西住みほ、溺れる 作:173mm
西住みほは、沈んだ気持ちで帰り道を歩いていた。
逃げるように故郷である九州を離れ、知り合いも誰もいない大洗にやってきて早数週間が経過した。環境が変われば、なにかいいことがあるんじゃないか。そんな風に胸に抱いていた淡い期待が打ち砕かれるには十分な時間だった。
生まれた家の所為か、それとも、もともとそういう気質だったのか、みほはひどく内気で、受け身な性格となっていた。自分の意見を言うことは苦手で、自分から積極的に動くことなんてできない。何をするにも失敗したときのことばかり考えてしまい、すっかり臆病になっていた。
尤も、たった一度、勇気を振り絞った末の行動があんな結末では、もともと臆病だった性格に拍車がかかることも仕方がないのかもしれないが。
結果、みほは誰一人、友達を作ることもできていなかった。部屋に帰れば一人で、学校に行っても一人で。厳しい家から逃げ出すことはできたけれど、孤独という気持ちは埋められなかった。
昔はどうだっただろうか。陸の小学校に通っていた頃は、確かに友達と呼べる相手はいたような気がする。しかし、それも、今では色あせた写真を眺めるような気持ちでしか思い出すこともできない。会いたいと思う気持ちもあるが、会っても失望させるだけではないか、という恐れの方が勝ってしまう。結局、一度も連絡したことはなかった。
みほは、お世辞にも活気があるとは言えない商店街を歩いている。しかし、それでも行きかう人の姿はあって、それを逃すまいと目を光らせる店も少なくない。放課後の学生を狙ったものだろう。もはや嗅ぎなれた潮の匂いに混じって、揚げたての串カツの匂いが漂ってきた。ソースの匂いは、もはや暴力的だ。
ぐぅ、と小腹が鳴る。しかし、みほは目を向けることもなかった。
ひとりで食べたって、味気がないことは分かりきっているのだ。
もしも、友達と連れだっていたら、あっけなく匂いに釣られたことだろう。他にもクリームたっぷりの甘いクレープや、焼き立てでふわふわのワッフルなど、誘惑はそこら中にひしめいている。しかし、みほはひとりだった。
きゃいきゃい、と華やかな声が聞こえる。まさに、みほと同じ制服を着た少女たちが肉屋のコロッケに捕まった。真面目そうな少女が「だめだよ、夜ご飯が食べられなくなるよ!」なんて注意しているが、他の少女たちには聞こえていないようだ。結局、我慢ができなくなったのだろう。注意していた少女もついには折れて、財布を取り出しコロッケを買っていた。
微笑ましい。と思うと同時、羨ましいと思った。
たぶん、1年生だ。なんとなくそう思った。背の小さい子が混ざっていたからかもしれない。入学してから大して時間も経っていないだろうに。彼女たちは、すっかり仲良しのように見えた。
もしも、自分の人生に彼女たちのような友達がいたら。そう思わずにはいられなかった。きっと、こんなに惨めな思いはしなかったに違いない。
そんなときだ。
「へい、彼女。一緒にご飯、どぉ?」
男の声がした。
少し、軽薄そうな男の声である。
みほは、その声がまさか自分に向けられたものとは思わず、目を白黒させた。
俯いて歩いていたみほは、目線をあげる。
そこには、やはり軽薄そうな身なりの男が立っていた。
みほよりも頭ひとつ分は高いだろう大きな背丈に、脱色したようなぼさぼさの傷んだ金髪。耳にはピアスが輝いており、シャツは着崩しているせいでだらしがない。大きく空いた首元からは、タトゥーのようなものも見えた。
お世辞にも、お近づきになりたい人種ではない。内気なみほとは、きっと正反対の世界に生きている相手だ。
「お、やっぱり。俯いてるから、アレだったけど。やっぱ、めっちゃ可愛いじゃん。もしかして、君芸能人だったりする?どっかで見たような気がすんだよねー」
