「失礼しま~す」
目的の部屋の扉をノックする。
その女の顔は先程の苛立ったものではなく、絶滅種であろう笑顔絶やさない天然お姫様になっていた。
「は~い、待ってたよ~」
扉を開けたのは小太りの男性。
聞いたことのない声。初見か。
髪は短く、眼鏡をしているのか。
顔に細い黒の横線が入っている。それ以上視認することは出来ない。
「御指名いただきありがとうございます。キョーコです。二時間コース、この度はよろしくお願いします」
「うんうん。パネルで見るよりかあいいね~。さぁ、入って入って~」
スーツを着ていることから仕事帰りだろう。
この身なりだとわりと上層部の人間なのだろうか。
追加チップを狙う心の中の飢えた狼が笑った。
「おじゃましま~す」
軽率なステップで室内に入る。
それを確認した男は扉を閉め、私の背に手を回した。
「おじさん。エッチなことはお風呂に入ってからですよ?」
車で話した男のように風呂にも入らずやるなんてご免だ。私はまず強く注意する。
「うん、もちろんわかってるよ。でも~」
そう言って顔を伸ばしてきた。ということはやることは一つ。キスだ。
「んっ、チュぴゅ、ャピュ……」
しかも舌まで入れてきた。はい、NG行為二連撃~。
本来ならこの時点で即通報なのだが、太客かもしれないし、まだ泳がしておくことにしよう。
しかしタバコの臭いが気持ち悪い。オマケに漂うアルコール臭も。
キスはこれで最後にしてもらおう。
「もう、いきなりキスなんてひどいです!」
唇を離すとすぐさま不満をぶつける。こういう客はこうしないとすぐに調子に乗る。
「あはは、ごめんね。可愛すぎたから、つい」
「私以外にやったら即通報ものですよ。気をつけてくださいね!」
「ごめんってば~。詫びチップ出すからさ~」
そう言い、ポッケから差し出されたのは諭吉一枚。やっぱり金持ちは良いようだ。
「本当に気を付けてくださいよ?」
そう言いつつもお金を受け取る私。
しかしここは慎重に。ここで足元を見て暴力的になる客も少なくない。
札が相手の手から引き抜かれる。男はその手を下に降ろした。
大丈夫。この男は、比較的、信頼できる。
「うん、じゃあお風呂入ろっか」
率先して風呂場へのドアを開ける男。
どうやら湯はすでに張ってあるようだ。
脱衣所に行くとまず私から服を脱ぎ、男の服を脱がせる。
別に逆でもいいのだが、そちらの方が男は興奮するらしい。
どうせ風呂に入れば一緒なのに。なにを先急いでいるのか。
そう愚痴りつつも私は先に服を脱ぎ、素早くブラを外す。
すると重い胸が飛び出るように現れ、見つめていた男の眼が光るのを感じる。
しかしこの外し方、けっこう肩に来るからあんまりやりたくない。
「すげぇ……。何カップだったっけ?」
でも客映えはとてもいいのでやめるにやめられない。
「Gです」
たしか店にそう申告してたはず。いちいちそんなこと気にしないから、おぼろげだ。
「さ、触ってもいい?」
「手で触るだけですよ? まだ唇で触れちゃ、ダメですからね?」
男は素早く縦に頷くとまるで割れ物に触れるように慎重に胸に指を沈める。
「やばっ、本当に片手で収まらない……」
「ふふっ、すごいでしょ?」
努力して実った胸ではないのだ。
誇ることなんて無く、すごくもなんともない。
男が胸を揉んでいる間にスカートを外す。
パンツは流石に屈まないと外せないので、男の肩を叩き中断を知らせる。
「続きはお風呂に入って、ね?」
そう告げると無言のまま頭を縦に振り、数歩下がる。
その際見えたのだが、どうやらあそこの準備は万端のようだ。
私はパンツを脱ぎながら微笑する。
「はい、お待たせ~♪ 次はおじさんの番だよ」
