運命を肯定しない占い師。
長い背中まであるややウェーブのかかった髪をヘアバンドで押さえ、愛嬌のあるにこやかなスマイルで悩める人を夜の街で待ち続けるジプシー。
その神懸かった驚異の的中率に反して、未来は自分の手で掴むものと諭す御船千早は、歌舞伎町界隈ではちょっとした有名人である。
悪徳宗教団体の広告塔だった過去もあるが、罪への真摯な姿勢と取り組みにより、過去は過去のものとして清算されつつあった。
とはいえそれはあくまで他人の下す評価であって、千早自身は一生を捧げて償っていこうと決意している。
そしてそれは孤独な贖罪ではなかった。
故郷ではバケモノと恐れられたほどの千早の視る未来を、物ともせずに力尽くでねじ伏せ救ってくれた年下の恋人がいる。
日々の指標を求める人たちを、無理のない本物の笑顔で迎え、アドバイスを送りサポートする毎日は充実していた。
一方でプライベートを犠牲にすることもない。
まずは自分の心に余裕がなければ、余裕のない人の心になにも響かない。
雨宮蓮というまだ高校二年生の少年に手を引かれて、占い師としてだけでなく女としても、千早の毎日はまるで光り輝いているかのようだった。
「わたしの田舎より、これでも都会かも」
ただここ最近は皮肉にも、充実したおかげで悩みができている。
未だに古くからの因習が根強く生きている辺鄙で、閉鎖的な村出身の千早には都会への憧れがあった。
どこかしら昭和のトレンディードラマのようなデートが、油断すると方言の出てしまう垢抜けない千早のお気に入りである。
必然それっぽいところに行くことが多くなるのだが、そういうスポットはやはり若いカップルを中心にして人気だ。
令和になってもさほど変わらない。
またいつの世も女性というのは基本的に、多かれ少なかれ占いが好きな生き物である。
芸能人ではないが有名人である千早に気づいて、若気の至りというかなんというか、モラルの欠如しているコにスマホで撮られることがあったりした。
蓮が知り合いの元ハッカーに調べてもらったところ、SNSに載っているとかいうことはないらしいが気分は良くない。
というか蓮に申し訳ない。
そんなわけで千早は人気スポットに遠征してのデートを控えていたのだが、
「なんですとっ!?」
これぞ発想の転換というやつだった。
年下の恋人に誘われたデートスポットは千早にすれば意外な場所で、田舎育ちの人間には思いもつかないオシャレスポットである。
いや、蓮もとくにこれといって都会というほど、都会の生まれでも育ちでもないらしいが、しかし顔バレしている都会を避け、あえて田舎に行くというチョイスは、いい思い出のない未開地のような村から、逃げ出すみたいに上京して来た千早にはなかった。
……お忍びデート。
なんとも田舎者の心を踊らせるオシャレな響きである。
というわけで蓮と千早のふたりは週末を利用して、寂れたTHE.田舎町である稲羽市を訪れていた。
とりあえず空気は美味しいものの、あとは特質するところはない。
観光地というわけではないので、どこにどうという見どころもなかった。
「マジでかっ!?」
おばあちゃんのやっている昔ながらの豆腐屋が、国民的アイドルの実家だというのが、千早のミーハー魂をちょっとくすぐったくらいである。
けれど旅はどこに行くかでなく誰と行くかで、知らない街をただ腕を組んで歩くだけでも楽しい。
蓮には内緒にしているが密かに、千早は不倫旅行という設定をつけ足して楽しんでいた。
お泊りがホテルでなく古めかしい旅館というのもそれっぽく、隠さねばイケナイ関係みたいで不思議とテンションが上がってしまう。
「おふたりはご夫婦ですか?」
紅く染められた着物もよく似合っていた。