「え、あ、あの……」
じろじろと見つめられた。
そのうえ、息つく間もなく話しかけられる。
大洗に来てから、すっかり他人と話すことのなくなったみほには、彼のような勢いの強い相手は難しい。
みほは固まってしまい、逃げることも、言葉を返すこともできなかった。
「君さ、名前何ていうの?ってか、今暇?俺、めっちゃ腹減ってんだけど、一人で飯食うのもなんか味気なくってさぁ。時間あるなら、俺、ご飯驕るけど、どぉ?」
「えっと……えっと……」
みほは怖かった。
ただでさえ、他人と話すことに臆病になっているということもあるが、男性と話すとなると、輪をかけて苦手となる。何を話せばいいかなんて分からないし、下手なことを言えば暴力を振るわれるかもしれない。それが偏見だという自覚はあっても、男性の見た目はいかにもそういうことをしそうに見えた。
「君、一人暮らしだよね。もしかして、家族で住んでたりする?」
「い、いえ、その……」
「じゃあ、いいじゃーん。飯代も浮くし、俺もこんな可愛い子と飯が食えるし。ウィンウィンってやつ?」
あはっ、と男は笑った。
みほにもう少しの勇気があれば、大声を出したりして、その場を逃げるということもできたかもしれない。しかし、今のみほには、そんな勇気を絞り出すことはできなかった。ただ、男に肩を抱かれた瞬間も、震えていることしかできなかったのだ。
しかし、男に連れていかれたのは、意外にも普通のファミレスだった。全国に展開されているような、至って普通のチェーン店だ。てっきり、このまま路地裏にでも連れ込まれるものかと覚悟したというのに。
男は禁煙席を選び、みほを招く。好きなの頼んでよ、と気軽な様子でメニューも渡してきた。
「あ、俺はステーキセットね。ここのセットはマジ安定だから。あ、ドリンクバーも頼んじゃおっか」
みほに反論などできようはずもない。みほは、メニューを立てて、男と視線を合わないようにするのが精いっぱいだった。この状況だ。きっと何を選んだって、味なんかしないに違いない。
しかし、男はみほを急かすということをしなかった。
それどころか、「あ、もしかして腹減ってなかった?」なんて、気づかうようなセリフを吐く始末だ。
これにはみほも根負けをして、「じゃあ」と言って、ハンバーグのセットを指さした。
男が呼び鈴を鳴らし、店員がやってくる。ソースだとか焼き方だとかは分からなかったので、みほは店員のおすすめに任せることにした。
「待ってましたー」
数分の後、料理が運ばれてきた。
じゅうじゅうと鉄板の上で焼かれているステーキやハンバーグからは、みほの空腹を刺激する強烈な『匂い』がする。当然のように、みほのお腹は鳴った。
「へへっ。俺も鳴っちまった」
すると、男が笑う。子供のように無邪気な笑みだ。
それを見たみほは、頬が赤くなるのを感じた。
果たして、それは男にお腹が鳴った音を聞かれたからなのか、それとも、庇うようなことを言われたからなのか。あるいは、もっと違う理由なのか。
みほの頭では、今のこの状況がいっぱいいっぱいで、それ以上のことを考えることなんてできなかった。
だから、みほはナイフとフォークに手を伸ばして、ハンバーグセットに挑むことにした。ナイフを入れると肉汁が溢れ、さらに食欲を誘う。まだ熱い鉄板に流れた肉汁がじゅぅぅう、と暴れるのだ。フォークを突き刺し、切り分けたハンバーグを口へ運ぶ。
「あつっ!」
当然だ。鉄板は熱いと、店員すらも注意してきたほどなのだ。しかし、確かに口の中へ運んだハンバーグは、これでもかと旨みを主張してくる。噛めば、アツアツの肉汁が舌を刺激し、肉を食べているという実感を伝えてくれる。やがて、熱さに苦戦しながらも呑み込んだみほは、自分に水の入ったコップを差し出している男に気がついた。
