしてあれよあれよと薦められるまま、カランを捻ってシャワーのお湯を浴びていた。
ノズルから水流が勢いよく噴き出している。
軽く仰け反りながら喉をさらして、均整の取れた肢体に熱い迸りを受けていた。
湯は盛大にしぶきを飛ばしつつ鎖骨のくぼみにいったん溜まり、ブラジャーがなくても形の崩れない乳房へと滴っていく。
そのまま深い谷間を伝ってさらに下へ垂れてゆき、無駄な肉のない腹部を滑って太腿の付け根に達すると、秘裂を隠す恥毛を魅惑の丘にべったり張りつかせていた。
姉妹。
比べるモノではないが瑞々しさでは、十代の妹に譲るしかないだろう。
けれど艶めかしさであれば、姉の優位はまだまだ動かない。
成熟した牝の身体はエロティシズムに溢れていた。
抱き締めずにはいられない色気がお湯とともに飛び散っている。
抜き足差し足忍び足。
足音を一切させない怪盗ならば必須のスキルで、背後にこっそり全裸になって迫った蓮は、牡の欲望に忠実で逆らたりすることはなかった。
「ひゃッ!?」
シャワーを浴びて温まるだけにしては、やたら長いことお湯に打たれ続けていた冴は、またしても奇襲をまともに喰らって飛び跳ねる。
豊かなバストを両腕で覆うようにされながら、息が詰まるほど思いっ切り後ろに引き寄せられた。
力強く荒々しく抱き締められる。
たっぷり脂肪の乗っているアダルトなヒップの谷間に、硬くて太いモノが押しつけられ嵌まり込んでいた。
囁くような吐息が耳孔に吹きかけられる。
「……あッ、ン、はあンッ」
妹の合気道の腕前もなかなかのものではあるが、数々の鉄火場で鍛えた姉はそれ以上だ。
世に出回っている一般的な護身術のマニュアル本であれば、原則はとにかくまず逃げなさいと記されているだろうが、エスケープの機会を逸してしまった状況シチュエーションでの一ページ目。
バックからのホールド。
犯行現場に突入し大柄で屈強な体格をした男に襲われたことも、そしてそれを鮮やかにねじ伏せ這い蹲らせたことも何度もある。
しかし不思議と蓮からの拘束に、抗うことはできなかった。
そもそもそんなつもりもなければ、そういうことをされるために来たのだが、仮に襲われているのだとしても抗えそうにない。
「ああッ」
腕をクロスさせるように左手が右の乳房を揉みしだき、右手はお腹をくすぐりながら滑り降り恥丘に触れていた。
説得力を持たせるのは難しいだろう。
冴は申しわけ程度に蓮の手首を握っているだけで、ここに触れて欲しいと誘導しているようにも見えなくない。
「……ハッ……あッ……、あ、ンぁッ……ひッ……あ、んぅ……あふぁッ!!」
ねっとりとした感触に年上美女は悲鳴をあげる。
蓮は複雑な構造の耳殻をねぶり、上気した耳たぶにカプッと軽く歯を立てた。
そうしながら手のひらを目一杯広げても収まり切らない乳房の、蕩けるように柔らかで指が沈み込むような感触を愉しむ。
双臀に挟まれたペニスがぴくんぴくんと、寡黙な口よりも余程雄弁に気持ちを物語り伝えていた。
「ひンッ!?」
冴も負けてない。
好き放題に揉みしだかれているふくらみの頂きでは、少女のように淡い桜色の乳首がツンと尖って自己顕示している。
隠しようのない欲情の証。
誰よりもそれがわかっているだけに、生贄志願した検察官の肌は、ふたりに降り注ぐシャワーの雨の温かさとは無関係に熱く火照っていく。
そうした無言のおねだりを蓮が放って置くわけもなく、親指と中指の腹で冴の乳首を摘まみクリクリと弄んだ。
甘ったるく耐え難いむず痒さが、妙齢の美女の背筋を這いあがる。
「あ……ン……はふぁ……」
紅潮した獲物の首筋を舐めながら、蓮は冴の反応を事細かに観察しくすぐり続けた。
なのでタイミングは、これ以上なくバッチリである。
「ひぁッ!?」
勃起した先端をキュッと捻った。
拘束されている冴の身体が、電流を流されたようにビクンッと跳ねる。
そうやって左手で乳首をクニクニしつつ、トイレを我慢しているみたいに内股になっている太腿に、がっちり挟み込まれている右手を蠢かせた。