正座の姿勢までビューティフル。
美人の若女将に台帳の記入を求められた際、雨宮千早と書いてしまうくらい浮かれていた。
後から考えれば取り合わせを、もしかしたら怪しまれていたのかもしれない。
しかし温泉に浸かる前にすでにのぼせていた千早は思い至らず、質問に曖昧な笑みで応える蓮に若女将はそれ以上追求しなかった。
「はいっ!!」
嬉しそうに返事をする千早に、
「……そうですか。では、ごゆっくりしていってくださいね」
キレイに指を揃え完璧な作法でお辞儀をすると、若女将は若女将として満点の微笑を残して部屋をあとにする。
そして襖が静かにパタンッと閉じたその瞬間、千早はふたりっきりだという事実に急に緊張してきた。
不快ではないがなんとも落ち着かない気持ちになる。
まさに旅行の真っ最中だというのに、旅行の準備中みたいにドキドキしてきた。
今日は朝からずっとふたりっきりだったが、部屋でふたりっきりは意味合いがかなり違ってくる。
ふたりはもう沈黙が気まずいという関係ではなくなっていたが、
「お、お風呂? そう、うん、そう、まずは、まずはお風呂に入っとうとっ!! この時間なら大浴場は貸し切り状態だそうやけぇっ!!」
無風を装ったサイレント嵐に耐えられず、千早は方言を撒き散らしつつパタパタ、にやりと笑みを浮かべる蓮から逃げ出した。
部屋に備え付けの浴衣と持参したお風呂セットを手に、記憶の曖昧なうろ覚えの地図を頼りにして露天風呂を目指す。
満月というのもあって稲羽を一望できる最高のロケーションではあったが、白く濁ったお湯の成分効能の説明が子宝なのが気になって仕方ない。
もちろんいつもよりも長風呂だった。
そうしていつもよりも、お肌のケアに余念はない。
年上もアリ。
蓮はそう言ってくれたが、やはり男は若いコが好きだろう。
少なくとも疲れた肌よりは瑞々しい肌の方が、いろいろ喜んでくれるはずだしイロイロ悦んでくれるはずだ。
こうして蓮と男女のお付き合いをするようになってからというもの、千早は人生で初めてセルフプロデュースというのをした気がする。
取る物も取らず逃げるみたいに上京し、風俗店のスタッフにあれよあれよ騙されしたのが、幸薄い田舎娘が人生でするファースト化粧だった。
不幸中の幸いというのか、面接だけで出勤せずには済んでいる。
あの当時を思い出したくもないがあの頃を振り返ってみると、あざといが曲がりなりにも男心を煽るプロのメイクは可愛かった。
鏡に映ったバケモノを見て可愛いと、素直に思えたあのインパクトは忘れない。
ベースはアレだ。
いくらかアレンジしてケバさを抑えつつ、
「よしっ。カワイイっ」
脱衣所の鏡に映る自分の顔を見ながら、言葉に出して自分に暗示をかけると、千早は今にも浮いてしまいそうな軽い足取りで部屋に戻った。
髪がまだちょっと濡れている。
先に部屋に戻っていた蓮と合流して一緒になり、御土産売り場を見に行ったりしていると夕食の時間になった。
牧畜が盛んな土地でもなさそうなのに、どうしてビフテキが名物なのかだけは謎だが、近くの鮫川で獲れるという魚などどれも料理は美味しい。
大満足だ。
地元のローカルテレビだったりを視聴してベタベタゴロゴロ、食後のまったりとリラックスした時間をしばし過ごす。
……とはいえそんなのは、蓮はどうだか知らないが、千早は完全にペルソナだった。
わずかに襖の開いていた隣りの部屋を、さっきチラッと見てしまった。
寝室である。
布団が敷いてあった。
それも二つを隙間なくぴったりくっつけてだ。
枕元にティッシュまで置かれている。
い、田舎はそりゃ開放的やけど、あ? だから、だから若女将は夫婦かどうか聞いたんっ!?
ジュネス~っ!!