「ほれ、水。火傷してない?」
「あ、ありふぁとぅ、ごじゃいます」
みほは、恥ずかしいやらなにやらでいっぱいだ。もらった水を流し込み、頭が少しだけ冷えたのかもしれない。自分は今、何を見せてしまったのだろう。という後悔が今更ながらに押し寄せてくる。
しかし、男は笑うばかりで、みほを馬鹿にしょうとはしなかった。
「いやぁ、旨そうに食うんだもんなぁ。俺も負けてらんね」
そう言うと、男も厚切りのステーキにかぶりつく。ナイフなんて使わない。フォークを突き刺し、直接口まで運んで噛み切った。
「うん。うへぇうへぇ(うめぇうめぇ)」
もぐもぐと、これまた美味しそうに食べながら、男は何やらもごもご言っている。おそらくは、ステーキの感想を言っているのだと思えた。これっぽっちも、意味のある言葉には聞こえなかったが、何故かそうだという確信があった。
ごくん、と男の喉が動いたのが分かった。
「うん?なんだ。こっち見て。食いてぇの?」
男は、みほに見られていたことに気がついて、フォークに突き刺さったままのステーキをみほに見せる。
当然、みほにそういうつもりはなかったが、男の噛みついた痕からしたたる赤色の肉汁は、少しだけ美味しそうに見えた。
すると、男は何かを察したような仕草をして、ステーキを自分のプレートの上に戻し、ナイフを手に取る。男は、自分の口をつけていない側をナイフで切り取り、それをみほのプレートの上に乗せた。
「わりぃわりぃ。知らねぇ男の食ったとこなんて食えねぇよな。ほら、こっちだったら、口つけてねぇから」
みほは、プレートの上に乗せられた1切れのステーキと男の顔とを交互に見る。
男は、それこそ悪戯の成功した少年のような笑みを浮かべていた。
おそるおそる、みほはフォークを伸ばし、男のくれたステーキに刺した。予想よりも肉はずっと柔らかい。大した力も入れず、フォークはすんなりとその身に刺さる。そして、自らの口へと運んだ。男が見ていることには気づいていたが、みほは構わず口を開けてステーキを放り込む。みほの小さな口では、たった一切れとはいえ、一口で食べるのは大変だった。しかし、旨い。チェーン店のステーキと馬鹿にすることはできなかった。
みほは、西住流という戦車道の大家の生まれである。だから、幼い頃から口にしてきた料理は、きっと上等なものだったはずである。しかし、今日のステーキほど美味しいものは、ちょっと思い浮かばない。
「うまいっしょ」
男が訊ねる。
みほは、「はい」と言おうとして、しかし、それを口にすることはできなかった。
「ちょ、大丈夫?」
男ががたりと席を立つ。慌てた様子だ。
それもそうだろう。見れば、みほが泣いていた。
男は、辺りを不安そうに見回した。こんな少女を泣かせていると知れたら、何を言われるか分かったものではない。そもそも、自分のような身なりの男が制服姿の少女をファミレスに連れ込んでいる時点で怪しいのだ。そのくらいの自覚はあった。
しかし、みほは「ごめんなさい」と一言だけ言って、声をあげて泣くようなことはしなかった。
男は、安堵したような息を吐いて、椅子にどかっと座りなおした。
みほが泣き止むまで、数分を要しただろうか。その間、男はみほのことを見つめるだけで、テーブルのステーキには口をつけようともしなかった。
「だ、大丈夫です」
泣き止み、ハンカチで目元を拭いながらみほが言う。声は震えていた。
「なんかさ、俺、悪いことしたかな?」
ふるふる、とみほは黙って首を振る。
男は、「そっか」と呟いた。
「しょーじき、こんなナンパみたいな真似すんのは嫌だったんだけどサ」
