寺社仏閣の雰囲気というモノには独特のものがある。
学校での授業中だろうがどこだろうが騒がしい若者世代であっても、日常にはない非日常の空気にどこか気圧されてしまう公共の場だった。
神田にあるこの教会もそう。
周囲の街並みは下町らしい賑やかで古めかしい活気に満ちていた。
しかしステンドグラスとオルガンの響きが美しい礼拝堂には、異空間のような静謐さが存在しているだけである。
地域に憩いの場として開放されており、不特定の人間が足を踏み入れているが、この空気を壊し乱そうとする不届き物は皆無だ。
広義では。
「ん、ンンッ……」
より細かく正確に狭義の意味で捉えるなら、神を恐れぬ罰当たりな高校生が二名ほどいた。
礼拝堂にはついさっきまで神父も居れば、思い思いに寛いでいる人間も居たのだが、若い子羊たちに試練を与えるようにふたりっきりにされる。
魔が差した。
それこそふたりはほんのついさっきまで将棋を打つ、その盤面のみにお互いの意識を集中させていたのだ。
我が東郷キングダムの牙城がそう易々と――。
だとか。
なるほどどうして理に適っている陣形ではないか。まだまだ未熟ではあるが見るべきところがある。
だとか。
……クックックッ、ハッハッハッ、ハーハッハッハハハハッ!!
だとか。
およそ将棋を打っているというよりは、ヒーローショーの悪役ステージみたいな、そんなノリでトリップしている彼女と彼女に付き合う彼氏の、ハンデはありだが勝負は白熱していて、いつの間にか周囲から人が消えていたのに、彼氏がいつも通り投了するまで気づいていなかった。
「うううッ、ンッ、んふうッ!?」
ちょっとやそっとの駒落ち程度で、彼氏が彼女に勝つことはできないだろう。
どんな世界でもプロと素人は天と地だ。
これといって将棋に興味がなくルールを知らなくとも、洸星高校二年生の東郷一二三を知っているという者は少なくない。
不名誉な有名人。
将棋界の堕ちたアイドル。
けっして本人が望んだことでないとはいえ、まったく与り知らなかったこととはいえ、その大和撫子なルックスと八百長勝負のスキャンダルは、彼女を一躍時の人にしてしまったと言ってもいい。
言いわけのない誠実な謝罪会見をした一二三だったが、それでも世間の風当たりは強くて厳しいものだった。
ストレートの長い黒髪と涼しげな目は、優美な日本人形を連想させるかもしれない。
母親でもあるマネージャー主導によって、棋士でなくアイドルのように売り出されている。
揺り返しはやはり激しかった。
バッシングの嵐は心身ともに支えてくれた彼氏の存在なくしては、雨宮蓮の存在なくしてはきっと乗り越えることはできなかったであろう。
人の噂も七十五日でブームなどというのは、どうせ長続きせずにすぐに去ってしまうものだが、その約二ヶ月という期間で東郷一二三という女流棋士は、秘めたる才能を秘めたまま跡形もなく消えていたかもしれない。
将棋に興味がなくルールも知らないような所謂にわかファンは、ブームの終了とともに将棋からも一二三からも関心を失っている。
そして元からいた将棋ファンはアイドルではなく、ひたむきに盤面と向き合い打ち込む棋士にしか興味がない。
将棋通のマニアの間では一二三の繰り出す斬新な手が、東郷システムと呼ばれるまでになっていた。
粗削りだが大化けするかもと期待されている。
「ン、ン、ン、んンッ……」
蓮と打つ将棋は技術の向上という点では、残念ながらほとんど役に立っているとは言えない。
だが発想の飛躍という意味では、これほどメリットのある勝負もない。
脳内麻薬は垂れ流しになっており、心も身体も高揚せずにはいられなかった。
だからだ。
慎み深く奥ゆかしい大和撫子が誘惑されてしまったのは……。