濡れた恥毛の手触りを愉しみながら、あくまでも優しくソフトに、他人の指がご無沙汰の熟れた媚粘膜をひと撫でする。
「うぁっ――」
それだけで冴は甲高い悲鳴を上げて仰け反った。
牝の本能に従って鮮烈な感覚が弾け、待ち焦がれていたみたいに秘裂の奥がキュンッと収縮する。
膣口に宛がわれた中指が狭いホールに、歓迎するみたいにあっさりにゅるりと呑み込まれた。
なんらの抵抗もないどころか吸い込まれるみたいに、粘つく愛液の居場所を奪いながら根元まで挿入される。
ぬめらかな媚粘膜の感触を味わいながら、ときおり曲げた指先で膣腔の軽く天井を引っ掻いた。
「ンッ、ンッ……ふぅッ……はぁ……んぁッ……、あ!? ……ぁッ!!」
また新たに生じた快楽のパルスに、腕の中の美女の肢体がガクガク震える。
それはけっして意識してのものではないが、こんもりした恥丘を覆い隠す手のひらに、冴は勃起し膨らんだクリトリスを擦りつけていた。
股間からする聴こえてくるクチュクチュという粘着音は、どこかしら気ままでのどかな小鳥の囀りのようでもある。
もっとも冴が欲望の赴くまま悪戯されているのは、膣壁の腹側にある膀胱近くの所謂Gスポットだった。
「ひッ、んああああッ、あ、ああッ――!!」
性感と尿意が同時に刺激される初めての経験に目を剥きながら、脳内を悦びの雷で蹂躙され前後不覚でよがり狂っている。
弱点がわかればソコを責めるのは、それがどのような戦いであれ常道であり王道だ。
裏世界の住人であるジョーカーとして暗躍してきた蓮も、こういう場面では臨機応変という言葉を都合よく遣って大切にしている。
「……ンッ、ンッ……ふぅッ……はぁ……んぁッ……ぅああッ!! ……あ!? ……ああッ……んぁああッ!!」
激しく小刻みな抽送で集中的な一点責めをお見舞いし、年下の男子高校生に初体験を味あわされている年上のインテリ美女の、年齢も経歴も意味を為さない牝のあるがままありのままを暴いていった。
びしょ濡れになっている指のピストンの動きを蓮はさらに加速させる。
たまにインターバルを挟むように膣内をグチュッと掻きまわして、ふたたび冴本人すら認知してなかった弱点のGスポットを狙い撃ちにした。
さすが世を騒がせたトリックスターで、ワイルドでありながらも繊細で精密な指さばきである。
どうすれば女が悦ぶのか、本能で理解している動きだった。
逞しく力強く美しき牝たちを一匹の牡として、奪い尽くす方法を認知し熟知した自信に満ち溢れている。
それは若者にありがちな勘違いの部分もあるが、その不遜さが魅力に転化されているのも間違いない。
「はひッ……ひッ……、あッ……あふぁッ!!」
冴はすっかり虜になっている。
股ぐらの粘着音がいっそう激しく響いた。
膀胱の近辺にジュクジュクと粘膜が爛れていく感覚と、ピリピリと細胞が爆ぜるような痺れが、濡れ場よりも修羅場だった美女を情け容赦なく追い詰めていく。
検察官も警察官。
都の条例で青少年に悪影響を与える猥褻物として有害指定されそうな、あまりに淫らすぎる喘ぎ声がバスルームにハウリングしていた。
まるで愛だったり恋だったりを熱っぽく囁いているみたいに、耳孔にふーッと吐息を吹きかけられると堪らない。
不快ではないゾクゾクに冴が反射的に振り返ると、そこには牝を堕とす愉悦に瞳を潤ませた牡の貌があった。
「――ンッ!?」
いきなり唇を奪われる。
電光石火。
喘ぎっぱなしでだらしなく半開きになっていたところに、ぬるりと滑り込んできた舌と一緒に、注ぎ込まれた唾液をコクコクと嚥下していた。
指戯だけじゃない。
蓮は舌遣いも巧みで絡みつかれ吸われると、投薬でもされたみたいに頭が芯からボーッとしてくる。
啜る唾液が甘くさえ感じられて、はしたない音をさせて冴は貪り飲んでいた。
「んッ……むッ……んーッ……」
経験のない濃厚な口づけを交わしながら、尖り硬くなった乳首をキュッと摘ままれ、媚粘膜をヌチャヌチャと掻きまわされる。
強烈な快美感が脳天にまで突き抜け、目の前がチカチカ警戒度百パーセントで瞬きだした。