目を閉じて、息を吐く。
次に目を開いたときには、男の目は優しいものになっていた。
「なんか、下向きながら歩いてる君が心配になって」
男の言葉に、再び鼻の奥がつんとするのを感じた。
「そういうのってさ、人に話すと結構楽になるんだわ。俺なんかでよかったら、悩み聞くよ?逆に、知らない相手の方が話しやすいってこと、あるっしょ」
こんな言葉をかけられたのは、果たしていつ以来だろうか。
友達だと思っていた人も、信頼していた家族さえも、皆こぞって、みほのしたことを責めた。みほの言い分も聞かず、挙句、無視やいじめが始まっても、誰も助けてはくれなかった。心配する言葉すら、誰からもかけられることはなかったのだ。
みほは、すべてを話した。
自分が戦車道の家元の子だということも。戦車道の名門、黒森峰女学園に通っていたことも。自分が犯した失敗も。その結果、大洗に逃げてきたということも。
みほは、抱えていたものを吐き出すかのように話した。喉が枯れるんじゃないかと思うくらい話した。
そして、そのすべてを聞き終えた男は、ただ一言、こう言った。
「頑張ったな」
みほは、それだけのことで、これまでのすべてが報われたような気がした。
「君は、なんも間違ってねぇよ。全部、全部全部。周りのやつらがおかしい。仲間を助けたいなんて、当たり前のことだし。っていうか、仲間を助けようとしたのに、それを責めるのもおかしな話だし。そもそも、すげぇよ。ほんとすげぇ。仲間を助けるために川に飛び込むなんて、普通できねぇって。めちゃくちゃカッコいい!ほんと、君は――」
「あの」
みほが、男の言葉を遮った。
それが、どれほど勇気のいる行動だったか。逡巡していたのは、ほんの1秒もなかったと思う。
それでも、呼んでほしいと思ったのだ。
「みほ、です。私の名前」
「みほは、偉いな」
みほにとって、目の前の男が最大の理解者になった瞬間だった。
◇
みほに、男性経験などあろうはずもない。
何せ、中学からは学園艦暮らしで、黒森峰女学園はその名の通り女子校だ。同年代の男子と触れ合うことすら、小学校の頃まで遡らなければならない。
純粋培養、とでも言えばいいのだろうか。ある意味で、過保護な環境で育ってきたみほは、男というものを知らなかった。
知らないが故に、みほは人並み以上に男というものを恐れていた。しかし、何故怖いのか、その理由を理解してはいなかった。
だから、容易にその価値観はひっくり返る。
自分は間違っていたのだ、と。
ほんの少し時間で、ほんの少しのきっかけで、みほは
加えて、みほの精神状態もまずかった。
極度のストレスと、孤独感。もともと自己肯定感の低いみほにとっては、男の言葉はとびっきりの麻薬のようなものだったはずである。
つまり、どういうことかと言うと。
「あ゛っ♥んっっ♥ん~~っ♥」
「ははっ、初めてのわりに気持ちよさそーじゃん」
場所はラブホテル。
言うまでもないことだが、みほも男も裸になって、ひとつのベッドの上で絡み合っている状態である。
みほは、怖かった。
男に抱かれるということもそうだが、それ以上に、
「おっ、あっ♥あぁぁあ゛~~~っ♥♥」
「はははっ」
男が笑う。
腰が力強く押し付けられ、ずん、ずん、と衝撃が襲う。そのたび、みほの口からは濁ったような、うめくような喘ぎ声が漏れるのだった。
ぎし、ぎし、とベッドが軋む。それとタイミングを合わせるようにして、みほの必死の嬌声が響く。そして、男はますます笑みを深くさせるのだ。
「もしかして、と思ったけど、まさか本当に
「あ、っはっ……おくっ、ぐり、ぐりぃ…ってぇ♥」
みほに、そんな余裕などなかった。
男のそれは、規格外と言ってもいいものだった。特に、みほは