テレビからは不思議と耳に残るCMソングが流れているが、脳がぐるんぐるんしている千早の耳にはまったく入って来ない。
なので由緒ある老舗の旅館が、そのような下世話な気遣いをするわけもないことも、年下の恋人が怪盗のスキルを活かしてこっそり、閉じられていた襖を覗きたい誘惑に駆られる程度開け、離されて敷かれていた布団をくっつけていたとは想像できなかった。
眼鏡のレンズ越しの瞳が、視界の端に映る年上の恋人を捉え、密かにギラギラ危険な光を帯びてくる。
ドギマギしている千早の様子に素知らぬふりを決め込み、内心では蓮がにやにや悪趣味な観察をしているのにも当然だが気づいてない。
獲物を狙う狩人のように、ジェントルマンの嗜みに耽っている。
ただ十七歳だ。
思春期は発情期である。
同世代の男子に比べると経験もあれば余裕もあるが、蓮とてやりたい盛りの高校二年生であることに変わりはない。
恋人を眺め愛でているだけでは、いよいよ我慢ができなくなってきた。
どうせ誰も観てないのだから断る必要もない。
しとしと雨も降ってきた。
マヨナカの十二時になると何が起こるかわからないので、
「あ……」
テレビを消して立ち上がる。
手を差し出した。
ぞくぞくする小さな吐息を漏らした千早は、やはりぞくぞくする潤んだ瞳で、熱っぽく上目遣いに見つめながら蓮の手を握る。
頃は良し。
ふたりは溶け合うように寄り添いながら、二つが一つになった布団がある寝室の襖を開けた。
豆電球のぼんやりした光。
計算のない妖しさを演出していた。
チュッ。
シャンプーだけでなく牡を興奮させるフレグランスの香る浴衣姿の千早の唇を、蓮は優しく奪いながらケダモノのように覆い被さり押し倒す。
お互い様だ。
バレているのかバレていないかの違いはあるが、恋人に隠れてこっそりをしていたのは蓮だけではない。
お風呂から部屋に帰ってくるときにも、御土産売り場に行くときにも、浴衣の下に柄物のTシャツを着てブラジャーだって着けていた。
旅のテンションがそうさせたのか、今日の千早はいつもよりも大胆である。
浴衣を左右に肌蹴ると、
「は、恥ずかしいです……」
ふるふると波打っている乳房が露わになっていた。
さすがにノーパンでこそなかったものの、蓮に組み伏せられる千早の胸はノーブラである。
新鮮な果実のように瑞々しいふくらみは、巨乳というには些か物足りないが、如何にも柔らかそうでおまけに揺れ方がいやらしい。
乳輪は小さく可憐で、乳首は鮮やかなピンク色をしていた。
「あンッ」
蓮は自分にしか触れさせたことのない年上の彼女の、下乳にたぷんっと両手を添えてねっとり揉みしだいていく。
見た目から受けるイメージそのままに、予想を裏切らず指が沈み込むほど柔らかい。
そのくせ張りもしっかり感じられる。
アリだと蓮は伝えたはずなのに、なにかと年上なのを気にする節のある千早だが、十代のような旬の味わいはまだまだ色濃く残っていた。
指先を曲げるたびに柔肉にむにゅっとめり込む。
蓮は蕩けるような双乳の感触を飽きもせず、無口で無骨だが繊細な職人みたいにゆっくりこねまわしていた。
「はぅうううッ!?」
唇を噛んで声を堪えようとする千早だったが、乳首をそっと摘まんで刺激されてしまうと、あっさり口を割られて喘ぎ声を漏らす。
処女の少女みたいに慣れる気配すらもない羞恥と、それに対しどんどん馴染んでいく快楽に戦慄した。
腰をくねらせる。
「ンンッ!! うふぅぅぅッ!!」
霞がかった豆電球の明かりが、尖り勃った乳首を照らしだした。
淡いピンク色が血のように濃い紅に染まり、年下の恋人の巧みな愛撫を欲して、乳輪までぷくんっと可愛いが淫らに盛りあがっている。
「……くうぅッ……ンふぅ……、あッ、んぅ、んンッ……、あッ、ああああッ!!」
首。
ネックだけじゃない。
羽毛のような繊細さで大胆にくすぐられると、幼子がイヤイヤでもするみたいにニップルが震える。
千早の腹部が艶めかしくしなやかにうねり、蓮の手の中でふるりと可憐に揺れていた。