咥え込んだ年下の男のコの指を、キュゥーッと卑猥に締めつける。
「ぷあッ……は……ぁ……はぁ……あ? ああああッ!!」
唇が解放されたのと頭の中の閃光、股間から淫汁が飛び散ったのは同時だった。
人生で最大量のエクスタシーの波紋が、せっかく美味しく熟していたのに、これまでオタカラの持ち腐れだった肢体に刹那で伝播していく。
蓮の指の間から漏れ溢れた無数のきらめきが、キレイなアーチとなってシャワールームの壁にぶちまけられた。
「あッ……やン。だ、ダメぇぇぇぇッ!!」
心臓が爆発しそうなくらいの激しい鼓動を打ち、すべての活力を快楽に変えて全神経を素早く効率よく媚熱で焦がす。
覗いているピンク色の舌がいやらしい。
涎を滴らせた唇が大きく、だらしなく開いている。
冴は危険なほどガクガク身体を震わせながら、官能に嬲られ潤み蕩けた恍惚の貌をさらしていた。
秘裂からぬちゅりと抜いた濡れた指先を、蓮は年上の美女に見せつけ、たわわな胸から口元へ化粧でもするみたいに塗りたくる。
「んんッ、ンンッ」
色っぽく開いたままの唇に、苦もなく指が侵入を果たした。
絶頂の余韻にどっぷり浸かっている美女は無意識に、母の乳首に吸いつく赤子かのように、と表現するにはエロティックが過ぎる浅ましさで指を舐めしゃぶる。
ちゅぷッ・ちゅッ・ちゅるッ……。
中指からゆっくり少しずつ粘つきと甘酸っぱさ味が消えていくと、そのまま人差し指も口内に挿し入れられて舌を弄ばれた。
粘膜を散々嬲られてから指が引き抜かれると、潮噴きのモノとはまた異なる美しさの銀色の糸がきらめく。
上の口からも下の口からも恥ずかしい体液をお漏らしさせられた冴は、蓮に全幅の信頼でオルガスムスに震える身体を預けぐったりしていた。
そんな支えてもらわなければとても立っていられない身体を、優しくそっと前に押し出されてシャワールームの壁に手を突かされる。
脚をぴったり閉じ合わされ、尻を捧げる姿勢を取らされた。
悩ましくくびれた柳腰を掴んでいる蓮の狙いが、バックスタイルで犯すことにあるのはあきらかである。
割れた腹筋に張りついた勃起に手を添え、シャフトを水平にして角度を調節した。
腰を突き出し先汁でぬらつく亀頭を、儚げに震えるアダルトな双臀の裂け目に宛がう。
夢うつつだった冴が、ハッと身体を堅くした。
いよいよの瞬間に美女は緊張を走らせ、左右の尻肉をキュイッと引き締める。
そのおかげでアナルの窄まりが、谷間の奥に隠れたのがなんだか可愛い。
微笑を浮かべながら蓮は、バッキバキの勃起を一気に突き入れた。
「はあンッ!?」
背後から襲う挿入感に、冴が艶めかしい悲鳴をあげる。
とはいえ挿入感とは言っても、秘裂にしてもアナルにしても、勃起を咥え込まされたわけではない。
スベスベの内腿とふっくらした恥丘が形作る狭間に、蓮は自分の欲望を凝縮した若いペニスを潜り込ませていた。
カウパー腺液とバルトリン腺液が混ざった合わせ技のおかげで、挿入される勃起の動きは驚くほどスムーズで滑らかなものである。
労せずして肉のナイフの先端は、ぬめりを帯びた股の間を突き抜けていた。
股間を覗き込むみたいに、うつむいている格好の冴からは、あるはずのないグロテスクなモノが、いきなり生えたような錯覚を覚えさせる。
ショッキングな光景だった。
そしてそうやって冴の脳が本来の明晰な機能をストップしている間に、太い血管を這わせた得物を秘裂に喰い込ませてピストンを始める。
にゅむッ・にゅむッ・にゅむッ……。
世に流通しているどんなローションよりも高品質な天然の潤滑油が、ふたりの疑似セックスにオリジナルにない愉悦をもたらしていた。
肉体的な快感だけを比較すれば、素股は純粋に膣内に挿入するより、亀頭に絡みつく襞や牝肉の蠢きがなく、イマイチ物足りないかもしれない。
「ひッ……ン……んッ……、ひぃッ……んンッ……、ひッ、ひッ……ダメ……あぁああッ!!」
しかしこのふたりでなくてはできない自慰行為には、少々アブノーマルな趣があり普通のセックスにはない興奮をもたらす。