丁寧に丁寧に、男はみほのまんこを指で弄り、とろとろになるまで念入りに準備をしてやった。みほは、ろくにオナニーだってしたことはない。それが、軽くほじられるだけで鋭敏に体を仰け反らせるまでに出来上がったのだ。よく鍛えられた背筋が、美しいブリッジを作り出す。男の指がふやけるんじゃないかと思えるほどの愛液が溢れ、無色透明だったそれが、やがては白く濁り、トロトロの少し粘っこいものに変わる。受け入れる準備ができたという合図だ。それでも、破瓜の痛みは免れない。そのはずだった。
「あっ、んっ、ん゛~~~っ♥」
みほは、男の体にしがみつくように抱き着いている。男の汗の匂いが、みほの頭をおかしくさせていた。不思議と、頭を痺れさせるような匂いがする。必死になってそれを嗅いでいると、お腹の奥が切なく疼いた。目の前がちかちかして、体中に熱が広がっていく。頬は上気し、瞳は潤み、心臓はばくばくと鼓動が早くなった。
「みほ、どうした。痛いか?うん?」
痛い。そのはずだ。男のものをはじめて受け入れた瞬間、ぶちぶちと繊維質の断裂する音が聞こえ、涙が出るような痛みに襲われた。今だって、大きくて硬いものに体の中を擦れられている不思議な感覚と、じんじんとした鈍い痛みを同時に感じている。自分の指だって、入れたこともなかったのだ。そういうことに興味があっても、おそるおそる軽く触れるくらいが精一杯だったのだ。痛くないはずがない。だから、みほはこくりとうなずいた。
すると、男の口元が三日月の形に歪む。
「それじゃあ、おまじないを教えてやろう。痛みが楽になるおまじない。俺が、ずん、ずん、って突く度に、みほは気持ちいい、気持ちいいって言ってみな」
「きも……ひぃ……?」
「ああ、気持ちいいだ。ゆっくりいくからな。そーれ、ずん、ずん♪」
ずるっ、と男のそれが引き抜かれる。大きくて、硬くて、熱いそれが抜け落ちていく。そんな喪失感を、カリ首が膣壁を擦る快感が補填する。やがて、亀頭以外がすべて引き抜かれたところで止まり、再びみほの中に侵食してくる。ぎちぎち、ぎちぎちと膣内を押し広げ始めた。決して早いとは言えない速度で、それが繰り返される。
ずるっ♥️ずるっ♥️ずるっ♥️
ずんっ♥️ずんっ♥️ずんっ♥️
こすっ♥️こすっ♥️こすっ♥️
こつんっ♥こつんっ♥こつんっ♥
びくんびくんとみほの腰が跳ね、艶やかな声が漏れた。
「あ、はぁっ♥はぁんっ♥…っ♥️」
「違うだろぉ、気持ちいい、だ。言ってみろ」
「ーーーっ、きもっ、ちぃ!きもちぃいっ♥」
なかばやけくそ気味に、みほは言われた通りの言葉を呻く。
最初は、訳が分からなかった。
「きもちいっ!きもちいっ!きもち……っ!あっ♥はぁ……っ♥きも……っ、ちぃ♥」
しかし、ずっと言っていると不思議なもので、本当に気持ちいいような気がしてくるのだった。
異物が体の中にあるという違和感。男に触れられるという嫌悪感。それらを押し流すような、快楽の波。みほは、はじめて知るそれに逆らうことはできなかった。
「あっ♥きお、ちいぃ♥ん゛♥きも、ちぃい♥ぃ…っ♥️気持ちいいっ♥気持ちいい♥気持ちいい♥」
みほも、男のペースのようなものが分かってきた。男の動きに合わせ、言葉を紡ぐ。そうすると、男の欲している言葉がだんだんと分かってくる。確信はなかったが、不思議と自信があった。
「…おっ、きぃ。おっぎ……あ゛っ♥」
みほの言葉に、男が今までよりも強く腰を打ち付けた。深く、男のそれが入り込む。今日一番の衝撃に、頭の奥で火花が散った。
どうやら、正解したみたいだ。
「なぁにが、おっきぃんだぁ?」
にたにたと笑って、男がたずねる。
みほはとろとろになった頭で、それを答えようとした。