楽園を追放されたのはイブの愚かさとされているが、もしもここ神田の教会が出禁になったとしたらジョーカーのせいだ。
蛇になったサタンが登場するまでもない。
おとなしく袖で待っててもらおう。
礼拝堂には昨今ではあまり見なくなった電話ボックスみたいに懺悔室が設置されており、現在進行形で懺悔が必要な罰当たりなカップルがいた。
「んふッ、うッ、んンッ、んううううッ、ンンンッ!?」
口を手で押さえ喘ぎ声が漏れるのを我慢している一二三も罪深いが、跪き制服のスカートに頭を突っ込んでいる蓮は地獄行き確定である。
すらりとした脚の終着点。
薄いショーツの布地越しに蓮は顔を埋めていた。
鼻を押し当てて一二三の女のコの匂いに、酩酊したみたいに深い呼吸をくり返している。
そうして自分の中に飼っているケダモノを焦らしに焦らし、煽りに煽って興奮を高めていた蓮だったが、いくらもしないで自分自身が欲望を貪るケダモノと化していた。
「んゥゥゥ!? ン、ン、んむううッ……」
そしてそうしたケダモノを自分の中に飼っているのは、ナニも肺を牝臭で満たしていく蓮だけに限った話ではない。
人間だってだ。
恋人からオンナとして求められていることで受ける即物的な圧迫に、条件反射のように歓喜を燃やしている一二三も発情期のアニマルである。
水分を含んでスポンジみたいに、卑猥に柔らかくなっている秘裂。
熱っぽい雫をたっぷりショーツの布地に染み込ませていた。
誤魔化しようのない欲情の証。
許容量を超えて滲みだした粘つく愛液は恋人の鼻の頭を濡らしていた。
「ふぅううううッ!?」
一二三の細い腰が妖しく淫らにくねる。
下腹からじんわり広がる肉悦に瑞々しい肌を汗ばませながら、凛とした大和撫子にあるまじき浅ましいおねだりをしていた。
応えるのに蓮もやぶさかではない。
牡という生き物であるのならあるいはもしこのまま、酸欠になったとしてもきっと本望であろう。
スカートの中にどんどん籠っていく濃密で甘ったるい匂いにくらくらしつつ、濡れた布地に浮き彫りになった縦スジを舌で舐めあげた。
「んああッ、あッ、あッ、ン、ああああッ……」
揉みしだかれていた小さなヒップが大きく跳ねる。
唾液を乗せた舌先で可憐なスリットの妖しいラインを責めながら、フリルのあるフィルター越しに蓮は音を立てて愛液を啜った。
完全にわざとである。
じゅじゅッ・じゅちゅッ・じゅッ・じゅるるるるッ……。
下品で大きな音を立てて耳からも、和風美少女の羞恥心を責め立てていた。
鼓膜で反響し頭蓋まで満たされていく。
聴覚という原始的な感覚まで徹底的に刺激されることで、一二三は脈拍を加速度的に強制的にあげられていた。
耳から流れてくる吸引音と胸から伝わってくる心音が、まるで争うかのように脳内でハウリングしている。
それは卑猥で危険なのに、堪らなく心地のいいサウンドだった。
「そ、そんなにしては、ああッ、そんなにしては、ンゥんんッ、ダメ、あッ、ああッ、だ、ダメ……はぁああッ、あッ、ダメなんです……ッ」
しかし大和撫子として教育された一二三としては、いくら恋人である蓮が奏でるミュージックでも肯定するわけにはいかない。
――言葉では。
声が漏れぬよう自分の口を押えていた手が、スカートの股間部分の膨らみに当てられる。
だがもちろん密着している恋人の顔を、引き剥がすためにそうしたわけではない。
むしろでなく当然のように逆。
オシッコでも我慢していたみたいに、内股になっていた腰を迫り出し、押しつけるみたいに蓮の頭を掻き抱いていた。
そしてそうした恋人の真意を察せられないほど、怪盗団のリーダーは鈍くもなければ無知でもない。
名言であり至言。
これぞイヤよイヤよも好きのうちというやつである。