粘膜への挿入に身構えていただけに、冴はこのフェイクの性交に慄かずにいられなかった。
検察の捜査対象となるのは権力者なことがほとんどで、その多くはどういうわけなのか特殊な性的嗜好を持っている。
大物ぶってたり紳士ぶってたりする被疑者たちが、たとえ法律では裁けなくても、私的に鉄拳制裁したい変態なのを冴は認知していた。
そうした輩の尋問や調書を読む過程で、所謂プレイというのがあるのも、入れたくはないが頭に入っている。
それに比べれば口でするだとか、乳房で挟むだとかくらいは、まあ、女を道具扱いにしているようで、引っかかる点がないわけではないが、思春期の欲望としてはありがちなものとして理解できた。
求められれば応じるのもやぶさかではない。
やぶさかでないのだが……。
「あひッ!?」
素股は想定外だった。
ここまでの挙動からして蓮が、まさか童貞ということはないだろう。
女体に不慣れで挿入する部位を間違えてしまったとも思えない。
普通にセックスができるのにわざわざ、風俗法のグレーゾーンを突いた素股などという、マニアックな行為を選択しなくともよさそうなものだ。
「うぁあぅぁッ!?」
知識はある。
代替は代替でこのなんちゃってセックスの刺激は、オリジナルと比べてシンプルというか単調なものらしい。
今は亡き特捜部長がセクハラまがいに教えてくれた。
男社会で女がのしていこうとするのなら、下ネタのスルースキルもそのひとつで、そのときも右から左に聞き流していたが、
「ひぃンッ!?」
聞いていた話とぜんぜん違うっ!!
たぶん地獄直行の元上司に、溜まっていた積年の鬱憤ごと、声を大にして抗議してやりたい。
もうとうに可愛さを売りにできる年齢ではなくなっているが、それでもイヤイヤと首を振りたくる冴の痴態は十代の少女のようであり、けれどその愛らしさはすぐに大人の女らしい芳醇なフェロモンの香る身悶えに変わっていく。
この世界の在りようは、認知するのかしないのかである。
互いの性器を擦り合わせる行為には変態的な趣があり、蓮にも冴にも普通のセックスにはない異質な興奮をもたらしていた。
男と女の過剰に敏感なパーツ同士が癒着し、肉体よりもむしろ気持ちを昂らせている。
冴は自分の媚粘膜が猛々しい牡器官をしゃぶり込もうと、襞をざわめかせ蠕動させているのをはっきり感じていた。
しかし、
「あううッ、だ、ダメ……ンン……ひィ、ひああッ!! あッ、あッ、あッ……ああンッ……あひッ!!」
壁にカリカリ爪を立てる。
やはり目新しいもののお遊びのようなフェイクなセックスは、イロイロもどかしいというか焦れったいというかどうしても物足りない。
クチュックチュッ・グチュッ・クチュチュッ……。
音こそ派手で気持ちを憎らしいほど煽りはするが、指よりもっと太くて硬いもので浅瀬でなく、粘膜の奥を引っ掻きまわしてもらいたいという、牝の本能に根を張った欲求が狂おしく駆け巡る。
「……うぁッ、あンッ、あ、やッ、ああんッ……い、いやッ……ああッ!!」
切ない喘ぎ声には快楽だけでなく、哀願の響きが色濃く混ざっていた。
凶悪に反った勃起で性感に火照った裂け目を擦られると、甘い痺れが全身を走り声の音程が一オクターブずつ跳ね上がっていく。
鋭角に張った雁首の出っ張りでぷっくり膨らんだクリトリスを、淫猥に揉まれ捏ねられ転がされ――犯されるのが堪らない。
「ひぃンッ!?」
オンナとして生を受けた身体が連鎖的に快楽を爆発させて、膣壁のひとつひとつを破裂させながらエクスタシーの階段を昇らされていった。
そしてそれは冴だけではない。
しとどに濡れる秘裂に銃身を喰い込ませた蓮の勃起も、亀頭をぶわっと膨張させマズルから熱いブレットを放っていた。
美女の顔面に。
びゅぶッ・びゅッ・びゅちゅッ!!
女だからという理由で悔しい思いをしたのは数えきれない。
なぜ男に生んでくれなかったのかと、草葉の陰の両親を恨んだことすらある。
なので部分的で限定的ではあるが、長年の夢が叶ったと言えなくもない。
びゅくんッ・びゅくんッ・ぶりゅッ・ぶびゅるるッ!!