すっかり勃起しているふくらみの先端を指の股に挟み込み、切なげな表情で吐息を漏らす恋人の乳房を揉みしだく。
「だ、ダメ、そんなん、だ、ああッ、ンッ、ンッ、ンッ、だ、ハッ、ああッ、だ、ダメ、ダメになるとぉ……」
双乳を弄ぶ蓮の手首を千早は掴みはしたものの、もちろんまったく力が入っていなかった。
抵抗はカタチだけのものである。
やりたい放題好き放題に乳房を嬲られて、熟れかけつつある旬の女体を、千早は淫らにくねらせずにはいられなかった。
普段の占い師コーデはだぼっとしているので、ほとんど身体のラインがわからない。
なので上京して何年も経つが、イマイチ垢抜けない千早のプロポーションが、けっこう都会的で洗練されているのをほとんど誰も知らない。
キュッとくびれた腰が右に左に妖しく蠢き、まるで牡を誘う求愛のダンスを踊っているようだった。
困ったみたいに眉を八の字に歪めている表情が色っぽい。
純朴な愛らしさは感じていても千早の、
「ああンッ!!」
アダルトでセクシャルな魅力に、こうして触れられるのは蓮だけである。
もっともそれは意識し演出しているわけではない。
そして計算されたものではないからこそ、高いランクで牝としての美しさと媚びを獲得していた。
「はぁああッ、あッ、あッ、あッ、ンッ、んンゥウウッ……、くぅううッ、ぁ、ああああッ!!」
流行りのリップを塗った千早の、艶やかな唇から甘い声が溢れる。
自分だけしか知りえない恋人のいやらしさに、蓮はにやりと笑みを浮かべながら乳首をクニクニと刺激した。
この原石から丹念に磨いた年上の田舎娘の、オタカラのボディにはどこにも耐性がない。
弱点だらけ。
無効もなければ反射も吸収もない。
あっちもこっちもウィークポイントしかない身体を、愛でるかのように優しくも残酷なくらいの執拗さで責め立てる。
焦らすみたいにしてゆっくり上半身を伏せると、硬くぴんぴんに尖り勃った乳首にむしゃぶりついた。
「ひぃうッ!?」
十万円でも高くない。
そうだったらむしろ安すぎて怪しいくらいだった。
汗すら甘いホーリーストーンとなった身体が、電流でも流されたみたいにびくんっと反応し、キレイなアーチを描くかのようにして仰け反る。
即座に、
ぴちゅッ・くちゅッ……。
唾液の弾ける卑猥でしかない粘着質な音が、地方都市にある老舗旅館の和室に響いた。
右から左。
左から右。
充血している乳首を交互にしゃぶられて、
「あッ、ああッ……ダメ……ンッ、ンッ、……くぅンンッ……だ、ダメ……、あッ!? んンッ、あッ、あッ、ああああッ!!」
千早は憐憫を誘う切れ切れの声で許しを請うが、それで赦してくれるような蓮ではないのはわかっていた。
むしろ獣性を煽るだけなのも。
カリッ。
「くふぅううッ!?」
鋭く甘い痛み。
馴染むことはあってもけっして慣れることはない痛み。
捕食者に喉首を咬まれた小動物のような恐怖と、牡に蹂躙される牝の歓喜で千早の心と身体が痙攣している。
痙攣をくり返している。
弱々しい豆電球のオレンジの光に照らされて、乳首から下腹部の奥底へと疼きが蓄積されていった。
「んンッ、ンッ、ンッ、ンッ、はぁああゥ……くうんッ、ウッ、あッ、はあンッ、んゥッ、アッ、ハァ、あッ、クゥ、はぁンッ……」
しかし供給され蓄積はされるものの、乳首からだけの快楽では消費のしようがない。
いくらもしないで咬まれ舐められ転がされる乳首からの刺激は、このまま続けられたなら千早は狂うしかない快楽の拷問地獄になる。
またこの責め苦の始末に負えないところが、
「ひンンッ!?」
受けている千早自身がそれもアリかもと、運命よりも明確さを失っている脳裏のどこかで、漠然とではあったが考えていることだ。
なので蓮の口唇が乳首から離れたとき、
「あん……」
もしかしたら安堵よりも、落胆の方が大きかったかもしれない。
けれどそんな心配はいらない。
視覚的にも責めてやろうと蓮は考えただけだ。