甘ったるく淫らな味のシロップを飲み下し、ツンと布地を突き上げる小さな突起に吸いついた。
「あひッ!?」
絹を裂く。
言い出しっぺは誰なのか定かではないが、どうしてなかなかしっくりくる上手い比喩である。
勃起したクリトリスを強く吸われ、一二三は甲高い悲鳴を上げる。
つい先日生まれて初めて蓮によって剥かれたばかりのソコは、まだ舌の感触に馴染んでおらず鮮烈な感覚にも慣れてない。
布地を一枚挟んだ刺激が丁度いいみたいだ。
過剰に敏感な快楽中枢のカタマリに、ベストフィットしている蓮の舌が閃くたび、一二三の身体は陸に揚げられた若鮎のようにピチピチ跳ねる。
蓮は将棋の指南のお返しにと、恋人という関係になってからは、性の手ほどきを毎回念入りに行っていた。
はたしてそのおかげなのかどうなのかはアレだが、
「ひッ、ひッ、ひッ、ダメ、ダメですッ、わたし、ああッ、わたし、こ、このままじゃ、ダメ、んンッ、ああッ、ダメになってしまいますッ!!」
ある段階から成金のようにランクアップした身体はあっけなく絶頂に達してしまう。
投了を宣言でもするみたいに、一二三からカクンッと力が抜けた。
膝が折れ腰が落ちる。
それこそこのような展開も毎回のことなので、予期していた蓮は恋人の身体を秘裂を支点にして抱きとめていた。
快楽にすっかり蕩けている一二三は全幅の信頼を持って体重を預けながら、我が身で赤子を守る母親のような慈愛のスフィアを形成している。
古今東西で万人が認める平和な時代がいったいいつかと問われ、それは子宮というパレスの主だった頃と答えられれば反論は難しい。
もっとも手足が伸びてしまえば、揺り籠に戻ることはできないわけで、床にペタンっと座り込んだ一二三と入れ替わりに、スカートから頭を抜いた蓮はすくっと立ち上がった。
ハァハァハァハァ……。
懺悔室の暗がりで乱れた呼吸を整える恋人を優しい眼差しで眺め、さらさらとした黒髪の手触りを愉しみながら梳き撫でつける。
粘つく愛液でベトベトになっている口のまわりを、舌をゆっくりペロリと一周させて舐め取っていた。
やがて息遣いが落ち着いたものになってくる。
置いていた一二三の頭から手をどけると、蓮は懺悔室の壁にゆったりと寄り掛かった。
小さく囁く。
名前を呼ばれて一二三はハッと、うつむかせていた顔を上げた。
自然と媚びたような上目遣いになる。
秀尽学園の制服のズボンを内側から力強く押し上げている膨らみが、闇を物ともせず瞳の水晶体を貫き網膜にまで一気に飛び込んできた。
脳に刻まれ埋め尽くす。
恋人からの熱に浮かされたような視線を浴びながら、蓮はズボンのチャックをジィーッと音を立てながら下ろした。
ベルトを外すときのカチャカチャという音もそうだが、日常にある音も非日常で聴くとひどくいやらしい。
ボクサーブリーフの前開きから、蓮はおもむろにチャージ済みのペニスを取り出した。
窮屈な下着から解放されると、グロテスクな裏筋を魅せつけてそそり立つ。
そのスリムな体型からは、想像できないほど蓮の勃起は逞しかった。
牝をひれ伏させるだけの圧倒的な威容を誇っている。
その亀頭は食べ頃の旬のスィーツみたいに、瑞々しいまでにツルッとしていた。
しかしそこからはピンク色の初々しさはすでになくなっており、散々ヴァージンの肉を裂き血を啜って凶悪なまでに黒ずんでいる。
燦然とした煌めきを代償にして、鈍い光を放ち命を断つ、使い込まれたナイフのようだ。
常に飢えている。
なので日頃からのマメできめ細かなメンテナンスは怠れない。
「……し、失礼します」
蓮からみっちり習った恋人同士の作法通り、対局するときのように正座してそう言葉を添えると、餌をもらう雛鳥みたいに首を伸ばし、太い静脈を這わせたペニスに顔を近づけた。