股の間からにょっきり頭を出している勃起から、白濁液を顔面にぶちまけられつつ冴は、まるで自分が射精しているような錯覚に囚われていた。
思春期の青臭い欲望を浴びせられながら、これまでの固定された認知では感じられない興奮に包まれる。
とはいえ前戯は前戯。
いくら新鮮で苛烈なオルガスムスであろうと、性の表層を撫で擦られただけでは、熟れた牝の本能を満足させることは到底できない。
「ああ……」
粘つく液体でドロドロに汚された貌で、どこまでも甘く香る貪欲な牝の吐息を冴は漏らした。
もちろん欲深いということにかけて、ジョーカーこと雨宮蓮だって負けてはいない。
にゅるんッ。
また腰を動かし始めた。
「んッ!?」
即座に反応した冴が鼻にかかった声をあげる。
だが気が早い。
このピストンは弾丸を撃ち尽くした銃へのリロードのようなものだ。
わずかではあったが硬度が失われていた勃起ペニスに、火薬の代わりに欲望が詰め込まれた弾丸がフルチャージされていく。
さっきよりもあきらかに熱く、ガッチガチになっていた。
ここからが本番。
とでも告げているみたいだった。
用意が万端整ったようで秘裂と左右の腿が形作る鞘から、ゆっくりズルリと銃身であり刀身でもある濡れた牡器官が吐き出される。
「……あ」
無意識の落胆と寂しさで思わず振り返り、高校生男子のスマイルに迎え撃たれた美女は、カァーッと羞恥の最高値をさらに更新して顔を伏せた。
しゃ、シャキッとしなさいシャキッと、こ、これじゃいったい誰への飴なのかわからないじゃないっ!!
大人の責任から子供へのささやかなご褒美として、奇襲のような蓮からの生贄指名を快諾したのではなかったか。
全身全霊で尽力するつもりではあるが、少年院に一度入所してしまえば、いつ出所できるのか確約してやることは情けないができない。
心置きなく愉しんでもらうことが自由なはずの彼を、窮屈な牢獄に押し込めるせめてもの餞別である。
わたしが愉しんでどうするのよっ!!
などとザーメンを塗りたくられた顔をシャワールームの壁に押しつけ、自己嫌悪に陥っている美女の懊悩を見透かすみたいに眺め愉しみながら、明日には少年院入所予定の高校生は、可憐な花びらのように綻んでいる大陰唇に指をかけた。
最奥まで覗けてしまうほど秘裂をくぱぁっと大きく割り開く。
牡をそのフェロモンで誘う妖しい淫花植物が、堪え性なく物欲しげにひくついていた。
刈り取るべく勃起に手を添え狙いを定める。
もうすでに覚悟よりも期待が上回ってしまっている冴の媚粘膜に、腰を尻肉に叩きつけるみたいにして一気に根元まで勃起を突き挿した。
ずにゅぅぅぅッ!!
「ひいっ――」
待ち望んでいたワイルドな衝撃に、冴は背中をしならせ悦びの悲鳴をあげる。
美しいヒップがたわむほど勢いよく腰を押しつけられ、熟れた膣肉が余すところなく若いペニスで満たされた。
力強く深い挿入感。
おおよそ一直線の牝穴はペニスの反りに従って、入り口から最奥までをぐにゃりと歪められる。
エッジの利いた雁首で濡れた媚粘膜を圧迫される感覚は、肉まで切り裂かれてしまいそうなくらい鮮烈なモノだった。
硬い。
太い。
なによりも熱い。
数年ぶりに串刺しにされた身体を歓喜で撃ち震わせた。
「あッ、んンッ、ゥ、くぅんッ、ああああッ!?」
甘く甲高い声で啼いている冴の腰を掴まえて、蓮はゆっくりと腰のピストンを開始する。
穏やかに打ち寄せる波のようなリズムで、牝であるのに対して怠惰だった粘膜を、丹念に丁寧にじっくり執拗に掻きむしった。
秘裂の奥まったところにある柔らかな肉壁から、入り口付近にあるやや硬く窄まったコリコリ箇所まで、圧迫と摩擦をくり返して絶えず愉悦を生み出していく。
静かだが暴力的な抽送に従って、内に折れたり外に捲れたりしながら、飢えたケダモノのようにじゅるじゅる勃起をしゃぶっていた。
蹂躙される細胞の放つ快美な電流で腰骨が痺れ、全身が淫らな律動にうねるみたいに妖しく踊ってしまう。