ハァハァハァハァ……。
荒い呼吸をくり返している千早を見下ろしながら、見上げる視線を感じつつ帯を解いて浴衣を肌蹴る。
ムッキムキではないがバッキバキの、しなやかで獰猛な身体が露わにされた。
先走ったカウパー腺液で染みのできたボクサーブリーフも降ろすと、肉厚で切れ味バツグンのナイフみたいな勃起がぶるんっと飛び出した。
鎌首を持ち上げて、逞しく割れた下腹に張りついている。
「す、スゴかと」
本音が思わず口からぽろりだ。
馴染むことはあっても慣れることはない。
恋人の威容に千早は、怯えたように手で顔を覆った。
ところが指の隙間からしっかり、惚れ惚れするペニスを捉えている。
グロテスクな裏筋をさらしてびくんびくんっと脈打つたびに、豆電球の光が襖に作り出している影が大きく揺れていた。
ふたたび獲物に襲いかかる。
愛撫が再開された。
剥きだしにされたままの乳房から脇腹へと手のひらを滑らせて、くびれた腰のラインをくすぐるみたいに撫でまわしてやれば、鎮火されたわけではなく燻っていただけの牝の身体は、油というよりガソリンを注がれて瞬時に燃え上がる。
「やンッ」
襟元を乱されていた浴衣の裾を掴み、暖簾を捲りあげるみたいにして左右に開いた。
お泊りの旅行ということでいつもより、千早はかなりの大勝負をしている。
精緻なレースに彩られた黒いショーツは腰で結んだ紐パンで、カットは恥丘をハミ出させ食い込むほどエグいものだった。
すぐには脱がさない。
しばし愉しむ。
これといって蓮は下着それ自体に興味はなかった。
だがこうやって自分との旅行に照準を合わせ、こうして穿いてきてくれたという事実に、愛しさと興奮を覚えない彼氏はいないであろう。
シルクの布地には染みができていた。
吸収し切れなかった愛液が、むっちりした肉づきのいい太腿を伝って、浴衣の裏地どころか布団までお漏らしみたいに濡らしている。
「そ、そんなにじっくり、み、見ないでください……、見たら、……見たらダメ……やけん……」
などと言って千早は恥ずかしそうに蓮から顔を背けるが、蓮の視線からさらされている肌を隠そうとはしなかった。
据え膳とばかり、どうぞと捧げられている。
名物だ珍味だと低料金で振る舞ってくれた旅館には悪いが、これ以上の御馳走をいただくことはどうやってもできないだろう。
食さないという選択肢はない。
あり得ない。
「あッ!? ああッ……!!」
指先で摘ままれるとウエストの結び目が、シュルッと簡単に解かれてしまった。
秘唇のディテールをくっきり浮きあがらせ、恥丘にべったり張りついてしまっている布地を、ねちゃりと卑猥な音をさせて蓮は剥がしてしまう。
どんなに美人であろうが、恥じらいのない女に魅力はない。
千早はぴったり内腿をくっつけ、震えながらも左右の脚を閉じている。
イイオンナだった。
意図せずとも甲斐甲斐しくオトコに尽くしてくれる。
濡れた一本の紐となったショーツを、蓮はぐっと握り締めるながら千早に微笑んだ。
床とお尻でがっちり固定されているので、引っ張ってもちょっとやそっとで抜けることはない。
……ちょっとやそっとで。
なので蓮は尻の谷間から秘裂にまで喰い込まされ這わされた紐を、強烈な摩擦を起こしながら力いっぱい一気に勢いよく引き抜いた。
ずりゅりゅりゅッ~!!
「え、あ? だ、ダメ、それは、それはホントに、だ、ダメ、それはダメやけぇええッ!!」
抗えない肉悦が焦らされていた千早の身体を駆け抜ける。
旅館の部屋はどこも風通しがいい。
「あひぃいいッ!?」
若女将の配慮でふたりは離れの部屋にチェックインさせてもらっているが、あまり意味がなかったかもしれないくらいの嬌声を千早は響かせた。
プシャアアッ!!
だが旅の恥は掻き捨てである。
脳裏に眩いばかりの閃光を弾けさせながら、千早は腰をぶるぶる激しく痙攣させて、紐状のショーツの隙間から潮を噴きだしていた。
ぴしゅッ・びしゅッ・ぴしゅしゅッ・びゅしゅしゅッ!!