瞼をそっと閉じて鼻をすんすんさせる。
けっしていい匂いではない。
むしろ十代の女のコであるのならば、嫌悪感を催していい悪臭であろう。
スンスン……。
けれど汗と微かな残尿臭、そして亀頭の先端に滲むカウパー腺液が混じった牡の匂いに、あきらかに一二三はうっとりした牝の貌をしていた。
いたずらっ子があっかんべぇ~でもするみたいに、しかしそう表現するには妙に艶めかしくて紅い色をした舌を出す。
憐憫を誘われてしまうくらいぷるぷる震えていたが、その理由は恐怖などではなく歓喜だった。
控え目に。
しかしさして間を置かず大胆に、張り詰めたペニスを舐め始める。
カウパーの垂れてきたシャフトの裏筋を下から上、上から下へ執拗なくらい丁寧に、満遍なく唾液を塗りたくりコーティングしていった。
もっとも汚れの溜まりやすい雁首のくびれにも、躊躇することなく甲斐甲斐しく舌を這わせている。
それはどこか一二三の打つ将棋を想起させるような、巧妙な緻密さと斬新な閃きが同居しているものだった。
乙女の羞恥心が消え失せてしまったわけではない。
なのに卑猥な舌遣いを褒めるみたいに、蓮にやさしく髪を撫でられると、一二三はどこまでも淫蕩なオンナになれそうで怖くなる。
怖い。
……けれど、だ。
けれどそれより遥かに嬉しかった。
だからできる。
家柄がこれといって特別いいわけではないが、それでも礼儀作法に関してはかなり厳しい環境で育っていた。
病弱でおおらかな性格の父はそれほどでもなかったが、芸能ママ気質の母の方針はスパルタで徹底的に仕込まれている。
無作法をすれば手が出ることも、まだ幼い頃などは当然のようにあった。
マナーやエチケットには一二三も、他人に強要はしないがけっこう煩い方である。
少なくとも人様の前でこんなに大きく、はしたなく口を開けてナニかを咥えたことはない。
だけど仕方なかった。
そうしないと先っぽも収まらないのだから。
捧げ持つようにしてそっと握り、そそり立つ勃起の角度を調節する。
口唇がかぱっと開けられた。
ぬるるるるッ!!
亀頭の先端から根元に向かって濡れたシャフトを滑る。
「んッ」
舌だけで感じているよりもずっと濃厚な、エグみのある青臭い牡の味が、柔らかな口内の粘膜を瞬く間に占領していった。
脳は凄い。
もしくはチョロい。
認知次第であっさり世界が変わる。
初めてのときこそ我慢が必要とされる味だったが、この瞬間の一二三の口の中には甘露が広がっていた。
研磨に研磨を重ねた亀頭は、百戦錬磨の風格と色合いをしている。
相応しい喩えなのかどうかは微妙なところであるが、ドリアンに代表される珍味のようなものなのかもしれない。
皮の剥けた表面はツルンとして舌触りがよく、臭いにさえ耐性があれば美味しく食べられた。
くせになる味をしている。
どころかもう一二三はこの味の中毒だった。
「むううッ……、んンッ……んもッ……ふむぅううッ……」
柔らかな喉をしたたかに突かれ苦悶の表情を浮かべながらも、その味をより深く堪能しようと勃起を奥へ奥へ導こうとしている。
ディープスロートはそれなりの経験があったとしても、それなりのレベルとして習得するのはかなり難しいスキルだ。
短期でモノにしようとするなら、最低でも二つのファクターがなくてはならないだろう。
持って生まれた才能と、そうするのが好きであることだ。
恋人の勃起を口にする一二三には、その両方の素養があったみたいである。
とはいえ発揮されるのは、
「んッ、んッ、んッ、んッ、ゥ、ううッ、んンッ!!」
蓮のモノならという条件付きだ。
黒髪が揺れる。
頭を振るスピードはどんどん速くなっていった。