冴はセックスという行為を、もう自分は知っているつもりだった。
……こんなものか。
それがこれまであった冴の認知。
「ヒィイイイッ!?」
実体験だからといって正しいとは限らない。
現在進行形で認知が塗り替えられる。
亀頭が最奥にある聖域を重く鋭くめり込ませながら抉り、痛みと紙一重の危うい衝撃で過去の認知を突き崩していった。
すぐさま腰が引かれて雁首が、愉悦の火花を飛ばしてぷりぷりした襞々を擦る。
スローテンポなリズムを刻んでいたピストンは、いつの間にかアップテンポなものに変わっており、尻肉からはパンパンッと軽快で間抜けな音が打ち鳴らされていた。
乳房が揺れる。
「んぁッ………ひッ……あ、ンぁッ……ひぁッ!!」
蓮は徐々に上体を前に倒しながら、美しい生贄に覆い被さった。
本能のまま交尾する発情期の犬みたいな体勢になる。
逮捕。
若者らしい荒々しさで腰を前後させながら、怪盗は検察官の腋の下から両手をまわし、落ち着きのないふくらみをキャッチした。
手に吸いかのつくように餅肌をねっとりと捏ねて、充血したみたいにぴんぴんに尖った乳首を揉み潰す。
「……ンッ、ンッ……ふぅッ……はぁ……んぁッ……ぅああッ!! ……あ!? ……ああッ……んぁああッ!!」
獲物を追い詰める猟犬のように蓮のペニスは子宮口を捉え、牝犬のように犯される冴をエクスタシーの絶頂へ誘い堕とそうとしていた。
媚粘膜にヌトヌト纏いつかれたペニスが、発砲の予兆でぷっくりワイルドに膨れる。
恍惚に沈んでいた冴も無意識に察したようで、括約筋が無自覚にキュゥゥゥッと引き絞られた。
膣での銃撃の機会を逃すまいと、勃起の脈動が切実なものになっていく。
そしてついに欲望のトリガーは引かれた。
まだ誰にも赦したことのなかった子宮への襲撃に、
「あひッ、ひッ、ンッ、ひィ――」
冴はあられもない絶叫をあげながら、貪欲にシャフトを絞めつける。
びゅくッ・びゅッ・びゅッ・びゅぶぶッ!!
最奥で若い欲望が放たれていた。
秘蔵というよりもほぼ死蔵だったオタカラの極上ボディは、深いところから白い濁りにドロリと攻略されていく。
……出てる……アソコに……セーエキ……、たくさん……出されてる……。
熱い迸りを初めて子宮に浴びせられ、冴は経験のない陶酔感の中、ガクガクする身体を抱きしめられた。
不思議と安心する。
けれど同じくらい胸の奥が、ドキドキ高鳴ってしまって落ち着かない。
キュンッ。
どこかで耳にしたことがある気もするが、聴き慣れない馴染みのない音色が奏でられた。
シャワーの雨が温かい。
熱く囁かれる。
「好きにしてもらっていいわ。だってこれはキミとわたしの、最後の取り引きなんだから。この身体が対価になるなら、もっと、す、好きにして」
粘膜に咥え込まされたままの牡器官は、いまさっき放ったばかりだというのに、欲望が尽きないかのようにもう再装填されていた。
……。
……。
……。
あれから冴はさらにシャワールームで犯され、ベッドまでお姫様だっこで運ばれて早朝まで好きにされた。
冴の身体で蓮に触れられていないところはないし、蓮の身体で冴に触れられていないところはない。
どうにか出頭に付き添ったがふらふらだった。
確定したのはきっとこの瞬間だろう。
別れ際。
警察署の前で優しく抱擁された。
幸いなことに周囲には誰も居なかったが、誰の目があろうとも蓮はそうしていただろう。
そして誰が見てようと、それを冴が拒むこともない。
完璧にオチた。
キュンッ。
あのとき耳にした音の正体が恥ずかしさと、嬉しさがごちゃ混ぜになった感情と一緒に判明する。
「チョコレートは好きかしら? もし明日なにも予定がなければ――」
五十一日間という離ればなれの時間が想いを募らせ育てた。
イブだけではない。
絶対に勝たなくてはいけないギャンブル。
家族で過ごすのもアリなクリスマスイブよりある意味でストレートな、特別な関係のふたりのイベントに冴はチャレンジしようとしていた。