靴下を脱ぎながらそう告げると男は恍惚の笑みを浮かべている。
そして両手は膨れ上がった股間部を押さえていた。
気持ち悪い。年離れた女になに欲情してるのか。
あぁ、いいこと考えた。チップを貰ったとは言え、あちらもNG行為をしたんだ。
こちらも少しズルい手を使わせてもらう。
「じゃあおじさん。まずは苦しそうなおちんちんを出しましょうか」
「う、うん。お願いするよ。もうはち切れそうなんだ」
キモッ。
急く男とは反対に私はゆったりとベルトを外し、ズボンのフック、そしてチャックを解放する。
するとズボンは面白いように下がり、彼の下半部を露わにする。
しかしイチモツはまだ顔を出していない。そうパンツがあるからだ。
「ほぅら、足上げて~。ズボンを、あっそうだ。ついでに靴下もヌギヌギしちゃいましょうか!」
「うぅ、うん」
焦らすように他の場所を脱がしていく。
「はうっ!?」
「あっ、ごめんなさい。肩が当たっちゃいました!」
もちろんその間、手を休めたりはしない。わざと患部に身体を当て刺激する。
その震える身体を見て、心の中で笑う。趣味が悪いとちゃんと思ってるから大丈夫。
「さて、次はおまちかねのパンツを脱ぎましょうか……」
なにも待ってないが、とりあえず雑にパンツをずらす。
男の興奮しきったイチモツはネズミ捕りのように彼の腹を叩く。
「あぎゃ!?」
「あっ、ごめんなさい。この大きさに一目惚れして、早まる感情が抑えきれなかったんです。でもやっぱり、すごく大きい……♡」
ただめんどくさかっただけだが。
「キョーコちゃん……」
それでも男は男のプライドを褒められたからか、感涙している。
ただテキトーに言っているだけなのに鵜吞みにするなんて。
呆れを通り越して心配になって来る。こいつの会社大丈夫か?
しかしめんどくさい。あれ、手に収まるか?
あぁ、きっと中にも入れてくるんだろうな。入るかな。ローションさん助けてください。
「さぁさぁ、どんどん脱ぎましょう。おじさん」
まぁ、なんにせよ先に一発出してもらうが。
そう言いながら私は男のイチモツに腹を擦りつけながら上の服のボタンをはずし始める。
ゆっくりと、ゆっっっっっくりと。
「ひゃい!?」
「どうされました~?」
「お、お腹が! 当たって!!」
「お腹?」
白々しく首を傾げ、カリ首にへその下部を引っ掻ける。
「こうですか?」
「ふあああぁぁぁぁ!!」
うるさい。
しかし反応は良好。
そのままへそでカリを弾いて、収めてを繰り返す。
「あぁ、だめ。なにこれ、マジでダメ、やめて!」
「え~? キョーコ、おじさんが何をやめて欲しいか、わかんないです」
笑顔でそう告げると彼も頑張って表情を変えたようだ。視界がおぼろげで見えないが。
しかしただのカラ元気だったようだ。限界はすぐさま来た。
「だめ、キョーコちゃん。で、出ちゃう……!」
その宣言を聞くと私は彼の手を解き、彼から離れる。
「じゃあやめま~す」
「え?」
彼の限界そうだった顔はその一言で真顔に戻る。
しかし私は腹を再び男のイチモツの上には戻さず、なにもない。イチモツは独り虚しく射精した。
「すごぉい、手も使わずオモチャも使わずに射精する人初めて見ました~」
後ろからワイシャツを脱がしながら私は
後ろに回ったことに気付いた男の声は涙声だ。
「キョ、キョーコちゃん?」
「イジワルしてごめんなさい。おじさんの反応可愛くて」
クスクス笑う私を見て、男は再び表情を変えた。
見えてないけど。
「でも、まだできますよね?」
そう、サービスはまだ始まったばかりなのだ。
ゆっくりと楽しもうではないか。それが風俗と言うものだ。