「お、ちん…ちん……あっ、ひぃっ♥」
「悪くねぇ。悪くねぇけど、ちょいと子供っぽいな」
「な、…なんて言ったら…♥️」
みほは、男に喜んでほしかった。
だから、男の求めることを全部したいと思った。
男がそっとみほの耳元に唇を寄せる。
その言葉を聞いて、みほの顔は真っ赤に染まる。
あっ、あっ、あっ。と言葉にならない音が漏れる。
けれど、結局。
「ち、ちんぽっ!あなたのちんぽですっ!」
絶対に、普段のみほだったら言えない言葉。いやらしく、はしたない言葉。しかし、今は、彼が求めている。
言った瞬間、じゅん、と何かが溢れるのを感じた。
「いい子だ。みほ」
「あ……っ♥」
男の手が伸びてきて、みほの頭を軽く触った。
思ったよりも柔らかい手つきで、さらさらの髪を撫でられる。
それは、男にしてみれば、ペットが芸をこなしたことを褒める程度の愛情表現でしかなかったかもしれない。
しかし、みほにとっては、もっと深い意味のある行為だった。
みほの家は、普通ではなかった。母は戦車道の師範で、ただの母親ではなかったのだ。だから、普通の愛情表現なんて見込めるはずもなく、母が褒めてくれるのは、決まって戦車道でみほが活躍したときだけだった。だから、どんなに辛くても、みほは戦車道を続けてきたのだ。
みほは、お母さんに頭を撫でられるのが大好きだった。そのときだけは、普通の親子に戻れたような気がしたから。特別なことだったのだ。
―――ずん♥ずん♥ずん♥
「あっ♥あっ♥あっ♥」
それが、真っ黒い何かで上書きされていく。
男に撫でられながら、快楽という快楽を教え込まれる。もはや、脳に直接書き込まれているような感覚。大切だった何かが、もっと刺激的で、退廃的な何かに変わられていく。
「あ゛っ♥あた、まっ♥なでっ♥おっ゛お~♥撫でられっ、るのっ♥しゅきぃ…♥」
「そうかそうか~。頭撫でられながらするのが好きかぁ~」
「これ♥これっ♥しゅきぃ♥しゅきぃっ♥」
とろとろになったみほは、正常にものを考えるなんてことはできない。ただ、感じたことを、感じたままに口にするだけだ。媚びるように体を寄せ、腰をくねらせる。
「きもちっ♥きもちぃ♥気持ちいいっ♥気持ちいいっ♥気持ちいいっ♥」
「みほはいい子だな~」
男に言われたことを、愚直に繰り返す。いや、本当にそう思っているから、感じているから、口にしているだけかもしれない。
初めてのちんぽから与えられた快楽にかき乱されて、みほの理性なんてほとんど消え去っていた。男のちんぽが自分の膣内を強引に押し広げる。それが、抜け出て、また押し付けられる。抜け出るたびに、理性がすこしずつ一緒に抜け出ているようだった。
それでも、ほんのわずかに残った理性が、訴える。
こんなのおかしい。だめだ。戻れ。戻れ。戻れ。正常に。いつも通りの西住みほに。
その日初めて会った男に体を許し、挙句、獣のように呻いている。娼婦のようにあさましく、男の愛情を欲している。情欲に支配されている。それまでのみほが育ってきた常識からすればとんでもないことだった。
みほは、自分が性欲が強い方だとは思ったこともなかった。
しかし、現実にはどうだ。一度タガが外れてしまえば、もっと欲しい、もっと欲しいとなまめかしく腰を動かし、男のそれを締め付けている。まだ拙いながらも、おねだりを繰り返す女の腰使いを覚えつつあった。
だって、気持ちいいのだ。
それは、みほの足りないところを埋めてくれるような気がした。
「お゛っ、おぐっ♥もっとぉ♥……あっんん゛~~っ♥」
そのうち、みほの思考は、だめだ。とか、止めなくちゃ、という考えから、もういいや、とか、仕方ない、とか。そういうものに変わっていった。体はとっくにそのつもりで、脳みそまで馬鹿になってしまったのかもしれない。