そうしながら視線をそろそろと上げて、自分を見下ろしている恋人と一二三は目を合わせる。
堪らなく恥ずかしい。
抑えられない愉悦で一杯になっている蓮のスマイルに、一二三の身体はカーッとまたワンランク熱くなった。
どうやっても卑猥でしかない音を立ててしごかれるペニスは、技術の向上著しいフェラチオにびくんびくん震えている。
まだまだ精進の余地ありではあるが、経験不足のティーンが披露する口唇愛撫としては、MAXまでいかなくとも高ランクのフェラチオだった。
このようなことを誇りとし自慢するなどあまりに品がなさすぎるが、それでも自慢していいだけのエロいテクニックが備わっている。
「ふむぅううううッ、むゥンンッ、んふッ、ンッ、ンッ、ンッ……」
だがナニかに憑かれたみいに勃起に夢中になって、甲斐甲斐しくしゃぶっている一二三にはわかっていた。
悦ばせるテクニックは日々磨かれており、規格外のボリュームに四苦八苦して、口に含んでいただけの初トライのときと今では雲泥である。
なので蓮を昂らせている要因になっているのは間違いない。
間違いないのだがけれどそれはメインでなく、あくまでもサブでありプラスアルファの要因だった。
ではまだ未熟な一二三が、もっとも蓮を悦ばせているのはどこなかのかといえば、
「んンッ……」
白い肌を羞恥の紅に染めて、泣きそうになっている大和撫子の貌である。
被虐の炎に悶え灼かれる恋人に、蓮は静かにぞくぞく燃えていた。
萌えていた。
じゅぷッ・じゅぷッ・ちゅぷッ・じゅるじゅるッ……。
勃起の出し入れされる自分の口元に、蓮の視線が注がれているのを感じながら一二三は、正座の姿勢のまま内腿をもじもじと擦り合わせている。
激しく揺れている艶やかな黒髪を撫でられた。
その差がわかることがまた悦びの、さっきまでと微妙に異なっている撫で方に、一二三の頭を振りたくるスピードはいっそう速くなる。
蓮に終わりが迫っているのだ。
しゃぶっている勃起は小さな口の容量を、完全にオーバーして喉の奥まで犯されている。
もしも叶うものならば、この恥辱に塗れた苦しみを永遠に味わっていたい。
それが一二三の秘めやかな願いだった。
濃度を増した愛液がしとどに溢れ、内腿を濡らしながらソックスに染み込んでいく。
勃起のひくつきも、危険なくらい性急なものになってきた。
あとちょっとでも大きく開けてしまえば、外れてしまいそうな顎は、酷使し過ぎでいいかげんキツくなっている。
けれどここでけっして、奉仕を緩めたりしてはダメだ。
王手をかけたのなら一気呵成に責め立てねば、窮鼠猫を噛むではないが予期せぬ反撃を受ける。
投了まで一手のところにまで追い詰めていたのを察することができず、いったん勃起を抜いて体勢を整えようなどとしたおかげで、初対局では顔面に濃厚で大量のスペルマを浴びせられて、髪どころか制服までベトベトに汚され、自宅に着くまでにひどく難儀したのを一二三は覚えていた。
うっとりしてしまったのも……。
ただ今の一二三はもう顔射がシャワーの確保がなければ適さないのと、喉の奥にぶちまけられる悦びも甲乙付け難いのを知っていた。
「グモぉおおッ!?」
窒息しそうなほど苦しいがそれを涙目で我慢しつつ、正座から中腰の姿勢になって、びくんびくんしているペニスを咥えたまま蓮に抱きつく。
それがほんの一滴であっても、恋人のザーメンを零す気はなかった。
びゅくッ・びゅくッ・びゅくんッ!!
まるで一二三の準備ができるのを待っていたみたいに、前後する恋人の頭を押さえつけて、喉の奥にご希望通りたっぷりのスペルマを迸らせる。
何度もしゃくりあげて、濃い精液をたっぷり注ぎ込んだ。
びゅちゅッ・びゅッ・びゅッ・ぢゅびゅッ!!