間欠泉のようにしつこく迸らせつつ、口をだらしなくパクパクしている。
「はぁ……ぁ……、あ……ああ……」
そしてようやく淫らな官能の水脈が途絶えた。
べつに渡さなくとも揶揄されるようなことはないだろうが、やはりチェックアウトのときにはチップが多めに必要になるだろう。
もう浴衣どころか布団まで、それどころか床までびちゃびちゃだ。
ご迷惑をかける旅館へのチップは、弾まねばならないだろう。
が。
なにはともあれひとまず部屋の掃除より、心と身体を火照らせた占い師の浄化が急務であろう。
蓮は千早の脱力状態の膝を押し開くと、肉のナイフをシゴき脚の間に腰を進めた。
シェルピンクの牝肉はオイルを塗りたくったようにヌメヌメしていて、その奥では指一本でもキツそうな膣口が物欲しげにひくついている。
誘うみたいに妖しく蠢いていた。
亀頭をパンパンにさせた鋭利な切っ先を、柔らかな襞の狭間から粘液を滴らせている秘裂に宛がう。
「ひィッ!?」
夢うつつだった千早の喉から、オンナのナイーブでデリケートなスポットに、危険過ぎる熱を感じて小さな悲鳴が漏れた。
あれこれ漏らしている恋人にニヤリと微笑みながら、少しずつ体重をかけて収縮をくり返す媚粘膜を圧迫する。
だが蓮はそこで挿したりすることはなく動きをとめた。
ゆったり腰を振る。
「ンッ、ンゥ、ンッ、ンッ、あ、んンッ」
濡れそぼった粘膜を亀頭の先端でクックッと、脅すみたいに小さな刺激だけを送り込み、蓮は生殺しの快感に懊悩する千早を愉しみ弄んでいた。
こういうときとっても意地の悪い男である。
そして自分の性癖を満たしていくのに、追求していくのに余念のない男でもあった。
なにも興奮しているのは、千早だけというわけではない。
蓮だって興奮している。
ギンギンに勃起している牡器官は言うまでもなく、けっこうな細マッチョの背中も汗でヌメ光っていた。
しかし堪らないシチュエーションになっているのは、陥っているのは蓮も一緒であったものの、
「あぁああッ、だ、ダメやて、ふぅああッ、あッ、ああッ、か、堪忍、も、ンッ、もう、ダメ、堪忍、ダメに、もうダメになるとよぉ……」
千早とは違って強制的ではなく自発的なものなので、これもエクスタシーを高めるプレイの一環でしかないのを知っている。
だからどうにか耐えられていた。
怪盗団のミッション成功打ち上げのときなど、蓮は前日から腹を空かせて臨むタイプである。
この旅行のために禁欲に禁欲を重ね準備万端整えてきていた。
思春期は発情期。
本能の三権分立は一強二弱で、著しくバランスを欠いて崩壊している。
二十四時間三百六十五日休みなくフルタイムで、思考の八十八パーセントを性欲に振り分けている高校二年生男子。
ヤリたいでほぼステータスが構成されているお年頃が、悶々としながら三日もチャージしたのだ。
なんのためにここまで溜めてきたのか、それを忘れていないからこそ耐えられる。
イニシアティブを握られずに済んでいた。
でなければ、
「あ、貴方のが、ほ、欲しいんです。入れてください。お、奥まで、メチャクチャに、……してほしかとよ」
はしたないおねだりを千早から引き出すことは、たぶん怪盗として磨いた精神力を以てしても厳しかっただろう。
治外法権の尋問室で薬を打たれた状態から、女検察官を口説き落とした比ではない。
リターンが必要だ。
蓮には我慢をしいられた分だけの、千早には恥ずかしさの分だけの、
「お願いやけぇ。お、犯して欲しかぁ」
官能を貪る権利があった。
期待で淫らに綻んでいる秘裂にいきり勃ったペニスを、圧し掛かるみたいにして強引にねじ込みこじ入れる。
ずにゅうぅッ~!!