気持ちいい♥️
気持ちいい♥️
気持ちいい♥️
だって、初めてなのに、こんなに気持ちがいいのはおかしいのだ。
みほは、自分以外に理由を求めようとした。
きっと、最初からそんな風に産まれたんだ。男の人に抱かれたら、気持ちよくなるように産まれたんだ。だから、悪いのは自分じゃない。そうだよ。だって、そんな風に産んだお母さんが悪いんだ。私が大洗にいるのだって、この人に出会ったのだって、今、彼に抱かれてるのだって、全部お母さんが悪い全部全部全部全部全部。お母さんが悪い。お母さんが私を守ってくれたら、こうはならなかったんだから。お姉ちゃんだって、エリカさんだって。私にもっと優しくしてくれたら、私はこうならなかった。
―――だから、私は悪くない。
「お゛っ♥お゛っ♥お゛っ♥お゛ぉぉおぉぉ~~~っ♥♥♥」
「はははっ!今のほんとにやべぇ声出たな!っし、そろそろ射精するからなぁ~。ちゃんと射精されてイクんだぞ!」
「イクっ♥いきますっ♥イかせてっ♥」
めちゃくちゃだった。
いや、めちゃくちゃになりたかった。
これまでの惨めな
男が宣言すると、びきびきと、余計に男のそれが大きくなったのを感じた。膨れて、膨れて、膨れて、今にもみほを孕ませようとしているのだと感じる。みほだって、最低限の性知識は持ち合わせている。今、自分がしていることがどういうことで、男がしようとしていることがどういうことか。頭では理解している。
そして、今、体で理解しようとしている♥
びゅるっ♥
びゅるるっ♥
どぴゅ♥
どぴゅどぴゅ♥️
どぷどぷどぷどぷ♥
たぽたぽたぽたぽ♥️
「――――――あっ」
マグマのような灼熱が、みほの中に吐き出される。
脳内麻薬が分泌されて、どうしようもないほどの多幸感に支配される。頭だけではない、体の中も、空っぽだった心の中も、全部だ。
「あっ♥あっ♥あっ♥ぁっ♥あっ♥あっ♥」
お腹の中を熱いものが泳いでいる。そして、子宮の入り口を叩いている。
びゅーびゅーと、もはや放尿と変わらないほどの勢いで吐き出され、絶頂した。しかし、もっと欲しい。もっと欲しい。そう訴えるかのように、みほは無意識に締め付けをさらに強くする。
子宮口が降りてきて、男のちんぽとキスをした。
(ああ、私、
決して不快ではない。むしろ、幸せだった。
それは気のせいだったかもしれない。しかし、みほは、自分の子宮の壁に男の精液がべちゃべちゃとへばりつくような感覚を覚え、それがたぽたぽと溜まって満たされるような感覚を得ていた。
彼のすべてが愛おしい。たとえ、精液の一滴だとしても。離れたくない。離したくない。最後の最後まで、全部欲しい。
「みほ、舌出せ」
男が粗雑な口調で命令をする。もはや、みほに拒絶するなんて考えはなかった。
いや、そもそもみほは、男とキスがしたかった。だから、ずっと男の顔を見ていたのだ。
それを、彼は察してくれた。だからこれは、命令ではない。彼の、彼なりの
「ん……ぁ、ちゅ♥……ぢゅぷ……♥」
男に言われるがまま、みほは舌を出し、それに男が絡ませる。何をすればいいか、ついさっきまで処女だったみほには当然分からない。しかし、
「もっろぉ……♥もっと、くらさぁい♥」
舌と舌を絡ませて、ゆっくりと唇を重ねる。けれど、舌は絡ませ合ったままだ。彼の舌を感じている。彼の舌が動いた。みほの舌の裏を舐める。お返しだ。今度みほの番だった。
ぼーっとした頭で、みほは彼の息遣いを感じていた。それに合わせていく。溶けるように。溶けあうように。心までひとつに繋がり合ったように感じた。
(私、幸せだ……♥)
たぶん、ファーストキスで、初恋だった。
R-18小説なんてはじめて書きました。