「うふッ、ンッ、ううううッ」
勃起が激しく脈動しひくつくたび、零距離で撃たれる一二三は、ノックバックでもしそうになっている。
けれど望んでそうされている大和撫子は、口の中を荒れ狂う嵐に蹂躙されながら、恋人の腰に必死になってしがみついていた。
やがてびしょ濡れになった犬みたいに、ぶるるっと身体を震わせた蓮は、頭を押さえつけていた手をどけて撫でる。
よくできたとペットでも褒めるみたいにして優しく撫でた。
んッ・んッ・んくッ……。
一二三は雁首のくびれにぴっちり口唇を巻き付け、尿道にまだ残っている精液まで丁寧に執拗に吸い上げる。
真空になるほどのバキュームで、スペルマが空になったときには、勃起のボリュームもあって、一二三はリスみたいに頬を膨らませていた。
普段が凛としているだけに、そのギャップもあってマヌケカワイイ。
ペニスがずるりと引き抜かれる。
放ったばかりだというのに蓮の牡器官は、萎える気配もなければ硬度も失われていなかった。
すぐにでもワイルドに次局を打てそうである。
口内を占有していた巨大で卑猥な肉塊が消えたことで、余裕のできた一二三はポーッとその変わらぬ威容に見惚れていた。
心奪われるとはこういうことだろう。
身体が疼いて仕方ない。
ひとまずお許しさえいただければ、まずはこの口の中に溜めているぬるぬるを飲ませて欲しかった。
視線を様々な体液で濡れ光る勃起からどうにか引き剥がして、お伺いでも立てるようにそ~っと恋人を仰ぎ見た。
お互いの視線がしばし交錯する。
精液を口の中に溜めた状況が、もう恥ずかしくて恥ずかしくて堪らない。
そして蓮はだからこそこうして静かにただ見つめ合っているのが、身体を熱くさせ胸をドキドキさせている一二三にはわかっていた。
イジワルです。
早く命令して欲しい。
拗ねながら一二三は願った。
勃起の反り返りがグググッとさらにエゲつないものになる。
ニヤリと笑いながら、蓮はゆっくり頷いてみせた。
ようやくの待ち望んでいたお許しに一二三は、年齢不相応な妖艶な微笑を浮かべると、牡の濃いザーメンでいっぱいの口唇をあーんと開く。
こくっ。
愉しそうな蓮がまた頷くと口を閉じ、舌でねっとり掻き混ぜてから、クチャクチャとガムみたいに噛んだ。
こんな耳障りな音を日常で立てたなら、厳しい母だけでなく温厚な父にも、年頃の娘がはしたないとこっぴどく叱られるだろう。
だが日常でこのような品のない音をさせてしまうほど、一二三は礼儀作法のなってない恥知らずな少女ではなかった。
また非日常で一二三のこのようなはしたなさを、こうして拝むことのできるのは蓮だけだった。
髪を撫でられる。
「ンッ」
さらに濃さと粘つきの増した精液を、上下する喉の動きが蓮にわかるように呑み込んだ。
二度、三度と時間をかけて、絡みつくザーメンを嚥下していく。
……あーん。
褒めて欲しそうにふたたび口を大きく開けたとき、もうキレイに白濁する青臭い牡の粘液はなくなっていた。
屈み込み前髪を掻きあげおでこを露わにすると、
チュッ。
蓮は小鳥が啄むようにキスする。
すると感極まったかのように、一二三の腕が首に廻って抱きついてきた。
口内は執拗なくらい丁寧に処理されているはずだが、それでもどこか青臭い吐息に耳をくすぐられながらすくっと立ち上がる。
そのままの流れでスカートに手を差し入れると、ショーツのウエストのゴムに指を引っかけ、タイミングよく犬のように右足を上げた一二三とのコンビプレーで、蓮は超魔術さながらの器用さを発揮して抜き取ってしまった。
上げた右足は素早く抱きかかえられて、ぱっくり開かされた秘唇から、ポタポタと愛液が零れ床に淫らな水溜まりを作る。
やや腰を落とすと、蓮は勃起の先端を宛がった。