「あふぁッ!?」
待ち焦がれていた太いモノの侵入に、乳房をふるんと揺らして千早は大きく背を反らした。
その頂で硬くしこった乳首が、ピンクの残像の軌跡を描く。
伸縮性に富むホールは嘘のようなスムーズさで、はちきれんばかりのこわばりを根元まで呑み込んだ。
居場所を奪われた愛液が押し出され溢れる。
ねっとりしているキツキツの媚粘膜に纏いつかれて、勃起の先端からも嬉し涙のようなカウパーが滲んでいた。
「んぅッ、ううンッ、あッ、くゥんッ、あッ、はぁああン、あッ、うッ、あはぁああッ!!」
千早の脚が形作る菱型の中で正座と膝立ちの、丁度中間のような姿勢を取った蓮は、くびれた腰をがっちり掴んでピストンを開始する。
温かなぬかるみにぐっぷりと呑み込まれていた勃起が、雁首のところまで引きずり出され、ふたたび根元まで女体を抉るみたいに押し込まれた。
じゅむッ・じゅッむ・じゅむッ・じゅむッ……。
勃起のサイズを思い知らせるように、ワイルドに大きく蓮は腰を振っていたが、しばらくするとそれがもっと小刻みなものに変化してくる。
ふたりの結合部が立てる粘着音が、単調なのに複雑なリズムを奏でる。
そうやって腰を振りながら蓮は上半身を少しずつ倒し、卑猥に揺れる乳房をぷにゅっと胸板で押し潰して覆い被さった。
乳首と乳首が擦れる。
包皮から芯を覗かせているクリトリスが、恥毛にシャリシャリと粗く繊細に研磨される。
「ふぁああッ!!」
シーツを固く握りしめていた千早は全身を全身で愛撫され、自然と両腕は恋人の首に巻きつき、さらには両脚まで腰に絡みつかせていた。
蕩けた瞳で見つめ合うふたりは、どちらからともなく唇を重ねて、激しく濃厚なディープキスに耽溺していく。
舌と舌が密着しぬめる様はまるで、本能のまま交尾する軟体動物のようだった。
「ンッ、んふぅうッ、むぅッ、んンッ……」
ただそうやって舌を吸い合っている間にも、蓮の腰のピストンはランクアップする一方で、今はまだ若いのでなんとかの母という称号がしっくりしない占い師を、快楽のタルタロスのより深淵に叩き堕とそうとしている。
腰が振られるその一突き一突きごとに、千早は後戻りのできない瀬戸際に追い詰められていた。
絶頂への片道切符。
「んぅンンンンッ!?」
もはや千早には帰りのことなど考えられない。
ひっしと蓮の身体にしがみつきながら、自分からも腰をしゃくりあげていた。
ふたりは息を合わせて腰を振り、口内で淫らな声を迸らせている。
悦びの波までシンクロさせた蓮と千早の、終着駅がもうすぐそこなのは明らかだった。
唇を離すのと同時に、
「ああああッ……ゥ、あッ、あッ、あッ、ハッ、あ、ああ、ああああッ!!」
びゅッ・びゅちゅッ・びゅくんッ!!
子宮というVIPの中のVIPしか宿泊できない部屋に、生涯貸し切りの恋人の、温泉の湯よりも白く濁った欲望が解き放たれる。
千早は膣だしされたその瞬間、身体に震えを走らせながら、言葉にならない歓喜の悲鳴をあげて仰け反った。
落雷にでも撃たれたように、ガクガク痙攣している。
全身の毛穴という毛穴から汗を噴きだし、常連客の傍若無人なご乱行に応えた女体が、いっそう艶めかしくヌメ光っていた。
長いのか短いのかすらわからない時間、ふたりはしっかり抱き合ってエクスタシーの過ぎ去るのを待つ。
夜の静寂の中に千早の乱れた息遣いだけが、微かではあるものの確かに妖しく聞こえていた。
欲望に蕩けた瞳は焦点を失っている。
なのに不敵に笑う恋人だけは、ぼんやりとだがハッキリ捉えていた。
前髪が掻きあげられる。
おでこに、
チュッ。
と蓮は小鳥が啄むようなキスをすると、繋がったまま硬さを維持していた勃起で、弛緩し油断していた媚粘膜の最奥をまたしても穿った。
「あひッ!?」
アクメに達した直後の余韻醒めやらぬところを、スタートからワイルドなピストンで再度責められる。
涙さえ流して千早は朝まで、絶え間なくよがり泣いた。
昨日はお楽しみでしたね。
あの品のいい若女将が、そのようなことを言うわけもないが、そんなことを言われてもなんの反論できない。
ふたりは心ゆくまで一泊二日の旅行を愉しみ、旅館のリピーターになったのは言うまでもなかった。