犬がオシッコをするときみたいな、恥ずかしい格好でしがみつく一二三の身体が、もたらされる悦楽からの期待で緊張し堅くなる。
未知ではなく既知だからこその緊張。
一二三は自分がどれだけ乱れてしまうのか、恥ずかしいくらい思い知らされていた。
そして今日も今日とて慎み深く奥ゆかしいはずの大和撫子は、本当の自分がどれだけ淫蕩で罪深いペルソナを秘めているのか思い知らされる。
「あはッ!!」
真下から貫かれた。
荒ぶる勃起を誘うかのように蠢いている媚粘膜に、望みを叶えてやろうと根元までズヌーッと押し込み串挿しにする。
「ん、あッ、ン、……ああああッ!!」
首に廻されていた腕にギューッと力が籠り、心地よいが大音量のボイスが蓮の鼓膜を至近距離で打つ。
身体がぶるぶると小刻みに震えていた。
まだ挿入されただけだというのに、もうすでに小さな絶頂に昇り詰めてしまったらしい。
即効性の快楽に一二三は、なす術もなく甘く痺れていた。
ここからが本番とばかりに蓮は、杭打ちのようなピストンを開始しながら、
「むぐッ!?」
迸る寸前の恋人の喘ぎ声を、首をねじりキスで塞いで無理やり殺す。
いつもの控え目でお淑やかな一二三からは、想像しづらいセクシーが過ぎるエロティックボイス。
懺悔室は密閉された空間ではあるが、もちろん防音設備があるわけもなく、礼拝堂中に響き渡ってもおかしくない声量だった。
さすがに讃美歌のように奏でるのはマズかろう。
忘れがちだが公共の場だ。
今更だが。
「ン、んむッ……」
一二三は頬の粘膜にこびりついたものまでキレイにこそぎ落とし、魅せつけるように扇情的に呑んでくれたがそれでも残滓はある。
しかし蓮は気にした風もなく舌を吸って、降りてきている子宮口を欲望のナイフで抉った。
上からも下からもクチュクチュという卑猥な音がして、背徳的なシチュエーションの中でふたりの官能は際限なく膨張していく。
蓮は徐々に尿道が焦げたように熱くなっていき、睾丸が重力に逆らってせりあがってくるような感覚をおぼえた。
膣壁に纏わりつかれながらも、負けじと圧迫する勃起のひくつきが、あきらかに性急なものになってくる。
「ううッ、んッ、んンッ……」
より激しさをランクアップさせた蓮の怒涛のピストンに、被虐の炎に灼かれることを望む少女はいっそう昂っていた。
体内で渦巻く牝の本能によがり狂う。
「ンンンッ!?」
あ? こ、これ、これ、い、いい、いい、い、イイイイッ!?
フラッシュバックをくり返す一二三の脳裏には、先人たちの遺してくれた数々の棋譜が乱舞していた。
けれどその何百枚何千枚もある棋譜の中に、たった一枚だけ見たことのない斬新なモノがある。
この世界に生まれたばかりの、最進最鋭でオンリーワンのオリジナル。
恋人の唇にむしゃぶりつき舌を吸いながら、無意識に一二三は腰をしゃくりあげ、収縮する膣腔で咥え込んだ勃起を咀嚼していた。
神をも畏れぬ悪魔のようなエクスタシー。
心身のあらゆるパーツがフル稼働して、蓮のくれるすべてを貪ろうとしている。
これぞオタカラ。
「ふぐぅッ!!」
将棋界を揺るがす革命的な一手を閃くのと同時に、ついに一二三は真っ白な背徳の絶頂へと昇り詰めていた。
びゅッ・びゅちゅッ・びゅぐんッ!!
蓮も尿道を駆け抜ける熱すぎる弾丸を鈴口から放ち、恋人とシンクロするみたいに腰をガクガクさせる。
膣腔のいちばん深いところに向かい飛車をキメられて、一二三は首に廻していた腕を囲い込むようにして抱き締めた。
「――んふぅううううッ!?」
歓喜を告げる声なき声を蓮にだけ響かせつつ、だらしのない恍惚とした牝の貌をさらして投了する。
この後に女流という枠に囚われることなく、将棋界に東郷時代を築くことになるレジェンドの、最強の秘密に辿り着いた者は誰もいなかった。
かつてジョーカーと呼ばれた怪盗以外には……。